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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126133
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物および電子装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240912BHJP
   C08K 7/22 20060101ALI20240912BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240912BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240912BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08K7/22
C08K3/013
C08G59/40
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034326
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】井狩 優太
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J002BC032
4J002CD051
4J002DJ016
4J002EX070
4J002EX080
4J002FA092
4J002FD012
4J002FD016
4J002FD200
4J002GQ05
4J036AD07
4J036DB09
4J036DB23
4J036GA04
4J036JA07
4M109AA01
4M109BA03
4M109CA01
4M109CA04
4M109DA02
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB14
4M109EB16
4M109EC20
(57)【要約】
【課題】成形性に優れ、さらに誘電特性に優れる硬化物が得られる封止用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、中空有機ポリマー粒子と、を含み、前記封止用樹脂組成物の熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)において窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が2%未満である、封止用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、
中空有機ポリマー粒子と、を含む、封止用樹脂組成物であって、
前記封止用樹脂組成物の熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)において窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が2%未満である、封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記中空有機ポリマー粒子の表面に官能基を備える、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記中空有機ポリマー粒子の熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)において窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下である、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
さらに無機充填材を含む、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
さらに硬化剤を含む、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
モールドアンダーフィル材料である、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
電子素子と、
前記電子素子を封止する成形体と、を備え、
前記成形体は、請求項1~5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物からなる、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等を封止するための材料として、熱硬化性の樹脂組成物(封止用樹脂組成物)が知られている。
【0003】
特許文献1には、エポキシ樹脂と、活性エステル化合物を含む硬化剤と、中空粒子と、無機充填材と、を含有する封止用樹脂組成物が開示されている。当該文献には、この封止用樹脂組成物によれば、誘電正接の低い硬化物を得ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-88635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の封止用樹脂組成物は流動性が低く、特に基板と当該基板上に搭載された半導体素子との間の隙間に未充填部分が生じるなど充填性が低下することがあった。さらに、封止材の誘電特性にも改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、中空有機ポリマー粒子を含む封止用樹脂組成物が、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)における重量減少率が所定値以下であれば、当該組成物の充填性が改善され、さらに得られる硬化物の誘電特性にも優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0007】
[1] エポキシ樹脂と、
中空有機ポリマー粒子と、を含む、封止用樹脂組成物であって、
前記封止用樹脂組成物の熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)において窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が2%未満である、封止用樹脂組成物。
[2] 前記中空有機ポリマー粒子の表面に官能基を備える、[1]に記載の封止用樹脂組成物。
[3] 前記中空有機ポリマー粒子の熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)において窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下である、[1]または[2]に記載の封止用樹脂組成物。
[4] さらに無機充填材を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
