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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126140
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】樹脂被覆ガラス及び表示デバイス
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20240912BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20240912BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240912BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240912BHJP
   G09F 9/00 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
B32B17/10
H10K77/10
H10K59/10
G09F9/30 308Z
G09F9/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034335
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 敬造
(72)【発明者】
【氏名】大橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】井上 欣彦
【テーマコード(参考)】
3K107
4F100
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC41
3K107DD12
3K107DD17
3K107FF02
3K107FF14
3K107FF15
4F100AA01D
4F100AA20D
4F100AG00A
4F100AH02B
4F100AH03B
4F100AH06D
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK25C
4F100AK41B
4F100AK52E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100DE01D
4F100EJ67D
4F100GB41
4F100JB13C
4F100JB13D
4F100JB16B
4F100JK04
4F100JK10
4F100JK12
4F100JK12B
4F100JK12C
4F100JK12D
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
5C094AA33
5C094AA36
5C094BA25
5C094BA27
5C094DA07
5C094ED01
5G435AA09
5G435AA12
5G435BB04
5G435BB05
5G435GG43
5G435HH05
(57)【要約】
【課題】
衝撃耐性が高く、折り曲げ耐性が良好である樹脂被覆ガラスを提供することを目的とする。
【解決手段】
厚みが10μm以上100μm以下のガラス基板(A)の表面に、少なくとも樹脂膜(B)及び樹脂膜(D)を前記ガラス基板(A)の表面からこの順で有する樹脂被覆ガラスであって、
樹脂膜(B)と樹脂膜(D)の間に樹脂膜(C)を有し、
前記樹脂膜(B)の膜厚をTb(μm)、前記樹脂膜(C)の膜厚をTc(μm)としたときに、以下の(1)式及び(2)式の関係を満たす、樹脂被覆ガラス。
15μm≦Tb+Tc≦30μm (1)
0.5≦Tc/Tb≦1.5 (2)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが10μm以上100μm以下のガラス基板(A)の表面に、少なくとも樹脂膜(B)及び樹脂膜(D)を前記ガラス基板(A)の表面からこの順で有する樹脂被覆ガラスであって、
樹脂膜(B)と樹脂膜(D)の間に樹脂膜(C)を有し、
前記樹脂膜(B)の膜厚をTb(μm)、前記樹脂膜(C)の膜厚をTc(μm)としたときに、以下の(1)式及び(2)式の関係を満たす、樹脂被覆ガラス。
15μm≦Tb+Tc≦30μm (1)
0.5≦Tc/Tb≦1.5 (2)
【請求項2】
前記樹脂膜(B)が熱可塑性樹脂、前記樹脂膜(C)が熱硬化性樹脂、並びに前記樹脂膜(D)が熱硬化性樹脂及び無機粒子(G)を含む請求項1に記載の樹脂被覆ガラス。
【請求項3】
前記樹脂膜(D)の膜厚をTd(μm)としたときに、以下の(3)式の関係を満たす、請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス。
3μm≦Td≦10μm (3)
【請求項4】
前記樹脂膜(B)に含まれる熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂を含む、請求項2に記載の樹脂被覆ガラス。
【請求項5】
前記樹脂膜(B)がカルボジイミド化合物を含む、請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス。
【請求項6】
前記樹脂膜(C)に含まれる熱硬化性樹脂が(メタ)アクリル樹脂を含む、請求項2に記載の樹脂被覆ガラス。
【請求項7】
前記樹脂膜(D)に含まれる無機粒子(G)として1次粒子径が30~60nmの無機粒子および/または1次粒子径が5~20nmの無機粒子を含む、請求項2に記載の樹脂被覆ガラス。
【請求項8】
前記無機粒子(G)が、(メタ)アクリロイル基を持つシランカップリング剤で修飾したシリカ粒子を含む、請求項2に記載の樹脂被覆ガラス。
【請求項9】
前記樹脂膜(D)100重量部に対して、前記無機粒子(G)の含有量が40~60重量部である、請求項2に記載の樹脂被覆ガラス。
【請求項10】
65℃における、前記樹脂膜(B)のビッカース硬度をHVb、樹脂膜(C)のビッカース硬度をHVc及び樹脂膜(D)のビッカース硬度をHVdとしたときに、以下の(4)式及び(5)式の関係を満たす、請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス。
2.0≦HVc/HVb≦3.0 (4)
1.5≦HVd/HVc≦5.0 (5)
【請求項11】
前記樹脂膜(B)、前記樹脂膜(C)及び前記樹脂膜(D)が前記ガラス基板(A)の表面からこの順で有する前記ガラス基板(A)の表面とは反対の表面に樹脂膜(H)を有する、請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス。
【請求項12】
前記樹脂膜(H)がシロキサン樹脂を含有する、請求項11に記載の樹脂被覆ガラス。
【請求項13】
請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラスを具備する表示デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂被覆ガラス及びそれを用いた表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス(以下有機EL)やマイクロLED発光体を有する表示デバイスが注目されている。これらの表示デバイスは、自発光性素子であることから、視野角が広く、バックライトを必要とせず薄型化が可能であり、消費電力が抑えられ、且つ応答速度が速いといった特徴を有している。
【0003】
また、ウェアラブル端末、スマートフォン、タブレット等の各種表示端末は、フレキシブル性を有し、折り畳みが可能なフレキシブル性を有するフォルダブルデバイスの検討が盛んに行われている。フォルダブルデバイスは、ディスプレイや筐体を保護するためのカバーガラスを湾曲可能な程度に薄型化するとともに、表示装置の基材として用いられるガラス基板についても、ガラス基板を薄膜化しても、衝撃耐性が低下しにくく、折り曲げ耐性と衝撃耐性との両立が求められている。
【0004】
また、ガラス基板の衝撃耐性を向上するため、衝撃を吸収するための膜を積層した場合、湿熱試験後の品位が良好であることが求められている。
【0005】
特許文献1では、強化ガラス基板の少なくとも片面に、シロキサン樹脂およびシリカ粒子を含有するガラス強化材料の架橋物からなる膜厚が0.5~10μm、波長400nmにおける透過率が90%以上の硬化膜を有するガラス強化基板が記載され、ガラス強度および透過率の両立が図れる効果が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、ガラス基材と、接合層と、ハードコートフィルムと、をこの順に有し、上記ハードコートフィルムが、上記接合層側から、基材層と、ハードコート層とを有し、上記接合層は、上記ガラス基材と上記基材層とを接合する層構成であり、各層間での厚さを一定関係とし、さらには、各層の複合弾性率と厚さと一定の関係に規定したガラス基材を有する積層体が記載され、これにより、耐屈曲性および衝撃耐性が良好であり、安全性が向上する効果が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-214492号公報
【特許文献2】特開2022-74108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フォルダブルデバイス等は、ディスプレイや筐体を保護するための基材を湾曲可能な程度に薄型化する必要があり、そうすると、厚さが薄いガラス基板は、衝撃耐性が低下してガラスが割れ易くなる。一方、衝撃耐性を改善するため、超薄板ガラス基板を厚くすると、折り曲げ耐性が悪化するという問題があり、衝撃耐性と折り曲げ耐性の両立が困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、衝撃耐性が高く、折り曲げ耐性が良好で、高い透明性を有し、湿熱耐性が良好な樹脂被覆ガラス及びそれを用いた表示デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成が極めて有効であることを見出し、本発明を完成した。
[1]厚みが10μm以上100μm以下のガラス基板(A)の表面に、少なくとも樹脂膜(B)及び樹脂膜(D)を前記ガラス基板(A)の表面からこの順で有する樹脂被覆ガラスであって、
樹脂膜(B)と樹脂膜(D)の間に樹脂膜(C)を有し、
前記樹脂膜(B)の膜厚をTb(μm)、前記樹脂膜(C)の膜厚をTc(μm)としたときに、以下の(1)式及び(2)式の関係を満たす、樹脂被覆ガラス。
15μm≦Tb+Tc≦30μm (1)
0.5≦Tc/Tb≦1.5 (2)
