(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126124
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ドア防水構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20240912BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
B60J5/10 A
B60J5/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034309
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】塚本 欣司
(57)【要約】 (修正有)
【課題】跳ね上げ式ドアを採用する荷室において、荷室内への水の侵入を抑制できるドア防水構造を提供する。
【解決手段】荷室3の開口部4に開閉可能に設けられた跳ね上げ式ドア8におけるドア防水構造1であり、開口部4の内周縁には、跳ね上げ式ドア8を閉塞した際に、跳ね上げ式ドア8が嵌まり込むドア受け部20が形成され、開口部4の上部側には、開口部4の幅方向に沿って形成された防水反物部材10が設けられており、防水反物部材10は、開口部4の幅方向と交差する方向において、跳ね上げ式ドア8及びドア受け部20を架け渡すように跳ね上げ式ドア8の上端側及びドア受け部20の上端側に結合されており、跳ね上げ式ドア8を閉塞する際に防水反物部材10を押し上げる突起部25が設けられていることを特徴とする。突起部25は、弾性部材で形成され、跳ね上げ式ドア8を閉塞した際に、ドア受け部20に当接できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室をなす箱体に設けられた開口部に、上下方向に開閉可能に設けられた跳ね上げ式ドアにおけるドア防水構造であって、
前記開口部の内周縁には、前記跳ね上げ式ドアを閉塞した際に、当該跳ね上げ式ドアが嵌まり込むドア受け部が形成されており、
前記開口部の上部側には、前記開口部の幅方向に沿って延びるように形成された防水反物部材が設けられており、
前記防水反物部材は、前記開口部の幅方向と交差する方向において、前記跳ね上げ式ドア及び前記ドア受け部を架け渡すように前記跳ね上げ式ドアの上端側及び前記ドア受け部の上端側に結合されており、
前記跳ね上げ式ドアを閉塞する際に前記防水反物部材を押し上げる少なくとも1つの突起部が設けられていること、を特徴とするドア防水構造。
【請求項2】
前記突起部は、前記跳ね上げ式ドアの上端側に設けられると共に、前記防水反物部材の裏面側に配置されていること、を特徴とする請求項1に記載のドア防水構造。
【請求項3】
前記突起部は、弾性部材で形成されると共に、前記ドア受け部の幅方向一端側から他端側に亘って延びるように形成されており、
前記跳ね上げ式ドアを閉塞した際に、前記突起部が、前記ドア受け部に当接すること、を特徴とする請求項1又は2に記載のドア防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア防水構造に関する。さらに詳しくは、跳ね上げ式ドアにおけるドア防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等における荷室(コンテナに相当)に跳ね上げ式ドアが設けられることがある。前記のように、跳ね上げ式ドアが設けられた荷室は、雨天時等にドアを開けた際に、ドアと荷室との間の隙間から雨水が荷室内に侵入しないよう、カバーや樋等の雨除けが設けられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のシート状カバーや樋は、ドアを閉じた際にドアの外側に露出する構造であるため、ドアや荷室の外観の見栄えが低下する問題がある。また、上述した特許文献1に記載の樋は、荷室側の第1の樋における取り付け部が荷室方向に延びるように板状に形成されている。そのため、第1の樋の上部を伝って流れる雨水が、荷室方向に漏出する懸念がある。したがって、ドアや荷室の外観を損なうことなく、防水できる防水構造が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、
