(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126143
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】成型コークスの製造方法および成型コークスの製造装置
(51)【国際特許分類】
C10B 53/08 20060101AFI20240912BHJP
C10B 45/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C10B53/08
C10B45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034343
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】多川 友生
(72)【発明者】
【氏名】廣池 承一郎
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012KA01
4H012KA06
(57)【要約】
【課題】装入シュートから竪型乾留炉の奥行方向に分散させながら成型物を装入できる成型コークスの製造方法を提供する。
【解決手段】竪型乾留炉本体の内部に堆積する成型物の堆積層が予め定められた基準高さになった場合に、竪型乾留炉本体に傾斜して接続される装入シュートから1バッチ分の成型物を炉内に装入し、供給した成型物を竪型乾留炉本体の内部で乾留して成型コークスを製造する、成型コークスの製造方法であって、成型物の堆積分布を測定し、堆積分布の測定結果に応じて基準高さを上下方向に変更する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型乾留炉本体の内部に堆積する成型物の堆積層が予め定められた基準高さになった場合に、前記竪型乾留炉本体に傾斜して接続される装入シュートから1バッチ分の前記成型物を炉内に装入し、供給した前記成型物を前記竪型乾留炉本体の内部で乾留して成型コークスを製造する、成型コークスの製造方法であって、
前記成型物の堆積分布を測定し、前記堆積分布の測定結果に応じて前記基準高さを上下方向に変更する、成型コークスの製造方法。
【請求項2】
前記堆積分布として、前記竪型乾留炉本体の断面中央位置と、前記断面中央位置よりも前記装入シュートが接続された炉壁位置に近い断面位置と、前記断面中央位置よりも前記装入シュートが接続された炉壁位置から離れた断面位置の少なくとも3点の前記堆積層の高さを測定する、請求項1に記載の成型コークスの製造方法。
【請求項3】
3点の前記堆積層の高さが予め定められた範囲外である場合に前記基準高さを上下方向に変更し、前記3点の堆積層の高さが予め定められた範囲内である場合に前記基準高さを上下方向に変更しない、請求項2に記載の成型コークスの製造方法。
【請求項4】
前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さよりも高い場合に前記基準高さを下方に変更し、前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さよりも低い場合に前記基準高さを上方に変更する、請求項3に記載の成型コークスの製造方法。
【請求項5】
前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置に近い断面位置における堆積層の高さよりも高い場合に前記基準高さを上方に変更し、前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さよりも低い場合に前記基準高さを下方に変更する、請求項3に記載の成型コークスの製造方法。
【請求項6】
成型物を乾留して成型コークスを製造する竪型乾留炉本体と、
前記竪型乾留炉本体に傾斜して接続され、前記竪型乾留炉本体に前記成型物を供給する装入シュートと、
前記装入シュートの途中に、前記成型物を一時的に前記装入シュートの内部に滞留させる開閉可能なゲートと、
前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記成型物の堆積分布を測定する堆積分布測定装置と、
前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する成型物の堆積層が予め定められた基準高さになった場合に前記ゲートを開くゲート制御装置と、
を有する、成型コークスの製造装置であって、
前記ゲート制御装置は、前記堆積分布測定装置によって測定された前記成型物の堆積分布に基づいて前記基準高さを上下方向に変更する、成型コークスの製造装置。
【請求項7】
前記堆積分布測定装置は、前記堆積分布として、前記竪型乾留炉本体の断面中央位置と、前記断面中央位置よりも前記装入シュートが接続された炉壁位置に近い断面位置と、前記断面中央位置よりも前記装入シュートが接続された炉壁位置から離れた断面位置の少なくとも3点の前記堆積層の高さを測定する、請求項6に記載の成型コークスの製造装置。
【請求項8】
前記堆積分布測定装置によって測定される3点の前記堆積層の高さが予め定められた範囲外である場合に、前記ゲート制御装置は前記基準高さを上下方向に変更し、前記3点の堆積層の高さが予め定められた範囲外である場合に、前記ゲート制御装置は前記基準高さを上下方向に変更しない、請求項7に記載の成型コークスの製造装置。
【請求項9】
