(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126114
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】充電状態表示システムおよび充電状態表示方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240912BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H02J7/02 U
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034291
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】寺平 利来
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA00
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA01
5G503EA08
(57)【要約】
【課題】充電制御ICの機種変更時に回路の大幅な設計変更を不要とし、かつ、新たな充電制御ICの選定に大きな制約を受けない充電状態表示システムおよび充電状態表示方法を提供する。
【解決手段】充電制御IC2から、二次電池3の充電が途中であることを示す充電途中信号、又は、二次電池3の充電が完了(停止)したことを示す充電完了(停止)信号のいずれかの充電状態信号が入力されるCPU4を備え、CPU4は、二次電池3の充電容量と、充電状態信号とに基づいて、二次電池3の充電状態を判定し、その判定結果をLED5へ出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に内蔵された二次電池の充電を制御する充電制御ICと、前記二次電池の充電状態を表示する表示手段と、を備える充電状態表示システムであって、
前記充電制御ICから、前記二次電池の充電が途中であることを示す充電途中信号、又は、前記二次電池の充電が完了(停止)したことを示す充電完了(停止)信号のいずれかの充電状態信号が入力される充電状態判定手段を備え、
前記充電状態判定手段は、前記二次電池の充電容量と、前記充電状態信号とに基づいて、前記二次電池の前記充電状態を判定し、その判定結果を前記表示手段へ出力する、
ことを特徴とする、充電状態表示システム。
【請求項2】
前記充電状態判定手段は、前記二次電池の充電容量と充電電流値とに基づいて、前記二次電池が満充電されるまでに必要な予測充電時間を推定し、
前記予測充電時間を経過しても充電が完了しない場合、又は、前記予測充電時間を経過しても前記二次電池の充電容量が変化しない場合は、充電異常と判定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の充電状態表示システム。
【請求項3】
前記充電状態判定手段は、前記電子機器の制御に用いられるCPUである、
ことを特徴とする、請求項1又は2に充電状態表示システム。
【請求項4】
電子機器に内蔵された二次電池の充電状態を表示する充電状態表示方法であって、
前記二次電池の充電を制御する充電制御ICにより、前記二次電池の充電が途中であることを示す充電途中信号、又は、前記二次電池の充電が完了したことを示す充電完了(停止)信号のいずれかの充電状態信号を出力し、
前記二次電池の充電状態を判定する充電状態判定手段により、前記二次電池の充電容量と、前記充電状態信号とに基づいて、前記二次電池の前記充電状態を判定し、
前記二次電池の充電状態を表示する表示手段により、前記判定の結果を表示する、
ことを特徴とする、充電状態表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充電状態を表示するシステムおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組み込み機器などの電子機器には、一般に、バックアップ動作用に二次電池が内蔵されており、それぞれの機器はこの二次電池の充電機能を持っている。多くの機器では、二次電池の充電制御に充電制御ICという充電に特化したIC(integrated circuit)を利用している。充電制御ICには、LEDを使って充電状態を表示するための出力端子を備え、充電途中や充電完了といった充電状態をユーザーが確認できるようにしているものも多い。
【0003】
このような充電制御ICとしては、例えば、非特許文献1および2に開示されたものがある。非特許文献1に開示されたリチウムイオン電池用の充電制御IC(NJW4108)は、LED-G端子およびLED-R端子にLEDを取り付けることにより、充電状態を表示できる。また、非特許文献2に開示されたリチウムイオン電池用の充電制御IC(XC6810)は、CSO端子にLEDを取り付けることにより、充電状態を表示できる。