図6に示すように、跳ね上げ式ドア80(単に、ドア80とも称する)を採用する荷室85においては、ドア80の上面を流れた水81が、ドア80と荷室85との間の隙間82に流れ落ちないように、隙間82の下方側に防水反物部材83(シート状カバーに相当)が設けられている。防水反物部材83は、荷室開口部の幅方向に沿って延びるように形成されている。また、荷室85におけるドア開口周縁には、排水路を形成するウェザーストリップ84が設けられている。ウェザーストリップ84は、開口部周縁から荷室85内に水81が侵入することを抑制するものとされている。ここで、
図6は、防水反物部材83の奥行方向(図示左右方向)の長さが、短く設定された場合を図示したものである。かかる場合は、防水反物部材83における最下端部が、ウェザーストリップ84が配置された位置よりも、荷室85における外側に位置するものとされている。
【0006】
しかしながら、上述の防水反物部材83のように、奥行方向の長さが短く設定された場合は、防水反物部材83を伝って流れる水81が、防水反物部材83の荷室幅方向(長手方向)両側から流れ落ちた際に、ウェザーストリップ84よりも荷室外側に落下する。その結果、ドア80と荷室85との隙間82を伝って、水81が荷室85内に侵入する懸念がある。
【0007】
一方、防水反物部材83の奥行方向の長さを長めに設定した場合は、ドア80の開放時に防水反物部材83の最下端部がウェザーストリップ84上に位置するため、防水反物部材83の長手方向両側から流れ落ちた水が、ウェザーストリップ84に回収される。しかしながら、かかる場合は、
図7(a)及び
図7(b)に示すようにドア80を閉じた際に、防水反物部材83が、ドア80とウェザーストリップ84との間に挟み込まれて、防水反物部材83の損傷や防水反物部材83が挟み込まれた部分を通じて荷室85内に水81が侵入する懸念があった。したがって、跳ね上げ式ドアを採用する荷室では、上述した課題を解決する防水構造が求められている。
【0008】
そこで、本発明は、跳ね上げ式ドアを採用する荷室において、荷室内への水の侵入を抑制できるドア防水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の防水構造は、荷室をなす箱体に設けられた開口部に、上下方向に開閉可能に設けられた跳ね上げ式ドアにおけるドア防水構造であって、前記開口部の内周縁には、前記跳ね上げ式ドアを閉塞した際に、当該跳ね上げ式ドアが嵌まり込むドア受け部が形成されており、前記開口部の上部側には、前記開口部の幅方向に沿って延びるように形成された防水反物部材が設けられており、前記防水反物部材は、前記開口部の幅方向と交差する方向において、前記跳ね上げ式ドア及び前記ドア受け部を架け渡すように前記跳ね上げ式ドアの上端側及び前記ドア受け部の上端側に結合されており、前記跳ね上げ式ドアを閉塞する際に前記防水反物部材を押し上げる少なくとも1つの突起部が設けられていること、を特徴とするものである。
【0010】
上述したドア防水構造は、箱体(荷室)の開口部の内周縁に形成されたドア受け部と、跳ね上げ式ドア(以下、単に「ドア」とも称する)との間に防水反物部材が架け渡されている。また、防水反物部材が、開口部の幅方向に沿って延びるように形成されている。また、防水反物部材は、ドアの上端側及びドア受け部の上端側に結合されている。したがって、防水反物部材は、ドアを開放した際に生じるドアと荷室との間の隙間を下方側から覆うことができる。これにより、上述したドア防水構造は、ドアを開けた状態において、ドア表面を伝って流れ落ちる水(例えば、雨水)が、ドアと荷室との間の隙間から、下方に落下することを抑制できる。
【0011】
また、上述したドア防水構造は、ドアを閉塞する際に防水反物部材を押し上げる少なくとも1つの突起部が設けられているので、防水反物部材が、突起部によって押し上げられながらドアと開口部周縁との間の空間に収容される。したがって、上述したドア防水構造は、防水反物部材が、ドアに挟み込まれることを抑制できる。これにより、防水反物部材が損傷したり、挟み込まれた防水反物部材を通じて、荷室内に水が侵入したりすることを抑制できる。また、上述したドア防水構造は、ドアを閉じた際に、防水反物部材が、外部に露出することを抑制できる。そのため、上述したドア防水構造は、外観の見栄えを損なうことを抑制できる。ここで、突起部は、防水反物部材を押し上げできるものであれば各種の大きさや形状のものが利用できる。例えば、突起部は、角柱が、開口部の幅方向に沿って延びるように長尺に形成されているものや、例えば、開口部の幅方向の一部にブロック状に設けられるもの、あるいは、複数の突起部で形成されているものなど、各種の形状や大きさのものが利用できる。
