(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126141
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240912BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20240912BHJP
C08J 7/044 20200101ALI20240912BHJP
C09K 3/16 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/42
C08J7/044 CER
C08J7/044 CEZ
C09K3/16 102J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034337
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】墨 典幸
(72)【発明者】
【氏名】奥田 昌寛
(72)【発明者】
【氏名】松永 篤
(72)【発明者】
【氏名】楠 洋平
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AA55
4F006AB16
4F006AB24
4F006AB64
4F006AB65
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4F100AA20B
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4F100AK25A
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4F100JA07A
4F100JG04
4F100JG04A
4F100JK09
4F100JK16
4F100JL02
4F100JN30
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】 本発明は、耐削れ性、耐ブロッキング性、視認性に優れたフィルムを提供することをその課題とする。
【解決手段】
表面抵抗率が1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、下記の化合物(A)、(B)、(C)を全て含有する層をA層としたときに、少なくとも一方の最表層がA層であることを特徴とする、フィルム。
(A):重量平均分子量が10,000~100,000のポリスチレン系重合体スルホン酸塩。
(B):分子量が70~550の多価アルコール。
(C):メラミン化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面抵抗率が1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、下記の化合物(A)、(B)、(C)を全て含有する層をA層としたときに、少なくとも一方の最表層がA層であることを特徴とする、フィルム。
(A):重量平均分子量が10,000~100,000のポリスチレン系重合体スルホン酸塩。
(B):分子量が70~550の多価アルコール。
(C):メラミン化合物。
【請求項2】
前記フィルムがポリエステル樹脂を主成分とする、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
フィルム全体を100質量%としたときに、エステルを主成分とするワックスを0.5質量%以上1.5質量%以下含有する、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
静止摩擦係数μSが0.10以上0.25以下である、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項5】
ヘイズが1.5%以上6.0%以下である、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項6】
厚みが6μm以上15μm以下である、請求項1または2に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止機能を有するフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルム、中でもポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから、各種用途に幅広く使用されている。中でも帯電防止機能を有するポリエステルフィルムは、フィルムを加工あるいは使用する際に生ずる静電気の影響を低減できるため、特に電子部品の製造工程で使用されるフィルムや電子部品包装用のカバーテープなどに使用されている。
【0003】
しかしながら、製品の高精細化が進むこれらの用途においては、ポリエステルフィルム表面に積層された帯電防止機能層が使用中に削れ落ちることにより当該層の成分が製品に混入することや、帯電防止性の向上を試みるとカバーテープを巻き取った際に表裏がブロッキングすることなどが問題となる。そして近年、生産性向上のために、これらの製品の加工が高速化されており、上記課題が顕在化している。また、保管環境下におけるカバーフィルムの透明性喪失や色づきの発生等、内容物の視認性が低下する問題もある。
【0004】
そこで、ポリエステルフィルムの表面に位置する帯電機能層の特性改善を図るため種々の手法が知られている。上記の課題を解決するため、帯電防止層に酸化防止剤を用いる方法(特許文献1)や、チオフェンおよびチオフェン誘導体を導電体とし、表面抵抗率を105Ω以下とする方法(特許文献2)、帯電防止層にポリエステル樹脂とアクリル樹脂を含有させ、表面固有抵抗値を1.0×106Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下とする方法(特許文献3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-121727号公報
