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特開2024-126117シート状防音構造体、並びにこれを用いた自動車用部品およびダクト閉塞用蓋部品
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  • 特開-シート状防音構造体、並びにこれを用いた自動車用部品およびダクト閉塞用蓋部品 図1A
  • 特開-シート状防音構造体、並びにこれを用いた自動車用部品およびダクト閉塞用蓋部品 図1B
  • 特開-シート状防音構造体、並びにこれを用いた自動車用部品およびダクト閉塞用蓋部品 図1C
  • 特開-シート状防音構造体、並びにこれを用いた自動車用部品およびダクト閉塞用蓋部品 図2
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  • 特開-シート状防音構造体、並びにこれを用いた自動車用部品およびダクト閉塞用蓋部品 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126117
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】シート状防音構造体、並びにこれを用いた自動車用部品およびダクト閉塞用蓋部品
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034298
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩田 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】三浦 進
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061BB37
(57)【要約】
【課題】優れた防音性能を有するとともに、製造コストの低減を実現することが可能な防音手段を提供する。
【解決手段】弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを面状の区画部に区画する、桟部により区画された複数の開口部を有する支持部材と、前記シートと前記桟部との間の間隙を充填する充填部材とを備え、少なくとも一方の面の外周部に枠型形状の補強部材が配置されているシート状防音構造体により、上記課題は解決される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するシートと、
前記シートを支持するとともに前記シートを面状の区画部に区画する、桟部により区画された複数の開口部を有する支持部材と、
前記シートと前記桟部との間の間隙を充填する充填部材と、
を備え、
少なくとも一方の面の外周部に、枠型形状を有する補強部材が配置されている、シート状防音構造体。
【請求項2】
前記枠型形状が長方形枠状または円形枠状である、請求項1に記載のシート状防音構造体。
【請求項3】
前記補強部材の断面形状が枠型形状の長手方向に沿って略同一である、請求項1または2に記載のシート状防音構造体。
【請求項4】
前記補強部材が、前記支持部材と接合されて配置されている、請求項1または2に記載のシート状防音構造体。
【請求項5】
前記支持部材の曲げ剛性が、前記シートの曲げ剛性よりも大きい、請求項1または2に記載のシート状防音構造体。
【請求項6】
前記充填部材の密度が、前記支持部材の密度よりも小さい、請求項1または2に記載のシート状防音構造体。
【請求項7】
前記支持部材が、金網もしくは金網状の網状部材、または、エキスパンドメタルもしくはエキスパンドメタル状の網状部材である、請求項1または2に記載のシート状防音構造体。
【請求項8】
請求項1または2に記載のシート状防音構造体を備えた、自動車用部品。
【請求項9】
請求項1または2に記載のシート状防音構造体を備えた、ダクト閉塞用蓋部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用部品やダクト閉塞用蓋部品等に用いられうる、シート状防音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防音構造体としては、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に記載の防音構造体は、弾性を有するシートと、このシートを支持するとともに同シートを区画する支持部とを備えている。支持部は、多数の筒状セルを配列したハニカム構造体である。