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特開2024-126110内圧開放機構を有する包装体及び容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126110
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】内圧開放機構を有する包装体及び容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034284
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 利房
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA08
3E013BB06
3E013BC11
3E013BC14
3E013BE01
3E013BF04
3E013BF22
3E013BF36
3E013BF37
(57)【要約】
【課題】ヒートシール位置の制御の必要がないと共に、ヒートシールに際して効率よく樹脂溜まりを形成し、この樹脂溜まりを利用することにより、電子レンジ加熱により確実に内圧を開放可能な内圧開放部を備えた包装袋を提供する。
【解決手段】開口部の周縁にフランジ部を有し、少なくとも該フランジ部の上面には蓋材と接合可能であり且つ容器を構成する基材に対して易剥離性を有する表面シール層が形成された容器と、前記フランジ部の表面シール層と接合して容器を密封する蓋材とから成る包装体において、前記フランジ部には、蓋材との接合位置より内周側に、該接合位置よりも容器軸方向下方に側壁部を介して内側段差部が形成されており、前記フランジ部において、前記接合位置の内周縁から突出し前記側壁部の上端に位置する前記表面シール層を構成する樹脂を含む樹脂溜まりを備えた内圧開放部を備えていることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の周縁にフランジ部を有し、少なくとも該フランジ部の上面には蓋材と接合可能であり且つ容器を構成する基材に対して易剥離性を有する表面シール層が形成された容器と、前記フランジ部の表面シール層と接合して容器を密封する蓋材とから成る包装体において、
前記フランジ部には、蓋材との接合位置より内周側に、該接合位置よりも容器軸方向下方に側壁部を介して内側段差部が形成されており、
前記フランジ部において、前記接合位置の内周縁から突出し前記側壁部の上端に位置する前記表面シール層を構成する樹脂を含む樹脂溜まりを備えた内圧開放部を備えていることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記内圧開放部における接合位置の内周縁に、前記樹脂溜まりの外周側に開封開始箇所となる薄肉の表面シール層を有している請求項1記載の包装体。
【請求項3】
前記内圧開放部における側壁部が、前記樹脂溜まりの下方に開封開始箇所となる薄肉の表面シール層を有している請求項1記載の包装体。
【請求項4】
前記内圧開放部における側壁部が、容器軸方向に延びる略垂直面である請求項1~3の何れかに記載の包装体。
【請求項5】
前記側壁部の下端且つ容器径方向内方に、薄肉の表面シール層が形成されているか又は表面シール層が形成されていない箇所を有する請求項1~3の何れかに記載の包装体。
【請求項6】
前記内圧開放部が、フランジ部の複数個所に形成されている請求項1~3の何れかに記載の包装体。
【請求項7】
電子レンジ加熱用である請求項1~3の何れかに記載の包装体。
【請求項8】
開口部の周縁にフランジ部を有し、少なくとも該フランジ部の上面には蓋材と接合可能な表面シール層を有する容器において、
前記フランジ部の上面には、蓋材との接合位置となる環状接合部が形成されており、
前記環状接合部には、該環状接合部の上面の高さが容器径方向において中央部分よりも内周側が高い、内圧開放予定部が形成されていることを特徴とする容器。
【請求項9】
前記内圧開放予定部が形成されている箇所以外の環状接合部においては、該環状接合部の上面の高さが、容器径方向において中央部分よりも内周側が低い請求項8記載の容器。
【請求項10】
前記フランジ部には、前記環状接合部の内周よりも容器径方向内方且つ該環状接合部の容器軸方向位置よりも下方に位置する段差部を有する請求項8又は9記載の容器。
【請求項11】
前記フランジ部において、前記内圧開放予定部が形成される箇所の環状接合部が、他の環状接合部に比して容器径方向内方側に形成されている請求項8又は9記載の容器。
【請求項12】
前記内圧開放予定部が、フランジ部の複数個所に形成されている請求項8又は9記載の容器。
