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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126097
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】通信装置及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/12 20090101AFI20240912BHJP
   H04W 40/02 20090101ALI20240912BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20240912BHJP
【FI】
H04W40/12
H04W40/02 110
H04W84/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034264
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】細川 元気
(72)【発明者】
【氏名】國立 忠秀
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA13
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE25
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】アドホックネットワークにおいて、通信の安定性を確保しつつ、通信遅延を効果的に削減することが可能な通信装置及び通信システムを提供する。
【解決手段】通信装置10aは、アドホックネットワークにおいて、リング状の固定ルートを形成する複数の通信装置10a~10hに含まれて、送信部21、取得部33、算出部35、及び経路選定部37を備える。取得部33は、自装置と、通信データの宛先となる固定ルート内又は前記固定ルート外の通信装置との間の通信経路を複数取得する。算出部35は、取得した各通信経路における通信遅延及び不安定性の程度を示す評価値を算出する。経路選定部37は、算出した評価値に基づいて、複数の通信経路のうち、評価値が最も低い通信経路を選定する。送信部21は、通信経路内で自装置に隣接する通信装置に通信データを送信して、通信経路内の各通信装置に通信データを中継させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アドホックネットワークにおいて、リング状の固定ルートを形成する複数の通信装置に含まれる通信装置であって、
自装置と、通信データの宛先となる、前記固定ルート内又は前記固定ルート外の通信装置との間の通信経路を複数取得する取得部と、
取得した各通信経路における通信遅延及び不安定性の程度を示す評価値を算出する算出部と、
算出した前記評価値に基づいて、前記複数の通信経路のうち、前記評価値が最も低い通信経路を選定する経路選定部と、
選定した前記通信経路にオーバーヒアルートが含まれる場合、少なくとも、前記オーバーヒアルートを利用する前記通信経路内の通信装置を識別する情報を、前記通信データに設定する設定部と、
前記通信経路内で前記自装置に隣接する通信装置に前記通信データを送信して、前記通信経路内の各通信装置に前記通信データを中継させる送信部と、
を備える通信装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記通信経路のホップ数と、前記通信経路に含まれる各通信装置の通信発生数及び通信成功率とに基づいて、前記評価値を算出し、
前記ホップ数は、前記通信経路内で通信装置間の通信が行われる回数であり、
前記通信発生数は、前記通信経路に含まれる各通信装置が、規定期間内に通信を行った回数であり、
前記通信成功率は、前記通信経路に含まれる各通信装置が、前記規定期間内に、前記通信経路内で隣接する通信装置との間で通信が成功した割合である請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記通信経路に沿って、各通信装置の前記通信発生数を合計した値を、前記ホップ数に加算することにより、第1の値を取得し、
前記算出部は、前記第1の値に通信数の期待値を乗算することにより、前記評価値として、第2の値を取得し、
前記通信数の期待値は、前記通信経路に沿って、各通信装置の前記通信成功率を乗算した値の逆数で表される請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記設定部は、選定した前記通信経路内の各通信装置を識別する情報を、前記通信データを中継する順番に、前記通信データに設定する請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記固定ルート内の各通信装置の通信発生数及び通信成功率を含む装置情報を記憶する記憶部を更に備え、
前記通信発生数は、前記固定ルート内の各通信装置が、前記規定期間内に通信を行った回数であり、
前記通信成功率は、前記固定ルート内の各通信装置が、前記規定期間内に、前記固定ルート又はオーバーヒアルートを介して隣接する通信装置との間で通信が成功した割合であり、
前記算出部は、前記装置情報を参照して、前記評価値を算出する請求項2に記載の通信装置。
【請求項6】
前記固定ルート又は前記オーバーヒアルートを介して前記自装置に隣接する通信装置から、前記隣接する通信装置が有する装置情報を定期的に受信する受信部と、
受信した前記装置情報に含まれる、前記固定ルート内の他の通信装置の通信発生数及び通信成功率に基づいて、前記記憶部に記憶した前記装置情報に含まれる、前記固定ルート内の他の通信装置の通信発生数及び通信成功率を更新する更新部と、
を更に備える請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記更新部は、前記規定期間毎に、前記自装置の通信発生数及び前記通信成功率を取得して、前記記憶部に記憶した前記装置情報に含まれる、前記自装置の通信発生数及び通信成功率を更新する請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記送信部は、前記記憶部に記憶した前記装置情報を、前記隣接する通信装置に定期的に送信し、
前記更新部は、前記規定期間毎に、前記自装置が、前記隣接する通信装置との間で、前記装置情報の送信に成功した割合を、前記通信成功率として取得する請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
アドホックネットワークにおいて、リング状の固定ルートを形成する複数の通信装置に含まれる第1通信装置と、
通信データの宛先となる、前記固定ルート内又は前記固定ルート外の第2通信装置と、
を備え、
前記第1通信装置は、
自装置と前記第2通信装置との間の通信経路を複数取得する取得部と、
取得した各通信経路における通信遅延及び不安定性の程度を示す評価値を算出する算出部と、
算出した前記評価値に基づいて、前記複数の通信経路のうち、前記評価値が最も低い通信経路を選定する経路選定部と、
選定した前記通信経路にオーバーヒアルートが含まれる場合、少なくとも、前記オーバーヒアルートを利用する前記通信経路内の通信装置を識別する情報を、前記通信データに設定する設定部と、
前記通信経路内で前記自装置に隣接する通信装置に前記通信データを送信して、前記通信経路内の各通信装置に前記通信データを中継させる送信部と、
を備える通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基地局、アクセスポイントなどのインフラストラクチャを利用せずに、複数の装置が、無線ネットワークを形成するアドホックネットワークが知られている。
【0003】
アドホックネットワークでは、送信装置が受信装置と直接通信できない場合、当該ネットワークに属する他の装置が中継装置となって、送信装置の代わりに、受信装置に向けて、通信データを送信する。
【0004】
特許文献1に開示されたアドホックネットワークでは、複数の装置が、リング状に接続されて、固定ルートを形成する。固定ルート内の各装置には、固定ルート外の1つ以上の装置が接続可能である。
【0005】
このような構成において、固定ルート内又は固定ルート外の各装置は、送信装置又は受信装置になり得る。送信装置が、受信装置と直接通信できない場合、通信データは、固定ルートを介して中継される。
【0006】
固定ルート内の中継装置が、固定ルート内で中継されている通信データを、オーバーヒア(傍受)する場合、固定ルート内にオーバーヒアルートが形成される。この場合、通信データの通信経路として、オーバーヒアルートを利用することにより、固定ルート内の中継経路を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-82848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、オーバーヒアルートは、固定ルートよりも通信が不安定である。このため、通信データの通信経路として、オーバーヒアルートを利用する場合、通信データの中継が成功しない可能性がある。この場合、通信データの再送などにより、通信遅延が発生する。
【0009】
したがって、アドホックネットワークにおいて、通信遅延を効果的に削減するためには、更なる改善が望まれていた。
【0010】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、アドホックネットワークにおいて、通信の安定性を確保しつつ、通信遅延を効果的に削減することが可能な通信装置及び通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る通信装置は、アドホックネットワークにおいて、リング状の固定ルートを形成する複数の通信装置に含まれる。前記通信装置は、自装置と、通信データの宛先となる、前記固定ルート内又は前記固定ルート外の通信装置との間の通信経路を複数取得する取得部と、取得した各通信経路における通信遅延及び不安定性の程度を示す評価値を算出する算出部と、算出した前記評価値に基づいて、前記複数の通信経路のうち、前記評価値が最も低い通信経路を選定する経路選定部と、選定した前記通信経路にオーバーヒアルートが含まれる場合、少なくとも、前記オーバーヒアルートを利用する前記通信経路内の通信装置を識別する情報を、前記通信データに設定する設定部と、前記通信経路内で前記自装置に隣接する通信装置に前記通信データを送信して、前記通信経路内の各通信装置に前記通信データを中継させる送信部と、を備える。
【0012】
本発明の第2の態様に係る通信システムは、アドホックネットワークにおいて、リング状の固定ルートを形成する複数の通信装置に含まれる第1通信装置と、通信データの宛先となる、前記固定ルート内又は前記固定ルート外の第2通信装置と、を備える。前記第1通信装置は、自装置と前記第2通信装置との間の通信経路を複数取得する取得部と、取得した各通信経路における通信遅延及び不安定性の程度を示す評価値を算出する算出部と、算出した前記評価値に基づいて、前記複数の通信経路のうち、前記評価値が最も低い通信経路を選定する経路選定部と、選定した前記通信経路にオーバーヒアルートが含まれる場合、少なくとも、前記オーバーヒアルートを利用する前記通信経路内の通信装置を識別する情報を、前記通信データに設定する設定部と、前記通信経路内で前記自装置に隣接する通信装置に前記通信データを送信して、前記通信経路内の各通信装置に前記通信データを中継させる送信部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アドホックネットワークにおいて、通信の安定性を確保しつつ、通信遅延を効果的に削減することが可能な通信装置及び通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に係る通信システムの全体概略構成図である。