この防音構造体は、2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって高い防音性能を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6879369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1に記載されているような従来の防音構造体は、優れた防音性能を有する。その一方で、従来の防音構造体は、比較的高価であり、製造コストの低減が難しいという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、優れた防音性能を有するとともに、製造コストの低減を実現することが可能な防音手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、シート状防音構造体を提供する。このシート状防音構造体は、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを面状の区画部に区画する、桟部により区画された複数の開口部を有する支持部材と、前記シートと前記桟部との間の間隙を充填する充填部材とを備えている。そして、少なくとも一方の面の外周部に、枠型形状の補強部材が配置されている点に特徴がある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一形態に係るシート状防音構造体は、上記構成を採用したことにより、優れた防音性能を有するとともに、製造コストの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、本発明の一実施形態に係るシート状防音構造体の斜視図である。
図1B図1Bは、図1Aに示すB-B線に沿った断面図である。
図1C図1Cは、図1Bの拡大断面図である。
図2図2は、本実施形態に係るシート状防音構造体が防音性能を発揮するメカニズムを説明するための拡大断面図である。
図3図3は、ドラフターの構造を模式的に示す説明図である。
図4図4は、比較例1~比較例3および実施例1において作製したシート状防音構造体について防音性能(挿入損失)を測定した結果を示すグラフである。
図5図5は、比較例1、比較例3、比較例4および実施例2において作製したシート状防音構造体について防音性能(挿入損失)を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一形態は、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを面状の区画部に区画する、桟部により区画された複数の開口部を有する支持部材と、前記シートと前記桟部との間の間隙を充填する充填部材とを備え、少なくとも一方の面の外周部に枠型形状の補強部材が配置されているシート状防音構造体である。
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1Aは、本発明の一実施形態に係るシート状防音構造体の斜視図である。図1Bは、図1Aに示すB-B線に沿った断面図である。図1Cは、図1Bの拡大断面図である。図1A図1Cに示すシート状防音構造体1は、弾性を有するシート2と、このシート2を支持するとともにシート2を面状の区画部2Aに区画する支持部材としての金網3と、シート2と金網3との間に介在する充填部材としての接着剤4とを備えている。そして、シート状防音構造体1において、金網3は縦横の桟部3Aにより区画された複数の開口部3Hを有し、接着剤4は、シート2と桟部3Aとの間隙を充填するようにシート2とおよび金網3の桟部3Aに固定された構造を有している。また、金網3側の面の外周部には、長方形の枠型形状を有するゴム発泡体5が、金網3と接合されて配置されている。このゴム発泡体5は、補強部材として機能する。
【0012】
シート2は、例えば、合成ゴムを含むゴム製の平坦な膜状部材である。金網3は、シート2を支持するとともにシート2を面状の区画部2Aに区画する支持部材として機能する。このような支持部材としては、例えば、金網もしくは金網状の網状部材、または、エキスパンドメタルもしくはエキスパンドメタル状の網状部材が挙げられる。本実施形態に係るシート状防音構造体1は、このような素材を用いて支持部材を構成することで、その開口部3Hによりシート2に区画部2Aを容易に形成することができる。その結果、支持部材の開口部の断面比率を大きくすることができ、全体の質量低減に貢献することができる。また、上記のシートや支持部材は、一般的に、大量生産が可能であって、比較的安価である。