[2]前記樹脂膜(B)が熱可塑性樹脂、前記樹脂膜(C)が熱硬化性樹脂、並びに前記樹脂膜(D)が熱硬化性樹脂及び無機粒子(G)を含む[1]に記載の樹脂被覆ガラス。
[3]前記樹脂膜(D)の膜厚をTd(μm)としたときに、以下の(3)式の関係を満たす、[1]または[2]に記載の樹脂被覆ガラス。
3μm≦Td≦10μm (3)
[4]前記樹脂膜(B)に含まれる熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂を含む、[2]~[3]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス。
[5]前記樹脂膜(B)がカルボジイミド化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス。
[6]前記樹脂膜(C)に含まれる熱硬化性樹脂が(メタ)アクリル樹脂を含む、[2]~[5]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス。
[7]前記樹脂膜(D)に含まれる無機粒子(G)として1次粒子径が30~60nmの無機粒子および/または1次粒子径が5~20nmの無機粒子を含む、[2]~[6]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス。
[8]前記無機粒子(G)が、(メタ)アクリロイル基を持つシランカップリング剤で修飾したシリカ粒子を含む、[2]~[7]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス。
[9]前記樹脂膜(D)100重量部に対して、前記無機粒子(G)の含有量が40~60重量部である、[2]~[8]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス。
[10]65℃における、前記樹脂膜(B)のビッカース硬度をHVb、樹脂膜(C)のビッカース硬度をHVc及び樹脂膜(D)のビッカース硬度をHVdとしたときに、以下の(4)式及び(5)式の関係を満たす、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス。
2.0≦HVc/HVb≦3.0 (4)
1.5≦HVd/HVc≦5.0 (5)
[11]前記樹脂膜(B)、前記樹脂膜(C)及び前記樹脂膜(D)がこの順に積層されている前記ガラス基板(A)の表面とは反対の表面に樹脂膜(H)を有する、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス。
[12]前記樹脂膜(H)がシロキサン樹脂を含有する、[11]に記載の樹脂被覆ガラス。
[13][1]~[12]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラスを具備する表示デバイス。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、衝撃耐性が高く、折り曲げ耐性が良好で、高い透明性を有し、湿熱耐性が良好な樹脂被覆ガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る樹脂被覆ガラス1の側面断面図である。
図2】本発明に係る樹脂被覆ガラス1の別の態様の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を更に詳細に説明する。
以下、実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は図や実施例に何ら限定されるものではない。
また、本願において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
本発明の樹脂被覆ガラス1は、図1の側面断面図に示すように、厚みが10μm以上100μm以下のガラス基板(A)2の表面6に、少なくとも樹脂膜(B)3及び樹脂膜(D)5をガラス基板(A)2の表面6からこの順で有する樹脂被覆ガラス1であって、樹脂膜(B)3と樹脂膜(D)5の間に樹脂膜(C)4を有し、樹脂膜(B)3の膜厚をTb(μm)、樹脂膜(C)4の膜厚をTc(μm)としたときに、以下の(1)式及び(2)式の関係を満たす、樹脂被覆ガラスである。
15μm≦Tb+Tc≦30μm (1)
0.5≦Tc/Tb≦1.5 (2)
これにより、樹脂被覆ガラスはフレキシブル性を持ちながら、衝撃耐性を高めるとともに、湿熱耐性を向上させることができる。
【0015】
ガラス基板(A)の厚みを10~100μmとすることで、フレキシブル性を保持することができるが、ガラスの衝撃耐性が不足する場合がある。そこで、ガラス基板(A)の表面に樹脂膜(B)を有することで、樹脂被覆ガラスの衝撃耐性を高めることができる。さらに、樹脂膜(B)と樹脂膜(D)の間に樹脂膜(C)を有することにより、湿熱耐性を高めることができる。さらに、樹脂膜(C)の上に樹脂膜(D)を有することにより、堅牢性を引き出すことができる。
【0016】
ガラス基板(A)は厚みを10μm以上とすることによりガラスの衝撃耐性を高めることができ、また、100μm以下とすることにより折り曲げ耐性を高めることができる。ガラス基板(A)の厚みは、好ましくは20~80μm、より好ましくは30~70μm、さらに好ましくは40~60μmである。
【0017】
また、樹脂膜(B)の膜厚Tbと樹脂膜(C)の膜厚Tcの合計Tb+Tcを15μm以上とすることにより、樹脂被覆ガラスの衝撃耐性をより向上させることができ、また、30μm以下とすることにより、樹脂被覆ガラスの折り曲げ耐性をより向上させることができる。Tb+Tcは、好ましくは17~28μm、より好ましくは19~26μmである。
【0018】
また、TcをTbで除したTc/Tbを0.5~1.5とすることで、樹脂被覆ガラスの湿熱試験耐性を向上させることができる。Tc/Tbは、好ましくは0.6~1.4、より好ましくは0.7~1.3、さらに好ましくは0.8~1.2である。本発明におけるガラス基板(A)は、特に限定はされず、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。アルミノシリケートガラスを用いる場合には、SiO(二酸化ケイ素)、Al(酸化アルミニウム)、Naイオンと交換されるLiO(酸化リチウム)や、Kイオンと交換されるNaO(酸化ナトリウム)等が含有されたものを挙げることができる。折り曲げ耐性の観点から、強化ガラスであることが好ましい。ここでいう強化ガラスとは、強化処理されたガラス基板を指し、ガラス表面に圧縮応力層を有することが好ましい。
【0019】
圧縮応力層の形成方法としては、例えば、加熱と冷却によるガラスの膨張と収縮を利用する物理強化法、ガラス中のアルカリイオンをよりイオン半径の大きな他のアルカリイオンと交換する化学強化法等が知られている。これらの方法はいずれも公知であり、任意の方法を選択することができる。タッチパネルのカバーガラス等の薄い強化ガラス基板の場合、化学強化法により強化処理されたガラス、いわゆる化学強化ガラスが好ましい。
化学強化ガラスの中でも、アルミノシリケート化学強化ガラス、ソーダライム化学強化ガラス等がより好ましい。
【0020】
非強化のガラス基板(A)としては、例えば、“AF32(登録商標)”ecoシリーズ(Schott社製)、“Corning(登録商標)”、“Willow(登録商標)”Glassシリーズ(CORNING社製)、“G-Leaf(登録商標)”シリーズ(日本電気硝子(株)製)、“SPOOL(登録商標)”シリーズ(AGC(株)製)等が挙げられる。
【0021】
化学強化されたガラス基板(A)としては、例えば、“Xensation(登録商標)”シリーズ(Schott社製)、“Corning(登録商標)”、“Gorilla(登録商標)”Glassシリーズ(CORNING社製)、“Dinorex(登録商標)”シリーズ(日本電気硝子(株)製)、“Dragontrail(登録商標)”(AGC(株)製)シリーズ等が挙げられる。
【0022】
また、本発明において、樹脂膜(B)が熱可塑性樹脂、樹脂膜(C)が熱硬化性樹脂、並びに樹脂膜(D)が熱硬化性樹脂及び無機粒子(G)を含むことが好ましい。樹脂膜(C)は無機粒子(G)を含まないことが好ましい。樹脂膜(C)が無機粒子(G)を含まないことにより、樹脂膜(C)と樹脂膜(D)では膜質の違いが発生するため、良好な湿熱耐性を得ることができる。樹脂膜(C)の熱可塑性樹脂の含有量は、全固形分中1重量%以下であることが好ましい。ここで、全固形分とは、樹脂膜中における、溶媒以外の全成分をいう。熱可塑性樹脂の含有量が1重量%以下であることにより、樹脂膜(C)と樹脂膜(B)では膜質の違いが発生するため、良好な湿熱耐性を得ることができる。
【0023】
ガラス基板(A)の表面に熱可塑性樹脂を含む樹脂膜(B)を有することで、熱可塑性樹脂の柔軟性により、より樹脂被覆ガラスの衝撃耐性をより高めることができ、さらに、樹脂膜(B)と樹脂膜(D)の間に熱硬化性樹脂を含む樹脂膜(C)を有することで熱硬化性樹脂の堅牢性により、より湿熱耐性を高めることができ、さらに、熱硬化性樹脂及び無機粒子(G)を含む樹脂膜(D)を樹脂膜(C)の上に有することで、熱硬化性樹脂により堅牢性を引き出すとともに、無機粒子(G)により表面硬度をより高めることができる。
【0024】
また、本発明において、樹脂膜(D)の膜厚を膜厚Td(μm)としたときに、以下の(3)式の関係を満たす、樹脂被覆ガラスであることが好ましい。
3μm≦Td≦10μm (3)
また、樹脂膜(D)の膜厚Tdを3μm以上とすることにより、樹脂被覆ガラスの表面硬度をより向上させることができる。また、10μm以下とすることにより、樹脂被覆ガラスの折り曲げ耐性をより向上させることができる。Tdは、好ましくは4~8μm、より好ましくは5~6μmである。
【0025】
本発明において、ガラス基板上に樹脂膜等を形成する場合において、ガラス基板に塗布する前の樹脂を含有する混合物は樹脂組成物、樹脂組成物を塗布して膜を形成した際、紫外線、可視光線等の化学線の照射や、加熱により固化または硬化した膜を樹脂膜という。
【0026】
本発明における樹脂膜(B)としては、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
