(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126116
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20240912BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240912BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20240912BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K3/26
C08J3/12 A CEV
C08J3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034295
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲佑
(72)【発明者】
【氏名】大山 雄也
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA22
4F070AC16
4F070AC43
4F070AE01
4F070AE02
4F070DA41
4F070FA03
4F070FB06
4J002BD031
4J002BD032
4J002CD162
4J002DE236
4J002EH097
4J002EH137
4J002EW047
4J002FD016
4J002FD022
4J002FD027
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造する。
【解決手段】樹脂組成物の製造方法では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。樹脂組成物の製造方法は、樹脂形材を粉砕して粉砕材を形成する粉砕工程と、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする第1粉末材、炭酸カルシウムを主成分とする第2粉末材、及び、可塑剤を加熱しつつ混練して混練物を得る混練工程と、混練物と粉砕材を加熱しつつ混練して、混練物と粉砕材が混合された樹脂組成物を製造する混合工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂形材を粉砕して粉砕材を形成する粉砕工程と、
硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする第1粉末材、炭酸カルシウムを主成分とする第2粉末材、及び、可塑剤を加熱しつつ混練して混練物を得る混練工程と、
前記混練物と前記粉砕材を加熱しつつ混練して、前記混練物と前記粉砕材が混合された前記樹脂組成物を製造する混合工程と、
を有する樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混練物を加工して前記混練物のペレットを成形する工程を有し、
前記混合工程では、前記混練物のペレットと前記粉砕材を加熱しつつ混練する樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混練工程では、前記第1粉末材の粒径が500μm以下である樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混練工程では、100重量部の前記第1粉末材に対し、50~150重量部の前記第2粉末材、及び、100~250重量部の前記可塑剤を添加する樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程では、100重量部の前記粉砕材に対し、80重量部以上の前記混練物を添加する樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程では、前記粉砕材の最大寸法が15mm以下である樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記粉砕工程では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする本体部に軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする付属部が付属する前記樹脂形材を粉砕する樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂窓等の建具では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材が使用されている。樹脂形材は、硬質ポリ塩化ビニルの樹脂材料を加熱して溶融し、溶融した樹脂材料を押出成形して製造される。このような樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する場合には、例えば、樹脂形材を粉砕した粉砕材と液体の可塑剤を混練し、粉砕材の硬質ポリ塩化ビニルを可塑剤により軟質化して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。
【0003】
