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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126108
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】バスパネル用接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20240912BHJP
   C09J 129/04 20060101ALI20240912BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J129/04
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034281
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】露原 慎也
(72)【発明者】
【氏名】中原 大貴
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DD021
4J040DF031
4J040JA03
4J040JB09
4J040KA38
4J040LA06
4J040MA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バスパネルに用いられる、複合材料(塗装鋼板/石膏ボード)用の接着剤組成物であって、複合材料を貼り合わせる際は、優れた作業性を示し、貼り合わせた後の乾燥後は、優れた耐久性を示す接着剤組成物を得ることである。
【解決手段】固形分が20~80質量%であり、ポリマーTg(ガラス転移温度)が0℃以下のアクリルエマルジョン(a1)を10~90質量部と、固形分が20~80質量%であり、ポリマーTgが20℃以上のアクリルエマルジョン(a2)を10~90質量部と、を含むアクリルエマルジョン(A)100質量部に対し、けん化度が95%以上のアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール(B)を0.05~20質量部、アニオン系の界面活性剤(C)を固形分換算で0.05~10質量部含む接着剤組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分が20~80質量%であり、ポリマーTg(ガラス転移温度)が0℃以下のアクリルエマルジョン(a1)を10~90質量部と、
固形分が20~80質量%であり、ポリマーTgが20℃以上のアクリルエマルジョン(a2)を10~90質量部と、
を含むアクリルエマルジョン(A)100質量部に対し、
けん化度が95%以上のアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール(B)を0.05~20質量部、
アニオン系の界面活性剤(C)を固形分換算で0.05~10質量部含む接着剤組成物。
【請求項2】
バスパネルに用いられる、複合材料用の接着剤組成物である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バスパネルに用いられる、複合材料(塗装鋼板/石膏ボード)用の接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室にて、外部との隔壁として、複合材料であるバスパネルが用いられる場合がある。
【0003】
複合材料を貼り合わせる接着剤としては、アクリルエマルジョン系の接着剤がしばしば用いられる。
【0004】
複合材料を貼り合わせる際は、優れた作業性を示し、貼り合わせた後の乾燥後は、優れた耐久性を示す接着剤組成物が求められている。
【0005】
複合材料を貼り合わせる際は、ロールコーター等の塗布装置が用いられるが、エマルジョン系の接着剤固形分が水分と分離等を起こしてしまうと増粘してしまい、上手く貼り合わせることができない。また、貼り合わせた後の乾燥後は、高温、高湿環境にさらされるので、その様な環境でも剥がれが発生しないような接着剤組成物が求められている。
特許文献1は、記録感度と記録走行性に優れ、且つ流通管理用途に適した感熱記録用粘着シートに関する公報であり、この組成物をバスパネルとして用いられる複合材料の接着剤組成物として用いるには改善の余地が有った。水性エマルジョン-イソシアネート系化合物またはイソシアネート系重合物の使用時間を大幅に延長することができる水性エマルジョン-イソシアネート系化合物またはイソシアネート系重合物の使用時間を大幅に延長することができる水性エマルジョン-イソシアネート系化合物またはイソシアネート系重合物の使用時間を大幅に延長することができる
特許文献2は、芯材と表面材とをフッラシュ接着やVカット接着して製造する扉やパネル、あるいは複数枚のラミナを接着して製造する集成材等の木材加工産業等に使用される2液塗布型の速硬化接着剤とその製造方法及びその接着方法に関する公報であり、特許文献1同様、この組成物をバスパネルとして用いられる複合材料の接着剤組成物として用いるには改善の余地が有った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-181200
【特許文献2】特開2002-220575
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バスパネルに用いられる、複合材料用の接着剤組成物であって、複合材料を貼り合わせる際は、優れた作業性を示し、貼り合わせた後の乾燥後は、優れた耐久性を示す接着剤組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
