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特開2024-12614ポリオール含有組成物、及びポリウレタンフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012614
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ポリオール含有組成物、及びポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/18 20060101AFI20240123BHJP
   C08G 18/20 20060101ALI20240123BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C08G18/18
C08G18/20
C08G18/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194588
(22)【出願日】2023-11-15
(62)【分割の表示】P 2018057903の分割
【原出願日】2018-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 康揮
(72)【発明者】
【氏名】梶田 倫生
(57)【要約】
【課題】発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを使用した場合であっても安定性を向上させつつ、触媒活性の低下を防ぐことができ、低温下での吹付施工であっても吹付対象とポリウレタンフォームとの間に生じる剥離を抑制できるポリオール含有組成物、及びそれを用いたポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、ポリオール、下記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩、窒素原子を有する複素環式化合物、ハイドロフルオロオレフィン、及び整泡剤を含有することを特徴とするポリオール含有組成物。
(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。また、Mは4級アンモニウムイオンを表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、ポリオール、下記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩、窒素原子を有する複素環式化合物、ハイドロフルオロオレフィン、及び整泡剤を含有するポリオール含有組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。また、Mは4級アンモニウムイオンを表す。)
【請求項2】
前記カルボン酸アンモニウム塩の配合量が、前記ポリオール100質量部に対して1~22質量部である、請求項1に記載のポリオール含有組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるRがアルキル基である、請求項1又は2に記載のポリオール含有組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)におけるMがテトラメチルアンモニウムイオンである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩が、2,2-ジメチルプロパン酸アンモニウム塩である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項6】
前記窒素原子を有する複素環式化合物の配合量が、ポリオール100質量部に対して1~23質量部である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項7】
前記窒素原子を有する複素環式化合物が、下記一般式(2)で表されるイミダゾール誘導体である、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【化2】
(一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【請求項8】
前記窒素原子を有する複素環式化合物が1,2-ジメチルイミダゾールである、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとの反応生成物である、ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
イソシアネートインデックスが200以上である、請求項9に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール含有組成物、及びポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンを発泡させるための発泡剤としては、ハイドロフルオロカーボン(HFC)が使用されていた。しかし、ハイドロフルオロカーボンは、地球温暖化係数が高く、また、法規制の動きもあるため、代替材料への切り替えが検討されている。前記代替材料としてはハイドロフルオロオレフィン(HFO)が挙げられるが、ハイドロフルオロオレフィンはポリウレタンフォームの製造に用いる触媒を分解して触媒の活性を低下させるため、ポリオールとポリイソシアネートとの反応が十分に進行しないという問題がある。
このような問題を解決する方法として特許文献1には、発泡剤、ポリオール、シリコーン界面活性剤、及び特定の立体障害アミン触媒を含むポリオールプレミックス組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2011-500892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポリウレタンフォームは、難燃性を高めたり、不燃性にしたりするためには、ポリイソシアネートの三量化により、イソシアヌレート結合を多くする必要がある。また、ポリウレタンフォームは、例えば、吹付施工により建築物の壁面等に施工されるが、触媒の活性が十分に高くない場合は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応が十分に進行せず、ポリウレタンフォームに横伸びが発生して、吹付対象がコーナー部を有するときなど、吹付対象との間に剥離が発生する場合がある。特に0℃程度の低温下において吹付施工をする場合は触媒の活性が低下しやすいため、上記剥離の問題が生じやすい。
【0005】
これに対して特許文献1では特定の触媒を用いることを特徴としているが、イソシアヌレート結合を有するポリウレタンフォームにおいて、触媒活性を高めてフォームの横伸びを抑制する点などについて言及されていない。
さらに、イソシアヌレート結合を多く有するポリウレタンフォームを得るためには、三量化触媒と樹脂化触媒を併用する必要があるが、これらを含有するポリオール含有組成物は、ハイドロフルオロオレフィンに対して使用すると、安定性が低下して、発泡が適切に行えないなどの不具合が生じやすくなる。
【0006】