【0004】
図4に、これらの充電制御ICを用いた、従来の充電状態表示システム101を示す。従来の充電状態表示システム101では、充電制御IC102が充電電圧および充電電流を監視しながら二次電池103の充電制御を行うとともに、二次電池103の充電状態を判定し、その判定結果がLED105に表示されていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】NJW4108データシート、13頁、2013年、新日本無線
【非特許文献2】XC6810データシート、21頁、トレックス・セミコンダクター株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、充電制御ICは機種ごとに充電状態の表示形式が異なる場合が多い。そのため、それまで使用していた機種の充電制御ICが製造中止(廃盤)等の理由により使用できなくなり、別の機種の充電制御ICに変更しなければならなくなった場合、充電制御ICの周囲の回路に大幅な設計変更が必要となるという問題があった。また、変更前の充電制御ICが備えていた機能が新たに採用する充電制御ICでも必要となる場合、その機能の有無が新たな充電制御ICの選定条件となってしまい、選定に大きな制約を受けてしまう。
【0007】
また、例えば、電池異常や電池外れなどの充電異常を表示する機能を新たに追加したいような場合、従来の充電状態表示システム101では、充電制御IC自体をそのような機能を持つ高機能なものと交換する必要があり、その場合には、回路の大幅な設計変更とコストアップが生じるという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、充電制御ICの機種変更時に回路の大幅な設計変更を不要とし、かつ、新たな充電制御ICの選定に大きな制約を受けない充電状態表示システムおよび充電状態表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電子機器に内蔵された二次電池の充電を制御する充電制御ICと、前記二次電池の充電状態を表示する表示手段と、を備える充電状態表示システムであって、前記充電制御ICから、前記二次電池の充電が途中であることを示す充電途中信号、又は、前記二次電池の充電が完了(停止)したことを示す充電完了(停止)信号のいずれかの充電状態信号が入力される充電状態判定手段を備え、前記充電状態判定手段は、前記二次電池の充電容量と、前記充電状態信号とに基づいて、前記二次電池の前記充電状態を判定し、その判定結果を前記表示手段へ出力する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の充電状態表示システムであって、前記充電状態判定手段は、前記二次電池の充電容量と充電電流値とに基づいて、前記二次電池が満充電されるまでに必要な予測充電時間を推定し、前記予測充電時間を経過しても充電が完了しない場合、又は、前記予測充電時間を経過しても前記二次電池の充電容量が変化しない場合は、充電異常と判定する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に充電状態表示システムであって、前記充電状態判定手段は、前記電子機器の制御に用いられるCPUである、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、電子機器に内蔵された二次電池の充電状態を表示する充電状態表示方法であって、前記二次電池の充電を制御する充電制御ICにより、前記二次電池の充電が途中であることを示す充電途中信号、又は、前記二次電池の充電が完了(停止)したことを示す充電完了(停止)信号のいずれかの充電状態信号を出力し、前記二次電池の充電状態を判定する充電状態判定手段により、前記二次電池の充電容量と、前記充電状態信号とに基づいて、前記二次電池の前記充電状態を判定し、前記二次電池の充電状態を表示する表示手段により、前記判定の結果を表示する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1および請求項4に記載の発明によれば、表示手段は、充電制御ICから出力される充電状態信号をそのまま表示するのでなく、充電状態判定手段からの判定結果を表示するので、充電制御ICの表示形式の影響を受けることがない。そのため、何等かの理由でそれまで使用していた機種とは異なる機種の充電制御ICを使用しなければならなくなった場合でも、周辺回路の大幅な設計変更を行なうことなく、それまでと同じ形式で充電状態を表示することが可能となり、新たな充電制御ICを選定する際の制約を小さくすることが可能となる。