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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126128
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】スタンディングパウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240912BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B65D65/40 D BRH
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034318
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中村 元春
(72)【発明者】
【氏名】大竹 洋平
(72)【発明者】
【氏名】倉賀野 彰
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
【Fターム(参考)】
3E064AB25
3E064BA21
3E064BA25
3E064BA36
3E064BB03
3E064BC01
3E064BC20
3E064EA30
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC40
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB85
3E086BB90
(57)【要約】
【課題】熱を利用したシール時の耐熱性、リサイクル性、および落下破袋強度がいずれも優れたスタンディングパウチを提供する。
【解決手段】積層フィルムにより形成された胴部と、底部と、開口部であるスパウトと、を備えるスタンディングパウチであって、胴部を形成している積層フィルムは、ナイロンを含む延伸フィルムである最外基材層と、未延伸ポリエチレンフィルムであるシーラント層と、この最外基材層とシーラント層との間に配置された、二軸延伸ポリエチレンフィルムである中間基材層と、により構成され、スパウトはポリエチレンを主成分として含み、さらに、このスタンディングパウチの全体に占めるポリエチレン含有率が85質量%以上であり且つナイロン含有率が10質量%以下およびポリエチレンテレフタラート含有率が0.1質量%未満である、スタンディングパウチ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層フィルムにより形成された胴部と、底部と、開口部であるスパウトと、を備えるスタンディングパウチであって、
前記胴部を形成している前記積層フィルムは、ナイロンを含む延伸フィルムである最外基材層と、未延伸ポリエチレンフィルムであるシーラント層と、前記最外基材層と前記シーラント層との間に配置された、二軸延伸ポリエチレンフィルムである中間基材層と、により構成され、
前記スパウトはポリエチレンを主成分として含み、
さらに、前記スタンディングパウチの全体に占めるポリエチレン含有率が85質量%以上であり且つナイロン含有率が10質量%以下およびポリエチレンテレフタラート含有率が0.1質量%未満である、
スタンディングパウチ。
【請求項2】
前記最外基材層が、延伸ナイロンフィルムの単層フィルム、あるいは、前記最外基材層における最も外面側のフィルムとして延伸ナイロンフィルムが配置された複層フィルムである、請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項3】
前記最外基材層を構成している前記ナイロンを含む少なくとも1つのフィルムの融点が、前記シーラント層の融点よりも80℃以上高い、請求項1または2に記載のスタンディングパウチ。
【請求項4】
前記最外基材層の内表面に印刷層が形成されており、前記積層フィルムに波長800nmの光を照射して測定される光透過率が35%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載のスタンディングパウチ。
【請求項5】
前記シーラント層は3以上のフィルムが積層されて構成され、且つ再生ポリエチレンフィルムがバージンポリエチレンフィルムに挟まれて配置されており、
さらに、前記中間基材層の外表面には金属蒸着が施されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のスタンディングパウチ。
【請求項6】
前記中間基材層の外表面に透明蒸着が施されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のスタンディングパウチ。
【請求項7】
前記最外基材層が再生ナイロンまたはバイオマス由来ナイロンを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のスタンディングパウチ。
【請求項8】
バイオマス由来ポリエチレンを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のスタンディングパウチ。
【請求項9】
前記スタンディングパウチの収容領域の容積が700ml以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載のスタンディングパウチ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のスタンディングパウチと、前記スタンディングパウチの収容領域に収容された収容物と、を備える、容器詰め品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンディングパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック資源使用量低減などの観点から、詰め替え用製品などに自立性の袋状柔軟性包装体であるスタンディングパウチが多く利用されている。そして通常、このスタンディングパウチでは、強度(耐久性)が高いものが求められている。一方で、環境負荷低減などの観点から、このスタンディングパウチでもリサイクル性(特にリサイクルフィルムとした際の品質)が優れたものが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、積層フィルムで形成した胴部材および底部材からなる袋状容器の中に内容物を充填し開口部をヒートシールしてなるスタンディングパウチにおいて、最外層が二軸延伸ナイロンフィルム、中間層が一軸延伸ポリオレフィンフィルムまたは圧延ポリオレフィンフィルム、最内層が線状低密度ポリエチレンにエチレン-酢酸ビニル共重合体を混合したフィルムからなる積層フィルムを胴部材として用いた、充填する内容物に対する耐久性、シール部の強度、充填包装時の加工性、手での引き裂き開封性、起立させたときの自立性に優れたスタンディングパウチが開示されている。
また、特許文献2には、基材と、ヒートシール層とを備え、基材が延伸ポリエチレンフィルムであり、ヒートシール層がポリエチレンから構成され、基材およびヒートシール層の少なくとも一方が、ポリエチレンとしてバイオマス由来のポリエチレンを含む、包装材料としての強度や耐熱性を有し、かつリサイクル性にも優れる包装材料を実現することができる積層体を用いて作製されたスタンドパウチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-237281号公報