[5] さらに硬化剤を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
[6] モールドアンダーフィル材料である、[1]~[5]のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
[7] 電子素子と、
前記電子素子を封止する成形体と、を備え、
前記成形体は、[1]~[5]のいずれかに記載の封止用樹脂組成物の硬化物からなる、電子装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の封止用樹脂組成物は充填性に優れ、さらに誘電特性に優れる硬化物を提供することができる。言い換えれば、本発明の封止用樹脂組成物は充填性および誘電特性のバランスに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る電子装置の一例の断面図である。
図2】実施例1の封止用樹脂組成物から得られた硬化物断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、例えば「1~10」は特に断りがなければ「1以上」から「10以下」を表す。
【0011】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、中空有機ポリマー粒子と、を含む。
前記封止用樹脂組成物の熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)において窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が2%未満、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下である。
【0012】
このような本実施形態の封止用樹脂組成物は、狭い隙間にも入り込むことができ、充填性に優れる。さらに得られる硬化物は誘電率および誘電正接が低く、誘電特性にも優れる
【0013】
本実施形態の封止用樹脂組成物がこのような効果が得られる理由は明らかでないが、上記の条件で測定される重量減少率が低く、当該組成物の熱履歴による成分の分解が抑制され組成の変化が抑えられていることから、組成の変化に伴う物性の低下が抑制され所望の効果が発揮されると推察される。すなわち、上述の条件で測定される重量減少率を、成形性および誘電特性の指標として用いることができる。
【0014】
なお、エポキシ樹脂と、中空有機ポリマー粒子との組み合わせや配合量当、さらに必要に応じて他の材料や配合量等を適切に選択することにより、前記重量減少率を調整することができる。
【0015】
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、モノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれであってもよい。
【0016】
エポキシ樹脂は、具体的には、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である。
【0017】
本発明の効果の観点から、エポキシ樹脂は、好ましくは、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型多官能エポキシ樹脂、オルソクレゾール型二官能エポキシ樹脂、ビフェニル型二官能エポキシ樹脂、ビスフェノール型二官能エポキシ樹脂およびジシクロペンタジエン型二官能エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である。エポキシ樹脂は、ビフェニルアラルキル型多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型二官能エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0018】
封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、成形時に好適な流動性を得て充填性や成形性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。
【0019】
また、封止用樹脂組成物を用いて得られる装置の信頼性を向上する観点から、封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0020】
[中空有機ポリマー粒子]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、中空有機ポリマー粒子を含む。中空有機ポリマー粒子は内部が気体であるので無機充填材に比べて比誘電率が低く、添加することにより、硬化物の誘電正接をより低減することができる。
中空有機ポリマー粒子としては、本発明の効果を奏する範囲で公知の中空有機ポリマー粒子を用いることができる。
【0021】
中空有機ポリマー粒子を構成する有機ポリマーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、架橋ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂;エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン、アクリル-ウレタン共重合体等のポリウレタン系樹脂;セルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;フッ素系樹脂;ゴム系ポリマーなどが挙げられる。
本実施形態においては、中空有機ポリマーを構成する有機ポリマーとしては、本発明の効果の観点から、架橋ポリスチレンであることが好ましい。
【0022】
本実施形態において、前記中空有機ポリマー粒子は、その表面に官能基を備えることが好ましい。官能基としては、カルボキシル基、グリシジル基等を挙げることができる。
中空有機ポリマー粒子が表面に官能基を備えることにより、封止用樹脂組成物の流動性がより高くなり、特に基板と当該基板上に搭載された半導体素子との間の隙間への充填性にさらに優れる。
【0023】
表面に前記官能基を備える中空有機ポリマー粒子は、中空有機ポリマー粒子を表面処理することにより得ることができ、または、モノマーの一部に上記の官能基を備えるモノマーを用いて前記有機ポリマーを調製し、得られた有機ポリマーを用いて中空有機ポリマー粒子を作成することにより、その表面に前記官能基を導入することができる。
【0024】
前記中空有機ポリマー粒子の熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)において窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下である。
【0025】