そこで本発明は、触媒として三量化触媒と樹脂化触媒を使用し、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを使用した場合であっても、安定性を向上させつつ、触媒活性の低下を防ぐことができ、例えば低温下での吹付施工などであっても、触媒活性の低下による横伸びなどが発生しにくいポリオール含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、触媒として特定のカルボン酸アンモニウム塩と窒素原子を有する複素環式化合物とを併用すると、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを用いた場合であっても、触媒の活性が低下せず、かつポリオール含有組成物の安定性が高くなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、下記[1]~[10]を要旨とする。
[1]ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、ポリオール、下記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩、窒素原子を有する複素環式化合物、ハイドロフルオロオレフィン、及び整泡剤を含有するポリオール含有組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。また、Mは4級アンモニウムイオンを表す。)
[2]前記カルボン酸アンモニウム塩の配合量が、前記ポリオール100質量部に対して1~22質量部である、前記[1]に記載のポリオール含有組成物。
[3]前記一般式(1)におけるRがアルキル基である、前記[1]又は[2]に記載のポリオール含有組成物。
[4]前記一般式(1)におけるMがテトラメチルアンモニウムイオンである、前記[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[5]前記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩が、2,2-ジメチルプロパン酸アンモニウム塩である、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[6]前記窒素原子を有する複素環式化合物の配合量が、ポリオール100質量部に対して1~23質量部である、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[7]前記窒素原子を有する複素環式化合物が、下記一般式(2)で表されるイミダゾール誘導体である、前記[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【化2】

(一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
[8]前記窒素原子を有する複素環式化合物が1,2-ジメチルイミダゾールである、前記[1]~[7]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[9]前記[1]~[8]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとの反応生成物である、ポリウレタンフォーム。
[10]イソシアネートインデックスが200以上である、前記[9]に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、触媒として三量化触媒と樹脂化触媒を併用し、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを使用した場合であっても、安定性を向上させ、かつ触媒活性の低下を防ぐことができ、例えば、低温下での吹付施工であっても横伸びが発生しにくい、ポリオール含有組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリオール含有組成物]
本発明のポリオール含有組成物は、ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、ポリオール、下記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩、窒素原子を有する複素環式化合物、ハイドロフルオロオレフィン、及び整泡剤を含有する。
【0011】
【化3】

(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。また、Mは4級アンモニウムイオンを表す。)
【0012】
本発明のポリオール含有組成物は、触媒として特定のカルボン酸アンモニウム塩と窒素原子を有する複素環式化合物とを併用するため、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを用いた場合であっても、安定性を高めつつ、触媒の活性が低下せずポリオールとポリイソシアネートとの反応を速やかに進行させることができる。その結果、例えば、0℃程度の低温下で吹付施工を行った場合でも横伸びが抑えられ、剥離が防止されるようになる。なお、本発明に用いる前記2種の触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとの量を調節することによりポリイソシアネートの三量化体に由来する6員環のイソシアヌレート結合を形成させやすい。そして、この6員環構造のイソシアヌレート結合を有するポリウレタンフォームは、燃焼時に炭化層を形成して燃焼しにくくなるためポリウレタンフォームの難燃性が向上する。
【0013】
<ポリオール>
本発明のポリオール含有組成物はポリウレタンフォームの原料としてポリオールを含有する。
本発明に用いるポリオールとしては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーポネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0014】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0015】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、及びクレゾールノボラック等が挙げられる。
脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、及びジメチルジシクロへキシルメタンジオール等が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオール等が挙げられる。
【0016】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、及びα-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、及びコハク酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0017】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、及び多価アルコールの変性ポリオール又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0018】