【特許文献2】特開2020-55159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一般的なスパウト付きスタンディングパウチの多くは、ポリエチレンにより構成されたシーラント層などに加えて、強度などの観点からポリエチレンテレフタラートにより構成されたフィルム層を含む積層フィルムを用いて作製されており、このポリエチレンテレフタラートはポリエチレンとの相溶性が極めて低いためリサイクル性(リサイクル樹脂やリサイクルフィルムとした際の品質)が劣る。また、上記特許文献1のスタンディングパウチは、最外層と最内層との融点差からヒートシールなどの熱を利用したシール時における耐熱性を一定程度有するものではあるが、落下破袋強度などが十分ではない。さらに、上記特許文献2の積層体を用いて作製されたスタンドパウチは、ポリエチレンの単一素材により構成されているためリサイクル性が優れたものではあるが、ヒートシールなどの熱を利用したシール時の耐熱性が劣る。つまり、従来のスタンディングパウチでは、少なくとも、熱を利用したシール時の耐熱性、リサイクル性、または落下破袋強度のいずれかにおいて課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱を利用したシール時の耐熱性、リサイクル性、および落下破袋強度がいずれも優れたスタンディングパウチ、およびこのスタンディングパウチを用いた容器詰め品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、積層フィルムにより形成された胴部と、底部と、開口部であるスパウトと、を備えるスタンディングパウチであって、この胴部を形成している積層フィルムは、ナイロンを含む延伸フィルムである最外基材層と、未延伸ポリエチレンフィルムであるシーラント層と、この最外基材層とシーラント層との間に配置された、二軸延伸ポリエチレンフィルムである中間基材層と、により構成され、スパウトはポリエチレンを主成分として含み、さらに、スタンディングパウチの全体に占めるポリエチレン含有率が85質量%以上であり且つナイロン含有率が10質量%以下およびポリエチレンテレフタラート含有率が0.1質量%未満であるスタンディングパウチに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱を利用したシール時の耐熱性、リサイクル性、および落下破袋強度がいずれも優れたスパウト付きスタンディングパウチ、およびこのスパウト付きスタンディングパウチを用いた容器詰め品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るスタンディングパウチの斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るスタンディングパウチの胴部を形成している積層フィルムの部分断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るスタンディングパウチの胴部を形成している積層フィルムの変形例の部分断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るスタンディングパウチの胴部を形成している積層フィルムの別の変形例の部分断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るスタンディングパウチの胴部を形成している積層フィルムのさらに別の変形例の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、一部の図面については、便宜上、符号を付していない(省略している)箇所がある。さらに、図面に示された各部材等の寸法比率(長さ、厚さなど)は、発明の理解を容易にするために、実際の寸法比率とは異なる場合がある。
【0011】
〔全体構成〕
まず、図1を用いて本発明に係るスタンディングパウチおよび容器詰め品の実施形態の全体構成について説明する。
本発明に係るスタンディングパウチ(自立性の袋状柔軟性包装体)は、以下の実施形態を包含するものである。
【0012】
本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、積層フィルム200により形成された胴部51と、底部53と、開口部であるスパウト13と、を備え、胴部51を形成している積層フィルム200は、ナイロンを含む延伸フィルムである最外基材層201と、未延伸ポリエチレンフィルムであるシーラント層202と、最外基材層201とシーラント層202との間に配置された、二軸延伸ポリエチレンフィルムである中間基材層203と、により構成されている。また、スパウト13はポリエチレンを主成分として含む。さらに、スタンディングパウチ100の全体に占めるポリエチレン含有率が85質量%以上であり且つナイロン含有率が10質量%以下およびポリエチレンテレフタラート含有率が0.1質量%未満となっている。そして、少なくとも収容領域に収容物が収容され底面を下側にして載置面に設置された状態で自立性を有する。
なお、本実施形態に係るスタンディングパウチ100の各構成要素の位置関係(上下関係、左右関係等)の説明は、特に断りのない場合、スタンディングパウチ100の底部53を下側にして載置面に設置された状態での位置関係を説明したものである。よって、これらの説明における位置関係は、スタンディングパウチ100の使用時や製造時の位置関係とは必ずしも一致しない。
【0013】
例えば、図1に示すような、胴部51と、底部53と、キャップ付きスパウト15と、により構成されるスタンディングパウチ100がより具体的な実施形態として示される。そして、本発明の効果が発揮され且つ把持性も優れたものとなるようにするために、少なくとも胴部51が、上記フィルム構成の積層フィルム200により形成されている。底部53は、限定されるものではないが、積層フィルムにより形成されているのが好ましく、上記フィルム構成の積層フィルム200により形成されているのがより好ましい。この実施形態では、胴部51がスタンディングパウチ100の前面および後面を構成し且つ底部53が底面を構成するように配置され、あるいは折り畳まれ(折り曲げられ)、この前面の積層フィルム200と後面の積層フィルム200との対向する内面側縁部および内面上縁部のシーラント層202どうしが接合されてサイドシール部21および上シール部23が形成され、さらに、必要であればこの前面および後面とこれらの下部側に配置された底面とがシーラント層202どうしなどにおいて接合されて製袋され、内部に収容領域を有する袋状となっている。そして、底面は折り畳み可能なマチ構造(例えば、前面または後面を正面としたときの底面の左右方向に、上部側に向かって山折りとなる折り目を有するマチ構造)となって前面と後面とを連結しており、このマチ構造は、収容物を収容前などにおいては折り畳んでスタンディングパウチ100の収容領域を縮小させることができ、且つ、収容物が収容領域に収容されたときにスタンディングパウチ100に厚みを与えるように広がることが可能な構造となっている。加えて、スタンディングパウチ100が前述したような自立性を有するために、前面の一部および底面の一部により形成された前側下部スカートシートと、後面の一部および底面の一部により形成された後側下部スカートシートと、の側縁部(サイドシール部21の下部側)どうしが接合されてスカートシール部27が形成され、このスカートシール部27を介して前側下部スカートシートと後側下部スカートシートとが一繋がりになって形成されたスカート部31(つまり胴部51の一部および底部53の一部により形成されたスカート部31)が備わる。また、前面および後面の上部側には、この前面と後面とに挟まれるように、斜めシール部25において積層フィルム200のシーラント層202と接合されたスパウト13が備わり、このスパウト13には開閉可能なキャップ11が接続されている(キャップ付きスパウト15)。
【0014】
なお、前述したように、本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、胴部51および底部53が一体として積層フィルム200により形成されていても良く、この場合には、収容領域が積層フィルム200のシーラント層202により囲まれて形成されていても良い。一方で、胴部51と底部53とがそれぞれ別の部材によって形成されていても良く、この場合には、これらの部材がそれぞれ接合されて袋状となる。そして、この場合の底部53は、積層フィルムとは異なる材料(単層のフィルムや板状樹脂材料など)により形成されていても良い。
【0015】
