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特開2024-126118原料供給装置、光源装置、及び原料供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126118
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】原料供給装置、光源装置、及び原料供給方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240912BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】34
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034299
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 晃尚
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芙貴
(72)【発明者】
【氏名】山谷 大樹
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA24
4C092AA05
4C092AB12
4C092AB19
4C092AC09
4C092BD18
(57)【要約】
【課題】減圧チャンバ内に存在する供給対象に、減圧雰囲気を破らずに液体原料を安定して供給可能な原料供給装置、光源装置及び原料供給方法を提供すること。
【解決手段】原料供給装置は、第1の収容部と、供給対象と、第2の収容部と、第1の連絡通路とを具備する。第1の収容部は、第1の圧力である第1の空間に配置され、第1の液面高さで液体原料を収容する。供給対象は、第2の圧力である第2の空間に配置される。第2の収容部は第2の空間に配置され、第2の液面高さで液体原料を収容し、供給対象に液体原料を供給可能な供給口を有する。第1の連絡通路は第1の収容部と第2の収容部とを連絡する。第2の液面高さは第1の圧力と第2の圧力との圧力差、液体原料の密度、及び第1の液面高さに応じて定まり、第1の液面高さに応じて供給口から供給対象への液体原料の供給及び非供給が切り替えられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧力に維持された第1の空間に配置され、所定の基準面からの液面の高さである第1の液面高さで、液体状態の原料である液体原料を収容可能な第1の収容部と、
第2の圧力に維持された第2の空間に配置され、前記液体原料が供給される供給対象と、
前記第2の空間に配置され、前記所定の基準面からの液面の高さである第2の液面高さで前記液体原料を収容可能であり、前記供給対象に前記液体原料を供給可能な供給口を有する第2の収容部と、
前記第1の収容部と前記第2の収容部とを連絡し、前記液体原料で満たされる第1の連絡通路と
を具備し、
前記第2の液面高さは、前記第1の圧力と前記第2の圧力との圧力差、前記液体原料の密度、及び前記第1の液面高さに応じて定まり、
前記第1の液面高さに応じて、前記供給口から前記供給対象への前記液体原料の供給及び非供給が切り替えられる
原料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の原料供給装置であって、
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも低い圧力に維持され、
前記第2の液面高さは、前記第1の液面高さよりも高い
原料供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の原料供給装置であって、
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも高い圧力に維持され、
前記第2の液面高さは、前記第1の液面高さよりも低い
原料供給装置。
【請求項4】
請求項1に記載の原料供給装置であって、
前記第2の圧力は、前記第1の圧力と同一の圧力に維持される
原料供給装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の原料供給装置であって、さらに、
前記第1の収容部を上下方向に移動させる移動機構を具備する
原料供給装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の原料供給装置であって、
前記第1の収容部に対する前記原料の投入により、前記第2の液面高さを前記供給口に到達する高さに上昇させ、前記供給対象に前記液体原料を供給する
原料供給装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の原料供給装置であって、
前記第2の収容部は、底部及び周壁を有する容器であり、
前記供給口は、前記第2の収容部の周壁に設けられ、
前記第2の収容部は、前記供給口に接続され、前記供給対象に向かって延びる供給管を有する
原料供給装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の原料供給装置であって、
前記原料は、金属であり、
前記第1の収容部、前記第2の収容部、及び前記第1の連絡通路の少なくとも1つは、前記金属を液体状態に保持する加熱機構を有する
原料供給装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の原料供給装置であって、
前記第1の収容部は、底部及び周壁を有する容器であり、
前記第2の収容部は、底部及び周壁を有する容器であり、鉛直方向において前記第1の収容部よりも上側に配置され、
前記第1の連絡通路は、下端が前記第1の収容部の内部に挿入され、上端が前記第2の収容部の底部に接続される
原料供給装置。
【請求項10】
請求項9に記載の原料供給装置であって、
前記第1の連絡通路は、鉛直方向に沿って延在する
原料供給装置。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の原料供給装置であって、
前記第1の圧力は、大気圧である
原料供給装置。
【請求項12】
請求項1に記載の原料供給装置であって、さらに、
前記第1の圧力よりも高い第3の圧力に維持された第3の空間に配置され、前記所定の基準面からの液面の高さである第3の液面高さで前記液体原料を収容可能である第3の収容部と、
前記第1の収容部と前記第3の収容部とを連絡し、前記液体原料で満たされる第2の連絡通路と
を具備し、
前記第1の液面高さは、前記第3の液面高さよりも高く、前記第1の圧力と前記第3の圧力との圧力差、前記液体原料の密度、及び前記第3の液面高さに応じて定まり、
前記第3の液面高さに応じて、前記供給口から前記供給対象への前記液体原料の供給及び非供給が切り替えられる
原料供給装置。
【請求項13】
請求項12に記載の原料供給装置であって、
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも低い圧力に維持され、
前記第2の液面高さは、前記第1の液面高さよりも高い
原料供給装置。
【請求項14】
請求項12に記載の原料供給装置であって、
前記第1の圧力は、前記第2の圧力よりも低い圧力に維持され、
前記第2の液面高さは、前記第1の液面高さよりも低い
原料供給装置。
【請求項15】
請求項12に記載の原料供給装置であって、
前記第2の圧力は、前記第1の圧力と同一の圧力に維持される
原料供給装置。
【請求項16】
請求項12又は13に記載の原料供給装置であって、さらに、
前記第3の収容部を上下方向に移動させる移動機構を具備する
原料供給装置。
【請求項17】
請求項12又は13に記載の原料供給装置であって、
前記第3の収容部に対する前記原料の投入により、前記第2の液面高さを前記供給口に到達する高さに上昇させ、前記供給対象に前記液体原料を供給する
原料供給装置。
【請求項18】
請求項12又は13に記載の原料供給装置であって、さらに、
前記第1の圧力を調整可能な圧力調整機構を具備し、
前記圧力調整機構による前記第1の圧力の調整により、前記第2の液面高さを前記供給口に到達する高さに上昇させ、前記供給対象に前記液体原料を供給する
原料供給装置。
【請求項19】
請求項12又は13に記載の原料供給装置であって、
前記原料は、金属であり、
前記第3の収容部及び前記第2の連絡通路の少なくとも一方は、前記金属を液体状態に保持する加熱機構を有する
原料供給装置。
【請求項20】
請求項12又は13に記載の原料供給装置であって、
前記第1の収容部は、底部及び周壁を有する容器であり、
前記第2の収容部は、底部及び周壁を有する容器であり、
前記第1の連絡通路は、一方の端部が前記第1の収容部の周壁に接続され、他方の端部が前記第2の収容部の周壁に接続され、
前記第1の連絡通路の前記第1の収容部に対する接続位置は、鉛直方向において前記第1の液面高さよりも低い位置である
原料供給装置。
【請求項21】
請求項12又は13に記載の原料供給装置であって、
前記第1の収容部は、底部及び周壁を有する容器であり、鉛直方向において前記第3の収容部よりも上側に配置され、
前記第3の収容部は、底部及び周壁を有する容器であり、
前記第2の連絡通路は、下端が前記第3の収容部の内部に挿入され、上端が前記第1の収容部の底部に接続される
原料供給装置。
【請求項22】
請求項21に記載の原料供給装置であって、
前記第2の連絡通路は、鉛直方向に沿って延在する
原料供給装置。
【請求項23】
請求項12又は13に記載の原料供給装置であって、
前記第3の圧力は、大気圧である
原料供給装置。
【請求項24】
請求項12又は13に記載の原料供給装置であって、さらに、
前記第2の空間に配置され、前記供給対象により使用された前記液体原料である廃液を回収する第4の収容部と、
前記第4の収容部と前記第2の連絡通路とを連絡し、前記廃液の流路となる第3の連絡通路と、
前記第3の連絡通路を開閉する開閉部と
を具備する原料供給装置。
【請求項25】
請求項1又は2に記載の原料供給装置であって、さらに、
前記第2の空間に配置され、前記供給対象により使用された前記液体原料である廃液を回収する第4の収容部と、
前記第4の収容部と前記第1の連絡通路とを連絡し、前記廃液の流路となる第3の連絡通路と、
前記第3の連絡通路を開閉する開閉部と
を具備する原料供給装置。
【請求項26】
請求項24に記載の原料供給装置であって、
前記原料は、金属であり、
前記第4の収容部及び前記第3の連絡通路の少なくとも一方は、前記金属を液体状態に保持する加熱機構を有する
原料供給装置。
【請求項27】
請求項1に記載の原料供給装置であって、
前記原料は、スズ、ガリウム、ビスマス、ガリウムとスズとの合金、又はガリウムとインジウムとスズとの合金の少なくとも1つを含む
原料供給装置。
【請求項28】
請求項1又は2に記載の原料供給装置であって、
前記第1の収容部及び前記第2の収容部は、前記原料の融点よりも高い融点を有する材料により形成された容器である
原料供給装置。
【請求項29】
請求項28に記載の原料供給装置であって、
前記材料は、ステンレス鋼、ステンレス鋼の窒化チタンコート、ステンレス鋼の窒化クロムコート、炭素鋼、炭素鋼の窒化チタンコート、炭素鋼の窒化クロムコート、モリブデン、タングステンの少なくとも1つを含む
原料供給装置。
【請求項30】
第1の圧力に維持された第1の空間に配置され、所定の基準面からの液面の高さである第1の液面高さで、液体状態の原料である液体原料を収容可能な第1の収容部と、
第2の圧力に維持された第2の空間に配置され、前記液体原料が供給され、前記液体原料を励起し、プラズマを発生させるプラズマ発生部と、
前記プラズマから出射された光を取り出す光取出し部と、
前記第2の空間に配置され、前記所定の基準面からの液面の高さである第2の液面高さで前記液体原料を収容可能であり、前記プラズマ発生部に前記液体原料を供給可能な供給口を有する第2の収容部と、
前記第1の収容部と前記第2の収容部とを連絡し、前記液体原料で満たされる第1の連絡通路と
を具備し、
前記第2の液面高さは、前記第1の圧力と前記第2の圧力との圧力差、前記液体原料の密度、及び前記第1の液面高さに応じて定まり、
前記第1の液面高さに応じて、前記供給口から前記プラズマ発生部への前記液体原料の供給及び非供給が切り替えられる
光源装置。
【請求項31】
請求項30に記載の光源装置であって、さらに、
前記第1の圧力よりも高い第3の圧力に維持された第3の空間に配置され、前記所定の基準面からの液面の高さである第3の液面高さで前記液体原料を収容可能である第3の収容部と、
前記第1の収容部と前記第3の収容部とを連絡し、前記液体原料で満たされる第2の連絡通路と
を具備し、
前記第1の液面高さは、前記第3の液面高さよりも高く、前記第1の圧力と前記第3の圧力との圧力差、前記液体原料の密度、及び前記第3の液面高さに応じて定まり、
前記第3の液面高さに応じて、前記供給口から前記プラズマ発生部への前記液体原料の供給及び非供給が切り替えられる
光源装置。
【請求項32】
請求項31に記載の光源装置であって、さらに、
前記第2の空間に配置され、前記プラズマ発生部により使用された前記液体原料である廃液を回収する第4の収容部と、
前記第4の収容部と前記第2の連絡通路とを連絡し、前記廃液の流路となる第3の連絡通路と、
前記第3の連絡通路を開閉する開閉部と
を具備する光源装置。
【請求項33】
請求項30に記載の光源装置であって、さらに、
前記第2の空間に配置され、前記プラズマ発生部により使用された前記液体原料である廃液を回収する第4の収容部と、
前記第4の収容部と前記第1の連絡通路とを連絡し、前記廃液の流路となる第3の連絡通路と、
前記第3の連絡通路を開閉する開閉部と
