(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126111
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
B62B 3/00 20060101AFI20240912BHJP
A61G 5/04 20130101ALI20240912BHJP
B62M 6/50 20100101ALN20240912BHJP
【FI】
B62B3/00 G
A61G5/04 710
B62M6/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034286
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】北村 太一
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050KK14
(57)【要約】
【課題】構成を簡略化する。
【解決手段】駆動ユニットは、電気モータと、制御部と、自走操作部とを備える。制御部は、制御モードに応じて電気モータを制御するように構成される。制御モードは、アシストモード及び自走モードを有する。自走操作部は、使用者による自走操作を受け付けるように構成される。制御部は、制御モードがアシストモードである場合、移動体の加速度に応じたアシスト力を電気モータに出力させるように構成される。制御部は、制御モードが自走モードである場合、自走操作に応じた目標速度で走行するように電気モータを制御するように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の走行をアシストするように構成された駆動ユニットであって、
電気モータと、
アシストモード及び自走モードを有する制御モードに応じて前記電気モータを制御するように構成される制御部と、
使用者による自走操作を受け付けるように構成される自走操作部と、
を備え、
前記制御部は、
前記制御モードが前記アシストモードである場合、前記移動体の加速度に応じたアシスト力を前記電気モータに出力させるように構成され、
前記制御モードが前記自走モードである場合、前記自走操作に応じて前記移動体が走行するように前記電気モータを制御するように構成される、
駆動ユニット。
【請求項2】
使用者による前記制御モードの切替操作を受け付けるように構成されるモード切替操作部をさらに備え、
前記制御部は、使用者による前記モード切替操作部の操作に応じて、前記制御モードを前記アシストモードと前記自走モードとの間で切替可能に構成される、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記自走操作部は、使用者による操作に応じて異なる制御信号を出力するように構成されており、
前記制御部は、前記自走操作部からの制御信号に応じた速度で走行するように前記電気モータを制御するように構成される、
請求項1に記載の駆動ユニット
【請求項4】
使用者の補正操作を受け付けるように構成される補正操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記制御モードが前記アシストモードである場合、前記補正操作に応じて前記アシスト力を補正するように構成され、前記制御モードが前記自走モードである場合、前記補正操作に応じて前記目標速度を補正するように構成される、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パレットトラック、ハンドリフトトラック、ハンドトラック、又は車椅子などの低速で移動する移動体に駆動ユニットを取り付けて、移動体の性能を高めることが提案されている。駆動ユニットは、車輪を回転駆動するための電気モータ、及び電気モータを制御するために制御部などを有している。電気モータは、人力で移動体を走行させる際、人力をアシストするためのアシスト力を出力する。
【0003】
例えば特許文献1に開示された制御装置は、移動体に入力されたトルクに応じたアシスト力を出力するよう電気モータを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように制御装置では、移動体に入力されたトルクを検出するための機構が必要となり、構成が複雑化するという問題がある。そこで、本発明の課題は、構成を簡略化することのできる駆動ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る駆動ユニットは、移動体の走行をアシストするように構成されている。駆動ユニットは、電気モータと、制御部と、自走操作部とを備える。制御部は、制御モードに応じて電気モータを制御するように構成される。制御モードは、アシストモード及び自走モードを有する。自走操作部は、使用者による自走操作を受け付けるように構成される。制御部は、制御モードがアシストモードである場合、移動体の加速度に応じたアシスト力を電気モータに出力させるように構成される。制御部は、制御モードが自走モードである場合、自走操作に応じて移動体が走行するように電気モータを制御するように構成される。