また、スパウト13は、本実施形態に係るスタンディングパウチ100の収容領域への収容物の収容、およびこの収容領域からの収容物の排出が可能であり、且つ封止が可能な開口部であり、口栓構造(例えば筒状部およびフランジ部を備える口栓構造等)を有するものである。この口栓構造は、繰り返し開閉可能な構造であっても良く、着脱可能なキャップ11等により封止することができるネジ山が設けられていても良い。なお、スパウト13の接合位置は図1の実施形態に限定されるものではなく、上シール部23やサイドシール部21などにおいて接合されていても良い。そして、このスパウト13は、スタンディングパウチ100のリサイクル性が優れたものとなるようにするために、ポリエチレンを主成分として含む。特に、耐久性などの観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)を主成分として含むのがより好ましい。また、環境負荷軽減の観点から、バイオマス由来ポリエチレンを含むのも好ましい。開口部としてスパウト13とともにキャップ11を含む場合には、同様の理由から、キャップ11もポリエチレンを主成分として含むのが好ましく、高密度ポリエチレン(HDPE)を主成分として含むのがより好ましい。そしてこれもまた、バイオマス由来ポリエチレンを含むのが好ましい。
ここで、「ポリエチレンを主成分として含む」とは、ポリエチレンを50質量%超含むことを意味し、この割合は70質量%以上であるのが好ましく、90質量%以上であるのがより好ましく、95質量%以上であるのがさらに好ましく、99質量%以上であるのがさらに好ましく、100質量%(ポリエチレンからなる)のがさらに好ましい。
【0016】
さらに、本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、胴部51、底部53、およびスパウト13(キャップ付きスパウト15等)に加えて、天部などの他の部材等を備える実施形態であっても良い。
例えば、前面および後面の上部側に、天部により構成された、この前面および後面と接合されてこれらを連結している天面が備わり、さらに、この天面も折り畳み可能なマチ構造である実施形態が示される。なお、この実施形態でも、スパウト13の少なくとも一部が胴部51と接合されているのが好ましい。また、この天面を構成している天部も積層フィルムにより形成されているのが好ましく、上記フィルム構成の積層フィルム200により、胴部51および底部53と一体として形成されているのがより好ましい。
そして、この実施形態でも、スタンディングパウチ100の収容領域に収容物が収容されたときに、この胴部51により構成された前面および後面がその厚み方向(積層フィルム200の厚み方向)に膨らむことができるような構成となっている。つまり、この前面および後面と、マチ構造の底面および天面とによって、収容物の収容前においてはスタンディングパウチ100をかさばらないように縮小する(折り畳む)ことができ、少なくとも収容物が収容された状態ではスタンディングパウチ100に厚みを与えるように広がって底面を下側にして自立可能となり、さらに収容物を使い切った後にはスタンディングパウチ100を小さく押しつぶすことができるようになっているため、これも輸送、保管、廃棄、使用済パウチの回収などがし易い。
【0017】
なお、本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、収容領域の容積が大きいもの(大容量スパウト付きスタンディングパウチ)であっても前述した構成により落下破袋強度が優れることが特徴の1つである。そして、このような大容量スパウト付きスタンディングパウチであっても、熱を利用したシール時の耐熱性が優れるため生産性を低下させ難く、またリサイクル性も高い。限定されるものではないが、その収容領域の容積(収容物を収容可能な容積)は700ml以上であっても良い。つまり、700ml(0.7L)以上の収容物を収容できるスタンディングパウチ100であっても良い。そして、この容積は750ml(0.75L)以上であっても良く、800ml(0.8L)以上であっても良く、820ml(0.82L)以上であっても良い。この上限は、2000ml(2.0L)以下であって良く、1800ml(1.8L)以下であっても良く、1500ml(1.5L)以下であっても良く、1400ml(1.4L)以下であっても良い。
【0018】
このような本実施形態に係るスタンディングパウチ100を使用して、その収容領域に収容物が収容された容器詰め品(例えば詰め替え用製品など)を得ることができる。この容器詰め品に収容された収容物を使用する場合には、開口部であるスパウト13からこの収容物をスクイズ操作等によって排出して使用する。スタンディングパウチ100に収容する収容物の種類は、特に限定されないが、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、ボディーソープ、洗顔料、洗剤、漂白剤、柔軟剤、飲料、食品、エンジンオイルなどが挙げられる。
また、この収容物は、液体(ペースト状のものを含む)であっても良いし、固体(例えば、粒状のもの(顆粒状のものを含む)、あるいは粉状のものなど)であっても良い。なお、本実施形態に係るスタンディングパウチ100が液体の収容物を収容するための液体収容用スタンディングパウチであっても、上記した落下破袋強度が優れるため取り扱いが容易である。
収容物が液体である場合には、その粘度は、例えば30℃において1mPa・s以上であることが好ましく、そして、12万mPa・s以下であることが好ましく、6万mPa・s以下であることがより好ましい(いずれもB型粘度計(例えば東機産業社製ビスコメーターTV-10またはビスコメーターTVB-10など)により測定)。
【0019】
〔積層フィルムの層構成〕
次に、本実施形態に係るスタンディングパウチ100の少なくとも胴部51を形成している積層フィルム200の層構成について、図2から図5などを用いて説明する。
【0020】
この積層フィルム200は、例えば図2から図5に示す実施形態のように、最外基材層201と、シーラント層202と、最外基材層201とシーラント層202との間に配置された中間基材層203と、により構成されている。以下、これらの層について詳細に説明する。
【0021】
<最外基材層>
最外基材層201は、積層フィルム200において最も外面側(スタンディングパウチ100としたときに概ねパウチ外面となる表面側)に配置されて積層されたフィルム層である。そして、この最外基材層201は、ナイロンを含む延伸フィルムである。したがって、この最外基材層201は、例えば図2に示すような延伸ナイロンフィルム(ナイロンにより構成された延伸フィルム)の単層フィルムであっても良く、あるいは図3に示すような延伸ナイロンフィルム201-1と他の延伸フィルム201-2(例えば延伸ポリエチレンフィルムなど)とが積層された複層フィルムであっても良い。さらには、ナイロンと他の樹脂とが混合された単層または複層の延伸フィルムであっても良い。ここで、この単層フィルムとは、フィルムとして単層であることを意味し、後述する印刷層や保護層、蒸着膜などはさらに含まれていても良い。複層フィルムも、フィルムとして複層であることを意味する。
この最外基材層201がこのようなナイロンを含む延伸フィルムであることにより、最外基材層201を構成しているナイロンを含む少なくとも1つのフィルム(少なくとも1つのナイロン含有延伸フィルム)の融点と後述するシーラント層202の融点との融点差が一定以上となり、つまり最外基材層201を構成している少なくとも1つのナイロン含有延伸フィルムの融点が後述するシーラント層202の融点よりも一定以上高くなり、スタンディングパウチ100を製造する際などにおける熱を利用したシール時の耐熱性が優れ、比較的高温且つ短時間の条件でシールを行うことが可能となっている。また、このシール時などにおけるパウチ外面の美粧性も保ち易い。さらに、スタンディングパウチ100の全体に占めるナイロン含有率が10質量%以下となるような構成でありながら、この最外基材層201のナイロンを含む延伸フィルムと後述する中間基材層203の二軸延伸ポリエチレンフィルムとの組み合わせによって、落下破袋強度(胴部を含む領域の落下破袋強度、特に胴部51どうしのシール部付近や胴部51と他の部材(底部53、スパウト13、天部など)とのシール部付近の落下破袋強度)も優れたものとすることができる。特に、最外基材層201が、延伸ナイロンフィルムの単層フィルム、あるいは、最外基材層201における最も外面側のフィルムとして延伸ナイロンフィルム201-1が配置された複層フィルムであると上記効果がより発揮され易い。つまり、この最外基材層201はナイロンを含む延伸フィルムである必要があり、ナイロンを含まない延伸フィルムやナイロンを含む未延伸フィルムなどでは上記効果が発揮されない。なお、上記したナイロンには、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等が包含され、これらから選ばれる2以上が含まれる実施形態であっても良い。