【0012】
(2)上述した本発明のドア防水構造において、前記突起部は、前記跳ね上げ式ドアの上端側に設けられると共に、前記防水反物部材の裏面側に配置されていること、を特徴とするとよい。
【0013】
上述したドア防水構造は、かかる構成とすることにより、ドアを閉じる際に、防水反物部材に突起部を確実に引っ掛けて(係合させて)押し上げることができる。これにより、上述したドア防水構造は、より確実に防水反物部材のドアへの挟み込みを抑制できる。
【0014】
(3)上述した本発明のドア防水構造において、前記突起部は、弾性部材で形成されると共に、前記ドア受け部の幅方向一端側から他端側に亘って延びるように形成されており、前記跳ね上げ式ドアを閉塞した際に、前記突起部が、前記ドア受け部に当接すること、を特徴とするとよい。
【0015】
上述したドア防水構造は、かかる構成とすることにより、ドアを閉塞した際に突起部によって、ドア上端部とドア受け部の上端部との間の隙間が密閉(シール)される。すなわち、上述したドア防水構造は、ウェザーストリップと併せて、ドア上端部とドア受け部の上端部との間の隙間を二重にシールすることができる。これにより、上述したドア防水構造は、ドアを閉塞した状態においても、外部からの水の侵入を抑制できる。ここで、突起部を構成する弾性部材は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)発泡体を素材として形成するとよい。
【0016】
(4)上述した本発明のドア防水構造は、前記開口部の周縁に沿って、ウェザーストリップが設けられており、前記防水反物部材は、前記跳ね上げ式ドアを開いた状態において、前記開口部に向けて下り傾斜状態となると共に、前記跳ね上げ式ドアを閉塞した状態において、前記ドア受け部及び前記ウェザーストリップの間の空間に収容できるものであること、を特徴とするとよい。
【0017】
上述したドア防水構造は、かかる構成とすることにより、ドアを開いた状態において、防水反物部材の最下端をウェザーストリップ上の近傍に位置させることができる。そのため、上述したドア防水構造は、防水反物部材の幅方向両端側から流れ落ちる水をウェザーストリップで受け止めることができる。これにより、上述したドア防水構造は、ドアを開いた状態における防水性を高めることができる。また、上述したドア防水構造は、跳ね上げ式ドアを閉塞した状態において、前記ドア受け部及び前記ウェザーストリップの間の空間に収容できるので、ドアを閉じた際に、防水反物部材がドアに挟み込まれることを抑制できる。言い換えれば、上述したドア防水構造は、ドアを開いた状態及びドアを閉塞した状態における防水反物部材における開口部の幅方向と交差する方向の長さ(奥行長さとも称する)が適正化されている。
【0018】
(5)上述した本発明のドア防水構造において、前記突起部は、前記跳ね上げ式ドアを閉塞した状態において、前記開口部の外側寄りに位置するように配置されていること、を特徴とするとよい。
【0019】
上述したドア防水構造は、かかる構成とすることにより、ドアを閉じる際に、迅速に突起部を防水反物部材に引っ掛けて(係合させて)押し上げることができる。すなわち、上述した防水構造は、ドアを閉じる動作の開始と共に、突起部が防水反物部材を押し上げることができる。これにより、上述した防水構造は、防水反物部材の巻取り代を多く取ることができるので、防水反物部材のドアへの挟み込みをより確実に抑制できる。また、突起部が、開口部の外側寄りに位置するように配置されているので、ドアが閉塞された状態において、開口部とドアの上端部との隙間が埋められる。これにより、上述したドア防水構造は、開口部とドアの上端部との間に段差ができることを抑制できるので、外観の見栄えを損なうことを抑制できる。
【0020】
(6)上述した本発明のドア防水構造において、前記突起部は、前記跳ね上げ式ドアを閉塞する際に前記防水反物部材を巻き上げることにより押し上げるものであること、を特徴とするとよい。