前記堆積分布測定装置によって測定される前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さよりも高い場合に、前記ゲート制御装置は前記基準高さを下方に変更し、前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さよりも低い場合に、前記ゲート制御装置は前記基準高さを上方に変更する、請求項8に記載の成型コークスの製造装置。
【請求項10】
前記堆積分布測定装置によって測定される前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さよりも高い場合に、前記ゲート制御装置は前記基準高さを上方に変更し、前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さよりも低い場合に、前記ゲート制御装置は前記基準高さを下方に変更する、請求項8に記載の成型コークスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型乾留炉を用いて成型コークスを製造する成型コークスの製造方法および成型コークスの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コークスの反応性を向上させるため、石炭等の成型物をバインダー等の結合剤と混合して塊状に成型した後、その塊状に成型した成型物を乾留処理して製造した成型コークスを高炉用原料として用いる技術が開発されている。成型コークスのうち、成型物(石炭等)に鉄含有物質(鉄鉱石等)を一定量混合して塊状に成型したものは、フェロコークスと呼ばれている。成型コークスの製造方法としては、一般的に竪型の乾留炉を用いて成型物を乾留処理する方法が提案されている。
【0003】
フェロコークスの乾留方法としては竪型乾留炉を用いる方法が提案されており、例えば、特許文献1には、上部に乾留ゾーン、下部に冷却ゾーンを有する竪型乾留炉を用いたフェロコークスの製造方法が開示されている。この方法は、成型物と鉄含有物質とからなる成型物を竪型乾留炉に装入する装入工程と、乾留ゾーンにおいて加熱ガスを吹き込むことで成型物を乾留してフェロコークスを製造する乾留工程と、冷却ガスの吹き込みによってフェロコークスを冷却する冷却工程と、竪型乾留炉の炉頂部の排出口から炉内ガスを排出する炉内ガス排出工程と、冷却ゾーン下部からフェロコークスを排出するフェロコークス排出工程と、を有する。
【0004】
成型物の装入工程では、竪型乾留炉の上部に傾斜して取り付けられる装入シュートを介して成型物を炉内に装入し、乾留工程では、乾留ゾーン中間部分の低温ガス吹き込み羽口から低温ガスを炉内に吹き込み、乾留ゾーン下部の高温ガス吹き込み羽口から高温ガスを炉内に吹き込むことで成型物を加熱している。また、フェロコークスの冷却工程では、冷却ゾーン下部の冷却ガス吹き込み羽口から冷却ガスを吹き込むことでフェロコークスの冷却を行っている。
【0005】
ここで、フェロコークス生産量を増加させるためには竪型乾留炉の容積を大きくする必要があるが、加熱ガスおよび冷却ガスは竪型乾留炉の奥行方向(成型物装入方向の水平成分に平行)に噴射されるので、ガスを炉内中央部まで浸透させるには奥行方向の内寸を一定値以下にする必要がある。したがって、竪型乾留炉は奥行方向に比べて炉幅方向(竪型乾留炉の横断面において奥行方向と直交する方向)が長い形状となる。
【0006】
上記のように、炉の奥行方向に対して炉幅方向が長い構造を有する竪型乾留炉では、炉幅方向に成型物の装入口を複数列設置した場合でも、炉幅に対して十分な数の成型物装入口を設置することは困難である。このように、限られた成型物の装入口から成型物を炉内に装入した場合、装入した成型物の炉幅方向の分布は、成型物の安息角に応じた山部が形成された装入分布になり、均一な装入分布が得られない。このように、均一な装入分布が得られない場合、局所的に炉内の装入物押圧が高くなる部分が生じ、その成型物押圧によって成型物に割れが生じる可能性がある。さらに、成型物を炉内に装入した際に、成型物の多い箇所と少ない箇所が発生すると、炉内のガス流れが不均一になり、成型物の乾留に悪影響を与える。このような問題に対して、特許文献2には、成型物を炉幅方向に分散させる分散部材を設けることで成型物を分散させる成型コークスの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-57970号公報
【特許文献2】特開2017-155214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された分散部材は、炉幅方向の分散に着目したものであって成型物の飛距離に影響を及ぼさないので、炉の奥行方向に対する均一分散に対しては改善できないという課題があった。本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、竪型乾留炉を用いて高炉用原料である成型コークス、特に、フェロコークスを製造するに際し、装入シュートから竪型乾留炉の奥行方向に分散させながら原料である成型物を装入できる成型コークスの製造方法および製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 竪型乾留炉本体の内部に堆積する成型物の堆積層が予め定められた基準高さになった場合に、前記竪型乾留炉本体に傾斜して接続される装入シュートから1バッチ分の前記成型物を炉内に装入し、供給した前記成型物を前記竪型乾留炉本体の内部で乾留して成型コークスを製造する、成型コークスの製造方法であって、前記成型物の堆積分布を測定し、前記堆積分布の測定結果に応じて前記基準高さを上下方向に変更する、成型コークスの製造方法。