【0007】
この構成によれば、加速度に応じたアシスト力を出力させるため、トルクを算出するための機構を設置する必要が無い。なお、加速度は、車速に基づいて算出したり、加速度センサによって取得することができるため、トルクを算出する機構に比べて構成を簡略化することができる。なお、加速度に応じたアシスト力を出力させる構成とすると、坂道などで移動体を加速させることが難しい場合にアシスト力を出力させることが出来なくなり、その結果、移動体を走行させることが困難になるという問題が生じ得る。しかしながら、上記駆動ユニットは、制動モードをアシストモードから自走モードに切り替えることによって、移動体を自走操作に応じて走行させることができる。
【0008】
第2態様に係る駆動ユニットは、第1態様に係る駆動ユニットにおいて、モード切替操作部をさらに備える。モード切替操作部は、使用者による制御モードの切替操作を受け付けるように構成される。制御部は、使用者によるモード切替操作部の操作に応じて、制御モードをアシストモードと自走モードとの間で切替可能に構成される。
【0009】
第3態様に係る駆動ユニットは、第1又は第2態様に係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。自走操作部は、使用者による操作に応じた制御信号を出力するように構成される。制御部は、自走操作部からの制御信号に応じた速度で走行するように電気モータを制御するように構成される。
【0010】
第4態様に係る駆動ユニットは、第1から第3態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、補正操作部をさらに備える。補正操作部は、使用者の補正操作を受け付けるように構成される。制御部は、制御モードがアシストモードである場合、補正操作に応じてアシスト力を補正するように構成される。また、制御部は、制御モードが自走モードである場合、補正操作に応じて目標速度を補正するように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば構成を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】電圧値と目標速度との対応付けを示すマップ。
【
図6】アシストモードにおける制御部の動作を示すフローチャート。
【
図7】自走モードにおける制御部の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係る駆動ユニット20が搭載されたパレットトラック200について図面を参照しつつ説明する。駆動ユニット20は、移動体の走行をアシストするように構成されている。駆動ユニット20は、移動体に設けられている。なお、移動体は、人力によって走行する。移動体は、低速で移動する。移動体は、物体を運搬するように構成されている。なお、物体とは人物なども含む概念である。このような移動体としては、例えば、パレットトラック、ハンドリフトトラック、ハンドトラック、車椅子などがある。なお、本実施形態では、移動体は、パレットトラックである。
【0014】
<パレットトラック>
図1は、駆動ユニット20を搭載するパレットトラック200の側面図である。
図1に示すように、パレットトラック200は、パレットトラック本体210と、駆動ユニット20とを有している。パレットトラック本体210は、荷台(一対のフォークアーム)201、操作ハンドル202、複数の車輪204を有している。なお、各車輪204は、非駆動輪である。このパレットトラック本体210に、駆動ユニット20が取り付けられている。
【0015】
<駆動ユニット>
図2に示すように、駆動ユニット20は、電気モータ21、モータドライバ22、減速機23、バッテリ24(
図1参照)、駆動輪25、モード切替操作部26、自走操作部27、及び制御部10を含んでいる。なお、駆動ユニット20は、駆動輪25を有していなくてもよい。この場合、駆動ユニット20は、駆動輪25の代わりに、パレットトラック200の車輪204の少なくとも一つを回転駆動させる。
【0016】
電気モータ21は、使用者が人力によってパレットトラック200を走行させているときに、パレットトラック200の走行をアシストするためのアシスト力を出力する。また、電気モータ21は、使用者が自走操作部27を操作している間、パレットトラック200を走行させるためのトルクを出力する。電気モータ21は、駆動輪25を回転駆動する。
【0017】
モータドライバ22は、バッテリ24から電気モータ21に供給される電力を制御する。モータドライバ22は、制御部10と有線又は無線によって通信可能に接続されている。モータドライバ22は、制御部10からの制御信号に応じて電気モータ21を駆動させる。
【0018】
減速機23は、電気モータ21の回転数を減速して、駆動輪25へと伝達する。減速機23は、例えば複数の歯車などによって構成されている。
【0019】