【特許文献2】特開2016-60850号公報
【特許文献3】特開2010-128141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載の方法では、帯電防止剤のバインダーとして特定の樹脂を用い、さらに酸化防止材を添加することで、カバーテープの色づきによる視認性悪化を軽減する効果があるが、帯電防止層表面の滑り性や帯電防止成分のバインダー樹脂への分散性が不十分であることで、使用中に帯電防止層表面が削れる場合がある。また、特許文献2の方法では、ポリチオフェンやポリチオフェン誘導体を用いることで、極めて高い導電性を実現できるが、低分子のポリヒドロキシ化合物を含有するため、ブロッキング性が悪化する場合がある。また、ポリチオフェン系誘導体を用いた場合は、導通可能な電子量が少なくなる影響があり、帯電量が多くなった際に有効な制電性が発揮できなくなる場合がある。特許文献3には、アニオン、カチオン、ノニオン等のイオン性帯電防止剤にポリエステル樹脂とアクリル樹脂を混合する方法が示されているが、イオン性帯電防止剤が樹脂中に偏在しているため、使用中に表面から脱落しやすくなる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は上記の欠点を解消し、特に電子部品容器のカバーテープに好適に用いることができる、耐削れ性、耐ブロッキング性、視認性に優れたフィルムを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は次の構成からなる。すなわち、表面抵抗率が1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、下記の化合物(A)、(B)、(C)を全て含有する層をA層としたときに、少なくとも一方の最表層がA層であることを特徴とする、フィルムである。
(A):重量平均分子量が10,000~100,000のポリスチレン系重合体スルホン酸塩。
(B):分子量が70~550の多価アルコール。
(C):メラミン化合物。
【0009】
また、本発明のフィルムは以下の態様とすることもできる。
(1) 表面抵抗率が1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、下記の化合物(A)、(B)、(C)を全て含有する層をA層としたときに、少なくとも一方の最表層がA層であることを特徴とする、フィルム。
(A):重量平均分子量が10,000~100,000のポリスチレン系重合体スルホン酸塩。
(B):分子量が70~550の多価アルコール。
(C):メラミン化合物。
(2) 前記フィルムがポリエステル樹脂を主成分とする、(1)に記載のフィルム。
(3) フィルム全体を100質量%としたときに、エステルを主成分とするワックスを0.5質量%以上1.5質量%以下含有する、(1)または(2)に記載のフィルム。
(4) 静止摩擦係数μSが0.10以上0.25以下である、(1)~(3)のいずれかに記載のフィルム。
(5) ヘイズが1.5%以上6.0%以下である、(1)~(4)のいずれかに記載のフィルム。
(6) 厚みが6μm以上15μm以下である、(1)~(5)のいずれかに記載のフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐削れ性、耐ブロッキング性、視認性に優れたフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のフィルムについて詳細を説明する。本発明のフィルムは、表面抵抗率が1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、下記の化合物(A)、(B)、(C)を全て含有する層をA層としたときに、少なくとも一方の最表層がA層であることを特徴とする。以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。なお、以下「~」を用いて数値範囲を示す場合、当該数値範囲は上限と下限の数値を含むものとする。
(A):重量平均分子量が10,000~100,000のポリスチレン系重合体スルホン酸塩。
(B):分子量が70~550の多価アルコール。
(C):メラミン化合物。
【0012】
本発明のフィルムは、表面抵抗率が1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、上記の化合物(A)、(B)、(C)を全て含有する層をA層としたときに、少なくとも一方の最表層がA層であることが重要である。フィルムの少なくとも一方の最表層を上記の化合物(A)、(B)、(C)を全て含有する層とし、その表面抵抗率を上記範囲とすることで、フィルム走行時や使用時の帯電を抑止することができる。そのため、例えば電子部品向けにフィルムを使用した際に、静電気により内容物である電子部品がフィルムに付着して取り出せなくなること、環境異物を引き寄せて製品に付着させてしまうこと、電子部品が静電気で破損すること等、静電気由来の不具合を軽減することができる。
【0013】
最表面に位置する層の表面抵抗率値が1.0×1010Ω/□を超えると、当該層が帯電して上記の効果が得られなくなる上、帯電に伴い表面の滑り性が低下して耐削れ性が悪化する。また、当該層の表面抵抗率が1.0×106Ω/□未満である場合は、通常、最表層に含まれる帯電防止成分に低分子量のものが多くなっているため、表層が脆くなり耐削れ性が悪化することや、耐ブロッキング性が悪化することがある。
【0014】