また、樹脂膜(B)に含まれる熱可塑性樹脂の具体例としては、熱可塑性フッ素樹脂、熱可塑性ポリエーテルサルホン樹脂、熱可塑性ポリカーボネート樹脂、熱可塑性(メタ)アクリル酸エステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリサルホン樹脂、熱可塑性ポリエーテルイミド樹脂、熱可塑性ポリエーテルエーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリエーテルシリコン樹脂、熱可塑性ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリエチレンナフタレート、熱可塑性ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリフェニレンサルファイド樹脂等が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、樹脂被覆ガラスの衝撃耐性と透明性の観点から、熱可塑性ポリエステル樹脂、または熱可塑性(メタ)アクリル酸エステル樹脂が好ましい。これらは、単独又は2種類以上が混ざっていても良い。
【0028】
また、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)に含まれる熱硬化性樹脂の具体例としては、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂、熱硬化性シリコーン樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性ユリア樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、熱硬化性ビニル系樹脂、熱硬化性ブタジエン樹脂、熱硬化性ネオプレン樹脂、熱硬化性スチレン樹脂、熱硬化性アクリロニトリル樹脂等が挙げられ、単体あるいは2種類以上の異なる樹脂をブレンドまたは共重合されていても良い。
【0029】
また、樹脂膜(D)に含まれる無機粒子(G)としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物粒子、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物粒子等が挙げられ、これらの中でも、衝撃耐性を向上しやすい観点から、シリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子が好ましく、シリカ粒子が特に好ましい。
【0030】
また、本発明において、樹脂膜(B)に含まれる熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
ポリエステル樹脂を使用することにより、樹脂被覆ガラスの衝撃耐性と透明性を向上させることができる。
【0031】
ポリエステル樹脂としては、例えば、バイロン200(バイロンは、東洋紡(株)の登録商標)、バイロン220、バイロン226、バイロン240、バイロン270、バイロン290、バイロン660、バイロン802、バイロン882、バイロン885、バイロンGK-250、バイロンGK-360、バイロンGK-880、バイロン103、バイロン600、バイロンGK-800、バイロンGK-810(以上、商品名、東洋紡(株)製)等が挙げられる。
【0032】
また、本発明において、樹脂膜(B)がカルボジイミド化合物を含むことが好ましい。
カルボジイミド化合物を使用することにより、湿熱耐性を向上させることができる。
カルボジイミド化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な湿熱耐性のために、分子内に2つ以上のカルボジイミド構造を有するポリカルボジイミド化合物がより好ましい。カルボジイミド化合物は、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、およびカルボジライト等が挙げられる。カルボジイミド化合物として、日清紡ケミカル社製のカルボジライトシリーズ(SV-02、V-02、V-02B、V-02-L2、V-04、V-04PF、E-01、E-02、V-01、V-03、V-07、V-09、V-05)等が使用できる。
【0033】
また、本発明において、樹脂膜(C)に含まれる熱硬化性樹脂が(メタ)アクリル樹脂を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂を使用することにより、湿熱耐性をより向上させることができる。(メタ)アクリル樹脂は、アクリル樹脂やメタクリル樹脂を含めた総称である。
【0034】
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、(メタ)アクリル系樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和基を有することが好ましく、湿熱耐性をより向上させることができる。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が好ましい。(メタ)アクリル樹脂の側鎖にエチレン性不飽和基を導入する方法としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂が有するカルボキシル基または水酸基に対し、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物、アクリル酸またはメタクリル酸クロライドを付加反応させる方法等が挙げられる。ここで、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、α-エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、N-(3,5-ジメチル-4-グリシジル)ベンジルアクリルアミド、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0035】
また、本発明において、樹脂膜(D)に含まれる無機粒子(G)は、1次粒子径が30~60nmの無機粒子(G1)および/または1次粒子径が5~20nmの無機粒子(G2)を含むことが好ましい。
無機粒子を含有することにより、樹脂膜(D)の表面硬度を向上させることができ、樹脂被覆ガラスの表面硬度と折り曲げ耐性を高いレベルで両立することができる。
【0036】
1次粒子径が30nm以上の大きさの無機粒子(G1)を使用することにより、表面硬度が良好な樹脂膜(D)を得ることができる。また、1次粒子径が60nm以下の大きさの無機粒子(G1)を使用することにより、折り曲げ耐性が良好な樹脂膜(D)を得ることができる。
また、1次粒子径が5nm以上の大きさの無機粒子(G2)を使用することにより、擦傷性が良好な樹脂膜(D)を得ることができる。また、1次粒子径が20nm以下の大きさの無機粒子(G2)を使用することにより、透明性が良好な樹脂膜(D)を得ることができる。
【0037】
さらに、1次粒子径が30~60nm無機粒子(G1)及び1次粒子径が5~20nmの無機粒子(G2)を併用することにより、無機粒子(G1)の隙間に無機粒子(G2)が充填されて緻密な構造を形成することにより、より表面硬度が高い樹脂膜(D)を得ることができる。
【0038】
無機粒子(G1)の1次粒子径は、好ましくは35~55nm、より好ましくは40~50nm、さらに好ましくは42~48nmである。また、無機粒子(G2)の1次粒子径は、好ましくは8~18nm、より好ましくは10~16nmである。
ここで1次粒子径とは、凝集形態にある粒子の直径ではなく、個々に分離した時の1個の粒子の直径であり、電子顕微鏡によって測定する事ができる。
【0039】
また、本発明において、樹脂膜(D)100重量部に対して、無機粒子(G)の含有量が40~60重量部であることが好ましい。
無機粒子(G)の含有量を40重量%以上とすることにより、樹脂被覆ガラスの表面硬度をより向上させることができる。無機粒子(G)の含有量を60重量%以下とすることにより、樹脂被覆ガラスの折り曲げ耐性をより向上させることができる。
【0040】
無機粒子(G)の含有量は、より好ましくは42~58重量部、より好ましくは46~54重量部、さらに好ましくは48~52重量部である。
シリカ粒子を含有することにより、樹脂被覆ガラスの表面硬度と折り曲げ耐性を高いレベルで両立することができる。
【0041】
シリカ粒子としては、例えば、sicastar(コアフロント(株)製)、“レオロシール(登録商標)”((株)トクヤマ製)等が挙げられる。これらを、ビーズミル等の分散機を用いて粉砕または分散させて用いてもよい。シリカ粒子の分散液としては、例えば、IPA-ST、MIBK-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、PGM-ST、PMA-ST(いずれも日産化学工業(株)製)、“オスカル(登録商標)”101、“オスカル”105、“オスカル”106、“カタロイド(登録商標)”-S(いずれも日揮触媒化成(株)製)、“クォートロン(登録商標)”PL-1-IPA、PL-1-TOL、PL-2L-PGME、PL-2L-MEK、PL-2L、GP-2L(いずれも扶桑化学工業(株)製)等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0042】
また、本発明において、前記無機粒子(G)が、(メタ)アクリロイル基を持つシランカップリング剤で修飾したシリカ粒子を含むことが好ましい。
【0043】
(メタ)アクリロイル基を持つシランカップリング剤で修飾したシリカ粒子としては、例えば、MEK-AC-2140Z、MEK-AC-4130Y、MIBK-AC-2140Z、MIBK-SD-L、PGM-AC-2140Y、PGM-AC-3140Y、PGM-AC-4130Y(いずれも日産化学工業(株)製)等が挙げられる。これらを2種以上含有しても良い。
これにより、熱硬化性樹脂が(メタ)アクリル樹脂を含む場合、(メタ)アクリル樹脂のエチレン性不飽和基と、シリカ粒子の(メタ)アクリロイル基とが重合反応により架橋し、(メタ)アクリル系樹脂とシリカ樹脂の架橋度を高め、樹脂被覆ガラスの表面硬度をより向上させることができる。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γーメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
導入される(メタ)アクリロイル基としては、反応性に優れる点でアクリロイルオキシ基が好ましい。また、アクリロイルオキシ基と共に、(メタ)アクリロイルオキシ基やα-フルオロアクリロイルオキシ基等を導入することもできる。重合性反応基とポリシロキサン骨格との間の結合方式としては、従来公知の結合方式、例えば(ポリ)エーテル型、(ポリ)エステル型、(ポリ)エステル型と(ポリ)ウレタン型とを組み合わせた結合方式、(ポリ)エーテル型と(ポリ)ウレタン型とを組み合わせた結合方式、(ポリ)エステル型と(ポリ)エーテル型とを組み合わせた結合方式等の全てを採用することができる。
【0045】