モード切替操作部26は、使用者による制御モードの切り替え操作を受け付けるように構成されている。詳細には、モード切替操作部26は、使用者によるアシストモードと自走モードとの間で制御モードを切り替える切り替え操作を受け付けるように構成されている。モード切替操作部26は、使用者による切替操作に関する情報を制御部10に出力する。例えば、通常の使用では、使用者はアシストモードで駆動ユニット20を利用する。一方、坂道などによって使用者がパレットトラック200を加速させられないような状態になった場合などに、使用者はモード切替操作部26を操作して、アシストモードから自走モードに切り替える。
【0020】
モード切替操作部26は、例えば、操作ハンドル202に設けられる。モード切替操作部26は、例えば、セレクタスイッチなどによって構成される。使用者は、モード切替操作部26を操作することによって、制御モードをアシストモードと自走モードとの間で切り替える。
【0021】
自走操作部27は、使用者による自走操作を受け付けるように構成されている。例えば、自走モードにおいて、使用者が自走操作部27を操作すると、その自走操作に応じてパレットトラック200が自走するように電気モータ21はトルクを出力する。すなわち、パレットトラック200の加速度とは関係なく、使用者の操作に基づいて電気モータ21はトルクを出力する。
【0022】
自走操作部27は、例えば、操作ハンドル202に設けられる。自走操作部27は、使用者による操作に応じて、異なる制御信号を出力するように構成されていてもよい。例えば、自走操作部27は、ロータリスイッチ又はスライドスイッチなどのように、使用者が選択した位置を検出し、その選択位置に応じた制御信号を制御部10に出力するように構成することができる。その他にも、自走操作部27は、操作レバーなどのように、使用者の操作量を検出し、その操作量に応じた制御信号を制御部10に出力するように構成されていてもよい。
【0023】
なお、自走操作部27は、使用者による操作に応じて異なる制御信号を出力するように構成されていなくてもよい。すなわち、自走操作部27は、ボタンスイッチのように、1種類の制御信号のみを出力するように構成されていてもよい。例えば、自走操作部27は、自動復帰型の押しボタンスイッチであり、使用者が押している間のみ制御部10に制御信号を出力し、使用者がボタンを離すと制御信号を出力しないような構成とすることができる。
【0024】
また、駆動ユニット20は、設定重量入力部31、回転速度検出部32、傾斜角検出部33をさらに有している。
【0025】
設定重量入力部31は、使用者が設定した設定重量が入力されるように構成されている。例えば、設定重量入力部31は、予め決められた複数の設定重量の選択肢を有している。使用者は、設定重量入力部31によって、一番適した設定重量を選択することができる。
【0026】
設定重量入力部31は、例えば、ロータリスイッチなどによって構成してもよい。設定重量入力部31は、例えば、操作ハンドル202に取り付けられている。なお、設定重量入力部31は、タッチパネルなどによって、任意の設定重量が入力されるように構成されていてもよい。
【0027】
設定重量とは、パレットトラック200と搬送物とを合わせた重量であるが、搬送物のみの重量であってもよい。搬送物のみの重量の場合、制御部10は、設定重量にパレットトラック200の重量を加算して、種々の演算を行う。
【0028】
回転速度検出部32は、電気モータ21の回転速度を検出するように構成されている。回転速度検出部32は例えば電気モータ21内に取り付けられたホールセンサによって構成することができる。
【0029】
傾斜角検出部33は、パレットトラック200が走行する路面の傾斜角を検出する。なお、傾斜角検出部33は、例えば、傾斜センサによって構成することができる。なお、傾斜角検出部33は、加速度センサ又はジャイロセンサなどによって構成されていてもよい。
【0030】
制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びROM(Read Only Memory)等を備えるコンピュータ(例えばマイクロコンピュータ)によって構成されている。ROMには、種々の演算をするためのプログラムが記憶されている。CPUは、ROMに記憶されたプログラムを実行する。
【0031】
制御部10は、制御モードに応じて電気モータ21を制御するように構成される。制御モードは、アシストモードと自走モードとを有する。使用者がモード切替操作部26によってアシストモードと自走モードとのどちらかを選択することができる。制御部10は、使用者によるモード切替操作部26の操作に応じて、制御モードをアシストモードと自走モードとの間で切替可能に構成されている。
【0032】
使用者がアシストモードを選択した場合、制御部10は、パレットトラック200の加速度に応じたアシスト力を電気モータ21に出力させるように構成されている。また、使用者が自走モードを選択した場合、制御部10は、自走操作部27を介した使用者の自走操作に応じてパレットトラック200が走行するように電気モータ21を制御するように構成されている。