なお、表面抵抗率は、フィルムを常態(温度23℃、相対湿度65%)において24時間エージング後、その雰囲気下で公知のデジタル超高抵抗/微小電流計により測定することができ、その詳細は後述する。なお、化合物(A)、(B)、(C)を全て含有する層の表面抵抗率を上記の好ましい範囲とする方法としては、例えば、化合物(A)、(B)、(C)の量やバインダー樹脂の量を適切に調整する方法が挙げられる。
【0015】
本発明のフィルムにおけるA層は、重量平均分子量が10,000~100,000のポリスチレン系重合体スルホン酸塩を含有する。このようなポリスチレン系重合体スルホン酸塩を含有することにより、表面抵抗率値を適正な範囲に制御することが可能となる。ポリスチレン系重合体スルホン酸塩の重量平均分子量が10,000に満たない場合は、表面抵抗率値を下げる効果が不十分となることや、当該層を構成する樹脂組成物の安定性が低下してフィルムの外観が悪化することがある。また、重量平均分子量が100,000を超える場合は、ポリスチレン系重合体スルホン酸塩が凝集しやすくなり、フィルム外観の悪化や当該層の耐削れ性が悪化する。上記観点から、ポリスチレン系重合体スルホン酸塩の重量平均分子量は25,000~100,000が好ましい。なお、ポリスチレン系重合体スルホン酸塩の重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定することができ、その詳細は後述する。
【0016】
本発明で用いられるポリスチレン系重合体スルホン酸塩は、スチレンスルホン酸塩をモノマー成分とし、該モノマー成分が重合されてなるホモポリマーであることが好ましいが、スチレンスルホン酸塩以外のモノマー成分(例えば、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー成分)が共重合されていてもよい。スチレンスルホン酸塩以外のモノマー成分が共重合される場合は充分な帯電防止効果を発現させる観点から、スチレンスルホン酸塩成分の量が、ポリスチレン系重合体スルホン酸塩を構成する全モノマー成分の量に対して70モル%以上であることが好ましい。本発明で用いられるポリスチレン系重合体スルホン酸塩は、スルホン酸とアルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウム基からなる塩である。ポリスチレン系重合体スルホン酸塩は、例えば、以下の3通りの方法によって得ることができ、どの方法を用いるかは任意である。
I)ポリスチレンをスルホン化後、アルカリ金属やアルカリ土類金属で中和して金属対イオンとする方法。
II)ポリスチレンをスルホン化後、アンモニアで中和して対イオンとする方法。
III)スチレンスルホン酸を、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニアで中和したスチレンスルホン酸塩を重合する方法。
【0017】
本発明のフィルムにおけるA層は、分子量が70~550の多価アルコールを含有する。このような多価アルコールを含有することで、ポリスチレン系重合体スルホン酸塩を層中に非常に均一に分散することが可能となる。その結果、当該高アルコールを含む層の表面抵抗率値を効果的に下げることや、耐削れ性を改善することが可能となる。多価アルコールの分子量が100未満の場合は、耐ブロッキング性が悪化する。一方、多価アルコールの分子量が500を超える場合は、耐削れ性が悪化する。上記観点から、多価アルコールの分子量は100~500が好ましく、より好ましくは150~500である。
本発明において多価アルコールとは、3つ以上のヒドロキシル基を有する化合物をいい、例えば、グリセリン、ジグリセリン、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、キシロース、スクロース(シュクロース)、トレハロース、イノシトール、フルクトース、マルトース、ラクトース等が挙げられる。
【0018】
A層は通常、樹脂組成物の塗工により形成するが、A層を形成する樹脂組成物における多価アルコールの含有量は、当該樹脂組成物中のポリスチレン系重合体スルホン酸塩を100質量部とした場合、1質量部以上10質量部以下が好ましく、より好ましくは1質量部以上9質量部以下である。多価アルコールの含有量が1質量部以上であることにより、当該樹脂組成物中のポリスチレン系重合体スルホン酸塩の分散性が良好となり、A層をより均質なものとすることができる。また、多価アルコールの含有量が10質量部以下であることにより、当該樹脂組成物においてポリスチレン系重合体スルホン酸塩との相溶性の悪化が抑えられ、A層中の凝集物の発生や、凝集物の吸湿によるブロッキング、耐削れ性の悪化が軽減される。
本発明のフィルムにおけるA層は、メラミン化合物を含有する必要がある。メラミン化合物を含有することで、当該層内部を架橋により強固にすることができるため、表面の耐削れ性や耐ブロッキング性を向上できる。
【0019】
A層を形成する樹脂組成物におけるメラミン化合物の含有量は、当該樹脂組成物中のポリスチレン系重合体スルホン酸塩を100質量部とした場合、1質量部以上10質量部以下が好ましく、より好ましくは1質量部以上5質量部以下である。当該樹脂組成物中のメラミン化合物の含有量が1質量部以上であることにより、形成するA層の耐削れ性や耐ブロッキング性が向上する。また、当該樹脂組成物中のメラミン化合物の含有量が10質量部以下であることにより、塗布外観の悪化が軽減される。A層はメラミン化合物により架橋された構成を取るが、その含有量を適切に調整することで、未反応で残る液成分を減らすことができる。
【0020】