を具備する光源装置。
【請求項34】
請求項1又は2に記載の原料供給装置を用いた原料供給方法であって、
前記第1の収容部に対する前記原料の投入により、前記第2の液面高さを前記供給口に到達する高さに上昇させ、
前記第2の収容部に収容された前記液体原料を前記供給口に流入させることにより、前記供給対象へ前記液体原料を供給する
原料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線や極端紫外光等を発生させるプラズマ原料を供給する原料供給装置、原料供給装置を備えた光源装置、及び原料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線は、医療用用途、工業用用途、研究用用途に用いられてきた。医療用分野においては、X線は、胸部X線写真撮影、歯科X線写真撮影や、CT(Computer Tomogram)といった用途に用いられる。工業用分野においては、X線は、構造物や溶接部などの物質内部を観察する非破壊検査、断層非破壊検査といった用途に用いられる。研究用分野においては、X線は、物質の結晶構造を解析するためのX線回折、物質の構成元素を分析するためのX線分光(蛍光X線分析)といった用途に用いられる。
【0003】
X線のうち比較的波長の長い軟X線領域にある波長13.5nmの極端紫外光(以下、「EUV(Extreme Ultra Violet)光」ともいう)は、近年露光光として使用されている。ここで、微細パターンが構成されているEUVリソグラフィ用のマスクの基材は、積層構造として、低熱膨張性ガラスから成る基板の上に、EUV光を反射させるための多層膜(例えば、モリブデンとシリコン)が設けられてなる反射ミラーである。そして、多層膜上に波長13.5nmの放射線を吸収する材料をパターニングすることで、EUVマスクが構成される。
【0004】
また、EUVマスクにおける許容できない欠陥の大きさは、従来のArFマスクの場合に比べると大幅に小さくなっており検出することが困難となっている。そこで、EUVマスクの検査として、通常はアクティニック検査(Actinic inspection)と呼ばれる、リソグラフィの作業波長と一致する波長の放射線を用いた検査が行われる。例えば、波長13.5nmの放射線を用いて検査を行うと、l0nmよりも良好な分解能で欠陥を検出することが可能となる。
【0005】
一般にEUV光源装置としては、DPP(Discharge Produced Plasma)光源装置、LDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)光源装置、及びLPP(Laser Produced Plasma)光源装置が挙げられる。
【0006】
DPP光源装置は、EUV放射種を含む気体状のプラズマ原料(放電ガス)が供給された電極間に高電圧を印加して、放電により高密度高温プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用するものである。
【0007】
LDP光源装置は、DPP光源装置が改良されたものであり、例えば、放電を発生させる電極(放電電極)表面にEUV放射種を含む液体状の高温プラズマ原料(例えば、Sn(スズ)やLi(リチウム)等)を供給し、当該原料に対してエネルギービーム(例えば、電子ビームやレーザビーム等)を照射して当該原料を気化し、その後、放電によって高温プラズマを生成するものである。
【0008】
LPP光源装置は、EUV放射種をレーザビーム等により励起して高温プラズマを生成するものである。この方式の光源装置としては、EUV放射用ターゲット材料である微小な液滴状に噴出されたスズ(Sn)、または、リチウム(Li)等のドロップレットに対して、レーザ光を集光することにより当該ターゲット材料を励起してプラズマを発生させるものが知られている。
【0009】
特許文献1には、X線やEUV等の放射線を発生させるためのプラズマ原料を回転体に供給し、回転体においてプラズマ原料が供給される領域にエネルギービーム(レーザビーム)を照射して放射線を得る方法が提案されている。一方が開口した円筒状の容器が回転体として用いられ、この容器に液体状のプラズマ原料が供給され、容器の内周面にレーザ光が照射される。
【0010】
この方法は、所謂LPP方式に相当するが、回転体の遠心力によりエネルギービームの照射領域へ液体状のプラズマ原料を供給するものであり、液体状のプラズマ原料をドロップレットとして供給する必要がない。このため、ドロップレットにレーザビームを集光する方式等と比べて、比較的簡易な構成で、高輝度の放射線を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2021-1924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1のような回転体に供給された液体状のプラズマ原料は、エネルギービームの照射によりプラズマ化して消費される。また、プラズマ原料の一部は、デブリ等として飛散することでも消費される。
【0013】
例えば、回転体に貯留される液体状のプラズマ原料が十分に残存していれば、次のエネルギービームが照射される前にエネルギービーム照射領域にプラズマ原料が供給される。一方で、回転体におけるプラズマ原料の貯留量が所定の量を下回ると、エネルギービームの照射領域へのプラズマ原料の供給が不十分となる。そのため、回転体には、必要に応じてプラズマ原料を供給する必要がある。
【0014】
また、特許文献1では、ロードロック機構によりチャンバ内の真空状態を維持しながら、溶融金属(プラズマ原料)の基となるターゲット金属のペレットを回転体である容器に断続的に供給する点が記載されている。これにより、安定して断続的にEUV光を生成することができるとしている。
【0015】
ロードロック機構によりチャンバ内の真空状態を維持しているが、原料供給する際は、装置の真空を破り、容器内を大気圧にして、装置をあける必要がある。回転ターゲットは高速回転しているので、回転中に大気圧に戻すと、回転方向と逆の強大な力が回転体に加わるため装置が破壊される。よって、原料供給時には、装置を停止することが必要とされるため、長時間の連続運転は難しい。
【0016】
また、金属ペレットは固体であるため、実際には回転体上で金属ペレットが液化するまでは、エネルギービームの照射領域にプラズマ原料を供給することはできず、安定した原料供給が難しい。
【0017】
また上記したLDP方式の光源装置等においても、電極等の部材に供給される液体状のプラズマ原料は、装置の運転中に徐々に消費される。このように、液体状のプラズマ原料を用いる装置では、装置を安定して継続的に動作させるためにプラズマ原料を安定して供給することが重要になる。
【0018】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、減圧チャンバ内に存在する供給対象に、減圧雰囲気を破らずに液体原料を安定して供給可能な原料供給装置、光源装置、及び原料供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る原料供給装置は、第1の収容部と、供給対象と、第2の収容部と、第1の連絡通路とを具備する。
前記第1の収容部は、第1の圧力に維持された第1の空間に配置され、所定の基準面からの液面の高さである第1の液面高さで、液体状態の原料である液体原料を収容可能である。
前記供給対象は、第2の圧力に維持された第2の空間に配置され、前記液体原料が供給される。
前記第2の収容部は、前記第2の空間に配置され、前記所定の基準面からの液面の高さである第2の液面高さで前記液体原料を収容可能であり、前記供給対象に前記液体原料を供給可能な供給口を有する。
前記第1の連絡通路は、前記第1の収容部と前記第2の収容部とを連絡し、前記液体原料で満たされる。
前記第2の液面高さは、前記第1の圧力と前記第2の圧力との圧力差、前記液体原料の密度、及び前記第1の液面高さに応じて定まり、前記第1の液面高さに応じて、前記供給口から前記供給対象への前記液体原料の供給及び非供給が切り替えられる。
【0020】
この原料供給装置では、第2の液面高さは、第1の空間と第2の空間との圧力差、液体原料の密度、及び第1の液面高さに応じて定まり、第1の液面高さに応じて、供給対象への液体原料の供給及び非供給が切り替えられる。これにより、例えば減圧チャンバ内に存在する供給対象に、減圧雰囲気を破らずに液体原料を安定して供給可能となる。
【0021】
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも低い圧力に維持されてもよい。この場合、前記第2の液面高さは、前記第1の液面高さよりも高くてもよい。
【0022】
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも高い圧力に維持されてもよい。この場合、前記第2の液面高さは、前記第1の液面高さよりも低くてもよい。
【0023】
前記第2の圧力は、前記第1の圧力と同一の圧力に維持されてもよい。
【0024】
前記原料供給装置は、さらに、前記第1の収容部を上下方向に移動させる移動機構を具備してもよい。
【0025】
前記第1の収容部に対する前記原料の投入により、前記第2の液面高さを前記供給口に到達する高さに上昇させ、前記供給対象に前記液体原料が供給されてもよい。
【0026】
前記第2の収容部は、底部及び周壁を有する容器であってもよい。この場合、前記供給口は、前記第2の収容部の周壁に設けられ、前記第2の収容部は、前記供給口に接続され、前記供給対象に向かって延びる供給管を有してもよい。
【0027】
前記原料は、金属であってもよい。この場合、前記第1の収容部、前記第2の収容部、及び前記第1の連絡通路の少なくとも1つは、前記金属を液体状態に保持する加熱機構を有してもよい。
【0028】
前記第1の収容部は、底部及び周壁を有する容器であってもよい。この場合、前記第2の収容部は、底部及び周壁を有する容器であり、鉛直方向において前記第1の収容部よりも上側に配置され、前記第1の連絡通路は、下端が前記第1の収容部の内部に挿入され、上端が前記第2の収容部の底部に接続されてもよい。
【0029】
前記第1の連絡通路は、鉛直方向に沿って延在してもよい。
【0030】
前記第1の圧力は、大気圧であってもよい。
【0031】
前記原料供給装置は、さらに、前記第1の圧力よりも高い第3の圧力に維持された第3の空間に配置され、前記所定の基準面からの液面の高さである第3の液面高さで前記液体原料を収容可能である第3の収容部と、前記第1の収容部と前記第3の収容部とを連絡し、前記液体原料で満たされる第2の連絡通路とを具備してもよい。この場合、前記第1の液面高さは、前記第3の液面高さよりも高く、前記第1の圧力と前記第3の圧力との圧力差、前記液体原料の密度、及び前記第3の液面高さに応じて定まり、前記第3の液面高さに応じて、前記供給口から前記供給対象への前記液体原料の供給及び非供給が切り替えられてもよい。
【0032】
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも低い圧力に維持されてもよい。この場合、前記第2の液面高さは、前記第1の液面高さよりも高くてもよい。
【0033】
前記第1の圧力は、前記第2の圧力よりも低い圧力に維持されてもよい。この場合、前記第2の液面高さは、前記第1の液面高さよりも低くてもよい。
【0034】
前記第2の圧力は、前記第1の圧力と同一の圧力に維持されてもよい。
【0035】
前記原料供給装置は、さらに、前記第3の収容部を上下方向に移動させる移動機構を具備してもよい。
【0036】
前記第3の収容部に対する前記原料の投入により、前記第2の液面高さを前記供給口に到達する高さに上昇させ、前記供給対象に前記液体原料が供給されてもよい。
【0037】
前記原料供給装置は、さらに、前記第1の圧力を調整可能な圧力調整機構を具備してもよい。この場合、前記圧力調整機構による前記第1の圧力の調整により、前記第2の液面高さを前記供給口に到達する高さに上昇させ、前記供給対象に前記液体原料が供給されてもよい。
【0038】
前記原料は、金属であってもよい。この場合、前記第3の収容部及び前記第2の連絡通路の少なくとも一方は、前記金属を液体状態に保持する加熱機構を有してもよい。
【0039】
前記第1の収容部は、底部及び周壁を有する容器であってもよい。この場合、前記第2の収容部は、底部及び周壁を有する容器であり、前記第1の連絡通路は、一方の端部が前記第1の収容部の周壁に接続され、他方の端部が前記第2の収容部の周壁に接続され、前記第1の連絡通路の前記第1の収容部に対する接続位置は、鉛直方向において前記第1の液面高さよりも低い位置であってもよい。
【0040】
前記第1の収容部は、底部及び周壁を有する容器であり、鉛直方向において前記第3の収容部よりも上側に配置されてもよい。この場合、前記第3の収容部は、底部及び周壁を有する容器であり、前記第2の連絡通路は、下端が前記第3の収容部の内部に挿入され、上端が前記第1の収容部の底部に接続されてもよい。
【0041】
前記第2の連絡通路は、鉛直方向に沿って延在してもよい。
【0042】
前記第3の圧力は、大気圧であってもよい。
【0043】
前記原料供給装置は、さらに、前記第2の空間に配置され、前記供給対象により使用された前記液体原料である廃液を回収する第4の収容部と、前記第4の収容部と前記第2の連絡通路とを連絡し、前記廃液の流路となる第3の連絡通路と、前記第3の連絡通路を開閉する開閉部とを具備してもよい。
【0044】
前記原料供給装置は、さらに、前記第2の空間に配置され、前記供給対象により使用された前記液体原料である廃液を回収する第4の収容部と、前記第4の収容部と前記第1の連絡通路とを連絡し、前記廃液の流路となる第3の連絡通路と、前記第3の連絡通路を開閉する開閉部とを具備してもよい。