[2] 前記堆積分布として、前記竪型乾留炉本体の断面中央位置と、前記断面中央位置よりも前記装入シュートが接続された炉壁位置に近い断面位置と、前記断面中央位置よりも前記装入シュートが接続された炉壁位置から離れた断面位置の少なくとも3点の前記堆積層の高さを測定する、[1]に記載の成型コークスの製造方法。
[3] 3点の前記堆積層の高さが予め定められた範囲外である場合に前記基準高さを上下方向に変更し、前記3点の堆積層の高さが予め定められた範囲内である場合に前記基準高さを上下方向に変更しない、[2]に記載の成型コークスの製造方法。
[4] 前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さよりも高い場合に前記基準高さを下方に変更し、前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さよりも低い場合に前記基準高さを上方に変更する、[3]に記載の成型コークスの製造方法。
[5] 前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置に近い断面位置における堆積層の高さよりも高い場合に前記基準高さを上方に変更し、前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さよりも低い場合に前記基準高さを下方に変更する、[3]に記載の成型コークスの製造方法。
[6] 成型物を乾留して成型コークスを製造する竪型乾留炉本体と、前記竪型乾留炉本体に傾斜して接続され、前記竪型乾留炉本体に前記成型物を供給する装入シュートと、前記装入シュートの途中に、前記成型物を一時的に前記装入シュートの内部に滞留させる開閉可能なゲートと、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記成型物の堆積分布を測定する堆積分布測定装置と、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する成型物の堆積層が予め定められた基準高さになった場合に前記ゲートを開くゲート制御装置と、を有する、成型コークスの製造装置であって、前記ゲート制御装置は、前記堆積分布測定装置によって測定された前記成型物の堆積分布に基づいて前記基準高さを上下方向に変更する、成型コークスの製造装置。
[7] 前記堆積分布測定装置は、前記堆積分布として、前記竪型乾留炉本体の断面中央位置と、前記断面中央位置よりも前記装入シュートが接続された炉壁位置に近い断面位置と、前記断面中央位置よりも前記装入シュートが接続された炉壁位置から離れた断面位置の少なくとも3点の前記堆積層の高さを測定する、[6]に記載の成型コークスの製造装置。
[8] 前記堆積分布測定装置によって測定される3点の前記堆積層の高さが予め定められた範囲外である場合に、前記ゲート制御装置は前記基準高さを上下方向に変更し、前記3点の堆積層の高さが予め定められた範囲外である場合に、前記ゲート制御装置は前記基準高さを上下方向に変更しない、[7]に記載の成型コークスの製造装置。
[9] 前記堆積分布測定装置によって測定される前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さよりも高い場合に、前記ゲート制御装置は前記基準高さを下方に変更し、前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さよりも低い場合に、前記ゲート制御装置は前記基準高さを上方に変更する、[8]に記載の成型コークスの製造装置。
[10] 前記堆積分布測定装置によって測定される前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さよりも高い場合に、前記ゲート制御装置は前記基準高さを上方に変更し、前記炉壁位置から離れた断面位置における前記堆積層の高さが、前記断面中央位置もしくは前記炉壁位置に近い断面位置における前記堆積層の高さよりも低い場合に、前記ゲート制御装置は前記基準高さを下方に変更する、[8]に記載の成型コークスの製造装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る成型コークスの製造方法および成型コークスの製造装置では、成型物を炉の奥行方向に分散させながら竪型乾留炉に装入できる。これにより、竪型乾留炉内に堆積する成型物の分布が改善され、炉内のガス流れがより均一になり、高品質の成型コークスを高い生産性で製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る成型コークスの製造装置の一例である竪型乾留炉設備を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す竪型乾留炉本体の上部において、炉内への成型物の供給方法を示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、ゲート制御装置16の構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、基準高さを上下方向にさらに変更する処理を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、基準高さを調整する前の成型物堆積層の高さプロファイルと、基準高さを調整した後の成型物堆積層の高さプロファイルとを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例を、成型コークスの一種であるフェロコークスの製造工程を例として説明する。尚、添付する各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下に記す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法や装置を例示するものであり、構成を下記の記載に限定するものでない。即ち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本実施形態に係る成型コークスの製造装置の一例である竪型乾留炉設備を示す模式図である。