A層に用いることができるメラミン化合物としては、例えばメラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に、低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を脱水縮合反応させてエーテル化した化合物などが好ましい。メチロール化メラミン誘導体としては、例えばモノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンを挙げることができる。
【0021】
本発明のフィルムは、少なくとも一方の最表層が上記ポリスチレン系重合体スルホン酸塩、多価アルコール、メラミン化合物をすべて含有することで、これらの成分による架橋構造が形成され、表面抵抗率値、耐削れ性、耐ブロッキング性、外観を良好にすることができる。表面層がこれらの成分を含有するか否かは例えば飛行時間型2次イオン重量分析(GCIB-TOF-SIMS)を用いた測定により可能である。
【0022】
本発明のフィルムのA層を形成するための樹脂組成物には、その他、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂、アクリル樹脂などの各種バインダー樹脂や、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物などの架橋剤、易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤などの各種添加剤を、A層の特性を悪化させない程度に添加してもよい。また、バインダー樹脂の含有量は、帯電防止性と外観、耐削れ性の観点から、ポリスチレン系重合体スルホン酸塩100質量部に対して、50質量部以上100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは60質量部以上80質量部以下であり、さらに好ましくは65質量部以上80質量部以下である。
【0023】
バインダー樹脂として用いられるアクリル樹脂は、特に限定されるものではないが、透明性や耐削れ性の観点から、カルボキシル基を有するアクリル成分を共重合したアクリル樹脂であることが好ましい。本発明で用いられるカルボキシル基を有するアクリル成分としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられるが、カルボキシル基をアルキルエステル化せしめたエステル形成誘導体は含まれない。カルボキシル基を有するアクリル成分を共重合したアクリル樹脂を用いると、アクリル樹脂が親水化し、ポリスチレン系重合体スルホン酸塩の溶解度パラメーターに近づく。するとアクリル樹脂中に、ポリスチレン系重合体スルホン酸塩が微分散化するため、より透明性や耐削れ性に優れたA層を形成することができる。
【0024】
バインダー樹脂として用いられるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とグリコール成分とを重縮合反応せしめる方法によって得ることができる。上記のジカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸が使用でき、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸や、スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分、例えば、5-スルホイソフタル酸、4-スルホフタル酸および4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン-5-[4-スルホフェノキシ]イソフタル酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩およびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0025】
また、上記のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、4,4’-チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-(2-ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェノール、o-,m-,およびp-ジヒドロキシベンゼン、4,4’-イソプロピリデンフェノール、4,4’-イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、およびシクロヘキサン-1,4-ジオールなどを用いることができる。
【0026】
本発明のフィルムを構成する基材層には、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂、アクリル樹脂などを使用することができるが、優れた強度、熱安定性、透明性、生産性、溶剤耐久性などから、ポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。ここで基材層とは、フィルム中のA層以外の部分をいい、基材層は単層構成でも積層構成でもよい。主成分とは基材層を構成する全成分を100質量%としたときに、50質量%を超えて100質量%以下含まれる成分をいい、主成分については以後、同様に解釈することができる。なお、基材層中にポリエステル樹脂が複数含まれる場合、個々の含有量が50質量%に満たなくとも、合計が50質量%を超える場合は、基材層がポリエステル樹脂を主成分とするものとみなすことができる。
【0027】