また、充電状態判定手段は、充電制御ICから充電途中か、又は、充電完了(停止)かという情報だけを取得すれば充電状態を判定できるので、システムに用いる充電制御ICとしては高機能なものが不要となり、部品コストの削減が可能となる。さらに、充電状態判定手段の判定結果を用いて充電状態を表示するので、低機能な充電制御ICを用いた場合でも、LEDのレベルメータやLCD等を用いて情報量の多い充電状態表示を行なうことが可能である。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、充電状態判定手段が充電制御ICから独立して、二次電池の充電状態を判定するので、高機能な充電制御ICを用いなくても、電池異常や電池外れなどの詳細な判定結果を出力することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、電子機器に内蔵され、電子機器の制御に用いられるCPUを充電状態判定手段として用いるので、部品点数を増加させることなく、低コストでシステムを実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る充電状態表示システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の充電状態表示システムにより実行される処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】この発明の実施の形態2における充電状態判定手順を示すフローチャートである。
【
図4】従来の充電状態表示システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る充電状態表示システム1の概略構成を示すブロック図である。充電状態表示システム1は、電子機器に内蔵された二次電池3の充電状態を表示するシステムであって、充電制御IC2と、CPU4(充電状態判定手段)と、LED5(表示手段)とを備える。電子機器としては、特に限定されないが、組み込み機器などであって、例えば、ショベルやクレーンなどの建機に内蔵されるロケータ装置が挙げられる。なお、この実施の形態では、表示手段としてLED5を用いるが、表示手段はこれに限定されない。具体的には、点灯、点滅、色などによる表示が可能なものであれば良く、例えば、LCDが挙げられる。
【0019】
二次電池3は、充電制御IC2からの充電出力により充電される。充電制御IC2は、充電電圧および充電電流を監視しながら二次電池3の充電制御を行う。充電方法としては、定電流充電、定電流定電圧充電などがあり、用途や目的に応じて使い分ければ良い。
【0020】
充電制御IC2は、二次電池3の充電状態に関する充電状態信号を出力する。その充電状態信号は、具体的には、二次電池3の充電が途中であることを示す充電途中信号、又は、二次電池3の充電が完了(停止)したことを示す充電完了(停止)信号のいずれかである。本発明のシステムに用いる充電制御IC2は、これら2つの充電状態信号を出力する機能を有するものであれば良く、特に高度な機能は必要ない。充電制御IC2は、この充電状態信号をCPU4に出力する。
【0021】
CPU4には、本発明の充電状態判定手段として機能するための充電状態判定プログラムが格納されたメモリ等の記憶装置(図示せず)が接続されている。CPU4は、記憶装置から読み出した充電状態判定プログラムに基づいて動作することにより、充電状態判定手段及び表示動作として機能する。
【0022】
CPU4は、充電状態信号と、二次電池3の充電容量とに基づいて、充電状態に関する判定を行う。ここで、二次電池3の充電容量とは、現時点で二次電池3に充電されている電気量をいう。CPU4は、この充電容量をA/Dコンバータ(図示せず)を介して取得する。なお、二次電池に印加される充電電流が一定でない場合、CPU4は、充電電流値もA/Dコンバータを介して取得する。
【0023】
CPU4は、例えば、充電状態信号が「充電途中」である場合には、充電容量に依らず、充電途中と判定し、充電状態信号が「充電完了(停止)」であり、且つ、充電容量が電池容量に達している場合に、充電完了(停止)と判定する。また、CPU4は、必要な充電時間を超えて充電制御ICより「充電途中」信号が出力されている場合、あるいは、充電状態信号が「充電完了」であるにも関わらず充電容量が電池容量未満である場合には、充電異常と判定結果する。CPU4は、このような判定結果をLED5に出力する。
【0024】
なお、CPU4は、このシステム専用のものであっても良いが、電子機器の制御に用いるために、予め電子機器に内蔵されているものを共用しても良い。後者の場合、部品点数を増加させることなく、低コストでシステムを実施することができるため好ましい。