図2A図2Aは、本実施形態に係るルーティングテーブルの一例を示す図である。
図2B図2Bは、本実施形態に係るルーティングテーブルの一例を示す図である。
図2C図2Cは、本実施形態に係るルーティングテーブルの一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態に係る装置情報の一例を示す図である。
図4図4は、本実施形態に係る固定ルート内にオーバーヒアルートが形成された一例における通信システムの全体概略構成図である。
図5図5は、本実施形態に係る固定ルート内にオーバーヒアルートが形成された一例におけるルーティングテーブルの一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態に係る固定ルート内にオーバーヒアルートが形成された一例における装置情報の一例を示す図である。
図7図7は、本実施形態に係る通信装置の機能的構成の一例を示すブロック構成図である。
図8図8は、本実施形態に係る通信装置のハードウェア構成の一例を示すブロック構成図である。
図9図9は、本実施形態に係るフレーム構成の一例を説明する図である。
図10図10は、本実施形態に係るフレーム構成の一例を説明する図である。
図11図11は、本実施形態に係る通信システムにおける通信データの中継手順のシーケンスの一例を示す図である。
図12図12は、本実施形態に係る通信経路の選定処理のフローチャートの一例を示す図である。
図13図13は、本実施形態に係る通信装置の動作フローチャートの一例を示す図である。
図14図14は、本実施形態に係る送信処理のフローチャートの一例を示す図である。
図15A図15Aは、本実施形態に係る中継・受信処理のフローチャートの一例を示す図である。
図15B図15Bは、本実施形態に係る中継・受信処理のフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本実施形態に係る通信装置及び通信システムについて詳細に説明する。なお、同一の機能や構成には、同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0016】
[通信システムの全体概略構成]
最初に、本実施形態に係る通信システム1の構成を説明する。通信システム1は、アドホックネットワークにおいて、通信データを中継するのに頻繁に使用される通信装置を予め複数選択する。通信システム1は、選択した複数の通信装置のうち、通信データの中継に成功する割合(通信成功率)が高い通信装置同士をリング状に接続して、固定ルートを形成する。
【0017】
本実施形態では、通信システム1に含まれる全ての通信装置のうち、固定ルートを形成する複数の通信装置の各々を、固定ルート内の通信装置とも呼称する。また、通信システム1に含まれる全ての通信装置のうち、固定ルートを形成する複数の通信装置以外の通信装置を、固定ルート外の通信装置とも呼称する。固定ルート内の各通信装置には、固定ルート外の1つ以上の通信装置が接続可能である。固定ルート外の通信装置は、固定ルート内の複数の通信装置のうちの何れか1つに接続されている。本実施形態では、固定ルートを形成する複数の通信装置のうち、後述するオーバーヒアルートを形成する2つの通信装置の各々を、オーバーヒアルート内の通信装置とも呼称する。なお、オーバーヒアルート内では、固定ルート内の通信と同様に、隣接した通信装置間で通信を行うことができる。
【0018】
図1は、通信システム1の全体概略構成図である。図1に示すように、通信システム1は、固定ルート内の通信装置である通信装置10a~10hと、固定ルート外の通信装置である通信装置10a1、10a2、10b1、10d1、10g1とを備える。通信システム1は、例えば、車両に搭載される。なお、通信装置は、端末とも呼称される。
【0019】
通信装置10a~10hは、リング状に接続されて、固定ルートを形成する。具体的には、通信装置10a、10bは、互いに直接通信可能に接続されている。通信装置10b、10cは、互いに直接通信可能に接続されている。通信装置10c、10dは、互いに直接通信可能に接続されている。通信装置10d、10eは、互いに直接通信可能に接続されている。通信装置10e、10fは、互いに直接通信可能に接続されている。通信装置10f、10gは、互いに直接通信可能に接続されている。通信装置10g、10hは、互いに直接通信可能に接続されている。通信装置10h、10aは、互いに直接通信可能に接続されている。
【0020】
通信装置10a~10hの各々は、固定ルート内において、通信データの送信装置、受信装置、又は中継装置として機能することができる。通信装置10a~10hの各々は、固定ルート内において、受信完了通知の送信装置、受信装置、又は中継装置として機能することができる。通信装置10a~10hの各々は、固定ルート内において、ACK(肯定応答:Acknowledgment)の送信装置、又は受信装置として機能することができる。通信装置10a~10hの各々は、固定ルート内において、ルーティングテーブルの情報及び装置情報の送信装置、又は受信装置として機能することができる。通信データ、受信完了通知、ACK、ルーティングテーブルの情報、及び装置情報の詳細については、後述する。なお、固定ルート内の通信装置の数は、8つに限定されず、3つ以上であればよい。
【0021】
本実施形態では、図1に示した固定ルート内において、通信データは、後述する通信経路に沿って、時計回り方向又は反時計回りに中継される。また、本実施形態では、通信経路において、通信データを中継する方向に自装置に隣接する固定ルート内の通信装置を、通信経路内の1つ先の通信装置とも呼称する。更に、本実施形態では、通信経路において、通信データを中継する方向とは反対方向に自装置に隣接する固定ルート内の通信装置を、通信経路内の1つ前の通信装置とも呼称する。
【0022】
通信装置10a1、10a2、10b1、10d1、10g1の各々は、固定ルート内の通信装置に接続されている。具体的には、通信装置10a1、10a2は、通信装置10aに直接通信可能に接続されている。通信装置10b1は、通信装置10bに直接通信可能に接続されている。通信装置10d1は、通信装置10dに直接通信可能に接続されている。通信装置10g1は、通信装置10gに直接通信可能に接続されている。
【0023】
通信装置10a1、10a2、10b1、10d1、10g1の各々は、固定ルート外において、通信データの送信装置、又は受信装置として機能することができる。通信装置10a1、10a2、10b1、10d1、10g1の各々は、固定ルート外において、ACKの送信装置、又は受信装置として機能することができる。通信装置10a1、10a2、10b1、10d1、10g1の各々は、固定ルート外において、ルーティングテーブルの情報の送信装置、又は受信装置として機能することができる。なお、固定ルート外の通信装置の数は、5つに限定されない。
【0024】
通信装置10a~10h(固定ルート内の通信装置)、及び通信装置10a1、10a2、10b1、10d1、10g1(固定ルート外の通信装置)の各々は、ルーティングテーブルを有している。また、通信装置10a~10h(固定ルート内の通信装置)の各々は、装置情報を有している。
【0025】
最初に、ルーティングテーブルについて説明する。ルーティングテーブルは、通信データ、受信完了通知、ACKなどの送信時又は中継・受信時、及び通信経路の選定時に、各通信装置が参照する経路情報である。本実施形態では、ルーティングテーブルは、自装置用テーブル、及び固定ルート用テーブルから構成される。
【0026】
固定ルート外の各通信装置は、自装置の情報と、当該自装置と直接通信可能に接続されている固定ルート内の通信装置の情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。固定ルート外の各通信装置は、固定ルート用テーブルには、何れの情報も記憶していない。
【0027】
図2Aは、固定ルート外の各通信装置が有するルーティングテーブルの一例を示す図である。図2Aに示すように、通信装置10a1は、自装置の情報と、通信装置10aの情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。同様に、通信装置10a2は、自装置の情報と、通信装置10aの情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している(図示略)。通信装置10b1は、自装置の情報と、通信装置10bの情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している(図示略)。通信装置10d1は、自装置の情報と、通信装置10dの情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している(図示略)。通信装置10g1は、自装置の情報と、通信装置10gの情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している(図示略)。
【0028】
固定ルート内の各通信装置は、固定ルート外の1つ以上の通信装置が、自装置に直接通信可能に接続されている場合、自装置の情報と、当該固定ルート外の1つ以上の通信装置の情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。なお、固定ルート内の各通信装置は、固定ルート外の通信装置が、自装置に直接通信可能に接続されていない場合、自装置の情報のみを、自装置用テーブルに記憶する。
【0029】
固定ルート内の各通信装置は、自装置を除いた固定ルート内の全ての通信装置が有する自装置用テーブルを、固定ルート用テーブル内に配置している。本実施形態では、固定ルート内の各通信装置は、固定ルート内で時計回り方向に自装置に隣接する固定ルート内の通信装置から、時計回り方向の順に、当該自装置を除いた固定ルート内の全ての通信装置が有する自装置用テーブルを、固定ルート用テーブル内に配置している。
【0030】
図2B及び図2Cは、固定ルート内の各通信装置が有するルーティングテーブルの一例を示す図である。図2Bに示すように、通信装置10aは、自装置の情報と、通信装置10a1、10a2の情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10aは、通信装置10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hが有する自装置用テーブルを、固定ルート用テーブル内に順に配置している。
【0031】
図2Cに示すように、通信装置10bは、自装置の情報と、通信装置10b1の情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10bは、通信装置10c、10d、10e、10f、10g、10h、10aが有する自装置用テーブルを、固定ルート用テーブル内に順に配置している。
【0032】