多価アルコールの変性ポリオールとしては、例えば、原料の多価アルコールにアルキレンオキサイドを反応させて変性したもの等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン及びトリメチロールプロパン等の三価アルコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクト-ス、メチルグルコシド及びその誘導体等の四~八価のアルコール、フロログルシノール、クレゾール、ピロガロール、カテコ-ル、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、及び1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセン等のポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)が挙げられる。
【0019】
多価アルコールの変性方法は特に限定されないが、アルキレンオキサイド(以下、「AO」ともいう)を付加させる方法が好適に用いられる。AOとしては、炭素数2~6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、「EO」ともいう)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、「PO」ともいう)、1,3-プロピレオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、及び1,4-ブチレンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも性状や反応性の観点から、PO、EO及び1,2-ブチレンオキサイドが好ましく、PO及びEOがより好ましい。AOを2種以上使用する場合(例えば、PO及びEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0020】
ポリエーテルポリオ-ルとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオ-ル等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エチレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0021】
本発明に使用するポリオールとしては、横伸びの発生を抑制する観点から、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールが好ましい。また、水酸基を2個有するポリオールが好ましい。中でも、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)等の芳香族環を有する多塩基酸と、ビスフェノールA、エチレングリコール、及び1,2-プロピレングリコール等の2価アルコールとを脱水縮合して得られるポリエステルポリオールがより好ましい。
【0022】
ポリオールの水酸基価は、20~300mgKOH/gが好ましく、30~250mgKOH/gがより好ましく、50~220mgKOH/gが更に好ましい。ポリオールの水酸基価が前記上限値以下であるとポリオール含有組成物の粘度が下がりやすく、取り扱い性等の観点で好ましい。一方、ポリオールの水酸基価が前記下限値以上であるとポリウレタンフォームの架橋密度が上がることにより強度が高くなる。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
【0023】
本発明のポリオール含有組成物中のポリオールの含有量は、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%、更に好ましくは25~60質量%である。ポリオールの含有量が前記下限値以上であるとポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくなるため好ましい。一方、ポリオールの含有量が前記上限値以下であると、ポリオール含有組成物の粘度が高くなりすぎないため取扱い性の観点で好ましい。
【0024】
<一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩(三量化触媒)>
本発明のポリオール含有組成物は、ポリイソシアネートの三量化触媒として下記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩を含有する。下記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩は、適度な立体障害を有しているためハイドロフルオロオレフィンの影響を受けにくく、触媒活性の低下を防ぐことができる。よって、ハイドロフルオロオレフィンを発泡剤として使用しても吹付施工時の横伸びの問題を抑制することが可能になる。また、本発明においては、下記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩と、後述する窒素原子を有する複素環式化合物とを併用しているため、ポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合を形成しやすく、難燃性に優れるポリウレタンフォームを得ることができる。
【0025】
【化4】

(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。また、Mは4級アンモニウムイオンを表す。)
【0026】
一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、具体的には炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1~2のアルキル基がより更に好ましい。なお、アルキル基は直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
また、Rは水素原子又はアルキル基を表し、アルキル基は炭素数1~6が好ましい。また、Rは、アルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましく、炭素数1~2のアルキル基がより更に好ましい。
、R及びRの炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなるためハイドロフルオロオレフィンによる影響をより受けにくくなる。一方、R、R及びRの炭素数が前記上限値以下であると、立体障害が大きくなりすぎないためポリオールとポリイソシアネートとの反応が極端に遅くなることを防ぐことができる。
【0027】
は4級アンモニウムイオンを表し、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、及びトリエチルモノメチルアンモニウムイオン等が挙げられ、中でも、テトラメチルアンモニウムイオン、及びトリエチルモノメチルアンモニウムイオンが好ましく、中でもテトラメチルアンモニウムイオンがより好ましい。
