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特開2024-126145車両用駆動伝達装置、及びそれを備えた車両用駆動装置
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  • 特開-車両用駆動伝達装置、及びそれを備えた車両用駆動装置 図1
  • 特開-車両用駆動伝達装置、及びそれを備えた車両用駆動装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126145
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両用駆動伝達装置、及びそれを備えた車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/48 20060101AFI20240912BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20240912BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20240912BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20240912BHJP
   B60K 6/365 20071001ALI20240912BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20240912BHJP
   B60K 17/346 20060101ALI20240912BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240912BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240912BHJP
【FI】
F16H3/48
B60K6/485 ZHV
B60K6/52
B60K6/547
B60K6/365
B60K6/40
B60K17/346 B
B60L15/20 K
B60L15/20 S
B60L50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034346
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】磯野 宏
【テーマコード(参考)】
3D043
3D202
3J528
5H125
【Fターム(参考)】
3D043AA06
3D043AB17
3D043EA02
3D043EA05
3D043EA13
3D043EA32
3D043EA40
3D202AA09
3D202EE10
3D202EE11
3D202EE22
3D202EE23
3D202FF01
3D202FF07
3J528EA25
3J528EB33
3J528EB62
3J528EB63
3J528FB03
3J528FC13
3J528FC23
3J528GA01
3J528HA14
3J528JA01
3J528JD02
3J528JE01
3J528JF01
3J528JG01
3J528JH01
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA04
5H125BE05
5H125FF01
(57)【要約】
【課題】変速段を切り替えるための切替機構が第1係合装置及び第2係合装置を備えた構成において、車両用駆動伝達装置の径方向の寸法を小さく抑え易い技術を提供する。
【解決手段】入力部材1と第2伝達軸3と変速機4とトランスファ5とが第1軸心X1上に配置され、第1伝達軸2が第2軸心X2上に配置され、変速機4の切替機構42は、第3回転要素E3と一体的に回転する第1ギヤG1と、第1回転要素E1又は第2回転要素E2と一体的に回転する第2ギヤG2と、第1ギヤG1に連動する第3ギヤG3と、第2ギヤG2に連動する第4ギヤG4と、第3ギヤG3と第4ギヤG4との間の動力伝達を断接する第1係合装置6と、第3ギヤG3を非回転部材NRに選択的に固定する第2係合装置7と、を備え、第3ギヤG3と第4ギヤG4と第1係合装置6と第2係合装置7とが、第1軸心X1及び第2軸心X2と平行な別軸である第3軸心X3上に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の駆動力が入力される入力部材と、
車両の前輪に駆動連結される第1伝達軸と、
車両の後輪に駆動連結される第2伝達軸と、
前記入力部材の回転を変速する変速機と、
前記変速機から伝達される駆動力を前記第1伝達軸と前記第2伝達軸とに分配するトランスファと、を備えた車両用駆動伝達装置であって、
前記入力部材と前記第2伝達軸と前記変速機と前記トランスファとが、第1軸心上に配置され、
前記第1伝達軸が、前記第1軸心と平行な別軸である第2軸心上に配置され、
前記変速機は、第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素を備え、前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素の回転速度の順が記載の順となるように構成された第1遊星歯車機構を備え、
前記第1回転要素が、前記入力部材に駆動連結され、
前記トランスファは、第4回転要素、第5回転要素、及び第6回転要素を備え、前記第4回転要素、前記第5回転要素、及び前記第6回転要素の回転速度の順が記載の順となるように構成された第2遊星歯車機構を備え、
前記第4回転要素が、前記第1伝達軸に駆動連結され、
前記第5回転要素が、前記第2回転要素に駆動連結され、
前記第6回転要素が、前記第2伝達軸に駆動連結され、
前記変速機は、変速段を切り替えるための切替機構を更に備え、
前記切替機構は、前記第3回転要素と一体的に回転する外歯の第1ギヤと、前記第1回転要素及び前記第2回転要素のいずれか一方と一体的に回転する外歯の第2ギヤと、前記第1ギヤに連動して回転する第3ギヤと、前記第2ギヤに連動して回転する第4ギヤと、前記第3ギヤと前記第4ギヤとの間の動力伝達を断接する摩擦係合式の第1係合装置と、前記第3ギヤを非回転部材に選択的に固定する摩擦係合式の第2係合装置と、を備え、
前記第3ギヤと前記第4ギヤと前記第1係合装置と前記第2係合装置とが、前記第1軸心及び前記第2軸心と平行な別軸である第3軸心上に配置されている、車両用駆動伝達装置。
【請求項2】
前記第1軸心に沿う方向を軸方向として、
前記第1係合装置は、一対の第1摩擦係合部材を備え、
前記第2係合装置は、一対の第2摩擦係合部材を備え、
前記第1係合装置と前記第2係合装置とは、前記軸方向に並んで配置されていると共に、共通の駆動機構により駆動され、
前記駆動機構は、一対の前記第1摩擦係合部材及び一対の前記第2摩擦係合部材のいずれか一方を選択的に押圧する押圧部材と、駆動モータと、前記駆動モータの回転駆動力を前記軸方向に沿う駆動力に変換して前記押圧部材に伝達するねじ式の直動変換機構と、を備える、請求項1に記載の車両用駆動伝達装置。
【請求項3】
前記第1遊星歯車機構は、サンギヤと、キャリヤと、リングギヤと、を備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構であり、
前記第1回転要素が前記サンギヤであり、
前記第2回転要素が前記キャリヤであり、
前記第3回転要素が前記リングギヤであり、
前記第1軸心に沿う方向を軸方向とし、前記第1軸心、前記第2軸心、及び前記第3軸心のそれぞれに直交する方向を、対応する軸心を基準とした径方向として、
前記第1ギヤは、前記第3回転要素に対して前記第1軸心を基準とした前記径方向の外側であって、前記第1軸心を基準とした前記径方向に沿う径方向視で前記第3回転要素と重複する位置に配置され、
前記第2ギヤは、前記第1回転要素及び前記第3回転要素とは前記軸方向にずれた位置に配置され、