ところが、製造後の樹脂形材では、樹脂の粒子が押出成形により潰れて、押出成形前に存在した樹脂の粒子内の空隙がほとんどなくなる。これに伴い、樹脂形材の粉砕材と可塑剤の混練中に、可塑剤が粉砕材に浸み込み難くなり、粉砕材同士が可塑剤によって滑り易くもなる。そのため、樹脂形材の粉砕材と可塑剤が混練され難くなり、粉砕材の硬質ポリ塩化ビニルを可塑剤により軟質化するのが困難となる。これに対し、従来、硬質塩化ビニル系樹脂成形品を粉砕した粒径3mm以下の粉砕物、可塑剤、及び、充填材をミキサーで混合して、軟質塩化ビニル系樹脂組成物を製造する軟質塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された従来の軟質塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法では、充填材により可塑剤を吸収して、粉砕物に可塑剤を充填材とともに混合する。しかしながら、主に充填材が吸収する分の可塑剤が粉砕物に混合されるため、可塑剤の添加量が制限されて、柔らかい軟質塩化ビニル系樹脂組成物を製造するのが困難になる虞がある。また、全ての粉砕物の粒径を3mm以下にする必要があり、硬質塩化ビニル系樹脂成形品のリサイクルの効率に影響が生じることも懸念される。従って、従来の軟質塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法においては、軟質塩化ビニル系樹脂組成物を容易に製造する観点から、改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂形材を粉砕して粉砕材を形成する粉砕工程と、
硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする第1粉末材、炭酸カルシウムを主成分とする第2粉末材、及び、可塑剤を加熱しつつ混練して混練物を得る混練工程と、
前記混練物と前記粉砕材を加熱しつつ混練して、前記混練物と前記粉砕材が混合された前記樹脂組成物を製造する混合工程と、
を有する樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造手順を示すフローチャートである。
【
図2】本実施形態の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造過程の各段階の状態を模式的に示す図である。
【
図3】本実施形態の混練物と混練する粉砕材の例を示す図である。
【
図4】本実施形態の樹脂形材の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物の製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。これにより、一旦製造された樹脂形材を再利用して、樹脂形材を樹脂組成物にリサイクルし、新たに樹脂組成物を生成する。
【0011】
図1は、本実施形態の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造手順(工程)を示すフローチャートである。
図2は、本実施形態の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造過程の各段階の状態を模式的に示す図である。
【0012】
図示のように、不用となった樹脂形材10(
図2A参照)を回収する(
図1のS101)。樹脂形材10は、樹脂の押出成形により成形された形材(押出形材)である。樹脂は、硬質ポリ塩化ビニルであり、樹脂形材10は、硬質ポリ塩化ビニルからなる硬質ポリ塩化ビニル形材である。硬質ポリ塩化ビニルは、可塑剤を混合していないポリ塩化ビニル(PVC)であり、ポリ塩化ビニルに他の成分(例えば、各種の安定剤、改良剤)が混合されていてもよい。なお、
図2Aでは、樹脂形材10の長手方向に直交する断面を示している。
【0013】
ここでは、樹脂形材10は、建具である樹脂窓に使用される樹脂製の成形品(樹脂成形品)である。樹脂窓は、樹脂製の枠(樹脂枠)と、樹脂製の框(樹脂框)を含む障子と、を有しており、樹脂枠と樹脂框は、それぞれ樹脂形材10からなる。また、樹脂形材10として、樹脂窓の樹脂形材10の端材を回収する。樹脂形材10の端材は、例えば、樹脂窓の製造現場での端材、又は、市場屑として回収された端材である。これに対し、樹脂形材10は、廃棄される樹脂形材10であってもよい。
【0014】
次に、粉砕機により、回収された樹脂形材10を粉砕して、樹脂形材10の粉砕材20(
図2B参照)を形成する(
図1のS102)。粉砕機は、例えば、衝撃式粉砕機であるインパクトクラッシャーである。樹脂形材10が長い又は大きいときには、粉砕機による粉砕前に、樹脂形材10を切断する等して、樹脂形材10を粉砕機により粉砕可能な大きさに形成する。また、樹脂形材10は、2段階で粉砕してもよい。この場合には、第1段階の粗い粉砕用の粉砕機により、樹脂形材10を粗く粉砕した後に、第2段階の細かい粉砕用の粉砕機により、粗い粉砕材20を細かい粉砕材20に粉砕する。このようにして、樹脂形材10を粉砕した粉砕材20を生成する。
【0015】