本発明のフィルムにおいては、通常A層よりも基材層の厚みが相当大きいため、基材層の主成分がポリエステル樹脂であることは、実質フィルムの主成分がポリエステル樹脂であることと同義である。すなわち、本発明のフィルムは、ポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの基剤層に用いられるポリエステル樹脂は、上記ポリエステル樹脂と同じものを用いることができるが、特にエチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン-2,6-ナフタレート、エチレン-α,β-ビス(2-クロロフェノキシ)エタン-4,4‘-ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成単位とするものが好ましい。なお、ここで主要構成単位とは、ポリエステル樹脂を構成する全構成単位を100モル%としたときに、50モル%を超えて100モル%含まれる構成単位をいう。
【0029】
本発明のフィルムは、耐削れ性や耐ブロッキング性を向上させる観点から、フィルム全体を100質量%としたときに、エステルを主成分とするワックスを0.5質量%以上1.5質量%以下含有することが好ましい。エステルを主成分とするワックスの含有量が0.5質量%以上である場合は、耐削れ性や耐ブロッキング性の改善効果が十分に得られる。一方、エステルを主成分とするワックスの含有量が1.5質量%以下であることにより、A層の外観の悪化を軽減することができ、さらにワックス成分がフィルム加工時の搬送ロールなどに付着することによる欠点の発生を軽減することができる。なお、エステルを主成分とするワックスは本発明の効果を損なわない限り、A層、基材層のいずれに含まれていてもよく、両方に含まれていてもよいが、基材層に含まれていることがより好ましい。
【0030】
本発明において用いられるワックスは、市販の各種のワックス、例えば石油系ワックス、植物性ワックス、動物系ワックス、低分子量ポリオレフィン類などを使用することができ、特に制限されるものではないが、エステルを主成分とするワックスすなわち、石油系ワックス、植物系ワックスの使用が好ましい。石油系ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリステリンワックス、酸化ワックスなどが挙げられるが、酸化ワックスが特に好ましい。また、植物性ワックスとしてはキャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ロウ、オリーキューリーワックス、サトウキビワックス、ロジン変性ワックスなどが挙げられる。また、ロジン、不均化ロジン、水添ロジンおよびα,β置換エチレン(α置換基:カルボキシル基、β置換基:水素又はメチルまたはカルボキシル)付加物からなる群より選ばれた1以上および炭素数1~8のアルキルまたはアルケニルアルコールポリマー(繰り返し単位1~6)のエステル付加物との組成物も好ましく用いられる。なお、本発明においてはエステルを主成分とするワックスとしては、例えばカルナウバワックス等を好適に使用することができる。
【0031】
本発明のフィルムは、静止摩擦係数μSが0.10以上0.25以下であることが好ましい。ここでいう静止摩擦係数μSとは、フィルムの互いに異なる面をすり合わせたときの静止摩擦係数をいい、ASTM-D-1894B-63に規定の方法により測定することができる(詳細な条件や手順は後述)。静止摩擦係数μSを上記の範囲に調整することにより、フィルムの搬送性、巻き取り性が良好となるのに加えて、特に耐ブロッキング性や耐削れ性が良化する。静止摩擦係数μSを上記の範囲に調整する方法は、特には限定されないが、例えばフィルムにワックス成分や滑剤を適正量含有させる方法が挙げられる。特にワックス(中でも、エステルを主成分とするワックス)成分は少量の添加でフィルムの透明性を損なわずに効果的に摩擦係数を下げることができるため好ましい。
【0032】
本発明のフィルムは、易滑性と視認性の両立の観点から、ヘイズが1.5%以上6.0%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以上3.0%以下である。ヘイズは常態(温度23℃、相対湿度65%)において、公知の濁度計により測定することができ、詳細は後述する。
【0033】
ヘイズが1.5%以上である場合は、フィルム内のフィラーが十分であり、表面に十分な突起が形成されるため易滑性が向上する。一方、ヘイズが6.0%以下であると、例えばカバーテープとした用いた際に視認性が悪化するため好ましくない。上記の範囲にヘイズを調整する方法は特には限定されないが、熱可塑性樹脂フィルムに含有させる滑剤(フィラー)量を適切な量に調整する方法や、A層を形成するための樹脂組成物に含まれるポリスチレン系重合体スルホン酸塩、多価アルコール、アクリル樹脂などのバインダー樹脂の量を適正な範囲に調整する方法が挙げられる。
【0034】
本発明のフィルムは、シワの発生軽減と巻き取り性を両立する観点から、厚みが6μm以上15μm以下であることが好ましく、より好ましくは8μm以上12μm以下である。フィルムの厚みが6μm以上であることにより、シワの発生を軽減することができる。一方、フィルムの厚みを15μm以下とすることにより、小巻した際も長く巻くことが容易となる。フィルムの厚みはJIS-C-2151(2006年)に従い、マイクロメーターにより測定することができる。
【0035】
フィルムの厚みを調整する方法は特に制限されないが、例えば、口金のスリット幅を大きく、押出機の押し出し量を大きく、キャストドラムの引き取り速度を小さく、延伸倍率を小さくすること等により、大きくすることができる。これらの方法は適宜組み合わせることもできる。
【0036】
本発明のフィルムは、熱安定性や機械強度の観点から二軸配向フィルムであることが好ましい。二軸配向フィルムとは、一般に、未延伸状態のシートを長手方向(フィルムの搬送方向)および長手方向にフィルム面内で直交する幅方向に各々2.5~5.0倍程度延伸され、その後、熱処理を施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。フィルムが二軸配向していることにより、熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が向上し、平面性も向上する。