前記切替機構は、前記第3ギヤと前記第1係合装置及び前記第2係合装置とを連結する第1軸部材と、前記第4ギヤと前記第1係合装置とを連結する第2軸部材と、を更に備え、
前記第1軸部材及び前記第2軸部材の一方が、前記第1軸部材及び前記第2軸部材の他方に対して、前記第3軸心を基準とした前記径方向の内側を前記軸方向に貫通するように配置されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車両用駆動伝達装置と、
内燃機関に駆動連結される内燃機関連結部材と、
第1ロータを備えた第1回転電機と、
第2ロータを備えた第2回転電機と、
第7回転要素、第8回転要素、及び第9回転要素を備えた分配用差動歯車機構と、を備えた車両用駆動装置であって、
前記第7回転要素が、前記第1ロータに駆動連結され、
前記第8回転要素が、前記内燃機関連結部材に駆動連結され、
前記第9回転要素が、前記入力部材及び前記第2ロータに駆動連結され、
前記内燃機関連結部材と前記第1回転電機と前記第2回転電機と前記分配用差動歯車機構とが、前記第1軸心上に配置され、
前記第1軸心に沿って、前記分配用差動歯車機構、前記第2回転電機、前記変速機、及び前記トランスファが、記載の順に配置されている、車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第1ロータと一体的に回転する外歯の第5ギヤと、
前記第5ギヤに連動して回転する第6ギヤと、
前記第6ギヤを前記非回転部材に選択的に固定する第3係合装置と、を更に備え、
前記第6ギヤ及び前記第3係合装置が、前記第1軸心、前記第2軸心、及び前記第3軸心と平行な別軸である第4軸心上に配置されている、請求項4に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源の駆動力が入力される入力部材と、車両の前輪に駆動連結される第1伝達軸と、車両の後輪に駆動連結される第2伝達軸と、入力部材の回転を変速する変速機と、当該変速機から伝達される駆動力を第1伝達軸と第2伝達軸とに分配するトランスファと、を備えた車両用駆動伝達装置、及びそれを備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような技術の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1には、駆動源(5,33)の駆動力が入力される入力部材(24)と、車両の前輪(2L,2R)に駆動連結される第1伝達軸(10,16)と、車両の後輪(3L,3R)に駆動連結される第2伝達軸(8,12)と、入力部材(24)の回転を変速する変速機(34)と、当該変速機から伝達される駆動力を第1伝達軸(10,16)と第2伝達軸(8,12)とに分配するトランスファ(22)と、を備えた車両用駆動伝達装置が開示されている。
【0004】
変速機(34)は、第1サンギヤ(S1)と、第2サンギヤ(S2)と、リングギヤ(R1)と、第1サンギヤ(S1)及びリングギヤ(R1)に噛み合う第1ピニオンギヤ(P1)並びに第2サンギヤ(S2)に噛み合う第2ピニオンギヤ(P2)を回転自在に支持するキャリヤ(CR1)と、を備えた遊星歯車機構(43)を備えている。
【0005】
また、変速機(34)は、変速段を切り替えるための切替機構を備えている。切替機構は、リングギヤ(R1)を非回転部材(20)に選択的に固定する第1係合装置(B1)と、第2サンギヤ(S2)を非回転部材(20)に選択的に固定する第2係合装置(B2)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-162002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の車両用駆動伝達装置では、径方向の寸法が大きい遊星歯車機構(43)に対して径方向の外側に、第1係合装置(B1)及び第2係合装置(B2)が配置されている。そのため、車両用駆動伝達装置が径方向に大型化し易い構造となっていた。
【0008】
そこで、変速段を切り替えるための切替機構が第1係合装置及び第2係合装置を備えた構成において、車両用駆動伝達装置の径方向の寸法を小さく抑え易い技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記に鑑みた、車両用駆動伝達装置の特徴構成は、
駆動源の駆動力が入力される入力部材と、
車両の前輪に駆動連結される第1伝達軸と、
車両の後輪に駆動連結される第2伝達軸と、
前記入力部材の回転を変速する変速機と、
前記変速機から伝達される駆動力を前記第1伝達軸と前記第2伝達軸とに分配するトランスファと、を備えた車両用駆動伝達装置であって、
前記入力部材と前記第2伝達軸と前記変速機と前記トランスファとが、第1軸心上に配置され、
前記第1伝達軸が、前記第1軸心と平行な別軸である第2軸心上に配置され、
前記変速機は、第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素を備え、前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素の回転速度の順が記載の順となるように構成された第1遊星歯車機構を備え、
前記第1回転要素が、前記入力部材に駆動連結され、
前記トランスファは、第4回転要素、第5回転要素、及び第6回転要素を備え、前記第4回転要素、前記第5回転要素、及び前記第6回転要素の回転速度の順が記載の順となるように構成された第2遊星歯車機構を備え、
前記第4回転要素が、前記第1伝達軸に駆動連結され、
前記第5回転要素が、前記第2回転要素に駆動連結され、
前記第6回転要素が、前記第2伝達軸に駆動連結され、
前記変速機は、変速段を切り替えるための切替機構を更に備え、
前記切替機構は、前記第3回転要素と一体的に回転する外歯の第1ギヤと、前記第1回転要素及び前記第2回転要素のいずれか一方と一体的に回転する外歯の第2ギヤと、前記第1ギヤに連動して回転する第3ギヤと、前記第2ギヤに連動して回転する第4ギヤと、前記第3ギヤと前記第4ギヤとの間の動力伝達を断接する摩擦係合式の第1係合装置と、前記第3ギヤを非回転部材に選択的に固定する摩擦係合式の第2係合装置と、を備え、
前記第3ギヤと前記第4ギヤと前記第1係合装置と前記第2係合装置とが、前記第1軸心及び前記第2軸心と平行な別軸である第3軸心上に配置されている点にある。
【0010】
この特徴構成によれば、切替機構の第1係合装置及び第2係合装置が、入力部材と第2伝達軸と変速機とトランスファとが配置された第1軸心、及び第1伝達軸が配置された第2軸心のそれぞれと平行な別軸である第3軸心上に配置されている。ここで、第1軸心上に配置された変速機の第1遊星歯車機構は、径方向の寸法が大きくなり易いため、第1係合装置及び第2係合装置が第1軸心上に配置された構成では、車両用駆動伝達装置が径方向に大型化し易い。しかしながら、本特徴構成によれば、第1係合装置及び第2係合装置が第1軸心上に配置された構成に比べて、車両用駆動伝達装置の径方向の寸法を小さく抑え易い。
また、本特徴構成によれば、第1伝達軸が第2軸心上に配置され、第3ギヤと第4ギヤと第1係合装置と第2係合装置とが第3軸心上に配置されている。つまり、第1伝達軸と、第3ギヤ、第4ギヤ、第1係合装置、及び第2係合装置とが、第1軸心とは別軸の異なる軸心上に分かれて配置されている。これにより、第1軸心の周方向における互いに異なる位置に、第1伝達軸と、第3ギヤ、第4ギヤ、第1係合装置、及び第2係合装置とを配置することにより、車両用駆動伝達装置の全体的な小径化を図り易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る車両用駆動伝達装置を備えた車両用駆動装置のスケルトン図
図2】第1係合装置及び第2係合装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、実施形態に係る車両用駆動伝達装置10、及びそれを備えた車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、車両用駆動伝達装置10は、入力部材1と、第1伝達軸2と、第2伝達軸3と、変速機4と、トランスファ5と、を備えている。