このような中空有機ポリマー粒子を含む封止用樹脂組成物は、高い充填性が得られることから成形性に優れ、さらに得られる硬化物は誘電率および誘電正接が低く、誘電特性にも優れる。上記の条件で測定される中空有機ポリマー粒子の重量減少率が低いことから、熱履歴による分解が抑制され、所望の効果が発揮されると推察される。
【0026】
前記中空有機ポリマー粒子の平均粒径は、好ましくは0.1μm~100μm、より好ましくは0.1μm~80μmである。
【0027】
中空有機ポリマー粒子の平均粒径は、封止用樹脂組成物又はその硬化物の薄片試料を走査型電子顕微鏡にて撮像した画像において、無作為に選んだ中空有機ポリマー粒子100個の長径を測定し、それを算術平均した値である。
【0028】
本実施形態で用いられる前記中空有機ポリマー粒子としては、製品名:テクポリマー(積水化成品工業社製)等を挙げることができ、必要に応じてその表面に官能基を導入した中空有機ポリマー粒子とすることができる。
【0029】
封止用樹脂組成物中の中空有機ポリマー粒子の含有量は、成形時に好適な流動性を得て充填性や成形性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。
【0030】
また、封止用樹脂組成物から得られる硬化物の誘電特性を改善する観点から、封止用樹脂組成物中の中空有機ポリマー粒子の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0031】
封止用樹脂組成物中の中空有機ポリマー粒子の含有量は、成形時に好適な流動性を得て充填性や成形性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2体積%以上であり、より好ましくは5体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上である。
【0032】
また、封止用樹脂組成物から得られる硬化物の誘電特性を改善する観点から、封止用樹脂組成物中の中空有機ポリマー粒子の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは60体積%以下であり、より好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下である。
【0033】
[無機充填材]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、無機充填材を含むことができる。
無機充填材として、一般的に封止用樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。また、無機充填材は表面処理がなされているものであってもよい。
【0034】
無機充填材の具体例として、溶融シリカ等、結晶シリカ、非晶質二酸化珪素等のシリカ;アルミナ;タルク;酸化チタン;窒化珪素;窒化アルミニウムが挙げられる。これらの無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機充填材は、汎用性に優れている観点から、好ましくはシリカを含む。シリカの形状としては、球状シリカ、破砕シリカ等が挙げられる。
【0035】
無機充填材の平均径(D50)は、成形性および密着性を向上する観点から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
【0036】
ここで、無機充填材の粒径分布は、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、島津製作所社製、SALD-7000)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定することにより取得することができる。
【0037】
また、無機充填材の最大粒径は、成形性を向上する観点から、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは80μm以下である。
【0038】
また、無機充填材の比表面積は、成形性を向上する観点から、好ましくは1m/g以上であり、より好ましくは3m/g以上であり、また、好ましくは20m/g以下であり、より好ましくは10m/g以下である。
本実施形態において無機充填材は中空有機ポリマー粒子とともに充填材として用いられる
【0039】
封止用樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、封止用樹脂組成物を用いて形成される封止材の低吸湿性および低熱膨張性を向上させ、得られる半導体装置の耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。
【0040】
また、封止用樹脂組成物の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対してたとえば90質量%以下であってもよく、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。
【0041】
[硬化剤]
本実施形態の封止用樹脂組成物は硬化剤を含むことができる。硬化剤として、本発明の効果を奏する範囲で公知の硬化剤を用いることができる
本実施形態においては、硬化剤として、活性エステル樹脂(B1)、フェノール樹脂(B2)等を挙げることができる。
【0042】
(活性エステル樹脂(B1))
活性エステル樹脂(B1)としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル樹脂(B1)としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。
【0043】
活性エステル樹脂(B1)の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂が挙げられ、少なくとも1種を含むことができる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0044】
本実施形態において、活性エステル樹脂(B1)は、例えば、以下の一般式(1)で表される構造を有する樹脂を用いることができる。
【0045】
【化1】
【0046】
一般式(1)において、「B」は、一般式(B)で表される構造である。
【0047】
【化2】
【0048】
一般式(B)中、Arは、置換または非置換のアリーレン基である。置換されたアリーレン基の置換基は炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基等が挙げられる。
【0049】
Yは、単結合、置換または非置換の炭素原子数1~6の直鎖のアルキレン基、または置換または非置換の炭素原子数3~6の環式のアルキレン基、置換または非置換の2価の芳香族炭化水素基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。前記基の置換基としては、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基等が挙げられる。