同様に、通信装置10cは、自装置の情報を、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10dは、自装置の情報と、通信装置10d1の情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10eは、自装置の情報を、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10fは、自装置の情報を、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10gは、自装置の情報と、通信装置10g1の情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10hは、自装置の情報を、自装置用テーブルに記憶している。
【0033】
固定ルート内の各通信装置は、固定ルート内の他の通信装置との間で、オーバーヒアルートを形成する場合(図4参照)、自装置の情報と、当該他の通信装置の情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。なお、固定ルート内の通信装置は、後述するように、固定ルート内の他の通信装置によって生成された、自装置宛の受信完了通知を受信する場合、自装置の情報と、当該固定ルート内の他の通信装置の情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶する。
【0034】
図4は、固定ルート内にオーバーヒアルートが形成された一例における通信システム1の全体概略構成図である。本実施形態では、図4に示すように、2つのオーバーヒアルートA,Bが形成されている。オーバーヒアルートAは、固定ルート内の通信装置10aから、固定ルート内の通信装置10cに向けて形成されている。オーバーヒアルートBは、固定ルート内の通信装置10cから、固定ルート内の通信装置10eに向けて形成されている。
【0035】
図5は、固定ルート内にオーバーヒアルートが形成された一例におけるルーティングテーブルの一例を示す図である。図4に示した通信システム1において、図5に示すように、通信装置10aは、自装置の情報と、通信装置10a1、10a2(固定ルート外の通信装置)の情報と、通信装置10c(オーバーヒアルートA内の通信装置)の情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。同様に、通信装置10cは、自装置の情報と、通信装置10e(オーバーヒアルートB内の通信装置)の情報とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。本実施形態では、ルーティングテーブルにおいて、オーバーヒアルート内の通信装置を関連付けたテーブルは、オーバーヒアルートテーブルとも呼称される。なお、オーバーヒアルートの数は、2つに限定されない。
【0036】
後述するように、通信システム1内の各通信装置は、隣接する通信装置との間で、ルーティングテーブルの情報を定期的に交換して、ルーティングテーブルを更新する。具体的には、ルーティングテーブルの情報は、固定ルート内で隣接する通信装置の間、直接通信可能に接続された固定ルート外の通信装置及び固定ルート内の通信装置の間、及びオーバーヒアルート内で隣接する通信装置の間で交換される。
【0037】
次に、装置情報について説明する。装置情報は、通信経路の選定時に、各通信装置が参照する情報である。本実施形態では、装置情報は、自装置用テーブル、及び固定ルート用テーブルから構成される。
【0038】
固定ルート内の各通信装置は、自装置の情報と、固定ルート成功率の値と、通信発生数の値とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。
【0039】
固定ルート成功率は、固定ルート内の各通信装置が、規定期間内に、固定ルートを介して隣接する通信装置(固定ルート内の通信装置)との間で通信が成功する割合である。固定ルートを介した隣接する通信装置間では、安定した通信が行われるため、本実施形態では、固定ルート内の全ての通信装置において、固定ルート成功率として、固定値「1」が設定されている。
【0040】
なお、固定ルート成功率として、固定値を設定することに限定されず、可変値を設定してもよい。例えば、固定ルート内の各通信装置が、規定期間内に、固定ルートを介して隣接する通信装置との間で通信が成功した割合を算出して、固定ルート成功率として、算出した割合を設定してもよい。
【0041】
通信発生数は、固定ルート内の各通信装置が、規定期間内に通信を行った回数である。具体的には、通信発生数は、規定期間内に、自装置で発生した通信データの送信回数である。なお、固定ルート外の通信装置が自装置に直接通信可能に接続されている場合には、通信発生数は、規定期間内に、固定ルート外の通信装置から送信された通信データの中継回数も含む。
【0042】
固定ルート内の各通信装置は、自装置を除いた固定ルート内の全ての通信装置が有する自装置用テーブルを、固定ルート用テーブル内に配置している。本実施形態では、固定ルート内の各通信装置は、固定ルート内で時計回り方向に自装置に隣接する固定ルート内の通信装置から、時計回り方向の順に、当該自装置を除いた固定ルート内の全ての通信装置が有する自装置用テーブルを、固定ルート用テーブル内に配置している。
【0043】
図3は、本実施形態に係る装置情報の一例を示す図である。図3に示すように、通信装置10aは、自装置の情報と、固定ルート成功率の値「1」と、通信発生数の値「5」とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10aは、通信装置10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hが有する自装置用テーブルを、固定ルート用テーブル内に順に配置している。
【0044】
同様に、通信装置10bは、自装置の情報と、固定ルート成功率の値「1」と、通信発生数の値「2」とを、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10cは、自装置の情報と、固定ルート成功率の値「1」と、通信発生数の値「3」とを、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10dは、自装置の情報と、固定ルート成功率の値「1」と、通信発生数の値「5」とを、自装置用テーブルに記憶している。
【0045】
通信装置10eは、自装置の情報と、固定ルート成功率の値「1」と、通信発生数の値「4」とを、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10fは、自装置の情報と、固定ルート成功率の値「1」と、通信発生数の値「1」とを、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10gは、自装置の情報と、固定ルート成功率の値「1」と、通信発生数の値「1」とを、自装置用テーブルに記憶している。通信装置10hは、自装置の情報と、固定ルート成功率の値「1」と、通信発生数の値「1」とを、自装置用テーブルに記憶している。
【0046】
固定ルート内の各通信装置は、固定ルート内の他の通信装置との間で、オーバーヒアルートを形成する場合(図4参照)、自装置の情報と、固定ルート成功率と、オーバーヒアルート成功率と、通信発生数とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。
【0047】
オーバーヒアルート成功率は、固定ルート内の各通信装置が、規定期間内に、オーバーヒアルートを介して隣接する通信装置(オーバーヒアルート内の通信装置)との間で通信が成功する割合である。オーバーヒアルートを介した隣接する通信装置間では、不安定な通信が行われるため、本実施形態では、固定ルート内の各通信装置が、規定期間内に、オーバーヒアルートを介して隣接する通信装置との間で通信が成功した割合を算出して、オーバーヒアルート成功率として、算出した割合を設定する。
【0048】
図6は、本実施形態に係る固定ルート内にオーバーヒアルートが形成された一例における装置情報の一例を示す図である。図4に示した通信システム1において、図6に示すように、通信装置10aは、自装置の情報と、固定ルート成功率の値「1」と、オーバーヒアルート成功率の値「0.8」と、通信発生数の値「5」とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。同様に、通信装置10cは、自装置の情報と、固定ルート成功率の値「1」と、オーバーヒアルート成功率の値「0.7」と、通信発生数の値「3」とを関連付けて、自装置用テーブルに記憶している。
【0049】
後述するように、通信システム1内の各通信装置は、隣接する通信装置との間で、装置情報を定期的に交換して、装置情報を更新する。具体的には、装置情報は、固定ルート内で隣接する通信装置の間、又はオーバーヒアルート内で隣接する通信装置の間で交換される。
【0050】
なお、例えば、図4に示したオーバーヒアルートAは、時計回り方向の通信で形成されているため、図5に示したルーティングテーブル内の通信装置10cの自装置用テーブルには、自装置の情報と、通信装置10a(オーバーヒアルートA内の通信装置)の情報とは関連付けられていない。しかしながら、上述したように、オーバーヒアルート内では、固定ルート内の通信と同様に、隣接した通信装置間で通信を行うことができる。このため、通信装置10cは、ルーティングテーブルを参照して、通信装置10aから自装置に向けてオーバーヒアルートが形成されていることを認識すると、自装置に隣接した通信装置として、通信装置10aを識別する。これにより、通信装置10cは、通信装置10aとの間で、ルーティングテーブルの情報及び装置情報を交換することができる。
【0051】
[通信装置の機能的構成]
次に、通信装置10a~10h(固定ルート内の通信装置)の各々の機能的構成について説明する。図7は、通信装置10a~10hの各々の機能的構成の一例を示すブロック構成図である。なお、通信装置10a~10hは、同じ機能的構成を有するため、以下では、通信装置10aの機能的構成のみを説明し、通信装置10b~10hの機能的構成については説明を省略する。
【0052】
図7に示すように、通信装置10aは、送信部21、受信部23、制御部25、通信制御部27、記憶部29、生成部31、取得部33、算出部35、経路選定部37、設定部39、計数部41、ルーティングテーブル更新部43、装置情報更新部45、変更部47、判定部49、及び破棄部51を備える。
【0053】
送信部21は、アンテナANTを使用して、各種フレームを送信する。本実施形態では、送信部21は、通信データ、受信完了通知、ACK、ルーティングテーブルの情報、及び装置情報を送信可能である。
【0054】
受信部23は、アンテナANTを使用して、各種フレームを受信する。本実施形態では、受信部23は、通信データ、受信完了通知、ACK、ルーティングテーブルの情報、及び装置情報を受信可能である。
【0055】
制御部25は、通信装置10aにおける処理全体を制御する。具体的には、制御部25は、送信部21、受信部23、通信制御部27、記憶部29、生成部31、取得部33、算出部35、経路選定部37、設定部39、計数部41、ルーティングテーブル更新部43、装置情報更新部45、変更部47、判定部49、及び破棄部51の各々の動作を制御する。
【0056】
通信制御部27は、各種フレームを電波に載せて伝送するための変調処理、電波に載せられた各種フレームを取り出すための復調処理などを行う。本実施形態では、通信制御部27は、アンテナANTから、無指向性の電波を放射させる。
【0057】