【0033】
図3に示すように、制御部10は、アシストモードを実行するための構成として、車速算出部11、加速度算出部12、動力損失算出部13、転がり抵抗算出部14、駆動力算出部15、アシスト力算出部16、及び電流制御部17を有している。
【0034】
車速算出部11は、回転速度検出部32によって検出された電気モータ21の回転速度N、減速機23の減速比i、及び駆動輪25の車輪半径Rに基づき、パレットトラック200の車速を算出する。具体的には、車速算出部11は、以下の式(1)に従い、車速Vを算出する。なお、減速比i及び車輪半径Rは、予め制御部10に記憶させているが、適宜書き換えてもよい。
【0035】
【0036】
加速度算出部12は、車速算出部11によって算出された車速Vを微分(完全微分とも言う)することにより、パレットトラック200の加速度を算出する。具体的には、加速度算出部12は、以下の式(2)に従い、加速度aを算出する。なお、以下の式において、tは時間を示す。以下の式は、時間領域で記述している。
【0037】
【0038】
なお、加速度算出部12は、車速Vを以下の式(3)のように疑似微分(不完全微分とも言う)することによって加速度aを算出してもよい。なお、以下の式は、周波数領域で記述している。
【0039】
【数3】
なお、sはラプラス演算子、T
Dは微分時間、ηは微分係数を示している。
【0040】
加速度算出部12は、上限リミッタ及び下限リミッタの少なくとも一方を有していてもよい。上限リミッタを有することにより、急加速に対する過剰なアシスト動作を防止することができる。また、下限リミッタを有することで、ノイズ、または、段差乗り越え時に算出されるマイナスの加速度によってアシスト力が過少に計算されることを防ぐことができる。
【0041】
動力損失算出部13は、電気モータ21から出力される動力が駆動輪25に伝達されるまでの動力損失Fvを算出する。動力損失算出部13は、例えば、以下の式(4)によって、動力損失Fvを算出する。
【0042】
【数4】
なお、kVは軸粘性抵抗を示し、kは軸粘性係数を示す。動力損失算出部13は、車速算出部11によって算出された車速Vに基づき、軸粘性抵抗を算出する。なお、軸粘性係数kは、予め制御部10に記憶させているが、適宜書き換えてもよい。また、Cは軸粘性抵抗以外の動力損失を示し、例えば、チェーン等の伝達損失、及び軸受け摩擦などの動力損失の合計値である。この軸粘性抵抗以外の動力損失Cも、予め制御部10に記憶させているが、適宜書き換えてもよい。なお、動力損失算出部13は、Cを0として、軸粘性抵抗kVのみを算出してもよい。
【0043】
転がり抵抗算出部14は、設定重量入力部31に入力された設定重量Mに基づき転がり抵抗を算出する。また、転がり抵抗算出部14は、傾斜角検出部33によって検出された傾斜角θに基づき、転がり抵抗を補正する。具体的には、転がり抵抗算出部14は、以下の式(5)によって、転がり抵抗Frを算出する。
【0044】
【数5】
なお、Crrは転がり抵抗係数を示し、gは重力加速度を示している。転がり抵抗係数Crr及び重力加速度gは、予め制御部10に記憶させているが、適宜書き換えてもよい。
【0045】
駆動力算出部15は、加速度算出部12によって算出された加速度a、設定重量入力部31に入力された設定重量M、転がり抵抗算出部14によって算出された転がり抵抗Fr、及び動力損失算出部13によって算出された動力損失Fvに基づき、パレットトラック200に加えられた駆動力を算出する。また、駆動力算出部15は、傾斜角検出部33によって検出された傾斜角θに基づき、駆動力を補正する。詳細には、以下の式(6)に示すように、Mgsinθを付加する。なお、パレットトラック200に加えられた駆動力は、使用者による人力と、電気モータ21によるアシスト力とを合わせたものである。
【0046】
詳細には、駆動力算出部15は、以下の式(6)によって駆動力Fを算出する。
【0047】
【0048】
なお、駆動力算出部15は、加速度算出部12によって算出された加速度aの代わりに、車速算出部11によって算出された車速Vを用いて、駆動力Fを算出してもよい。詳細には、駆動力算出部15は、以下の式(7)によって駆動力Fを算出してもよい。
【0049】
【0050】
アシスト力算出部16は、加速度算出部12によって算出された加速度a、設定重量入力部31に入力された設定重量M、転がり抵抗算出部14によって算出された転がり抵抗Fr、動力損失算出部13によって算出された動力損失Fv、及びアシスト率αに基づき、アシスト力を算出する。
【0051】
なお、本実施形態では、駆動力算出部15が、加速度a、設定重量M、転がり抵抗Fr、及び動力損失Fvに基づき、駆動力Fを算出し、アシスト力算出部16は、その駆動力Fを用いてアシスト力を算出する。具体的には、アシスト力算出部16は、駆動力算出部15によって算出された駆動力F、及びアシスト率αに基づき、電気モータ21が出力するアシスト力を算出する。詳細には、アシスト力算出部16は、以下の式(8)によってアシスト力Faを算出する。