樹脂形材10は、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の原料の一部である。軟質ポリ塩化ビニルは、可塑剤を混合したポリ塩化ビニルであり、可塑剤を含有する。また、樹脂組成物は、軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする組成物であり、軟質ポリ塩化ビニルの成形品の原料となる。可塑剤は、硬質ポリ塩化ビニルに柔軟性を与える添加剤であり、硬質ポリ塩化ビニルを軟質化する。
【0016】
可塑剤は、例えば、ジブチルフタレート(DBP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DOP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジイソノニルフタレート(DINP)等のフタル酸エステル系可塑剤、トリス(2-エチルヘキシル)トリメリテート(TOTM)、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジシソデシルアジペート(DIDA)、ジブチルセバケート(DBS)等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、トリフェニルホスフェート(TPP)等のリン酸エステル系可塑剤、又は、ポリエステル類、エポキシ化大豆油等の可塑剤である。
【0017】
樹脂形材10の粉砕材20を混練する前に(
図2C参照)、加熱混練機により、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする第1粉末材30、炭酸カルシウムを主成分とする第2粉末材40、及び、液体の可塑剤50を加熱しつつ混練する(
図1のS103)。これにより、第1粉末材30、第2粉末材40、及び、可塑剤50を混合して、第1粉末材30、第2粉末材40、及び、可塑剤50を混練した混練物60を得る(
図2D参照)。加熱混練機は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーであり、混練中の混練物60にせん断力を加える。加熱混練機により、第1粉末材30、第2粉末材40、及び、可塑剤50は、所定の温度で加熱されて、所定の温度で混練される。
【0018】
第1粉末材30は、粉状に形成された硬質ポリ塩化ビニルの粉末(硬質ポリ塩化ビニル粉末)であり、粉砕材20よりも小さい粉末(微粉末)である。また、第1粉末材30は、未使用の硬質ポリ塩化ビニル粉末、又は、リサイクルされた硬質ポリ塩化ビニル粉末である。リサイクルされた硬質ポリ塩化ビニル粉末を第1粉末材30として用いる場合には、粉砕機により、樹脂形材10を粉砕材20よりも小さい粉末になるまで粉砕して、樹脂形材10を粉砕した硬質ポリ塩化ビニル粉末(第1粉末材30)を生成する。このようにして、樹脂形材10から第1粉末材30を形成する。
【0019】
第2粉末材40は、粉状に形成された炭酸カルシウムの粉末(炭酸カルシウム粉末)であり、粉砕材20よりも小さい粉末(微粉末)である。第1粉末材30の粒径と第2粉末材40の粒径は、それぞれ500μm以下である。ここでは、粒径は、日本産業規格(JIS Z 8801-1:2019)に準拠した公称目開きのふるいを用いて、ふるい分けされた粒径であり、粒径が500μm以下とは、公称目開きが500μmのふるいを通過する粒径をいう。粒径が500μm以下の第1粉末材30と第2粉末材40を可塑剤50と混練して、第1粉末材30、第2粉末材40、及び、可塑剤50の混練物60を生成する。
【0020】
硬質ポリ塩化ビニルの第1粉末材30を100重量部(phr)としたとき、炭酸カルシウムの第2粉末材40は、50~150重量部であり、可塑剤50は、100~250重量部である。このように、混練物60を混練する際には、100重量部の第1粉末材30に対し、50~150重量部の第2粉末材40、及び、100~250重量部の可塑剤50を添加して混練する。また、混練物60(第1粉末材30、第2粉末材40、可塑剤50)を160~170℃の範囲内の温度で加熱しつつ混練して、混練物60の混練を終了させる。
【0021】
混練物60の混練中には、可塑剤50が第1粉末材30と第2粉末材40に吸収される。その際、混練に用いる硬質ポリ塩化ビニルと炭酸カルシウムがそれぞれ粉末(第1粉末材30、第2粉末材40)であるため、可塑剤50が第1粉末材30と第2粉末材40に吸収され易く、可塑剤50が第1粉末材30と第2粉末材40に効率よく混練される。可塑剤50を第1粉末材30と第2粉末材40に吸収させつつ、第1粉末材30、第2粉末材40、及び、可塑剤50を完全に混合する。
【0022】
混練物60は、第1粉末材30、第2粉末材40、及び、可塑剤50を混合した中間混合物であり、最終混合物である軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する中間段階で生じる。また、混練物60は、硬質ポリ塩化ビニル、炭酸カルシウム、及び、可塑剤50を含有し、軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする。第1粉末材30に含まれる硬質ポリ塩化ビニルと可塑剤50が混合されることで、第1粉末材30に含まれる硬質ポリ塩化ビニルが可塑剤50により軟質化する。これにより、軟質ポリ塩化ビニルが生成されるとともに、第2粉末材40に含まれる炭酸カルシウムを含有する軟質ポリ塩化ビニルの混練物60が生成される。