【0022】
そして、この最外基材層201を構成しているナイロンを含む少なくとも1つのフィルム(少なくとも1つのナイロン含有延伸フィルム)の融点は、後述するシーラント層202の融点よりも80℃以上高いのが好ましく、85℃以上高いのがより好ましく、90℃以上高いのがさらに好ましく、95℃以上高いのがさらに好ましく、98℃以上高いのがさらに好ましい。高温且つ短時間の条件でのシールをより行い易くなるからである。さらに、この最外基材層201を構成しているナイロンを含む少なくとも1つのフィルムの融点は、限定されるものではないが、185℃以上であるのが好ましく、190℃以上であるのがより好ましく、195℃以上であるのがさらに好ましく、200℃以上であるのがさらに好ましく、205℃以上であるのがさらに好ましく、210℃以上であるのがさらに好ましく、213℃以上であるのがさらに好ましい。なお、この「最外基材層201を構成しているナイロンを含む少なくとも1つのフィルムの融点」とは、最外基材層201が単層フィルム(例えば延伸ナイロンフィルムの単層フィルムなど)である場合にはこの1つのナイロン含有延伸フィルムの融点、つまり最外基材層201の融点を意味し、最外基材層201が複層フィルムである場合には、この複数積層されたフィルムの中でナイロン含有延伸フィルムのうち少なくとも1つの融点を意味する。したがって、例えば、前述したような最外基材層201における最も外面側のフィルムとして延伸ナイロンフィルム201-1が配置されて他の延伸フィルム201-2と積層された複層フィルムである場合には、この延伸ナイロンフィルム201-1の融点が上記を満たせば良い。最外基材層201を構成しているナイロン含有延伸フィルムが2以上ある場合には、このうち少なくとも1つの融点が上記を満たせば良い。
また、このフィルムの融点は、以下の方法により測定される値である。具体的には、当該フィルムを試料とし、それを0.015gアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定する。そして、観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度をその融点とする。以下においても同様である。
【0023】
ここで、本実施形態における「延伸フィルム」とは、原料フィルムを一定の方向に機械的に引き伸ばして製造されたフィルムを意味する。この延伸フィルムとしては、一方向(例えばMD方向(machine direction、フィルムの流れ方向))に引き伸ばされた一軸延伸フィルム、二方向(例えばMD方向およびTD方向(transverse direction、フィルムの流れ方向に対して垂直な方向))に引き伸ばされた二軸延伸フィルムなどが例示される。
【0024】
そして、この最外基材層201のナイロンを含む延伸フィルムは一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムのいずれであっても良いが、熱を利用したシール時の耐熱性と落下破袋強度との両立などの観点から、最外基材層201が単層フィルムまたは複層フィルムのいずれであっても、二軸延伸ナイロンフィルム(ONy)を含む実施形態であるのがより好ましく、同様の理由から、最外基材層201がナイロンを含む二軸延伸フィルムであるのがより好ましい。
【0025】
また、この最外基材層201を構成する延伸フィルム(延伸ナイロンフィルム、他の延伸フィルム)の延伸倍率は、限定されるものではないが、これも熱を利用したシール時の耐熱性と落下破袋強度との両立など観点から、2倍以上であるのが好ましく、3倍以上であるのがより好ましい。上限は、10倍以下であるのが好ましく、7倍以下であるのがより好ましい。二軸延伸フィルムである場合には、MD方向の延伸倍率およびのTD方向の延伸倍率がいずれも上記範囲内であるのが好ましい。
【0026】
なお、最外基材層201がさらに延伸ポリエチレンフィルム(例えば図3の延伸ポリエチレンフィルム201-2など)を含む複層フィルムである場合において、この延伸ポリエチレンフィルムを構成するポリエチレンは、直鎖状短鎖分岐低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、サトウキビの廃糖蜜などから製造されたバイオエタノールを脱水、重合することにより得られるバイオマス由来ポリエチレン(BioPE)、再生樹脂から製造された再生ポリエチレン等から選ばれる1以上であって良い。特に、環境負荷軽減を低減する観点からは、バイオマス由来ポリエチレンを含むポリエチレンにより構成された延伸ポリエチレンフィルムであるのが好ましい。
【0027】
そして、この最外基材層201は、ナイロンを含む延伸フィルムであり且つ後述するスタンディングパウチ100の全体に占める樹脂成分の含有率を満たす構成である限り他は限定されず、その表面や層間などに印刷層(オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等により形成された層など)、保護層(メジウム印刷層、ニスやセルロースナノファイバー(CNF)等がコーティングされたコーティング層、UV吸収層など)等を含む実施形態であっても良い。また、この最外基材層201は、無機酸化物(シリカ、アルミナなど)または金属(アルミなど)が表面などに蒸着された(蒸着処理が施された、蒸着膜が形成された)実施形態であっても良い。しかしながら、リサイクル性の観点から、アルミ箔などの金属層は含まない実施形態であるのが好ましい。
【0028】
特に、この最外基材層201は、例えば図4のようにその内表面(最外基材層201における中間基材層203側の表面)に印刷層207が形成されており、この印刷層207等によって、積層フィルム200に波長800nmの光を照射して測定される光透過率が35%未満となっているのがより好ましい。上記効果に加えて遮光性も優れたものとなり、収容物の劣化等を抑制し易いからである。そして、この光透過率は、30%以下であるのがより好ましく、25%以下であるのがさらに好ましい。
なお、この「波長800nmの光を照射して測定される光透過率」とは、積層フィルム200の一方の表面側から入射角90度で波長800nmの光を照射して、この反対側において透過した光の割合をUV分光光度計(例えば島津製作所社製のUV-3100PCなど)によって測定、算出したものである。
【0029】
また、この最外基材層201のナイロンを含む延伸フィルムは、環境負荷軽減などの観点から、再生ナイロンまたはバイオマス由来ナイロンを含むのが好ましい。加えて、これも環境負荷軽減の観点から、この最外基材層201が再生ナイロンまたはバイオマス由来ナイロンとともにバイオマス由来ポリエチレンを含む構成であっても良い。例えば、図3の実施形態において、再生ナイロンまたはバイオマス由来ナイロンを含む延伸ナイロンフィルム201-1と、バイオマス由来ポリエチレンを含む延伸ポリエチレンフィルム201-2と、の構成などであっても良い。
【0030】
さらに、最外基材層201が複層フィルムである場合、複数の層が共押出成形されて積層および接合された共押出積層フィルム、あるいは複数の層がドライラミネート接着層により接合されたドライラミネートフィルムのいずれであっても良いが、製造のし易さなどの観点から、共押出積層フィルムであるのが好ましい。