【0052】
【数8】
なお、アシスト率αは、0より大きく、1未満である。アシスト率αは、予め制御部10に記憶させているが、適宜書き換えてもよい。
【0053】
電流制御部17は、駆動輪25の車輪半径R、減速機23の減速比i、モータトルク定数Kt、及びアシスト力算出部16によって算出されたアシスト力Faに基づき、電気モータ21に流れる電流を算出する。電流制御部17は、この算出された電流が電気モータ21に流れるように、モータドライバ22に制御信号を出力する。なお、電流制御部17は、以下の式(9)によって、モータ電流imrefを算出する。
【0054】
【0055】
なお、モータトルク定数Ktは、以下の式(10)のように、電気モータ21の出力トルクTmとモータ電流imを関連付ける定数である。
【0056】
【0057】
また、電流制御部17は、モータ電流imrefを算出するだけでなく、算出したモータ電流と、実際に電気モータ21に流れるモータ電流とを比較して、フィードバック制御を行い、そのうえでモータドライバ22へ制御信号(Duty比など)を出力する。
【0058】
制御部10は、自走モードを実行するための構成として、目標速度算出部18、及び速度制御部19を有する。
【0059】
目標速度算出部18は、自走操作部27から、使用者による自走操作に応じた制御信号を取得する。そして、目標速度算出部18は、その制御信号に基づき目標速度を算出する。例えば、自走操作部27が、ロータリスイッチなどのように、使用者の自走操作に応じて異なる電圧値を出力する場合、目標速度算出部18は、その電圧値に基づき目標速度を算出する。より具体的に説明すると、自走操作部27が0~5Vの電圧値を出力する場合、
図4に示すような電圧値と目標速度とを対応付けたマップに基づき、目標速度算出部18は、目標速度を算出する。目標速度算出部18は、このように算出した目標速度に関する情報を、速度制御部19へと出力する。
【0060】
また、目標速度算出部18は、自走操作部27が1種類の制御信号のみを出力する場合、すなわち、自走操作部27が所定の出力値のみを出力する場合、予め設定された目標速度に関する情報を速度制御部19へと出力する。
【0061】
速度制御部19は、目標速度算出部18が算出した目標速度と、車速算出部11が算出した車速(実際の車速)に基づき、電気モータ21に供給するモータ電流imrefを算出する。詳細には、速度制御部19は、目標速度と実際の車速とに基づき誤差を算出する。そして、その誤差に基づき、モータ電流imrefを算出する。
【0062】
例えば、速度制御部19は、PID制御、又はPI制御などによって、モータ電流imrefを算出する。また、この速度制御部19は、目標速度に達するまでの時間を調整してもよい。例えば、速度制御部19がPID制御又はPI制御する場合、積分時間を調整することで、目標速度に達するまでの時間を調整することができる。速度制御部19は、算出したモータ電流imrefに関する情報を電流制御部17に出力する。
【0063】
電流制御部17は、この速度制御部19が算出したモータ電流imrefと、実際に電気モータ21に流れるモータ電流とを比較して、フィードバック制御を行い、そのうえでモータドライバ22へ制御信号(Duty比など)を出力する。
【0064】
<制御部の動作>
次に、
図5~
図7の各フローチャートを参照しつつ、制御部10により実行される処理の一例を説明する。
【0065】
図5に示すように、モード切替操作部26によって選択された制御モードがアシストモードか否か、制御部10は判断する(ステップS1)。制御部10は、アシストモードが選択されたと判断すると(ステップS1のYes)、アシストモードを実行する(ステップS10)。一方、制御部10は、アシストモードが選択されていない、すなわち、自走モードが選択されていると判断すると(ステップS1のNo)、自走モードを実行する(ステップS20)。
【0066】
次に、
図6を参照しつつ、アシストモードにおける制御部10の処理の一例を説明する。まず、車速算出部11によってパレットトラック200の車速を算出する(ステップS11)。
【0067】
次に、加速度算出部12は、この車速に基づき、パレットトラック200の加速度を算出する(ステップS12)。また、動力損失算出部13は、上記車速に基づき、電気モータ21が出力するアシスト力が駆動輪25に伝達されるまでの動力損失を算出する(ステップS13)。なお、ステップS12の処理とステップS13の処理の順番は逆であってもよい。
【0068】
転がり抵抗算出部14は、パレットトラック200が走行するときに、駆動輪25と路面との間に生じる転がり抵抗を算出する(ステップS14)。なお、このステップS14の処理は、ステップS11~S13のいずれかの処理の前に行ってもよい。
【0069】
次に、駆動力算出部15は、加速度算出部12によって算出された加速度a、設定重量入力部31に入力された設定重量M、転がり抵抗算出部14によって算出された転がり抵抗Fr、及び動力損失算出部13によって算出された動力損失Fvに基づき、パレットトラック200に加えられた駆動力Fを算出する(ステップS15)。