【0050】
Yとして好ましくは、単結合、メチレン基、-CH(CH-、エーテル結合、置換されていてもよいシクロアルキレン基、置換されていてもよい9,9-フルオレニレン基等が挙げられる。
nは0~4の整数であり、好ましくは0または1である。
Bは、具体的には、下記一般式(B1)または下記一般式(B2)で表される構造である。
【0051】
【化3】
【0052】
上記一般式(B1)および上記一般式(B2)中、ArおよびYは、一般式(B)と同義である。
Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、
Ar’は、置換または非置換のアリール基であり、
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲である。
【0053】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、特定の活性エステル硬化剤を含むことにより、得られる硬化物は優れた誘電特性を有することができ、低誘電正接に優れる。
【0054】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる活性エステル樹脂(B1)は、式(B)で表される活性エステル基を有する。エポキシ樹脂と活性エステル硬化剤との硬化反応において、活性エステル硬化剤の活性エステル基はエポキシ樹脂のエポキシ基と反応して2級の水酸基を生じる。この2級の水酸基は、活性エステル硬化剤のエステル残基により封鎖される。そのため、硬化物の誘電正接が低減される。
一実施形態において、上記式(B)で表される構造は、以下の式(B-1)~式(B-6)から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0055】
【化4】
【0056】
式(B-1)~(B-6)において、
はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、
【0057】
はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基の何れかであり、Xは炭素原子数2~6の直鎖のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基のいずれかであり、
nは0~4の整数であり、pは1~4の整数である。
【0058】
上記式(B-1)~(B-6)で表される構造は、いずれも配向性が高い構造であることから、これを含む活性エステル硬化剤を用いた場合、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、低誘電正接を有するとともに、金属に対する密着性に優れ、そのため半導体封止材料として好適に用いることができる。
【0059】
中でも、低誘電正接の観点から、式(B-2)、式(B-3)または式(B-5)で表される構造を有する活性エステル硬化剤が好ましく、さらに式(B-2)のnが0である構造、式(B-3)のXがエーテル結合である構造、または式(B-5)において二つのカルボニルオキシ基が4,4’-位にある構造を有する活性エステル硬化剤がより好ましい。また各式中のRはすべて水素原子であることが好ましい。
【0060】
式(1)における「Ar’」はアリール基であり、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、3,5-キシリル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、2-ベンジルフェニル基、4-ベンジルフェニル基、4-(α-クミル)フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等であり得る。中でも、特に誘電正接の低い硬化物が得られることから、1-ナフチル基または2-ナフチル基であることが好ましい。
【0061】
本実施形態において、式(1)で表される活性エステル硬化剤における「A」は、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、このようなアリーレン基としては、例えば、1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状炭化水素化合物と、フェノール性化合物とを重付加反応させて得られる構造が挙げられる。
【0062】
前記1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状炭化水素化合物は、例えば、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエンの多量体、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、5-ビニル-2-ノルボルネン、リモネン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、耐熱性に優れる硬化物が得られることからジシクロペンタジエンが好ましい。尚、ジシクロペンタジエンは石油留分中に含まれることから、工業用ジシクロペンタジエンにはシクロペンタジエンの多量体や、他の脂肪族或いは芳香族性ジエン化合物等が不純物として含有されることがあるが、耐熱性、硬化性、成形性等の性能を考慮すると、ジシクロペンタジエンの純度90質量%以上の製品を用いることが望ましい。
【0063】
一方、前記フェノール性化合物は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、イソプロペニルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クロルフェノール、ブロムフェノール、1-ナフトール、2-ナフトール、1,4-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられ、それぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、硬化性が高く硬化物における誘電特性に優れる活性エステル硬化剤となることからフェノールが好ましい。
【0064】
好ましい実施形態において、式(1)で表される活性エステル硬化剤における「A」は、式(A)で表される構造を有する。式(1)における「A」が以下の構造である活性エステル硬化剤を含む熱硬化性樹脂組成物は、その硬化物が低誘電正接であり、インサート品に対する密着性に優れる。
【0065】
【化5】
【0066】
式(A)において、
はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、
lは0または1であり、mは1以上の整数である。
【0067】
式(1)で表される活性エステル硬化剤のうち、より好ましいものとして、下記式(1-1)、式(1-2)および式(1-3)で表される樹脂が挙げられ、特に好ましいものとして、下記式(1-3)で表される樹脂が挙げられる。