【0028】
一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩の具体例としては、R、R及びRがいずれもメチル基であり、Mがテトラメチルアンモニウムイオンである2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩、R、R及びRがいずれもメチル基であり、Mがトリエチルモノメチルアンモニウムイオンである2,2-ジメチルプロパン酸トリエチルモノメチルアンモニウム塩等の2,2-ジメチルプロパン酸アンモニウム塩が挙げられる。中でも2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩が好ましい。なお、本発明において前記カルボン酸アンモニウム塩は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
ポリオール含有組成物中のカルボン酸アンモニウム塩の配合量は、ポリオール100質量部に対して、1~22質量部が好ましく、2~19質量部がより好ましく、4~17質量部が更に好ましく、4~14質量部がより更に好ましく、4~11質量部がより更に好ましい。カルボン酸アンモニウム塩の配合量が前記下限値以上であるとポリイソシアネートの三量化が生じやすくなり、得られるポリウレタンフォームの難燃性が向上する。一方、カルボン酸アンモニウム塩の配合量が前記上限値以下であると反応の制御がし易くなる。
【0030】
<窒素原子を有する複素環式化合物(樹脂化触媒)>
本発明のポリオール含有組成物は、樹脂化触媒として窒素原子を有する複素環式化合物を含有する。ポリオール含有組成物は、窒素原子を有する複素環式化合物を樹脂化触媒として含有すると、ハイドロフルオロオレフィンの影響を受けにくく、安定性を高めつつ、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくなり、横伸びなどを防止しやすくなる。
【0031】
本発明において用いる窒素原子を有する複素環式化合物に特に制限はないが、複素環中に窒素原子を含む化合物が好ましく、例えば、複素環中に窒素原子を含む4~8員環の複素環化合物がより好ましく、より具体的には、イミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピペラジン誘導体等が挙げられる。これらの中でもイミダゾール誘導体が好ましく、下記一般式(2)で表されるイミダゾール誘導体がより好ましい。
【0032】
【化5】

(一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【0033】
前記一般式(2)におけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又はアルケニル基を表し、炭素数1~6のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。R及びRのアルキル基又はアルケニル基の炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなりハイドロフルオロオレフィンの影響を受けにくくなるため好ましい。一方、R及びRのアルキル基又はアルケニル基の炭素数が前記上限値以下であると、極端に立体障害が大きくならないためポリオールとポリイソシアネートとの反応を速やかに進行させることが可能になる。なお、アルキル基及びアルケニル基はそれぞれ直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
一般式(2)で表されるイミダゾール誘導体としては、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが挙げられ、中でも、ハイドロフルオロオレフィン存在下での触媒の活性を向上させる観点と反応を速やかに進行させる観点から、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが好ましい。また、安定性をより高める観点からは1,2-ジメチルイミダゾールがさらに好ましい。
【0034】
ポリオール含有組成物中の窒素原子を有する複素環式化合物の配合量は、ポリオール100質量部に対して、1~23質量部が好ましく、3~19質量部がより好ましく、5~15質量部が更に好ましく、5~11質量部がより更に好ましい。窒素原子を有する複素環式化合物の配合量が前記下限値以上であるとウレタン結合の形成が生じやすくなり、反応が速やかに進行する。一方、窒素原子を有する複素環式化合物の配合量が前記上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなるため好ましい。
【0035】
<ハイドロフルオロオレフィン(発泡剤)>
本発明のポリオール含有組成物は、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含有する。ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、炭素数が3~6個程度であるフルオロアルケン等を挙げることができる。ハイドロフルオロオレフィンは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6個程度であるクロロフルオロアルケン等であってもよい。
より具体的には、トリフルオロプロペン、HFO-1234等のテトラフルオロプロペン、HFO-1225等のペンタフルオロプロペン、HFO-1233等のクロロトリフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペン等が挙げられる。より具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yez)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd)、及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン等が挙げられる。これらの中ではHFO-1233zdが好ましい。
これらのハイドロフルオロオレフィンは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明において用いるハイドロフルオロオレフィンの地球温暖化係数(GWP:Global Warmng Potental)は、150以下が好ましく、100以下がより好ましく、75以下が更に好ましい。なお、「GWP」は「The Scientific Assessment of Ozone Depletion、2002、a report of the World Meteorological Association’s Global Ozone Research and Monitoring Project(オゾン層破壊の科学的評価、2002年、世界気象協会の全球オゾン層の調査と監視計画)」に定義された値であって、100年の時間スケールで二酸化炭素のGWPに対して相対的に測定される値である。