【0023】
次に、加熱混練機により、第1粉末材30、第2粉末材40、及び、可塑剤50の混練物60と樹脂形材10の粉砕材20を加熱しつつ混練して、混練物60と粉砕材20が混合された軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する(
図1のS104)。加熱混練機は、混練中の混練物60と粉砕材20(混練物60と粉砕材20の混練体)にせん断力を加える。加熱混練機により、混練物60と粉砕材20は、所定の温度で加熱されて、所定の温度で混練される。混練物60と粉砕材20を完全に混合して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を生成する。
【0024】
ここでは、混練物60を加工して、混練物60のペレット61を成形する(
図2E参照)。また、混練物60と粉砕材20の混練時には、混練物60のペレット61と粉砕材20を加熱しつつ混練する。ペレット61は、粒状に成形された混練物60の粒材であり、軟質ポリ塩化ビニルを主成分として、炭酸カルシウムを含有する。例えば、押出成形を含むペレット61の成形加工により、混練物60からペレット61を成形する。
【0025】
樹脂組成物は、軟質ポリ塩化ビニルを含む混練物60(ペレット61)と硬質ポリ塩化ビニルを含む粉砕材20が混合された混合物であり、軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする。混練物60と粉砕材20が混練されることで、混練物60に含まれる軟質ポリ塩化ビニルと粉砕材20に含まれる硬質ポリ塩化ビニルが混合される。また、混練物60の軟質ポリ塩化ビニルに含まれる可塑剤50と粉砕材20に含まれる硬質ポリ塩化ビニルが混合されて、粉砕材20に含まれる硬質ポリ塩化ビニルが可塑剤50により軟質化する。これにより、軟質ポリ塩化ビニルが生成されるとともに、混練物60に含まれる炭酸カルシウムを含有する軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物が生成される。
【0026】
混練物60と粉砕材20の混練時には(
図2F参照)、混練物60に含まれる固体の炭酸カルシウム62(例えば、炭酸カルシウムの結晶)が粉砕材20に食い込む。また、炭酸カルシウム62により、粉砕材20が混練物60に引っ掛かるとともに、粉砕材20同士が引っ掛かる。これにより、混練中の混練物60と粉砕材20に作用する摩擦が大きくなり、混練物60と粉砕材20が混ざり易くなる。その結果、混練物60と粉砕材20の混練が促進される。
【0027】
樹脂形材10の粉砕材20を100重量部としたとき、混練物60(ペレット61)は、80重量部以上である。このように、混練物60と粉砕材20を混練する際には、100重量部の粉砕材20に対し、80重量部以上の混練物60を添加して混練する。また、混練物60と粉砕材20を160~170℃の範囲内の温度で加熱しつつ混練して、混練物60と粉砕材20の混練を終了させる。
【0028】
混練物60と粉砕材20は、任意の割合で混練及び混合可能である。また、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の硬さは、含有する可塑剤50の濃度(例えば、質量パーセント濃度)によって変化し、可塑剤50の濃度に対応した硬さになる。混練物60に混練した可塑剤50の重量部に基づき、粉砕材20に添加する混練物60の重量部を調整することで、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物が含有する可塑剤50の濃度及び樹脂組成物の硬さが調整される。樹脂組成物が含有する可塑剤50の濃度を目標濃度に調整して、樹脂組成物の硬さを目標硬さに調整する。
【0029】
図3は、本実施形態の混練物60と混練する粉砕材20の例を示す図である。
図示のように、樹脂形材10の粉砕により、様々な形状及び最大寸法Rの粉砕材20が形成される。粉砕材20の最大寸法Rは、それぞれの粉砕材20の外形のうち最も寸法が大きい部分の寸法である。混練物60との混練に用いる粉砕材20の最大寸法Rは、15mm以下である。そのため、樹脂形材10の粉砕時に、粉砕材20の最大寸法Rが15mm以下になるように、樹脂形材10を粉砕する。或いは、樹脂形材10の粉砕後に、分離装置等を用いて、最大寸法Rが15mmよりも大きい粉砕材20を分離して除去し、最大寸法Rが15mm以下の粉砕材20を選別する。最大寸法Rが15mm以下の粉砕材20を混練物60と混練して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を生成する。
【0030】
混練物60と粉砕材20の混練が進行するのに伴い、混練物60と粉砕材20を混練した混練体が次第に柔らかくなり、混練体の粘度が徐々に低下して、混練体が練り難くなる。これにより、混練体の混練の進行が遅くなる。そこで、混練体の混練中には、混練体の加熱の温度を低下させながら、混練体を混練する。混練体の粘度の低下に対応して、混練体の加熱の温度を次第に低下させて、混練体の粘度を調整し、混練体の粘度の低下を抑制する。加熱の温度の低下により、混練体の粘度を混練に適した粘度に調整して、混練体の混練を進行させる。