記憶部29は、無線通信に必要な制御パラメータ、通信装置10a~10h(固定ルート内の通信装置)のアドレス、通信装置10a1、10a2、10b1、10d1、10g1(固定ルート外の通信装置)のアドレス、ルーティングテーブル、装置情報、計数部41によりカウントされた各種情報のカウント値などを記憶する。
【0058】
生成部31は、通信データ用のフレームを設定して、通信データを生成する。なお、後述するように、通信データ用のフレームにおいて、ヘッダー内の中継アドレスは、経路選定部37によって選定された通信経路に基づいて、設定部39によって設定される。
【0059】
生成部31は、受信完了通知用のフレームを設定して、受信完了通知を生成する。生成部31は、ACK用のフレームを設定して、ACKを生成する。生成部31は、ルーティングテーブル送信用のフレームを設定する。生成部31は、装置情報送信用のフレームを設定する。
【0060】
図9は、フレーム構成の一例を説明する図である。図9に示すように、生成部31により設定される各フレームは、プリアンブル・フィールド、ヘッダー・フィールド、データ・フィールド、及びFCS(Frame Check Sequence)・フィールドから構成される。
【0061】
プリアンブル・フィールドには、受信側の通信装置がフレームとの同期をとるために使用される特定のビット列が設定される。ヘッダー・フィールドには、第1宛先アドレス、第1送信元アドレス、中継アドレス、第2宛先アドレス、第2送信元アドレス、及びフレームのタイプが含まれる。なお、本実施形態では、ヘッダー・フィールドにおいて、第1宛先アドレス、第2宛先アドレス、中継アドレス、第2送信元アドレス、第1送信元アドレス、及びフレームのタイプの順に各種情報が配置されている。
【0062】
本実施形態では、フレームの通信経路の始点及び終点に対応する2つの通信装置を、それぞれ、第1送信元の通信装置及び第1宛先の通信装置と呼称する。なお、第1送信元の通信装置及び第1宛先の通信装置は、それぞれ、エンドツーエンドにおける、送信元の通信装置及び宛先の通信装置とも呼称される。
【0063】
上述の「フレームの通信経路の始点に対応する通信装置」という表現は、「フレームを作成した通信装置」と言い換えることができる。また、上述の「フレームの通信経路の終点に対応する通信装置」という表現は、「フレームの宛先に対応する通信装置」と言い換えることができる。
【0064】
本実施形態では、第1送信元の通信装置が固定ルート内の通信装置である場合、フレームの通信経路において、第1送信元の通信装置と、第1宛先の通信装置との間に介在する1つ以上の通信装置を、中継装置と呼称する。一方、第1送信元の通信装置が固定ルート外の通信装置である場合、フレームの通信経路において、第1送信元の通信装置に直接通信可能に接続された固定ルート内の通信装置と、第1宛先の通信装置との間に介在する1つ以上の通信装置を、中継装置と呼称する。
【0065】
本実施形態では、フレームの通信経路において、直接通信可能な2つの通信装置のうち、当該フレームの送信元に対応する通信装置を、第2送信元の通信装置と呼称し、かつ、当該フレームの宛先に対応する通信装置を、第2宛先の通信装置と呼称する。なお、第2送信元の通信装置及び第2宛先の通信装置は、それぞれ、ポイントツーポイントにおける、送信元の通信装置及び宛先の通信装置とも呼称される。
【0066】
上述の「フレームの通信経路において、直接通信可能な2つの通信装置のうち、当該フレームの送信元に対応する通信装置」という表現は、「フレームを送信しようとする通信装置」と言い換えることができる。また、上述の「フレームの通信経路において、直接通信可能な2つの通信装置のうち、当該フレームの宛先に対応する通信装置」という表現は、「フレームの次の送信先に対応する通信装置」と言い換えることができる。
【0067】
なお、通信装置10において、第1送信元の通信装置が第1宛先の通信装置と直接通信できる場合、第2送信元の通信装置及び第2宛先の通信装置は、それぞれ、第1送信元の通信装置及び第1宛先の通信装置に一致する。
【0068】
ヘッダー・フィールドの第1宛先アドレスには、第1宛先の通信装置のアドレスが設定される。ヘッダー・フィールドの第1送信元アドレスには、第1送信元の通信装置のアドレスが設定される。なお、第1宛先アドレス及び第1送信元アドレスは、それぞれ、エンドツーエンドにおける、宛先のアドレス及び送信元のアドレスとも呼称される。また、第1宛先アドレス及び第1送信元アドレスは、それぞれ、単に、宛先アドレス及び送信元アドレスとも呼称される。
【0069】
ヘッダー・フィールドの中継アドレスには、中継装置のアドレスが設定される。なお、通信経路内に複数の中継装置が存在する場合、中継アドレスには、通信経路に沿ってフレームを中継する順番に、複数の中継装置のアドレスが設定される。なお、中継アドレスは、通信経路内の通信装置を識別する情報とも呼称される。
【0070】
本実施形態では、第1送信元の通信装置が固定ルート内の通信装置であり、かつ、第1送信元の通信装置が第1宛先の通信装置と直接通信できる場合、中継装置は存在しないため、中継アドレスには何れの情報も設定されない。また、第1送信元の通信装置が固定ルート外の通信装置であり、かつ、第1送信元の通信装置に直接通信可能に接続された固定ルート内の通信装置が第1宛先の通信装置と直接通信できる場合にも、中継装置は存在しないため、中継アドレスには何れの情報も設定されない。
【0071】
ヘッダー・フィールドの第2宛先アドレスには、第2宛先の通信装置のアドレスが設定される。ヘッダー・フィールドの第2送信元アドレスには、第2送信元の通信装置のアドレスが設定される。なお、第2宛先アドレス及び第2送信元アドレスは、それぞれ、ポイントツーポイントにおける、宛先のアドレス及び送信元のアドレスとも呼称される。また、第2宛先アドレス及び第2送信元アドレスは、それぞれ、送信先アドレス及び送信アドレスとも呼称される。
【0072】
ヘッダー・フィールドのタイプには、通信データ用のフレームであることを示す情報、受信完了通知用のフレームであることを示す情報、ACK用のフレームであることを示す情報、ルーティングテーブル送信用のフレームであることを示す情報、又は装置情報送信用のフレームであることを示す情報が設定される。当該情報は、例えば、3ビット値で表される。具体的には、「001」の値は、通信データ用のフレームであることを示し、「010」の値は、受信完了通知用のフレームであることを示し、「011」の値は、ACK用のフレームであることを示す。また、「110」の値は、ルーティングテーブル送信用のフレームであることを示し、「111」の値は、装置情報送信用のフレームであることを示す。
【0073】
データ・フィールドには、送信対象のデータ、ルーティングテーブルの情報、又は装置情報が設定される。FCS・フィールドには、受信側の通信装置がフレームに誤りがあるか否かを判定するために使用されるビット列が設定される。
【0074】
なお、次の2つの条件により、通信データを中継する方向が予め規定されている場合、ヘッダー・フィールドには、図10に示すように、中継アドレスの代わりに、オーバーヒアルート利用情報が含まれてもよい。1つ目の条件は、「通信装置が、固定ルート内で反時計回り方向に隣接する通信装置から通信データを受信する場合には、当該通信データは、固定ルート内で時計回りに中継される」である。2つ目の条件は、「通信装置が、固定ルート内で時計回り方向に隣接する通信装置から通信データを受信する場合には、当該通信データは、固定ルート内で反時計回りに中継される」である。オーバーヒアルート利用情報には、フレームの通信経路内にオーバーヒアルートが含まれる場合に、当該オーバーヒアルートを利用する通信経路内の通信装置を識別する情報が設定される。通信経路に含まれる通信装置が、固定ルート及びオーバーヒアルートを介して、2つの通信装置に隣接している場合でも、オーバーヒアルート利用情報を参照することにより、当該2つの通信装置のうち、通信データを送信すべき通信装置を判定することができる。
【0075】
生成部31は、送信部21が通信データを送信する場合、通信データ用のフレームを設定する。具体的には、生成部31は、ヘッダー・フィールドの第1宛先アドレス及び第1送信元アドレスに、それぞれ、通信データの通信経路の終点に対応する通信装置のアドレス、及び通信データの通信経路の始点に対応する通信装置のアドレスを設定する。
【0076】
生成部31は、ヘッダー・フィールドの第2宛先アドレスに、通信経路内の1つ先の通信装置、又は自装置に直接通信可能に接続された固定ルート外の通信装置を設定する。生成部31は、ヘッダー・フィールドの第2送信元アドレスに、自装置のアドレスを設定する。生成部31は、ヘッダー・フィールドのタイプに、送信フレームが通信データであることを示す情報を設定する。生成部31は、データ・フィールドに、送信対象のデータを設定する。
【0077】
なお、固定ルート外の通信装置が通信データを送信する場合、ヘッダー・フィールドの第2宛先アドレスには、自装置が直接通信可能に接続された、固定ルート内の通信装置のアドレスが設定される。この場合、本実施形態では、固定ルート外の通信装置は、通信経路の選定を行わないため、中継アドレスには何れの情報も設定されない。
【0078】
生成部31は、例えば、受信部23が、第2送信元アドレスが、固定ルート内の隣接する通信装置のアドレス、又は自装置に直接通信可能に接続された固定ルート外の通信装置のアドレスに一致しない通信データをオーバーヒアした場合、受信完了通知用のフレームを生成する。受信完了通知は、自装置が、通信データをオーバーヒアしたことを通知するために使用される。
【0079】
生成部31は、受信完了通知用のフレームを設定する場合、ヘッダー・フィールドの第1宛先アドレス及び第1送信元アドレスに、それぞれ、受信した通信データの第2送信元アドレス、及び自装置のアドレスを設定する。このように、本実施形態では、受信完了通知は、受信した通信データの第2送信元の通信装置に送信される。
【0080】
生成部31は、ヘッダー・フィールドの第2宛先アドレス及び第2送信元アドレスに、それぞれ、固定ルート内の隣接する通信装置のアドレス、及び自装置のアドレスを設定する。生成部31は、ヘッダー・フィールドのタイプに、送信フレームが受信完了通知であることを示す情報を設定する。生成部31は、データ・フィールドには、何れの情報も設定しない。なお、受信完了通知用のフレームの設定時には、通信経路の選定は行われないため、中継アドレスには何れの情報も設定されない。
【0081】
生成部31は、受信部23が、第2宛先アドレスに自装置のアドレスが設定された通信データを受信した場合、ACK用のフレームを生成する。ACKは、自装置が、通信データを受信したことを通知するために使用される。
【0082】
生成部31は、ACK用のフレームを設定する場合、ヘッダー・フィールドの第1宛先アドレス及び第2宛先アドレスに、受信した通信データの第2送信元アドレスを設定する。生成部31は、第1送信元アドレス及び第2送信元アドレスに、自装置のアドレスを設定する。生成部31は、ヘッダー・フィールドのタイプに、送信フレームがACKであることを示す情報を設定する。生成部31は、データ・フィールドには、何れの情報も設定しない。なお、ACK用のフレームの設定時には、通信経路の選定は行われないため、中継アドレスには何れの情報も設定されない。
【0083】