【0045】
前記原料は、金属であってもよい。この場合、前記第4の収容部及び前記第3の連絡通路の少なくとも一方は、前記金属を液体状態に保持する加熱機構を有してもよい。
【0046】
前記原料は、スズ、ガリウム、ビスマス、ガリウムとスズとの合金、又はガリウムとインジウムとスズとの合金の少なくとも1つを含んでもよい。
【0047】
前記第1の収容部及び前記第2の収容部は、前記原料の融点よりも高い融点を有する材料により形成された容器であってもよい。
【0048】
前記材料は、ステンレス鋼、ステンレス鋼の窒化チタンコート、ステンレス鋼の窒化クロムコート、炭素鋼、炭素鋼の窒化チタンコート、炭素鋼の窒化クロムコート、モリブデン、タングステンの少なくとも1つを含んでもよい。
【0049】
本技術の一形態に係る光源装置は、第1の収容部と、プラズマ発生部と、光取出し部と、第2の収容部と、第1の連絡通路とを具備する。
前記第1の収容部は、第1の圧力に維持された第1の空間に配置され、所定の基準面からの液面の高さである第1の液面高さで、液体状態の原料である液体原料を収容可能である。
前記プラズマ発生部は、第2の圧力に維持された第2の空間に配置され、前記液体原料が供給され、前記液体原料を励起し、プラズマを発生させる。
前記光取出し部は、前記プラズマから出射された光を取り出す。
前記第2の収容部は、前記第2の空間に配置され、前記所定の基準面からの液面の高さである第2の液面高さで前記液体原料を収容可能であり、前記プラズマ発生部に前記液体原料を供給可能な供給口を有する。
前記第1の連絡通路は、前記第1の収容部と前記第2の収容部とを連絡し、前記液体原料で満たされる。
前記第2の液面高さは、前記第1の圧力と前記第2の圧力との圧力差、前記液体原料の密度、及び前記第1の液面高さに応じて定まり、前記第1の液面高さに応じて、前記供給口から前記プラズマ発生部への前記液体原料の供給及び非供給が切り替えられる。
【0050】
前記光源装置は、さらに、第3の圧力に維持された第3の空間に配置され、前記所定の基準面からの液面の高さである第3の液面高さで前記液体原料を収容可能である第3の収容部と、前記第1の収容部と前記第3の収容部とを連絡し、前記液体原料で満たされる第2の連絡通路とを具備してもよい。この場合、前記第1の液面高さは、前記第1の圧力と前記第3の圧力との圧力差、前記液体原料の密度、及び前記第3の液面高さに応じて定まり、前記第3の液面高さに応じて、前記供給口から前記プラズマ発生部への前記液体原料の供給及び非供給が切り替えられてもよい。
【0051】
前記光源装置は、さらに、前記第2の空間に配置され、前記プラズマ発生部により使用された前記液体原料である廃液を回収する第4の収容部と、前記第4の収容部と前記第2の連絡通路とを連絡し、前記廃液の流路となる第3の連絡通路と、前記第3の連絡通路を開閉する開閉部とを具備してもよい。
【0052】
前記光源装置は、さらに、前記第2の空間に配置され、前記プラズマ発生部により使用された前記液体原料である廃液を回収する第4の収容部と、前記第4の収容部と前記第1の連絡通路とを連絡し、前記廃液の流路となる第3の連絡通路と、前記第3の連絡通路を開閉する開閉部とを具備してもよい。
【0053】
本技術の一形態に係る原料供給方法は、前記原料供給装置を用いた原料供給方法であって、前記第1の収容部に対する前記原料の投入により、前記第2の液面高さを前記供給口に到達する高さに上昇させ、前記第2の収容部に収容された前記液体原料を前記供給口に流入させることにより、前記供給対象へ前記液体原料を供給することを含む。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、例えば減圧チャンバ内に存在する供給対象に、減圧雰囲気を破らずに液体原料を安定して供給可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光源装置の構成例を示す模式図である。
図2】第1の実施形態に係るプラズマ生成機構及び原料供給装置の構成例を示す模式図である。
図3】原料供給装置の構成例を示す模式図である。
図4A】原料コンテナに対する液体スズの供給動作を模式的に示した図である。
図4B】原料コンテナに対する液体スズの供給動作を模式的に示した図である。
図5】原料供給装置の構成例を示す模式図である。
図6A】供給管の構成例を示す模式図である。
図6B】接続管の構成例を示す模式図である。
図6C】連絡管の構成例を示す模式図である。
図7】原料供給装置の構成例を示す模式図である。
図8】バルブが開けられた状態を示す模式図である。
図9】他の実施形態に係る光源装置の構成例を示す模式図である。
図10】他の実施形態に係る原料供給装置の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0057】
<第1の実施形態>
[光源装置の基本構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光源装置の構成例を示す模式図である。
光源装置100は、LPP方式の光源装置である。すなわち、光源装置100は、プラズマ原料1にエネルギービームEBを照射することで、プラズマ原料1を励起してプラズマPを発生させ、プラズマPから放出される放射線Rを取り出して光源として用いる装置である。
なお、本開示において、放射線Rには、EUV光等の軟X線領域の光や、よりエネルギーの高い硬X線等、プラズマPから放射される光(電磁波)が含まれる。
【0058】
放射線RとしてEUV光が出射される場合は、プラズマ原料1としてEUV原料が用いられる。EUV光を放出するための原料としては、例えば、液体状のスズ(Sn)やリチウム(Li)が用いられる。Sn、Liは常温では固体であるが、エネルギービームEBに照射される場合には、液体の状態で用いられる。
放射線RとしてX線が出射される場合は、プラズマ原料1としてX線原料が用いられる。X線原料は例えば常温で液体状である金属であり、例えば、ガリウム(Ga)や、ガリウム合金、Sn化合物等を用いることができる。
【0059】
図1は、光源装置100を設置面から所定の高さの位置で水平方向に沿って切断した場合の模式的な断面を、上方から見た場合の図である。
図1では、光源装置100の構成及び動作を理解しやすいように、断面の構成等を説明する必要のない部分については、断面の図示を省略している。
以下、X方向を左右方向(X軸の正側が右側、負側が左側)、Y方向を前後方向(Y軸の正側が前方側、負側が後方側)、Z方向を高さ方向(Z軸の正側が上方側、負側が下方側)として説明を行う。もちろん、本技術の適用について、光源装置100が使用される向き等が限定される訳ではない。
【0060】
光源装置100は、筐体2と、真空チャンバ3と、エネルギービーム入射チャンバ4と、放射線出射チャンバ5と、プラズマ生成機構6と、制御部7と、原料供給装置30とを含む。なお、図1では、原料供給装置30を細かい点線の枠により模式的に図示している。原料供給装置30の構成については、図2等を参照して後に詳しく説明する。
【0061】
図1に示す例では、筐体2は、おおよその外形が立方体形状となるように構成される。なお筐体2の形状は立方体形状に限定されず、任意の立体形状が用いられてよい。
筐体2は、前方面に形成される出射孔2aと、右側面に形成される入射孔2bと、後方面に形成される貫通孔2cと、左側面に形成される貫通孔2dとを有する。
筐体2の材料は限定されず、例えば金属製の筐体が用いられる。
【0062】
本実施形態では、前方面の出射孔2aを通り、Y方向(前後方向)に延在するように、放射線Rの出射軸EAが設定される。X線やEUV光等の放射線Rは、出射軸EAに沿って取り出され、出射孔2aから前方側に向かって放出される。
また本実施形態では、右側面の入射孔2bから、後方側に向かって左斜めに延在するように、エネルギービームEBの入射軸IAが設定される。
図1に示すように、筐体2の外部に、エネルギービームEBを出射するビーム源8が設置される。ビーム源8は、入射軸IAに沿ってエネルギービームEBが筐体2の内部に入射するように設置される。
エネルギービームEBとしては、電子ビームやレーザビームを使用することが可能である。ビーム源8の構成としては、これらのエネルギービームEBを出射可能な任意の構成が採用されてよい。
【0063】
光源装置100には、複数のチャンバを含むチャンバ部Cが設けられる。具体的には、チャンバ部Cは、真空チャンバ3、エネルギービーム入射チャンバ(以下、単に入射チャンバという)4、及び放射線出射チャンバ(以下、単に出射チャンバという)5を有する。真空チャンバ3、入射チャンバ4および出射チャンバ5は、互いに空間的に接続される。すなわち、真空チャンバ3と入射チャンバ4とは互いに連結される。同様に、真空チャンバ3と出射チャンバ5とは互いに連結される。
【0064】
入射チャンバ4は、エネルギービームEBの入射軸IA上に位置するように形成され、出射チャンバ5は、放射線Rの出射軸EA上に位置するように形成される。また真空チャンバ3には、プラズマPを発生させる機構が設けられる。
【0065】
本実施形態では、チャンバ本体9と、チャンバ本体9の前方面から前方側に突出する外側突出部9aと、チャンバ本体9の内周面から内部側に突出する2つの内側突出部9b及び9cとにより、チャンバ部C(真空チャンバ3、入射チャンバ4、及び出射チャンバ5)が構成される。
チャンバ部Cを構成する、チャンバ本体9、外側突出部9a、及び2つの内側突出部9b及び9cの材料としては、金属材料が用いられる。
【0066】
チャンバ本体9は、おおよその外形が直方体形状となるように構成され、前後左右の各面が、筐体2の前後左右の各面とそれぞれ対向するように配置される。
また、チャンバ本体9は、前方面と右側面との間の右前角部が、エネルギービームEBの入射軸IA上に位置するように配置される。
【0067】
図1に示すように、チャンバ本体9の前方面には、出射孔9dが形成される。出射孔9dは、放射線Rの出射軸EA上で、筐体2の前方面の出射孔2aと並ぶ位置に形成される。
チャンバ本体9の出射孔9dの周縁部から、前方側に突出するように外側突出部9aが構成される。外側突出部9aは、筐体2の出射孔2aに内接するように、筐体2の出射孔2aよりも前方側に大きく突出するように構成される。
また、チャンバ本体9の内部側において、出射孔9dの周縁部から内部側に突出するように、内側突出部9bが構成される。
外側突出部9a及び内側突出部9bに囲まれた空間が、出射チャンバ5として機能する。出射チャンバ5を構成する部材である外側突出部9a及び内側突出部9b自体を、出射チャンバと呼ぶことも可能である。
外側突出部9a及び内側突出部9bは、チャンバ本体9と一体的に形成されてもよいし、別個に形成されたのちにチャンバ本体9に接続されてもよい。
【0068】
出射チャンバ5は、放射線Rの出射軸EAを中心軸として、コーン形状となるように構成される。出射チャンバ5は、放射線Rの出射軸EAの方向において、中央部分の断面積が大きく、前後の端部に近づくにつれて断面積が小さくなるように構成される。すなわち、出射チャンバ5は、前後の端部に近づくにつれて絞られるような形状である。また出射チャンバ5は、前後の端部に放射線Rを通す開口部(アパーチャー)が設けられる。
【0069】
出射チャンバ5の前方側の端部(外側突出部9aの前方側の端部)には、マスク検査装置等の利用装置が接続される。図1に示す例では、利用装置の一部をなすチャンバとして、アプリケーションチャンバ10が接続される。アプリケーションチャンバ10内の圧力は大気圧であってもよい。また、アプリケーションチャンバ10の内部は、必要に応じてガス注入路よりガス(例えば、不活性ガス)を導入してパージしてもよい。またアプリケーションチャンバ10の内部のガスは図示を省略した排気手段により排気されていてもよい。
【0070】
出射チャンバ5とアプリケーションチャンバ10との間には、プラズマPが生成される領域とアプリケーションチャンバ10とを物理的に分離するフィルタ膜11が設けられる。フィルタ膜11は、放射線を透過可能な材料で構成され、プラズマPの発生に伴って飛散するプラズマ原料1やデブリのアプリケーションチャンバ10への進入を防止する。
【0071】
出射チャンバ5の内部には、出射チャンバ5の内に入射した放射線Rを利用装置内(アプリケーションチャンバ10内)に導光して集光するためのコレクタ(集光鏡)12が配置されている。図1では、出射チャンバ5に入射し集光される放射線Rの成分がハッチングにて図示されている。
【0072】
また出射チャンバ5の内部には、遮蔽部材(中央掩蔽)13が配置される。遮蔽部材13は、放射線Rの出射軸EA上にて、チャンバ本体9の出射孔9d、筐体2の出射孔2a、及びフィルタ膜11と並ぶように配置される。本実施形態では、遮蔽部材13により、コレクタ12により集光されない放射線成分を遮光することが可能である。
【0073】
チャンバ本体9の右前角部には、入射窓14が形成される。入射窓14は、エネルギービームEBの入射軸IA上で、筐体2の右側面の入射孔2bと並ぶ位置に形成される。
また、チャンバ本体9の右前角部の内部側において、入射窓14を囲む位置からエネルギービームEBの入射軸IAの方向に沿って突出するように、内側突出部9cが構成される。
チャンバ本体9の内部空間のうち、内側突出部9cに囲まれた空間が、入射チャンバ4として機能する。入射チャンバ4を構成する内側突出部9c及びチャンバ本体9の右前角部の部分自体を、入射チャンバと呼ぶことも可能である。
内側突出部9cは、チャンバ本体9と一体的に形成されてもよいし、別個に形成されたのちにチャンバ本体9に接続されてもよい。
【0074】