ここで、本発明において「共押出積層フィルム」とは、各層に用いる各樹脂または樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、必要に応じて厚さが10μm未満のアンカー層(接着層)を積層間に用いながらフィルム状に共押出成形されて積層および接合された多層フィルムである。また、「ドライラミネートフィルム」とは、接合させる各層の対向する各面の少なくとも一方の面に、溶剤により希釈された接着剤(ドライラミネート接着剤)をコーティング後に乾燥することによって溶剤を揮発させてドライラミネート接着層を形成し、これらを積層させて、必要であれば加熱または加圧をして、このドライラミネート接着層により接合させた多層フィルムである。ドライラミネート接着剤としては、2液硬化型接着剤(例えば主剤がポリエステルポリオール、硬化剤が脂肪族イソシアネートなど)が好ましいものとして例示される。以下においても同様である。
【0031】
この最外基材層201の厚さ(層厚)は、これも後述するスタンディングパウチ100の全体に占める樹脂成分の含有率を満たすような構成である限り限定されないが、10μm以上であるのが好ましく、12μm以上であるのがより好ましく、14μm以上であるのがさらに好ましい。特に、ナイロンを含むフィルムの厚さ(ナイロンを含むフィルムが複数ある場合にはその総厚さ)が上記した範囲内であるのが好適である。上限は、40μm以下であるのが好ましく、35μm以下であるのがより好ましく、30μm以下であるのがより好ましい。
【0032】
<シーラント層>
シーラント層202は、積層フィルム200において最も内面側(スタンディングパウチ100としたときに概ねパウチ内面または接合内面となる表面側)に配置されて積層されたフィルム層であり、本実施形態に係るスタンディングパウチ100のシール部(サイドシール部21など)形成やスパウト13との接合(特に溶融接合)に用いられるフィルム層である。そして、このシーラント層202は、未延伸ポリエチレンフィルム(ポリエチレンにより構成された未延伸フィルム)である。つまり、このシーラント層202にはポリエチレン以外の樹脂材料により構成されたフィルムや延伸フィルムは含まれない。このようなシーラント層202と、前述した最外基材層201と、を含む構成によって、熱を利用したシール時の耐熱性が優れ、比較的高温且つ短時間の条件でシールを行うことができる。このシーラント層202は、前述した列挙されたものから選ばれる1以上のポリエチレンにより構成された未延伸ポリエチレンフィルムであって良いが、未延伸LLDPEフィルムであると上記効果が発揮され易く且つシーラント層としての機能も高度に維持し易いためより好適である。
ここで、本実施形態における「未延伸フィルム」とは、原料フィルムの一定の方向への機械的な引き伸ばしを行うことなく製造されたフィルムを意味する。
【0033】
そして、このシーラント層202の融点は、限定されるものではないが、130℃以下であるのが好ましく、125℃以下であるのがより好ましく、120℃以下であるのがさらに好ましく、118℃以下であるのがさらに好ましい。ここで、このシーラント層202も、図2に示すような、未延伸ポリエチレンフィルムの単層フィルムであっても良く、あるいは図5に示すような未延伸ポリエチレンフィルムが複数積層された複層フィルムであっても良いが、この場合の「シーラント層202の融点」とは、シーラント層202が単層フィルムである場合にはこの1つのフィルムの融点を意味し、シーラント層202が複数のフィルムが積層された複層フィルムである場合にはこの複層フィルム(複数のフィルム全体)の融点を意味する。
【0034】
なお、このシーラント層202は、例えば図5に示すような、3以上のフィルム(未延伸ポリエチレンフィルム)が積層されて構成され、且つ再生ポリエチレンフィルム202-2(再生ポリエチレンにより構成された未延伸フィルム、未延伸再生ポリエチレンフィルム)がバージンポリエチレンフィルム202-1(バージンポリエチレンにより構成された未延伸フィルム、未延伸バージンポリエチレンフィルム)に挟まれて配置されていると好ましい。環境負荷軽減ができ、さらに収容物への再生ポリエチレンの影響も低減できるからである。
【0035】
また、このシーラント層202は、環境負荷軽減の観点から、バイオマス由来ポリエチレンを含むのが好ましい。特に、バイオマス由来ポリエチレンにより構成された未延伸LLDPEフィルムであるとより好適である。
【0036】
このシーラント層202の厚さ(層厚)は、限定されるものではないが、100μm以上であるのが好ましく、120μm以上であるのがより好ましい。上限は、300μm以下であるのが好ましく、250μm以下であるのがより好ましく、200μm以下であるのがさらに好ましい。
【0037】
ここで、本実施形態に係るスタンディングパウチ100の底面を構成する底部53が、胴部51を形成している積層フィルム200とは異なる積層フィルムにより形成されている場合でも、この底部53を形成している積層フィルムが上記と同様の構成の最外基材層およびシーラント層を有しているとより好適である。天面を有する実施形態の場合には、天面を構成する天部を形成している積層フィルムも同様である。
【0038】
<中間基材層>
中間基材層203は、積層フィルム200において最外基材層201とシーラント層202との間に配置されて積層されたフィルム層である。そして、この中間基材層203は、二軸延伸ポリエチレンフィルム(BOPE、ポリエチレンにより構成された二軸延伸フィルム)である。そして、この中間基材層203も、例えば図2に示すような、二軸延伸ポリエチレンフィルムの単層フィルムであっても良く、あるいは二軸延伸ポリエチレンフィルムが複数積層された複層フィルムであっても良い。また、この二軸延伸ポリエチレンフィルムの2方向の延伸倍率(例えばMD方向の延伸倍率およびTD方向の延伸倍率)は、いずれも前述の延伸フィルムと同様の範囲であるのが好ましい。そして、この中間基材層203は、前述した列挙されたものから選ばれる1以上のポリエチレンにより構成された二軸延伸ポリエチレンフィルムであって良いが、環境負荷軽減の観点から、バイオマス由来ポリエチレンを含むのが好ましい。
【0039】
この積層フィルム200の中間基材層203が二軸延伸ポリエチレンフィルムであることによって、最外基材層201のナイロンを含む延伸フィルムとの組み合わせによる相乗効果により、積層フィルム200やそのシール部などの強度が高く維持され、落下破袋強度が優れたものとなっている。また、芳香バリア性および水分バリア性もより高いものとなっている。つまり、これが二軸延伸ではないポリエチレンフィルムである場合(例えば一軸延伸ポリエチレンフィルムや未延伸ポリエチレンフィルムなど)、上記効果が発揮されない。また、これがポリエチレン以外の樹脂材料により構成されたフィルムでは、後述するスタンディングパウチ100の全体に占めるポリエチレン含有率を満たすことが難しくなり、リサイクル性が低下する可能性がある。
【0040】
なお、この中間基材層203は、その外表面(中間基材層203における最外基材層201の側の表面)に金属蒸着(例えばアルミ蒸着など)が施されている構成であるとより好ましい。上記効果に加えて印刷などの美粧性も優れたものとなるからである。特に、前述したシーラント層202が、3以上のフィルムが積層されて構成され、且つ再生ポリエチレンフィルムがバージンポリエチレンフィルムに挟まれて配置されている構成である場合において、さらに、この中間基材層203の外表面には金属蒸着が施されている構成であると、環境負荷軽減ができ、且つ再生ポリエチレンを含みながら印刷などの美粧性も優れたものとなるためより好適である。そして、この再生ポリエチレンフィルムがパウチ容器から再生された再生ポリエチレンを含むフィルムであっても、上記構成であるとこの再生ポリエチレンの樹脂色を隠蔽できる。
【0041】
また、この中間基材層203は、その外表面に透明蒸着が施されている構成であってもより好ましい。上記効果に加えて積層フィルム200のバリア性もより優れたものとなるからである。
ここで、「透明蒸着」とは、無機酸化物(酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等)が表面に蒸着されている層を意味する。特に、その外表面にシリカまたはアルミナが蒸着された透明蒸着(シリカ蒸着またはアルミナ蒸着)が施されているのがより好ましい。
【0042】