【0021】
上述したドア防水構造は、かかる構成とすることにより、跳ね上げ式ドアの閉塞に伴って、突起部が防水反物部材を引っ掛けて押し上げながら巻き上げることができる。これにより上述したドア防水構造は、防水反物部材が、ドアと荷室開口部との間に挟まれることを抑制できる。また、上述したドア防水構造は、ドアの外部側に防水反物部材が露出することがないので、ドアや荷室の外側における見栄えを損なうことを抑制できる。
【0022】
(7)上述した本発明のドア防水構造は、前記荷室が、車両に着脱可能又は着脱不能に搭載されるものであること、を特徴とするとよい。
【0023】
上述した荷室における防水構造は、かかる構成とすることにより、荷室に跳ね上げ式ドアを採用するトラック、バン等の車両やハッチバック式の車両等の各種の車両に適用できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、跳ね上げ式ドアを採用する荷室において、荷室内への水の侵入を抑制できるドア防水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るドア防水構造を採用する荷室の一部切欠き斜視図である。
【
図2】(a)は、本発明の一実施形態に係るドア防水構造の一部を構成する防水反物部材の平面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係るドア防水構造の一部切欠き平面図である。
【
図4】(a)は、
図2(b)のA-A方向矢視断面図であり、(b)は、(a)において跳ね上げ式ドアを閉じた状態を表す左側断面図である。
【
図5】本発明の変形例に係るドア防水構造の一部切欠き平面図である。
【
図6】従来のドア防水構造であり、防水反物部材の奥行きが短く設定された場合の説明図である。
【
図7】(a)従来のドア防水構造であり、防水反物部材の奥行きが長く設定された状態において跳ね上げ式ドアを開けた状態の説明図であり、(b)は、(a)の跳ね上げ式ドアを閉塞させた状態を示す従来のドア防水構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の
図1~
図5を参照して、本発明の一実施形態に係るドア防水構造1の詳細を説明する。これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。また、図中、同様の構成部品は、同様の符号を付して示す。また、
図4においては、断面部分のハッチングを一部省略している。また、本実施形態では、ドア防水構造1が、トラック2(車両2)における荷室3(箱体3とも称する)に採用されている場合を例として説明する。
【0027】
図1に示すように、トラック2(一部省略)の後部には、荷室3をなす箱体3が搭載されている。なお、荷室3は、トラック2の荷台上に着脱不能に搭載されているもの、又は、着脱可能に搭載されているもののいずれであってもよい。箱体3は、例えば、直方体形状に形成されており、底面3B、天井面3T、左側面3L、右側面3R、及び前面(図示せず)を有している。箱体3の後面は、本実施形態では、後述する跳ね上げ式ドア8により形成されている。なお、これらの各面は、箱体3(荷室3)をトラック2に対して、着脱不能とする場合は、トラック2側の部材(例えば、荷台)と共用してもよい。ドア防水構造1は、上述した荷室3における後部に搭載されている。
【0028】
ドア防水構造1は、荷室3をなす箱体3に設けられた開口部4に設けられた跳ね上げ式ドア8に利用されるものとされている。ドア防水構造1は、防水反物部材10(カバー部材10とも称する)と、開口部4の内周縁に形成されたドア受け部20(
図4参照)と、防水反物部材10を押し上げる突起部25等を備えている。以下では、まず、ドア防水構造1の一部を構成する荷室3について説明し、その後、ドア防水構造1を構成する防水反物部材10及び突起部25等の詳細について説明する。
【0029】
荷室3は、4つの側面のうちの後部に形成された開口部4と、開口部4の上部側に設けられた3つのヒンジ部5L,5M,5Rと、開口部4の幅方向両側に立設された一対の立設枠6,6と、を備えている。また、荷室3は、前記の他、開口部4の周縁上部に設けられたウェザーストリップ7(
図3及び
図4参照)と、跳ね上げ式ドア8と、開口部4の内周縁に形成されたドア受け部20と、等を備えている。