入射チャンバ4は、エネルギービームEBの入射軸IAを中心軸として、コーン形状となるように構成される。入射チャンバ4は、エネルギービームEBの入射軸IAの方向において、チャンバ本体9の内部側の端部に近づくにつれて断面積が小さくなるように構成される。すなわち、入射チャンバ4は、内部側の端部に近づくにつれて絞られるような形状である。また入射チャンバ4は、内部側の端部にエネルギービームEBを通す開口部(アパーチャー)が設けられる。
【0075】
入射チャンバ4の内部には、飛散したプラズマ原料1やデブリを捕捉するための捕捉機構が配置される。図1に示す例では、補足機構として、エネルギービームEBを透過し、プラズマ原料1やデブリを捕捉する板状の回転部材である回転式窓15が配置される。回転式窓15を回転させることで、回転式窓15のビーム透過領域の実質的な面積が増大し、回転式窓15の交換頻度を低減することが可能となる。
【0076】
また、図1に示すように、出射チャンバ5及び入射チャンバ4には、ガス注入路16a及び16bがそれぞれ設けられ、図示を省略したガス供給装置から、出射チャンバ5及び入射チャンバ4の内部にガスが供給される。出射チャンバ5には、放射線Rに対して透過率の高いガスが供給される。また入射チャンバ4には、エネルギービームEBに対して透過率の高いガスが供給される。
【0077】
出射チャンバ5及び入射チャンバ4に供給されるガスは同じ種類のガスであってもよいし、異なる種類のガスであってもよい。例えばアルゴンやヘリウムは、エネルギービームEB及び放射線Rの両方に対して透過率の高いガスとして用いることが可能である。この他、出射チャンバ5及び入射チャンバ4に供給されるガスの種類は限定されない。
ガスを供給することで、出射チャンバ5及び入射チャンバ4の内部圧力を真空チャンバ3の内部圧力よりも高い圧力に設定し、デブリ等の侵入を抑制することが可能となる。
【0078】
チャンバ本体9の内部空間のうち、出射チャンバ5として機能する内側突出部9bの内部空間、及び入射チャンバ4として機能する内側突出部9cの内部空間を除く空間が、真空チャンバ3として機能する。真空チャンバ3を構成する部分自体を、真空チャンバと呼ぶことも可能である。
【0079】
図1に示すように、チャンバ本体9は、筐体2の左側面の貫通孔2dから筐体2の外部に突出する部分を有し、その先端が排気用ポンプ17に接続される。排気用ポンプ17の具体的な構成は限定されず、真空ポンプ等の任意のポンプが用いられてよい。
排気用ポンプ17により真空チャンバ3内が排気され、真空チャンバ3が減圧される。これにより、真空チャンバ3内にて生成される放射線Rの減衰が抑制される。
真空チャンバ3内は、入射チャンバ4及び出射チャンバ5に対して減圧雰囲気であればよく、必ずしも真空雰囲気でなくてもよい。また、真空チャンバ3内に不活性ガスが供給されていてもよい。
【0080】
本実施形態では、入射軸IAと出射軸EAとの間の領域に向けて左右方向に延在するようにガスノズル18が設置される。ガスノズル18は、チャンバ本体9の右側面に、シール部材等を介して設置される。ガスノズル18は、図示を省略したガス供給装置に接続され、チャンバ本体9内にガスを供給する。
図1に示す例では、ガスノズル18から、入射軸IAと出射軸EAとの間の領域の右側から左右方向に沿って左側に向かってガスが吹き付けられる。これにより、プラズマPから放出されるデブリを、入射軸IA及び出射軸EAから遠ざかる方向に移動させることが可能となる。
【0081】
プラズマ生成機構6は、真空チャンバ3内にてプラズマPを生成し、放射線R(X線、EUV光)を放出するための機構である。
プラズマ生成機構6は、原料供給用の円盤状の回転体20、及び液体状のプラズマ原料1を収容する原料コンテナ21を含む。回転体20及び原料コンテナ21は、真空チャンバ3の内部に配置される。
【0082】
図1に示すように、円盤状の回転体20には、エネルギービームEBが入射する。回転体20は、エネルギービームEBの照射位置Iが入射軸IAと出射軸EAとの交点の位置に配置されるように、真空チャンバ3内に配置される。なお、回転体の形状は円盤形状に限定されず、例えば多角形形状の回転体等が用いられてもよい。
【0083】
原料コンテナ21は、回転体20が浸漬するように設けられ、回転体20に液体状のプラズマ原料1を供給する。例えば回転体20は、原料コンテナ21内の液体状のプラズマ原料1に浸漬した状態で回転可能に保持され、回転体20の表面にはプラズマ原料1が付着する。この状態で回転体20が回転することにより、回転体20の照射位置Iにプラズマ原料1が供給される。そして回転体20の照射位置IにエネルギービームEBが入射することで、プラズマPが生成される。
【0084】
このように、原料コンテナ21は、真空チャンバ3内に設けられ、液体状のプラズマ原料1を貯留して、エネルギービームEBの照射位置Iに液体状のプラズマ原料1を供給する。この他、プラズマ生成機構6の構成については、後に詳しく説明する。
【0085】
制御部7は、光源装置100が有する各構成要素の動作を制御する。
例えば、制御部7により、ビーム源8や排気用ポンプ17の動作が制御される。また制御部7により、後に説明する各種モータ等の動作が制御される。
制御部7は、例えばCPUやメモリ(RAM、ROM)等のコンピュータに必要なハードウェア回路を有する。CPUがメモリに記憶されている制御プログラムをRAMにロードして実行することにより、種々の処理が実行される。
制御部7として、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)、その他ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデバイスが用いられてもよい。
図1では、制御部7は機能ブロックとして模式的に図示されているが、制御部7が構成される位置等は任意に設計されてよい。
【0086】
また、図1に示すように、本実施形態では、チャンバ本体9の前面側にて、真空チャンバ3と空間的に接続される領域に、放射線診断部19が構成される。放射線診断部19は、放射線Rの出射軸EAとは異なる方向に放射される放射線Rが入射する位置に構成される。
放射線診断部19は、プラズマPからの放射線Rの状態を測定する。ここで放射線Rの状態とは、放射線Rの強度、波長、スペクトルといった放射線Rの物理的状態である。例えば、放射線Rの有無を検出する検出器や、放射線の出力を測定する測定器により放射線診断部19が構成される。
放射線診断部19による測定結果は、放射線Rの診断に用いられる。
【0087】
本実施形態では、出射チャンバ5、外側突出部9a、内側突出部9b等により、プラズマPから出射された光を取り出す光取出し部が実現される。
【0088】
図2は、第1の実施形態に係るプラズマ生成機構及び原料供給装置の構成例を示す模式図である。図2には、図1の矢印Aの方向から回転体20を見た場合の断面構成例が模式的に図示されている。なお、図2では、筐体2、エネルギービーム入射チャンバ4、及び放射線出射チャンバ5は省略されている。
【0089】
[プラズマ生成機構の基本構成]
図1及び図2に示すように、プラズマ生成機構6は、回転体20と、原料コンテナ21と、モータ26と、軸部27と、スキマー28とを含む。
【0090】
回転体20は、円盤状の部材であり、回転軸Oを中心に回転することで、プラズマ生成領域にプラズマ原料1を供給する。回転体20は、典型的には回転面が鉛直方向と平行になるように、すなわち回転軸Oが水平方向と平行となるように配置される。なお、回転体20は、回転軸Oが水平方向に対して傾斜するように配置することも可能である。
【0091】
回転体20は、表面20a及び裏面20bを有し、表面20aにエネルギービームEBが入射するように配置される。また表面20aの所定の位置に、エネルギービームEBが入射する照射位置Iが設定される。逆に言えば、回転体20の2つの主面のうち、エネルギービームEBの照射位置Iが設定される主面が表面20aとなる。そして反対側の主面が、裏面20bとなる。
回転体20は、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)等の高融点金属を用いて構成される。
【0092】
原料コンテナ21は、底部22と、外壁部23と、貯留部24とを有する。底部22は、原料コンテナ21の底を構成する部分である。外壁部23は、底部22を囲むように上方に向けて突出した部分である。貯留部24は、底部22と外壁部23とで囲まれた領域であり、上方に開口し液体状のプラズマ原料1を貯留する。貯留部24には、後述する原料供給装置30から、液体状のプラズマ原料1が供給される。
回転体20は、下方側の一部が、貯留部24に貯留されたプラズマ原料1に浸漬されている。このとき、回転体20の位置や、貯留部24内のプラズマ原料1の貯留量は、少なくとも回転体20の表面20aの一部がプラズマ原料1に浸かるように設定される。
【0093】
放射線RとしてX線が出射される場合は、プラズマ原料1としてX線原料が用いられる。X線原料は常温で液体状である金属や金属化合物であり、例えば、ガリウム(Ga)や、ガリウム合金、Sn化合物等を用いることができる。
放射線RとしてEUV光が出射される場合は、プラズマ原料1としてEUV原料が用いられる。EUV光を放出するための原料としては、例えば、液体状のスズ(Sn)やリチウム(Li)が用いられる。
Sn、Liは常温では固体であるので、原料コンテナ21には図示を省略した温調手段が設けられる。例えば、EUV原料がSnの場合は、原料コンテナ21はSnの融点以上の温度に維持される。
【0094】
図1及び図2に示す例では、原料コンテナ21は、長手方向が回転体20の直径よりも長くなるように構成される。また、回転体20は、原料コンテナ21の長手方向の一端側に近接して配置される。従って原料コンテナ21の長手方向の他端側には、上方から見て貯留部24が露出した領域が形成され、当該領域の上方から液体状のプラズマ原料1が供給される。この他、原料コンテナ21の形状は限定されず、例えば原料コンテナ21の短手方向が図1に示す例よりも長く構成されてもよい。この場合、短手方向において貯留部24を比較的広く露出させることができる。このような領域の上方から液体状のプラズマ原料1が供給されてもよい。
なお回転体20及び原料コンテナ21は、貯留部24が露出しプラズマ原料1が供給される領域とエネルギービームEBの入射軸IAや放射線Rの出射軸EAとが、上方から見た平面視で重ならないように構成される。
【0095】
回転体20の裏面20bの中心部には、モータ26の軸部27が接続される。制御部7によりモータ26の動作が制御され軸部27を介して回転体20が回転される。
軸部27は、回転体20の表面20aに直交する方向に延在する柱状の部材であり、その中心軸が回転体20及びモータ26の回転軸Oとなる。
軸部27は、筐体2の貫通孔2cを通り、メカニカルシール29を介して、真空チャンバ3内に導入される。このとき、軸部27は、筐体2(貫通孔2c)と接触しないように配置される。メカニカルシール29は、真空チャンバ3内の減圧雰囲気を維持しつつ、軸部27の回転を許容する。
【0096】
上記したように、回転体20は、原料コンテナ21に貯留されたプラズマ原料1に浸漬するように配置される。この状態で、回転体20が軸部27(回転軸O)を中心に回転すると、表面20aになじんで、表面20aに付着したプラズマ原料1が原料コンテナ21から引き上げられる。この方式により、表面20aの全周にわたってプラズマ原料1が塗布される。また、表面20aに塗布されたプラズマ原料1は、回転体20の回転とともに、エネルギービームEBの照射位置Iに輸送される。このように、本実施形態では、原料コンテナ21、モータ26、及び軸部27により、回転体20にプラズマ原料1が供給される。
【0097】
図2に示すように、本実施形態では、回転体20の表面20aの周縁部の近傍に、エネルギービームEBの照射位置Iが設定される。この照射位置Iにプラズマ原料1が供給されるように、モータ26及び軸部27の構成及び動作が適宜設計される。
【0098】
スキマー28は、回転体20の表面20a上に供給されるプラズマ原料1の膜厚を所定の膜厚に調整するための膜厚調整部材として、回転体20の周縁部の所定の位置に設けられる。
スキマー28は、例えばチャネル構造を有する構造体であって、その内側に回転体20を挟むように所定の間隙をもって配置される。スキマー28は、回転体20の表面20aに塗布されたプラズマ原料1の一部を削ぎとるスクレーパーとして機能する。
【0099】
回転体20の表面20aとスキマー28との間隔は、回転体20の表面20aに設定されるエネルギービームEBの照射位置Iにおけるプラズマ原料1の膜厚に対応する。そして、スキマー28は、照射位置Iにおけるプラズマ原料1の膜厚を、所定の膜厚に調整可能な位置に配置される。
回転体20の表面20aとスキマー28との間隔を適宜設定する。これにより、原料コンテナ21の原料貯留部分において回転体20に塗布された液体状のプラズマ原料1は、回転体20の回転によってスキマー28を通過する際に、回転体20上における膜厚が所定の膜厚となるように調整される。
【0100】
スキマー28によって膜厚が調整された回転体20上のプラズマ原料1は、回転体20の回転とともにエネルギービームEBの照射位置Iに輸送される。すなわち、回転体20の回転方向は、回転体20上のプラズマ原料1がスキマー28を通過後、照射位置Iに輸送される方向である。そして、照射位置Iにおいて、回転体20上のプラズマ原料1にエネルギービームEBが照射され、プラズマPが発生される。
スキマー28により、照射位置Iにほぼ均一にプラズマ原料1を供給することが可能となる。照射位置Iにおけるプラズマ原料1の厚みを安定させることにより、プラズマPから放射される放射線Rの強度を安定させることが可能となる。
【0101】
[原料供給装置の構成]