生成部31は、送信部21がルーティングテーブルの情報を送信する場合、ルーティングテーブル送信用のフレームを設定する。具体的には、生成部31は、ヘッダー・フィールドの第1宛先アドレス及び第2宛先アドレスに、固定ルート内で隣接する通信装置のアドレス、自装置に直接通信可能に接続された固定ルート外の通信装置のアドレス、又はオーバーヒアルート内で隣接する通信装置のアドレスを設定する。生成部31は、第1送信元アドレス及び第2送信元アドレスに、自装置のアドレスを設定する。生成部31は、ヘッダー・フィールドのタイプに、送信フレームがルーティングテーブル送信用のフレームであることを示す情報を設定する。生成部31は、データ・フィールドには、ルーティングテーブルの情報を設定する。なお、ルーティングテーブル送信用のフレームの設定時には、通信経路の選定は行われないため、中継アドレスには何れの情報も設定されない。
【0084】
生成部31は、送信部21が装置情報を送信する場合、装置情報送信用のフレームを設定する。具体的には、生成部31は、ヘッダー・フィールドの第1宛先アドレス及び第2宛先アドレスに、固定ルート内で隣接する通信装置のアドレス、又はオーバーヒアルート内で隣接する通信装置のアドレスを設定する。生成部31は、第1送信元アドレス及び第2送信元アドレスに、自装置のアドレスを設定する。生成部31は、ヘッダー・フィールドのタイプに、送信フレームが装置情報送信用のフレームであることを示す情報を設定する。生成部31は、データ・フィールドには、装置情報を設定する。なお、装置情報送信用のフレームの設定時には、通信経路の選定は行われないため、中継アドレスには何れの情報も設定されない。
【0085】
なお、ルーティングテーブル送信用のフレーム及び装置情報送信用のフレームの構成は、通信データ用のフレーム、受信完了通知用のフレーム、及びACK用のフレームの構成と異なっていてもよい。
【0086】
取得部33は、記憶部29に記憶されたルーティングテーブルを参照して、通信装置10aと、通信データの宛先となる、固定ルート内又は固定ルート外の通信装置との間の通信経路を複数取得する。具体的には、取得部33は、生成部31が通信データを生成する場合、又は受信部23が固定ルート外の通信装置10a1又は通信装置10a2から通信データを受信する場合、通信装置10aと、当該通信データの宛先となる通信装置(第1宛先の通信装置)との間の通信経路を複数取得する。各通信経路は、1つ以上の固定ルート内の通信装置から構成される。
【0087】
例えば、図1に示した通信システム1において、受信部23が、第1宛先アドレス及び第1送信元アドレスに、それぞれ、通信装置10g1のアドレス及び通信装置10a1のアドレスが設定された通信データを受信した場合、取得部33は、図2Bに示したルーティングテーブルを参照して、2つの通信経路を取得する。1番目の通信経路として、取得部33は、通信装置10a,10b,10c,10d,10e,10f,10gの通信経路を取得する。1番目の通信経路では、通信データは、固定ルート内で時計回り方向に中継される。2番目の通信経路として、取得部33は、通信装置10a,10h,10gの通信経路を取得する。2番目の通信経路では、通信データは、固定ルート内で反時計回り方向に中継される。
【0088】
また、図4に示した通信システム1において、受信部23が、第1宛先アドレス及び第1送信元アドレスに、それぞれ、通信装置10eのアドレス及び通信装置10a1のアドレスが設定された通信データを受信した場合、取得部33は、図5に示したルーティングテーブルを参照して、5つの通信経路を取得する。1番目の通信経路として、取得部33は、通信装置10a,10b,10c,10d,10eの通信経路を取得する。1番目の通信経路では、通信データは、固定ルート内で時計回り方向に中継される。2番目の通信経路として、取得部33は、通信装置10a,10b,10c,10eの通信経路を取得する。2番目の通信経路では、通信データは、固定ルート内で、オーバーヒアルートBを利用して、時計回り方向に中継される。
【0089】
3番目の通信経路として、取得部33は、通信装置10a,10c,10d,10eの通信経路を取得する。3番目の通信経路では、通信データは、固定ルート内で、オーバーヒアルートAを利用して、時計回り方向に中継される。4番目の通信経路として、取得部33は、通信装置10a,10c,10eの通信経路を取得する。4番目の通信経路では、通信データは、固定ルート内で、オーバーヒアルートA,Bを利用して、時計回り方向に中継される。5番目の通信経路として、取得部33は、通信装置10a,10h,10g,10f,10eの通信経路を取得する。5番目の通信経路では、通信データは、固定ルート内で、反時計回り方向に中継される。
【0090】
算出部35は、取得部33によって取得された各通信経路における、通信遅延及び不安定性の程度を示す評価値を算出する。具体的には、算出部35は、通信経路のホップ数と、通信経路に含まれる各通信装置の通信発生数及び通信成功率とに基づいて、評価値を算出する。
【0091】
ホップ数は、通信経路内で通信装置間の通信が行われる回数である。一般的に、ホップ数が多いほど、通信遅延の程度が大きいと想定される。このため、ホップ数は、通信遅延の程度を表している。算出部35は、記憶部29に記憶されたルーティングテーブル参照して、ホップ数を算出する。
【0092】
通信発生数は、通信経路に含まれる各通信装置が、規定期間内に通信を行った回数である。一般的に、通信発生数が多いほど、輻輳が生じやすいと想定される。このため、通信発生数は、通信遅延の程度を表している。算出部35は、記憶部29に記憶された装置情報を参照して、通信経路に含まれる各通信装置の通信発生数を取得する(図3及び図6参照)。
【0093】
通信成功率は、通信経路に含まれる各通信装置が、規定期間内に、通信経路内で隣接する通信装置との間で通信が成功した割合である。一般的に、通信成功率が低い場合、通信を再度行う可能性が高いと想定される。このため、通信成功率は、通信の不安定性の程度を表している。算出部35は、記憶部29に記憶された装置情報を参照して、通信経路に含まれる各通信装置の固定ルート成功率又はオーバーヒアルート成功率を、通信成功率として取得する(図3及び図6参照)。なお、本実施形態では、固定ルート成功率は、固定値「1」に設定されている。
【0094】
本実施形態では、規定期間は、通信装置10aが、隣接する通信装置との間で、装置情報を所定回数(例えば10回)交換するまでの期間である。具体的には、図1に示した通信システム1において、通信装置10aは、固定ルートを介して、通信装置10b又は通信装置10hから、装置情報を所定回数受信する度に、通信発生数を取得して、装置情報を更新する。
【0095】
本実施形態では、固定ルート成功率は、固定値「1」に設定されているが、これに限定されない。固定ルート成功率は、通信装置10aが、通信装置10b又は通信装置10hから装置情報を所定回数受信する間に、通信装置10b又は通信装置10hに装置情報を送信した回数に対して、当該装置情報の送信に対するACKを受信した回数の割合で表されてもよい。
【0096】
また、図4に示した通信システム1において、通信装置10aは、オーバーヒアルートAを介して、通信装置10cから装置情報を所定回数受信する度に、オーバーヒアルート成功率及び通信発生数を取得して、装置情報を更新する。本実施形態では、オーバーヒアルート成功率は、通信装置10aが、通信装置10cから装置情報を所定回数受信する間に、通信装置10cに装置情報を送信した回数に対して、当該装置情報の送信に対するACKを受信した回数の割合で表される。なお、オーバーヒアルートが形成された時点でのオーバーヒアルート成功率(初期値)は「1」に設定される。
【0097】
本実施形態では、算出部35は、次の式に基づいて、評価値を算出する。
【0098】
(通信経路内のホップ数+通信経路内の通信発生数の合計)×通信数の期待値
【0099】
具体的には、算出部35は、取得部33によって取得された通信経路に沿って、各通信装置の通信発生数を合計した値を、ホップ数に加算することにより、第1の値を取得する。算出部35は、取得部33によって取得された通信経路における通信数の期待値を、第1の値に乗算することにより、評価値として、第2の値を取得する。
【0100】
なお、通信数の期待値は、各通信装置の通信成功率を乗算した値の逆数である。例えば、通信経路に沿って、各通信装置の通信成功率を乗算した値が0.5の場合、通信数の期待値は2となる。この場合、当該通信経路では、2回送信すれば通信が成功すると期待できる。
【0101】
図1に示した通信システム1において、上述した通信装置10a,10b,10c,10d,10e,10f,10gの通信経路(1番目の通信経路)では、ホップ数は6であり、通信発生数の合計は21であり、通信数の期待値は1であるため、評価値は27となる。上述した通信装置10a,10h,10gの通信経路(2番目の通信経路)では、ホップ数は2であり、通信発生数の合計は7であり、通信数の期待値は1であるため、評価値は9となる。
【0102】
また、図4に示した通信システム1において、上述した通信装置10a,10b,10c,10d,10eの通信経路(1番目の通信経路)では、ホップ数は4であり、通信発生数の合計は15であり、通信数の期待値は1であるため、評価値は19となる。上述した通信装置10a,10b,10c,10eの通信経路(2番目の通信経路)では、ホップ数は3であり、通信発生数の合計は13であり、通信数の期待値は1/0.7(≒1.43)であるため、評価値は近似値として22.9となる。上述した通信装置10a,10c,10d,10eの通信経路(3番目の通信経路)では、ホップ数は3であり、通信発生数の合計は14であり、通信数の期待値は1/0.8(=1.25)であるため、評価値は近似値として21.3となる。上述した通信装置10a,10c,10eの通信経路(4番目の通信経路)では、ホップ数は2であり、通信発生数の合計は12であり、通信数の期待値は1/0.56(≒1.79)であるため、評価値は25となる。上述した通信装置10a,10h,10g,10f,10eの通信経路(5番目の通信経路)では、ホップ数は4であり、通信発生数の合計は13であり、通信数の期待値は1であるため、評価値は17となる。
【0103】
経路選定部37は、算出部35によって算出された評価値に基づいて、複数の通信経路のうち、評価値が最も低い通信経路を選定する。例えば、図1に示した通信システム1では、上述した通信装置10a,10h,10gの通信経路(2番目の通信経路)が選定される。図4に示した通信システム1では、上述した通信装置10a,10h,10g,10f,10eの通信経路(5番目の通信経路)が選定される。これにより、経路選定部37は、取得部33によって取得された複数の通信経路のうち、通信遅延及び不安定性の程度が最も低い通信経路を選定することができる。
【0104】
なお、経路選定部37は、2つ以上の通信経路の評価値が同じ値である場合には、これらの通信経路のうち、ホップ数が最も少ない通信経路を選定する。また、経路選定部37は、2つ以上の通信経路の評価値及びホップ数が同じ値である場合には、これらの通信経路のうち、通信発生数が最も少ない通信経路を選定する。
【0105】
設定部39は、経路選定部37によって選定された通信経路に含まれる各通信装置のアドレスのうち、中継装置のアドレスを、通信経路に沿ってフレームを中継する順番に、通信データ用のフレームにおける、ヘッダー・フィールドの中継アドレスに設定する。具体的には、図1に示した通信システム1では、上述した通信装置10a,10h,10gの通信経路(2番目の通信経路)が選定され、かつ、第1宛先の通信装置は通信装置10g1であるため、設定部39は、通信装置10h,10gのアドレスを中継アドレスに設定する。図4に示した通信システム1では、上述した通信装置10a,10h,10g,10f,10eの通信経路(5番目の通信経路)が選定され、かつ、第1宛先の通信装置は通信装置10eであるため、設定部39は、通信装置10h,10g,10fのアドレスを中継アドレスに設定する。