【0014】
入力部材1と第2伝達軸3と変速機4とトランスファ5とは、第1軸心X1上に配置されている。第1伝達軸2は、第1軸心X1と平行な別軸である第2軸心X2上に配置されている。
【0015】
以下の説明では、第1軸心X1に沿う方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。また、第1軸心X1を含む複数の回転軸心のそれぞれに直交する方向を、対応する軸心を基準とした「径方向R」とする。なお、どの軸心を基準とするかを区別する必要がない場合やどの軸心を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
【0016】
入力部材1は、駆動源Dの駆動力が入力される部材である。本実施形態では、駆動源Dは、内燃機関EGと、第1ステータST1及び第1ロータRT1を備えた第1回転電機MG1と、第2ステータST2及び第2ロータRT2を備えた第2回転電機MG2と、を含む。本実施形態では、入力部材1は、第2回転電機MG2の第2ロータRT2と一体的に回転するように連結された軸部材である。
【0017】
内燃機関EGは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。
【0018】
第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2のそれぞれは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2のそれぞれは、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示を省略)との間で電力の授受を行うように、当該蓄電装置と電気的に接続されている。
【0019】
第1回転電機MG1の第1ステータST1は、非回転部材NRに固定されている(図示を省略)。第1回転電機MG1の第1ロータRT1は、第1ステータST1に対して回転自在に支持されている。なお、本実施形態では、非回転部材NRは、第1回転電機MG1等を収容するケースである。
【0020】
第2回転電機MG2の第2ステータST2は、非回転部材NRに固定されている(図示を省略)。第2回転電機MG2の第2ロータRT2は、第2ステータST2に対して回転自在に支持されている。
【0021】
第1伝達軸2は、車両の前輪W1に駆動連結される軸部材である。第1伝達軸2は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、第1伝達軸2は、第1差動入力ギヤ22に噛み合う第1出力ギヤ21と一体的に回転するように連結されている。そして、第1差動入力ギヤ22に伝達される駆動力が、第1差動歯車機構DF1により、一対の前輪W1に分配される。なお、第1差動歯車機構DF1は、傘歯車式の差動歯車機構であっても良いし、遊星歯車式の差動歯車機構であっても良い。
【0022】
本実施形態では、第1出力ギヤ21及び第1差動入力ギヤ22は、互いの回転軸心が直交するように配置された傘歯車である。そのため、本実施形態では、第1出力ギヤ21の回転軸心が軸方向Lに沿うように配置されていると共に、第1差動入力ギヤ22の回転軸心が径方向Rに沿うように配置されている。本実施形態では、第1出力ギヤ21は、第1伝達軸2の軸方向第1側L1の端部に配置されている。
【0023】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。ただし、遊星歯車機構の各回転要素について「駆動連結」という場合には、遊星歯車機構における複数の回転要素が、互いに他の回転要素を介することなく連結されている状態を指すものとする。
【0024】
第2伝達軸3は、車両の後輪W2に駆動連結される軸部材である。第2伝達軸3は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、第2伝達軸3は、第2差動入力ギヤ32に噛み合う第2出力ギヤ31と一体的に回転するように連結されている。そして、第2差動入力ギヤ32に伝達される駆動力が、第2差動歯車機構DF2により、一対の後輪W2に分配される。なお、第2差動歯車機構DF2は、傘歯車式の差動歯車機構であっても良いし、遊星歯車式の差動歯車機構であっても良い。
【0025】
本実施形態では、第2出力ギヤ31及び第2差動入力ギヤ32は、互いの回転軸心が直交するように配置された傘歯車である。そのため、本実施形態では、第2出力ギヤ31の回転軸心が軸方向Lに沿うように配置されていると共に、第2差動入力ギヤ32の回転軸心が径方向Rに沿うように配置されている。本実施形態では、第2出力ギヤ31は、第2伝達軸3の軸方向第2側L2の端部に配置されている。
【0026】
変速機4は、入力部材1の回転を変速するように構成されている。変速機4は、第1遊星歯車機構41を備えている。第1遊星歯車機構41は、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3を備えている。第1遊星歯車機構41は、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3の回転速度の順が記載の順となるように構成されている。
【0027】
ここで、「回転速度の順」とは、各回転要素の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素の回転速度は、遊星歯車機構の回転状態によって変化するが、各回転要素の回転速度の高低の並び順は、遊星歯車機構の構造によって定まるものであるため一定となる。
【0028】
本実施形態では、第1遊星歯車機構41は、第1サンギヤS1と、第1キャリヤC1と、第1リングギヤR1と、を備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
【0029】
第1キャリヤC1は、第1ピニオンギヤP1を回転自在に支持している。第1ピニオンギヤP1は、第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1に噛み合っている。第1ピニオンギヤP1は、その軸心回りに回転(自転)すると共に、第1軸心X1を中心として回転(公転)する。第1ピニオンギヤP1は、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。
【0030】
第1回転要素E1は、入力部材1に駆動連結されている。本実施形態では、第1回転要素E1は、第1サンギヤS1である。そして、第1サンギヤS1は、入力部材1と一体的に回転するように連結されている。
【0031】
本実施形態では、第2回転要素E2は、第1キャリヤC1である。また、第3回転要素E3は、第1リングギヤR1である。
【0032】
トランスファ5は、変速機4から伝達される駆動力を第1伝達軸2と第2伝達軸3とに分配するように構成されている。本実施形態では、トランスファ5は、変速機4に対して軸方向第2側L2に隣接するように配置されている。
【0033】
トランスファ5は、第2遊星歯車機構51を備えている。第2遊星歯車機構51は、第4回転要素E4、第5回転要素E5、及び第6回転要素E6を備えている。第2遊星歯車機構51は、第4回転要素E4、第5回転要素E5、及び第6回転要素E6の回転速度の順が記載の順となるように構成されている。
【0034】
本実施形態では、第2遊星歯車機構51は、第2サンギヤS2と、第2キャリヤC2と、第2リングギヤR2と、を備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
【0035】
第2キャリヤC2は、第2ピニオンギヤP2を回転自在に支持している。第2ピニオンギヤP2は、第2サンギヤS2及び第2リングギヤR2に噛み合っている。第2ピニオンギヤP2は、その軸心回りに回転(自転)すると共に、第1軸心X1を中心として回転(公転)する。第2ピニオンギヤP2は、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。