また、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)は、熱硬化性樹脂としてラジカル重合性基を2個以上有する化合物を含有することが好ましい。ラジカル重合性基を2個以上有する化合物を含有することにより、表面硬度をより向上させることができる。
【0046】
ラジカル重合性基を2個以上有する化合物としては、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。多官能(メタ)アクリレートとは、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物のことであり、例えば、2,2-[9H-フルオレン-9,9-ジイルビス(1,4-フェニレン)ビスオキシ]ジエタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート等の2つの(メタ)アクリレート基を有する化合物;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のアクリル酸エステル、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートこれらのアルキル変性物、アルキルエーテル変性物やアルキルエステル変性物等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0047】
樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)は、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤とは、光(紫外線又は電子線を含む)により分解および/または反応し、ラジカルを発生させる化合物をいう。光重合開始剤を含有することにより、光照射で硬化することができるため、表面硬度をより向上させることができる。光重合開始剤としては、ベンジルケタール系化合物、α―ヒドロキシアセトフェノン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物等が挙げられるベンジルケタール系としては、2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オン、α-ヒドロキシアセトフェノン系としは、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシー2-メチル-1-フェニルプロパノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシー1-(4-(4-(2-ヒドロキシー2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパンー1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、市販品としては“Omnirad”184、“Omnirad”1173、“Omnirad”2959や“Omnirad”127(商品名:iGM社製、α-ヒドロキシアセトフェノン系)等がある
樹脂膜(B)、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)として好適な組成物は、塗布性の観点から溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アセテート系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、ラクトン系溶媒等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。また、キシレン、エチルベンゼン、ソルベントナフサ等の溶媒を併用してもよい。
【0048】
エステル系溶媒としては、例えば、ベンジルアセテート、エチルベンゾエート、γ-ブチロラクトン、メチルベンゾエート、マロン酸ジエチル、2-エチルヘキシルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテート、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、3-メトキシ-ブチルアセテート、アセト酢酸メチル、エチル-3-エトキシプロピオネート、2-エチルブチルアセテート、イソペンチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸ペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル等が挙げられる。これらの中でも、3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート等のプロピオン酸エステル系溶媒が好ましく、3-メトキシ-ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。
【0049】
エーテル系溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0050】
アルコール系溶媒としては、例えば、ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0051】
ラクトン系溶媒としては、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等が挙げられる。
樹脂膜(B)、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)は、その他の添加剤を含有しても構わない。その他の添加剤としては、例えば、密着改良剤、界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0052】
密着改良剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
【0053】
界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;含フッ素熱分解性界面活性剤;ポリエーテル変性シロキサン系界面活性剤;ポリアルキレンオキシド系界面活性剤;ポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤;ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等の陰イオン界面活性剤;ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレート等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0054】
これらの中でも、はじき等の塗布性不良を抑制するとともに、表面張力を低減し塗膜乾燥時のムラを抑制する観点から、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、含フッ素熱分解性界面活性剤、ポリエーテル変性シロキサン系界面活性剤が好ましい。含フッ素熱分解性界面活性剤がより好ましい。
【0055】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、“メガファック(登録商標)”F142D、同F172、同F173、同F183、同F445、同F470、同F475、同F477(以上、DIC(株)製)、NBX-15、FTX-218((株)ネオス製)等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、“BYK(登録商標)”-333、BYK-301、BYK-331、BYK-345、BYK-307(ビックケミー・ジャパン(株)製)等が挙げられる。含フッ素熱分解性界面活性剤の市販品としては、例えば、“メガファック(登録商標)”DS-21(DIC(株)製)等が挙げられる。ポリエーテル変性シロキサン系界面活性剤の市販品としては、例えば、“BYK(登録商標)”-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、“シルフェイス(登録商標)”SAG002、同SAG005、同SAG0503A、同SAG008(以上、日信化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0056】
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン系またはカテコール系の重合禁止剤が挙げられる。ヒドロキノン系重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)ヒドロキノン等が挙げられる。カテコール系重合禁止剤としては、例えば、カテコール、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。
【0057】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0058】
また、本発明において、65℃における、樹脂膜(B)のビッカース硬度をHVb、樹脂膜(C)のビッカース硬度をHVc及び樹脂膜(D)のビッカース硬度をHVdとしたときに、以下の(4)式及び(5)式の関係を満たすことが好ましい。
2.0≦HVc/HVb≦3.0 (4)
1.5≦HVd/HVc≦5.0 (5)
(4)式及び(5)式の関係を満たすことで、樹脂被覆ガラスは良好な湿熱耐性を得ることができる。
【0059】
HVc/HVbは、好ましくは2.2≦HVc/HVb≦2.8、さらに好ましくは、2.3≦HVc/HVb≦2.7、さらに好ましくは、2.4≦HVc/HVb≦2.6である。
また、HVc/HVbは、好ましくは2≦HVd/HVc≦4.5、より好ましくは、2.5≦HVd/HVc≦4、さらに好ましくは、2.8≦HVd/HVc≦3.5である。
【0060】
また、樹脂膜(B)、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)のビッカース硬度を、2≦HVc/HVb≦3及び1.5≦HVd/HVc≦5の関係に保持するためには、樹脂膜(B)に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)の架橋密度、樹脂膜(D)中の無機粒子の添加量等を調整することにより達成できる。ビッカース硬度は、ユニバーサル硬度計を用いて、JIS Z 2255:2003に準拠し、厚さ0.5mmの無アルカリガラス上に厚さ10μmの膜を作製し、所望の試験温度をかけながら、加重は5mN、加圧時間は10sec、保持時間は負荷、除荷後ともに5secの条件の下で測定することができる。
【0061】
