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特開2024-126089高Mアルカリ度且つ高アニオン量汚泥の脱水方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126089
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】高Mアルカリ度且つ高アニオン量汚泥の脱水方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/147 20190101AFI20240912BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C02F11/147 ZAB
B01D21/01 107A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034245
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂野 幸治
【テーマコード(参考)】
4D015
4D059
【Fターム(参考)】
4D015BA05
4D015BA06
4D015BA08
4D015BA09
4D015BA10
4D015BA19
4D015BB08
4D015BB14
4D015CA11
4D015CA12
4D015DA04
4D015DA06
4D015DA13
4D015DA15
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4D059AA01
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4D059BE17
4D059BE26
4D059BE27
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4D059BE57
4D059BE58
4D059BE60
4D059DA16
4D059DA17
4D059DA23
4D059DA24
4D059DB21
4D059DB22
4D059DB23
4D059DB24
4D059DB25
4D059EA20
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】
汚泥脱水処理として使用される汚泥脱水剤に関するものであり、高Mアルカリ度且つ高アニオン量の汚泥に対してより性能の高い汚泥脱水剤を適用する汚泥脱水方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
Mアルカリ度3000~15000mg/L、アニオン量10.0~25.0meq/Lである汚泥に、特定の組成、物性を有する水溶性高分子を含有する汚泥脱水剤を使用することで汚泥脱水性能の向上を達成することができる。汚泥の粗繊維分の量が、懸濁物質に対して15.0質量%以上であることが好ましい。又、水溶性高分子は実質的に架橋性単量体を含まないことが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mアルカリ度3000~15000mg/L、アニオン量10.0~25.0meq/Lである汚泥に、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体5~30モル%及び非イオン性単量体70~95モル%を構成単位とする直鎖型水溶性高分子であり、該直鎖型水溶性高分子の濃度0.5質量%における、4質量%食塩水溶液の粘度(25℃)が50~120mPa・sである直鎖型水溶性高分子を含有する汚泥脱水剤を添加することを特徴とする汚泥の脱水方法。
一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、Rは炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、7~20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基を表わす、X は陰イオンをそれぞれ表わす。
【請求項2】
前記汚泥中の粗繊維分が、懸濁物質(SS)に対して15.0質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の汚泥の脱水方法。
【請求項3】
前記直鎖型水溶性高分子が架橋性単量体を実質的に含まないことを特徴とする請求項1に記載の汚泥の脱水方法。









【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥脱水剤として使用されている水溶性高分子に関するものであり、詳しくは、特定の汚泥に対して汚泥脱水性能が向上する水溶性高分子を含有する汚泥脱水剤を用いた汚泥脱水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理において活性汚泥槽からの流出水から沈降させた余剰汚泥や混合生汚泥、これら汚泥を嫌気消化処理した消化汚泥、あるいは畜産生汚泥といった有機性の汚泥の脱水処理に汚泥脱水剤として水溶性高分子が使用されている。一般的に水溶性高分子としてポリアクリルアミド系(PAM系)水溶性高分子が汎用されている。例えば、特許文献1では、有機性汚泥に、特定の物性を有するカチオン性PAM系水溶性高分子を添加する汚泥の脱水方法が開示されている。
特許文献2では、嫌気性消化汚泥に対して2官能性単量体を含有する単量体を連鎖移動剤の共存下に逆相乳化重合を行って得られた架橋型重合体の適用が開示されている。