【0013】
本実施形態の支持部材である金網3は、シート2の曲げ剛性よりも大きい曲げ剛性を有している。これにより、音響波により支持部材の面で共振が生じ、支持部材に接しているシートにも面共振振動が生じる。その結果、共振周波数近傍で遮音性能が向上するという利点もある。ただし、場合によっては、支持部材の曲げ剛性がシートの曲げ剛性よりも小さいものであってもよい。なお、シートの曲げ剛性よりも大きい曲げ剛性を有する支持部材の構成材料としては、金属に限らず、例えば、加熱を伴うエキスパンド工法で製造可能であるプラスチックであってもよい。
【0014】
本実施形態における支持部材の構成材料である金網3等は、その構造上、厚さ方向に不可避的な凹凸が生じる場合がある。このため、金網3等の支持部材を平坦なシート2に直接固定すると、凹凸により桟部3Aとシート2との間に非接触部分が生じて防音性能が損なわれる虞がある。なお、図1Cでは、理解し易くする都合上、金網3の凹凸を誇張して示している。
【0015】
そこで、本実施形態に係るシート状防音構造体1において、シート2と金網3の桟部3Aとの間には充填部材としての接着剤4が介在し、上記凹凸によるシート2と金網3の桟部3Aとの非接触部分が埋められた状態となっている。充填部材は、接着剤のほか、例えば、合成ゴムを含むゴム製であってもよい。本実施形態において、接着剤4は、主に金網3の桟部3Aとシート2との間に介在している。ここで、シート状防音構造体1の全体において、接着剤4の密度は金網3の密度よりも小さい密度である。これにより、シート状防音構造体1は、シート2と金網3の桟部3Aとを実質的に密着状態にしてシート2の面剛性を確保することができる。
【0016】
図2は、本実施形態に係るシート状防音構造体1が防音性能を発揮するメカニズムを説明するための拡大断面図である。図2に示すように、シート2の厚さ方向に等分布圧力が加わった場合、シート状防音構造体1は、シート2の面剛性の確保に伴って面状区画部2Aを維持する。これにより、面状区画部2Aの最大たわみDの位置が開口部3H内に存在することとなり、防音性が確保される。
【0017】
また、上述したように、本実施形態に係るシート状防音構造体1において、金網3側の面には、長方形の枠型形状を有するゴム発泡体5(補強部材)が金網3と接合されて配置されている。補強部材の構成材料は、防音構造体の面剛性を向上させることができるものであれば特に制限されないが、例えば、EPDMゴム等のゴム材料、樹脂材料、木材などが例示される。
【0018】
本発明者らの検討によれば、このような補強部材が配置されていることで、補強部材を配置しない場合と比較して防音性能がより一層向上することが判明した。また、本形態に係るシートと支持部材とを含む防音構造体ではないシート状防音材に対してこのような補強部材を配置しても、防音性能の向上効果は得られないことも確認されている。本形態に係るシート状防音構造体が上述したような作用効果を奏するメカニズムは完全には明らかとはなっておらず、いかなる理論にも拘束されるわけではないが、以下のようなメカニズムが推測されている。すなわち、シートと支持部材とを含むシート状防音構造体では、全体の面剛性が大きくなると複数のモードで面振動が生じる結果として防音性能が向上するものと考えられる。したがって、補強部材の配置によってシート状防音構造体の面剛性が向上することで防音構造体の共振振動が誘発され、その結果として防音性能の向上が図られるのではないかと推測される。
【0019】
また、本実施形態に係るシート状防音構造体1は、シート、支持部材および充填部材を備えるとともに、充填部材が、シートと支持部材の桟部との隙間を埋め、さらに支持部材側の面の外周部に補強部材が設けられた構造である。これにより、シート状防音構造体1は、支持部材および補強部材に比較的安価な部材を用いたうえで、優れた防音性能を得ることができ、製造コストの低減を実現することができる。
【0020】
本実施形態において、ゴム発泡体5からなる補強部材は、図1Bに示すように、補強部材を平面視した際の枠型形状が長方形である。本明細書において、「枠型形状」とは、補強部材を平面視した際の最外周の形状がトポロジー的にドーナツ形状であることを意味する。このような枠型形状としては、図1A図1Bに示すようなロの字形状(長方形枠状)のほか、ドーナツ形状(円形枠状)、三角形枠状、五角形枠状、六角形枠状などが挙げられる。なかでも、シート状防音構造体を他の部品に対して設置した際の隙間の発生と当該隙間からの音漏れを抑えられるという観点から、枠型形状としては長方形枠状または円形枠状であることが好ましい。なお、後述する実施例のように、最外周が長方形枠状の補強部材と、その内部に配置される円形枠状の補強部材とを併用するなど、2種以上の補強部材を組み合わせて用いてもよい。さらに、例えば日の字形状や田の字形状となるように、最外周の枠型形状を2つ以上の領域に分割する補強部材をさらに配置してもよい。