また、本発明において、樹脂膜(B)、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)が前記ガラス基板(A)の表面からこの順で有するガラス基板(A)の表面とは反対の表面に樹脂膜(H)を有することが好ましい
図2の側面断面図に、ガラス基板(A)2の表面6に樹脂膜(B)3、樹脂膜(C)4及び樹脂膜(D)5が前記ガラス基板(A)2の表面6からこの順で有し、ガラス基板(A)2の表面6とは反対の表面8に樹脂膜(H)7を有した樹脂被覆ガラス1を示す。
ガラス基板(A)の表面から樹脂膜(B)、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)をこの順で有することで、高い衝撃耐性、高い表面硬度、良好な湿熱耐性という効果を奏することができ、かつ反対の表面に樹脂膜(H)を有することで、良好な折り曲げ耐性を得ることができ、樹脂被覆ガラスの衝撃耐性を高めるとともに、耐折り曲げ性を高められ、フレキシブル性を向上させることができる。
【0062】
本発明における樹脂膜(H)はシロキサン樹脂を含有することが好ましい。
本発明におけるシロキサン樹脂とは、シロキサン骨格を有する繰り返し単位を有するポリマーを言い、オルガノシラン化合物の加水分解縮合物が好ましい。ただし、シロキサン樹脂がオキセタニル基を有する場合は、後述する「オキセタニル基を有するシロキサン化合物」に分類するものとする。
本発明におけるシロキサン樹脂の重量平均分子量は、塗布性を向上させる観点から、2,000~7,000が好ましい。
【0063】
本発明におけるシロキサン樹脂のフェニル基の含有率は、シロキサン樹脂中の全Si原子に対して5~60モル%であることが好ましい。膜ストレスを緩和し、樹脂被覆膜を付けたガラス基板の折り曲げ耐性をより向上させる観点から、シロキサン樹脂中のフェニル基の含有率が、シロキサン樹脂中の全Si原子に対して5モル%以上であることが好ましい。樹脂膜(H)の架橋度を高め、折り曲げ耐性をより向上させることができる観点から、シロキサン樹脂のフェニル基の含有率は、シロキサン樹脂中の全Si原子に対して60モル%以下であることが好ましい。
【0064】
本発明におけるシロキサン樹脂は、ラジカル重合性基を有することが好ましい。後述する光ラジカル重合開始剤とともにラジカル重合性基を有することにより、光照射により発生するラジカルによるラジカル重合反応の進行により、本発明における樹脂膜(H)の架橋度を高め、ガラスの折り曲げ耐性をより向上させることができる。
【0065】
ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、α-メチルビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。本発明における樹脂膜(H)の架橋度をより高める観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。ラジカル重合性基を有するシロキサン樹脂としては、ラジカル重合性基を有するオルガノシラン化合物の加水分解縮合物が好ましい。ラジカル重合性基を有するオルガノシラン化合物と、その他のオルガノシラン化合物との加水分解縮合物でもよい。ラジカル重合性基を有するオルガノシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、p-スチリルメチルジメトキシシラン、p-スチリルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらのうち、樹脂膜(H)の架橋度をより高めて、ガラス基板の折り曲げ耐性をより向上させる観点から、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0066】
その他のオルガノシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0067】
本発明におけるシロキサン樹脂は、オルガノシラン化合物を加水分解縮合することにより得ることができる。例えば、オルガノシラン化合物を加水分解した後、得られるシラノール化合物を溶媒の存在下または無溶媒で縮合反応させることによって得ることができる。
【0068】
加水分解反応の各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状等を考慮して適宜設定することができる。例えば、溶媒中、オルガノシラン化合物に酸触媒および水を1~180分間かけて添加した後、室温~110℃で1~180分間反応させることが好ましい。このような条件で加水分解反応を行うことにより、急激な反応を抑制することができる。反応温度は、より好ましくは30~105℃である。
【0069】
加水分解反応は、酸触媒の存在下で行うことが好ましい。酸触媒としては、蟻酸、酢酸、リン酸を含む酸性水溶液が好ましい。酸触媒の添加量は、加水分解反応時に使用される全オルガノシラン化合物100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましい。酸触媒の量を上記範囲とすることにより、加水分解反応をより効率的に進めることができる。
【0070】
オルガノシラン化合物の加水分解反応によりシラノール化合物を得た後、反応液をそのまま50℃以上、溶媒の沸点以下で1~100時間加熱し、縮合反応を行うことが好ましい。また、ポリシロキサンの重合度を上げるために、再加熱または塩基触媒添加を行ってもよい。オルガノシラン化合物の加水分解反応およびシラノール化合物の縮合反応に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、1-t-ブトキシ-2-プロパノール、ダイアセトンアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。樹脂膜(H)の透過率、耐クラック性等をより向上させる観点から、ダイアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、γ-ブチロラクトン等が好ましく用いられる。
【0071】
加水分解反応によって溶媒が生成する場合には、無溶媒で加水分解させることも可能である。反応終了後に、さらに溶媒を添加することにより、組成物として適切な濃度に調整することも好ましい。また、目的に応じて加水分解後に、生成アルコール等を加熱および/または減圧下にて適量を留出、除去し、その後好適な溶媒を添加してもよい。
【0072】
加水分解反応において使用する溶媒の量は、全オルガノシラン化合物100重量部に対して80~500重量部が好ましい。溶媒の量を上記範囲とすることにより、加水分解反応をより効率的に進めることができる。
また、加水分解反応に用いる水は、イオン交換水が好ましい。水の量は、シラン原子1モルに対して、1.0~4.0モルが好ましい。
【0073】
樹脂膜(H)におけるシロキサン樹脂の含有量は、樹脂膜(H)の折り曲げ耐性と透明性をより向上させる観点から、全固形分中15重量%以上が好ましく、25重量%以上がより好ましい。一方、樹脂膜(H)の屈曲性をより向上させる観点から、シロキサン樹脂の含有量は、全固形分中90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。
【0074】
樹脂膜(H)として好適な樹脂組成物は、塗布性の観点から、溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有することにより、各成分を均一に溶解することができる。溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、カルボン酸エステル、ケトン、エーテル、アルコール類等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。各成分を均一に溶解し、樹脂組成物の透明性を向上させる観点から、アルコール性水酸基を有する化合物、カルボニル基を有する環状化合物が好ましい。
【0075】
アルコール性水酸基を有する化合物としては、例えば、アセトール、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、5-ヒドロキシ-2-ペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ダイアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール等が挙げられる。これらの中でも、保存安定性の観点から、ダイアセトンアルコール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノールが好ましい。
【0076】
カルボニル基を有する環状化合物の具体例としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等が挙げられる。これらの中でも、γ-ブチロラクトンが特に好ましく用いられる。
脂肪族炭化水素としては、例えば、キシレン、エチルベンゼン、ソルベントナフサ等が挙げられる。
【0077】
カルボン酸エステルとしては、例えば、ベンジルアセテート、エチルベンゾエート、γ-ブチロラクトン、メチルベンゾエート、マロン酸ジエチル、2-エチルヘキシルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテート、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、シクロヘキシルアセテート、3-メトキシ-ブチルアセテート、アセト酢酸メチル、エチル-3-エトキシプロピオネート、2-エチルブチルアセテート、イソペンチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0078】
ケトンとしては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0079】
樹脂膜(H)として好適な樹脂組成物をガラス基板に塗布する際の揮発性および乾燥特性を適度に調整し、塗布性を向上させる観点から、大気圧下における沸点が150℃以上250℃以下の溶媒と、大気圧下における沸点が150℃未満の溶媒を含有することが好ましい。大気圧下における沸点が150℃以上250℃以下の溶媒の沸点は、150℃以上200℃以下がより好ましい。
【0080】