【0031】
加熱混練機により、混練物60と粉砕材20の混練体の加熱の温度を第1温度から第2温度に低下させながら、混練体を混練する。第1温度は、混練体の加熱の温度を低下させる前の温度である。第2温度は、混練体の加熱の温度の低下を終了させる温度であり、第1温度よりも低い温度である。混練体を第1温度で加熱しつつ混練し、混練体の混練の途中段階で、混練体の加熱の温度を第1温度から低下させ始める。また、混練体の加熱の温度を第1温度から第2温度まで次第に低下させながら、混練体を混練し、混練体の加熱の温度が第2温度になったときに、混練体の加熱の温度の低下を終了させる。その後、混練体の加熱の温度を第2温度に維持し、混練体を第2温度で加熱しつつ混練して、混練体の混練を終了させる。
【0032】
軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造が完了した後に、溶けた状態の樹脂組成物を加熱混練機から排出させて、樹脂組成物を並列したロール同士の間を通す(
図1のS105)。その際、樹脂組成物を相対する2つ又は複数のロールの外周面の間を通して圧縮する。続いて、押出成形機により、樹脂組成物を押出成形し、押出成形された樹脂組成物を順次切断して、軟質ポリ塩化ビニルのペレットを成形する(
図1のS106)。その後、軟質ポリ塩化ビニルのペレットを用いて、軟質ポリ塩化ビニルの成形品を成形する(
図1のS107)。軟質ポリ塩化ビニルの成形品は、例えば、建具に使用されるエアタイト材、ガスケットである。
【0033】
以上説明した樹脂組成物の製造方法では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする第1粉末材30と可塑剤50を混練する際に、炭酸カルシウムを主成分とする第2粉末材40を添加する。可塑剤50が第2粉末材40に吸収されることで、混練物60に含有可能な可塑剤50の量を増加させることができる。また、硬質ポリ塩化ビニルと炭酸カルシウムを粉末(第1粉末材30、第2粉末材40)にすることで、可塑剤50を第1粉末材30と第2粉末材40に吸収させ易くすることができる。これにより、可塑剤50の添加量を増加させることができる。また、可塑剤50を第1粉末材30と第2粉末材40に効率よく混練して、混練物60に含有される可塑剤50の量を増加させることができる。可塑剤50を混練物60に馴染み易くして、混練物60の混練に要する時間を短縮することもできる。
【0034】
樹脂形材10の粉砕材20を混練物60と混練して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。このように、比較的容易に形成可能な粉砕材20を用いて、樹脂組成物を製造することで、樹脂形材10を効率よくリサイクルすることができる。混練物60に含まれる炭酸カルシウム62により、混練物60と粉砕材20を円滑に混練することができ、混練物60と粉砕材20の混練に要する時間を短縮することもできる。
【0035】
従って、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材10をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造することができる。また、樹脂組成物中の可塑剤50の濃度を増加させることができ、製造可能な樹脂組成物の硬さの幅を広げることができる。柔らかい樹脂組成物を製造することもできる。炭酸カルシウムの添加量を増やしても、可塑剤50の濃度を増加させて、樹脂組成物の硬さを低くすることができる。これにより、樹脂組成物の物性の低下を抑制することができる。そのため、炭酸カルシウムの添加量を増加させることができ、これにより、樹脂組成物の材料のコストを低減することができる。
【0036】
混練物60からペレット61を成形して、混練物60のペレット61と粉砕材20を混練する。そのため、混練中に、混練物60のペレット61と粉砕材20を分散させて、混練物60と粉砕材20を円滑に混練することができる。
【0037】
第1粉末材30の粒径が500μmよりも大きいときには、可塑剤50の第1粉末材30への吸収に影響が生じる虞がある。第2粉末材40の粒径が500μmよりも大きいときには、可塑剤50の第2粉末材40への吸収に影響が生じる虞がある。これに対し、第1粉末材30の粒径が500μm以下のときには、可塑剤50が第1粉末材30に吸収され易くなり、可塑剤50を第1粉末材30に効率よく吸収させることができる。また、第2粉末材40の粒径が500μm以下のときには、可塑剤50が第2粉末材40に吸収され易くなり、可塑剤50を第2粉末材40に効率よく吸収させることができる。その結果、混練物60の混練を容易に行うことができる。
【0038】