【0021】
本実施形態において、ゴム発泡体5からなる補強部材の断面形状は長方形である。枠型形状を有する補強部材の断面形状は長方形に限定されないが、枠型形状の長手方向に沿って略同一であることが好ましい。このような構成とすることで、シート状防音構造体の面剛性を均一に高めることができ、防音性能の向上に有効に寄与しうる。このような断面形状としては、長方形のほか、台形、凸形状、凹形状などが挙げられる。なかでも、製造が容易でコストも低減されうるという観点から、断面形状は長方形または台形であることがより好ましく、長方形であることが特に好ましい。
【0022】
本実施形態において、ゴム発泡体5からなる補強部材は、支持部材である金網3と接合されて配置されている。このように、シート2側の面ではなく金網3(支持部材)側の面に補強部材を接合することで、防音性能の発揮に寄与するシートの振動が阻害されず、シートの振動面積が増加することによってより効果的に防音性能が発現しうる。ただし、場合によっては、必要に応じてシート側の面に補強部材が配置されてもよい。
【0023】
また、本実施形態に係るシート状防音構造体1は、上述したように、シート2の曲げ剛性よりも支持部材の曲げ剛性を大きくすることにより共振周波数近傍で遮音性能が向上する。さらに、シート状防音構造体1は、全体における充填部材の密度を支持部材の密度よりも小さくすることで、シートにおける区画部の形成、区画部内のシートの共振周波数の向上に、充填部材の機能を特化させることができる。これにより、シート状防音構造体1は、充填部材に支持部材ほどの強度や剛性を持たせる必要がないことから、低密度で軽量な弾性材料からなる充填部材を用いて上記の機能を発揮させることができ、全体の質量軽減を実現することができる。
【0024】
本発明の一形態に係るシート状防音構造体は、その構成が上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、実施形態に係るシート状防音構造体は、シートの片面に支持部材を配置した構造としたが、シートの両面に支持部材を配置したり、開口部の大きさや位置が異なる支持部材をシートの両面に配置したりすることも可能である。また、補強部材が配置される「外周部」は、図1Bに示すような最外周部に限られず、防音構造体の面剛性を向上させうる程度に中央部より外側であればよい。
【0025】
本形態に係るシート状防音構造体の製造方法は特に制限されないが、一例としては、まず、支持部材の片面に、経時により固化する液体状の充填部材用材料を塗布しておく。次いで、平坦なフィルムに、支持部材における上記塗布面を接触させた状態にして、充填部材用材料を経時により固化させて充填部材を形成する。そして、フィルムを剥離した後、支持部材における充填部材側の面にシートを固定し、支持部材側の面に枠型形状を有する補強部材を接着剤等により接合することで、シート状防音構造体を得ることができる。このような製造方法によれば、優れた防音性能を有する防音構造体を安価に得ることができる。
【0026】
本形態に係るシート状防音構造体は、自動車用部品やダクト閉塞用蓋部品などに適用することができる。すなわち、本発明の他の形態によれば、本発明の一形態に係るシート状防音構造体を備えた自動車用部品またはダクト閉塞用蓋部品が提供される。自動車用部品やダクト閉塞用蓋部品は音源において発生した騒音の侵入経路となりうる。本形態に係るシート状防音構造体を自動車用部品またはダクト閉塞用蓋部品に適用することで、このような部品からの騒音の侵入をより効果的に遮断することが可能である。
【0027】
以下では、ダクト閉塞用蓋部品でもある自動車用部品として、車両用換気装置の空気排出部に設置されるドラフターのフラップに適用される場合を例に挙げて、本形態に係るシート状防音構造体の適用例を説明する。
【0028】
従来、車両には、ウィンドウを閉じきった状態であっても車室内の空気を換気するために、車室外の空気を車室内に取り込む車両用換気装置が備えられている。この車両用換気装置は、例えば、車両前方に空気取込部を設けるとともに車両後方に空気排出部を設け、車両走行時、空気取込部に作用するラム圧と空気排出部に作用する負圧との圧力差を利用して、車室内の空気を換気する構成となっている。この類の換気装置では、車室内の空気が常時車外へと排出されないようにとの観点から、空気排出部にはドラフターが設けられており、このドラフターは空気の排出を規制または許可する開閉可能なフラップを有している。このフラップによってドラフター本体の開口の開閉状態を切り替えることにより、車外への空気の排出状態が調整される。