この中間基材層203の厚さ(層厚)は、これも限定されるものではないが、10μm以上であるのが好ましく、15μm以上であるのがより好ましく、20μm以上であるのがさらに好ましい。上限は、40μm以下であるのが好ましく、35μm以下であるのがより好ましく、30μm以下であるのがさらに好ましい。
【0043】
このような最外基材層201、シーラント層202、および中間基材層203により構成されている積層フィルム200は、前述したような共押出成形やドライラミネートによりこれらを積層させて、共押出積層フィルムやドライラミネートフィルムとして形成することができる。必要であれば、これも後述するスタンディングパウチ100の全体に占める樹脂成分の含有率を満たす構成である限りにおいて、最外基材層201と、シーラント層202と、の間に中間基材層203以外のフィルム層(例えば最外基材層201および中間基材層203とは構成が異なる基材層など)を含ませることもできる。しかしながら、積層フィルム200に含まれるフィルム層が最外基材層201、シーラント層202、および中間基材層203の3つであるのがより好適である。また、この積層フィルム200は、その効果が発揮され易くなることから、ドライラミネート接着層205により接合されたドライラミネートフィルムであるのが好ましい。
【0044】
そして、積層フィルム200の全体の厚さ(フィルム厚)は、これも後述するスタンディングパウチ100の全体に占める樹脂成分の含有率を満たす構成である限り限定されないが、特に本実施形態に係るスタンディングパウチ100が前述したような収容領域の容積が大きいものである場合などでは、120μm(0.12mm)以上であるのが好ましく、150μm(0.15mm)以上であるのがより好ましく、170μm(0.17mm)以上であるのがさらに好ましい。上限は、500μm(0.5mm)以下であって良く、400μm(0.4mm)以下であっても良く、300μm(0.3mm)以下であっても良く、250μm(0.25mm)以下であっても良く、200μm(0.2mm)以下であっても良い。
【0045】
さらに、この積層フィルム200を構成する各フィルム層にはいずれも、生産性向上などの観点から、アンチブロッキング剤またはスリップ剤を微量(例えば1000ppm以下)含有していても良い。アンチブロッキング剤としては、シリカやゼオライトなどの無機粒子が例示され、スリップ剤としては脂肪酸アミドなどが例示される。また、前述した構成を満たし且つ本発明の効果に影響を与えない範囲内において、他の添加剤等を含んでいても構わない。
【0046】
なお、本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、前述したような大容量スパウト付きスタンディングパウチであっても上記構成により落下破袋強度が優れるため、大容量であっても薄肉フィルムとすることができることも特徴である。限定されるものではないが、大容量の構成などにおいて、本実施形態に係るスタンディングパウチ100の、胴部51を形成している積層フィルム200の全体の厚さ(フィルム厚、mm)の3乗に対するその収容領域の容積(L)の比率、つまり「収容領域の容積(L)/(積層フィルム200のフィルム厚(mm))3」を115以上としても良く、120以上としても良く、125以上としても良く、130以上としても良い。この上限は、350以下であるのが好ましく、300以下であるのがより好ましく、250以下であるのがさらに好ましく、200以下であるのがさらに好ましく、180以下であるのがさらに好ましい。
【0047】
ここで、図2から図5を用いて積層フィルム200の実施形態の具体例についてさらに詳しく説明する。
【0048】
この積層フィルム200は、前述した構成を満たす範囲内において、本実施形態に係るスタンディングパウチ100を作製したときに求められる特性や、収容物の種類などに応じて各種変形が可能であるが、例えば、図2に示されるような実施形態であっても良い。この図2の実施形態では、最外基材層201が延伸ナイロンフィルムの単層フィルム、中間基材層203が二軸延伸ポリエチレンフィルムの単層フィルム、シーラント層202が未延伸ポリエチレンフィルムの単層フィルムであり、これらがこの順序で積層されてドライラミネート接着層205により接合されたドライラミネートフィルムとなっている。この実施形態の一例としては、最外基材層201から順に、二軸延伸ナイロンフィルム//二軸延伸ポリエチレンフィルム//未延伸LLDPEフィルム(ONy//BOPE//LLDPE)の構成が示される。
【0049】
また、この積層フィルム200は、図3に示されるような実施形態であっても良い。この図3の実施形態では、最外基材層201が延伸ナイロンフィルム201-1と延伸ポリエチレンフィルム201-2との複層フィルム(例えば共押出積層フィルム)、中間基材層203が二軸延伸ポリエチレンフィルムの単層フィルム、シーラント層202が未延伸ポリエチレンフィルムの単層フィルムであり、これらがこの順序で積層されてドライラミネート接着層205により接合されたドライラミネートフィルムとなっている。この実施形態の一例としては、最外基材層201から順に、二軸延伸ナイロンフィルム/一軸延伸ポリエチレンフィルム//二軸延伸ポリエチレンフィルム//未延伸LLDPEフィルム(ONy/OPE//BOPE//LLDPE)の構成が示される。この実施形態では、スタンディングパウチ100の全体に占めるポリエチレン含有率をより高め易い。
【0050】
さらに、この積層フィルム200は、図4に示されるような実施形態であっても良い。この図4の実施形態では、最外基材層201が内表面に印刷層207が形成された延伸ナイロンフィルムの単層フィルム、中間基材層203が二軸延伸ポリエチレンフィルムの単層フィルム、シーラント層202が未延伸ポリエチレンフィルムの単層フィルムであり、これらがこの順序で積層されてドライラミネート接着層205により接合されたドライラミネートフィルムとなっている。
なお、上記した図3の実施形態などにおいても、最外基材層201(延伸ポリエチレンフィルム201-2)の内表面に印刷層207が形成された構成としても良い。
【0051】
さらには、この積層フィルム200は、図5に示されるような実施形態であっても良い。この図5の実施形態では、最外基材層201が延伸ナイロンフィルムの単層フィルム、中間基材層203が外表面に金属蒸着が施された(金属蒸着膜209が形成された)二軸延伸ポリエチレンフィルムの単層フィルム、シーラント層202が3層の未延伸ポリエチレンフィルムが積層されて構成され、且つ未延伸再生ポリエチレンフィルム202-2が未延伸バージンポリエチレンフィルム202-1に挟まれて配置された複層フィルム(例えば共押出積層フィルム)であり、これらがこの順序で積層されてドライラミネート接着層205により接合されたドライラミネートフィルムとなっている。この実施形態の一例としては、最外基材層201から順に、二軸延伸ナイロンフィルム//アルミ蒸着二軸延伸ポリエチレンフィルム//未延伸バージンLLDPEフィルム/未延伸再生ポリエチレンフィルム/未延伸バージンLLDPEフィルム(ONy//AL-BOPE//LLDPE/再生PE/LLDPE)の構成が示される。
なお、上記した図2から図4の実施形態などにおいても、中間基材層203が外表面に金属蒸着が施された構成としても良い。また、図2から図5の実施形態などにおいて、中間基材層203が外表面に透明蒸着が施された構成としても良い。
【0052】
〔スタンディングパウチの全体に占める樹脂成分の含有率〕
次に、本実施形態に係るスタンディングパウチ100の全体に占める所定の樹脂成分の含有率について詳細に説明する。
【0053】
本実施形態に係るスタンディングパウチ100の全体に占めるポリエチレン含有率(トータルポリエチレン含有率)は85質量%以上であり、且つ、このスタンディングパウチ100の全体に占めるナイロン含有率(トータルナイロン含有率)は10質量%以下、およびこのスタンディングパウチ100の全体に占めるポリエチレンテレフタラート含有率(トータルポリエチレンテレフタラート含有率)は0.1質量%未満となっている。このような、トータルポリエチレン含有率が所定以上であり、トータルナイロン含有率が所定以下であり、さらにトータルポリエチレンテレフタラート含有率が極めて低い構成であることによって、本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、前述したような熱を利用したシール時の耐熱性および落下破袋強度を有しつつ、さらにナイロンを含みながらリサイクル性が優れたものとなっている。