【0037】
また、フィルム中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。また、これらの成分は適宜組み合わせて使用することもできる。なお、これらの成分の含有量は成分の種類にもよるが、例えばシリカ等の無機の微粒子を加える場合は、外観を悪化させない観点からフィルムを構成する全成分中、0,10質量%以下に留めることが好ましい。
【0038】
本発明のフィルムの基材層は、共押出しによる複合フィルムであってもよいし、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムであってもよい。
【0039】
本発明のフィルムのA層を形成する方法は特には限定されないが、インラインコート法、オフラインコート法等の塗布方式が好ましい方法として挙げられる。インラインコート法とは、フィルムの製造の工程内で塗布を行う方法である。具体的には、熱可塑性樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)フィルム、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)フィルム、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)フィルムの何れかのフィルムに塗布するが、一般的には未延伸または一軸延伸フィルム上に塗布を行うことが好ましい。この方法によれば、フィルムの製膜と、樹脂組成物の塗布と溶媒の乾燥、および加熱(すなわち、樹脂層の形成)を一連の工程で行うことができるために製造コスト上のメリットがある。また、塗布後に延伸を行うために樹脂層の厚みをより薄くすることも容易である。
【0040】
一方、オフラインコート法とは、基材層に相当するフィルムを一旦巻き取った後、製膜工程とは別工程で当該フィルムに樹脂組成物を塗布する方法である。本発明では、上述した種々の利点から、インラインコート法を用いることが好ましい。
【0041】
フィルムへの樹脂組成物の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。
【0042】
以下に本発明のフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す。)樹脂を基材層として用いた場合を例として詳述するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
【0043】
まず、PETのペレットを十分に真空乾燥し、水分率を150ppm以下とした後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化せしめて未延伸(未配向)フィルムを作製する。このフィルムを80~120℃に加熱したロールで長手方向に2.5~5.0倍延伸して一軸配向フィルムを得る。
【0044】
この一軸配向フィルムの片面に、重量平均分子量が10,000~100,000のポリスチレン系重合体スルホン酸塩、分子量が100~500の多価アルコール、メラミン化合物を所定の濃度に調製した樹脂組成物を塗布する。このとき、塗布前に一軸配向フィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、樹脂組成物のフィルムへの濡れ性を向上させて樹脂組成物のはじきを軽減し、より均一な塗布厚みを達成することができる。
【0045】
樹脂組成物の塗布後、一軸配向フィルムの幅方向両端部をクリップで把持して80~130℃の熱処理ゾーン(予熱ゾーン)へ導き、塗液の溶媒を乾燥させ、幅方向に1.1~5.0倍延伸する。引き続き150~250℃の加熱ゾーン(熱処理ゾーン)へ導き、1~30秒間の熱処理により結晶配向を完了させるとともに、樹脂層の形成を完了させる。この加熱工程(熱処理工程)で、必要に応じて幅方向、あるいは長手方向に3~15%の弛緩処理を施してもよい。こうして基材層の表面にA層を有するPETフィルムを得ることができ、得られたフィルムをロール状に巻き取ってフィルムロールとすることができる。
【実施例0046】
以下、実施例を用いて本発明のフィルムについてより詳細に説明する、但し、本発明のフィルムは以下に示す態様に限定されない。
【0047】
[特性の測定方法、および効果の評価方法]
(1)透明性
透明性は、ヘイズ(%)により評価した。ヘイズの測定は、常態(温度23℃、相対湿度65%)において、積層ポリエステルフィルムを1時間放置した後、日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて行った。3回測定した平均値を、その積層ポリエステルフィルムのヘイズとした。
【0048】
(2)帯電防止性(表面抵抗率)
帯電防止性は、表面抵抗率により評価した。表面抵抗率は、積層ポリエステルフィルムを常態(温度23℃、相対湿度65%)において24時間エージング後、その雰囲気下でデジタル超高抵抗/微小電流計(アドバンテスト製R8340A)を用いて、印加電圧100Vで10秒間印加後の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0049】
(3)耐ブロッキング性
耐ブロッキング性はテープ剥離力で評価を行った。フィルムサンプル(30mm×70mm)を切り出し、常態(温度23℃、相対湿度65%)において24時間エージングした。帯電防止面にテープ(日東電工社製No.31B)を貼り付け、その剥離力を島津(株)社製万能試験機「オートグラフAG-1S」および50Nロードセルにて測定した。剥離速度300mm/minにて、測定サンプルとテープの180°剥離試験を行った。測定により得られた、剥離力(N)-試験時間(sec)のグラフから算出した5~10secにおける剥離力の平均値をテープ剥離力(N/19mm)とした。剥離後のフィルム状態を4段階にて評価した。×は実用上問題のあるレベル、△と〇は実用レベルであり、◎は良好とした。