【0106】
図1に示した通信システム1において、計数部41は、受信部23が、通信装置10b又は通信装置10hから装置情報を受信した回数をカウントして、装置情報の受信回数として、カウントした値を記憶部29に記憶させる。
【0107】
図4に示した通信システム1において、計数部41は、受信部23が、通信装置10cから装置情報を受信した回数をカウントして、装置情報の受信回数として、カウントした値を記憶部29に記憶させる。計数部41は、送信部21が、通信装置10cに装置情報を送信した回数をカウントして、装置情報の送信回数として、カウントした値を記憶部29に記憶させる。計数部41は、受信部23が、通信装置10cから、装置情報の送信に対するACKを受信した回数をカウントして、ACKの受信回数として、カウントした値を記憶させる。
【0108】
ルーティングテーブル更新部43は、受信部23が、自装置宛の受信完了通知を受信する場合、受信完了通知のヘッダー・フィールドの第1送信元アドレスに設定された固定ルート内の他の通信装置の情報を、オーバーヒアルートテーブルに追加する。ルーティングテーブル更新部43は、受信部23が、隣接する通信装置から、ルーティングテーブルの情報を受信すると、受信したルーティングテーブルの情報に基づいて、自装置のルーティングテーブルを更新する。
【0109】
装置情報更新部45は、受信部23が、隣接する通信装置から、装置情報を受信すると、受信した装置情報に基づいて、装置情報内の固定ルート用テーブルを更新する。なお、装置情報更新部45は、隣接する通信装置から装置情報を受信する度に、装置情報内の固定ルート用テーブルを更新しなくてもよい。本実施形態では、装置情報更新部45は、更新部とも呼称される。
【0110】
図1に示した通信システム1において、装置情報更新部45は、計数部41によってカウントされた装置情報の受信回数が所定回数(例えば10回)に達すると、通信発生数を取得して、装置情報を更新する。装置情報更新部45は、装置情報の受信回数が所定回数に達すると、装置情報の受信回数を0にリセットする。
【0111】
図4に示した通信システム1において、装置情報更新部45は、計数部41によってカウントされた装置情報の受信回数が所定回数(例えば10回)に達すると、通信発生数及びオーバーヒアルート成功率を取得して、装置情報を更新する。装置情報更新部45は、装置情報の受信回数が所定回数に達すると、装置情報の受信回数、装置情報の送信回数、及びACKの受信回数を0にリセットする。
【0112】
変更部47は、受信部23が通信データを受信した場合、受信した通信データの第1宛先アドレスが、自装置のアドレスに一致しないと、通信データを中継するために、通信データの第2宛先アドレス及び第2送信元アドレスを変更する。具体的には、変更部47は、ヘッダー・フィールドの中継アドレスを参照して、ヘッダー・フィールドの第2宛先アドレスを、通信経路内の1つ先の通信装置のアドレスに変更する。なお、変更部47は、ヘッダー・フィールド内の最後の中継アドレスに自装置のアドレスが設定されている場合には、ヘッダー・フィールドの第2宛先アドレスを、自装置に直接通信可能に接続された固定ルート外の通信装置に変更する。変更部47は、ヘッダー・フィールドの第2送信元アドレスを、自装置のアドレスを変更する。
【0113】
変更部47は、受信部23が受信完了通知を受信した場合、受信した受信完了通知の第1宛先アドレスが、自装置のアドレスに一致しないと、受信完了通知を中継するために、受信完了通知の第2宛先アドレス及び第2送信元アドレスを変更する。具体的には、変更部47は、受信完了通知の第2宛先アドレス及び第2送信元アドレスを、それぞれ、固定ルート内で当該受信完了通知を送信した通信装置と反対側で隣接する通信装置のアドレス、及び自装置のアドレスに変更する。
【0114】
判定部49は、生成部31が通信データを生成する場合、第1宛先の通信装置が、自装置に直接通信可能に接続されているか否かを判定する。判定部49が、第1宛先の通信装置が、自装置に直接通信可能に接続されていると判定する場合、送信部21は、第1宛先の通信装置に通信データを送信する。判定部49が、第1宛先の通信装置が、自装置に直接通信可能に接続されていないと判定する場合、経路選定部37は、通信経路を選定して、送信部21は、選定された通信経路内の1つ先の通信装置に通信データを送信する。
【0115】
判定部49は、受信部23がフレームを受信した場合、受信したフレームのヘッダー・フィールドのタイプに、通信データ用のフレームであることを示す情報が設定されていると、受信部23が、通信データを受信したと判定する。この場合、判定部49は、第1宛先の通信装置が、自装置に直接通信可能に接続されているか否かを判定する。
【0116】
判定部49が、第1宛先の通信装置が、自装置に直接通信可能に接続されていると判定する場合、送信部21は、第1宛先の通信装置に通信データを送信する。判定部49は、第1宛先の通信装置が、自装置に直接通信可能に接続されていないと判定する場合、第2送信元の通信装置は、固定ルート外の通信装置であるか否かを判定する。
【0117】
判定部49が、第2送信元の通信装置は、固定ルート外の通信装置ではないと判定する場合、送信部21は、中継アドレスを参照して、通信経路内の1つ先の通信装置に通信データを送信する。判定部49が、第2送信元の通信装置は、固定ルート外の通信装置であると判定する場合、経路選定部37は、通信経路を選定して、送信部21は、選定された通信経路内の1つ先の通信装置に通信データを送信する。
【0118】
判定部49は、受信部23がフレームを受信した場合、受信したフレームのヘッダー・フィールドのタイプに、受信完了通知用のフレームであることを示す情報が設定されていると、受信部23が、受信完了通知を受信したと判定する。この場合、判定部49は、第1宛先アドレスが、自装置のアドレスに一致するか否かを判定する。
【0119】
判定部49は、第1宛先アドレスが、自装置のアドレスに一致すると判定する場合、ルーティングテーブル更新部43は、オーバーヒアルートテーブルを更新する。判定部49が、第1宛先アドレスが、自装置のアドレスに一致しないと判定する場合、変更部47は、受信完了通知を中継するために、受信完了通知用フレームの第2宛先アドレス及び第2送信元アドレスを変更する。
【0120】
判定部49は、受信部23がフレームを受信した場合、受信したフレームのヘッダー・フィールドのタイプに、ACK用のフレームであることを示す情報が設定されていると、受信部23がACKを受信したと判定する。
【0121】
判定部49は、受信部23がフレームを受信した場合、受信したフレームのヘッダー・フィールドのタイプに、ルーティングテーブル送信用のフレームであることを示す情報が設定されていると、受信部23が、ルーティングテーブルの情報を受信したと判定する。この場合、ルーティングテーブル更新部43は、受信したルーティングテーブルの情報に基づいて、自装置のルーティングテーブルを更新する。
【0122】
判定部49は、送信部21がフレームを受信した場合、受信したフレームのヘッダー・フィールドのタイプに、装置情報送信用のフレームであることを示す情報が設定されていると、受信部23が、装置情報を受信したと判定する。この場合、装置情報更新部45は、自装置の装置情報の固定ルート用テーブルを更新する。
【0123】
また、この場合、判定部49は、計数部41によってカウントされた装置情報の受信回数が所定回数(例えば10回)に達したか否かを判定する。判定部49が、装置情報の受信回数が所定回数に達したと判定する場合、装置情報更新部45は、上述したように、通信発生数、又は通信発生数及びオーバーヒアルート成功率を取得して、装置情報を更新する。
【0124】
破棄部51は、受信部23がACKを受信する場合、自装置に保持している通信データの送信(再送)を中止し、当該通信データを破棄する。
【0125】
[通信装置のハードウェア構成]
次に、通信装置10a~10hの各々のハードウェア構成について説明する。図8は、通信装置10a~10hの各々のハードウェア構成の一例を示すブロック構成図である。なお、通信装置10a~10hは、同じハードウェア構成を有するため、以下では、通信装置10aのハードウェア構成のみを説明し、通信装置10b~10hのハードウェア構成については説明を省略する。
【0126】
図8に示すように、通信装置10aは、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)103、RAM (Random Access Memory)105、ストレージ107、アンテナ109、送受信回路111、カウンタ113、及び外部インターフェース115を備える。
【0127】
CPU101は、ROM103に記憶されたプログラムを実行する。CPU101は、当該プログラムに従って、RAM105にロードされたデータを演算処理して、通信装置10aの各部を統括的に制御する。なお、CPUは、プロセッサーとも呼称される。
【0128】
ROM103は、CPU101が実行するプログラム等を記憶する。本実施形態では、ROM103は、少なくとも、後述する、通信経路の選定処理、送信処理、及び中継・受信処理を制御するためのプログラムを記憶する。RAM105は、CPU101がROM103に記憶されたプログラムを実行する際に、演算データを一時的に保持する。なお、ROM及びRAMは、それぞれ、不揮発性メモリ及び揮発性メモリとも呼称される。
【0129】
ストレージ107は、無線通信に必要な制御パラメータ、通信装置10a~10h(固定ルート内の通信装置)のアドレス、通信装置10a1、10a2、10b1、10d1、10g1(固定ルート外の通信装置)のアドレス、ルーティングテーブル、装置情報、カウンタ113によりカウントされた各種情報のカウント値などを記憶する。CPU101は、ROM103に記憶されたプログラムに従って、ストレージ107に対するデータの読み取り及び書き込みを制御する。なお、ストレージ107は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)であり、ストレージ107として、HDDとSSDとを併用してもよい。
【0130】
アンテナ109は、CPU101の制御により、無指向性の電波を放射する。送受信回路111は、CPU101の制御により、上述した、変調処理、復調処理などを行う。カウンタ113は、装置情報の受信回数、装置情報の送信回数、及びACKの受信回数をカウントする。
【0131】
外部インターフェース115は、外部機器200に接続されている。CPU101は、外部インターフェース115を介して、外部機器200とデータの送受信を行う。
【0132】
外部機器200は、自機器が接続された通信装置を用いて、他の通信装置に送信されるべきデータを生成する。外部機器200は、自機器が接続された通信装置によって受信されたデータを利用する。外部機器200は、例えば、車載センサ、車載カメラ、電子制御ユニット(ECU)などである。
【0133】
[通信データの中継手順]
次に、通信システム1における、通信データの中継手順の動作例について説明する。本動作例では、通信装置10a1において、通信データが生成されてから、通信装置10gに送信されるまでの、通信装置10a1、10a、10h、10gの動作を説明する。
【0134】