【請求項13】
電子レンジ加熱用である請求項8又は9記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ部を有する容器及び該フランジ部にヒートシールにより密閉可能に取り付けられる蓋材から成る包装体に関するものであり、より詳細には、電子レンジ加熱によって内圧が上昇したときに自動で内圧開放部を形成可能な易開封性包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性のある蓋材をフランジ部にヒートシールすることにより密封して成る樹脂製容器は、高い密封性と容易に開封できる易開封性を兼ね備え、飲食品用の簡易な包装体として広く使用されている。
このような易開封性を有する包装体においても、喫食に際して電子レンジにより加熱して内容物を温めることが望まれており、電子レンジ加熱の際に容器内圧上昇による包装体の破裂を避けるために、従来は蓋材を部分的に剥離すること、或いは包装体に穴をあけることにより、予め蒸気抜き口を形成した後、電子レンジ加熱を行うものが広く使用されていた。しかしながら、このような方法は、消費者にとって煩雑であることから、蓋材の剥離等を行うことなく電子レンジ加熱できることが望まれている。また電子レンジ加熱調理の際に、包装体内の内圧を上昇させた状態で一定時間維持することにより蒸らし効果が得られるが、予め蒸気抜き口を形成してしまうとこのような蒸らし効果を充分得ることができない。
【0003】
このような問題を解決する包装体容器として、例えば下記特許文献1には、フランジ部に蓋体をヒートシールして密封した電子レンジ調理用包装体において、ヒートシール部に容器の内側方向に向けて突出する突出部及び該突出部に対向する位置に容器外側方向に向けて突出する開封部を形成するとともに、突出部先端近傍及び開封部を除くヒートシール部の内縁全周に樹脂溜まりを設け、該樹脂溜まり部のシール強度を15~70N/15mmとしたことを特徴とする電子レンジ調理用包装体が提案されている。
【0004】
また下記特許文献2には、フランジ部でヒートシールされるフィルム状の蓋材を備えた電子レンジ用包装容器であって、前記フランジ部でヒートシールされるヒートシール部と、前記フランジ部であって前記ヒートシール部の内縁より前記容器本体の内方に設けられた環状の切り込み部と、この環状の切り込み部に設けられ、前記環状の切り込み部と前記ヒートシール部の内縁との距離が前記環状の切り込み部の一部において前記環状の切り込み部の他部より小さい易剥離部と、を備え、前記電子レンジ用包装容器の内圧の上昇により、前記易剥離部が剥離をして蒸気排出口を形成するように、前記易剥離部の剥離力を前記ヒートシール部の剥離力より小とし、電子レンジでの加熱により前記易剥離部が剥離をして前記蒸気排出口を形成し、前記蒸気排出口を形成した後、前記ヒートシール部を前記蓋材側に残して、前記蓋材を前記容器本体から剥離させることを特徴とする電子レンジ用包装容器の開封方法が提案されている。
【0005】
さらに下記特許文献3には、 隣接する第1容器層および第2容器層を含む多層構造で形成された容器本体のフランジ部に蓋体をヒートシール部によって熱接着して構成され、加熱時に前記第1容器層および前記第2容器層の間に形成される蒸気通路を通じて内容物収容部内の蒸気を排出するレンジ用容器であって、前記フランジ部には、前記第1容器層および前記第2容器層の間の境界であって、少なくとも加熱時に前記内容物収容部に露出する境界露出部が形成され、前記ヒートシール部は、上方から平面視した場合に前記内容物収容部を囲むように形成された環状シール部と、前記環状シール部の内周縁から内周側に突出した異形シール部と、フランジ周方向において前記異形シール部の両側にそれぞれ形成された制御シール部とを有し、前記異形シール部は、上方から平面視した場合に、その内周縁が前記境界露出部に達してまたは近接して形成され、前記制御シール部は、前記フランジ部に前記蓋体を熱接着していない未シール部を挟んで、前記異形シール部にフランジ周方向に対向していることを特徴とするレンジ用容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4539266号公報
【特許文献2】特許第4242872号公報
【特許文献3】特許第6693006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1においては、ヒートシール部の内周に樹脂溜まりを形成し、樹脂溜まりが形成されている箇所とそれ以外の箇所における容器フランジ部と蓋材のヒートシール強度を制御することにより、樹脂溜まりが形成されていない箇所を蒸気排出口及び開封部としていることから、ヒートシールに際して精度の高い位置制御が必要であると共に、樹脂溜まりの有無の制御も困難であるという問題がある。