【0068】
【化6】
【0069】
式(1-1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。
【0070】
【化7】
【0071】
式(1-2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。
【0072】
【化8】
【0073】
式(1-3)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。
【0074】
本発明で用いられる活性エステル樹脂(B1)は、脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール性水酸基を有するアリール基が複数結節された構造を有するフェノール性化合物(a)と、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)と、芳香族モノヒドロキシ化合物(c)とを反応させる、公知の方法により製造することができる。
【0075】
上記フェノール性化合物(a)と、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)と、芳香族モノヒドロキシ化合物(c)との反応割合は、所望の分子設計に応じて適宜調整することができるが、中でも、より硬化性の高い活性エステル硬化剤が得られることから、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記フェノール性化合物(a)が有するフェノール性水酸基が0.25~0.90モルの範囲となり、かつ、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(c)が有するヒドロキシル基が0.10~0.75モルの範囲となる割合で各原料を用いることが好ましく、前記フェノール性化合物(a)が有するフェノール性水酸基が0.50~0.75モルの範囲となり、かつ、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(c)が有するヒドロキシル基が0.25~0.50モルの範囲となる割合で各原料を用いることがより好ましい。
【0076】
また、活性エステル樹脂(B1)の官能基当量は、樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の合計を樹脂の官能基数とした場合、硬化性に優れ、誘電率及び誘電正接の低い硬化物が得られることから、200g/eq以上230g/eq以下の範囲であることが好ましく、210g/eq以上220g/eq以下の範囲であることがより好ましい。
【0077】
(フェノール樹脂(B2))
フェノール樹脂(B2)としては、本発明の効果を奏する範囲で封止用樹脂組成物に一般に使用されるものを用いることができる。
【0078】
フェノール樹脂(B2)は、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール、α-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒドやケトン類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂、上記したフェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂などのフェノールアラルキル樹脂、トリスフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
本実施形態において、フェノール樹脂(B2)は、本発明の効果の観点から、ビフェニルアラルキル構造を備えることが好ましく、具体的にはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂が好ましい。ビフェニルアラルキル構造を備えるフェノール樹脂は低吸湿、低弾性であり信頼性に優れる。
本実施形態においては、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂(B2)のうち一方または両方が、ビフェニルアラルキル構造を有することが好ましい。
本実施形態の硬化剤は、活性エステル樹脂(B1)およびフェノール樹脂(B2)を組み合わせて含むことも好ましい。
【0080】
本発明の効果の観点から、硬化剤は、活性エステル樹脂(B1)の含有量(重量部)とフェノール樹脂(B2)の含有量(重量部)との比率を、3:7~9:1、好ましくは4:6~8:2とすることができる。
【0081】
本実施形態の樹脂組成物において、活性エステル樹脂(B1)およびフェノール樹脂(B2)を含む硬化剤とエポキシ樹脂との配合量は、硬化剤中の活性基の合計1当量に対して、エポキシ樹脂中のエポキシ基が0.8~1.2当量となる割合であることが好ましい。ここで、硬化剤中の活性基とは、樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基を指す。
【0082】
本実施形態の組成物において、硬化剤は、封止樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.2質量%以上15質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上7質量%以下の量で用いられる。
【0083】
[硬化促進剤]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含むことができる。
硬化促進剤は、テトラフェニルホスホニウム-4,4’-スルフォニルジフェノラート、テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート、4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラートからなる群より選択される1種または2種以上を含む。
【0084】
封止用樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物の硬化特性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。
【0085】
また、封止用樹脂組成物の成形時に好ましい流動性を得る観点から、封止用樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以下である。
【0086】
[カップリング剤]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、さらにカップリング剤を含むことができる。