固形分が20~80質量%であり、ポリマーTg(ガラス転移温度)が0℃以下のアクリルエマルジョン(a1)を10~90質量部と、
固形分が20~80質量%であり、ポリマーTgが20℃以上のアクリルエマルジョン(a2)を10~90質量部と、
を含むアクリルエマルジョン(A)100質量部に対し、
けん化度が95%以上のアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール(B)を0.05~20質量部、
アニオン系の界面活性剤(C)を固形分換算で0.05~10質量部含む接着剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
バスパネルに用いられる、複合材料用の接着剤組成物であって、複合材料を貼り合わせる際は、優れた作業性を示し、貼り合わせた後の乾燥後は、優れた耐久性を示す接着剤組成物であるので、快適な住環境を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
アクリルエマルジョン(A)は、固形分が20~80質量%であり、ポリマーTgが0℃以下のアクリルエマルジョン(a1)と、固形分が20~80質量%であり、ポリマーTgが20℃以上のアクリルエマルジョン(a2)を含む。
【0012】
ポリマーTgは、下記Foxの式より求められる計算Tgである。
【0013】
1/(Tg(K))=Σ(Mi/Tgi)
(式中、Miは重合体を構成する単量体i成分の質量分率、Tgiは単量体iのホモポリマーのガラス転移温度(K)を表す。)。
【0014】
ポリマーTgが0℃以下のアクリルエマルジョン(a1)の固形分は、20~80質量%、より好適には35~65質量%である。ポリマーTgが20℃以上のアクリルエマルジョン(a2)の固形分も同様に20~80質量%、より好適には35~65質量%である。
【0015】
ポリマーTgが0℃以下のアクリルエマルジョン(a1)と、ポリマーTgが20℃以上のアクリルエマルジョン(a2)の添加量は、アクリルエマルジョン(A)100質量部に対し、ポリマーTgが0℃以下のアクリルエマルジョン(a1)が10~90質量部、ポリマーTgが20℃以上のアクリルエマルジョン(a2)が10~90質量部である。
【0016】
固形分が20~80質量%であり、ポリマーTgが0℃以下のアクリルエマルジョン(a1)としては、アイカ工業社より製品名:UL-2606(ポリマーTg:-42℃、固形分:50%)、ポリマーTgが20℃以上のアクリルエマルジョン(a2)としては、アイカ工業社より製品名:A-25K(ポリマーTg:47℃、固形分:48%)が市販されている。
【0017】
けん化度が95%以上のアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール(B)の添加量としては、アクリルエマルジョン(A)100質量部に対し0.05~20質量部、より好適には0.1~15質量部である。
【0018】
けん化度が95%以上のアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール(B)は、三菱ケミカル社より製品名:ゴーセネックスZ-200(けん化度:99%以上)が市販されている。
【0019】
けん化度が95%以上のアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール(B)を添加する場合は、水に溶解させて添加することができる。水の量は、けん化度が95%以上のアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール(B)の約4倍である。
【0020】
アニオン系の界面活性剤(C)の添加量は、アクリルエマルジョン(A)100質量部に対し固形分換算で0.05~10質量部、より好適には0.1~5質量部である。
【0021】
アニオン系の界面活性剤(C)は、花王社より製品名:エマール2F30(固形分:30%)、製品名:ラテムルAD-25(固形分:24%)、製品名:ぺレックスOPT(固形分:70%)、製品名:ネオぺレックスG-15(固形分:16%)が市販されている。
【0022】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお、部数は全て質量部である。
【実施例0023】
<実施例1の接着剤組成物の作製>
UL-2606(a1)を50g、A-25K(a2)を50g秤取り、均一になるまで攪拌し、アクリルエマルジョン(A)を得た。これとは別に、ゴーセネックスZ-200を1.25g、5gの水に溶解させた。これと、エマール2F30を0.84g(固形分:0.25g)とを、先に作製しておいたアクリルエマルジョン(A)に添加し、均一になるまで攪拌した。
<実施例2~7、比較例1~6の接着剤組成物の作製>
実施例1の接着剤組成物の作製と同様の方法で、表1、表2に示した割合で、実施例2~7、比較例1~6の接着剤組成物を作製した。
【0024】
尚、比較例1~6にて使用しているULD-1は、アイカ工業社製のポリマーTgが15℃のアクリルエマルジョン(固形分:48%)、ゴーセネックスZ-320は、三菱ケミカル社製のけん化度が92~94%のアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール、エマルゲン120、エマルゲン1108は、花王社製のノニオン系界面活性剤であり、何れも固形分は100%である。尚、エマルゲン1108は液体製品であるが、便宜上固形分と表現している。