【0030】
開口部4は、荷室3の後部において、略矩形状に開口されている。荷室3は、開口部4を通じて、荷物等の収容及び取り出しが許容されている。本実施形態では、
図4(a)に示すように、開口部4の上部開口縁の上方側に空間21が形成されている。
【0031】
3つのヒンジ部5L,5M,5R(以下、特に区別する必要がない場合は、単に「ヒンジ部5」とも称する)は、
図1に示すように、開口部4の上部側において、箱体3(荷室3)の幅方向(車幅方向)に沿って設けられている。本実施形態では、荷室3の幅方向両端側に一対のヒンジ部5L,5Rが配されており、荷室3の中央にヒンジ部5Mが配されている。ヒンジ部5は、一端側が荷室3の天井面3Tにおける横枠31の後面側にボルトやリベット、あるいは接着剤等で締結されている。また、ヒンジ部5の他端側は、後述する跳ね上げ式ドア8の表面にボルトやリベット、あるいは接着剤等で締結されている。なお、ヒンジ部5は、必要な個数を設ければよい。
【0032】
立設枠6,6は、開口部4の周縁において、幅方向両側に立設されている。言い換えると、立設枠6,6は、荷室3における後部ピラーに相当するものであり、荷室3を支持している。立設枠6,6は、例えば、鉄、アルミニウム等の金属や繊維強化樹脂等を素材として形成されている。
【0033】
ウェザーストリップ7(
図3及び
図4参照)は、開口部4の周縁上部において幅方向に沿って延びるように設けられている。本実施形態では、ウェザーストリップ7が開口部4の周縁に沿って設けられている。すなわち、ウェザーストリップ7は、開口部4の外周縁を取り囲むように設けられている。ウェザーストリップ7は、防水性のゴムや樹脂等で形成されており、水(例えば、雨水)の排水路を形成している。したがって、ウェザーストリップ7は、ドア8及び荷室3の間から侵入する水が開口部4から侵入しないよう、前記排水路を通じて、荷室3の外部に排出することができる。また、本実施形態では、ドア8を開いた状態において、後述する防水反物部材10の最下端部の下方側に位置するようにウェザーストリップ7が設けられている。また、ウェザーストリップ7は、幅方向両端側が、防水反物部材10の幅方向両端よりも幅方向外側に位置する長さに形成されている。
【0034】
跳ね上げ式ドア8(ドア8とも称する)は、略矩形状の板状部材で形成されている。ドア8は、鉄やアルミニウム等の金属や繊維強化樹脂等を素材として形成されている。ドア8は、ウェザーストリップ7よりも箱体3(荷室3)の外側に配置(
図4(a)参照)されており、ヒンジ部5を介して上下方向に開閉することができる。また、ドア8は、
図1に示すように、適宜のダンパー30,30により、開放した状態で、保持することができる。
【0035】
ドア受け部20は、開口部4の内周縁に形成されており、ドア8を閉塞した際に、ドア8が嵌まり込むものとされている。すなわち、ドア受け部20は、開口部4と同様に略矩形状に形成されている。
【0036】
以上が、本発明の一実施形態に係るドア防水構造1が採用された荷室3の構成であり、次に、本発明のドア防水構造1の一部を構成する防水反物部材10及び突起部25等の詳細について説明する。
【0037】
図2(a)は、防水反物部材10単体(荷室3及びドア8から取り外した状態)の平面図であり、
図2(b)は、防水反物部材10を荷室3及びドア8に取り付けた状態を示す平面図である。
図2(a)に示すように、防水反物部材10は、開口部4の幅方向(荷室幅方向)に沿って延びるように形成されており、幅方向に長尺な略矩形状のシート材として形成されている。また、防水反物部材10は、耐水性及び可撓性を有するシート材(例えば、ゴム、軟質塩化ビニール樹脂等)として形成されている。すなわち、防水反物部材10は、耐水性及び可撓性を有する素材で形成されている。また、防水反物部材10は、上面側が、疎水性を呈するように形成されている。なお、防水反物部材10が親水性での素材で形成されている場合は、塗装等により表面に疎水性の被膜等を形成してもよい。
【0038】
防水反物部材10は、本体部11と、防水反物部材10を荷室3に取り付けるための荷室側取り付け代12と、防水反物部材10をドア8に取り付けるためのドア側取り付け代13等を備えている。
【0039】