【0025】
LED5は、CPU4から得た判定結果を所定の形式で表示する。表示の形式としては、ユーザーがマニュアル等で確認しなくても理解できるような、簡易で直感的な表示とすることが好ましい。例えば、充電完了(停止)を緑色、充電途中を緑色の点滅、充電異常を赤色と表示しても良い。但し、表示の形式はこれらに限定されない。
【0026】
次に、
図2に示すフローチャートに従って、上記の実施の形態1に係る作用について説明する。充電状態表示システム1を構成するCPU、充電制御IC及び周辺回路へ電源が投入されると、充電制御IC2から二次電池3に充電電流を供給されて、充電が開始する(ステップS1)。充電制御IC2は、二次電池3に関する充電状態信号をCPU4へ出力する(ステップS2)。CPU4は、充電制御IC2からこの充電状態信号を取得するとともに、二次電池3の充電容量をA/Dコンバータを介して取得し、これらの情報に基づき二次電池3の充電状態を判定し、その判定結果をLED5に出力する(ステップS3)。LED5は、その判定結果を所定の形式で表示する(ステップS4)。
【0027】
以上説明した通り、この実施の形態に係る充電状態表示システム1によれば、LED5は、充電制御IC2から出力される充電状態信号をそのまま表示するのでなく、CPU4からの判定結果を表示するので、充電制御IC2の表示形式の影響を受けることがない。そのため、何等かの理由でそれまで使用していた機種とは異なる機種の充電制御IC2を使用しなければならなくなった場合でも、周辺回路の大幅な設計変更を行なうことなく、それまでと同じ形式で充電状態を表示することが可能となり、新たな充電制御IC2を選定する際の制約を小さくすることが可能となる。また、CPU4は、充電制御IC2から充電途中か、又は、充電完了(停止)かという情報だけを取得すれば充電状態を判定できるので、システムに用いる充電制御IC2としては高機能なものが不要となり、部品コストの削減が可能となる。さらに、CPU4の判定結果を用いて充電状態を表示するので、低機能な充電制御IC2を用いた場合でも、LEDのレベルメータやLCD等を用いて情報量の多い充電状態表示を行なうことが可能である。
【0028】
(実施の形態2)
この実施の形態に係る充電状態表示システム1は、CPU4が二次電池3の充電容量と充電電流値とに基づいて、二次電池3が満充電されるまでに必要な予測充電時間を推定し、充電異常についての判定を行う点において上記の実施の形態1と構成が異なるものの、その他の構成は上記の実施の形態1と同等であるので、上記の実施の形態1と同等の構成については同一符号を付することでその説明を省略する。
【0029】
図3のフローチャートに示す通り、この実施の形態では、CPU4は、A/Dコンバータ(図示せず)を介して二次電池3の充電容量と充電電流値を取得し(ステップS3a)、その充電容量と充電電流値とに基づいて、二次電池3が満充電されるまでに必要な予測充電時間を推定し(ステップS3b)、その上で、充電状態についての判定を行う(ステップS3c)。ここで、予測充電時間は、二次電池3が空の状態から満充電されるまでに必要な時間ではなく、充電開始時点から満充電されるまでに必要な時間を意味するものとする。また、この実施の形態では、予測充電時間は、充電制御IC2から充電途中信号が出力されている間だけカウントされるものとする。
【0030】
この実施の形態では、予測充電時間を考慮することによって、より正確、かつ、高精度に二次電池3の状態を判定することを特徴とする。ここで、充電異常としては、例えば、電池異常と電池外れが挙げられる。そして、例えば、充電制御IC2から充電途中信号が出力されていながら、予測充電時間を経過して充電容量が変化しない場合には、電池異常と判定する。また、この時の充電容量が0Vに等しい場合に、電池外れと判定する。
【0031】
以上説明した通り、この実施の形態に係る充電状態表示システム1によれば、CPU4が充電制御IC2から独立して、二次電池3の充電状態を判定するので、高機能な充電制御IC2を用いなくても、電池異常や電池外れなどの詳細な判定結果を出力することが可能となる。
【0032】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、CPU4が充電電流や充電容量を取得しているが、CPU4以外、例えば、別途設けたセンサーなどが取得する構成としても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 充電状態表示システム
2 充電制御IC
3 二次電池
4 CPU(充電状態判定手段)
5 LED(表示手段)
101 充電状態表示システム
102 充電制御IC
103 二次電池
104 CPU(充電状態判定手段)
105 LED(表示手段)