また上記特許文献2においては、ヒートシール位置よりも内方に環状の切込み部を設け、環状の切り込み部とヒートシール部の内縁との距離が環状の切り込み部の一部において環状の切り込み部の他部より小さい易剥離部を備えており、この易剥離部に内圧を応力集中させることによって蒸気排出口を形成するものであることから、ヒートシール位置と環状の切込み部を高い精度で制御する必要があり、位置ずれが発生すると蒸気抜き機能が発現されないおそれがある。
さらに上記特許文献3においては、境界露出部に達してまたは近接して形成された異形シール部から蒸気通路を形成するものであることから、やはりシール位置を高い精度で制御する必要があり、位置ずれが発生すると蒸気抜き機能が発現されないおそれがある。
【0008】
従って本発明の目的は、ヒートシール位置の制御の必要がないと共に、ヒートシールに際して効率よく樹脂溜まりを形成することが可能であり、この樹脂溜まりを利用することにより、電子レンジ加熱により確実に内圧を開放可能な内圧開放部を備えた包装袋を提供することである。
本発明の他の目的は、ヒートシールに際して、内圧開放部となる箇所に確実に内圧開放を可能とする樹脂溜まりを容易に形成可能な容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、開口部の周縁にフランジ部を有し、少なくとも該フランジ部の上面には蓋材と接合可能であり且つ容器を構成する基材に対して易剥離性を有する表面シール層が形成された容器と、前記フランジ部の表面シール層と接合して容器を密封する蓋材とから成る包装体において、前記フランジ部には、蓋材との接合位置より内周側に、該接合位置よりも容器軸方向下方に側壁部を介して内側段差部が形成されており、前記フランジ部において、前記接合位置の内周縁から突出し前記側壁部の上端に位置する前記表面シール層を構成する樹脂を含む樹脂溜まりを備えた内圧開放部を備えていることを特徴とする包装体が提供される。
【0010】
本発明の包装体においては、
(1)前記内圧開放部における接合位置の内周縁に、前記樹脂溜まりの外周側に開封開始箇所となる薄肉の表面シール層を有していること、
(2)前記内圧開放部における側壁部が、前記樹脂溜まりの下方に開封開始箇所となる薄肉の表面シール層を有していること、
(3)前記内圧開放部における側壁部が、容器軸方向に延びる略垂直面であること、
(4)前記側壁部の下端且つ容器径方向内方に、薄肉の表面シール層が形成されているか又は表面シール層が形成されていない箇所を有すること、
(5)前記内圧開放部が、フランジ部の複数個所に形成されていること、
(6)電子レンジ加熱用であること、
が好適である。
【0011】
本発明によればまた、開口部の周縁にフランジ部を有し、少なくとも該フランジ部の上面には蓋材と接合可能な表面シール層を有する容器において、前記フランジ部の上面には、蓋材との接合位置となる環状接合部が形成されており、前記環状接合部には、該環状接合部の上面の高さが容器径方向において中央部分よりも内周側が高い、内圧開放予定部が形成されていることを特徴とする容器が提供される。
【0012】
本発明の容器においては、
(1)前記内圧開放予定部が形成されている箇所以外の環状接合部においては、該環状接合部の上面の高さが、容器径方向において中央部分よりも内周側が低いこと、
(2)前記フランジ部には、前記環状接合部の内周よりも容器径方向内方且つ該環状接合部の容器軸方向位置よりも下方に位置する段差部を有すること、
(3)前記フランジ部において、前記内圧開放予定部が形成される箇所の環状接合部が、他の環状接合部に比して容器径方向内方側に形成されていること、
(4)前記内圧開放予定部が、フランジ部の複数個所に形成されていること、
(5)電子レンジ加熱用であること、
が好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の包装体においては、電子レンジ加熱の際の内圧開放部が、フランジ部における接合位置の内周縁から突出し内側段差部の側壁部の上端に位置し、表面シール層を構成する樹脂を含む樹脂溜まりを備えていることにより、包装体内の内圧が上昇すると、樹脂溜まりにおける蓋材シール層と表面シール層の界面に効率よく内圧が応力集中し、その結果、蓋シール層と表面シール層の間に内圧開放のための通路が形成され、容易且つ確実に内圧を開放することが可能となる。