【0036】
第4回転要素E4は、第1伝達軸2に駆動連結されている。本実施形態では、第4回転要素E4は、第2サンギヤS2である。そして、第2サンギヤS2は、第1スプロケット23と第2スプロケット24とに巻き掛けられたチェーン25を介して、第1伝達軸2に連結されている。第1スプロケット23は、第2サンギヤS2と一体的に回転するように連結されている。第2スプロケット24は、第1伝達軸2と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1スプロケット23は、第2サンギヤS2に対して軸方向第2側L2に配置されている。また、第2スプロケット24は、第1伝達軸2の軸方向第2側L2の端部に配置されている。
【0037】
第5回転要素E5は、第2回転要素E2に駆動連結されている。本実施形態では、第5回転要素E5は、第2キャリヤC2である。そして、第2キャリヤC2は、第2回転要素E2としての第1キャリヤC1と一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、第2キャリヤC2は、第2ピニオンギヤP2及び第2リングギヤR2に対して軸方向第2側L2を通るように第2ピニオンギヤP2から径方向Rの外側に向けて延在し、そこから第2リングギヤR2に対して径方向Rの外側を通るように軸方向第1側L1に向けて延在し、そこから第2リングギヤR2、第2ピニオンギヤP2、及び第2サンギヤS2に対して軸方向第1側L1を通るように径方向Rの内側に向けて延在している。
【0038】
第6回転要素E6は、第2伝達軸3に駆動連結されている。本実施形態では、第6回転要素E6は、第2リングギヤR2である。そして、第2リングギヤR2は、第2伝達軸3と一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、第2伝達軸3は、第2サンギヤS2及び第1スプロケット23に対して径方向Rの内側を軸方向Lに貫通するように配置されている。そして、第2伝達軸3の軸方向第1側L1の端部が、径方向Rの外側に向けて延在するフランジ状に形成され、その径方向Rの外側の端部が、第2リングギヤR2に連結されている。
【0039】
変速機4は、変速段を切り替えるための切替機構42を更に備えている。切替機構42は、第1ギヤG1と、第2ギヤG2と、第3ギヤG3と、第4ギヤG4と、第1係合装置6と、第2係合装置7と、を備えている。
【0040】
第1ギヤG1と第2ギヤG2とは、第1軸心X1上に配置されている。第3ギヤG3と第4ギヤG4と第1係合装置6と第2係合装置7とは、第1軸心X1及び第2軸心X2と平行な別軸である第3軸心X3上に配置されている。
【0041】
第1ギヤG1は、第1遊星歯車機構41の第3回転要素E3と一体的に回転する外歯のギヤである。本実施形態では、第1ギヤG1は、第3回転要素E3(ここでは、第1リングギヤR1)に対して第1軸心X1を基準とした径方向Rの外側であって、第1軸心X1を基準とした径方向Rに沿う径方向視で第3回転要素E3と重複する位置に配置されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0042】
第2ギヤG2は、第1遊星歯車機構41の第1回転要素E1及び第2回転要素E2のいずれか一方と一体的に回転する外歯のギヤである。本実施形態では、第2ギヤG2は、第1回転要素E1としての第1サンギヤS1と一体的に回転するように連結されている。また、本実施形態では、第2ギヤG2は、第1回転要素E1及び第3回転要素E3とは軸方向Lにずれた位置に配置されている。図1に示す例では、第2ギヤG2は、第1軸心X1を基準とした径方向Rに沿う径方向視で、第1遊星歯車機構41のいずれの回転要素とも重複しないように配置されている。また、第2ギヤG2は、第2回転電機MG2と第1遊星歯車機構41との軸方向Lの間に配置されている。
【0043】
第3ギヤG3は、第1ギヤG1に連動して回転するギヤである。本実施形態では、第3ギヤG3は、第1ギヤG1に噛み合っている。
【0044】
第4ギヤG4は、第2ギヤG2に連動して回転するギヤである。本実施形態では、第4ギヤG4は、第2ギヤG2に噛み合っている。
【0045】
第1係合装置6は、第3ギヤG3と第4ギヤG4との間の動力伝達を断接する摩擦係合式の係合装置である。第2係合装置7は、第3ギヤG3を非回転部材NRに選択的に固定する摩擦係合式の係合装置である。ここで、摩擦係合式の係合装置は、一対の摩擦係合部材の係合圧に応じて、係合の状態(係合状態/解放状態)を制御可能に構成されている。摩擦係合式の係合装置において、係合状態は、「直結係合状態」と「スリップ係合状態」とを含む。直結係合状態は、一対の摩擦係合部材が差回転なく係合している状態である。また、スリップ係合状態は、一対の摩擦係合部材が差回転を有して係合している状態である。
【0046】
第1係合装置6が直結係合状態となると、第3ギヤG3と第4ギヤG4とが互いに一体的に回転するように連結される。一方、第2係合装置7が解放状態又はスリップ係合状態となると、第3ギヤG3と第4ギヤG4とが互いに相対回転自在となる。
【0047】
第2係合装置7が直結係合状態となると、第3ギヤG3が非回転部材NRに固定される。一方、第1係合装置6が解放状態又はスリップ係合状態となると、第3ギヤG3が非回転部材NRに対して相対回転自在となる。
【0048】
本実施形態では、切替機構42は、第1係合装置6及び第2係合装置7のいずれか一方が係合状態となり、他方が解放状態となるように構成されている。本実施形態では、第1係合装置6が解放状態、かつ、第2係合装置7が係合状態の場合に、比較的変速比が大きい第1変速段が形成される。そして、第1係合装置6が直結係合状態、かつ、第2係合装置7が解放状態の場合に、比較的変速比が小さい第2変速段が形成される。
【0049】
以上のように、車両用駆動伝達装置10は、
駆動源Dの駆動力が入力される入力部材1と、
車両の前輪W1に駆動連結される第1伝達軸2と、
車両の後輪W2に駆動連結される第2伝達軸3と、
入力部材1の回転を変速する変速機4と、
変速機4から伝達される駆動力を第1伝達軸2と第2伝達軸3とに分配するトランスファ5と、を備えた車両用駆動伝達装置10であって、
入力部材1と第2伝達軸3と変速機4とトランスファ5とが、第1軸心X1上に配置され、
第1伝達軸2が、第1軸心X1と平行な別軸である第2軸心X2上に配置され、
変速機4は、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3を備え、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3の回転速度の順が記載の順となるように構成された第1遊星歯車機構41を備え、
第1回転要素E1が、入力部材1に駆動連結され、
トランスファ5は、第4回転要素E4、第5回転要素E5、及び第6回転要素E6を備え、第4回転要素E4、第5回転要素E5、及び第6回転要素E6の回転速度の順が記載の順となるように構成された第2遊星歯車機構51を備え、
第4回転要素E4が、第1伝達軸2に駆動連結され、
第5回転要素E5が、第2回転要素E2に駆動連結され、
第6回転要素E6が、第2伝達軸3に駆動連結され、
変速機4は、変速段を切り替えるための切替機構42を更に備え、
切替機構42は、第3回転要素E3と一体的に回転する外歯の第1ギヤG1と、第1回転要素E1及び第2回転要素E2のいずれか一方と一体的に回転する外歯の第2ギヤG2と、第1ギヤG1に連動して回転する第3ギヤG3と、第2ギヤG2に連動して回転する第4ギヤG4と、第3ギヤG3と第4ギヤG4との間の動力伝達を断接する摩擦係合式の第1係合装置6と、第3ギヤG3を非回転部材NRに選択的に固定する摩擦係合式の第2係合装置7と、を備え、
第3ギヤG3と第4ギヤG4と第1係合装置6と第2係合装置7とが、第1軸心X1及び第2軸心X2と平行な別軸である第3軸心X3上に配置されている。