また、ハイドロフルオロオレフィンのオゾン破壊係数(ODP:Ozone Depletion Potential)は、0.05以下が好ましく、0.02以下がより好ましく、実質的に0であることがより更に好ましい。なお、「ODP」は「The Scientific Assessment of Ozone Depletion、2002、A report of the World Meteorological Association’s Global Ozone Research and Monitoring Project(オゾン層破壊の科学的評価、2002年、世界気象協会の全球オゾン層の調査と監視計画)」に定義された値である。
【0037】
ハイドロフルオロオレフィンの配合量は、ポリオール100質量部に対して、10~60質量部が好ましく、20~55質量部がより好ましく、25~50質量部が更に好ましく、30~45質量部がより更に好ましい。ハイドロフルオロオレフィンの配合量が前記下限値以上であると発泡が促進され、得られるポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、ハイドロフルオロオレフィンの配合量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0038】
<ハイドロフルオロオレフィン以外の発泡剤>
本発明のポリオール含有組成物は、ハイドロフルオロオレフィン以外の発泡剤を含有してもよい。ハイドロフルオロオレフィン以外の発泡剤としては、例えば、水、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、及びシクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、及びイソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、ジイソプロピルエーテル等のエーテル化合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、及び二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。これらの中でも、取扱い性の観点から、水、酸素ガス、及び二酸化炭素ガスが好ましく、イソシアネートインデックスを調整する観点、及び取扱い容易性の観点から水が好ましい。
【0039】
ポリオール含有組成物中のハイドロフルオロオレフィン以外の発泡剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.5~2質量部が更に好ましい。発泡剤の配合量が前記下限値以上であると発泡が促進され、得られるポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、発泡剤の配合量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0040】
<整泡剤>
本発明のポリオール含有組成物は、ポリオール含有組成物とイソシアネートとの混合物を発泡しやすくさせることを目的として整泡剤を含有する。
整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。これらの整泡剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本発明のポリオール含有組成物中の整泡剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、1~8質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。整泡剤の配合量が前記下限値以上であるとポリオール含有組成物とポリイソシアネートとの混合物を発泡させやすくなるため均質なポリウレタンフォームを得ることが可能になる。また、整泡剤の配合量が前記上限値以下であると製造コストと得られる効果のバランスが最適になる。
【0042】
<難燃剤>
本発明のポリオール含有組成物は難燃剤を含有してもよい。本発明のポリオール含有組成物を用いて製造したポリウレタンフォームはポリイソシアネートの三量化によるイソシアヌレート結合を含むため難燃性に優れるが、難燃剤を用いることでより一層ポリウレタンフォームの難燃性を向上させることができる。
本発明に使用する難燃剤としては、赤リン、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ酸含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物等が好ましく、赤リン、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ酸含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物がより好ましい。
【0043】
前記リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用することが好ましく、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レジルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ホスフアフエナンスレン、及びトリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等が挙げられる。
【0044】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート(大八化学工業社製、商品名PX-200)、ハイドロキノンポリ(2,6-キシリル)ホスフェート、及びこれらの縮合物等の縮合リン酸エステルを挙げられる。
【0045】
これらの中でも、ポリオール含有組成物とポリイソシアネートとの混合物の粘度を低下させて製造を容易にする観点、及びポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートがより好ましい。
【0046】
本発明のポリオール含有組成物が難燃剤を含有する場合、その配合量は、ポリオール100質量部に対して、10~150質量部が好ましく、20~140質量部がより好ましく、30~130質量部が更に好ましく、40~125質量部がより更に好ましい。難燃剤の配合量が前記下限値以上であると、ポリオール含有組成物を用いて製造したポリウレタンフォームに十分な難燃性を付与することができる。一方、難燃剤の配合量が前記上限値以下であると、ポリウレタンフォームを製造する際の発泡が阻害されない。
【0047】
<その他成分>
本発明においては、前記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩の他にも、三量化触媒を含んでもよい。そのような触媒としては、一般式(1)で表されるカルボン酸の金属塩などが挙げられる。また、上記一般式(1)以外の構造を有するカルボン酸のアンモニウム塩、金属塩なども挙げられる。なお、金属塩を含む場合、上記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩は、部分的にカルボン酸の金属塩となってもよい。