100重量部の第1粉末材30に対し、第2粉末材40が50重量部よりも少ないときには、第2粉末材40に吸収される可塑剤50の量が少なくなることで、可塑剤50が混練物60に混練され難くなる虞がある。また、100重量部の第1粉末材30に対し、第2粉末材40が150重量部よりも多いときには、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物における炭酸カルシウムの濃度が高くなることで、樹脂組成物の硬さに影響が生じる虞がある。これに対し、100重量部の第1粉末材30に対し、第2粉末材40が50~150重量部の範囲内(50重量部以上150重量部以下)の重量部であるときには、可塑剤50が混練物60に混練され易くなり、樹脂組成物の硬さに対する炭酸カルシウムの影響を低減することもできる。100重量部の第1粉末材30に対し、第2粉末材40が80~120重量部であるのがより好ましい。これにより、可塑剤50を混練物60に容易に混練しつつ、樹脂組成物の硬さに対する炭酸カルシウムの影響をより低減することができる。
【0039】
100重量部の第1粉末材30に対し、可塑剤50が100重量部よりも少ないときには、混練物60に含有される可塑剤50の量が少なくなることで、混練物60と混練可能な粉砕材20の量が少なくなる虞がある。また、100重量部の第1粉末材30に対し、可塑剤50が250重量部よりも多いときには、可塑剤50が混練物60に混練され難くなる虞がある。これに対し、100重量部の第1粉末材30に対し、可塑剤50が100~250重量部の範囲内(100重量部以上250重量部以下)の重量部であるときには、可塑剤50が混練物60に混練され易くなり、混練物60と混練可能な粉砕材20の量を確保することもできる。100重量部の第1粉末材30に対し、可塑剤50が130~220重量部であるのがより好ましい。これにより、混練物60と混練可能な粉砕材20の量を確保しつつ、可塑剤50を混練物に円滑に混練することができる。
【0040】
100重量部の粉砕材20に対し、混練物60が80重量部よりも少ないときには、粉砕材20に添加される混練物60の可塑剤50の量が少なくなることで、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の硬さに影響が生じる虞がある。これに対し、100重量部の粉砕材20に対し、混練物60が80重量部以上の重量部であるときには、樹脂組成物の硬さを充分に低くすることができる。100重量部の粉砕材20に対し、混練物60が100重量部以上であるのがより好ましい。これにより、樹脂組成物を安定して軟質化することができる。
【0041】
樹脂形材10の粉砕材20の最大寸法Rが15mmよりも大きいときには、粉砕材20が大きくなることで、粉砕材20を混練物60及びペレット61と混練し難くなる虞がある。これに対し、粉砕材20の最大寸法Rが15mm以下のときには、混練中に、粉砕材20を分散させて、粉砕材20を混練物60及びペレット61と円滑に混練することができる。粉砕材20の最大寸法Rは、8mm以下であるのがより好ましい。これにより、粉砕材20を混練物60及びペレット61とより円滑に混練することができる。
【0042】
混練物60と粉砕材20の混練体を加熱の温度を低下させながら混練することで、混練体の粘度の低下を抑制して、混練物60と粉砕材20を円滑に混合することができる。また、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を効率よく製造することができる。樹脂組成物の原料の樹脂形材10が樹脂形材10(ここでは、樹脂窓の樹脂形材10)の端材であるときには、樹脂形材10の端材をリサイクルに活用して、樹脂組成物のコストを削減することができる。
【0043】
なお、第1粉末材30として、未使用の硬質ポリ塩化ビニル粉末とリサイクルされた硬質ポリ塩化ビニル粉末のいずれか一方又は両方を用いてもよい。また、混練物60からペレット61を成形せずに、混練後の混練物60を粉砕材20と混練してもよい。
【0044】
図4は、本実施形態の樹脂形材10の他の例を示す図であり、樹脂形材10の長手方向に直交する断面を示している。
図示のように、ここでは、樹脂形材10は、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする本体部11と、軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする付属部12を有している。付属部12は、硬質部である本体部11に付属する軟質部であり、本体部11よりも小さく形成されて、本体部11から突出する。樹脂形材10を粉砕する際には(
図1のS102)、本体部11から付属部12を除去せずに、本体部11に付属部12が付属する樹脂形材10を粉砕して、樹脂形材10の粉砕材20を形成する。
【0045】
形成される粉砕材20には、本体部11のみの粉砕材20、付属部12のみの粉砕材20、及び、本体部11と付属部12の両方を含む粉砕材20が含まれる。粉砕材20を混練物60と混練して、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する。このように、樹脂形材10の硬質ポリ塩化ビニルからなる本体部11から軟質ポリ塩化ビニルからなる付属部12を分別せずに、樹脂形材10を容易にリサイクルすることができる。
【0046】
次に、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物の製造方法の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されることはない。実施例では、