カップリング剤として、たとえば、エポキシシラン、メルカプトシラン、フェニルアミノシラン等のアミノシランが挙げられる。封止材と金属部材との密着性を向上する観点から、カップリング剤は、好ましくはエポキシシランまたはアミノシランであり、より好ましくは2級アミノシランである。同様の観点から、カップリング剤は、好ましくはフェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メルカプトプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1つ以上である。
【0087】
封止用樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、封止用樹脂組成物の成形時に好ましい流動性を得る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である。
【0088】
また、樹脂粘度の増粘抑制の観点から、封止用樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0089】
[その他の成分]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、上述した成分以外の成分を含んでもよく、たとえば低応力剤、流動性付与剤、離型剤、イオン捕捉剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤等の各種添加剤のうち1種以上を適宜配合することができる。
低応力剤の具体例として、シリコーンオイルが挙げられる。
【0090】
離型剤は、たとえばカルナバワックス等の天然ワックス;モンタン酸エステルワックス、酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類;パラフィン;およびエルカ酸アミドなどのカルボン酸アミドからなる群から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
イオン捕捉剤の具体例として、ハイドロタルサイトが挙げられる。
難燃剤の具体例として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼンが挙げられる。
着色剤の具体例として、カーボンブラック、ベンガラが挙げられる。
酸化防止剤の具体例として、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物が挙げられる。
【0091】
<封止用樹脂組成物>
本実施形態の封止用樹脂組成物は、常温(25℃)で固体であり、その形状は封止用樹脂組成物の成形方法等に応じて選択することができ、たとえばタブレット状;粉末状、顆粒状等の粒子状;シート状が挙げられる。
【0092】
また、封止用樹脂組成物の製造方法については、たとえば、上述した各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕する方法により得ることができる。また、粉砕後、成形して粒子状またはシート状の封止用樹脂組成物を得てもよい。たとえば、タブレット状に打錠成形して粒子状の封止用樹脂組成物を得てもよい。また、たとえば真空押し出し機によってシート状の封止用樹脂組成物を得てもよい。
本実施形態の封止用樹脂組成物は、トランスファー成型、射出成型、または圧縮成型に用いることができる。
【0093】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、流動性に優れるため、狭い隙間にも入り込むことができ、高い充填性が得られることから、高い充填性が求められるモールドアンダーフィル材料として好適である。このように、本実施形態において得られる封止用樹脂組成物を用いることにより、製品信頼性に優れる半導体装置を得ることができる。
【0094】
[硬化物]
本実施形態の封止用樹脂組成物の硬化物は前記中空有機ポリマー粒子を含む。
本実施形態においては、上記のような混練、打錠、成形等の工程を経た後でも、中空有機ポリマー粒子の中空構造の破壊が抑制されている。
封止用樹脂組成物に含まれる各成分から算出される封止用樹脂組成物の比重aに対する、硬化物の比重bの比(b/a)は、0.95~1.2、好ましくは1.0~1.1である。
【0095】
本実施形態の封止用樹脂組成物又はその硬化物の中空率は、誘電特性および硬化物の強度とのバランスの観点から、15%~60%であることが好ましく、20%~55%であることがより好ましく、25%~50%であることが更に好ましい。
【0096】
SEM画像において断面の面積aに含まれる中空部の総面積bを求める。中空部の総面積b/面積aを百分率(%)に換算し、この値を封止用樹脂組成物又はその硬化物の中空率とする。
【0097】
[電子装置]
本実施形態に係る電子装置100の一例を図1に示す。
電子装置100は、基板10と、基板10上に搭載された電子素子20と、電子素子20を封止する成形体(封止材)50と、を有する。成形体50として、本実施形態の封止樹脂組成物の硬化物が用いられる。
なお、図1に示す電子装置100は、電子素子20と基板10とが半田バンプ30を介して電気的に接続されたものであるが、これに限定されるものではない。
【0098】
電子装置100としては、例えば、半導体装置などが挙げられる。また、電子素子20としては、例えば半導体素子(半導体チップ)などが挙げられる。本実施形態に係る封止樹脂組成物は、フリップチップBGAパッケージ等のフリップチップ実装方式の電子装置に対して好適に用いられる。
【0099】
なお、成形体50は、電子素子20と基板10との間の隙間に充填されるアンダーフィルと、電子素子20を封止する封止樹脂層と、から構成することができる。アンダーフィルと封止樹脂層とは異なる材料で構成されていてもよいが、同一の材料で構成されていてもよい。本実施形態の封止用樹脂組成物は、モールドアンダーフィル材料として用いることができる。このため、アンダーフィルと封止樹脂層とを同一材料で構成できるとともに同一工程で形成することも可能にある。具体的には、電子素子20を封止用樹脂組成物で封止する封止工程と、基板10と電子素子20との間の隙間に封止用樹脂組成物を充填する充填工程とを同一工程(一括)で実施することができる。例えば、フリップチップ実装方式の電子装置は、電子素子のパッドに半田バンプを搭載し、この半田バンプを基板のランドに接続させて実装し、封止樹脂組成物をトランスファーモールド法、コンプレッションモールド法又はインジェクションモールド法で成形し、封止樹脂組成物を硬化させた成形体とすることで得られる。
【0100】
本実施形態の封止樹脂組成物を用いて電子素子20を封止する際、封止樹脂組成物は基板10と半導体素子20との間の隙間にも充填される。これにより、硬化体により電子装置100の強度が向上し、信頼性の高い電子装置100が得られる。また、別途アンダーフィル材を用いることなく、電子素子20と基板10との間に封止樹脂組成物を充填でき、トランスファーモールド法等により1つの工程で成形することが可能である。
【0101】
電子素子20と基板10との離間距離は、例えば、100μm程度である。このように離間距離が短い場合であっても、本実施形態の封止樹脂組成物は充填性に優れる。