【0048】
本発明のポリオール含有組成物は、ポリオール、一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩、窒素原子を有する複素環式化合物、ハイドロフルオロオレフィン、及び整泡剤以外の成分を含有してもよく、例えば、無機充填剤を含有してもよい。
無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカパルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素パルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムポレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、及びジルコニア繊維等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のポリオール含有組成物は、無機充填剤を含有しても含有しなくてもよいが、含有する場合の無機充填剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して、1~100質量部が好ましく、10~80質量部がより好ましく、20~70質量部が更に好ましい。
【0049】
また、ポリオール含有組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等から選択される1種以上を含むことができる。
【0050】
<ポリオール含有組成物の製造方法>
本発明のポリオール含有組成物の製造方法に特に制限はなく、例えば、20~40℃程度で各成分をホモディスパー等を用いて30秒~20分程度撹拌することにより製造することができる。
【0051】
[ポリウレタンフォーム]
本発明のポリウレタンフォームは、本発明のポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとの反応生成物である。前述のとおり本発明のポリオール含有組成物は、特定のカルボン酸アンモニウム塩と窒素原子を有する複素環式化合物を触媒として用いているためハイドロフルオロオレフィンを発泡剤として用いた場合であっても、安定性が高く、かつ触媒活性が低下しにくい。よって、本発明のポリウレタンフォームは低温下で吹付施工を行っても横伸びの問題を抑制することができる。
【0052】
<ポリイソシアネート>
ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0055】
これらの中でも、使いやすさの観点、及び入手容易性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、ポリイソシアネートは、ポリオール含有組成物と混合する前に、ポリイソシアネートに配合される公知の添加剤が適宜配合されてもよい。
【0056】
なお、ポリオール含有組成物と、ポリオール含有組成物に混合されるポリイソシアネートは、互いに体積が実質的に同じであることが好ましい。具体的には、ポリオール含有組成物に対する、ポリイソシアネートの体積比は、0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がより好ましく、0.95~1.05がさらに好ましい。
【0057】
<イソシアネートインデックス>
本発明のポリウレタンフォームのイソシアネートインデックスに特に制限はないが、200以上が好ましい。イソシアネートインデックスが前記下限値以上であると、ポリオールに対するポリイソシアネートの量が過剰になりポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合が生成し易くなる結果、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。また、不燃性を付与することも可能になる。さらに、上記下限値以上とすると、カルボン酸アンモニウム塩と窒素原子を有する複素環式化合物とを併用することも相俟って、イソシアヌレート結合を有するポリウレタンフォームを有するポリウレタンフォーム、すなわち、難燃性と断熱性とを高い水準で兼ね備えるポリウレタンフォームを製造しやすい。これら観点から、イソシアネートインデックスは、250以上が更に好ましく、300以上より更に好ましく、400以上が特に好ましい。
また、イソシアネートインデックスは、1000以下が好ましく、800以下がさらに好ましく、600以下がよりさらに好ましい。イソシアネートインデックスが前記上限値以下であると、得られるポリウレタンフォームの難燃性と製造コストとのバランスが良好になる。
【0058】
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス
=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0059】
<ポリウレタンフォームの製造方法>
本発明のポリウレタンフォームの製造方法に特に制限はないが、ポリイソシアネートとポリオール含有組成物とを混合して発泡し、かつ反応させるとよい。具体的には、ポリイソシアネートとポリオール含有組成物とをスプレーガン等を用いて衝突混合させ、吹付施工することが好ましい。より具体的には、スプレーガンを用いてポリイソシアネートとポリオール含有組成物とを液温10~50℃程度で混合し、施工対象面に吐出圧力800~2000psi程度で吹き付け、発泡させることにより製造することができる。なお、本発明においては特定のカルボン酸アンモニウム塩と窒素原子を有する複素環式化合物とを触媒として併用しているため外気温が低い条件下においても触媒の活性を維持することができる。よって、外気温0~15℃程度の低温で、発泡かつ硬化されても問題なくポリウレタンフォームを製造することができる。
本発明においては、ポリイソシアネートとポリオール含有組成物とを混合した後、金型、枠材等の容器へ注入して硬化させることによりポリウレタンフォームを得てもよい。
【0060】
<ポリウレタンフォームの用途>
本発明のポリウレタンフォームの用途は特に限定されないが難燃性及び断熱性に優れているため、建築物の壁、天井、屋根、床等の建築物に好適に用いることができる。また、建築物の構造材の間に生じる目地や穴を含め、建築物に生じる任意の開口部を埋める部材として好適に用いることもできる。
【実施例0061】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0062】
<使用材料>
〔ポリイソシアネート〕
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)(万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200)
〔ポリオール〕
p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業株式会社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
〔三量化触媒〕
・カルボン酸アンモニウム塩