大気圧下における沸点が150℃以上250℃以下の溶媒としては、例えば、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ダイアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、ベンジルアセテート、エチルベンゾエート、メチルベンゾエート、マロン酸ジエチル、2-エチルヘキシルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテート、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、シクロヘキシルアセテート、3-メトキシ-ブチルアセテート、アセト酢酸メチル、エチル-3-エトキシプロピオネート、イソペンチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等が挙げられる。これらの中でも、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ダイアセトンアルコール)、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテート、3-メトキシ-ブチルアセテート、γ-ブチロラクトンが特に好ましく用いられる。
【0081】
大気圧下における沸点が150℃未満の溶媒としては、例えば、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、n-プロピルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ブタノール、イソブタノール、n-プロピルアルコール、酢酸エチル等が挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましく用いられる。
【0082】
樹脂膜(H)は、シリカ粒子を含有することが好ましく、さらに他の成分を含有してもよい。樹脂膜(H)は、シリカ粒子を含有することにより、樹脂被覆ガラスの折り曲げ耐性と透明性を高いレベルで両立することができる。樹脂膜(H)は、シリカ粒子の含有率が、全固形中10重量%以上40重量%以下であることが好ましい。ここで、全固形分とは、樹脂膜中における、溶媒以外の全成分をいう。シリカ粒子の含有率を全固形分中10重量%以上とすることにより、シロキサン樹脂とシリカ粒子とのシラノール縮合反応により架橋を促進し、本発明における樹脂膜(H)の架橋度を高め、樹脂被覆ガラスの折り曲げ耐性をより向上させることができる。また、ガラスと樹脂膜(H)との屈折率差を低減し、樹脂膜(H)の膜厚バラツキに起因するムラを軽減することができる。シリカ粒子の含有率を全固形分中40重量%以下とすることにより、折り曲げ耐性と密着性が良好な樹脂膜(H)を得ることができる。
【0083】
シリカ粒子の粒子径は、本発明における樹脂膜(H)の透明性をより向上させる観点から、1~200nmが好ましく、1~70nmがより好ましい。 シリカ粒子としては、例えば、sicastar(コアフロント(株)製)、“レオロシール(登録商標)”((株)トクヤマ製)等が挙げられる。これらを、ビーズミル等の分散機を用いて粉砕または分散させて用いてもよい。シリカ粒子の分散液としては、例えば、IPA-ST、MIBK-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、PGM-ST、PMA-ST(いずれも日産化学工業(株)製)、“オスカル(登録商標)”101、“オスカル”105、“オスカル”106、“カタロイド(登録商標)”-S(いずれも日揮触媒化成(株)製)、“クォートロン(登録商標)”PL-1-IPA、PL-1-TOL、PL-2L-PGME、PL-2L-MEK、PL-2L、GP-2L(いずれも扶桑化学工業(株)製)等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0084】
樹脂膜(H)は、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましく、ラジカル重合性基を有するシロキサン樹脂と組み合わせることで、本発明における樹脂膜(H)の架橋度を光ラジカル重合反応により高め、折り曲げ耐性をより向上させることができる。
【0085】
この場合、樹脂膜(H)中における光ラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性基の反応を十分に進めて折り曲げ耐性をより向上させる観点から、全固形分中0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。一方、光ラジカル重合開始剤の含有量は、本発明における樹脂膜(H)の透明性をより向上させる観点から、全固形分中20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0086】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、α-アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤やα-ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤等のアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤;アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤;オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤;ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤;オキサントン系光ラジカル重合開始剤;イミダゾール系光ラジカル重合開始剤;ベンゾチアゾール系光ラジカル重合開始剤;ベンゾオキサゾール系光ラジカル重合開始剤;カルバゾール系光ラジカル重合開始剤;トリアジン系光ラジカル重合開始剤;安息香酸エステル系光ラジカル重合開始剤;リン系光ラジカル重合開始剤;チタネート等の無機系光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0087】
これらのうち、本発明における樹脂膜(H)の架橋度を高めて折り曲げ耐性をより向上させる観点から、α-アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤、アミノ基を有するベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、アミノ基を有する安息香酸エステル系光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0088】
α-アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、1-フェニル-1,2-ブタジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)等が挙げられる。アミノ基を有するベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。アミノ基を有する安息香酸エステル系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、2-エチルヘキシル-p-ジメチルアミノベンゾエート、p-ジエチルアミノ安息香酸エチル等が挙げられる。
【0089】
樹脂膜(H)は、さらに、ラジカル重合性基を2個以上有する化合物を含有した樹脂組成物を硬化した膜であることが好ましい。ラジカル重合性基を2個以上有する化合物を含有することにより、シロキサン樹脂に含有されるラジカル重合性基とのラジカル重合反応により、本発明における樹脂膜(H)の架橋度を高めて折り曲げ耐性をより向上させることができる。
ラジカル重合性基としては、シロキサン樹脂が有するラジカル重合性基として例示したものが挙げられる。
【0090】
ラジカル重合性基を2個以上有する化合物としては、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。多官能(メタ)アクリレートとは、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物をいい、例えば、2,2-[9H-フルオレン-9,9-ジイルビス(1,4-フェニレン)ビスオキシ]ジエタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート等の2つの(メタ)アクリレート基を有する化合物;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のアクリル酸エステル、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0091】
樹脂膜(H)中のラジカル重合性基を2個以上有する化合物の含有量は、樹脂膜(H)の架橋度を高めて折り曲げ耐性をより向上させる観点から、全固形分中5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。一方、ラジカル重合性基を2個以上有する化合物の含有量は、樹脂膜(H)の屈曲性をより向上させる観点から、全固形分中50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
【0092】
樹脂膜(H)は、オキセタニル基を有するシロキサン化合物を含有してもよい。オキセタニル基を有するシロキサン化合物を含有することにより、オキセタン環の開環反応により樹脂膜(H)の応力が緩和され、ガラス基板と樹脂膜(H)との密着性を向上させることができる。
【0093】
樹脂膜(H)は、金属キレート化合物を含有してもよい。金属キレート化合物がシロキサン樹脂のシラノール縮合反応の触媒として働くことから、樹脂膜(H)の架橋度が高くなり、樹脂被覆ガラスの折り曲げ耐性をより向上させることができる。
金属原子としては樹脂膜(H)の透明性の観点から、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、コバルト、モリブデン、ランタン、バリウム、ストロンチウム、マグネシウム、カルシウムが好ましく、ジルコニウム、アルミニウムがより好ましい。
【0094】