本体部11は、幅方向に延びるように形成されており、幅方向両端側に設けられた一対のヒンジ部5L,5Rの間及びヒンジ部5L,5Rの下方側を覆う長さに形成されている。また、防水反物部材10(本体部11)は、開口部4の幅方向と交差する方向において、ドア8及びドア受け部20を架け渡すように設けられている。したがって、防水反物部材10は、ドア8が開いた状態において、ドア8の表面を伝った水(雨水等)を受け止め、幅方向両端から排水できる。また、本体部11の幅方向両端側は、ウェザーストリップ7上に位置する長さに形成されている。
【0040】
また、本体部11(防水反物部材10)は、
図4(a)に示すように、ドア8を開いた状態において、開口部4に向けて下り傾斜状態となるものとされている。また、本体部11は、
図4(b)に示すように、ドア8を閉塞した状態において、ドア受け部20及びウェザーストリップ7の間の空間21に収容できるものとされている。
【0041】
したがって、上述したドア防水構造1は、ドア8を開いた状態において、防水反物部材10の最下端をウェザーストリップ7上の近傍に位置させることができる。そのため、上述したドア防水構造1は、防水反物部材10の幅方向両端側から流れ落ちる水をウェザーストリップ7で受け止めることができる。これにより、上述したドア防水構造1は、ドア8を開いた状態における防水性を高めることができる。また、上述したドア防水構造1は、ドア8を閉塞した状態において、ドア受け部20及びウェザーストリップ7の間の空間21に収容できるので、ドア8を閉じた際に、防水反物部材10がドア8に挟み込まれることを抑制できる。言い換えれば、上述したドア防水構造1は、ドア8を開いた状態及びドア8を閉塞した状態における防水反物部材10における開口部4の幅方向と交差する方向の長さ(奥行長さとも称する)が適正化されている。
【0042】
荷室側取り付け代12(
図2(a)参照)は、一端側が幅方向に沿って折り曲げられることにより、幅方向に延びるように形成されている。また、ドア側取り付け代13は、他端側が幅方向に沿って折り曲げられることにより、幅方向に延びるように形成されている。荷室側取り付け代12は、
図4(a)に示すように、ドア受け部20の上端側(開口部4の内周縁におけるウェザーストリップ7の上方側)に鉛直方向に向けて結合されている(取り付けられている)。また、ドア側取り付け代13は、ドア8の上端側に結合されている(取り付けられている)。すなわち、防水反物部材10は、ヒンジ部5L,5M,5Rの下方側に位置し、ヒンジ部5L,5M,5Rの間及びヒンジ部5L,5M,5Rの下面側を覆うものとされている。
【0043】
図3及び
図4に示すように、突起部25は、ドア8の上端部(上壁の壁面)に設けられている。突起部25は、
図1及び
図2に示すように、ドア8の幅方向に沿って、延びるように形成されている。また、突起部25は、ドア受け部20の幅方向一端側から他端側に亘って延びるように形成されている。言い換えると、突起部25は、左側のヒンジ部5Lの左端から右側のヒンジ部5Rの右端に亘って延びるように形成されている。
【0044】
また、突起部25は、
図4に示すように、ドア8を閉塞する際に防水反物部材10を押し上げるものとされている。言い換えると、突起部25は、ドア8を閉塞する際に防水反物部材10を巻き上げることにより押し上げるものとされている。ここで、突起部25は、ドア8の上端側に設けられると共に、防水反物部材10の裏面側に配置されている。したがって、上述したドア防水構造1は、ドア8を閉じる際に、防水反物部材10に突起部25を確実に引っ掛けて(係合させて)押し上げながら、防水反物部材10を巻き上げることができる。また、巻き上げられた防水反物部材10は、空間21に収容される。これにより、上述したドア防水構造1は、防水反物部材10が、ドア8と開口部4との間に挟まれることを抑制できる。また、上述したドア防水構造1は、ドア8の外部側に防水反物部材10が露出することがないので、ドア8や荷室3の外側における見栄えを損なうことを抑制できる。
【0045】