また内圧開放部が、フランジ部の複数個所に形成されることにより、電子レンジ加熱の際に内圧開放のための通路が形成されるのは複数個所の内圧開放部のうち一か所のみであるが、その他の内圧開放部においても完全ではないが層間剥離が進行しているため、電子レンジ加熱後開封する際、容易に開封することが可能となる。さらに、フランジ部における接合位置の外周端においても同様の樹脂溜まりが形成されていることにより、初期開封に際して優れた開封性を発現することが可能となる。
またフランジ部に形成される接合位置の形状及び高さを制御することにより、所望の樹脂溜まりを容易に形成できるため、ヒートシール位置の制御の必要がないと共に、ヒートシールに際して効率よく樹脂溜まりを形成することができ、効率よく内圧開放部を形成することができる。
更に蓋材は接合位置で強固にヒートシールされているため密封性にも優れており、意図外の開封も有効に防止されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に用いる容器の一例を示す斜視図である。
図2図1に示す容器の平面図を示す図である。
図3】(A)は、図2のA-A線断面における拡大断面図であり、(B)は図2のB-B線断面における拡大断面図である。
図4図1及び図2に示す容器に蓋材を適用し、ヒートシールした状態を示す拡大断面図であり、(A)は図3(A)の部分、(B)は図3(B)の部分をそれぞれ示す。
図5図4に示した密封状態にある包装体を、電子レンジ加熱して内圧が上昇した状態を示す拡大断面図であり、(A)は図4(A)の部分、(B)は図4(B)の部分をそれぞれ示す。本発明に用いる容器の他の一例において、フランジ部分を拡大して示す一部拡大断面図である。
図6】フランジ部における接合位置(ヒートシール予定部)の他の態様を説明するための容器の平面図である。
図7】フランジ部における接合位置(ヒートシール予定部)の他の態様を説明するための容器の平面図である。
図8】開封力の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の容器及び包装体を、添付図面に示された具体例に基づいて説明する。
(容器)
図1に示すように、全体を1で表す容器は、概略的に言って、底部2及び胴部3と、胴部3の上端から容器半径方向外方に延びるフランジ部4と、フランジ部4の外周縁から垂下する環状スカート部5から成っている。図1から明らかなように、容器1は、基材層6と表面シール層7とから成る積層体から、表面シール層7がフランジ部4において蓋材(図示せず)と相対する位置となる上面にとなるように、一体的に成形されている。
なお、基材層6と表面シール層7は互いに易剥離性を有する樹脂から形成されており、これにより、蓋材の開封に際して、基材層6と表面シール層7の間が容易に剥離することができ、内圧開放通路の形成或いは開封性が向上する。
【0016】
図1に示した容器の平面図である図2から明らかなように、フランジ部4の上面には、中央部分に蓋材の接合位置(ヒートシール位置)である環状接合部41、環状接合部41よりも内側に内側段差部42が形成されている。また図2に示す具体例においては、環状接合部41よりも外側に、外側段差部45が形成されている。
図2に示すように、本発明の容器においては、環状接合部41に、容器径方向内方に突出した内方突出部分41aが4カ所形成されていると共に、内方突出部分の両側には容器径方向外方に突出した外方突出部分41bがそれぞれ形成されており、後述するように、電子レンジ加熱により内圧が上昇したときに、内方突出部分41aから内圧開放のための通路が形成される。以下、環状接合部41における内方突出部分41aが形成された部分を「内圧開放予定部」と呼ぶ。
【0017】
図2に示すように、内圧開放予定部においては、環状接合部41が容器径方向内方に突出した内方突出部分41aを有していることから環状接合部41の内周端における中心Oからの距離L1は、内圧開放予定部以外の環状接合部41の内周端における中心Oからの距離L2よりも短くなる。また図2に示す具体例では、内方突出部分の両側に外方に突出し、上記L2よりも中心から離れた外方突出部分41bが形成されていることから、内圧が上昇すると、外方突出部分41bの部分は内圧の影響を受けにくいことから、内方突出部41aに内圧を効率よく力をかけることができ、内圧開放通路の形成が容易であると共に、内圧開放通路の拡大を抑制することができる。
【0018】
図3(A)は図2のA-A線の拡大断面図、すなわち内圧開放予定部の拡大断面図を示し、図3(B)は図2のB-B線の拡大断面図、すなわち内圧開放予定部以外の拡大断面図を示すものである。図3(A)及び(B)に示すように、内側段差部42は環状接合部41の内周端41cよりも軸方向に低い位置にあり、環状接合部41との間に段差となる側壁部43を形成している。またこの側壁部43には環状接合部41の表面シール層7aよりも薄肉の表面シール層7bが形成されている。側壁部43と内側段差部42の境界には溝44が形成されている。更に内側段差部42の内周側には、容器の内側壁から連なり、環状接合部41とほぼ同じ高さの環状面48が形成されている。