【0029】
図3は、ドラフター10の構造を模式的に示す説明図である。ドラフター10は、ドラフター本体である筐体に形成される一対の開口11と、一対のフラップ12とを主体に構成されている。なお、ドラフター本体は、開口11が設けられた面と対向する面(図中の背面側)が開口されている。
【0030】
個々の開口11は、ドラフター本体において高さ方向に所定の間隔を隔てて形成されており、矩形形状を有している。これらの開口11により、トリムとインナーパネルとの間の内部空間と、バンパーフェイシアとインナーパネルとの間の内部空間とが連通される。
【0031】
図3に示す実施形態において、個々のフラップ12は、図1A図1Cに示す実施形態にかかるシート状防音構造体1から構成されており、開口11と同等のサイズまたは一回り大きいサイズとされている。また、本実施形態において、シート状防音構造体1は、ゴム発泡体5(補強部材)が配置されている側がドラフターの内部を向くように配置されている。ただし、シート状防音構造体1の配置の向きは特に制限されない。
【0032】
シート状防音構造体からなるフラップ12は、その上方の一辺が、ドラフター本体における開口11の上部に回動可能に取り付けられている。したがって、フラップ12の回動状態に応じて、開口11の開閉状態が切り替えられる。具体的には、例えばドアを閉めた際の車室内の内圧の上昇によりフラップ12が上方に回動された場合には、開口11は開状態となる(ドラフター開)。この場合、車室内の空気の換気が可能となる。一方、フラップ12が下方に回動されて、開口11を覆っている場合には、開口11は閉状態となる(ドラフター閉)。この場合、車室内の空気の換気は抑制される。
【0033】
なお、以下の実施形態も本発明の範囲に含まれる:請求項2の特徴を有する請求項1に記載のシート状防音構造体;請求項3の特徴を有する請求項1または2に記載のシート状防音構造体;請求項4の特徴を有する請求項1~3のいずれかに記載のシート状防音構造体;請求項5の特徴を有する請求項1~4のいずれかに記載のシート状防音構造体;請求項6の特徴を有する請求項1~5のいずれかに記載のシート状防音構造体;請求項7の特徴を有する請求項1~6のいずれかに記載のシート状防音構造体;請求項1~6のいずれかに記載のシート状防音構造体を備えた自動車用部品;請求項1~6のいずれかに記載のシート状防音構造体を備えたダクト閉塞用蓋部品。
【実施例0034】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0035】
《シート状防音構造体の防音性能の評価》
後述する実施例および比較例で作製したシート状防音構造体について、各周波数の音波に対する防音性能を測定した。具体的には、鉄壺からなる遮音ボックスの内部にスピーカー(音源)を配置し、遮音ボックスの開口部(170mm×170mmの正方形)に、200mm×200mmのサンプル(防音構造体)を、それぞれの中心および向きが一致するように配置した。また、遮音ボックスの開口部においてサンプル(音反射構造体)が湾曲することを防止する目的で、両面テープを用いてサンプル(防音構造体)を開口部に対して固定した。そして、遮音ボックスの内部に設置したスピーカー(音源)から音を発生させて、サンプル(防音構造体)を配置しない場合(コントロール)に対する挿入損失[単位:dB]を測定することにより、防音性能を評価した。ある周波数における挿入損失の値が大きいほど、当該周波数の音波に対する音反射性能に優れることを意味する。なお、音源の発生条件は以下のとおりとした:
・スペクトルレベル:ホワイトノイズ(100~8192Hz)
・Fmax:8192Hz
・Δf(周波数分解能):1Hz
・平均値:300回の加算平均(1回の測定において時間を少しずつずらしながら300回の測定を行い、その加算平均を測定値とした)
・オーバーラップ:75%。
【0036】
《シート状防音構造体の作製》
[比較例1]
シリコンゴムシート(厚さ1mm)を、本比較例のシート状防音構造体とした。
【0037】
[比較例2]
比較例1で用いたシリコンゴムシート(厚さ1mm)の一方の面の外周部に、図1Bに示すように補強部材を配置して、本比較例のシート状防音構造体とした。なお、補強部材としては、エプトシーラー(日東エルマテリアル株式会社製、幅25mm、厚さ10mm)を用いた。
【0038】
[比較例3]