図2に示すように、原料供給装置30は、真空チャンバ3の内部及び外部に連通するように配置される。原料供給装置30は、プラズマ原料1をプラズマ生成機構6に供給する装置である。
【0102】
具体的には、プラズマ生成機構6に含まれる原料コンテナ21にプラズマ原料1が供給される。なお供給対象は限定されず、任意の対象に供給が行われてよい。
プラズマ生成機構6は、本技術に係る、プラズマ原料1が供給される供給対象の一実施形態に相当する。
プラズマ生成機構6は、本技術に係る、プラズマ原料1を励起しプラズマを発生させるプラズマ発生部の一実施形態に相当する。
【0103】
図3は、原料供給装置30の構成例を示す模式図である。
図3には、真空チャンバ3、原料コンテナ21及び原料供給装置30が模式的に図示されている。なお、回転体20、及び原料コンテナ21に貯留されたプラズマ原料1等の図示は省略されている。原料供給装置30は、大気側タンク32、真空側タンク33、連絡管35、ヒーター36、及び圧力調整機構51を有する。
【0104】
大気側タンク32は、例えばビーカー形状の容器であり、底部37及び周壁38を有する。また、底部37及び周壁38により上向きの開口39が構成される。
【0105】
本実施形態では、真空チャンバ3の内部空間48の圧力(絶対圧力)が真空圧に維持される。以下、内部空間48の圧力が30Paに維持される例について説明を行う。なお、内部空間48の圧力が具体的にどのような値に維持されるかは限定されない。また、筐体2の内部のうち真空チャンバ3の外部の空間である外部空間49の圧力は、大気圧(1013hPa)となっている。大気側タンク32は、外部空間49の真空チャンバ3の下方側に、開口39が上方側を向くように配置される。
【0106】
大気側タンク32には液体状態のプラズマ原料1が収容される。プラズマ原料1としては、例えばスズ、ガリウム、ビスマス、ガリウムとスズとの合金、又はガリウムとインジウムとスズとの合金の少なくとも1つが用いられる。以下、プラズマ原料1としてスズが用いられる場合を例として説明を行うが、プラズマ原料の具体的な種類は限定されない。図3には、大気側タンク32に収容された液体スズ40が網掛け模様で模式的に示されている。
【0107】
本実施形態では、大気側タンク32に対して固体スズ41が投入される。例えば球体状やペレット状に加工したスズが固体スズ41として投入される。投入された固体スズ41は、大気側タンク32内でヒーター36により加熱され、溶融して液体スズ40に変化する。あるいは予め加熱され、溶融された液体スズ40が投入されてもよい。なお、大気側タンク32の開口39は、固体スズ41等の原料が投入可能な大きさを有していればよい。
【0108】
大気側タンク32は、所定の基準面からの液面の高さである第1の液面高さで、液体状態の原料である液体原料を収容可能である。本実施形態では、大気側タンク32の底部37の内面(上方側の面)を所定の基準面としている。従って液体スズ40の液面高さは、底部37の内面からの高さである。図3には、液体スズ40の液面高さ42aが矢印で示されている。その他、例えば大気側タンク32の底部37の外面(下方側の面)、あるいは真空側タンク33の底部43の内面や外面等、任意の面を所定の基準面として液面高さを定義することが可能である。なお所定の基準面が液面よりも上方側にある場合には、液面高さが負の値となることもあり得る。
【0109】
大気側タンク32は、例えばスズの融点よりも高い融点を有する材料により形成される。具体的には、例えばステンレス鋼、ステンレス鋼の窒化チタンコート、ステンレス鋼の窒化クロムコート、炭素鋼、炭素鋼の窒化チタンコート、炭素鋼の窒化クロムコート、モリブデン、タングステンの少なくとも1つを含む材料により、大気側タンク32が形成される。これらはいずれもスズの融点(約232℃)よりも高い融点を有する金属である。
【0110】
同様に、プラズマ原料1としてスズ以外の原料が用いられる場合にも、当該原料の融点よりも高い融点を有する材料により大気側タンク32が形成される。材料が選択される際には、強度やプラズマ原料1との反応性が考慮されてもよい。また、強度等が優れているもののプラズマ原料1と反応しやすい材料が存在する場合に、当該材料に反応性の低い材料をコーティングする処理がされてもよい。
【0111】
これにより、液体スズ40の熱による大気側タンク32の溶融や、液体スズ40との反応による大気側タンク32の劣化を防止することが可能となる。その他、大気側タンク32の具体的な材料は限定されない。また、大気側タンク32の形状はフラスコ型や角柱形状等任意の形状であってよく、容積等の具体的な構成も限定されない。
【0112】
液面高さ42aは、本技術に係る第1の液面高さの一実施形態に相当する。
液体スズ40は、本技術に係る液体原料の一実施形態に相当する。
大気側タンク32は、本技術に係る第1の収容部の一実施形態に相当する。
【0113】
真空側タンク33は、大気側タンク32と同形状の容器であり、液体スズ40を収容可能である。図3には、真空側タンク33に収容された液体スズ40が網掛け模様で模式的に示されている。後に詳しく説明するが、真空側タンク33に収容された液体スズ40は真空チャンバ3の内部空間48と外部空間49との圧力差により保持されており、大気側タンク32側に落ちてくることはない。
【0114】
真空側タンク33は、底部43及び周壁44を有する。また、底部43及び周壁44により上向きの開口45が構成される。周壁44には供給口46が設けられる。本例では、周壁44の図3における左側に供給口46が設けられる。もちろん供給口46が設けられる周壁44上の位置は限定されない。また、本例では円形状の供給口46が設けられるが、供給口46の具体的な形状は限定されず、例えば多角形形状等任意の形状であってよい。
【0115】
底部43には円形状の開口47が設けられる。開口47の具体的な位置や形状は限定されない。
【0116】
真空側タンク33はさらに、供給口46に接続され、原料コンテナ21に向かって延びる供給管34を有する。供給管34の一方の端部は供給口46に接続される。また供給管34は、図3の右上から左下に渡る斜め方向に延在するように配置される。つまり、供給管34は供給口46から原料コンテナ21に向かって延びた状態である。
【0117】
供給管34は、プラズマ生成機構6に液体スズ40を供給可能である。後に詳しく説明するが、大気側タンク32に固体スズ41が投入された場合に、真空側タンク33の液面が上昇する。やがて液面が供給口46の下端に達すると、液体スズ40が供給口に流入する。これにより、液体スズ40が供給管34を通って原料コンテナ21に流れ込み、プラズマ生成機構6に対する液体スズ40の供給が実現される。
【0118】
供給管34の形状としては、供給口46の位置より高い位置となる部分がない形状が採用される。例えば供給口46の位置より高い位置となる部分がある形状の供給管34が用いられた場合には、供給口46から流入した液体スズ40が当該高い位置に達することができず、供給管34の内部で留まってしまうことがあり得る。供給口46の位置より高い位置となる部分がない形状の供給管34が用いられることで、液体スズ40が供給管34の内部で留まることなく原料コンテナ21に流れ込む。その他、例えば湾曲形状、螺旋形状等、任意の形状が採用されてよい。また太さや長さ等の具体的な構成も限定されない。
【0119】
真空側タンク33は、真空チャンバ3の内部空間48に、開口45が上方側を向くように配置される。従って真空側タンク33は、鉛直方向において大気側タンク32よりも上方側に配置される。
【0120】
真空側タンク33は、所定の基準面からの液面の高さである第2の液面高さで、液体状態の原料である液体原料を収容可能である。本実施形態では、大気側タンク32の底部37の内面を所定の基準面としている。図3には、液体スズ40の液面高さ42bが矢印で示されている。
【0121】
真空側タンク33は大気側タンク32と同様に、例えばスズの融点よりも高い融点を有する材料により形成される。その他、真空側タンク33の具体的な材料や形状は限定されない。なお同様に、原料供給装置30に含まれる他の機構(特に液体スズ40と接触する部分)が、スズの融点よりも高い融点を有する材料により形成されてもよい。
【0122】
液面高さ42bは、本技術に係る第2の液面高さの一実施形態に相当する。
真空側タンク33は、本技術に係る第2の収容部の一実施形態に相当する。
【0123】
連絡管35は、大気側タンク32及び真空側タンク33を連絡する管である。連絡管35は鉛直方向(Z方向)に沿って延在し、下端が大気側タンク32の内部に挿入される。具体的には、大気側タンク32の開口39に連絡管35の下端が挿入され、連絡管35の下端は大気側タンク32の液面よりも下方側に位置する。すなわち、連絡管35の下端は液体スズ40に浸かった状態となる。また、連絡管35の上端は真空側タンク33の底部43に接続される。具体的には、底部43に設けられた開口47に連絡管35の上端が接続される。
【0124】
これにより、大気側タンク32に収容された液体スズ40を、連絡管35を介して真空側タンク33に移動させることが可能となる。後に詳しく説明するが、具体的には大気側タンク32に固体スズ41が投入された場合に、大気側タンク32に収容された液体スズ40が連絡管35を通って真空側タンク33に移動する。逆に、真空側タンク33に収容された液体スズ40を、連絡管35を介して大気側タンク32に移動させることも可能である。具体的には真空チャンバ3の内部空間48の圧力が高くなった場合に、真空側タンク33に収容された液体スズ40が連絡管35を通って大気側タンク32に移動する。このように液体スズ40を双方向に移動させることが可能である状態が、連絡管35により大気側タンク32及び真空側タンク33が連絡されている状態に含まれる。
【0125】
また、連絡管35の内部は液体スズ40で満たされた状態となっている。すなわち図3に示すように、大気側タンク32、連絡管35、及び真空側タンク33に渡って、液体スズ40が一体的に(途中で空気等が存在することにより途切れることなく)存在する状態となる。
【0126】
なお、連絡管35が鉛直方向に沿って延在しない構成が採用されてもよい。例えば連絡管35が斜め方向に沿って延在していてもよい。あるいは連絡管35が湾曲形状を有し、所定の方向に延在しないように配置されてもよい。
【0127】
また、連絡管35が大気側タンク32に挿入される方法や、真空側タンク33に接続される方法以外の方法により、大気側タンク32及び真空側タンク33が連絡されてもよい。例えば大気側タンク32の周壁38に連絡管35が接続されてもよい。
【0128】
その他、連絡管35の具体的な構成は限定されない。
連絡管35は、本技術に係る第1の連絡通路の一実施形態に相当する。
【0129】
ヒーター36は、液体スズ40及び固体スズ41を加熱する機構である。本実施形態では、大気側タンク32、真空側タンク33、及び連絡管35の少なくとも1つは、原料であるスズを液体状態に保持する加熱機構を有する。図3には、大気側タンク32が有するヒーター36が模式的に図示されている。本例では、ヒーター36は大気側タンク32の下方側に、底部37に当接するように配置される。
【0130】
本実施形態では、例えばヒーター36として抵抗加熱式の電気ヒーターが用いられる。その他、誘導加熱(IH、Induction Heating)を利用した加熱装置、ハロゲンランプ等の赤外線ランプ、熱媒体油循環装置等、任意の加熱機構が用いられてよい。
【0131】
大気側タンク32に投入された固体スズ41は、ヒーター36によりスズの融点以上の温度に加熱され、大気側タンク32の内部で溶融して液体スズ40となる。ヒーター36の出力や配置等を原料に応じて適宜設定することにより、大気側タンク32に収容された原料を液体状態に保持することが可能となる。
【0132】
これにより、大気側タンク32の内部で液体スズ40が凝固し、液体スズ40の流れが妨げられるといったことが起こりにくくなる。また、スズが常に液体状態に保持されるため、安定した原料供給が可能である。さらに、大気側タンク32に対して比較的扱いやすいペレット状の固体スズ41を投入することが可能となり、原料供給装置30の利便性が向上する。
【0133】
また、大気側タンク32や連絡管35の内部にある原料を液体状態に保持するために、大気側タンク32や連絡管35の周辺に加熱機構が配置されてもよい。その他、原料供給装置30に含まれる種々の機構に加熱機構が設けられてよい。
【0134】
圧力調整機構51は、内部空間48の圧力を調整する機構である。図3には、圧力調整機構51が模式的に図示されている。例えば光源装置100が使用されていない場合には内部空間48の圧力が大気圧となっていることがあり得るが、使用開始時には圧力調整機構51を用いて内部空間48の圧力を低くする(真空引きする)ことが可能である。また圧力調整機構51により、内部空間48の圧力を高くすることも可能である。
【0135】
本実施形態では、排気用ポンプ17、及び図1で図示を省略したガス供給装置により圧力調整機構51が実現される。排気用ポンプ17は真空チャンバ3内の空気を排気し、内部空間48の圧力を低くすることが可能である。ガス供給装置はガスノズル18を介して真空チャンバ3内にガスを供給し、内部空間48の圧力を高くすることが可能である。その他、ベントやブロワー等、空間の圧力を調整可能な任意の機構が用いられてよい。
【0136】
なお、内部空間48の圧力を低下させる場合に、アルゴンガス等の不活性化ガスによる置換が行われてもよい。例えば、まず排気用ポンプ17により内部空間48の圧力を10Paまで低下させる。その後ガスノズル18により、内部空間48の圧力が30Paになるまでアルゴンガスを供給する。これにより内部空間48に存在する酸素分子の割合が減少するため、液体スズ40や真空側タンク33の酸化を抑制することが可能となる。