図1では、竪型乾留炉本体の奥行き方向(竪型乾留炉本体の横断面において、炉幅方向と直交する方向)を正面としている。
【0014】
まず、
図1を用いて竪型乾留炉設備50の構成を説明する。フェロコークスを製造する竪型乾留炉設備50は、竪型乾留炉本体1を備える。竪型乾留炉本体1の上部の乾留ゾーンで成型物の乾留を行い、竪型乾留炉本体1の下部の冷却ゾーンでフェロコークスの冷却を行なう。竪型乾留炉本体1には、竪型乾留炉本体1の側方であって、乾留ゾーンの中間部に相当する位置に低温ガス吹き込み羽口8が設けられ、竪型乾留炉本体1の側方であって乾留ゾーンの下部に相当する位置には高温ガス吹き込み羽口9が設けられている。また、竪型乾留炉本体1の側方であって、冷却ゾーンの下部に相当する位置には冷却ガス吹き込み羽口12が設けられ、竪型乾留炉本体1の炉頂部には成型物を装入する装入シュート3と炉内ガス排出口14とが設けられ、竪型乾留炉本体1の下部にはフェロコークス排出口13が設けられている。竪型乾留炉本体1は、外殻(表面)が鉄皮で構成され、鉄皮の内側には耐火物(図示せず)が施工されている。
【0015】
石炭などの成型物と鉄鉱石などの鉄含有物質とを含む成型物は、成型物装入ホッパー2に収容される。フェロコークスを製造する際には、成型物装入ホッパー2に収容された成型物を、鋼製の装入シュート3を介して竪型乾留炉本体1の炉頂部に装入し、乾留ゾーンで乾留した後に冷却ゾーンで冷却し、製造されたフェロコークスを下部のフェロコークス排出口13から排出する。その際に、低温ガス吹き込み羽口8および高温ガス吹き込み羽口9から成型物を乾留するための加熱ガスが吹き込まれる。高温ガス吹き込み羽口9からは低温ガス吹き込み羽口8から吹き込まれるガスより温度の高いガスが吹き込まれる。また、製造されたフェロコークスを冷却するための冷却ガスは、冷却ガス吹き込み羽口12から吹き込まれる。吹き込まれたガスは、炉頂部の炉内ガス排出口14から排出される。装入シュート3は、竪型乾留炉本体1に傾斜して接続されている。装入シュート3の水平方向との傾斜角度θは、炉内に装入される成型物の安息角以上の角度(例えば、35~80°)である。成型物と鉄含有物質とからなる成型物は、装入シュート3の内面を滑り落ちて竪型乾留炉本体1の内部に供給される。尚、竪型乾留炉本体1で成型コークスを製造する場合には、成型物のみが竪型乾留炉本体1の内部に供給される。
【0016】
炉頂部の炉内ガス排出口14から排出された炉内ガスは、第1の循環ガス冷却装置6および第2の循環ガス冷却装置7によって冷却される。その後、炉内ガスの一部は、低温ガス加熱装置10で加熱されて低温ガス吹き込み羽口8から炉内に吹き込まれ、一部は、高温ガス加熱装置11で加熱されて高温ガス吹き込み羽口9から炉内に吹き込まれ、残部は、冷却ガス吹き込み羽口12から炉内に吹き込まれる。
【0017】
このように高さの異なる位置に設置された3段の羽口を有し、炉頂部以外にガスの排出口を有していない竪型乾留炉本体1を用いて、成型物と鉄含有物質との成型物は連続的に乾留されてフェロコークスが製造される。低温ガス吹き込み羽口8から吹き込まれる低温ガスは、竪型乾留炉本体1の内部の成型物の昇温速度調整のために吹き込まれる。低温ガスの温度は400~700℃程度であることが好ましい。高温ガス吹き込み羽口9から吹き込まれる高温ガスは、竪型乾留炉本体1の内部の成型物の最高温度への昇温のために吹き込まれる。高温ガスの温度は800~1000℃程度であることが好ましい。また、冷却ガス吹き込み羽口12から吹き込まれる冷却ガスは、炉内での乾留により製造されたフェロコークスを冷却するために吹き込まれる。冷却ガスの温度は25~80℃程度であることが好ましい。
【0018】
図2は、
図1に示す竪型乾留炉本体の上部において、炉内への成型物の供給方法を示す断面模式図である。
図2中の符号1は竪型乾留炉本体、3は装入シュート、4はゲート、5は装入物拡散部、15は竪型乾留炉本体1の内部に堆積する成型物堆積層19の堆積分布を連続的または断続的に測定する堆積分布測定装置、16は、ゲート4の開閉を制御するゲート制御装置である。
【0019】
堆積分布測定装置15は、例えば、3つの距離計15a~15cを有する。堆積分布測定装置15は、3つの距離計15a~15cで成型物堆積層19の堆積分布を測定する。距離計15a~15cは、例えば、レーザー距離計である。距離計15a~15cは、竪型乾留炉本体1の奥行方向についてL1=L2=L3=L4となる位置にそれぞれ設けられる。すなわち、堆積分布測定装置15は、成型物堆積層19の堆積分布として、竪型乾留炉本体1の断面における中央位置と、当該中央位置と装入シュート3が接続された炉壁位置との中間位置と、当該中央位置と、装入シュート3が接続されていない反対側の炉壁位置との中間位置の3点の高さを測定する。なお、各中間位置および中央位置は、いずれも竪型乾留炉本体1の断面における位置である。以下の説明では「断面」を省略するとともに、中央位置と装入シュート3が接続された炉壁位置との中間位置を第1中間位置とし、中央位置と、装入シュート3が接続されていない反対側の炉壁位置との中間位置を第2中間位置として説明する。