弾性を有するシートとして、熱可塑性ポリエステル・エラストマー(東レ・セラニーズ株式会社製、ハイトレル(登録商標))3046からなるシートを準備した。このシートの一方の面に、エキスパンドメタルからなる支持部材を配置し、エキスパンドメタルの桟部に接着剤(東亞合成株式会社製、アロンメルト(登録商標)PPET1505SG)を用いて上記シートとエキスパンドメタルの桟部との間隙を充填するように接着した。このようにして得られた積層体を本比較例のシート状防音構造体とした。
【0039】
[実施例1]
比較例3で作製した積層体の、エキスパンドメタル側の面の外周部に、比較例2と同じ方法を用いて補強部材を配置して、本実施例のシート状防音構造体とした。
【0040】
[防音性能の評価結果]
上記比較例1~比較例3および実施例1において作製したシート状防音構造体について、上述した方法により防音性能(挿入損失)を測定した。そして、400~1600Hzの周波数領域における比較例2の挿入損失と比較例1の挿入損失との差分(正の値が、防音構造体の本体としてシリコンゴムシートを用いた場合に補強部材をさらに配置したことによる防音性能の向上効果を示す)を算出した。同様に、各周波数における実施例1の挿入損失と比較例3の挿入損失との差分(正の値が、防音構造体の本体として弾性を有するシートおよび支持部材(エキスパンドメタル)構成されている場合に補強部材をさらに配置したことによる防音性能の向上効果を示す)を算出した。これらの結果を図4に示す。
【0041】
図4に示すように、防音構造体の本体としてシリコンゴムシートを用いた比較例1と比較例2との対比から、この場合には枠型形状の補強部材の配置によって防音性能(挿入損失)の向上効果は特に確認されなかったことがわかる。これに対し、防音構造体の本体が弾性を有するシートおよび支持部材(エキスパンドメタル)から構成されている比較例3と実施例1との対比から、この場合には枠型形状の補強部材の配置によって防音性能(挿入損失)の向上効果(500~1200Hzの範囲において最大6dB)が確認された。
【0042】
[比較例4]
比較例2で作製したシート状防音構造体において、最外周に配置された補強部材の内側に、同じ材料からなる円形枠状(外径120mm、内径70mm)の補強部材をさらに配置して、本比較例のシート状防音構造体とした。
【0043】
[実施例2]
実施例1で作製したシート状防音構造体において、最外周に配置された補強部材の内側に、同じ材料からなる円形枠状(外径120mm、内径70mm)の補強部材をさらに配置して、本比較例のシート状防音構造体とした。
【0044】
[防音性能の評価結果]
上記比較例1、比較例3、比較例4および実施例2において作製したシート状防音構造体について、上述した方法により防音性能(挿入損失)を測定した。そして、400~1600Hzの周波数領域における比較例4の挿入損失と比較例1の挿入損失との差分(正の値が、防音構造体の本体としてシリコンゴムシートを用いた場合に2種の補強部材をさらに配置したことによる防音性能の向上効果を示す)を算出した。同様に、各周波数における実施例2の挿入損失と比較例3の挿入損失との差分(正の値が、防音構造体の本体として弾性を有するシートおよび支持部材(エキスパンドメタル)構成されている場合に2種の補強部材をさらに配置したことによる防音性能の向上効果を示す)を算出した。これらの結果を図5に示す。
【0045】
図5に示すように、防音構造体の本体としてシリコンゴムシートを用いた比較例1と比較例4との対比から、この場合には、内側に円形枠状の補強部材を追加したとしても、枠型形状の補強部材の配置によって防音性能(挿入損失)の向上効果は特に確認されなかったことがわかる。これに対し、防音構造体の本体が弾性を有するシートおよび支持部材(エキスパンドメタル)から構成されている比較例3と実施例2との対比から、この場合には枠型形状の補強部材の配置によって防音性能(挿入損失)の向上効果(500~1200Hzの範囲において最大8dB)が確認された。
【0046】
以上のことから、本発明に係るシート状防音構造体によれば、優れた防音性能を有するとともに、製造コストの低減を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1 シート状防音構造体、
2 弾性を有するシート、
2A 区画部、
3 金網(支持部材)、
3A 桟部、
3H 開口部、
4 接着剤(充填部材)、
5 ゴム発泡体(補強部材)、
10 ドラフター、
11 開口、
12 フラップ。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5