【0102】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0103】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
<比較例1~2、実施例1~2(封止用樹脂組成物の製造)>
表1に記載された各成分を記載された量比で混合し、混合物を得た。混合は、常温でヘンシェルミキサーを用いて行った。
その後、その混合物を、70~100℃でロール混練し、混練物を得た。得られた混練物を冷却し、その後、粉砕し、封止用樹脂組成物を得た。表1に記載の各成分は以下の通り。
【0105】
(充填材)
・無機充填材1:溶融球状シリカ(平均径10μm)
・無機充填材2:溶融球状シリカ(平均径0.6μm)
・中空有機ポリマー粒子1:中空有機ポリマー粒子(積水化成品工業社製、表面にカルボキシル基を備える架橋ポリスチレン粒子、平均粒子径4.74μm、コア:内径4~9μmの空洞、シェル:外径5~10μm・内径4~9μmのポリスチレン層)
下記方法で測定された300℃における重量減少率は4.8%であった。
・中空有機ポリマー粒子2:中空有機ポリマー粒子(積水化成品工業社製、表面にカルボキシル基を備える架橋ポリスチレン粒子、平均粒子径5.24μm、コア:内径4~9μmの空洞、シェル:外径5~10μm・内径4~9μmのポリスチレン層)
下記方法で測定された300℃における重量減少率は4.8%であった。
・中空有機ポリマー粒子3:三水株式会社製、製品名:NC-751C
【0106】
(カップリング剤)
・シランカップリング剤1:N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製、CF-4083)
・シランカップリング剤2:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM803P)
【0107】
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YX4000K)
・エポキシ樹脂2:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC-3000L)
【0108】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂(明和化成社製、MEH-7851SS)
【0109】
・硬化剤2:下記調製方法で調製した活性エステル樹脂
(活性エステル樹脂の調製方法)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1,3-ベンゼンジカルボン酸ジクロリド203.0g(酸クロリド基のモル数:2.0モル)とトルエン1338gとを仕込み、系内を減圧窒素置換して溶解させた。次いで、α-ナフトール96.5g(0.67モル)、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂を219.5g(フェノール性水酸基のモル数:1.33モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換して溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し不揮発分65%のトルエン溶液状態にある活性エステル樹脂を得た。得られた活性エステル樹脂の構造を確認したところ、上述の式(1-3)においてR及びRが水素原子、Zがナフチル基、lが0の構造を有していた。活性エステル樹脂の繰り返し単位の平均値kは、反応等量比から算出したところ0.5~1.0の範囲であった。得られた活性エステル樹脂は具体的に以下の化学式で表される構造を有していた。また、活性基当量は209g/eqであった。
【0110】
【化9】
【0111】
(離型剤)
・ワックス1:カルナバワックス(東亜合成社製、TOWAX-132)
【0112】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:テトラフェニルホスホニウム4,4'-スルフォニルジフェノラート
・硬化促進剤2:テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート
【0113】
(熱重量・示差熱同時測定(中空有機ポリマー粒子、封止用樹脂組成物))
得られた封止用樹脂組成物および中空有機ポリマー粒子の熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)において窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率を測定した。
【0114】
(二軸フロー)
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、「KTS-15」)を用いて、ANSI/ASTM D 3123-72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力7.0MPa、保圧時間120秒の条件で、各実施例および各比較例の樹脂組成物を注入し、流動長を測定し、これを二軸フローとした。
なお、二軸フローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。
【0115】
(誘電特性)
得られた封止用樹脂組成物を、金型温度175°C、注入圧力10MPa、硬化時間2分間で成型し、100×3.8×0.8mmの硬化物を作製した。得られた硬化物について、JIS-C-6481に準拠し、株式会社エーイーティ製「ASMS01Oc1」により、絶乾後23°C、湿度50%の室内に24時間保管した後に試験片の5GHz、23°Cでの誘電率(Dk)および誘電正接(Df)を測定した。
得られた実施例1の封止用樹脂組成物の硬化物の断面SEM写真を図2に示す。図2に示すように、中空部分(黒色)が含まれていることが確認された。
【0116】
(封止用樹脂組成物の比重aに対する硬化物の比重bの比(b/a))
得られた樹脂組成物を、金型温度175°C、注入圧力10MPa、硬化時間2分間で成型し、100×3.8×0.8mmの硬化物を作製した。当該封止用樹脂組成物に含まれる各成分から算出される封止用樹脂組成物の比重a(理論値)に対する、硬化物の比重bの比b/aを算出した。
【0117】
【表1】
【0118】
表1に記載のように、本発明に係る実施例の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、中空有機ポリマー粒子と、を含み、所定の重量減少率が2%未満であることにより、二軸フローの流動長が長く充填性に優れており、さらに誘電特性に優れていた。言い換えれば、本発明の封止用樹脂組成物は充填性および誘電特性のバランスに優れていた。
【符号の説明】
【0119】
10 基板
20 電子素子
30 半田バンプ
50 成形体
100 電子装置
図1
図2