しかし、有機性汚泥の中でも特に腐敗物質を多く含むものや腐敗が進行したものでは、汚泥中のMアルカリ度やアニオン量が高くなっておりそれら汚泥に有効な汚泥脱水剤が必要となる。Mアルカリ度、アニオン量が高いことは腐敗物質や発酵物質が多く、更には汚泥粒子の持つマイナス電荷が多くなり中和に要する水溶性高分子のカチオン度が高くなることを意味する。そのため、カチオン性単量体の含有量が比較的高いPAM系水溶性高分子やアミジン構造単位を有する高分子(アミジン系高分子)の適用、あるいは当汚泥に有効な脱水方法が提案されている。
例えば、特許文献3では、特にMアルカリ度500~6000mg/L、カチオン要求量0.05~0.7meq/g-TSである下水消化汚泥に、カチオン当量値が4.0meq/g以上でかつ0.5%塩粘度が40mPa・s未満の重合体を含むカチオン性高分子凝集剤を添加する汚泥の脱水方法について開示されている。
特許文献4では、嫌気性消化汚泥に曝気を行った後余剰汚泥を混合し、好ましくはMアルカリ度を3500mg/L以下にして得られた混合汚泥に金属塩を添加し、次いで両性有機高分子凝集剤を添加する汚泥の脱水方法が開示されている。
しかし、Mアルカリ度且つアニオン量の両方が高い汚泥についてはこれら何れの水溶性高分子についても必ずしも満足な効果が得られていない。そのため、Mアルカリ度且つアニオン量が高い汚泥に対して有効な脱水処方が要望されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000-126800号公報
【特許文献2】特開平10-137797号公報
【特許文献3】国際公開2008/050702号公報
【特許文献4】特開平8-206699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、汚泥脱水処理として使用される汚泥脱水剤に関するものであり、高Mアルカリ度且つ高アニオン量の汚泥に対してより性能の高い汚泥脱水方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、対象汚泥に特定の組成と物性を有する水溶性高分子を含有する汚泥脱水剤を使用することで汚泥脱水性能の向上を達成することができることを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明における汚泥脱水剤を使用することで、高Mアルカリ度且つ高アニオン量の汚泥や種々の有機性汚泥に脱水汚泥に対して汚泥脱水性能の向上を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における水溶性高分子としては、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体5~30モル%及び非イオン性単量体70~95モル%を構成単位とする。
一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、Rは炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、7~20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基を表わす、X は陰イオンをそれぞれ表わす。
【0008】
一般式(1)で表されるカチオン性単量体として、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートあるいはジメチルアミノプロピルアクリルアミドの塩化メチルや塩化エチルなど低級アルキル基のハロゲン化物による四級化物が挙げられる。例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物等である。これらの中でも(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物が好ましい。これらを二種以上、組み合わせても差し支えない。一般式(1)で表されるカチオン性単量体の構成単位は10~25モル%が好ましい。これはこの範囲の方が対象とする汚泥への効果がより発揮されやすい傾向にあるためである。
【0009】
本発明で使用する非イオン性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。これらの中で(メタ)アクリルアミドが好ましい。これらを二種以上、組み合わせても差し支えない。
【0010】
本発明における水溶性高分子の構成単位として効果を阻害しない範囲でアニオン性単量体を含有しても良い。アニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸あるいはそのナトリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、マレイン酸あるいはそのアルカリ金属塩、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミドアルカンスルホン酸あるいはそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。アニオン性単量体は、5モル%以下が好ましい。
【0011】
本発明における水溶性高分子は、カチオン性単量体及び非イオン性単量体混合物を共重合することによって製造することができる。共重合は、例えば、水溶液重合、油中水型エマルジョン重合、油中水型分散重合、塩水中分散重合等によって重合した後、水溶液、塩水中分散液、油中水型エマルジョンあるいは粉末等、任意の製品形態にすることができる。これら重合は窒素雰囲気下にて、重合開始剤を添加し、撹拌下あるいは無攪拌下ラジカル重合を行う。この中でも本発明における物性を有する水溶性高分子を製造しやすい油中水型エマルジョン重合が好ましい。油中水型エマルジョンの場合は、特開平10-137797号公報、特開2011-194347号公報、特開2012-016658号公報等に挙げられる方法に準じて適宜に製造することができる。