また同様に外側段差部45も環状接合部41の外周端41dとの間に段差となる側壁部46が形成され、この側壁部46にも環状接合部41の表面シール層7aの厚みよりも薄い表面シール層7cが形成されていると共に、側壁部46と外側段差部45の境界には溝47が形成されている。
また前述した通り、内圧開放予定部においては、環状接合部41が容器径方向内方に突出していることから、図3(A)に示す側壁部43の径方向位置(図2の中心Oからの距離L1)と、内圧開放部以外の部分の側壁部43の径方向位置(図2の中心Oからの距離L2)は、L1<L2となる。
【0019】
図3(A)から明らかなように、内圧開放予定部に対応する環状接合部41においては、環状接合部41の上面の高さが、容器径方向において環状接合部41の中央部分よりも内方側が高くなっていることが望ましく、これにより後述するように、ヒートシールの際に効率よく所望の樹脂溜まりを成形することが可能となる。環状接合部41の上面は、図3(A)に示す具体例では、内方から外方に向かってその高さが低くなるように傾斜面として形成されている。
その一方、図3(B)に示すように、内圧開放予定部以外の部分においては、環状接合部41の上面の高さが、容器径方向において環状接合部41の中央部分よりも外方側が高くなっていることが上記と同様の理由から望ましく、図3(B)に示す具体例では、内方から外方に向かってその高さが高くなるように傾斜面として形成されている。
【0020】
(包装体)
本発明の包装体は、上述した本発明の容器に蓋材をヒートシールしてなるものであり、図4に示すように、容器1のフランジ部4の環状接合部41に蓋材10がヒートシールされることにより容器は密閉状態となる。
蓋材10は、図4(A)から明らかなように、基材層10aと、容器1の表面シール層7とヒートシール可能なヒートシール性樹脂から成るヒートシール層10bから成っている。
図4に示すように、蓋材10がヒートシールヘッド等を用いた公知の方法で容器1の環状接合部41で押圧加熱されると、容器1の表面シール層7及び蓋材10のヒートシール層10bは溶融されて環状接合部41で接合される。
【0021】
この際、図4(A)に示すように、内圧開放予定部が形成される箇所においては、環状接合部41の上面が容器径方向内方から外方に向かってその高さが減少する傾斜面となっていることから、上方からヒートシールヘッド(図示せず)で押圧加熱されると、環状接合部41の外周側に比して内周側がより多く加熱及び押圧されることになる。その結果、環状接合部41の内方側の蓋材10のヒートシール層10b及び容器1の表面シール層7が外周側より多く溶融すると共に、環状接合部41の内周端41cからのはみ出し量も多くなり、蓋材側樹脂溜まり11aだけでなく、容器側樹脂溜まり8aも形成される。
尚、ヒートシールに際しては一般に蓋材側から加熱されるため、蓋材10のヒートシール層10bが容器1の表面シール層7より多く溶融することから、蓋材側樹脂溜まり11aは容器側樹脂溜まり8aよりも大きく、蓋材側樹脂溜まり11aが容器側樹脂溜まり8aの上部を覆うようにして両者は一体化されると共に、容器側樹脂溜まり8aの下部は、側壁部43の薄肉の表面シール層7bと連続する。
その一方、環状接合部41の外周側においては、ヒートシールヘッド側の蓋材のヒートシール層10bの溶融による蓋材側樹脂溜まり11bが形成されるとしても、容器側樹脂溜まりはほとんど形成されない。
【0022】
また内圧開放予定部以外の箇所においては、図4(B)に示すように、環状接合部41の上面が容器径方向内方から外方に向かってその高さが増加する傾斜面となっていることから、上方からヒートシールヘッドで押圧加熱されると、環状接合部41の外周側が内周側より多く加熱及び押圧されるため、環状接合部41の外周端から、大きめの蓋材側樹脂溜まり11bとこの蓋材側樹脂溜まり11bに覆われるように容器側樹脂溜まり8bも形成される。その一方、環状接合部41の内周側においては、蓋材側樹脂溜まり11aが形成されるとしても容器側樹脂溜まりはほとんど形成されない。
【0023】