金属キレート化合物としては、各種溶媒への溶解性や化合物の安定性の観点から、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトラフェノキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラ(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、ジルコニウムテトラメチルマロネート、ジルコニウムテトラエチルマロネート、ジルコニウムテトラエチルアセトアセテート、ジルコニウムジノルマルブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムモノノルマルブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスメチルアセトアセテート、アルミニウムトリスメチルマロネート、アルミニウムトリスエチルマロネート、アルミニウムエチルアセテートジ(イソプロポキシド)、アルミニウムアセチルアセトネート)ジ(イソプロポキシド)、アルミニウムメチルアセトアセテートジ(イソプロポキシド)、アルミニウムオクタデシルアセトアセテートジ(イソプロピレート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0095】
樹脂膜(H)中における金属キレート化合物の含有量は、樹脂膜(H)の架橋度をより向上させて樹脂被覆ガラスの折り曲げ耐性をより向上させる観点から、全固形分中0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましい。一方、金属キレート化合物の含有量は、シロキサン樹脂を含有する樹脂組成物の経時安定性の観点から、全固形分中10重量%以下が好ましく、7重量%以下がより好ましい。
樹脂膜(H)は、密着改良剤を含有してもよい。密着改良剤を含有することにより、樹脂膜(H)とガラスとの密着性をより向上させることができる。
【0096】
樹脂膜(H)は、各種の架橋剤を含有してもよく、架橋を促進または容易にすることができる。架橋剤としては、例えば、窒素含有有機物、シリコーン樹脂架橋剤、イソシアネート化合物やその重合体、メチロール化メラミン誘導体、メチロール化尿素誘導体等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。なかでも、架橋性と経時安定性の観点から、メチロール化メラミン誘導体、メチロール化尿素誘導体が好ましく用いられる。
【0097】
シロキサン樹脂は酸により硬化が促進されるので、シロキサン樹脂を含有する樹脂組成物に熱酸発生剤や光酸発生剤等の硬化触媒を含有してもよい。
【0098】
樹脂膜(H)中の熱酸発生剤や光酸発生剤等の硬化触媒の含有量は、樹脂膜(H)の架橋度を向上させて樹脂被覆ガラスの折り曲げ耐性をより向上させる観点から、全固形分中0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましい。一方、シロキサン樹脂を含有する樹脂組成物の経時安定性の観点から、熱酸発生剤や光酸発生剤等の硬化触媒の含有量は、全固形分中5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
【0099】
樹脂膜(H)は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤を含有することにより、塗布時のフロー性を向上させることができる。
また、本発明のガラス基板に樹脂膜(B)、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)を積層した樹脂被覆ガラスは耐折り曲げ性が良好であり、これを有機EL発光体とともに使用する有機EL発光装置をディスプレイ装置として使用した場合に折りたたみ式構造を実現することができ、装置自体のコンパクト化を図ることができる。
【実施例0100】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
<衝撃耐性>
ガラス基板の樹脂膜(B)、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)が形成されていない面に厚さ50μmのOCA(Optical Clear Adhesive)(商品名「“OPTERIA(登録商標)”MO-3017;リンテック(株)製」)を貼り付けた。次に、OCAの上側に厚さ10mmのSUS304の板に貼り付け、SUS304の板が下側になるようにガラス基板を置いた。
【0101】
次に、樹脂膜(D)に接触するように、所定の高さから重さ5.7g、芯径0.7mmのボールペンを落下させ、ガラス基板の割れの有無を観察した。割れが認められない場合、ボールペンの落下高さを高くして同様の評価を行い、ガラス基板が割れる最小高さ(PT1)(cm)を測定し、以下の基準で評価した。PT1が大きいほど衝撃耐性が良好である。
A:15cm≦PT1
B:10cm≦PT1<15cm
C:PT1<10cm。
【0102】
<折り曲げ耐性>
樹脂膜(B)、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)が形成された面が内側となるようにガラス基板を配置して、耐久試験機DMLHB(ユアサシステム機器(株)製)を用いて、曲率半径(R)2mmに折り曲げた際の樹脂被覆ガラスが割れる折り曲げ回数(BT1)を測定した。最大試験回数は20万回であり、1万回ごとに状態を確認し、以下の基準で評価した。BT1が大きいほど折り曲げ耐性が良好である。
A:BT1=20万回で割れ無し
B:10万回≦BT1≦20万回
C:1万回≦BT1<10万回
D:BT1<1万回。
【0103】
<鉛筆硬度>
樹脂膜(B)、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)が形成された面に対して、JIS K5600:1999に基づき鉛筆硬度試験器を用いて、2H~8Hの鉛筆により、荷重750g、角度45度でなぞり、傷の有無を観察することにより、鉛筆硬度を測定した。
【0104】
<湿熱耐性>
樹脂膜(B)、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)が形成された面が内側となるようにガラス基板を配置して、曲率半径(R)2mmになるように保持して、小型環境試験機SH-662(エスペック(株)製)を用いて、温度65℃、湿度93%の条件下で240時間湿熱試験した後の外観を以下の基準で評価した。
A:外観良好(湿熱試験による劣化無し)
B:折り曲げ部に皺が発生
C:折り曲げ部に皺が発生し、折り曲げ部以外にも皺が発生。
【0105】
<ビッカース硬度>
厚さ0.5mmの無アルカリガラスを用いて、厚さ10μmの樹脂膜(B)、樹脂膜(C)及び樹脂膜(D)の単層膜を作製した。温度を65℃にして硬度計Fischer scope H-100(Fischer製)を用いて樹脂膜(B)のビッカース硬度(HVb)、樹脂膜(C)のビッカース硬度(HVc)及び樹脂膜(D)のビッカース硬度(HVd)を測定し、得られた値の小数点第2を四捨五入して、HVc/HVbとHvd/HVcを求めた。
【0106】
(シロキサン樹脂(S-1)の合成)
500mLの三口フラスコにメチルトリメトキシシラン47.67g(0.35mol)、フェニルトリメトキシシラン39.66g(0.20mol)、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物26.23g(0.10mol)、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン82.04g(0.35mol)、ダイアセトンアルコール(以下、「DAA」)182.88gを仕込み、40℃のオイルバスに漬けて撹拌しながら、水55.8gにリン酸0.391g(仕込みモノマーに対して0.2重量部)を溶かしたリン酸水溶液を滴下ロートで10分間かけて添加した。40℃で1時間撹拌した後、オイルバス温度を70℃に設定して1時間撹拌し、さらにオイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。反応中に副生成物であるメタノール及び水が合計120g留出した。得られたシロキサン樹脂のDAA溶液に、固形分濃度が40重量%となるようにDAAを加えてシロキサン樹脂(S-1)溶液を得た。なお、得られたシロキサン樹脂(S-1)の重量平均分子量(以下、「Mw」)をGPCにより測定したところ5,000(ポリスチレン換算)であった。
【0107】
((メタ)アクリル樹脂(P-1)の合成)
500mLの三口フラスコに、33gのメタクリル酸メチル(0.3mol)、33gのスチレン(0.3mol)、34gのメタクリル酸(0.4mol)、3gの2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(0.02mol)および150gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)を仕込み、90℃で2時間撹拌してから内温を100℃に昇温して、さらに1時間撹拌し、反応溶液を得た。得られた反応溶液に、33gのメタクリル酸グリシジル(0.2mol)、1.2gのジメチルベンジルアミン(0.009mol)および0.2gのp-メトキシフェノール(0.002mol)を添加して、90℃で4時間撹拌した後、50gのPGMEAを添加して、固形分濃度が40重量%の(メタ)アクリル樹脂(P-1)のPGMEA溶液を得た。(メタ)アクリル樹脂(P-1)について、電位差自動滴定装置(AT-510;京都電子工業(株)製)を用い、滴定試薬として0.1mol/LのNaOH/EtOH溶液を用いて、JIS K2501:2003に基づき、電位差滴定法により酸価を測定しところ、酸価は80.0(mg/KOH/g)であった。また、GPC分析装置(HLC-8220;東ソー(株)製)を用い、流動層としてTHFを用いてGPC測定を行い、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めたところ、Mwは22000であった。
【0108】
(樹脂膜(B)を形成する樹脂組成物(B-1)の調整)
500mLの三口フラスコに熱可塑性ポリエステル樹脂(商品名「“バイロン(登録商標)”270」;東洋紡(株)製)(以下、「バイロン270」)14.85g、PGMEA21.16g、アセト酢酸エチル(以下、「EAA」)を63.75g仕込み、60℃のオイルバスにつけて、バイロン270が溶解するまで混合攪拌した。得られたバイロン270の溶液に、カルボジイミド化合物(商品名「“カルボジライト(登録商標)V-04PF”;日清紡ケミカル(株)製」0.15g、含フッ素熱分解性界面活性剤(商品名「“メガファック(登録商標)”DS-21」;DIC(株)製(以下、「DS-21」)の固形分濃度5重量%のPGMEA溶液0.10g(濃度50ppmに相当)を加え、攪拌した。次いで1.00μmのフィルターでろ過を行い、樹脂膜(B)を形成する固形分濃度15重量%の樹脂組成物(B-1)を調製した。
【0109】
(樹脂膜(C)を形成する樹脂組成物(C-1)の調整)