【0137】
本実施形態では、外部空間49が大気圧に維持される。外部空間49は圧力の調整がされていないため、圧力が大気圧(1013hPa)となっている。このように、特に圧力の調整がされずに空間の圧力が一定に保たれている状態も、圧力が維持されている状態に含まれる。あるいは、外部空間49がクリーンルーム等、大気圧よりも若干高い圧力(陽圧)に維持された空間であってもよい。また、液体スズ40や大気側タンク32の酸化防止のために、外部空間49が湿度の低いドライエア雰囲気に維持されてもよい。
外部空間49は、本技術に係る第1の空間の一実施形態に相当する。
外部空間49の圧力(大気圧、1013hPa)は、本技術に係る第1の圧力に相当する。なお、本技術に係る第1の圧力は、大気圧に限定されない。
【0138】
また本実施形態では、内部空間48の圧力が30Paに維持される。具体的には、圧力調整機構51により内部空間48の圧力が調整され、30Paに維持されている。
内部空間48は、本技術に係る第2の空間の一実施形態に相当する。
内部空間48の圧力(30Pa)は、本技術に係る第2の圧力に相当する。なお、本技術に係る第2の圧力は、30Paに限定されない。
【0139】
各々の空間がどのようにして構成されるかは限定されない。例えば大気側タンク32が配置される空間がチャンバにより囲まれ、チャンバの外部空間に真空側タンク33が配置されてもよい。また、大気側タンク32及び真空側タンク33が配置される両方の空間が別々のチャンバにより囲まれてもよい。あるいは、チャンバ以外により各々の空間が仕切られてもよい。
【0140】
なお本実施形態では、内部空間48の圧力が外部空間49の圧力よりも低い圧力に維持される。図3に示すように、内部空間48の圧力は30Pa、外部空間49の圧力は1013hPaであり、内部空間48の圧力は外部空間49の圧力よりも低い圧力となっている。各々の空間の圧力の具体的な値は限定されず、内部空間48の圧力の方が低くなるような任意の値であってよい。例えば内部空間48の圧力が大気圧であり、外部空間49の圧力が大気圧よりも高い圧力に維持されてもよい。外部空間49を適当な方法で加圧することにより、このような構成を実現することも可能である。
【0141】
[原料供給動作]
原料コンテナ21に対する液体スズ40の供給動作について説明する。
【0142】
大気圧の値を計算するための実験として、「トリチェリの実験」という実験が知られている。当該実験は、エヴァンジェリスタ・トリチェリ(Evangelista Torricelli)により1643年に行われた実験である。まず桶型の容器の内部を水銀で満たし、容器に試験管を入れ、試験管の内部を水銀で満たす。その後、試験管の口を下向きにして試験管を垂直に立てると、試験管の上方側に真空が生まれ、さらに桶の液面と試験管の内部の液面の高さに760mmの差が生まれる。
【0143】
液面高さの差は圧力のつり合いの関係式から導くことが可能であり、液体の密度には依存するが、試験管の径等の形状には依存しない値となることが知られている。液体が水銀である場合は液面の差は760mmとなるが、例えば液体が水である場合には、液面の差はおよそ103000mmとなる。
【0144】
図3に示す例でも、液面高さ42a及び42bの差を同様の考え方により算出することが可能である。具体的に、平衡状態においては、以下の計算式が用いられる。
大気圧=真空圧+液体金属の重さによる圧力 …(1)
液体金属の重さによる圧力=密度×高さ差×重力加速度 …(2)
【0145】
なお、式(1)における真空圧は、原料の気化の圧力に依存した値となる。例えば原料が水である場合には、雰囲気温度40℃以下においては気化する圧力が100Pa以下であり、当該圧力が真空圧となる。一方で、原料がスズである場合には、スズの沸点は1Paで約1200℃であるため、蒸気圧は極めて低く、気化することがない。従って、真空容器内の圧力の値がそのまま真空圧として用いられる。
【0146】
図3では、連絡管35の内部の、大気側タンク32の液面と同じ位置50にかかる下向きの圧力と、大気側タンク32の液面にかかる下向きの圧力とがつり合った状態となっている。位置50にかかる圧力は、真空側タンク33の液面にかかる圧力(真空圧)と、位置50の直上部分の液体金属の重さによる圧力との和となっている。また、大気側タンク32の液面にかかる圧力は大気圧となっている。これらがつり合うことから、式(1)が導かれる。
【0147】
位置50の直上部分の液体金属の体積は、連絡管35の断面積と高さ差との積となる。この値に液体金属の密度及び重力加速度を掛けた値が位置50にかかる液体金属の重さによる力であるため、以下の関係が成り立つ。
液体金属の重さによる力=連絡管35の断面積×高さ差×密度×重力加速度 …(3)
【0148】
液体金属の重さによる圧力は、液体金属の重さによる力を連絡管35の断面積で割った値となるため、式(3)の両辺を断面積で割ることにより、式(2)が導かれる。式(1)及び(2)から分かるように、高さ差は連絡管35の断面積に依らない値となる。
【0149】
図3の例では、
大気圧=1013[hPa]
真空圧=30[Pa]
密度=液体スズ40の密度=6.99[g/cm
重力加速度=9.80665[m/s
であり、これらを式(1)及び(2)に代入すると、
高さ差=1.477[m]
が得られる。
【0150】
従って図3に示す例では、液面高さ42a及び42bの高さ差が常に1.477mに保たれる。例えば大気側タンク32の液面が上昇した場合には、真空側タンク33の液面も高さ差を維持しようとするため、連動して上昇する。逆に大気側タンク32の液面が下降した場合には、真空側タンク33の液面も連動して下降する。図3では、液面高さ42a及び42bの高さ差を記号hで示している。h=1.477mは外部空間49の圧力が大気圧、内部空間48の圧力が30Paである場合の一例である。高さ差hの具体的な値は限定されず、外部空間49及び内部空間48の圧力に依存した任意の値を取り得る。
【0151】
このように、液面高さ42bは、液面高さ42aよりも高く、外部空間49の圧力と内部空間48の圧力との圧力差、液体スズ40の密度、及び液面高さ42aに応じて定まる。
【0152】
本実施形態では、液面高さ42aに応じて、供給口46からプラズマ生成機構6への液体スズ40の供給及び非供給が切り替えられる。
図4A及びBは、原料コンテナ21に対する液体スズ40の供給動作を模式的に示した図である。
図4A及びBには、原料供給装置30及び内部の液体スズ40が示されている。なお図4A及びBでは、真空チャンバ3、原料コンテナ21、及び圧力調整機構51の図示は省略されている。
【0153】
図4Aには、液体スズ40が供給されていない状態の原料供給装置30が図示されている。
図4Bには、液体スズ40が供給されている最中の原料供給装置30が図示されている。
【0154】
図4Aでは、真空側タンク33の液面は供給口46よりも下方側の位置にあり、供給管34に液体スズ40は流入していない。この状態で大気側タンクに固体スズ41を投入することにより、供給管34に液体スズ40を流入させることが可能である。具体的には図4Bに示すように、固体スズ41の投入により大気側タンク32の液面が上昇する。また、真空側タンク33の液面が連動して上昇する。真空側タンク33の液面は供給口46よりも上方側の位置となり、供給管34に液体スズ40が流入する。これにより、原料コンテナ21に対する液体スズ40の供給状態が実現される。
【0155】
その後、供給に伴って真空側タンク33の液面は徐々に下降していき、連動して大気側タンク32の液面も下降する。やがて液面は再び図4Aの状態に戻り、非供給の状態となる。
【0156】
このように、大気側タンク32に対するスズの投入により、液面高さ42bを供給口46に到達する高さに上昇させ、原料コンテナ21に液体スズ40を供給することが可能である。本例では大気側タンクに入れた固体スズ41の量に応じた分の液体スズ40が供給されるため、供給量を容易に調整することが可能である。また、所望のタイミングで供給を行うことが可能である。
【0157】
一方で、例えば大気側タンク32の上端と供給口46の下端との高さ差がhより大きい場合には、大気側タンク32に液体スズ40を満杯になるまで入れたとしても、真空側タンク33の液面が供給口に届かず、供給を行うことができない。
【0158】
また、連絡管35の下端と供給口46の下端との高さ差がhより小さい場合には、大気側タンク32内の液体スズ40が真空側タンク33側に絶え間なく吸い上げられる状態となる。このまま固体スズ41が供給されないと、やがて大気側タンク32の液面が連絡管35の下端に達し、連絡管35の内部に大気が入り込んでしまう。このような状態となることを防止するためには、大気側タンク32に固体スズ41を入れ続け、原料コンテナ21に液体スズ40が常に供給されている状態を維持しなければならない。従って供給及び非供給の制御を行うことができなくなってしまう。
【0159】
このようなことがないように、大気側タンク32、真空側タンク33、及び連絡管35等の形状や配置が適宜設定される。例えば大気側タンク32の上端と供給口46の下端との高さ差がhより小さく設定される。あるいは、通常の使用状態(大気側タンク32が満杯ではなく、ある程度の液体スズ40が入った状態)が考慮され、ある程度の液面高さ42aを基準として、当該液面高さ42aと供給口46の下端との高さ差がhより小さくなるように供給口46の位置が決められてもよい。このようにして、供給及び非供給の切り替えが可能な原料供給装置30が実現される。
【0160】
なお本実施形態では原料としてスズ等の金属が用いられるが、このような比較的密度の高い材料を用いることにより、液面高さ42a及び42bの差が小さくなり、装置の小型化を実現することが可能となる。
【0161】
[セッティング]
原料供給装置30の使用開始時のセッティングの方法について説明する。原料供給装置30が使用されていない状態においては、例えば真空チャンバ3の内部空間48の圧力が大気圧であり、大気側タンク32や真空側タンク33等に液体スズ40は入っていない状態となっている。
【0162】
原料供給装置30の使用を開始する場合には、まず大気側タンク32にある程度の量の固体スズ41を投入する。次にヒーター36を駆動させ、固体スズ41を液体スズ40に変化させる。このようにして、連絡管35が液体スズ40に浸かった状態にする。あるいは、予め溶融された液体スズ40が直接投入されてもよい。
【0163】
次に圧力調整機構51を稼働させ、真空引き(真空チャンバ3の内部空間48の圧力を低下させる動作)を行う。この時、必要に応じて不活性化ガスによる置換が行われてもよい。内部空間48の圧力の低下に伴って、大気側タンク32内の液体スズ40が連絡管35に吸い込まれ、液面が上昇していく。やがて内部空間48の圧力が所定の圧力(本実施形態では30Pa)まで低下し、液体スズ40の液面の上昇は真空側タンク33内で停止する。このようにして原料供給装置30が図3のような状態となり、使用が可能となる。
【0164】
以上、本実施形態に係る原料供給装置30では、真空側タンク33の液面高さ42bは、内部空間48と外部空間49との圧力差、液体原料の密度、及び液面高さ42aに応じて定まり、液面高さ42aに応じて、プラズマ生成機構6への液体原料の供給及び非供給が切り替えられる。これにより、例えば減圧チャンバ内に存在する供給対象に、減圧雰囲気を破らずに液体原料を安定して供給可能となる。
【0165】
本実施形態では大気側タンク32への原料の投入により、真空チャンバ3内の供給対象に対する原料の供給が可能である。そのため、原料の供給時に真空チャンバ3の内部空間48の圧力を大気圧に戻す、供給対象の駆動を停止させる、真空チャンバ3を開けるといった操作を必要としない。これにより供給のための手間や時間が省かれ、供給対象である装置等を効率よく稼働させることが可能となる。
【0166】
また本実施形態では、真空側タンク33の周壁44に設けられた供給口46に、供給対象に向かって延びる供給管34が接続される。これにより、供給対象の外部に液体原料が漏れてしまうといったことが起こりにくくなり、確実に液体原料が供給される。
【0167】
また本実施形態では、連絡管35が大気側タンク32の内部に挿入され、真空側タンク33の底部43に接続される。これにより、大気側タンク32及び真空側タンク33の間で確実に液体原料が移動可能となる。また、大気側タンク32の液面には不純物(酸化した液体スズ40や大気中のゴミ等)が浮いていることがあり得るが、連絡管35により液面から離れた位置の液体原料が吸い上げられるため、真空側タンク33側への不純物の流入が抑制される。これにより、純度の高い液体原料の供給が可能となる。
【0168】
また本実施形態では、連絡管35が鉛直方向に沿って延在する。これにより、大気側タンク32及び真空側タンク33の間でスムーズに液体原料が移動可能となる。
【0169】
また本実施形態では、真空側タンク33の外部空間49の圧力が大気圧となる。これにより、チャンバや排気ポンプ等、外部空間49の圧力を所定の圧力に維持するための機構が不要となり、原料供給装置30の構成が簡素化される。
【0170】
<第2の実施形態>
本技術に係る原料供給装置30について、さらに詳細な実施形態を第2の実施形態として説明する。これ以降の説明では、上記の実施形態で説明した原料供給装置30における構成及び作用と同様な部分については、その説明を省略又は簡略化する。
【0171】
[原料供給装置の構成]
図5は、原料供給装置30の構成例を示す模式図である。
本例では、原料供給装置30は大気側タンク61、真空側タンク62、連絡管64、管部材82、ヒーター66、並びに圧力調整機構67及び68を有する。
【0172】