【0020】
装入シュート3の上部には、成型物装入ホッパー2(
図1参照)が接続されている。ゲート4は、竪型乾留炉本体1と繋がる装入シュート3の管路の途中に設けられており、開閉可能に構成され、フェロコークスの原料である成型物の1バッチ分を、装入シュート3の内部に一時的に滞留させる。また、装入物拡散部5は、装入シュート3を介して装入される成型物を装入シュート3の幅方向に分散させる。
【0021】
竪型乾留炉本体1にフェロコークスの原料である成型物を装入するにあたり、まず、装入シュート3に、フェロコークスの原料となる成型物の1バッチ分を、成型物装入ホッパー2から供給する。成型物装入ホッパー2から装入シュート3への成型物の供給時、装入シュート3の管路の途中に設けられたゲート4は閉じられた状態であり、したがって、ゲート4の上流側に1バッチ分の成型物が堆積する。
【0022】
次いで、ゲート制御装置16からの信号によってゲート4を開とされ、装入シュート3を介して竪型乾留炉本体1の内部に成型物が供給される。ゲート制御装置16には、堆積分布測定装置15による成型物堆積層19の高さの測定結果が入力されており、ゲート制御装置16は、フェロコークスの製造により荷下りし、成型物堆積層19の高さが低くなって、予め定められた基準高さになった時点で、ゲート4を開くための信号を出力してゲート4を開く。成型物は、炉幅方向の分散を促進するための装入物拡散部5を通過して竪型乾留炉本体1の内部に落下する。なお、成型物堆積層19の高さとして、3つの距離計15a~15cによって測定された各高さの平均値を用いてよい。また、基準高さは、装入シュート3から装入される成型物が、竪型乾留炉本体1の中央位置に装入される高さに設定される。
【0023】
装入シュート3に一時的に堆積していた成型物が竪型乾留炉本体1に供給された後、ゲート制御装置16はゲート4を閉じるための信号を出力してゲート4を閉じる。ゲート4が閉じたら、成型物装入ホッパー2の底部に設けられた原料切り出し装置(図示せず)の作動により、成型物装入ホッパー2から装入シュート3への1バッチ分の成型物の供給が自動的に行われる。
【0024】
装入シュート3を介して竪型乾留炉本体1の内部に成型物を供給する時、成型物の着地点は、成型物の装入時点における竪型乾留炉本体1の内部の成型物堆積層19の高さに応じて変化する。すなわち、成型物装入時点の成型物堆積層19の高さを上方に変更すると、成型物堆積層19と装入シュート3の竪型乾留炉本体1との接続位置の下端との距離が短くなるので、着地点は、竪型乾留炉本体1における装入シュート3が接続された炉壁位置に近くなる。一方、成型物の装入時点の成型物堆積層19の高さを下方に変更すると、成型物堆積層19と装入シュート3の竪型乾留炉本体1との接続位置の下端との距離が長くなるので、着地点は竪型乾留炉本体1における装入シュート3が接続された炉壁位置から離れる。
【0025】
このように、成型物の装入時点の成型物堆積層19の高さを上下方向に変更させることで、装入シュート3から装入される成型物の着地点を装入シュート3に近い側と、離れる側とに変更できる。この現象を利用し、本実施形態に係る成型コークスの製造方法では、成型物堆積層19の堆積分布を改善する。
【0026】
具体的には、成型物堆積層19の高さが、装入シュート3に近い側の方がシュートから離れた側よりも高い場合、成型物の装入時点の成型物堆積層19の高さを基準高さよりも下方にする。これにより、成型物の着地点は成型物堆積層19の山の高さが低い装入シュート3から離れた側に変更されるので、この状態で成型物1バッチを装入することで、成型物は装入シュート3から離れた位置に装入され、成型物堆積層19の堆積分布が均される。
【0027】
一方、成型物堆積層19の高さが装入シュート3から離れた側の方が装入シュート3に近い側よりも高い場合、成型物の装入時点の成型物堆積層19の高さを基準高さよりも上方に変更する。これにより、成型物の着地点は成型物堆積層19の山の高さが低い装入シュート3に近い側に変更されるので、この状態で成型物1バッチを装入することで、成型物は装入シュート3に近い位置に装入され、成型物堆積層19の堆積分布が均される。
【0028】
なお、竪型乾留炉本体1の断面中央の成型物堆積層19が高い場合には、成型物装入時点の成型物堆積層19の高さを基準高さよりも上方に変更してもよく、また、基準高さよりも下方に変更してもよい。これにより、成型物の着地点が成型物堆積層19の山の高さが低い装入シュート3に近い側、または、装入シュート3から離れた側に変更されるので、この状態で成型物1バッチを装入することで、成型物堆積層19の堆積分布が均される。
【0029】
本実施形態に係る成型コークスの製造方法では、3つの距離計15a~15cで成型物堆積層19の堆積分布を測定し、当該測定結果に応じて基準高さを上下方向に変更する。これにより、成型物堆積層19の分布の測定結果に応じて成型物の着地点を変更できるので、成型物を竪型乾留炉本体1の奥行方向に分散させながら装入でき、成型物堆積層19の堆積分布を均すことができる。
【0030】