【0012】
単量体の重合濃度は10~100質量%の範囲であり、単量体の組成、開始剤の選択によって適宜重合の濃度と温度を設定する。重合温度としては20~80℃、好ましくは20~60℃の範囲で行なう。重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は油溶性或いは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系開始剤を併用することが好ましい。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2、2’-アゾビスイソブチレート、1、1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2、2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2、2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2、2’-アゾビス(4-メトキシ-2、4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
【0013】
水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’-アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’-アゾビス[2-(5-メチル-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩化水素化物、4、4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等が挙げられる。更に過酸化物系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルヒドロペルオキシド等を挙げることができる。
【0014】
又、重合度を調節するためイソプロピルアルコールを対単量体0.1~5質量%併用、あるいはギ酸ソーダを対単量体0.01~0.5質量%併用すると効果的である。
【0015】
本発明における水溶性高分子を製造する際に架橋性単量体を実質的に含まない。実質的に含まないとは、架橋性単量体を単量体総量に対して1ppm未満であることを意味する。全く含まなくても良い。本発明においては架橋性単量体を実質的に含まない水溶性高分子を直鎖型水溶性高分子とする。尚、架橋性単量体として、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、ジメタクリル酸エチレングリコール等が挙げられ、これらを単量体総量に対して1ppm以上含んで製造した水溶性高分子を架橋型水溶性高分子とする。
【0016】
本発明における水溶性高分子は、汚泥脱水剤として性能を発揮するには一定の分子量が必要である。本発明においては、高分子濃度が0.5質量%になるように完全溶解したときの25℃において回転粘度計にて測定した4質量%食塩水溶液粘度(SLV;0.5質量%塩水溶液粘度)が分子量の指標として使用される。本発明における水溶性高分子では、SLVが50mPa・s以上、120mPa・s以下である。60mPa・s以上、120mPa・s以下が好ましく、70mPa・s以上、120mPa・s以下がより好ましく、70mPa・s以上、100mPa・s以下がより一層好ましい。この0.5質量%塩水溶液粘度は、B型粘度計において1号ローター、60rpmで測定した値である。B型粘度計としては東機産業TVB-10M等が使用される。尚、高分子溶解液は800rpmで30分間攪拌して作製する。
【0017】
本発明の汚泥脱水剤が適用される汚泥は、余剰汚泥や混合生汚泥、消化汚泥、あるいは畜産生汚泥といった有機性の汚泥であり、具体的には有機物の指標となる汚泥の有機物量(VSS、懸濁物質中の強熱減量、質量%対SS)が45質量%以上の汚泥である。近年、これら有機性の汚泥では、VSSやVTS(蒸発残留物中の強熱減量、質量%対TS)が増加する傾向にあり、従来の汚泥脱水剤に比べて本発明の汚泥脱水剤の効果がより顕著となるため、VSSが60質量%以上の汚泥が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
有機性汚泥の中でも腐敗物質を多く含むものや腐敗が進行したものでは、汚泥中のMアルカリ度、アニオン量が高くなっている。アニオン量は粒子の持つアニオン電荷を示し、凝集作用を引き起こすにはアニオン量が多いほど中和に要するカチオン量が多くなる。即ち、カチオン度が高い水溶性高分子や、懸濁粒子と多点で結合させるために架橋型高分子の使用が必要になると考えられる。
しかし、高Mアルカリ度の汚泥あるいは高アニオン量の汚泥に対してはカチオン度が高い水溶性高分子である程度の効果は得られるものの高Mアルカリ度且つ高アニオン量の汚泥に対してはカチオン度を高めたり架橋型高分子を使用したりしても効果が不良の場合が多い。
通常では余剰汚泥や消化汚泥のMアルカリ度は500~3000mg/L程度、アニオン量は5~10meq/g程度というデータがある。本発明では、Mアルカリ度3000~15000mg/L、アニオン量10.0~25.0meq/Lの高Mアルカリ度且つ高アニオン量の汚泥を対象とする。