本実施形態では、真空チャンバ69及び70が隣接して配置される。また真空チャンバ69の内部空間71の圧力、及び真空チャンバ70の内部空間72の圧力が所定の圧力に維持される。以下、内部空間71の圧力が30Pa程度に維持され、内部空間72の圧力が10000Pa程度に維持される例について説明する。なお、内部空間71及び72の圧力が具体的にどのような値に維持されるかについては限定されない。図5では左側に真空チャンバ69が配置され、右側に真空チャンバ70が配置されている。なお1つの真空チャンバの内部空間が仕切られることにより、2つの内部空間が構成されてもよい。また外部空間73の圧力は大気圧となっている。
【0173】
内部空間72は、本技術に係る第1の空間の一実施形態に相当する。
内部空間72の圧力(10000Pa)は、第1の圧力に相当する。なお、本技術に係る第1の圧力は、10000Paに限定されない。
内部空間71は、本技術に係る第2の空間の一実施形態に相当する。
内部空間71の圧力(30Pa)は、第2の圧力に相当する。なお、本技術に係る第2の圧力は、30Paに限定されない。
【0174】
大気側タンク61及び真空側タンク62は、図3に示す大気側タンク32及び真空側タンク33と同様の構成を有する。大気側タンク61は外部空間73に配置され、真空側タンク62は真空チャンバ70の内部空間72に配置される。大気側タンク61には液体スズ40が液面高さ74cで収容され、真空側タンク62には液体スズ40が液面高さ74aで収容される。なお本実施形態では、所定の基準面を大気側タンク61の底部79の内面として液面高さを定義している。
【0175】
真空側タンク62は、本技術に係る第1の収容部の一実施形態に相当する。
液面高さ74aは、本技術に係る第1の液面高さの一実施形態に相当する。
大気側タンク61は、本技術に係る第3の収容部の一実施形態に相当する。
液面高さ74cは、本技術に係る第3の液面高さの一実施形態に相当する。
外部空間73は、本技術に係る第3の空間の一実施形態に相当する。
外部空間73の圧力(大気圧、1013hPa)は、第3の圧力に相当する。なお、本技術に係る第3の圧力は、大気圧に限定されない。
【0176】
管部材82は、S字に折れ曲がった形状を有する管である。本実施形態では、管部材82は内部空間71及び72に連通するように配置され、真空側タンク33内の液体スズ40は管部材82を通って原料コンテナ21に供給される。管部材82は、連絡管63、接続管65、及び供給管75を有する。
【0177】
図6A~Cは、管部材82の構成例を示す模式図である。
図6Aには供給管75が図示されており、連絡管63及び接続管65の形状が破線で示されている。同様に、図6Bには接続管65が、図6Cには連絡管63が図示されており、その他の部分は破線で示されている。
【0178】
接続管65は鉛直方向に沿って延在し、底部76及び周壁77を有する。接続管65の周壁77には供給口78が設けられる。具体的には図6Bの左上の位置に供給口78が設けられる。接続管65には、液面高さ74bで液体スズ40が収容される。
【0179】
連絡管63は左右方向に沿って延在し、右端が真空側タンク62の周壁81に接続される。本実施形態では、連絡管63の真空側タンク62に対する接続位置は、鉛直方向において液面高さ74aよりも低い位置となっている。すなわち、連絡管63は液体スズ40で満たされた状態となる。
【0180】
また、連絡管63の左端が接続管65の周壁77に接続される。具体的には、左端が周壁77の図6Bの右下の位置に接続される。
【0181】
供給管75はL字形状の管であり、左右方向に沿って延在する水平部83と、鉛直方向に沿って延在する鉛直部84とを有する。水平部83の右端は接続管65に設けられた供給口78に接続される。鉛直部84の下端は原料コンテナ21に向いた下向きの開口となる。なお、供給管75の具体的な形状は限定されない。例えば接続管65との接続位置(供給管75の右端)が最高点であり、接続管65の内部の液体スズ40が原料コンテナ21に向かって落下することが可能な任意の構造が用いられてよい。当該構造としては、例えば供給管75が直線状であり、右端が接続管65に接続され、右上から左下の斜め方向に延在するような構造を用いることが可能である。また、連絡管63、接続管65、あるいは管部材82全体の具体的な構成も限定されない。
【0182】
連絡管63は、本技術に係る第1の連絡通路の一実施形態に相当する。
接続管65は、本技術に係る第2の収容部の一実施形態に相当する。
液面高さ74bは、本技術に係る第2の液面高さの一実施形態に相当する。
【0183】
連絡管64は、図3に示す連絡管35と同様の構成を有する。すなわち、下端が大気側タンク61の内部に挿入され、上端が真空側タンク62の底部80に接続される。また、連絡管64は鉛直方向に沿って延在する。
連絡管64は、本技術に係る第2の連絡通路の一実施形態に相当する。
【0184】
ヒーター66は、大気側タンク61の底部37に当接するように配置される。本実施形態では、大気側タンク61及び連絡管64の少なくとも1つは加熱機構を有する。あるいは、真空側タンク62、連絡管63、接続管65、又は供給管75に加熱機構が設けられてもよい。
【0185】
圧力調整機構67は、内部空間71の圧力を30Paに維持する。圧力調整機構68は、内部空間72の圧力を10000Paに維持する、圧力を変化させるといった圧力の調整を行う。なお、10000Paはあくまで一例であり、内部空間72の圧力が具体的にどのような値に維持されるかは限定されない。
【0186】
[原料供給動作]
原料供給装置30による、原料コンテナ21に対する液体スズ40の供給動作について説明する。
【0187】
本実施形態では、圧力調整機構68による内部空間72の圧力の調整により、液面高さ74bを供給口78に到達する高さに上昇させ、原料コンテナ21に液体スズ40を供給することが可能である。本例においても、液面高さ74a及び74cの差を、図3の例と同様の考え方で算出することが可能である。具体的には、以下の式により高さ差が算出される。
大気圧=内部空間72の圧力+液体金属の重さによる圧力 …(4)
液体金属の重さによる圧力=密度×高さ差×重力加速度 …(5)
【0188】
本例では、
大気圧=1013[hPa]
内部空間72の圧力=10000[Pa]
密度=液体スズ40の密度=6.99[g/cm
重力加速度=9.80665[m/s
であり、これらを式(4)及び(5)に代入すると、
高さ差=1.332[m]
が得られる。
【0189】
すなわち、液面高さ74aは液面高さ74cよりも高く、内部空間72の圧力と外部空間73の圧力との圧力差、液体スズ40の密度、及び液面高さ74cに応じて定まる。図5では、液面高さ74a及び74cの高さ差を記号hで示している。h=1.332mは外部空間73の圧力が大気圧、内部空間72の圧力が10000Paである場合の一例である。高さ差hの具体的な値は限定されず、外部空間73及び内部空間72の圧力に依存した任意の値であってよい。
【0190】
例えば内部空間72の圧力が高くなった場合、真空側タンク62の液面高さ74aが低くなる。すなわち、真空側タンク62に収容された液体スズ40が接続管65や大気側タンク61に移動するため、接続管65の液面高さ74b、及び大気側タンク61の液面高さ74cが高くなる。この時、液面高さ74b及び74cの差は一定に維持されるため、液面高さ74cの増加に連動して液面高さ74bが同じ分だけ増加する。やがて液面高さ74bが供給口78の下端の高さに達し、供給管75内に液体スズ40が流入する。このようにして、原料コンテナ21に対する液体スズ40の供給が実現される。
【0191】
逆に内部空間72の圧力を低くした場合には、真空側タンク62の液面高さ74aが高くなる。すなわち、接続管65や大気側タンク61に収容された液体スズ40が真空側タンク62に移動するため、接続管65の液面高さ74b、及び大気側タンク61の液面高さ74cが低くなる。この時、液面高さ74b及び74cの差は一定に維持されるため、液面高さ74cの減少に連動して液面高さ74bが同じ分だけ減少する。これにより、液体スズ40の非供給状態への切り替えを行うことが可能である。このように、液面高さ74cに応じて、供給口78からプラズマ生成機構6への液体スズ40の供給及び非供給が切り替えられる。なお、外部空間73の圧力調整により供給状態が切り替えられてもよい。
【0192】
これにより、大気側タンク61に原料を投入せずとも、圧力調整といった比較的簡便な操作により供給の制御を行うことが可能となる。また、圧力の変化量に基づいて具体的な供給量を算出することが可能であるため、さらに精度のよい供給制御が実現される。また、プラズマ生成機構6等の供給対象が存在する空間と、圧力調整がされる空間とが区分けされているため、供給対象が存在する空間を真空に維持したまま供給制御を行うことが可能となる。
【0193】
なお本実施形態では、大気側タンク61に対するスズの投入により、液面高さ74bを供給口78に到達する高さに上昇させ、原料コンテナ21に液体スズ40を供給することが可能である。すなわち圧力調整による方法のみならず、大気側タンク61に固体スズ41を投入する方法(図3に示す例と同様の方法)によっても供給制御が可能である。これにより、適宜供給のための方法を選択することが可能となり、原料供給装置30の利便性が向上する。
【0194】
また本実施形態では、連絡管63が真空側タンク62の液面高さ74aより低い位置に接続される。これにより、真空側タンク62の液面に浮いた不純物が連絡管63に流入しにくくなり、純度の高い液体原料の供給が可能となる。
【0195】
<第3の実施形態>
本技術に係る原料供給装置30について、第3の実施形態を説明する。
【0196】
[原料供給装置の構成]
図7は、原料供給装置30の構成例を示す模式図である。
本例では図5に示す構成に加えて、原料供給装置30はさらに回収タンク90、連絡管91、及びバルブ92を有する。
【0197】
回収タンク90は、平たい桶型の形状を有する。回収タンク90は底部93を有し、真空チャンバ69の内部空間71の、概ね原料コンテナ21の下方側に配置される。回収タンク90は、例えば高融点金属により形成される。回収タンク90の形状、材料、配置等の具体的な構成は限定されない。
回収タンク90は、本技術に係る第4の収容部の一実施形態に相当する。
【0198】
連絡管91は、L字形状を有する管である。連絡管91は鉛直方向に沿って延在する鉛直部95と、左右方向に沿って延在する水平部96とを有する。鉛直部95の上端は回収タンク90の底部93に接続され、水平部96の右端は連絡管64の側面に接続される。
連絡管91は、本技術に係る第3の連絡通路の一実施形態に相当する。
【0199】
バルブ92は、連絡管91を開閉する。バルブ92は、例えばニードルバルブやボールバルブ等のメカニカルな開閉機構を備えたバルブであり、サーボモータ等により自動的に開閉が制御可能なように構成される。バルブ92は、連絡管91の水平部96に構成される。本実施形態では、バルブ92により水平部96が開閉され、液体スズ40の流れを停止させる、停止を解除するといった動作が行われる。バルブ92の具体的な構成は限定されない。あるいは、連絡管91を開閉可能な他の機構が配置されてもよい。
バルブ92は、本技術に係る開閉部の一実施形態に相当する。
【0200】
[回収タンク]
本実施形態では回収タンク90により、供給対象により使用された液体スズ40である廃液94が回収される。具体的には、例えばプラズマ生成機構6の駆動に伴ってプラズマPからデブリが発生し、デブリが廃液94として回収される。あるいは原料コンテナ21に液体スズ40が供給される際に、一部の液体スズ40が原料コンテナ21にうまく入らずに、外部にこぼれてしまうことがある。また原料コンテナ21が回転している場合に、回転により液体スズ40が飛散してしまうことがある。このようなこぼれた液体スズ40や飛散した液体スズ40も廃液94に含まれ、回収タンク90により回収される。
【0201】
図7には、バルブ92が閉められた状態の原料供給装置30が示されている。図7には、未使用の液体スズ40が薄い網掛け模様で示されている。また、使用済みの液体スズ40(廃液94)が濃い網掛け模様で示されている。
【0202】
廃液94は、回収タンク90に接続された連絡管91に流れ込む。図7には回収タンク90及び連絡管91に廃液94がある程度溜まった状態が示されている。廃液はバルブ92によりせき止められ、バルブ92よりも右側(連絡管64及び大気側タンク32等)に流入することはない。また、未使用の液体スズ40がバルブ92よりも左側(鉛直部95及び回収タンク90等)に流入することもない。
【0203】
[廃液の再利用]
本実施形態では、廃液94の再利用を行うことが可能である。すなわち、廃液94を再度プラズマ生成機構6の原料として使用することが可能である。以下、再利用の具体的な内容について説明する。
図8は、バルブ92が開けられた状態を示す模式図である。
【0204】
再利用を行う場合には、まずプラズマ生成機構6の駆動を停止させ、圧力調整機構67により内部空間71の圧力を上昇させる。その後バルブ92を開けると、内部空間71の圧力に応じた液面高さで廃液94の液面が静止した状態となる。図8では、廃液94の液面が鉛直部95の内部に位置した状態となっている。最初の内部空間71の圧力を上昇させる工程においては、このような状態が実現される圧力まで圧力を上昇させる。
【0205】
バルブ92は開けられているため、廃液94はバルブ92の右側に流入し、連絡管64を通って大気側タンク61に流れ込む。すなわち、連絡管91は廃液94の流路となる。なお、図8には一例として廃液94が大気側タンク61に流れ込む様子が示されているが、廃液94が真空側タンク62に流れ込むこともあり得る。その後バルブ92を閉めて再びプラズマ生成機構6を駆動させることにより、廃液94の再利用がされる。