2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩(エボニック ジャパン株式会社、製品名:DABCO TMR-7)、エチレングリコールとの混合物(2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩45~55質量%、エチレングリコールが45~55質量%)
・比較用三量化触媒(1)
酢酸テトラメチルアンモニウム(東ソー株式会社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-TRX)
・比較用三量化触媒(2)
2-エチルヘキサン酸カリウム塩(エボニック・ジャパン株式会社製、製品名:DABCO K-15)
【0063】
〔樹脂化触媒〕
・複素環式化合物(1)
1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー株式会社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-DM70、エチレングリコールとの混合物(1,2-ジメチルイミダゾールが65~75質量%、エチレングリコールが25~35質量%)
・複素環式化合物(2)
1-イソブチル-2-メチルイミダゾール(エボニック ジャパン株式会社製、製品名:NICM)
・比較用樹脂化触媒(1)
N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(東ソー株式会社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-TT)
【0064】
〔発泡剤〕
・ハイドロフルオロオレフィン(ハネウェルジャパン株式会社製、製品名:Solstice LBA、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)
・水
〔整泡剤〕
シリコーン系整泡剤(東レダウコーニング社製、製品名:SH-193、オクタメチルシクロテトラシロキサン)
【0065】
〔難燃剤〕
トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学工業株式会社製、製品名:TMCPPという。)
〔無機充填剤〕
ケイ酸カルシウム(キンセマテック株式会社製、製品名:SH1250)
【0066】
<実施例1~9、比較例1~3>
表1に示した配合にしたがって各成分の合計量が10Lになるようにホモディスパーを用いて回転速度3600rpmにて10分間撹拌することによりポリオール含有組成物を調製した。
【0067】
<ハイドロフルオロオレフィン存在下での安定性>
まず、前記方法により調製したポリオール含有組成物とポリイソシアネートとを表1に記載の配合にしたがってホモディスパーで混合し、得られた混合物について下記要領でクリームタイムとゲルタイムとを測定した。
次に、対比用として前記方法により別途調製したポリオール混合液を耐圧容器に入れ、60℃の恒温槽で3日間保管した。次いで、このポリオール混合液とポリイソシアネートとをホモディスパーで混合し、得られた混合物について下記要領でクリームタイムとゲルタイムとを測定した。
ポリオール含有組成物を3日間恒温槽で保管せずに調製した場合の測定結果と、保管後の測定結果とを比較した。両者の差が、クリームタイムとゲルタイムのいずれも1割未満であった場合を「5」、いずれも2割未満の場合を「4」、いずれも3割未満の場合の場合を「3」、いずれも4割未満の場合の場合を「2」、それ以外の場合を「1」と評価した。結果を表1に示す。
【0068】
〔クリームタイム〕
クリームタイムとはポリオール含有組成物とイソシアネートを撹拌混合し始めてから、混合物がクリーム状に白濁するまでの時間(秒)をいう。
〔ゲルタイム〕
ゲルタイムとは反応原液を混合してから発泡中のフォームに突き刺した棒に、フォームが糸を引くようになるまでの時間(秒)をいう。
【0069】
<横伸び>
前記方法により調製したポリウレタン樹脂組成物をL字基材(石膏ボード)に対して低温下(0℃)で吹付施工した。吹付施工から1日経過した後、ポリウレタン樹脂と基材との界面を観察し、剥離が全く発生していない場合を「5」、剥離している面積が1割未満の場合を「4」、剥離している面積が3割未満の場合を「3」、剥離している面積が5割未満の場合を「2」、剥離している面積が5割以上の場合を「1」として評価した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
※表1において、カルボン酸アンモニウム塩の質量部、及び複素環式化合物(1)の質量部は、それぞれエチレングリコールとの混合物の配合量を示す。
【0072】
全ての実施例及び比較例において、ポリオール含有組成物に対するポリイソシアネートの体積比は1であった。
【0073】
以上の実施例の結果から明らかなように、本発明のポリオール含有組成物によれば、触媒として特定のカルボン酸アンモニウム塩と窒素原子を有する複素環式化合物とを併用すると、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを用いた場合であっても、安定性が良好で、横伸びも十分に防げた。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、ポリオール、下記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩、下記一般式(2)で表されるイミダゾール誘導体、ハイドロフルオロオレフィン、及び整泡剤を含有するポリオール含有組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。また、Mは4級アンモニウムイオンを表す。)
【化2】
(一般式(2)中、R 及びR は、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【請求項2】
前記カルボン酸アンモニウム塩の配合量が、前記ポリオール100質量部に対して1~22質量部である、請求項1に記載のポリオール含有組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるMがテトラメチルアンモニウムイオンである、請求項1又は2に記載のポリオール含有組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)で表されるカルボン酸アンモニウム塩が、2,2-ジメチルプロパン酸アンモニウム塩である、請求項1~のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項5】
前記イミダゾール誘導体の配合量が、ポリオール100質量部に対して1~23質量部である、請求項1~のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項6】
前記イミダゾール誘導体が1,2-ジメチルイミダゾールである、請求項1~のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとの反応生成物である、ポリウレタンフォーム。
【請求項8】
イソシアネートインデックスが200以上である、請求項に記載のポリウレタンフォーム。