この様な汚泥に対しても、本発明における水溶性高分子では構成単位とするカチオン性単量体の含有量が従来の水溶性高分子に比べて低く、更に一定の物性(分子量)を有する直鎖型水溶性高分子とすることで、優れた脱水効果が得られることを見出したものである。Mアルカリ度とアニオン量が極めて高いと汚泥中の懸濁粒子に対する高分子のカチオン基での中和作用よりも直鎖型の高分子による懸濁粒子間の橋架け作用が凝集を引き起こすには優位に働くことが推測される。そのため、カチオン度が比較的低くてもある程度高い分子量を有する直鎖型高分子が効果を発揮すると考えられる。
従来の水溶性高分子に対して本発明における水溶性高分子の効果がより顕著に発揮されるため、汚泥のMアルカリ度は、好ましくは5000~15000mg/L、より好ましくは7000~15000mg/Lであり、アニオン量は、好ましくは12.0~25.0meq/L、より好ましくは14.0~25.0meq/Lである。
又、汚泥性状の指標の一つに汚泥中の粗繊維分量があり、懸濁物質(SS)に対する200メッシュオン量(質量%/SS)で表わす。基本的に余剰汚泥や消化汚泥等では粗繊維分が少なく、一般的には3~5質量%/SS程度、多くても10質量%/SS程度であるが、本発明における水溶性高分子は粗繊維分が15質量%を超える汚泥に対して特に有効である。
尚、各種測定値は、本発明で規定しない限り定法(下水試験方法)に基づく測定による。
【0018】
(汚泥のMアルカリ度の測定)
本発明において、Mアルカリ度とは、汚泥中に含まれる炭酸塩、炭酸水素塩、又は水酸化物等のアルカリ成分に消費される塩酸量で測定した値であり、pH4.8まで中和するのに要した塩酸の量を、これと当量の炭酸カルシウム(CaCO)の濃度(mg/L)に換算して表示され、一般的に汚泥の腐敗・発酵の指標として使用されているものに準拠する。測定方法は、200mLビーカーに汚泥50mL採取し、撹拌子により撹拌しながらpH4.8になるまで1/10N塩酸を滴下、滴下量(mL)を量り下記式により求められる。
Mアルカリ度(mg/L)=1/10N塩酸の滴下量×1/10N塩酸の力価×100
【0019】
(汚泥のアニオン量の測定)
本発明における汚泥のアニオン量は下記の様に求める。
200mLビーカーに蒸留水170mL、0.05mol/L(1/20N) p-DMC(ポリメタクリロイルオキシエチルジメチルアンモニウム塩化物)溶液10mL、及び汚泥20mL採取、撹拌子を投入し、スターラーで200rpm3分間攪拌する。攪拌終了後、適量を50mL遠沈管にとり、3000rpm3分間遠心分離させ上澄液を滴定試料とする。
別の200mLビーカーに蒸留水100mL採取、滴定試料を20mL採取、トルイジンブルー指示薬を2~3滴滴下する。スターラーで攪拌しながら0.0025mol/L(1/400N)PVSK(ポリビニル硫酸カリウム)溶液で青色から赤紫色になるまで滴定する(amL)。滴定速度は2mL/minとする。
別に0.05mol/L p-DMC溶液10mLのブランク値を求めておく(bmL)。
次式からアニオン量(meq/L)を算出する。
アニオン量(meq/L)=(b-a)×1/400×f×1000/2
f:0.0025mol/L PVSKのファクター
【0020】
(汚泥の粗繊維分の測定)
本発明における汚泥の粗繊維分は下記の様に求める。
汚泥200mLを200メッシュのナイロン濾布上にあけ、水流で加圧濾過する。予め質量(g)を測定したルツボに濾布上の残留物を入れ、105℃の乾燥器で12時間以上保持した後、ルツボの質量(g)を測定し下記式より求める。
粗繊維分(mg/L)=(乾燥後のルツボの質量-予め測定したルツボの質量)×5000
【0021】
本発明における汚泥脱水剤の水溶性高分子以外の水溶性高分子を含有していても差し支えないが、汚泥脱水剤の全質量に対して本発明の水溶性高分子を50質量%以上含有することが好ましい。
【0022】
本発明における汚泥脱水剤として適用可能な汚泥種は、製紙排水、化学工業排水、食品工業排水などの生物処理したときに発生する余剰汚泥、あるいは都市下水、し尿、産業排水、畜産排水の処理で生じる有機性汚泥(いわゆる生汚泥、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、凝沈・浮上汚泥およびこれらの混合物)であるが、これら汚泥に任意の濃度に水で希釈して添加される。0.01~1.0質量%の範囲が好ましい。汚泥に対する添加率は、汚泥種、脱水機種によっても異なるが、汚泥液量に対し10~2000ppmである。使用する脱水機の種類は、ベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレス、多重円板型脱水機、ロータリープレス、フィルタープレス等に対応できる。又、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄等の無機系凝集剤やジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート系高分子、ジアリルアミン系高分子、縮合系アミン系高分子、エチレンイミン系高分子、ビニルアミン系高分子、ジシアンジアミド系高分子等の有機系凝結剤と併用することで効果が改善する傾向にあり併用することが好ましい。
【実施例0023】
以下に本発明における汚泥の脱水方法について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
本発明における汚泥脱水剤として水溶性高分子試料A~Cを常法により製造した。又、本発明の範囲外の水溶性高分子試料1~14を常法により製造あるいは準備した。これらの組成、物性を表1に示す。
【0025】
(表1)
単量体;DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、
AAM:アクリルアミド、AAC:アクリル酸