黄色灯下にて1-ヒドロキシシクロへキシル-フェニルケトン(商品名「“Omnirad(登録商標)”184」;IGM社製)(以下、「Omnirad184」)1.92gをPGMEA37.54g、DAA17.00gの混合溶媒に溶解させ、(メタ)アクリル樹脂(P-1)22.12g、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(商品名「“NKエステル(登録商標)”AD-TMP」;新中村化学工業(株)製)20.64g、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-503」;信越化学工業(株)製)0.58g、固形分濃度5重量%のDS-21のPGMEA溶液0.10g(濃度50ppmに相当)、シリコーン変性アクリル系界面活性剤(商品名「“BYK(登録商標)”-3550」;ビックケミー社製(以下、「BYK-3550」)の固形分濃度5重量%のPGMEA溶液0.10g(濃度50ppmに相当)を加え、攪拌した。次いで1.00μmのフィルターでろ過を行い、樹脂膜(C)を形成する固形分濃度32重量%の樹脂組成物(C-1)を調製した。
【0110】
(樹脂膜(D)を形成する樹脂組成物(D-1)の調整)
黄色灯下にて1.80gのOmnirad184を3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール(以下、「MMB」)37.55gに溶解させ、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(“アロニックス”(登録商標)M-306;東亜合成(株)製)12.76g、固形分濃度30重量%のメタクリロイル基を有するシリカ粒子のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液(平均粒子径45nm、商品名「PGM-AC-4130Y」;日産化学工業(株)製)37.5g、固形分濃度42重量%のメタクリロイル基を有するシリカ粒子のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液(平均粒子径12nm、商品名「PGM-AC-2140Y」;日産化学工業(株)製)8.93g、及び固形分濃度30重量%のUV反応型フッ素系界面活性剤のPGMEA溶液(商品名「“メガファック(登録商標)”RS-72-A」;DIC(株)製)1.46gを加え、攪拌した。次いで1.00μmのフィルターでろ過を行い、樹脂膜(D)を形成する固形分濃度30重量%の樹脂組成物(D-1)を調整した。
【0111】
(樹脂膜(H)を形成する樹脂組成物(H-1)の調製)
黄色灯下にてフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名「“Omnirad(登録商標)”819」;IGM社製)1.52gと、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート(商品名「“オルガチックス(登録商標)”ZC-150」;マツモトファインケミカル(株)製)1.30gを、DAA23.96g、PGMEA1.53g、MMB14.80gの混合溶媒に溶解させ、オキセタニル基を有するシロキサン化合物(商品名「“アロンオキセタン(登録商標)”OXT-191」;東亞合成(株)製)0.98g、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-903」;信越化学工業(株)製)0.43g、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のアクリル酸エステル(商品名「“アロニックス(登録商標)”M-315」;東亞合成(株)製)4.35g、固形分濃度30重量%のメタクリル基を有しないシリカ粒子のPGMEA分散液(平均粒子径=12nm、商品名「PMA-ST」;日産化学工業(株)製)28.99g、シロキサン樹脂(S-1)21.74g、固形分濃度5重量%のDS-21のPGMEA溶液0.20g(濃度100ppmに相当)、固形分濃度5重量%のBYK-3550のPGMEA溶液0.20g(濃度100ppmに相当)を加え、撹拌した。次いで1.00μmのフィルターでろ過を行い、樹脂膜(H)を形成する固形分濃度26重量%の樹脂組成物(H-1)を調製した。
【0112】
(実施例1)
図2に示すように、厚さ30μmの化学強化されたガラス基板2(商品名「“Dinorex(登録商標)”T2X-1」;日本電気硝子(株)製)の一方の表面8に、スプレー塗布装置(商品名「“rCoater(登録商標)”ES1533」;旭サナック(株)製)を用いて、樹脂組成物(H-1)をスプレー塗布した後、100℃のホットプレートを用いて2分間プリベイクした。その後、大日本スクリーン(株)製露光機“XG-5000”を用いて500mJ/cm(i線換算)で露光し、180℃の熱風オーブンを用いて40分間キュアし、膜厚5μmの樹脂膜(H)7を得た。
【0113】
次に、ガラス基板2の樹脂膜(H)7が形成されていない面6に、スプレー塗布装置を用いて、樹脂組成物(B-1)をスプレー塗布した後、50℃のホットプレートを用いて2分間加熱した後、100℃のホットプレートを用いて10分間加熱した。次に、180℃の熱風オーブンを用いて40分間キュアし、膜厚10μmの樹脂膜(B)3を得た。
【0114】
次に、樹脂膜(B)3の上に、樹脂組成物(C-1)をスプレー塗布した後、80℃のホットプレートを用いて4分間加熱した後、120℃のホットプレートを用いて10分間加熱した。その後、ウシオ電機(株)製露光機“UVC-1212S1WF01”を用いて3500mJ露光し、膜厚10μmの樹脂膜(C)4を得た。
【0115】
次に、樹脂膜(C)4の上に、樹脂組成物(D-1)をスプレー塗布した後、80℃のホットプレートを用いて3分間加熱した後、100℃のホットプレートを用いて10分間加熱した。その後、UVC-1212S1WF01を用いて2000mJ露光し、膜厚5μmの樹脂膜(D)5を積層した樹脂被覆ガラス1を得た。前述の各種の方法により評価した。
【0116】
(実施例2~23比較例1~4)
各成分の種類および量を表1~5のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂被覆ガラス1を得た。
【0117】
(表1)に樹脂組成物B-1からB-3の成分の種類および量、(表2)に樹脂組成物C-1からC-5の成分の種類および量、(表3)に樹脂組成物D-1からD-8の成分の種類および量、(表4)に樹脂組成物H-1の成分の種類および量を示す。(表5-1)、(表5-2)及び(表5-3)に形成した樹脂被覆ガラス1の樹脂膜、各層の膜厚、ビッカース硬度、前述した各種評価の結果を示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
【表5-1】
【0123】
【表5-2】
【0124】
【表5-3】
【0125】
なお、表1~4において、各成分は以下の通りである。
I-1:熱可塑性ポリエステル樹脂バイロン270
J-1:カルボジイミド化合物(商品名「“カルボジライト(登録商標)V-04PF”;日清紡ケミカル(株)製」)
J-2:カルボジイミド化合物(商品名「“カルボジライト(登録商標)V-05”;日清紡ケミカル(株)製」)
K-1:固形分濃度5重量%のDS-21のPGMEA溶液
K-2:固形分濃度5重量%のBYK-3550のPGMEA溶液
K-3:固形分濃度30重量%のUV反応型フッ素系界面活性剤のPGMEA溶液(商品名「“メガファック(登録商標)”RS-72-A」;DIC(株)製)
L-1:PGMEA
L-2:EAA
L-3:DAA
L-4:MMB
L-5:プロピレングリコールモノメチルエーテル
P-1:固形分濃度40重量%の(メタ)アクリル樹脂(P-1)
M-1:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(商品名「“NKエステル(登録商標)”AD-TMP」;新中村化学工業(株)製)
M-2:ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(“アロニックス”(登録商標)M-306;東亜合成(株)製)
M-3:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のアクリル酸エステル(商品名「“アロニックス(登録商標)”M-315」;東亞合成(株)製)
N-1:Omnirad184
N-2:フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名「“Omnirad(登録商標)”819」;IGM社製)
O-1:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-503」;信越化学工業(株)製)
O-2:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-903」;信越化学工業(株)製)
Q-1:固形分濃度30重量%のメタクリロイル基を有するシリカ粒子のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液(平均粒子径45nm、商品名「PGM-AC-4130Y」;日産化学工業(株)製)
Q-2:固形分濃度42重量%のメタクリロイル基を有するシリカ粒子のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液(平均粒子径12nm、商品名「PGM-AC-2140Y」;日産化学工業(株)製)
Q-3:固形分濃度30重量%の(メタ)アクリロイル基を有しないシリカ粒子のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散液(平均粒子径12nm、商品名「PMA-ST」;日産化学工業(株)製)
R-1:オキセタニル基を有するシロキサン化合物(商品名「“アロンオキセタン(登録商標)”OXT-191」;東亞合成(株)製)
S-1:固形分濃度40重量%のシロキサン樹脂(S-1)
T-1:ジルコニウムテトラアセチルアセトナート(商品名「“オルガチックス(登録商標)”ZC-150」;マツモトファインケミカル(株)製)
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の樹脂被覆ガラスは、スマートフォンやタブレットPC等の表示デバイス、車載ディスプレイ、インパネのカバーガラス、フロントカメラを画面の背後に配置させるアンダーディスプレイカメラを搭載される電子機器や有機EL発光装置を用いたディスプレイ好適に利用できる。
【符号の説明】
【0127】
1:樹脂被覆ガラス
2:ガラス基板(A)
3:樹脂膜(B)
4:樹脂膜(C)
5:樹脂膜(D)
6:ガラス基板(A)2の表面
7:樹脂膜(H)
8:ガラス基板(A)2の表面6とは反対の表面
図1
図2