【0050】
この構成によれば、切替機構42の第1係合装置6及び第2係合装置7が、入力部材1と第2伝達軸3と変速機4とトランスファ5とが配置された第1軸心X1、及び第1伝達軸2が配置された第2軸心X2のそれぞれと平行な別軸である第3軸心X3上に配置されている。ここで、第1軸心X1上に配置された変速機4の第1遊星歯車機構41は、径方向Rの寸法が大きくなり易いため、第1係合装置6及び第2係合装置7が第1軸心X1上に配置された構成では、車両用駆動伝達装置10が径方向Rに大型化し易い。しかしながら、本構成によれば、第1係合装置6及び第2係合装置7が第1軸心X1上に配置された構成に比べて、車両用駆動伝達装置10の径方向Rの寸法を小さく抑え易い。
また、本構成によれば、第1伝達軸2が第2軸心X2上に配置され、第3ギヤG3と第4ギヤG4と第1係合装置6と第2係合装置7とが第3軸心X3上に配置されている。つまり、第1伝達軸2と、第3ギヤG3、第4ギヤG4、第1係合装置6、及び第2係合装置7とが、第1軸心X1とは別軸の異なる軸心上に分かれて配置されている。これにより、第1軸心X1の周方向における互いに異なる位置に、第1伝達軸2と、第3ギヤG3、第4ギヤG4、第1係合装置6、及び第2係合装置7とを配置することにより、車両用駆動伝達装置10の全体的な小径化を図り易い。
【0051】
図2に示すように、第1係合装置6は、一対の第1摩擦係合部材61を備えている。一対の第1摩擦係合部材61は、第1外側係合部材611と、第1内側係合部材612と、を含む。
【0052】
第1外側係合部材611と第1内側係合部材612とは、互いに軸方向Lに対向するように配置されている。そして、第1外側係合部材611と第1内側係合部材612とは、軸方向Lに押し付けられることで互いに摩擦係合する。また、第1外側係合部材611と第1内側係合部材612とは、複数枚ずつ設けられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。
【0053】
第2係合装置7は、一対の第2摩擦係合部材71を備えている。一対の第2摩擦係合部材71は、第2外側係合部材711と、第2内側係合部材712と、を含む。
【0054】
第2外側係合部材711と第2内側係合部材712とは、互いに軸方向Lに対向するように配置されている。そして、第2外側係合部材711と第2内側係合部材712とは、軸方向Lに押し付けられることで互いに摩擦係合する。また、第2外側係合部材711と第2内側係合部材712とは、複数枚ずつ設けられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。
【0055】
本実施形態では、第1係合装置6は、第1外側係合部材611を支持する第1外側支持部材62と、第1内側係合部材612を支持する第1内側支持部材63と、を更に備えている。
【0056】
第1外側支持部材62は、第1外側係合部材611を、周方向に相対回転不能、かつ、軸方向Lに摺動可能に支持している。本実施形態では、第1外側支持部材62は、第3軸心X3を軸心とする筒状に形成されている。そして、第1外側支持部材62は、第1外側係合部材611を径方向Rの外側から支持している。本例では、第1外側支持部材62の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。一方、第1外側係合部材611の外周部にも、同様のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン歯同士が係合されている。
【0057】
第1内側支持部材63は、第1内側係合部材612を、周方向に相対回転不能、かつ、軸方向Lに摺動可能に支持している。本実施形態では、第1内側支持部材63は、第1外側支持部材62と同軸であって、第1外側支持部材62よりも小径に形成されている。そして、第1内側支持部材63は、第1内側係合部材612を径方向Rの内側から支持している。本例では、第1内側支持部材63の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。一方、第1内側係合部材612の内周部にも、同様のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン歯同士が係合されている。
【0058】
本実施形態では、第2係合装置7は、第2外側係合部材711を支持する第2外側支持部材72と、第2内側係合部材712を支持する第2内側支持部材73と、を更に備えている。
【0059】
第2外側支持部材72は、第2外側係合部材711を、周方向に相対回転不能、かつ、軸方向Lに摺動可能に支持している。本実施形態では、第2外側支持部材72は、第3軸心X3を軸心とする筒状に形成されている。そして、第2外側支持部材72は、第2外側係合部材711を径方向Rの外側から支持している。本例では、第2外側支持部材72の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。一方、第2外側係合部材711の外周部にも、同様のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン歯同士が係合されている。
【0060】
本実施形態では、第2外側支持部材72は、第1外側支持部材62と一体的に回転するように連結されている。そのため、本実施形態では、第2外側支持部材72に支持された第2外側係合部材711と、第1外側支持部材62に支持された第1外側係合部材611とが、互いに一体的に回転する。
【0061】
第2内側支持部材73は、第2内側係合部材712を、周方向に相対回転不能、かつ、軸方向Lに摺動可能に支持している。本実施形態では、第2内側支持部材73は、第2外側支持部材72と同軸であって、第2外側支持部材72よりも小径の筒状に形成されている。そして、第2内側支持部材73は、第2内側係合部材712を径方向Rの内側から支持している。本例では、第2内側支持部材73の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。一方、第2内側係合部材712の内周部にも、同様のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン歯同士が係合されている。
【0062】
第2内側支持部材73は、非回転部材NRに固定されている。本実施形態では、非回転部材NRとしてのケースは、径方向Rに沿って延在するように形成された支持壁部20を備えている。そして、第2内側支持部材73は、支持壁部20に固定されている。図2に示す例では、支持壁部20は、第2係合装置7を軸方向第2側L2から覆うように配置されている。そして、第2内側支持部材73は、支持壁部20から軸方向第1側L1に突出するように形成されている。
【0063】
本実施形態では、第1係合装置6と第2係合装置7とは、軸方向Lに並んで配置されている。図示の例では、第1係合装置6が第2係合装置7に対して軸方向第1側L1に隣接するように配置されている。
【0064】
図1に示すように、本実施形態では、第1係合装置6及び第2係合装置7は、トランスファ5とは軸方向Lにずれた位置に配置されている。図1に示す例では、第1係合装置6及び第2係合装置7は、トランスファ5よりも軸方向第2側L2に配置されている。この構成によれば、第1係合装置6及び第2係合装置7が配置される第3軸心X3を、第1軸心X1に近づけて配置し易い。したがって、車両用駆動伝達装置10の径方向Rの寸法を小さく抑え易い。
【0065】
図2に示すように、本実施形態では、切替機構42は、駆動機構8を更に備えている。駆動機構8は、第1係合装置6及び第2係合装置7の双方を駆動するように構成されている。つまり、第1係合装置6及び第2係合装置7は、共通の駆動機構8により駆動される。駆動機構8は、押圧部材81と、駆動モータ82と、直動変換機構83と、を備えている。
【0066】