このようにして容器に蓋材が接合され密封状態となった包装体を、電子レンジ加熱等により加熱することにより容器内の内圧が上昇すると、図5に示すように蓋材10が径方向中心を頂点としてドーム状に膨らむ。その際、内圧開放部においては、図5(A)に示すように、蓋材10に内圧による上向きの力Pが作用すると、力Pの作用点となる環状接合部41の内周端41cには、容積の大きい蓋材側樹脂溜まり11aが存在するため、蓋材10を補強しながら引き上げることが可能であり、しかも蓋材側樹脂溜まり11aと容器側樹脂溜まり8aは一体化されているので、容器側樹脂溜まり8aも蓋材側樹脂溜まり11aと一体となって上昇する。これにより、容器側樹脂溜まり8aの下部に存在する薄肉の表面シール層7bは容易に破断(凝集破壊)され、この表面シール層7bは基材層6との界面近傍であり、表面シール層7と基材層6との層間剥離を容易に進行させることが可能であるため、容易に内圧開放通路を形成すること可能になるのである。
【0024】
その一方、内圧開放部以外の箇所においては、図5(B)に示すように、内圧による上向きの力Pの作用点となる環状接合部41の内周端41cにおいては、蓋材10に上向きの力Pが作用すると、容積の大きい蓋材側樹脂溜まり11aが存在するとしても容器側樹脂溜まりがないため、力Pは蓋材側樹脂溜まり11aと容器1の表面シール層7との界面付近に作用するが、これらは易剥離性ではないため容易に剥離することはなく、その間に内圧開放部から内圧が既に開放されていることから、結果として、内圧が上昇しても内圧開放部以外の箇所から剥離することはない。
【0025】
また内圧開放部はフランジ部に複数個所形成されることが好ましい。電子レンジ加熱等により加熱することにより容器内の内圧が上昇すると、複数形成された内圧開放部のうちの一か所のみに内圧開放のための通路が形成される。内圧が開放されると他の内圧開放部においては内圧開放通路となることはないが、内圧開放通路が形成されるまでの間に層間剥離は進行しているため、電子レンジ加熱後開封する際、容易に開封することが可能となる。
【0026】
また密封状態或いは内圧開放後の包装体を開封する場合、内圧開放部以外の箇所においては、環状接合部41の外周端において、前述した内圧開放部が形成された箇所の内周端と同様に、容積の大きい蓋材側樹脂溜まり11b及び容器側樹脂溜まり8bが形成されているため、蓋材側樹脂溜まりの存在により蓋材10を補強しながら蓋材10を引き上げることが可能であると共に、蓋材側樹脂溜まり11bと容器側樹脂溜まり8bが一体となって上昇することから、容器側樹脂溜まり8bの下部に存在する薄肉の表面シール層7cが容易に破断して、表面シール層7と基材層6との層間剥離を容易に進行させることができ、溝44において薄肉の表面シール層を破断することにより容器から蓋が取り外され始める。その後は、環状接合部41の内周端41cの表面シール層の破断と、環状接合部41の外周端41dの表面シール層の破断と、表面シール層7と基材層6との層間剥離の3つが同時に進行しながら、徐々に容器から蓋が取り外されていき、そのまま完全に蓋を取り外すことが可能となる。
また内圧開放後の包装体においては、既に容器と蓋材の間が剥離された内圧開放通路の部分を引き上げることにより、内圧開放通路の両側には外方突出部41bが形成されていることから、この部分からも容易に開封することができる。
【0027】
本発明の容器及び包装体は、上述した具体例に限定されない。
例えば図に示す具体例では、環状接合部41の外周側には外側段差部が形成されており、これにより開封時に容易に蓋材を取り除くことが可能であるが、フランジ部の幅等によっては、環状接合部の外周端と環状スカート部の外面とを一致させることもできる。尚、この場合には、開封のための把持部を設けることが好ましい。
また図に示す具体例では、フランジ部の内側段差部よりも内方に、環状接合部とほぼ同じ高さの環状面48が形成され、これにより蓋材10を支持し、ヒートシールの際等に蓋材へのダメージ等を予防できるものであるが、フランジ部の幅等によっては環状面48を形成せずに、内側段差部の内周端がフランジ部の内周端と一致してもよい。
さらに、図に示す具体例では、環状接合部の上面が、内圧開放予定部では内周側から外周側に向かって高さの減少する傾斜面、内圧開放予定部以外では内周側から外周側に向かって高さの増加する傾斜面として形成されていたが、内圧開放予定部においては、環状接合部の内周端が高くなっていればよいので、中央部分のみ低い等、種々の変更が可能である。
なお、環状接合部の上面における高低は、内圧開放予定部、内圧開放予定部以外について最も高くする内周端又は外周端と最も低い部分の差でそれぞれ、0.5mm以下、好ましくは0.010~0.3mmの範囲であり、さらに好ましくは0.025~0.2mmの範囲にあることが好適である。これにより、ヒートシールの際に所望の樹脂溜まりを形成することが可能となる。
【0028】