また、3つの距離計15a~15cで測定された成型物堆積層19の高さが予め定められた範囲外である場合に基準高さを変更し、測定された成型物堆積層19の高さが予め定められた範囲内である場合には基準高さを変更しないことが好ましい。なお、予め定められた範囲とは、成型物堆積層19に堆積分布が生じていないと判断される範囲である。このように、成型物堆積層19の高さが予め定められた範囲内であって、成型物堆積層19に堆積分布が生じていない場合にも基準高さを変更すると、かえって成型物堆積層19の堆積分布を大きくしてしまうので好ましくない。
【0031】
さらに、3つの距離計15a~15cで測定された成型物堆積層19の堆積分布において、第1中間位置の高さが中央位置もしくは第2中間位置の高さよりも高い場合には基準高さを下方に変更する。一方、成型物堆積層19の堆積分布において、第1中間位置の高さが、中央位置もしくは第2中間位置の高さよりも低い場合には基準高さを上方に変更する。これにより、成型物の着地点が成型物堆積層19の高さが低い位置になり、当該位置に成型物が装入されることで成型物堆積層19の堆積分布が均される。
【0032】
同様に、3つの距離計15a~15cで測定された成型物堆積層19の堆積分布において第2中間位置の高さが、中央位置もしくは第1中間位置の高さよりも高い場合には基準高さを上方に変更する。一方、成型物堆積層19の堆積分布において、第2中間位置の高さが、中央位置もしくは第1中間位置の高さよりも低い場合には基準高さを下方に変更する。これにより、成型物の着地点が成型物堆積層19の高さが低い位置になり、当該位置に成型物が装入されることで成型物堆積層19の堆積分布が均される。このように、基準高さを上下方向に変更することで、装入シュート3から竪型乾留炉本体1の奥行方向に分散させながら成型物を装入できるので、成型物堆積層19の堆積分布を改善できる。
【0033】
次に、ゲート制御装置16の処理について説明する。
図3は、ゲート制御装置16の構成例を示す模式図である。ゲート制御装置16は、例えば、ワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータである。ゲート制御装置16は、制御部20と、入力部21と、出力部22と、記憶部23とを有する。制御部20は、例えば、CPU等であって、記憶部23から読み込んだプログラムを実行することにより、制御部20を取得部25、基準高さ調整部26、ゲート開閉部27として機能させる。入力部21は、例えば、キーボード、ディスプレイと一体的に設けられたタッチパネル等である。出力部22は、例えば、LCDまたはCRTディスプレイ等である。記憶部23は、例えば、更新記録可能なフラッシュメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたハードディスク、メモリーカード等の情報記録媒体およびその読み書き装置である。記憶部23には、制御部20が各機能を実行するためのプログラムや当該プログラムが使用するデータ等が格納されている。
【0034】
取得部25は、堆積分布測定装置15から、成型物堆積層19の高さの測定結果を取得する。堆積分布測定装置15は、3つの距離計15a~15cを有する。取得部25は、3つの距離計15a~15cから、成型物の堆積分布として第1中間位置、中央位置および第2中間位置における成型物堆積層19の高さデータを取得する。取得部25は取得した成型物堆積層19の高さデータを基準高さ調整部26およびゲート開閉部27に出力する。
【0035】
基準高さ調整部26は、取得した成型物堆積層19の高さデータに基づいて基準高さを変更する。基準高さ調整部26は、15a~15cから取得した第1中間位置、中央位置および第2中間位置の高さデータを比較し、これらが予め定められた範囲内であるか否かを判断する。基準高さ調整部26は、15a~15cから取得した高さデータが予め定められた範囲内であると判断した場合に、基準高さを変更せずに基準高さをゲート開閉部27に出力する。
【0036】
一方、15a~15cから取得した成型物堆積層19の高さデータが予め定められた範囲外であると判断した場合であって、15aから取得した第1中間位置の高さが15b、15cから取得した中央位置または第2中間位置の高さより高い場合に、基準高さ調整部26は、基準高さMを下方に変更した基準高さをゲート開閉部27に出力する。さらに、15a~15cから取得した成型物堆積層19の高さデータが予め定められた範囲外であると判断した場合であって、15aから取得した第1中間位置の高さが15b、15cから取得した中央位置または第2中間位置の高さより低い場合に、基準高さ調整部26は、基準高さを上方に変更した基準高さをゲート開閉部27に出力する。
【0037】
ゲート開閉部27は、取得部25から成型物堆積層19の高さの測定結果を取得すると、その平均値を算出する。ゲート開閉部27は、算出した平均値と、基準高さ調整部26から取得した基準高さとを比較し、荷下りにより算出した平均値が基準高さよりも低くなった時点でゲートを開く信号をゲート4に出力する。これにより、ゲート4が開き、1バッチ分の成型物が竪型乾留炉本体1に装入される。ゲートを開く信号をゲートに出力してから所定時間経過後に、ゲート開閉部27は、ゲート4を閉じる信号をゲート4に出力する。これにより、ゲート4が閉じられる。その後、成型物装入ホッパー2から1バッチ分の成型物が供給され、ゲート4によって装入シュート3の内部に滞留される。
【0038】
基準高さ調整部26は、1バッチの成型物を装入する基準高さを、例えば、ゲート開閉部27によってゲートが閉じられた時点で決定する。この場合、ゲート開閉部27からゲートを閉じる信号を基準高さ調整部26も取得し、当該信号を取得した時点において、基準高さ調整部26は基準高さを上下方向に変更するか否かを判断する。