押圧部材81は、一対の第1摩擦係合部材61及び一対の第2摩擦係合部材71のいずれか一方を選択的に押圧する部材である。駆動モータ82は、所定の回転駆動力を出力するモータである。直動変換機構83は、駆動モータ82の回転駆動力を軸方向Lに沿う駆動力に変換して押圧部材81に伝達するねじ式の直動変換機構である。
【0067】
本実施形態では、押圧部材81は、第1押圧部811と、第2押圧部812と、を備えている。
【0068】
第1押圧部811は、第1係合装置6の一対の第1摩擦係合部材61を軸方向Lに押圧するように構成されている。本実施形態では、第1押圧部811は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。そして、第1押圧部811は、一対の第1摩擦係合部材61を軸方向第2側L2から押圧するように配置されている。また、本実施形態では、第1押圧部811は、第1係合装置6の第1外側支持部材62に対して、軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に支持されている。
【0069】
第2押圧部812は、第2係合装置7の一対の第2摩擦係合部材71を軸方向Lに押圧するように構成されている。本実施形態では、第2押圧部812は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。そして、第2押圧部812は、一対の第2摩擦係合部材71を軸方向第1側L1から押圧するように配置されている。また、本実施形態では、第2押圧部812は、第1押圧部811とは別部材により構成され、第1押圧部811に軸方向Lに対向するように配置されている。そして、第2押圧部812は、第1押圧部811に対して、スラスト軸受B1を介して相対回転自在に支持されている。そのため、本実施形態では、第1押圧部811と第2押圧部812とは、互いに相対回転可能な状態で、軸方向Lに連動して移動するように構成されている。
【0070】
本実施形態では、直動変換機構83は、ねじ軸84と、ナット部材85と、伝達機構86と、を備えている。
【0071】
ねじ軸84は、非回転部材NRに対して回転自在に支持されている。ねじ軸84の外周部には、ねじ山が形成されている。ねじ軸84は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、ねじ軸84は、第3軸心X3上に配置されている。そして、本実施形態では、ねじ軸84は、第2係合装置7の第2内側支持部材73に対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で第2内側支持部材73と重複する位置に配置されている。
【0072】
ナット部材85は、ねじ軸84に螺合するように構成されている。つまり、ナット部材85の内周部には、ねじ軸84のねじ山に係合する溝が形成されている。また、ナット部材85は、非回転部材NRに対して、軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に支持されている。本実施形態では、ナット部材85は、第2内側支持部材73に対して径方向Rの内側に配置されている。そして、ナット部材85は、当該ナット部材85の外周部と第2内側支持部材73の内周部との径方向Rの間に配置された連結部材85aにより、非回転部材NRに対して軸方向Lに相対移動可能であって相対回転が規制された状態で、第2内側支持部材73に連結されている。こうして、ナット部材85は、ねじ軸84が回転することにより、当該回転方向とねじ軸84のねじ山の向きとに応じて軸方向Lに沿う直線運動を行う。
【0073】
本実施形態では、ナット部材85は、押圧部材81の第2押圧部812と一体的に軸方向Lに移動するように連結されている。図2に示す例では、ナット部材85から第2押圧部812が径方向Rの外側に向けて延在するように、ナット部材85と第2押圧部812とが一体的に形成されている。
【0074】
伝達機構86は、駆動モータ82の回転駆動力をねじ軸84に伝達するように構成されている。本実施形態では、伝達機構86は、駆動モータ82の回転を減速してねじ軸84に伝達する。本実施形態では、伝達機構86は、第1伝達ギヤ861と、第2伝達ギヤ862と、第3伝達ギヤ863と、第4伝達ギヤ864と、連結体865と、を備えている。
【0075】
第1伝達ギヤ861は、駆動モータ82の出力軸と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、駆動モータ82は、その軸方向Lの配置領域が、第1係合装置6及び第2係合装置7の双方の軸方向Lの配置領域と重なるように配置されている。そして、第1伝達ギヤ861は、駆動モータ82に対して軸方向第2側L2に隣接するように配置されている。
【0076】
第2伝達ギヤ862は、第1伝達ギヤ861に噛み合っている。本実施形態では、第2伝達ギヤ862は、第1伝達ギヤ861よりも大径に形成されている。
【0077】
第3伝達ギヤ863は、第2伝達ギヤ862と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第3伝達ギヤ863は、第2伝達ギヤ862よりも小径に形成されている。また、第3伝達ギヤ863は、第2伝達ギヤ862に対して軸方向第1側L1に隣接するように配置されている。
【0078】
第4伝達ギヤ864は、第3伝達ギヤ863に噛み合っている。本実施形態では、第4伝達ギヤ864は、第3軸心X3上に配置されている。また、第4伝達ギヤ864は、第3伝達ギヤ863よりも大径に形成されている。
【0079】
本実施形態では、第2伝達ギヤ862の歯数は、第1伝達ギヤ861の歯数よりも多い。そして、第4伝達ギヤ864の歯数は、第2伝達ギヤ862と一体的に回転する第3伝達ギヤ863の歯数よりも多い。そのため、本実施形態では、駆動モータ82から第1伝達ギヤ861に伝達された回転は、第1伝達ギヤ861と第2伝達ギヤ862との間で減速されて、第3伝達ギヤ863に伝達される。そして、第3伝達ギヤ863の回転は、第3伝達ギヤ863と第4伝達ギヤ864との間で減速されて、連結体865に伝達される。
【0080】
連結体865は、第4伝達ギヤ864とねじ軸84とが一体的に回転するように、それらを連結している。本実施形態では、連結体865は、当該連結体865から軸方向第1側L1にねじ軸84が突出した状態で、ねじ軸84と一体的に回転するように連結されている。
【0081】
本実施形態では、連結体865は、軸方向第2側L2が開口する筒状に形成されている。そして、連結体865は、軸体866を介して、第4伝達ギヤ864と一体的に回転するように連結されている。軸体866は、軸方向Lに沿って延在する軸状に形成されている。本実施形態では、軸体866は、第4伝達ギヤ864から軸方向第1側L1に向けて延在するように形成されている。そして、軸体866は、連結体865に対して径方向Rの内側に配置された状態で、連結体865と一体的に回転するように連結されている。
【0082】
本実施形態では、駆動モータ82が回転方向の一方側に回転駆動すると、伝達機構86を介して駆動モータ82の回転駆動力がねじ軸84に伝達され、ナット部材85が軸方向第1側L1に移動する。ここで、上述したように、本実施形態では、第1押圧部811と第2押圧部812との軸方向Lの間に、スラスト軸受B1が配置されている。そのため、本実施形態では、ナット部材85が軸方向第1側L1に移動すると、ナット部材85を介して第2押圧部812が軸方向第1側L1に移動すると共に、スラスト軸受B1を介して第1押圧部811も軸方向第1側L1に移動する。その結果、一対の第1摩擦係合部材61が第1押圧部811によって押圧されて、第1係合装置6が係合状態となると共に、第2押圧部812による一対の第2摩擦係合部材71の押圧が解除されて、第2係合装置7が解放状態となる。
【0083】