図11は、通信データの中継手順のシーケンスの一例を示す図である。図11に示すように、通信装置10a1は、自装置のルーティングテーブルを参照して、通信データを生成する(ステップS1)。具体的には、通信装置10a1は、フレームのヘッダー・フィールドの第1宛先アドレス及び第1送信元アドレスに、それぞれ、通信装置10gのアドレス及び通信装置10a1のアドレスを設定する。フレームのヘッダー・フィールドの第2宛先アドレス及び第2送信元アドレスに、それぞれ、通信装置10aのアドレス及び通信装置10a1のアドレスを設定する。通信データのヘッダー・フィールドのタイプには、通信データ用のフレームであることを示す情報が設定される。通信データのデータ・フィールドには、送信対象のデータが設定される。
【0135】
通信装置10a1は、第2宛先の通信装置に対応する通信装置10aに、通信データを送信する(ステップS3)。通信装置10aは、通信装置10a1から通信データを受信すると、当該通信データを受信したことを、通信装置10a1に通知するために、ACKを生成して、通信装置10a1に送信する(ステップS5)。
【0136】
通信装置10a1は、通信装置10aからACKを受信すると、自装置に保持している通信データの送信(再送)を中止し、当該通信データを破棄して、通信を終了する(ステップS7)。
【0137】
通信装置10aは、通信装置10a1にACKを送信すると、受信処理を行う(ステップS9)。通信装置10aは、受信処理の一部として、受信した通信データの通信経路の選定を行う。
【0138】
図12は、通信経路の選定処理のフローチャートの一例を示す図である。図12に示すように、通信装置10aにおいて、取得部33は、自装置のルーティングテーブルを参照して、自装置と通信装置10gとの間の通信経路を複数取得する(ステップS91)。本動作例では、取得部33は、通信装置10a,10b,10c,10d,10e,10f,10gの通信経路と、通信装置10a,10h,10gの通信経路とを取得する。
【0139】
取得部33が複数の通信経路を取得すると、算出部35は、各通信経路のホップ数と、当該通信経路に含まれる各通信装置の通信発生数及び通信成功率に基づいて、当該通信経路における通信遅延及び不安定性の程度を示す評価値の算出を行う(ステップS93)。具体的には、算出部35は、各通信経路に沿って、当該通信経路に含まれる各通信装置の通信発生数を合計した値を、ホップ数に加算することにより、第1の値を取得する。更に、算出部35は、当該通信経路における通信数の期待値を第1の値に乗算することにより、評価値として、第2の値を取得する。
【0140】
算出部35が評価値を算出すると、経路選定部37は、算出した評価値に基づいて、複数の通信経路のうち、評価値が最も低い通信経路を選定する(ステップS95)。本動作例では、通信装置10aは、通信装置10hを介して、通信装置10gに向かう通信経路を選定する。経路選定部37が通信経路を選定すると、生成部31及び設定部39は、自装置のルーティングテーブルを参照して、受信した通信データにおける、ヘッダー・フィールドの設定を行う(ステップS97)。具体的には、生成部31は、ヘッダー・フィールドの第2宛先アドレス及び第2送信元アドレスに、それぞれ、通信装置10hのアドレス及び自装置のアドレスを設定する。設定部39は、中継アドレスに、通信装置10hのアドレスを設定する。
【0141】
図11に戻り、通信装置10aは、第2宛先の通信装置に対応する通信装置10hに送信する(ステップS11)。通信装置10hは、通信装置10aから通信データを受信すると、当該通信データを受信したことを、通信装置10aに通知するために、ACKを生成して、通信装置10aに送信する(ステップS13)。
【0142】
通信装置10aは、通信装置10hからACKを受信すると、破棄部51は、自装置に保持している通信データの送信(再送)を中止し、当該通信データを破棄して、通信を終了する(ステップS15)。
【0143】
通信装置10hは、通信装置10aにACKを送信すると、受信処理を行う(ステップS17)。受信処理において、通信装置10hは、自装置のルーティングテーブルを参照して、受信した通信データにおける、ヘッダー・フィールドの変更を行う。具体的には、変更部47は、ヘッダー・フィールドの中継アドレスに基づいて、第2宛先アドレス及び第2送信元アドレスに、それぞれ、通信装置10gのアドレス及び自装置のアドレスを設定する。
【0144】
通信装置10hは、第2宛先の通信装置に対応する通信装置10gに送信する(ステップS19)。通信装置10gは、通信装置10hから通信データを受信すると、当該通信データを受信したことを、通信装置10hに通知するために、ACKを生成して、通信装置10hに送信する(ステップS23)。
【0145】
通信装置10hは、通信装置10gからACKを受信すると、破棄部51は、自装置に保持している通信データの送信(再送)を中止し、当該通信データを破棄して、通信を終了する(ステップS25)。
【0146】
通信装置10hは、通信装置10aにACKを送信すると、受信処理を行う(ステップS27)。受信処理において、通信装置10hは、受信した通信データにおける、ヘッダー・フィールドの第1宛先アドレスに自装置のアドレスが設定されていることを識別すると、通信データの通信を終了する(ステップS29)。
【0147】
[通信装置の動作]
次に、通信装置10a~10h、10a1、10a2、10b1、10d1、10g1の各々の動作について説明する。以下の説明では、通信装置10a~10h、10a1、10a2、10b1、10d1、10g1を、通信装置10と総称する。
【0148】
図13は、通信装置の動作フローチャートの一例を示す図である。図13に示すように、通信装置10は、起動後に、送信対象のデータが発生したか否かを判定する(ステップS101)。具体的には、通信装置10は、例えば、自装置に接続された外部機器(例えば、図8の外部機器200)から、他の通信装置10に送信されるべきデータを受信すると、送信対象のデータが発生したと判定する。
【0149】
通信装置10は、送信対象のデータが発生したと判定した場合、後述する送信処理を実行して(ステップS103)、動作を終了する。通信装置10は、送信対象のデータが発生していないと判定した場合、他の通信装置10からデータを受信したか否かを判定する(ステップS105)。
【0150】
通信装置10は、他の通信装置10からデータを受信したと判定した場合、後述する中継・受信処理を実行して(ステップS107)、動作を終了する。通信装置10は、他の通信装置10からデータを受信していないと判定した場合、動作を終了する。
【0151】
なお、通信装置10は、間欠的に、送信対象のデータが発生したか否かを判定して、上述した処理を繰り返す。
【0152】
[送信処理]
以下に、送信処理について説明する。本処理において、送信対象のデータは、上述した通信データである。なお、受信完了通知、ACK、ルーティングテーブルの情報、及び装置情報の送信については、説明を省略する。
【0153】
図14は、送信処理のフローチャートの一例を示す図である。図14に示すように、通信装置10は、送信対象のデータが発生すると、通信データ用のフレームを設定して、通信データを生成する(ステップS111)。通信装置10は、通信データを生成すると、自装置のルーティングテーブル及び装置情報を確認し(ステップS113)、自装置は固定ルート内の通信装置であるか否かを判定する(ステップS115)。
【0154】
通信装置10は、自装置が固定ルート内の通信装置ではないと判定した場合、自装置が直接通信可能に接続された固定ルート内の通信装置に、通信データを送信して(ステップS117)、送信処理を終了する。
【0155】
通信装置10は、自装置が固定ルート内の通信装置であると判定した場合、自装置は、通信データの第1宛先の通信装置に直接通信可能に接続されているか否かを判定する(ステップS119)。
【0156】
通信装置10は、自装置は、通信データの第1宛先の通信装置に直接通信可能に接続されていると判定した場合、当該第1宛先の通信装置に通信データを送信して(ステップS121)、送信処理を終了する。
【0157】
通信装置10は、自装置は、通信データの第1宛先の通信装置に直接通信可能に接続されていないと判定した場合、第1宛先の通信装置までの通信経路の選定を行う(ステップS123~S127)。なお、ステップS123~S127の処理は、図12のステップS91~S95の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0158】
通信装置10は、第1宛先の通信装置までの通信経路の選定を行うと、自装置のルーティングテーブルを参照して、通信データの第2宛先アドレス、第2送信元アドレス、及び中継アドレスを設定する。通信装置10は、通信経路内の1つ先の通信装置に通信データを送信して(ステップS129)、送信処理を終了する。
【0159】
[中継・受信処理]
次に、中継・受信処理について説明する。本処理において、他の通信装置10から受信するデータは、上述した通信データ、ルーティングテーブルの情報、及び装置情報である。なお、受信完了通知の中継・受信及びACKの受信については、説明を省略する。
【0160】
図15A及び図15Bは、中継・受信処理のフローチャートの一例を示す図である。図15Aに示すように、通信装置10は、他の通信装置10からデータを受信すると、受信したデータと、自装置のルーティングテーブル及び装置情報とを確認する(ステップS151、S153)。通信装置10は、受信したデータがルーティングテーブルの情報であるか否かを判定する(ステップS155)。
【0161】
通信装置10は、受信したデータがルーティングテーブルの情報であると判定した場合、ルーティングテーブルの更新を行って(ステップS157)、中継・受信処理を終了する。通信装置10は、受信したデータがルーティングテーブルの情報ではないと判定した場合、受信したデータが装置情報であるか否かを判定する(ステップS159)。
【0162】
通信装置10は、受信したデータが装置情報であると判定した場合、装置情報の受信は10回目の受信であるか否かを判定する(ステップS161)。通信装置10は、装置情報の受信が10回目の受信であると判定した場合、通信発生数、又は通信発生数及びオーバーヒアルート成功率を取得して、装置情報の更新を行って(ステップS163)、中継・受信処理を終了する。通信装置10は、装置情報の受信が10回目の受信ではないと判定した場合、装置情報内の固定ルート用テーブルの更新を行って、中継・受信処理を終了する。なお、通信装置10は、装置情報の受信が10回目の受信ではないと判定した場合、装置情報内の固定ルート用テーブルの更新を行わずに、中継・受信処理を終了してもよい。
【0163】
通信装置10は、受信したデータが装置情報ではないと判定した場合、受信したデータの第1宛先の通信装置は、自装置であるか否かを判定する(ステップS165)。通信装置10は、受信したデータの第1宛先の通信装置が自装置であると判定した場合、受信処理を行って(ステップS167)、中継・受信処理を終了する。
【0164】
図15Bに示すように、通信装置10は、受信したデータの第1宛先の通信装置が自装置ではないと判定した場合、自装置は、第1宛先の通信装置に直接通信可能に接続されているか否かを判定する(ステップS169)。通信装置10は、自装置が、第1宛先の通信装置に直接通信可能に接続されていると判定した場合、当該第1宛先の通信装置にデータを送信して(ステップS171)、中継・受信処理を終了する。
【0165】
通信装置10は、自装置が、第1宛先の通信装置に直接通信可能に接続されていないと判定した場合、受信したデータは、固定ルート外の通信装置から送信されたか否かを判定する。通信装置10は、受信したデータは、固定ルート外の通信装置から送信された判定した場合、第1宛先の通信装置までの通信経路の選定を行う(ステップS175~S179)。なお、ステップS175~S179の処理は、図12のステップS91~S95の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0166】