◎:6N/19mm以下であった。
○:6N/19mmより大きく、8N/19mm以下であった。
△:8N/19mmより大きく、10N/19mm以下であった。
×:10N/19mmより大きかった。
【0050】
(4)耐削れ性
フィルムサンプル(30mm×70mm)を切り出し、学振型摩擦試験機を用いて、積層ポリエステルフィルムの樹脂層の表面を綿布(小津産業(株)製、ハイゼガーゼNT-4)により荷重2kgで10往復、擦過した。擦過後のフィルム状態を目視で観察し、4段階にて評価した。×は実用上問題のあるレベル、△と〇は実用レベルであり、◎は良好とした
◎:削れ粉が見られなかった。
○:部分的に数える程度の削れ粉が見られた。
△:全面に数える程度の削れ粉が見られた。
×:全面に数えきれない削れ粉が見られた。
【0051】
(5)静止摩擦係数μS
2枚のフィルムサンプル(30mm×70mm)を切り出し、常態(温度23℃、相対湿度65%)において24時間エージング後、ASTM-D-1894B-63に従い、スリップテスターを用い、静止摩擦係数μSを測定した。なお、このときフィルムサンプルは異なる面同士が接触するように重ねた。
【0052】
(6)フィルム厚み
JIS-C-2151(2006年)に従い、マイクロメーターによりフィルム厚み(μm)を測定した。
【0053】
(7)外観検査
フィルムサンプル(30mm×70mm)を切り出し、蛍光灯下でサンプル表面の状態を目視評価観察し、フィルム表面状態を4段階にて評価した。×は実用上問題のあるレベル、△と〇は実用レベルであり、◎は良好とした
◎:外観にムラが観察されなかった。
○:部分的に薄い外観ムラが見られた。
△:全面に薄い外観ムラが見られた。
×:全面に濃い外観ムラが見られた。
【0054】
[実施例、比較例において使用した成分]
(ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩、アクリル樹脂)
ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(A1~A4)、アクリル樹脂(D1、D2)の合成法を以下例1~4に示す。
【0055】
(例1)ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(A1)の調整
窒素ガス雰囲気下かつ常温(25℃)下で、容器1に、水200質量部、過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、これを85℃に昇温して過硫酸アンモニウムを溶解させ、85℃の溶液1を得た。常温(25℃)下で、容器2に、スチレンスルホン酸アンモニウム塩100質量部、過硫酸アンモニウム3質量部、水100質量部を添加し、スチレンスルホン酸アンモニウム塩と過硫酸アンモニウムを溶解させて溶液2を得た。その後、窒素ガス雰囲気下で、溶液1を反応器に移し、反応器内の溶液の温度を85℃に保ちつつ、溶液2を溶液1に4時間かけて連続滴下せしめた。滴下終了後、さらに3時間攪拌したのち、反応系を25℃まで冷却し、重量平均分子量80,000のポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(A1)を得た。
【0056】
(例2)ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(A2~A4)の調整
例1の攪拌時間を調整し、それぞれ以下の分子量のポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩を得た。
(A2):重量平均分子量20,000のポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩
(A3):重量平均分子量8,000のポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩
(A4):重量平均分子量150,000のポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩。
【0057】
(例3)アクリル樹脂(D1)の調整
[工程1]
窒素ガス雰囲気下かつ常温(25℃)下で、容器1に、水100質量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの繰り返し単位が16)1質量部および過硫酸アンモニウム0.5質量部を仕込み、これを70℃に昇温してポリエチレングリコールモノメタクリレートと硫酸アンモニウムを溶解させ、70℃の溶液1を得た。
【0058】
[工程2]
常温(25℃)下で、容器2に下記の原料を下記の比率で添加して攪拌し、溶液2を得た。
・ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの繰り返し単位が16):5モル部
・メタクリル酸メチル:62モル部
・アクリル酸エチル:30モル部
・アクリル酸:2モル部
・N-メチロールアクリルアミド:1モル部。
【0059】
[工程3]
100質量部の溶液2に対して水50質量部を添加し、溶液3を得た。窒素ガス雰囲気下で、溶液1を反応器に移し、反応器内の溶液の温度を70℃に保ちつつ、溶液3を溶液1に3時間かけて連続滴下せしめた。滴下終了後、さらに85℃で2時間攪拌したのち、25℃まで冷却し、アンモニア水で中和して、アクリル樹脂(D1)エマルジョンを得た。
【0060】
(例4)アクリル樹脂(D2)の調整