一方、駆動モータ82が回転方向の他方側に回転駆動すると、伝達機構86を介して駆動モータ82の回転駆動力がねじ軸84に伝達され、ナット部材85が軸方向第2側L2に移動する。これに伴い、ナット部材85を介して第2押圧部812が軸方向第2側L2に移動する。その結果、一対の第2摩擦係合部材71が第2押圧部812によって押圧されて、第2係合装置7が係合状態となると共に、第1押圧部811による一対の第1摩擦係合部材61の押圧が解除されて、第1係合装置6が解放状態となる。
【0084】
このように、本実施形態では、第1係合装置6は、一対の第1摩擦係合部材61を備え、
第2係合装置7は、一対の第2摩擦係合部材71を備え、
第1係合装置6と第2係合装置7とは、軸方向Lに並んで配置されていると共に、共通の駆動機構8により駆動され、
駆動機構8は、一対の第1摩擦係合部材61及び一対の第2摩擦係合部材71のいずれか一方を選択的に押圧する押圧部材81と、駆動モータ82と、当該駆動モータ82の回転駆動力を軸方向Lに沿う駆動力に変換して押圧部材81に伝達するねじ式の直動変換機構83と、を備える。
【0085】
この構成によれば、第1係合装置6及び第2係合装置7を駆動する駆動機構8が、駆動モータ82とねじ式の直動変換機構83とを用いて構成されている。これにより、例えば、駆動機構が油圧式である構成、第1係合装置6及び第2係合装置7のそれぞれに対して専用の駆動機構が設けられた構成等に比べて、車両用駆動伝達装置10の小型化を図り易い。
【0086】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、切替機構42は、第1軸部材43と、第2軸部材44と、を更に備えている。
【0087】
第1軸部材43は、第3ギヤG3と第1係合装置6及び第2係合装置7とを連結する軸部材である。第2軸部材44は、第4ギヤG4と第1係合装置6とを連結する軸部材である。図2に示すように、本実施形態では、第1軸部材43は、第1係合装置6の第1外側支持部材62、及び第2係合装置7の第2外側支持部材72と一体的に回転するように連結されている。また、本実施形態では、第2軸部材44は、第1係合装置6の第1内側支持部材63と一体的に回転するように連結されている。
【0088】
本実施形態では、第1軸部材43及び第2軸部材44の一方が、第1軸部材43及び第2軸部材44の他方に対して、第3軸心X3を基準とした径方向Rの内側を軸方向Lに貫通するように配置されている。図示の例では、第1軸部材43が、第3軸心X3を軸心とする筒状に形成されている。そして、第2軸部材44が、第1軸部材43に対して、第3軸心X3を基準とした径方向Rの内側を軸方向Lに貫通するように配置されている。
【0089】
このように、本実施形態では、第1遊星歯車機構41は、第1サンギヤS1と、第1キャリヤC1と、第1リングギヤR1と、を備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構であり、
第1回転要素E1が第1サンギヤS1であり、
第2回転要素E2が第1キャリヤC1であり、
第3回転要素E3が第1リングギヤR1であり、
第1ギヤG1は、第3回転要素E3に対して第1軸心X1を基準とした径方向Rの外側であって、第1軸心X1を基準とした径方向Rに沿う径方向視で第3回転要素E3と重複する位置に配置され、
第2ギヤG2は、第1回転要素E1及び第3回転要素E3とは軸方向Lにずれた位置に配置され、
切替機構42は、第3ギヤG3と第1係合装置6及び第2係合装置7とを連結する第1軸部材43と、第4ギヤG4と第1係合装置6とを連結する第2軸部材44と、を更に備え、
第1軸部材43及び第2軸部材44の一方が、第1軸部材43及び第2軸部材44の他方に対して、第3軸心X3を基準とした径方向Rの内側を軸方向Lに貫通するように配置されている。
【0090】
この構成によれば、第1ギヤG1が、第3回転要素E3に対して第1軸心X1を基準とした径方向Rの外側であって、第1軸心X1を基準とした径方向Rに沿う径方向視で第3回転要素E3と重複する位置に配置されている。そして、第2ギヤG2が、第1回転要素E1及び第3回転要素E3とは軸方向Lにずれた位置に配置されている。これにより、第1ギヤG1、第2ギヤG2、第3ギヤG3、及び第4ギヤG4を適切に配置しつつ、切替機構42の小型化を図り易い。
また、本構成によれば、切替機構42の第1軸部材43及び第2軸部材44の一方が他方に対して、第3軸心X3を基準とした径方向Rの内側を軸方向Lに貫通するように配置されている。これにより、切替機構42の軸方向Lの寸法を小さく抑え易い。
【0091】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、上記の車両用駆動伝達装置10と、上記の第1回転電機MG1と、上記の第2回転電機MG2と、内燃機関連結部材ECと、分配用差動歯車機構SPと、を備えている。
【0092】
内燃機関連結部材ECは、内燃機関EGに駆動連結される部材である。本実施形態では、内燃機関連結部材ECは、内燃機関EGの出力軸である。
【0093】
分配用差動歯車機構SPは、第7回転要素E7と、第8回転要素E8と、第9回転要素E9と、を備えている。第7回転要素E7は、第1ロータRT1に駆動連結されている。第8回転要素E8は、内燃機関連結部材ECに駆動連結されている。第9回転要素E9は、入力部材1及び第2ロータRT2に駆動連結されている。
【0094】
本実施形態では、分配用差動歯車機構SPは、第3サンギヤS31と、第4サンギヤS32と、第3キャリヤC3と、を備えた遊星歯車機構である。
【0095】
第3キャリヤC3は、第3ピニオンギヤP31、第4ピニオンギヤP32、及び第5ピニオンギヤP33を回転自在に支持している。第3ピニオンギヤP31及び第4ピニオンギヤP32は、互いに一体的に回転するように連結されている。第3ピニオンギヤP31は、第3サンギヤS31に噛み合っている。第4ピニオンギヤP32は、第5ピニオンギヤP33に噛み合っている。第5ピニオンギヤP33は、第4サンギヤS32に噛み合っている。第3ピニオンギヤP31及び第4ピニオンギヤP32は、それらの軸心回りに回転(自転)すると共に、第1軸心X1を中心として回転(公転)する。第3ピニオンギヤP31及び第4ピニオンギヤP32は、それらの公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。また、第5ピニオンギヤP33は、その軸心回りに回転(自転)すると共に、第1軸心X1を中心として回転(公転)する。第5ピニオンギヤP33は、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。
【0096】
本実施形態では、第4ピニオンギヤP32が第3ピニオンギヤP31よりも軸方向第1側L1に配置されている。そして、第4ピニオンギヤP32が第3ピニオンギヤP31よりも小径に形成されている。
【0097】
本実施形態では、第3サンギヤS31は、第7回転要素E7である。そして、第3サンギヤS31は、第1ロータRT1と一体的に回転するように連結されている。
【0098】
また、本実施形態では、第3キャリヤC3は、第8回転要素E8である。そして、第3キャリヤC3は、ワンウェイクラッチOWCを介して、内燃機関連結部材ECに連結されている。ワンウェイクラッチOWCは、第3キャリヤC3の回転方向に応じて、第3キャリヤC3と内燃機関連結部材ECの出力軸との相対回転を規制又は許容する。
【0099】
また、本実施形態では、第4サンギヤS32は、第9回転要素E9である。そして、第4サンギヤS32は、入力部材1と一体的に回転するように連結されている。
【0100】
本実施形態では、分配用差動歯車機構SPは、第1ロータRT1に対して第1軸心X1を基準とした径方向Rの内側であって、第1軸心X1を基準とした径方向Rに沿う径方向視で第1ロータRT1と重複する位置に配置されている。
【0101】
本実施形態では、内燃機関連結部材ECと第1回転電機MG1と第2回転電機MG2と分配用差動歯車機構SPとが、第1軸心X1上に配置されている。そして、第1軸心X1に沿って、分配用差動歯車機構SP、第2回転電機MG2、変速機4、及びトランスファ5が、記載の順に配置されている。図1に示す例では、内燃機関連結部材EC、分配用差動歯車機構SP、第2回転電機MG2、変速機4、及びトランスファ5が、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向けて、記載の順に配置されている。