製品形態;EM:油中水型エマルジョン、P:粉末
塩水溶液粘度:高分子濃度が0.5質量%になるように溶解したときの25℃において測定した4質量%食塩水溶液粘度(mPa・s)。
【0026】
(実施例1)
畜産生汚泥(pH9.6、電気伝導度790mS/m、SS分82000mg/L、VSS74.1質量%/SS、VTS73.7質量%/TS、Mアルカリ度8652mg/L、アニオン量24.2meq/L、粗繊維分29.7質量%/SS)について脱水試験を実施した。
汚泥100mLをポリビーカーに採取し、表1の試料Aの0.2質量%水溶液を対汚泥液量400ppm添加(高分子純分)、CST測定装置において500rpmで60秒間撹拌後、40メッシュにて濾過し濾液量を測定した。その後、ナイロン製濾布(#202)を用いて汚泥をプレス圧4Kg/cmで60秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。この結果を表2に示す。
【0027】
(比較例1)実施例1と同じ汚泥を用い、表1の本発明の範囲外の水溶性高分子試料を用いて同様な試験を実施した。これらの結果を表2に示す。
【0028】
(表2)
【0029】
比較例1の水溶性高分子試料添加時に比べて、本発明における水溶性高分子の方が優れた脱水効果を示した。
【0030】
(実施例2)
バイオマス消化汚泥(pH7.6、電気伝導度1736mS/m、SS分56500mg/L、VSS77.0質量%/SS、VTS76.0質量%/TS、Mアルカリ度11794mg/L、アニオン量17.1meq/L、粗繊維分83.6質量%/SS)について脱水試験を実施した。
汚泥200mLをポリビーカーに採取し、表1の試料Bあるいは試料Cの0.2質量%水溶液を対汚泥液量1000ppm添加(高分子純分)、CST測定装置において1000rpmで30秒間撹拌後、40メッシュにて濾過し濾液量を測定した。その後、ナイロン製濾布(#202)を用いて汚泥をプレス圧3Kg/cmで30秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。又、試料Bあるいは試料Cの添加前にポリ硫酸第二鉄を対汚泥液量10000ppm添加、CST測定装置において1000rpmで30秒間撹拌し同様な試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
【0031】
(比較例2)実施例2と同じ汚泥を用い、表1の本発明の範囲外の水溶性高分子試料を用いて同様な試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
【0032】
(表3)
【0033】
当汚泥はMアルカリ度とアニオン量が特に高い汚泥であるが本発明における水溶性高分子が高い脱水効果を示した。又、無機凝集剤と併用することで更に効果が改善した。
【0034】
(実施例3)
畜産生汚泥(pH7.7、電気伝導度1298mS/m、SS分23250mg/L、VSS79.6質量%/SS、VTS68.8質量%/TS、Mアルカリ度3370mg/L、アニオン量12.1meq/L、粗繊維分55.8質量%/SS)について脱水試験を実施した。
汚泥200mLをポリビーカーに採取し、ポリ硫酸第二鉄を対汚泥液量5000ppm添加、ビーカー移し替え20回撹拌後、表1の試料Aの0.2質量%水溶液を対汚泥液量130ppmあるいは160ppm添加(高分子純分)、ビーカー移し替え20回撹拌後、40メッシュにて濾過し濾液量を測定した。その後、ナイロン製濾布(#202)を用いて汚泥をプレス圧3Kg/cmで60秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。これらの結果を表4に示す。
【0035】
(比較例3)実施例3と同じ汚泥を用い、表1の本発明の範囲外の水溶性高分子試料を用いて同様な試験を実施した。これらの結果を表4に示す。
【0036】
(表4)
【0037】
当汚泥に対しては従来、比較例3の様にカチオン度が高い、即ちカチオンのモル数が高い水溶性高分子の効果が高い傾向にあったが、比較例3よりモル数の低い本発明における水溶性高分子は低添加率でも高い脱水効果を示した。
【0038】
(実施例4)
下水消化汚泥(pH8.3、電気伝導度3650mS/m、SS分34250mg/L、VSS63.5質量%/SS、VTS56.3質量%/TS、Mアルカリ度24067mg/L、アニオン量22.2meq/L、粗繊維分5.8質量%/SS)について脱水試験を実施した。
汚泥100mLをポリビーカーに採取し、表1の試料Aの0.2質量%水溶液を対汚泥液量600ppm添加(高分子純分)、スパチュラ100回攪拌、ビーカー移し替え50回攪拌、スパチュラ50回攪拌後、40メッシュにて濾過し濾液量を測定した。その後、ナイロン製濾布(#202)を用いて汚泥をプレス圧3Kg/cmで60秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。この結果を表5に示す。
【0039】
(比較例4)実施例4と同じ汚泥を用い、表1の本発明の範囲外の水溶性高分子試料を用いて同様な試験を実施した。これらの結果を表5に示す。
【0040】
(表5)
【0041】
比較例4の中で最もカチオンのモル数が高い試料13はある程度の凝集は認められるが、その他の試料では凝集不良であった。一方、それらよりモル数の低い本発明における水溶性高分子の方が高い脱水効果を示した。
【0042】
本発明における水溶性高分子を添加した実施例では、比較例に比べてケーキ含水率が低下を示し、脱水効果が優れることが分かった。高Mアルカリ度且つ高アニオン量の汚泥に対してはカチオン度が比較的低く、物性が一定の範囲を有する直鎖型水溶性高分子が有効であることが確認できた。