【0025】
また、界面活性剤は、各種の濃度が違い、添加し易くするため希釈率を変更しているので、表1、表2では固形分のみを示している。
<ロールコーター作業性>
杉井鉄工所社製、製品名:MTH-45/S、2本ロールコーターを用いて試験を行った。1本のロールはSUS製で、サイズは150φ×450mm、もう1本のロールはEPTゴム製で、サイズは、233φ×450mmである。
【0026】
2本のロールを接するように配置し、組成物1.5kgを載せて、2本のロールを互いが接している部分にロールが上から下へ向かうように回転させた。尚、回転速度は30m/分である。
【0027】
1時間稼働し、初期粘度から3倍未満の粘度の場合(:○)、3倍以上の粘度を不合格(:×)とした。
【0028】
尚、粘度測定は、東機産業社製のBH型粘度計、No.3ローター、10rpm、1分値(測定温度は20±2℃)を測定した。
<高温高湿クリープ性>
45mm×85mm×9mm厚の石膏ボードと、25mm×100mm×0.5mm厚の塗装鋼板を準備した。塗装鋼板の端部から50mmの位置に、12mm幅の養生テープの端部を貼り付けた。これは、のちほど行なうクリープ試験にて、石膏ボードに回り込んだ組成物の影響を受けなくするためである。
【0029】
5℃雰囲気下、石膏ボードに塗布量が60g/mに成るように、組成物をバーコーターにて塗布した。30秒静置した後、塗装鋼板を養生テープの端部(50mmの位置に合わせた反対側の辺)と石膏ボードの短辺側の端部を重ね合わせ、6.5kPaにて10秒間圧諦し、24時間静置した。接着面積は25mm×50mmである。
【0030】
この試験片の塗装鋼板の端部に、200gの重りを吊るし、石膏ボードの接着されていない部分を水平に固定する。この試験片を60℃/95%RH環境下に投入する。
【0031】
判定基準は、60分間保持できた場合を合格(:○)、60分間保持できなかった場合を不合格(:×)とした。結果を表3、表4に示す。
【0032】
固形分が20~80質量%であり、ポリマーTg(ガラス転移温度)が0℃以下のアクリルエマルジョン(a1)を10~90質量部と、固形分が20~80質量%であり、ポリマーTgが20℃以上のアクリルエマルジョン(a2)を10~90質量部と、を含むアクリルエマルジョン(A)100質量部に対し、けん化度が95%以上のアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール(B)を0.05~20質量部、アニオン系の界面活性剤(C)を固形分換算で0.05~10質量部含む接着剤組成物である実施例1~10は、ロールコーター作業性、高温高湿クリープ性、何れも合格となった。
【0033】
ポリマーTg:-42℃であるUL-2606とポリマーTgが15℃のULD-1を使用した比較例1、ポリマーTgが20℃以上であるA-25KとポリマーTgが15℃のULD-1を使用した比較例2は、ロールコーター作業性は合格となったが、高温高湿クリープ性は不合格となった。
【0034】
けん化度が92~94%のアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコールであるゴーセネックスZ-320を使用した比較例3は、ロールコーター作業性は合格となったが、高温高湿クリープ性は不合格となった。また、アニオン系界面活性剤であるエマール2F30を添加していない比較例4は、ロールコーター作業性は不合格となり、高温高湿クリープ性は合格であった。
【0035】
ノニオン系界面活性剤であるエマルゲン120、エマルゲン1108を使用した比較例5、比較例6は、ロールコーター作業性が不合格となり、高温高湿クリープ性は確認しなかった。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
アニオン系の界面活性剤(C)の添加量は、アクリルエマルジョン(A)100質量部に対し固形分換算で0.05~10質量部、より好適には0.1~5質量部である。
アニオン系の界面活性剤(C)は、花王社より製品名:エマール2F30(固形分:30%)、製品名:ラテムルAD-25(固形分:24%)、製品名:ぺレックスOT-P(固形分:70%)、製品名:ネオぺレックスG-15(固形分:16%)が市販されている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
<実施例1の接着剤組成物の作製>
UL-2606(a1)を50g、A-25K(a2)を50g秤取り、均一になるまで攪拌し、アクリルエマルジョン(A)を得た。これとは別に、ゴーセネックスZ-200を1.25g、5gの水に溶解させた。これと、エマール2F30を0.84g(固形分:0.25g)とを、先に作製しておいたアクリルエマルジョン(A)に添加し、均一になるまで攪拌した。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
けん化度が92~94%のアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコールであるゴーセネックスZ-320を使用した比較例3は、ロールコーター作業性は合格となったが、高温高湿クリープ性は不合格となった。また、アニオン系界面活性剤であるエマール2F30を添加していない比較例4は、ロールコーター作業性は不合格となり、高温高湿クリープ性は合格であった。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
【表1】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
【表2】