【0102】
以上のように、車両用駆動装置100は、
上記の車両用駆動伝達装置10と、
内燃機関EGに駆動連結される内燃機関連結部材ECと、
第1ロータRT1を備えた第1回転電機MG1と、
第2ロータRT2を備えた第2回転電機MG2と、
第7回転要素E7、第8回転要素E8、及び第9回転要素E9を備えた分配用差動歯車機構SPと、を備えた車両用駆動装置100であって、
第7回転要素E7が、第1ロータRT1に駆動連結され、
第8回転要素E8が、内燃機関連結部材ECに駆動連結され、
第9回転要素E9が、入力部材1及び第2ロータRT2に駆動連結され、
内燃機関連結部材ECと第1回転電機MG1と第2回転電機MG2と分配用差動歯車機構SPとが、第1軸心X1上に配置され、
第1軸心X1に沿って、分配用差動歯車機構SP、第2回転電機MG2、変速機4、及びトランスファ5が、記載の順に配置されている。
【0103】
この構成によれば、内燃機関EG、第1回転電機MG1、及び第2回転電機MG2の駆動力を分配用差動歯車機構SPにより合成して車両用駆動伝達装置10に伝達し、車両を適切に走行させることができる。
また、本構成によれば、第1軸心X1上に、入力部材1、第2伝達軸3、変速機4、及びトランスファ5に加えて、内燃機関連結部材EC、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2、及び分配用差動歯車機構SPが配置されている。これにより、車両用駆動装置100の径方向Rの寸法を小さく抑え易い。
【0104】
図1に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第5ギヤG5と、第6ギヤG6と、第3係合装置9と、を更に備えている。
【0105】
第5ギヤG5は、第1ロータRT1と一体的に回転する外歯のギヤである。本実施形態では、第5ギヤG5は、第1軸心X1上に配置されている。また、本実施形態では、第5ギヤG5は、第1回転電機MG1と第2回転電機MG2との軸方向Lの間に配置されている。そして、入力部材1が、分配用差動歯車機構SPの第3サンギヤS31、及び第5ギヤG5に対して、径方向Rの内側を軸方向Lに貫通するように配置されている。
【0106】
第6ギヤG6は、第5ギヤG5に連動して回転するギヤである。本実施形態では、第6ギヤG6は、第5ギヤG5に噛み合っている。また、本実施形態では、第6ギヤG6は、第1軸心X1、第2軸心X2、及び第3軸心X3と平行な別軸である第4軸心X4上に配置されている。
【0107】
第3係合装置9は、第6ギヤG6を非回転部材NRに選択的に固定する係合装置である。第3係合装置9は、第4軸心X4上に配置されている。本実施形態では、第3係合装置9は、摩擦係合式の係合装置である。
【0108】
このように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、
第1ロータRT1と一体的に回転する外歯の第5ギヤG5と、
第5ギヤG5に連動して回転する第6ギヤG6と、
第6ギヤG6を非回転部材NRに選択的に固定する第3係合装置9と、を更に備え、
第6ギヤG6及び第3係合装置9が、第1軸心X1、第2軸心X2、及び第3軸心X3と平行な別軸である第4軸心X4上に配置されている。
【0109】
この構成によれば、第1回転電機MG1が故障した場合であっても、第3係合装置9を係合状態とすることにより、内燃機関EGの駆動力を車両用駆動伝達装置10に伝達することが可能となる。また、内燃機関EGが停止状態である場合には、第3係合装置9を係合状態とすることにより、第2回転電機MG2の駆動力による内燃機関EGの始動を行うことも可能となる。
また、本構成によれば、第3係合装置9を係合状態とすることにより、第1回転電機MG1の駆動力を利用せず、内燃機関EG及び第2回転電機MG2の駆動力を利用した、いわゆるパラレルハイブリッドモードで車両を走行させることができる。したがって、車両の高速巡行中のエネルギ効率を高め易い。
【0110】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第1遊星歯車機構41及び第2遊星歯車機構51のそれぞれがシングルピニオン型の遊星歯車機構である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1遊星歯車機構41及び第2遊星歯車機構51の少なくとも一方がダブルピニオン型の遊星歯車機構であっても良い。
【0111】
(2)上記の実施形態では、第3ギヤG3が第1ギヤG1に噛み合い、第4ギヤG4が第2ギヤG2に噛み合い、第6ギヤG6が第5ギヤG5に噛み合う構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第3ギヤG3がアイドラギヤを介して第1ギヤG1に連結されていても良い。また、第4ギヤG4がアイドラギヤを介して第2ギヤG2に連結されていても良い。また、第6ギヤG6がアイドラギヤを介して第5ギヤG5に連結されていても良い。
【0112】
(3)上記の実施形態では、第4軸心X4が第3軸心X3と平行な別軸である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第4軸心X4が第3軸心X3と同軸であっても良い。
【0113】
(4)上記の実施形態では、第3係合装置9が摩擦係合式の係合装置である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第3係合装置9が噛み合い式の係合装置であっても良い。
【0114】
(5)上記の実施形態では、分配用差動歯車機構SPが、第1ロータRT1に対して第1軸心X1を基準とした径方向Rの内側であって、第1軸心X1を基準とした径方向Rに沿う径方向視で第1ロータRT1と重複する位置に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、分配用差動歯車機構SPが、第1ロータRT1とは軸方向Lにずれた位置に配置されていても良い。
【0115】
(6)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本開示に係る技術は、駆動源の駆動力が入力される入力部材と、車両の前輪に駆動連結される第1伝達軸と、車両の後輪に駆動連結される第2伝達軸と、入力部材の回転を変速する変速機と、当該変速機から伝達される駆動力を第1伝達軸と第2伝達軸とに分配するトランスファと、を備えた車両用駆動伝達装置、及びそれを備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0117】
100:車両用駆動装置、10:車両用駆動伝達装置、1:入力部材、2:第1伝達軸、3:第2伝達軸、4:変速機、41:第1遊星歯車機構、E1:第1回転要素、E2:第2回転要素、E3:第3回転要素、S1:第1サンギヤ(サンギヤ)、C1:第1キャリヤ(キャリヤ)、R1:第1リングギヤ(リングギヤ)、42:切替機構、43:第1軸部材、44:第2軸部材、G1:第1ギヤ、G2:第2ギヤ、G3:第3ギヤ、G4:第4ギヤ、5:トランスファ、51:第2遊星歯車機構、E4:第4回転要素、E5:第5回転要素、E6:第6回転要素、6:第1係合装置、61:第1摩擦係合部材、7:第2係合装置、71:第2摩擦係合部材、8:駆動機構、81:押圧部材、82:駆動モータ、83:直動変換機構、9:第3係合装置、MG1:第1回転電機、RT1:第1ロータ、MG2:第2回転電機、RT2:第2ロータ、SP:分配用差動歯車機構、E7:第7回転要素、E8:第8回転要素、E9:第9回転要素、NR:非回転部材、EG:内燃機関、EC:内燃機関連結部材、W1:前輪、W2:後輪、X1:第1軸心、X2:第2軸心、X3:第3軸心、X4:第4軸心、L:軸方向、R:径方向
図1
図2