また、突起部25は、弾性部材で形成されている。具体的には、突起部25は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)発泡体を素材として形成されている。また、突起部25は、ドア8を閉塞した際に、ドア受け部20に当接するように配されている。したがって、上述したドア防水構造1は、ドア8を閉塞した際に突起部25によって、ドア8の上端部とドア受け部20の上端部との間の隙間4Aが密閉(シール)される。すなわち、上述したドア防水構造1は、ウェザーストリップ7と併せて、ドア上端部とドア受け部20の上端部との間の隙間を二重にシールすることができる。これにより、上述したドア防水構造1は、ドア8を閉塞した状態においても、外部からの水の侵入を抑制できる。
【0046】
また、突起部25は、
図4(b)に示すように、ドア8を閉塞した状態において、開口部4の外側寄りに位置するように配置されている。したがって、上述したドア防水構造1は、ドア8を閉じる際に、迅速に突起部25を防水反物部材10に引っ掛けて(係合させて)押し上げることができる。すなわち、上述した防水構造1は、ドア8を閉じる動作の開始と共に、突起部25が防水反物部材10を押し上げることができる。これにより、上述した防水構造1は、防水反物部材10の巻取り代を多く取ることができるので、防水反物部材10のドア8への挟み込みをより確実に抑制できる。また、突起部25が、開口部4の外側寄りに位置するように配置されているので、ドア8が閉塞された状態において、開口部4とドア8の上端部との隙間が埋められる。これにより、上述したドア防水構造1は、開口部4とドア8の上端部との間に段差ができることを抑制できるので、外観の見栄えを損なうことを抑制できる。
【0047】
以上が、本発明の一実施形態に係るドア防水構造1の構成であり、次に本発明のドア防水構造1の作用効果について以下に説明する。
【0048】
上述したドア防水構造1は、箱体3(荷室3)の開口部4の内周縁に形成されたドア受け部20と、跳ね上げ式ドア8との間に防水反物部材10が架け渡されている。また、防水反物部材10が、開口部4の幅方向に沿って延びるように形成されている。また、防水反物部材10は、ドア8の上端側及びドア受け部20の上端側に結合されている。したがって、防水反物部材10は、ドア8を開放した際に生じるドア8と荷室3との間の隙間4Aを下方側から覆うことができる。これにより、上述したドア防水構造1は、ドア8を開けた状態において、ドア表面を伝って流れ落ちる水(例えば、雨水)が、ドア8と荷室3との間の隙間4Aから、下方に落下することを抑制できる。
【0049】
また、上述したドア防水構造1は、ドア8を閉塞する際に防水反物部材10を押し上げる少なくとも1つの突起部25が設けられているので、防水反物部材10が、突起部25によって押し上げられながらドア8と開口部4周縁との間の空間21に収容される。したがって、上述したドア防水構造1は、防水反物部材10が、ドア8に挟み込まれることを抑制できる。これにより、防水反物部材10が損傷したり、挟み込まれた防水反物部材10を通じて、荷室3内に水が侵入したりすることを抑制できる。また、上述したドア防水構造1は、ドア8を閉じた際に、防水反物部材10が、外部に露出することを抑制できる。そのため、上述したドア防水構造1は、外観の見栄えを損なうことを抑制できる。
【0050】
また、上述したように、ドア防水構造1は、箱体3(荷室3)が、トラック2に対して、着脱可能又は着脱不能に搭載できるように構成されている。そのため、上述したドア防水構造1は、荷室3に跳ね上げ式ドア8を採用するトラック、バン等の車両やハッチバック式の車両等の各種の車両に適用できる。
【0051】
以上が、本発明の一実施形態に係るドア防水構造1の構成及び作用効果であるが、本発明のドア防水構造1は、上述した実施形態には限定されず、各種の変形を行うことができる。
【0052】
本実施形態では、ドア防水構造1が、荷室3後方側のバックドアに採用されたものを例示したが、これには限定されず、ドア防水構造1は、例えば、荷室3の側面3L,3Rなど、各種の面に採用された跳ね上げ式ドア8に利用できる。また、本実施形態では、ドア防水構造1が、荷室3後方側のバックドアにのみ、単一で設けられている場合を例示したが、例えば、側面3L,3R等に跳ね上げ式ドア8が複数設けられている場合は、ドア防水構造1が複数のドア8に対して設けられていてもよい。また、箱体3(荷室3)は、各種の形状や大きさのものが利用できる。また、箱体3の各面は、車両2の荷台等、他の部材を利用するものでもよい。また、ドア受け部20の形状や大きさは、荷室3や跳ね上げ式ドア8の形状や大きさに応じて、各種のものが採用できる。