【0039】
このように、取得部25、基準高さ調整部26およびゲート開閉部27の処理により、成型物堆積層19の堆積分布の測定結果に応じて基準高さを上下方向に変更しながら、成型物1バッチを竪型乾留炉本体に装入できる。これにより、装入シュート3から竪型乾留炉本体1の奥行方向に分散させながら成型物を装入することができ、この結果、成型物堆積層19の堆積分布が改善されて炉内のガス流れがより均一になるので、高品質な成型コークスを高い生産性で製造できるようになる。
【0040】
なお、
図1、2に示した例において、堆積分布測定装置15がL
1=L
2=L
3=L
4となる位置に設けられた3つの距離計15a~15cを有する例で示したがこれに限らない。堆積分布測定装置15は、竪型乾留炉本体の断面中央位置と、断面中央位置よりも装入シュート3が接続された炉壁位置に近い位置と、断面中央位置よりも装入シュート3が接続された炉壁位置から離れた位置の少なくとも3点の高さを測定できる距離計を有していればよい。但し、成型物堆積層19の分布を均すことを考慮すると、3つの距離計15a~15cの設置位置をL
1=L
2=L
3=L
4となる位置にすることが好ましい。
【0041】
また、
図1~3に示した例では、基準高さ調整部26が基準高さを下方または上方に変更する例を示したが、これに限らない。例えば、基準高さを変更した後においても成型物堆積層19の堆積分布が大きい場合に、基準高さ調整部26は、基準高さを上下方向にさらに変更してもよい。
【0042】
図4は、基準高さを上下方向にさらに変更する処理を示すフロー図である。
図4および
図4の説明において、距離計15aから取得した成型物堆積層19の高さを「01」とし、距離計15bから取得した成型物堆積層19の高さを「02」とし、距離計15cから取得した成型物堆積層19の高さを「03」としている。
図4のフローは、例えば、竪型乾留炉本体1に成型物の装入が開始されることで開始される。まず、基準高さ調整部26は3つの距離計15a~15cから取得した堆積面高さが予め定められた範囲内か否かを判断する(ステップS101)。
【0043】
3つの距離計15a~15cから取得した堆積面高さが予め定められた範囲内であった場合(ステップS101:Yes)、基準高さ調整部26は、基準高さをゲート開閉部27に出力する。その後、成型物堆積層19が荷下りし、基準高さまで下がったら(ステップS102)、ゲート開閉部27は、ゲート4を開ける信号を出力して成型物1バッチを装入させる(ステップS103)。その後、ゲート開閉部27はゲート4を閉じる信号を出力して、処理をステップS101に戻す。
【0044】
一方、3つの距離計15a~15cから取得した堆積面高さが予め定められた範囲外であった場合(ステップS101:No)、基準高さ調整部26は01が02、03よりも高いか否かを判断する(ステップS104)。01が02、03よりも高い場合(ステップS104:Yes)、基準高さ調整部26は、n=1(n=0+1)として(ステップS105)、基準高さを1×Xmm下げた基準高さをゲート開閉部27に出力して基準高さを下げる(ステップS106)。その後、成型物堆積層19が荷下りし、1×Xmm下げた基準高さまで下がったら(ステップS107)、ゲート開閉部27はゲート4を開ける信号を出力して成型物1バッチを装入させる(ステップS108)。ゲート開閉部27はゲート4を閉じる信号を出力して、処理をステップS109に進める。
【0045】
基準高さ調整部26は、3つの距離計15a~15cから取得した堆積面高さが予め定められた範囲内か否かを判断する(ステップS109)。3つの距離計15a~15cから取得した堆積面高さが予め定められた範囲内であった場合(ステップS109:Yes)、基準高さ調整部26はnの値を0にリセットし(ステップS110)、処理をステップS102に進める。
【0046】
3つの距離計15a~15cから取得した堆積面高さが予め定められた範囲外であった場合(ステップS109:No)、基準高さ調整部26は、01が02、03よりも高いか否かを判断する(ステップS111)。01が02、03よりも高い場合(ステップS111:Yes)、基準高さ調整部26は、n=2(n=1+1)として(ステップS105)、基準高さを2×Xmm下げた基準高さをゲート開閉部27に出力して、さらに基準高さを下げる(ステップS106)。その後、成型物堆積層19が荷下りし、2×Xmm下げた基準高さまで下がったら(ステップS107)、ゲート開閉部27は、ゲート4を開ける信号を出力して成型物1バッチを装入させる(ステップS108)。ゲート開閉部27はゲート4を閉じる信号を出力して、処理をステップS109に進め、以後の処理を繰り返し実施する。
【0047】
また、ステップS104において、01が02、03よりも高くなかった場合(ステップS104:No)、基準高さ調整部26は、k=1(k=0+1)として(ステップS113)、基準高さを1×Ymm上げた基準高さをゲート開閉部27に出力して基準高さを上げる(ステップS114)。その後、成型物堆積層19が荷下りして、1×Ymm上げた基準高さまで下がったら(ステップS115)、ゲート開閉部27は、ゲート4を開ける信号を出力して成型物1バッチを装入する(ステップS116)。ゲート開閉部27はゲート4を閉じる信号を出力して、処理をステップS117に進める。
【0048】