また環状接合部41の上方から見た形状も、内圧開放予定部となる内方突出部が形成されている限り、図2に示した形状に限定されない。例えば、図2に示した具体例では4か所に弧状に近い内方突出部が形成されていたが、容器やフランジの大きさ等によって、その個数や内方突出部の突出形状等は種々変更できる。例えば、図6に示すように、比較的角度の小さい内方突出部41aが一か所に形成されていると共に、外方突出部41bをその対角に形成することもできるし(A)、2つの内方突出部41aで外方突出部41bを挟んだ形状とすることもできる(B)。また図7に示すように、内方突出部41aが直線状であり、その両端から垂直に延びる外方突出部41b,41bが形成された形状とすることもできる。この態様によれば、内方突出部41aの両端部から垂直に延びる外方突出部41bにより内圧開放通路が過度に拡大されてしまうことを制御できる。
【0029】
本発明においては、内圧開放予定部における環状接合部の内周端上面と内側段差部の段差は、これに限定されないが、0.2~2.0mm、好ましくは0.2~1.0mmの範囲にあることが好適であり、この範囲にあることにより、容器側樹脂溜まり及び蓋材側樹脂溜まりが内側段差部に接触することを予防でき、内圧開放通路のスムーズな形成を妨げることがない。
また、外側段差部の環状接合部の外周端上面との段差は、これに限定されないが、0.2~2.0mm、好ましくは0.2~1.0mmの範囲にあることが好適であり、これにより蓋材側樹脂溜まりが外側段差部に接触することを予防でき、開封性を損なうことがない。
【0030】
開封する際に最も力が必要なのは、溝44において薄肉の表面シール層を破断する時である。この表面シール層の厚みによって、表面シール層を破断する時に必要な力が変わり、溝44における薄肉の表面シール層の厚みが薄ければ薄いほど易開封性が向上するが、易開封性の観点からすると、溝44における薄肉の表面シール層の厚みは20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下であることが好適である。
【0031】
また環状接合部の内周端又は外周端から容器軸方向に延びる側壁部は、図に示す具体例ではいずれもほぼ垂直であったが、環状接合部の内周端側の側壁部においては容器軸方向下方に行くに従って内径が増加する傾斜面であってもよいし、外周端側の側壁部においては容器軸方向下方に行くに従って外径が減少する傾斜面であってもよい。これにより蓋材側樹脂溜まりが側壁部に付着することが有効に防止できる。
フランジ部は、フランジ部の外周端から垂下する環状スカート部を有することがフランジ部の機械的強度等を向上する上で好ましいが、フランジ部の厚みなどによっては、環状スカート部が形成されていなくてもよい。
更に、図に示した具体例では、容器は基材層及び表面シール層を備えた積層体から一体成形されており、容器内面にも表面シール層が形成された態様であったが、フランジ部にのみ表面シール層が形成されていてももちろんよい。
【0032】
また環状接合部の周方向の厚みのばらつきが大きい場合、特に厚い部位において、蓋材側樹脂溜まり11b及び容器側樹脂溜まり8bの他に、容器の基材層由来の樹脂だまりも発生する場合があるが、容器側樹脂溜まり8bの下部に薄肉の表面シール層7cが存在すれば良く、この場合も容易に内圧開放通路を形成することが可能である。
【0033】
本発明の容器はカップ型であることが好適であるが、これに限定されず、フランジ部を有する限り、トレイ形状であってもよい。また図1、2、6及び図7では丸型の容器形状であるが、角型容器であってもよく、その他多角形容器や楕円型の容器であってもよい。
本発明の容器に対応可能な蓋材としては、可撓性を有するシート状の蓋材のほか、落とし蓋形状の成形蓋であってもよい。
【0034】
また、前述した通り、容器の基材層と表面シール層は、層間剥離により剥離するものであることが好適であるが、易剥離性を発現可能である限り、凝集剥離、界面剥離であってもよい。また蓋材側の基材層とヒートシール層が易剥離性を発現するものであってもよい。
密封性能及び易開封性能の両方を満足するために好適な剥離強度としては、図8に示すように、蓋の把持部にプッシュプルゲージを取り付け、これを蓋に対して45度の方向に引き上げることによって測定した開封力(剥離強度)が、0.3~3.0Kgfの範囲にあることが好ましく、0.5~2.5Kgfの範囲にあることがより望ましい。
【0035】
このような剥離強度を発現可能な樹脂の組み合わせとしては、ヒートシール性があり且つ相溶性のない2種以上の熱可塑性樹脂を適宜組み合わせることができる。