【0053】
また、本実施形態では、防水反物部材10が、耐水性及び可撓性を有する素材で形成されているが、防水反物部材10は、本発明の目的を損なわない範囲で各種の素材を採用することができる。例えば、可撓性の度合いは、荷室3及びドア8の取り付け形状や間隔、あるいは、ドア8と閉じた際の収容状態等に応じて、各種の度合いに設定できる。また、防水反物部材10は、一体的に形成されているものだけではなく、防水性が確保できる範囲で、適宜、複数の部材で形成されていてもよい。また、防水反物部材10と、ドア受け部20との結合位置や防水反物部材10と、ドア8との結合位置は、発明の範囲内で各種の位置に変更できる。また、ドア8を閉塞した際の防水反物部材10の収容状態は、ドア受け部20、開口部4、ドア8の形状や大きさに応じて、各種の態様とすることができる。また、本実施形態では、防水反物部材10が、ドア8を開いた状態において、開口部4に向けて下り傾斜状態となるように設定されているが、ドア8を開いた状態における防水反物部材10の傾斜角度は、ウェザーストリップ7が設けられる位置等に応じて、各種の角度に設定できる。
【0054】
また、本実施形態では、突起部25が、開口部4の幅方向に沿って延びるように形成されているが、突起部25は、これには限定されない。例えば、
図5に示すように、突起部25が、ドア8の上端部に、幅方向に沿って所定の間隔を空けて複数(本実施形態では5つ)設けられていてもよい。すなわち、突起部25が間欠的にドア8の幅方向に沿って配置されていてもよい。突起部25は、ドア8を閉塞する際に防水反物部材10を押し上げできるものであれば、各種の形状・大きさ・個数のものが利用できる。なお、ドア8の上端部と、ドア受け部20の上端部との間の隙間を埋めてシールする場合は、ドア受け部20の幅方向に沿って延びるように一体的に突起部25を形成することが望ましい。
【0055】
また、本実施形態では、突起部25が、ドア8の上端側に設けられると共に、防水反物部材10の裏面側に配置されているが、これには限定されず、突起部25は、ドア8を閉塞する際に防水反物部材10を押し上げ可能な場所であれば、各種の位置に配置することができる。また、突起部25は、防水反物部材10を押し上げできるものであれば各種の大きさや形状のものが利用できる。例えば、突起部25は、本実施形態のように角柱が開口部4の幅方向に沿って延びるように長尺に形成されているものや、例えば、開口部4の幅方向の一部にブロック状に設けられるもの、あるいは、複数の突起部25で形成されているものなど、各種の形状や大きさのものが利用できる。
【0056】
また、突起部25は、ゴム等の弾性部材で形成されているものだけではなく、樹脂や金属等、各種の素材で形成することができる。なお、ドア8の上端部と、ドア受け部20の上端部との間の隙間を埋めてシールする場合は、突起部25を弾性部材等、反発力や復原性のある素材で形成することが望ましい。また、突起部25は、ドア8を閉塞した際に、ドア受け部20に当接するものだけではなく、ドア8を閉塞した際に、ドア受け部20と当接しないものとして構成することもできる。なお、ドア8の上端部と、ドア受け部20の上端部との間の隙間を埋めてシールする場合は、ドア8を閉塞した際に、突起部25がドア受け部20と当接することが望ましい。
【0057】
また、ウェザーストリップ7の材質、形状、大きさは、各種のものが利用できる。また、跳ね上げ式ドア8には、ウェザーストリップ7よりも箱体3の外側に配置される各種の形状や大きさのものが利用できる。
【0058】
以上が、本発明に係るドア防水構造の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のドア防水構造は、跳ね上げ式ドアを採用する各種の荷室に利用することができる。また、本発明のドア防水構造は、荷室に跳ね上げ式ドアを採用するトラック、バン等の車両やハッチバック式の車両等の各種の車両に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 :ドア防水構造
2 :車両(トラック)
3 :箱体(荷室)
4 :開口部
4A:隙間
5 :ヒンジ部
6 :立設枠
7 :ウェザーストリップ
8 :跳ね上げ式ドア(ドア)
10 :防水反物部材(カバー部材)
20 :ドア受け部
21 :空間
25 :突起部