【0054】
ここで、「スタンディングパウチ100の全体に占める含有率」とは、このスタンディングパウチ100を構成している胴部51(積層フィルム200)、底部53、スパウト13、およびその他(キャップ11、天部、溶着部材(接着剤等)、樹脂以外の材料により構成された層など)を含めたスタンディングパウチ構造の全体を100質量%としたときの含有率の意味である。よって、本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、このスタンディングパウチ100を構成している胴部51、底部53、スパウト13、およびその他を含むスタンディングパウチ構造の全体を100質量%としたときに、その全体に占めるポリエチレン含有率が85質量%以上であり且つナイロン含有率が10質量%以下およびポリエチレンテレフタラート含有率が0.1質量%未満となっている。
【0055】
なお、リサイクル性の観点から、このポリエチレン含有率は86質量%以上であるのがより好ましく、87質量%以上であるのがさらに好ましい。また、同様の理由から、このナイロン含有率は9.5質量%以下であるのがより好ましい。このナイロン含有率の下限は、前述したような熱を利用したシール時の耐熱性および落下破袋強度を有するものとし易いことから、5.0質量%以上であるのがより好ましく、6.0質量%以上であるのがさらに好ましく、7.0質量%以上であるのがさらに好ましい。さらに、ポリエチレンテレフタラートはリサイクル性の観点から実質的に含まれないのが好ましく、例えばこのポリエチレンテレフタラート含有率は0.05質量%未満、さらには0.01質量%未満であるのがより好適である。
【0056】
本実施形態に係るスタンディングパウチ100では、このポリエチレン含有率、ナイロン含有率、およびポリエチレンテレフタラート含有率がリサイクル性などの観点から極めて重要である。特に、ポリエチレンテレフタラートはポリエチレンとの相溶性が極めて低いため、再生ポリエチレンや再生ポリエチレンフィルムにリサイクルする場合においてこのポリエチレンテレフタラート含有率が0.1質量%以上であると十分な品質のものを得ることができず、つまりリサイクル性が低下してしまう。なお、このポリエチレンテレフタラート(PET)には、非晶性ポリエチレンテレフタラート(非晶性PET)も包含される。また、これ以外のポリエステル樹脂については、スタンディングパウチ用のフィルム材料とはなりにくいものであるが、同様に含有率が0.1質量%未満となっているのが好ましい。つまり、本実施形態に係るスタンディングパウチ100の全体に占めるポリエステル樹脂の合計含有率が0.1質量%未満、さらには0.05質量%未満、さらには0.01質量%未満となっているのが好ましい。
また、ナイロンもポリエチレンとの相溶性が低いため、従来は、ナイロンを含むパウチは再生ポリエチレンフィルム等へのリサイクルに適さないと考えられてきた。しかしながら、本実施形態に係るスタンディングパウチ100では、ナイロンが積層フィルム200の最外基材層201の延伸フィルムに含まれながら、スタンディングパウチ100の全体に占めるナイロン含有率が10質量%以下であることにより、前述した熱を利用したシール時の耐熱性や落下破袋強度を備えつつ、リサイクル性も優れたものとなっている。なお、このナイロン含有率が10質量%超であると、再生ポリエチレンや再生ポリエチレンフィルムとしたときに十分な品質のものを得ることができず、つまりリサイクル性が低下してしまう。
【0057】
さらに、限定されるものではないが、リサイクル性の観点から、本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、上記した樹脂成分の含有率を満たしつつ、上記したポリエチレン含有率に対する上記したナイロン含有率の比率(ナイロン含有率/ポリエチレン含有率、質量比)が0.11以下となっているのがより好ましく、0.10以下となっているのがさらに好ましい。この下限は、熱を利用したシール時の耐熱性などの観点から、0.05以上であるのがより好ましく、0.07以上であるのがさらに好ましい。
【0058】
以上のような実施形態を含む本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、その製造時などにおける熱を利用したシール時の耐熱性、リサイクル性(再生ポリエチレンや再生ポリエチレンフィルムとした際の品質)、および落下破袋強度(特に胴部51を含むシール部付近の落下破袋強度)がいずれも優れている。つまり、熱を利用したシール時の耐熱性、リサイクル性、および落下破袋強度の全てを高度にバランスよく備えるスタンディングパウチ100であり、特に、液体洗剤、台所洗剤、柔軟剤などの詰め替え用製品の容器として使用される自立性のスパウト付き袋状柔軟性包装体(例えば大容量スパウト付きスタンディングパウチ)として好適に用いることができる。
なお、近年では、リサイクル性の観点から、ポリエチレンの単一素材により構成されたスタンディングパウチが開発されているが、これはヒートシールなどの熱を利用したシールを行ってパウチを製造する際に従来よりも低温且つ長時間の条件でシールする必要があり、シール速度が遅くなる(生産性が低下しコスト高となる)という欠点が存在する。仮に、これを高温条件でシールを行うと、表面のフィルムの収縮などを誘発し、美粧性を損なう。さらに、仮に、この高温条件でシーラント層とスパウトとのシールを行うと、特に大容量のスタンディングパウチなどにおいてシーラント層の肉痩せもしくは表面のフィルムのダメージが発生し易く、落下衝撃時にスパウトとフィルムとの接合付近で破損を起こす可能性が高い。よって、上記のようなスタンディングパウチでは、このスパウトとフィルムとのシールについても、従来よりも慎重且つ厳重な条件で行う必要があり、これも生産性を低下させる一因となる。また、仮に、これを低温且つ短時間の条件で多数回シールを行う場合でも、シール設備などの観点からコスト高は避けられない。しかしながら、本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、前述した構成により、比較的高温且つ短時間の条件でヒートシール等を行うことができるため生産性を低下させ難く(コスト高となるのを抑制でき)、パウチ表面の美粧性も保たれ、また落下衝撃時にスパウト13と積層フィルム200との接合付近などでの破損や破袋も発生し難い。そして、リサイクル性も高く維持できる。
【0059】
〔スタンディングパウチの製造方法等〕
本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、例えば、次のような方法により製造することができる。まず、積層フィルム200を用いて、少なくとも、スタンディングパウチ100の前面および後面を構成可能な胴部51を形成する。さらに、この積層フィルム200などを用いて、スタンディングパウチ100の底面を構成可能な底部53を形成する。必要であれば、この積層フィルム200などを用いて、スタンディングパウチ100の天面を構成可能な天部などを形成しても良い。そして、これらを袋状となるように配置または折り畳んで前面、後面、底面などを構成し、積層フィルム200のシーラント層202どうしの少なくとも一部を接合してサイドシール部21などを形成しながら収容領域を包囲するように製袋する。そして、前述したような構成のスカート部31などを形成し、さらにスパウト13を接合し、不要な部分を切除することによってスタンディングパウチ100とする(例えば図1)。そして、このスタンディングパウチ100に収容物が収容され、容器詰め品となる。
【0060】