基準高さ調整部26は、3つの距離計15a~15cから取得した堆積面高さが予め定められた範囲内か否かを判断する(ステップS117)。3つの距離計15a~15cから取得した堆積面高さが予め定められた範囲内であった場合(ステップS109:Yes)、基準高さ調整部26はkの値を0にリセットし(ステップS110)、処理をステップS102に進める。
【0049】
3つの距離計15a~15cから取得した堆積面高さが予め定められた範囲外であった場合(ステップS117:No)、基準高さ調整部26は、01が02、03よりも高いか否かを判断する(ステップS118)。01が02、03よりも高くなかった場合(ステップS111:No)、基準高さ調整部26は、k=2(k=1+1)として(ステップS113)、基準高さを2×Ymm上げた基準高さをゲート開閉部27に出力して、さらに基準高さを上げる(ステップS114)。その後、成型物堆積層19が荷下りして、2×Ymm上げた基準高さまで下がったら(ステップS115)、ゲート開閉部27は、ゲート4を開ける信号を出力して成型物1バッチを装入する(ステップS116)。ゲート開閉部27はゲート4を閉じる信号を出力して、処理をステップS117に進め、以後の処理を繰り返し実施する。
【0050】
ステップS111において、01が02、03よりも高くなかった場合(ステップS111:No)、基準高さ調整部26はnの値を0にリセットし(ステップS112)、処理をステップS113に進め、ステップS113以降の処理を繰り返し実施する。また、ステップS118において、01が02、03よりも高いと判断した場合(ステップS118:Yes)、基準高さ調整部26はkの値を0にリセットし(ステップS119)、処理をステップS105に進めて、ステップS105以降の処理を繰り返し実施する。
【0051】
なお、ステップS103、ステップS108、ステップS116においてゲート4を開けて成型物1バッチを装入した後、
図4に示した処理を終了する指示が入力されたか否かを判断するステップを有してよい。このステップにおいて、基準高さ調整部26は本処理を終了する指示が入力されたと判断した場合に、本処理は終了する。一方、本処理を終了する指示が入力されていないと判断した場合、処理をステップS103、ステップS108、ステップS116の次に進める。
【0052】
このように、基準高さを変更した後においても成型物堆積層19の分布が改善しない場合、基準高さ調整部26は、基準高さを上下方向にさらに変更してもよい。これにより、早期に成型物堆積面の分布を均すことができる。
【0053】
なお、本実施形態に係る成型物の製造装置および製造方法では、成型物堆積層19が基準高さに荷下りした時点で成型物1バッチを装入する例を示したが、これに限らない。成型物1バッチを装入してから所定時間が経過したことを条件に、次の成型物1バッチを装入するとしてもよい。この場合、基準高さ調整部26は、基準高さを上下方向に変更することに代えて、所定時間の長短を変更する。
【0054】
例えば、所定時間を短くすると、成型物堆積層19が高い状態で次の成型物1バッチを装入することになるので、その着地点は装入シュート3が接続された炉壁位置に近くなる。一方、所定時間を長くすると、成型物堆積層19が高い状態で次の成型物1バッチを装入することになるので、その着地点は装入シュート3が接続された炉壁位置から離れる。このように、所定時間の長短を変更することで、成型物1バッチの着地点を装入シュート3に近い側と、離れる側に変更できるので、基準高さの上下方向の変更と同様に、所定時間の長短を変更することで、装入シュート3から竪型乾留炉本体1の奥行方向に分散させながら成型物を装入することができる。
【実施例0055】
以下、実施例を説明する。本実施例では1バッチあたり1トンの成型物を
図2に示した竪型乾留炉本体1に装入し、3つの距離計15a~15cを用いて成型物堆積層の高さを測定した。
【0056】
図5は、成型物堆積層の高さの平均値を示すグラフである。
図5の横軸は竪型乾留炉の奥行方向の寸法(mm)であり、縦軸は成型物堆積層の高さ(mm)である。
図5の実線は、成型物堆積層の堆積分布の測定結果に応じて基準高さを上下方向に変更して成型物を装入して形成させた成型物堆積層の堆積分布の平均値(発明例)である。
図5の破線は、基準高さの調整を行わずに成型物を装入して形成させた成型物堆積層の堆積分布の平均値(比較例)である。
【0057】
発明例では、距離計15a~15cによって測定された成型物堆積層の高さの差が200mm未満である場合は成型物堆積層の堆積分布に差がないと判断し、基準高さを変更せずに成型物を装入した。一方、距離計15aで測定された成型物堆積層の高さが、距離計15b、15cで測定された成型物堆積層の高さよりも200mm以上高い場合には、基準高さを300mm下げて次回の成型物の装入を実施した。また、距離計15aで測定された成型物堆積層の高さが、距離計15b、15cで測定された成型物堆積層の高さよりも200mm以上低い場合には、基準高さを300mm上げて次回の成型物の装入を実施した。なお、基準高さは、距離計15a~15cから14000mmの位置であり、荷下りにより、距離計15a~15cの平均高さが基準高さを下回った場合に、1バッチの成型物を竪型乾留炉本体1に装入した。比較例では、上述したように、基準高さを変更せずに成型物を竪型乾留炉本体1に装入した。
【0058】
図5に示すように、発明例の成型物堆積層の堆積分布は、比較例の堆積分布よりもなだらかになった。この結果から、成型物堆積層の堆積分布の測定結果に応じて基準高さを上下方向に変更することで、竪型乾留炉本体1の奥行方向に分散させながら成型物を装入できることが確認された。