通信装置10は、第1宛先の通信装置までの通信経路の選定を行うと、自装置のルーティングテーブルを参照して、受信したデータの第2宛先アドレス、第2送信元アドレス、及び中継アドレスを設定する。通信装置10は、通信経路内の1つ先の通信装置に通信データを送信して(ステップS181)、中継・受信処理を終了する。
【0167】
通信装置10は、受信したデータは、固定ルート外の通信装置から送信されていないと判定した場合、自装置のルーティングテーブルを参照して、受信したデータの中継アドレスに基づいて、受信したデータの第2宛先アドレス、及び第2送信元アドレスを変更する。通信装置10は、受信したデータの第2宛先アドレス、及び第2送信元アドレスを変更すると、通信経路内の1つ先の通信装置に通信データを送信して(ステップS181)、中継・受信処理を終了する。
【0168】
[作用・効果]
本実施形態によれば、通信装置(例えば、通信装置10a)は、アドホックネットワークにおいて、リング状の固定ルートを形成する複数の通信装置に含まれて、送信部21、取得部33、算出部35、経路選定部37、及び設定部39を備える。
【0169】
取得部33は、自装置(例えば、通信装置10a)と、通信データの宛先となる固定ルート内又は前記固定ルート外の通信装置(例えば、通信装置10e)との間の通信経路を複数取得する。算出部35は、取得した各通信経路における通信遅延及び不安定性の程度を示す評価値を算出する。経路選定部37は、算出した評価値に基づいて、複数の通信経路のうち、評価値が最も低い通信経路を選定する。送信部21は、通信経路内で自装置に隣接する通信装置(例えば、通信装置10h)に通信データを送信して、通信経路内の各通信装置に通信データを中継させる。
【0170】
このような構成により、通信装置は、取得した複数の通信経路の各々に対して、通信遅延及び不安定性の程度を示す評価値を算出して、複数の通信経路のうち、評価値が最も低い通信経路を選定する。これにより、通信装置は、通信遅延及び不安定性の程度が最も低い通信経路を利用して、宛先の通信装置に通信データを送信することができる。
【0171】
また、本実施形態によれば、設定部39は、選定した通信経路にオーバーヒアルートが含まれる場合、少なくとも、オーバーヒアルートを利用する通信経路内の通信装置を識別する情報を、通信データに設定する。
【0172】
このような構成により、通信経路内の各通信装置は、当該情報を参照して、自装置がオーバーヒアルートを利用する通信装置であるか否かを識別することができる。これにより、通信装置は、選定した通信経路にオーバーヒアルートが含まれる場合、通信データの通信経路として、オーバーヒアルートを利用して、固定ルート内の中継経路を短縮することができる。
【0173】
したがって、通信の安定性を確保しつつ、通信遅延を効果的に削減することが可能な通信装置を提供することができる。
【0174】
本実施形態によれば、算出部35は、通信経路のホップ数と、通信経路に含まれる各通信装置の通信発生数及び通信成功率とに基づいて、評価値を算出する。ホップ数は、通信経路内で通信装置間の通信が行われる回数である。通信発生数は、通信経路に含まれる各通信装置が、規定期間内に通信を行った回数である。通信成功率は、通信経路に含まれる各通信装置が、規定期間内に、通信経路内で隣接する通信装置との間で通信が成功した割合である。
【0175】
上述したように、ホップ数及び通信発生数は、通信遅延の程度を表しており、通信成功率は、通信の不安定性の程度を表している。したがって、このような構成により、算出部35は、各通信経路の通信遅延及び不安定性の程度を適切に算出することができる。
【0176】
本実施形態によれば、算出部35は、通信経路に沿って、各通信装置の通信発生数を合計した値を、ホップ数に加算することにより、第1の値を取得する。算出部35は、第1の値に通信数の期待値を乗算することにより、前記評価値として、第2の値を取得する。通信数の期待値は、通信経路に沿って、各通信装置の通信成功率を乗算した値の逆数で表される。
【0177】
上述したように、通信経路に沿って各通信装置の通信成功率を乗算した値の逆数は、通信経路における通信数の期待値を表している。通信数の期待値が大きいほど、通信データの再送が行われる可能性が高い。したがって、このような構成により、評価値が低いほど、通信遅延及び不安定性の程度が低くなる。このため、経路選定部37は、複数の通信経路のうち、評価値が最も低い通信経路を選定することにより、通信遅延及び不安定性の程度が最も低い通信経路を適切に選定することができる。
【0178】
本実施形態によれば、設定部39は、選定した通信経路内の各通信装置を識別する情報を、通信データを中継する順番に、通信データに設定する。
【0179】
このような構成により、通信経路内の各通信装置は、当該情報を参照することにより、通信データの中継先となる次の通信装置を適切に識別することができる。
【0180】
本実施形態によれば、通信装置(例えば、通信装置10a)は、固定ルート内の各通信装置の通信発生数及び通信成功率を含む装置情報を記憶する記憶部29を更に備える。通信発生数は、固定ルート内の各通信装置が、規定期間内に通信を行った回数である。通信成功率は、固定ルート内の各通信装置が、規定期間内に、固定ルート又はオーバーヒアルートを介して隣接する通信装置との間で通信が成功した割合である。算出部35は、装置情報を参照して、評価値を算出する。
【0181】
このような構成により、算出部35は、記憶部29に記憶された装置情報を参照することにより、各通信経路の通信遅延及び不安定性の程度を簡易に算出することができる。
【0182】
本実施形態によれば、通信装置(例えば、通信装置10a)は、受信部23及び装置情報更新部45を更に備える。受信部23は、固定ルート又はオーバーヒアルートを介して自装置に隣接する通信装置(例えば、通信装置10b又は通信装置10c)から、隣接する通信装置が有する装置情報を定期的に受信する。装置情報更新部45は、受信した装置情報に含まれる、固定ルート内の他の通信装置の通信発生数及び通信成功率に基づいて、記憶部29に記憶した装置情報に含まれる、固定ルート内の他の通信装置の通信発生数及び通信成功率を更新する。
【0183】
このような構成により、記憶部29に記憶された装置情報に含まれる、固定ルート内の他の通信装置の通信発生数及び通信成功率は、隣接する通信装置が有する装置情報に基づいて、定期的に更新される。このため、算出部35は、最新のネットワークの状態を反映した、各通信経路の通信遅延及び不安定性の程度を算出することができる。
【0184】
本実施形態によれば、装置情報更新部45は、規定期間毎に、自装置(例えば、通信装置10a)の通信発生数及び通信成功率を取得して、記憶部29に記憶した装置情報に含まれる、自装置の通信発生数及び通信成功率を更新する。
【0185】
このような構成により、記憶部29に記憶された装置情報に含まれる、自装置の通信発生数及び通信成功率は、規定期間毎に更新される。このため、算出部35は、最新のネットワークの状態を反映した、各通信経路の通信遅延及び不安定性の程度を算出することができる。
【0186】
本実施形態によれば、送信部21は、記憶部29に記憶した装置情報を、隣接する通信装置(例えば、通信装置10c)に定期的に送信する。装置情報更新部45は、規定期間毎に、自装置が、隣接する通信装置との間で、装置情報の送信に成功した割合を、通信成功率として取得する。
【0187】
このような構成により、装置情報更新部45は、自装置と隣接する通信装置との間で行われる装置情報の交換を利用して、通信成功率を簡易に取得することができる。
【0188】
本実施形態によれば、通信システム1は、アドホックネットワークにおいて、リング状の固定ルートを形成する複数の通信装置10a~10hに含まれる第1通信装置(例えば、通信装置10a)と、通信データの宛先となる、固定ルート内又は固定ルート外の第2通信装置(例えば、通信装置10e)と、を備える。第1通信装置は、上述した送信部21、取得部33、算出部35、経路選定部37、及び設定部39を備える。
【0189】
このような構成により、第1通信装置は、取得した複数の通信経路の各々に対して、通信遅延及び不安定性の程度を示す評価値を算出して、複数の通信経路のうち、評価値が最も低い通信経路を選定する。これにより、第1通信装置は、通信遅延及び不安定性の程度が最も低い通信経路を利用して、宛先の第2通信装置に通信データを送信することができる。
【0190】
また、通信経路内の各通信装置は、当該情報を参照して、自装置がオーバーヒアルートを利用する通信装置であるか否かを識別することができる。これにより、通信装置は、選定した通信経路にオーバーヒアルートが含まれる場合、通信データの通信経路として、オーバーヒアルートを利用して、固定ルート内の中継経路を短縮することができる。
【0191】
したがって、通信の安定性を確保しつつ、通信遅延を効果的に削減することが可能な通信システムを提供することができる。
【0192】
[変形例]
上述した実施形態では、算出部35は、通信経路のホップ数と、通信経路に含まれる各通信装置の通信発生数及び通信成功率とに基づいて、各通信経路の評価値を算出したが、これに限定されない。例えば、算出部35は、通信経路における第1宛先の通信装置までの通信距離に基づいて、各通信経路の評価値を算出してもよい。
【0193】
一般的に、通信距離が長いほど、遅延が生じやすいと想定される。このため、通信距離は、通信遅延の程度を表している。また、通信距離が長いほど、ノイズなどにより、信号波形の歪みが生じやすいと想定される。このため、通信距離は、通信の不安定性の程度を表している。したがって、算出部35は、通信経路における第1宛先の通信装置までの通信距離に基づいて、各通信経路の評価値を算出することによっても、各通信経路の通信遅延及び不安定性の程度を算出することができる。
【0194】
上述した実施形態では、固定ルート外の通信装置が、第1送信元の通信装置である場合、当該固定ルート外の通信装置に直接通信可能に接続されている固定ルート内の通信装置が、通信経路の選定を行っていたが、これに限定されない。例えば、各固定ルート外の通信装置に経路情報を記憶させて、固定ルート外の通信装置が、第1送信元の通信装置である場合であっても、当該固定ルート外の通信装置が、通信経路の選定を行ってもよい。
【0195】
上述した実施形態では、装置情報更新部45は、装置情報の受信回数が所定回数(例えば10回)に達すると、装置情報の自装置用テーブルを更新したが、これに限定されない。例えば、装置情報更新部45は、隣接する通信装置から、装置情報を受信する度に、装置情報の自装置用テーブルを更新してもよい。
【0196】
上述した実施形態では、通信の期待値は、通信経路に沿って各通信装置の通信成功率を乗算した値の逆数で表されたが、これに限定されない。通信の期待値は、別の方法で算出された値であってもよい。
【0197】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0198】
1 通信システム
10a~10h 通信装置
21 送信部
23 受信部
29 記憶部
33 取得部
35 算出部
37 経路選定部
39 設定部
45 装置情報更新部
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図13
図14
図15A
図15B