このシーラント層202どうしの接合(シール部の形成など)には、熱を利用したシールを用いることができ、例えば、ヒートシールや超音波シールなどを用いることができる。他の部分の接合も同様である。特に、本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、これらの接合にヒートシールを用いても前述した構成によりシール時の耐熱性が優れることが特徴であり、つまり、本実施形態に係るスタンディングパウチ100におけるシール部の少なくとも一部、さらには全部がヒートシールにより接合されたものであっても良い。このヒートシール条件は、例えば140℃以上210℃以下のシール温度、0.1MPa以上1.0MPa以下のシール圧力、0.1秒以上5秒以下のシール時間などが条件として例示されるが、本実施形態に係るスタンディングパウチ100は熱シール時の耐熱性が高いため、高温短時間のヒートシール条件での接合も可能である。例えば、160℃以上、さらには170℃以上、さらには175℃以上のシール温度で、3秒以下、さらには2秒以下のシール時間であっても良い。
しかしながら、このシーラント層202どうしの接合の少なくとも一部に接合剤(接着剤等)を用いても構わない。
【0061】
また、収容された収容物を使い切った本実施形態に係るスタンディングパウチ100は、必要に応じて押しつぶされ、回収されても良い。そして、本実施形態に係るスタンディングパウチ100は前述したようにリサイクル性も優れるため、このスタンディングパウチ100から、リサイクル材料であるリサイクル樹脂(樹脂ペレット等)を形成することができる。例えば、このスタンディングパウチ100あるいはその細断物(洗浄された細断物など)を溶融し、押出や圧偏などを行うことによって高品質の再生ポリエチレン(リサイクル樹脂ペレット)を形成することができる。
さらに、この再生ポリエチレンを用いて、例えば本実施形態に係るスタンディングパウチ100の胴部51を形成している積層フィルム200の一部(例えばシーラント層202の一部)を形成することができる。つまり再生ポリエチレンフィルムなどのリサイクルフィルムを形成することができる。この再生ポリエチレンを含むリサイクルフィルムは品質が高く、上記した落下破袋強度などにも影響を与えにくい。
【0062】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例にも限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例0063】
ドライラミネート積層フィルムにより胴部および底部を形成し、さらにHDPEからなるスパウトおよびキャップを用い、これらを組み合わせて、ドライラミネート積層フィルムのシーラント層(LLDPE層)においてそれぞれ所定の温度および時間(それぞれに適した温度および時間)でヒートシールを行って製袋し、実施例1~2および比較例1~8のスタンディングパウチを作製した。これらのスタンディングパウチはいずれも、胴部材面積が1200cm2、底部材面積が240cm2、横幅が200mm、高さ(縦幅)が300mm(うち底折込幅60mm)、収容領域の容積が1L(1000ml)である。
【0064】
ここで、各スタンディングパウチに用いた胴部を形成しているドライラミネート積層フィルムのフィルム構成および底部を形成しているドライラミネート積層フィルムのフィルム構成を下記表1に示した。なお、比較例4および5の積層フィルムは特許文献1に開示されているフィルム構成であり、比較例6の積層フィルムは特許文献2に開示されているフィルム構成である。また、これらのスタンディングパウチの全体に占めるキャップまたはスパウトのポリエチレン含有率(HDPE)、これらのスタンディングパウチの全体に占めるフィルムのポリエチレンテレフタラート含有率(PET)、ナイロン含有率(Ny)、ポリエチレン含有率(PE)、およびドライラミネート接着樹脂含有率(Ad)、ならびに、これらのスタンディングパウチの全体に占めるトータルポリエチレン含有率(total PE)および他の成分のトータル含有率(other)も下記表1に示した。
【0065】
なお、下記表1の胴部材フィルム(胴部を形成している積層フィルム)のフィルム構成および底部材フィルム(底部を形成している積層フィルム)のフィルム構成はいずれも、左から順に最外基材層、中間基材層、シーラント層を示す。そして、数値は各層の厚さ(層厚、μm)である。
また、下記表1の胴部材フィルムおよび底部材フィルムにおける、LLDPEはプライムポリマー社製のエボリューSP2020(未延伸ポリエチレンフィルム:メルトフローレート2.3g/10min、密度0.916g/cm3、融点116℃)、BOPEはDOW社製のINNATE TFポリエチレン樹脂(二軸延伸ポリエチレンフィルム:メルトフローレート1.7g/10min、密度0.926g/cm3)、ONyはユニチカ社製のエンブレムON(二軸延伸ナイロンフィルム:密度1.14g/cm3、融点215℃)、VMPETは東レフィルム加工社製の1510(アルミ蒸着ポリエチレンテレフタラートフィルム:密度1.40g/cm3)、MDOPEは東京インキ社製のハイブロンP(MD方向に延伸された一軸延伸ポリエチレンフィルム:密度0.95g/cm3、融点135℃、比較例4および5)またはDOW社製のElite5538G(一軸延伸ポリエチレンフィルム:メルトフローレート1.3g/10min、密度0.941g/cm3、比較例6)である。さらに、ドライラミネート接着剤は、いずれもロックペイント社製のRU-77/H-7(密度1.33g/cm3)を接着層の厚さが3μmとなるように用いた。
【0066】
そして、各スタンディングパウチのリサイクル性、ヒートシール時の耐熱性、および落下破袋強度を次のようにして確認した。
リサイクル性は、各スタンディングパウチを粉砕および混錬し、Tダイ成形によって50μmのフィルム成形を行い、穴あきが発生しなかったものを〇、穴あきが発生したものを×と評価した。
ヒートシール時の耐熱性は、各スタンディングパウチの胴部に使用している積層フィルムの試験片(縦100mm×横100mm)を2枚用意し、この2枚の試験片のシーラント層どうしが向かい合うように重ねて180℃1.5秒間の条件で2辺をヒートシールし、シール部の表面にシワが認められないものを〇、表面にシワが認められるものを×と評価した。
落下破袋強度は、各スタンディングパウチの収容領域に水を1L充填して密閉し、5℃雰囲気下で24時間静置後、1mの高さからコンクリート面に垂直方向(底面側を下向き)および横方向(前面または後面側を下向き)でそれぞれ5回落下させ、1度も破袋しなかったものを〇、1度以上破袋したものを×と評価した。
【0067】
これらの評価結果についても下記表1に示した。
これらの結果から、少なくとも胴部を形成している積層フィルムが二軸延伸ナイロンフィルム(最外基材層)と二軸延伸ポリエチレンフィルム(中間基材層)と未延伸ポリエチレンフィルム(シーラント層)とにより構成されており、加えて、スパウトおよびキャップはHDPEからなり、スタンディングパウチの全体に占めるポリエチレン含有率が85質量%以上であり且つナイロン含有率が10質量%以下およびポリエチレンテレフタラート含有率が0.1質量%未満であるスタンディングパウチ(実施例1および2)は、リサイクル性、ヒートシール時の耐熱性、および落下破袋強度がいずれも優れていた。
一方、スタンディングパウチの全体に占めるナイロン含有率が10質量%超またはポリエチレンテレフタラート含有率が0.1質量%以上であるスタンディングパウチ(比較例1~3、5、7~8)は、リサイクル性が低かった。また、胴部を形成している積層フィルムの最外基材層がナイロンを含まないスタンディングパウチ(比較例6)は、ヒートシール時の耐熱性が低かった。さらに、胴部を形成している積層フィルムが二軸延伸ポリエチレンフィルムを含まないスタンディングパウチ(比較例4~5、7~8)は落下破袋強度が低く、上記試験によりシール部付近などにおいて破袋が発生した。
【0068】
【表1】
【符号の説明】
【0069】
11 キャップ
13 スパウト
15 キャップ付きスパウト
21 サイドシール部
23 上シール部
25 斜めシール部
27 スカートシール部
31 スカート部
51 胴部
53 底部
100 スタンディングパウチ
200 積層フィルム
201 最外基材層
202 シーラント層
203 中間基材層
205 接着層
207 印刷層
209 金属蒸着膜
図1
図2
図3
図4
図5