図1に示すフローチャートに従って、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造した。
【0047】
【0048】
表1は、実施例の各段階における各材料の重量部を示している。
混練物60を混練する際には、100重量部の第1粉末材30に対し、80重量部の第2粉末材40、及び、200重量部の可塑剤50を添加した。可塑剤50は、ジイソノニルアジペート(DINA)である。また、粉砕材20と混練物60を混練する際には、100重量部の粉砕材20に対し、114重量部の混練物60を添加した。製造後の軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物では、100重量部の粉砕材20に対し、第1粉末材30が30重量部、第2粉末材40が24重量部、可塑剤50が60重量部となった。実施例では、樹脂形材10をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物が製造された。
【0049】
以上のとおり、本実施形態では、以下の(1)~(7)に記載された樹脂組成物の製造方法を開示している。
【0050】
(1) 硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材を原料に用いて軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂形材を粉砕して粉砕材を形成する粉砕工程と、
硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする第1粉末材、炭酸カルシウムを主成分とする第2粉末材、及び、可塑剤を加熱しつつ混練して混練物を得る混練工程と、
前記混練物と前記粉砕材を加熱しつつ混練して、前記混練物と前記粉砕材が混合された前記樹脂組成物を製造する混合工程と、
を有する樹脂組成物の製造方法。
(1)に記載された樹脂組成物の製造方法では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂形材をリサイクルして、軟質ポリ塩化ビニルの樹脂組成物を容易に製造することができる。
【0051】
(2) (1)に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混練物を加工して前記混練物のペレットを成形する工程を有し、
前記混合工程では、前記混練物のペレットと前記粉砕材を加熱しつつ混練する樹脂組成物の製造方法。
(2)に記載された樹脂組成物の製造方法では、混練物のペレットと粉砕材を分散させて、混練物と粉砕材を円滑に混練することができる。
【0052】
(3) (1)又は(2)に記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混練工程では、前記第1粉末材の粒径が500μm以下である樹脂組成物の製造方法。
(3)に記載された樹脂組成物の製造方法では、可塑剤が第1粉末材に吸収され易くなり、可塑剤を第1粉末材に効率よく吸収させることができる。
【0053】
(4) (1)ないし(3)のいずれかに記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混練工程では、100重量部の前記第1粉末材に対し、50~150重量部の前記第2粉末材、及び、100~250重量部の前記可塑剤を添加する樹脂組成物の製造方法。
(4)に記載された樹脂組成物の製造方法では、可塑剤が混練物に混練され易くなり、樹脂組成物の硬さに対する炭酸カルシウムの影響を低減できるとともに、混練物と混練可能な粉砕材の量を確保することもできる。
【0054】
(5) (1)ないし(4)のいずれかに記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程では、100重量部の前記粉砕材に対し、80重量部以上の前記混練物を添加する樹脂組成物の製造方法。
(5)に記載された樹脂組成物の製造方法では、樹脂組成物の硬さを充分に低くすることができる。
【0055】
(6) (1)ないし(5)のいずれかに記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記混合工程では、前記粉砕材の最大寸法が15mm以下である樹脂組成物の製造方法。
(6)に記載された樹脂組成物の製造方法では、粉砕材を分散させて、粉砕材を混練物と円滑に混練することができる。
【0056】
(7) (1)ないし(6)のいずれかに記載された樹脂組成物の製造方法において、
前記粉砕工程では、硬質ポリ塩化ビニルを主成分とする本体部に軟質ポリ塩化ビニルを主成分とする付属部が付属する前記樹脂形材を粉砕する樹脂組成物の製造方法。
(7)に記載された樹脂組成物の製造方法では、樹脂形材の本体部から付属部を分別せずに、樹脂形材を容易にリサイクルすることができる。
【符号の説明】
【0057】
10・・・樹脂形材、11・・・本体部、12・・・付属部、20・・・粉砕材、30・・・第1粉末材、40・・・第2粉末材、50・・・可塑剤、60・・・混練物、61・・・ペレット、62・・・炭酸カルシウム、R・・・最大寸法。