【0070】
次に、アシスト力算出部16は、駆動力算出部15によって算出された駆動力F、及びアシスト率αに基づき、電気モータ21が出力するアシスト力Faを算出する(ステップS16)。
【0071】
次に、電流制御部17は、駆動輪25の車輪半径R、減速機23の減速比i、モータトルク定数Kt、及びアシスト力算出部16によって算出されたアシスト力Faに基づき、電気モータ21に流れる電流を算出する(ステップS17)。そして、電流制御部17は、この電流が電気モータ21に流れるように、モータドライバ22に制御信号を出力する(ステップS18)。
【0072】
以上により、電気モータ21は、アシスト力算出部16によって算出されたアシスト力を出力し、駆動輪25を回転駆動する。
【0073】
次に、
図7を参照しつつ、自走モードにおける制御部10の処理の一例を説明する。まず、車速算出部11によってパレットトラック200の車速を算出する(ステップS21)。
【0074】
次に、目標速度算出部18は、自走操作部27からの制御信号に基づき目標速度を算出する(ステップS22)。なお、自走操作部27が1種類の制御信号のみを出力する場合、目標速度算出部18は、予め設定された所定の目標速度を速度制御部19に出力する。このステップS22の処理とステップS21の処理の順番は逆であってもよい。
【0075】
次に、速度制御部19は、目標速度算出部18によって算出された目標速度と、車速算出部11によって算出された車速とに基づき、モータ電流imrefを算出する(ステップS23)。そして、電流制御部17は、速度制御部19によって算出されたモータ電流imrefが電気モータ21に供給されるように、モータドライバ22に制御信号を出力する(ステップS24)。
【0076】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。また、下記の各変形例は互いに同時に適用可能である。
【0077】
(a)
図8に示すように、駆動ユニット20は、補正操作部28をさらに有していてもよい。補正操作部28は、使用者の補正操作を受け付けるように構成されている。補正操作部28は、例えば、操作ハンドル202に設けられる。使用者は、補正操作部28を介して補正操作をすることにより、アシストモードにおいて電気モータ21が出力するアシスト力、又は自走モードにおいて電気モータ21が出力するトルクを補正することができる。例えば、補正操作部28は、使用者の補正操作に応じた補正係数を制御部10に出力するように構成されている。
【0078】
例えば、制御部10は、制御モードが自走モードである場合、使用者の補正操作に応じて目標速度を補正する。詳細には、制御部10の目標速度算出部18は、自走操作部27から取得した制御信号に基づき算出した目標速度(以下、「補正前の目標速度」と称する)を、補正操作部28から取得した補正係数に応じて補正する。例えば、目標速度算出部18は、補正前の目標速度に補正係数を乗じて補正後の目標速度を算出する。なお、補正係数は、例えば、1より小さい値とすることができる。補正係数は、使用者の補正操作に応じて変化する。
【0079】
また、制御部10は、制御モードがアシストモードである場合、使用者の補正操作に応じてアシスト力を補正する。詳細には、アシスト力算出部16は、算出したアシスト力(以下、「補正前のアシスト力」と称する)を、補正操作部28から取得した補正係数に応じて補正する。例えば、アシスト力算出部16は、補正前のアシスト力に補正係数を乗じて補正後のアシスト力を算出する。
【0080】
(b)上記実施形態では、制御部10は車速算出部11を有しているが、制御部10は車速算出部11を有していなくてもよい。例えば、制御部10が車速算出部11を有する代わりに、駆動ユニット20が車速センサを有していてもよい。
【0081】
(c)上記実施形態では、制御部10は加速度算出部12を有しているが、制御部10は加速度算出部12を有していなくてもよい。例えば、制御部10が加速度算出部12を有する代わりに、駆動ユニット20が加速度センサを有していてもよい。
【0082】
(d)上記実施形態では、制御部10は駆動力算出部15を有しているが、制御部10の構成はこれに限定されない。例えば、
図9に示すように、制御部10は、駆動力算出部15を有していなくてもよい。
【0083】
この場合、アシスト力算出部16は、加速度算出部12によって算出された加速度a、設定重量入力部31に入力された設定重量M、転がり抵抗算出部14によって算出された転がり抵抗Fr、動力損失算出部13によって算出された動力損失Fv、及びアシスト率αに基づき、アシスト力を算出する。
【0084】
詳細には、アシスト力算出部16は、以下の式(11)によってアシスト力Faを算出する。
【0085】
【符号の説明】
【0086】
10 :制御部
20 :駆動ユニット
21 :電気モータ
26 :モード切替操作部
27 :自走操作部
28 :補正操作部