【0206】
なお、図8の状態を実現させるために内部空間71の圧力を上昇させていく場合には、圧力を10000Pa以上まで上昇させることが必要となり、これにより内部空間71内のガスが連絡管63及び真空側タンク62を通って内部空間72に逆流し、真空側タンク62内にバブリングが起こることもあり得る。バブリングが起こると内部空間72の圧力も上昇し、真空側タンク62の液面が鉛直部95の液面と同程度の高さまで下がってしまう。これを防ぐために、例えばバルブや液体スズ40の凝固手段等を連絡管63に設け、内部空間71及び72を遮断する方法が採られてもよい。
【0207】
これにより真空チャンバ69を開ける操作を必要とせずに、圧力調整やバルブ92の開閉といった比較的簡便な操作で液体スズ40の再利用を行うことが可能となる。すなわち供給のための手間や時間が省かれ、供給対象である装置等を効率よく稼働させることが可能となる。
【0208】
また本実施形態では、圧力調整により廃液94の液面を連絡管91の鉛直部95の内部で停止させることが可能であるため、廃液94の液面に浮いた不純物が大気側タンク61等に流入しにくくなる。すなわち、廃液94のうち比較的不純物の少ない部分のみを再利用することが可能となり、純度の高い液体スズ40の供給が可能となる。また、バルブ92に不純物が詰まって開閉の動作ができなくなる、完全な開状態や閉状態にできなくなってしまう、といったバルブ92の機能の阻害が防止される。
【0209】
なお、廃液94が再利用されずに回収されてもよい。この場合、まず図7に示す状態でプラズマ生成機構6の駆動を停止させ、一旦真空チャンバ70の内部空間72の圧力を大気圧に戻し、真空側タンク62内の液体スズ40を大気側タンク61に移動させて回収する。その後、空の大気側タンク61を設置し、真空チャンバ69の内部空間71の圧力を大気圧に戻した後にバルブ92を開ける。すると廃液94が自重で落ちてくるため、大気側タンク61に流れ込む。このような手順で廃液94を回収することが可能である。これにより、真空チャンバ69を開ける操作を必要とせずに廃液94を回収することが可能となる。
【0210】
また本実施形態では、回収タンク90及び連絡管91の少なくとも一方は、廃液94を液体状態に保持する加熱機構を有する。これにより、廃液94が凝固し、廃液94の流れが阻害されるといったことが起こりにくくなる。もちろん加熱機構が大気側タンク61等、他の機構に配置されてもよい。
【0211】
廃液94の凝固及び融解により、バルブ92の動作に相当する動作が実現されてもよい。具体的には、連絡管91の内部で廃液94が凝固することで、液体状態の廃液94の流れがせき止められる。また固体状態の廃液94が融解することで、液体状態の廃液94の流出入が可能となる。例えば加熱機構により廃液94の温度が調整されることで、このような動作が実現される。連絡管91の内部に適当な量の廃液94が滞留するように、真空チャンバ69の内部空間71の圧力が適宜調整されてもよい。これにより、バルブ92の設置が不要となり、簡易な構成で原料供給装置30を実現可能となる。
【0212】
連絡管91が連絡管64に接続されずに、回収タンク90及び連絡管91が原料供給装置30と別体となって構成されてもよい。すなわち廃液94の再利用は行われずに、連絡管91の下部に大気側タンク61とは異なる別のタンクが配置され、廃液94が回収されてもよい。
【0213】
図3に示す2つの空間及び2つのタンクからなる例において、回収タンク90が配置されてもよい。この場合、例えば回収タンク90が真空側タンク33と同じ内部空間48に配置され、連絡管91により回収タンク90と連絡管35とが接続される。
【0214】
<その他の実施形態>
本技術は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0215】
[圧力の大小関係]
図3等においては内部空間48の圧力が外部空間49の圧力よりも低い例について説明を行ったが、逆に、内部空間48の圧力が外部空間49の圧力よりも高い圧力に維持されてもよい。例えば大気側タンク32を真空側タンク33よりも高い位置に配置することにより、このような構成が実現可能である。この場合、真空側タンク33の液面高さ42bが大気側タンク32aの液面高さ42aよりも低くなってもよい。
【0216】
あるいは、内部空間48の圧力が外部空間49の圧力と同一の圧力に維持されてもよい。この場合、液面高さ42a及び42が同じ高さになってもよい。
【0217】
また図5等においては、圧力の大小関係が、
(内部空間71)<(内部空間72)<(外部空間73)
となる例について説明を行ったが、圧力の大小関係は、
(内部空間72)<(内部空間71)<(外部空間73)
(内部空間71)=(内部空間72)<(外部空間73)
等であってもよい。
【0218】
すなわち、内部空間72の圧力が、内部空間71の圧力よりも低い圧力に維持され、内部空間71の圧力が、外部空間73の圧力よりも低い圧力に維持されてもよい。この場合、接続管65の液面高さ74bが、真空側タンク62の液面高さ74aよりも低くなってもよい。また、内部空間71の圧力が、内部空間72の圧力と同一の圧力に維持され、内部空間72の圧力が、外部空間73の圧力よりも低い圧力に維持されてもよい。その他、各々の空間の圧力の大小関係、及び液面高さの大小関係は限定されず、本技術を実現可能な範囲で任意の構成が採用されてよい。
【0219】
[移動機構]
図3の大気側タンク32を上下方向に移動させる移動機構が設けられてもよい。例えば移動機構として大気側タンク32の下部にジャッキが設けられ、大気側タンク32が上下に移動される。これにより、液面高さ42aの調整や、それに伴う供給制御を容易に行うことが可能となる。なお、上下方向には例えば斜め方向や鉛直方向が含まれる。その他、移動機構の具体的な構成は限定されず、例えば電動ステージによる移動や、上下方向以外への移動が可能であってもよい。また、図5の大気側タンク61に同様の機構が設けられてもよい。
【0220】
[回転ドラム]
図9は、他の実施形態に係る光源装置の構成例を示す模式図である。図9に示す光源装置102には、真空チャンバ3内に設けられ、液体状のプラズマ原料1を貯留した状態で回転する回転ドラム110が設けられる。光源装置102は、回転ドラム110に貯留されたプラズマ原料1をエネルギービームEBによりプラズマ化するLPP方式の装置である。
【0221】
回転ドラム110は、上方に開口し液体状のプラズマ原料1を貯留する貯留部114を有する。貯留部114には、原料供給装置30から、液体状のプラズマ原料1が供給される。
また回転ドラム110には、貯留部114に供給されるプラズマ原料1を液体状態で維持するために、図示しない加熱機構が設けられる。加熱機構としては、電熱線等を利用して回転ドラム110を直接加熱するヒータが用いられる。また、輻射等を利用して外側から回転ドラム110を加熱するヒータ等が用いられてもよい。
【0222】
図9に示す例では、回転ドラム110は、円盤状の基体111と当該基体111の一方の面に基体111の周縁に沿って形成された円環状の外壁部112とを有する。回転ドラム110では、基体111と外壁部112により囲まれた領域が液体状のプラズマ原料1を貯留する貯留部114となる。また、回転軸Oに対向する外壁部112の内周面112aは、貯留部114を囲む側面を構成し、貯留部114の内側面となる。回転ドラム110は貯留部114が上方を向くように配置される。
【0223】
回転ドラム110の貯留部114が形成される面とは反対側の面には、所定の回転軸Oを中心に回転する軸部材115が、回転ドラム110の中心軸と回転軸Oとが一致するように連結される。これにより、回転ドラム110は、回転軸Oの周りに回転可能に支持される。また軸部材115は、図示を省略したモータにより回転駆動される。
回転ドラム110の回転軸Oは、典型的には鉛直方向と略一致するように設定される。なお、回転軸Oは、プラズマPによる発光動作が可能な範囲で、鉛直方向に対して傾いた角度に設定されてもよい。
【0224】
回転軸Oを中心に回転ドラム110を連続的に回転すると、貯留部114に供給された液体状のプラズマ原料1は、遠心力により外壁部112の内周面112a側に移動し、内周面112aに沿って分布する。また内周面112aに分布する液体状のプラズマ原料1の膜厚は、回転体の回転速度に応じて調整される。
【0225】
このように、回転ドラム110は、貯留部114の内側面である内周面112aに液体状のプラズマ原料1を貯留する。また、液体状のプラズマ原料1を励起してプラズマPを生成するエネルギービームEBは、貯留部114の内側面(内周面112a)に照射される。これにより、エネルギービームEBの照射位置Iに対して、適切な膜厚で分布するプラズマ原料1を継続して供給することが可能となる。
【0226】
図9に示すように、光源装置102には、回転ドラム110に液体状のプラズマ原料1を供給する原料供給装置30が設けられる。原料供給装置30は、回転ドラム110の貯留部114の上方から、供給用のプラズマ原料1を液体状態で供給する。
【0227】
回転ドラム110の貯留部114に供給された液体状のプラズマ原料1は、遠心力により基体表面111aに沿って外壁部112側に移動し、最終的に外壁部112の内周面112aに沿って分布する。プラズマ原料1は供給された時点ですでに液体状態であるため、内周面112aに沿って分布するまでの流れがスムーズである。また固体状態のプラズマ原料1を供給する場合と比べ、液化を行う必要がなく、回転ドラム110上のプラズマ原料1の温度の変化も十分に小さくすることが可能である。これにより、放射線Rの発光動作を阻害することなく、安定してプラズマ原料1を供給することが可能となる。
【0228】
図10は、他の実施形態に係る原料供給装置30の構成例を示す模式図である。
本実施形態では、真空チャンバ3の内部空間48の右下に、高さの大きい真空側タンク33が配置される、また、外部空間49に大気側タンク32が配置される。大気側タンク32は、真空チャンバ3の右側の面が左側に当接し、底部37の高さが真空側タンク33の底部43の高さと一致するように配置される。
【0229】
また大気側タンク32の周壁38の左側、真空チャンバ3の右側の面、真空側タンク33の周壁44の右側に連通するように連絡口120が設けられる。このように、連絡管を用いずに原料供給装置30を構成することも可能である。これにより装置の小型化が実現される。
連絡口120は、本技術に係る第1の連絡通路の一実施形態に相当する。
【0230】
各図面を参照して説明した光源装置、原料供給装置、大気側タンク、真空側タンク、及び連絡管等はあくまで一実施形態であり、本技術の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本技術を実施するための他の任意の構成等が採用されてよい。
【0231】
本開示において、「略」という文言が使用される場合、これはあくまで説明の理解を容易とするための使用であり、「略」という文言の使用/不使用に特別な意味があるわけではない。すなわち、本開示において、「中心」、「中央」、「均一」、「同じ」、「直交」、「平行」、「延在」、「立体形状」、「立方体形状」、「直方体形状」、「コーン形状」、「角柱形状」、「多角形形状」、「円形状」、「円盤形状」、「湾曲形状」、「螺旋形状」、「桶型の形状」、「ビーカー形状」、「L字形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」、「実質的に中央」、「実質的に均一」、「実質的に同じ」、「実質的に直交」、「実質的に平行」、「実質的に延在」、「実質的に立体形状」、「実質的に立方体形状」、「実質的に直方体形状」、「実質的にコーン形状」、「実質的に角柱形状」、「実質的に多角形形状」、「実質的に円形状」、「実質的に円盤形状」、「実質的に湾曲形状」、「実質的に螺旋形状」、「実質的に桶型の形状」、「実質的にビーカー形状」、「実質的にL字形状」等を含む概念とする。例えば「完全に中心」、「完全に中央」、「完全に均一」、「完全に同じ」、「完全に直交」、「完全に平行」、「完全に延在」、「完全に立体形状」、「完全に立方体形状」、「完全に直方体形状」、「完全にコーン形状」、「完全に角柱形状」、「完全に多角形形状」、「完全に円形状」、「完全に円盤形状」、「完全に湾曲形状」、「完全に螺旋形状」、「完全に桶型の形状」、「完全にビーカー形状」、「完全にL字形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。従って、「略」の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」を付加して表現される概念が含まれ得る。反対に、「略」を付加して表現された状態について、完全な状態が排除される訳ではない。
【0232】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0233】
5…出射チャンバ
6…プラズマ生成機構
9a…外側突出部
9b…内側突出部
17…排気用ポンプ
30…原料供給装置
32、61…大気側タンク
33、62…真空側タンク
34、75…供給管
35、63、64、91…連絡管
36、66…ヒーター
37、43、76、79…底部
38、44、77、80…周壁
40…液体スズ
42a~42c、74a~74c…液面高さ
46、78…供給口
48、71、72…内部空間
49、73…外部空間
51、67、68…圧力調整機構
65…接続管
90…回収タンク
92…バルブ
94…廃液
100、102…光源装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10