例3の[工程2]において、用いる原料および添加比率を下記の通り変更した以外は、例3と同様の方法でアクリル樹脂(D2)を得た。
・メタクリル酸メチル:57モル部
・アクリル酸エチル:35モル部
・N-メチロールアクリルアミド:2モル部
・ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの繰り返し単位が16):6モル部。
【0061】
(基材ポリエステル樹脂添加物)
なお、表中に記載の基材ポリエステル樹脂添加物および、樹脂組成物は以下を用いた。
・凝集シリカ:富士シリシア化学(株)製“サイリシア”(登録商標)平均粒径2.5μm
ここでいう平均粒径は、以下の手順により測定した値である。まず、ポリマー1gを1N-KOHメタノール溶液200mlに投入して加熱還流することにより、ポリマーを溶解し、溶解が終了した該溶液に200mlの水を加えた。ついで該液体を遠心分離器にかけて粒子を沈降させて上澄み液を取り除き、粒子にはさらに水を加えて洗浄、遠心分離を2回繰り返した。こうして得られた粒子をスペクトリス株式会社製レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー2000)にかけて粒度分布を測定し、その数平均を当該粒子の平均粒子径とした。
・ワックス:(株)セラリカNODA製 “精製カルナウバワックスNo.1”
(A層を構成する樹脂組成物)
(1)ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩:A
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(A1):重量平均分子量80,000
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(A2):重量平均分子量20,000
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(A3):重量平均分子量8,000
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(A4):重量平均分子量150,000
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて以下の条件で測定した。なお、検出器は示差屈折率検出器を用いて単分散ポリメチルメタクリレート標準試料により検量した。
装置:ゲル浸透クロマトグラフGPC
検出器:示差屈折率検出器 RI(Waters製RI-2410型,感度256)
カラム:Shodex HFIP-LG(1本)、HFIP-806M(2本)
(φ8.0mm×30cm、昭和電工製)
溶媒:5mMトリフルオロ酢酸ナトリウム添加ヘキサフルオロイソプロパノール
流速:0.5mL/min
カラム温度:40℃
試料調製:試料3mgに溶媒5mLを加え、室温にて攪拌した。
その後、0.20μmフィルターを用いてろ過を行った。
注入量:0.2mL
標準試料:昭和電工製単分散ポリメチルメタクリレート(PMMA)。
【0062】
(2)多価アルコール:B
・多価アルコール(B1):分子量500
・多価アルコール(B2):分子量100
・多価アルコール(B3):分子量60
・多価アルコール(B4):分子量800
(3)メラミン化合物:C
・メラミン化合物(株)三和ケミカル製“ニカラック”(登録商標)MW-035(固形分濃度70重量%、溶媒:水)。
【0063】
(4)アクリル樹脂:D
・アクリル樹脂(D1)
・アクリル樹脂(D2)。
【0064】
(実施例1)
平均粒径2.5μmの凝集シリカ粒子を0.02質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)ペレット(極限粘度0.65dl/g)を真空乾燥機にて水分率150ppm以下になるまで乾燥した後、押出機に供給して285℃で溶融した。その後、溶融PET組成物をT字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを120℃に加熱して長手方向に1.3倍、続けて125℃で長手方向に2.6倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。次いで、以下の樹脂組成物を含む固形分濃度2.5重量%水溶液をバーコートを用いて塗布厚み約6μmで一軸延伸フィルムの片側表面に塗布した。
(樹脂組成物)
ポリスチレンスルホン酸(A1):100質量部
多価アルコール(B1):7質量部
メラミン化合物(C):1質量部
アクリル樹脂(D1):80質量部
続いて、樹脂組成物を含む水溶液を塗布した一軸延伸フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導いた。予熱ゾーンの雰囲気温度は90℃~100℃とし、樹脂組成物を含む水溶液に含まれる溶媒を乾燥させた。引き続き、連続的に100℃の延伸ゾーンで幅方向に倍率3.5倍で延伸し、続いて230℃の熱処理ゾーンで15秒間熱処理を施し、片面に樹脂組成物層(A層)を有する厚さ10μmのフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0065】
(実施例2~12、比較例1~11)
基材となるポリエステルフィルムの原料、およびA層を構成する樹脂組成物を表1、2のとおりとした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。評価結果を表1、2に示す。
【0066】
【0067】
本発明によれば、耐削れ性、耐ブロッキング性、視認性に優れたフィルムを提供することができる。本発明のフィルムは、上記特性に優れるため、各種電子部品製造用フィルムおよび電子部品容器、およびそのカバーフィルム等として好適に用いることができる。