容器の基材層は、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等、その他、従来より樹脂製容器の成形に用いられていた、従来公知の熱可塑性樹脂を使用することができ、例えば、基材層をプロピレン系重合体から構成する場合、ヒートシール層をエチレン系重合体とプロピレン系重合体のブレンド物から構成することにより、密封性を確保しつつ易開封性を保持することができ、ブレンド物のブレンド比を適宜変更することにより剥離強度を調整することができる。
【0036】
上記プロピレン系重合体としては、ホモポリプロピレンの他、プロピレンとエチレンもしくは他のα-オレフィン、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等とのブロック共重合体やランダム共重合体等を挙げることができる。また上記エチレン系重合体としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中・高密度ポリエチレン(MDPE、HDPE)等のエチレンの単独重合体、もしくはエチレンと、例えば1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の他のα-オレフィンや、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、酢酸ビニル、スチレン等のビニル系単量体等との共重合体、或いはアイオノマー等を挙げることができる。
【0037】
またブレンド物としては上記オレフィン系重合体同士の組み合わせ以外にも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらイソフタレート変性された共重合体、等の熱可塑性ポリエステル樹脂や、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等と、上記オレフィン系重合体との組み合わせ等も使用することができる。
ブレンド物としてプロピレン系重合体とエチレン系重合体を使用する場合に、ブレンド物から成るフランジ部材がプロピレン系重合体から成る容器本体との良好な剥離性を発現するためには、プロピレン系重合体とエチレン系重合体を重量比で、5:5~9.5:0.5の範囲でブレンドしたブレンド物を好適に使用することが好ましい。
【0038】
容器成形時に薄肉の表面シール層を好適に形成するためには、後述するロケーターの加圧によりフランジが潰された結果による表面シール層の薄肉化でも十分であるが、表面シール層を構成する樹脂がロケーターの加圧に応じて流動性を発現し得るように、ロケーターの温度や表面シール層のメルトフローレートを適宜調整するとより表面シール層をさらに薄肉化することが可能となる。より表面シール層を薄肉化できれば易開封性を向上することでき、その観点からすると、表面シール層のメルトフローレートを、例えば、JIS K7210-1:2014に準じ、温度190℃ 、荷重2.16kgで測定したとき、5g/min以上、好ましくは10g/min以上とするのが好適である。
【0039】
また表面シール層から樹脂溜まりを好適に成形するためには、表面シール層を構成する樹脂がヒートシール条件に応じて流動性を発現し得るように融点及びメルトフローレートを適宜調整することが好ましい。
容器は上述した基材層及び表面シール層を有する2層構成の積層体の一体成形によるものであってもよいが、基材層間に中間層としてガスバリア性中間層を有する多層構成であってもよい。また前述した通り、容器のフランジ部のみに表面シール層を形成したものであってもよい。
本発明の容器は、フランジ部が上述した構成を満足する限り、その製造方法は問わないが、好適には、積層体を真空成形、プラグアシスト圧空成形等の熱成形により一体的に成形することが好適である。この方法によれば、成形時にロケーター(フランジ押え)によりフランジ部の上面に環状接合部及び内側段差部に対応する凹凸を容易に成形することできる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の容器は、ヒートシールによる優れた密封性を有すると共に、より少ない開封力で容易に開封可能であり、さらに電子レンジ加熱により確実に内圧を開放可能であることから、飲食品用の容器として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 容器、2 底部、3 胴部、4 フランジ部、5 環状スカート部、6 基材層、7 表面シール層、8 容器側樹脂溜まり、10 蓋材、11 蓋材側樹脂溜まり、41 環状接合部(接合位置)、42 内側段差部、43 側壁部、44 溝、45 外側段差部、46 側壁部、47 溝、48 環状面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8