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  • 特開-設計用空調熱負荷の計算方法 図1
  • 特開-設計用空調熱負荷の計算方法 図2
  • 特開-設計用空調熱負荷の計算方法 図3
  • 特開-設計用空調熱負荷の計算方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126153
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】設計用空調熱負荷の計算方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/62 20180101AFI20240912BHJP
   F24F 140/50 20180101ALN20240912BHJP
【FI】
F24F11/62
F24F140:50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034361
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相賀 洋
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA75
3L260CA39
3L260CB01
3L260CB78
3L260EA03
3L260EA07
3L260EA21
(57)【要約】
【課題】設計上妥当な設計用空調熱負荷を計算する方法を提供する。
【解決手段】所定期間における空調装置の装置負荷の分布を求める処理と、前記分布から設計偏差値に対応する装置負荷を取得して設計用空調熱負荷とする処理と、を含む設計用空調熱負荷の計算方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間における空調装置の装置負荷の分布を求める処理と、
前記分布から設計偏差値に対応する装置負荷を取得して設計用空調熱負荷とする処理と、を含む、
設計用空調熱負荷の計算方法。
【請求項2】
前記所定期間は、前記空調装置が暖房運転を行う期間であり、
前記設計用熱負荷は、暖房時の設計用装置負荷である、請求項1に記載の計算方法。
【請求項3】
前記所定期間は、前記空調装置が冷房運転を行う期間であり、
前記設計用熱負荷は、冷房時の設計用装置負荷である、請求項1に記載の計算方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法を実行する装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計用空調熱負荷の計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、設計用の空調熱負荷を求める際には、例えば1年間などの一定期間に亘る空調装置の熱負荷(以下、装置負荷とも称する)を取得した結果に基づいて算出している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】空気調和・衛生工学会、「空気調和・衛生工学便覧 1基礎編」、空気調和・衛生工学会、2010年2月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、計算した装置負荷のばらつきは考慮されず、超過危険率に対応した順位(降順)で、設計用空調熱負荷が決定されていた。超過危険率の分母も明確には定義されておらず、年間冷房・暖房空調時間をそれぞれ想定したり、年間空調時間としたりで曖昧であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を鑑み、本発明は一態様として、設計上妥当な設計用空調熱負荷を計算する方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、設計上妥当な設計用空調熱負荷を計算できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態による設計用空調熱負荷計算の手順を示すフローチャートである。
図2】装置負荷の分布の一例を示すグラフと、偏差値及び設計用最大熱負荷の計算式である。
図3】年間計算によって得られた装置負荷を示すグラフの一例であり、従来技術によって設計用装置負荷を設定する状況を示す。
図4】本実施形態によるコンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態の一つである設計用空調熱負荷計算方法について、図1のフローを用いて以下に説明する。
【0009】
実施形態において設計用空調熱負荷を求める場合、算定の基準となる期間を設定する(S1)。設計用空調熱負荷を求めるための期間として、例えば1年間またはそれ以上の期間が設定され得る。設定された期間通期における、冷暖房による設計用空調熱負荷を求めることができる。また、冷房時の設計用空調熱負荷を求める場合には、冷房運転を行う期間が設定され得る。同様に、暖房時の設計用空調熱負荷を求める場合には、暖房運転を行う期間が設定され得る。
【0010】
次に、設定された期間に亘って、想定する室内における空調装置の装置負荷を計算する(S2)。装置負荷の計算は、設定された期間における気象データを取得し、その気象データに基づいて空調装置負荷を年間計算することによって実行することができる。
【0011】
空調装置の熱負荷計算の具体的な手法には様々な方法があるが、一例として空気調和・衛生工学会の動的熱負荷計算プログラムNewHASPなどのシミュレーションプログラムを用いた方法が知られている。
【0012】
次の処理では、計算された装置負荷に基づいて、最大熱負荷を取得する(S3)。計算された装置負荷の一例を図2に示す。図2では、或る室の装置負荷を年間計算した結果として得られた各日の装置負荷の計算データの分布を示している。装置負荷の計算データの分布において、設計上定められた偏差値(設計偏差値)に対応する装置負荷が取得され、この取得された装置負荷が設計用空調熱負荷として設定される。参考のため、偏差値の計算式を図2の式1に示す。
【0013】
空調負荷を抽出するための偏差値は、設計条件等に応じて設定される。例えば、図2のグラフに示す分布において、+2σに相当する設計偏差値T(図2では偏差値70)が設定された場合、設計偏差値Tに対応する装置負荷が選ばれ、設計用空調熱負荷として設定される(図2、式2)。なお、設計偏差値Tに合致する装置負荷のデータの値が無い場合、1次式や2次式などで適切に補間または近似して分布図グラフを作成し、設計用空調熱負荷が計算されてもよい。
【0014】
(従来技術との比較)
従来技術との比較のため、従来における設計用空調熱負荷の設定方法について以下に説明する。図3では、或る室の空調装置における装置負荷を年間計算し、得られた装置負荷を大きな値から順に、つまり降順に並べている。
【0015】
従来の手法においては、設計上定めた危険率に対応する順位の装置負荷が選ばれ、設計上の空調熱負荷として設定される。図3のように、危険率2.5%に相当する順位が20位である場合、計算された複数個の装置負荷の中から20番目に大きな値が抽出されて設計用空調熱負荷とされる。
【0016】
従来の方法では、装置負荷の分布形状や、通常の値からかけ離れた装置負荷の存在などは考慮されず、一概に順位で選定されてしまう。そのため、設定された設計用空調熱負荷が、過剰なものとなってしまう場合があった。
【0017】
(装置、プログラム)
なお、上記の計算方法は、コンピュータ上で機能可能なプログラムとして構成して、該コンピュータ上で機能させれば、自動的かつ簡便・迅速に実行されることとなる。例えば、図4のブロック図に示す様に、プログラムPを記憶する記憶装置30とコンピュータを備える制御装置40とを互いに通信可能に備えたコンピュータシステムCを構成し、コンピュータシステムCに上記の方法を実行させることが可能である。この場合、起動したプログラムPの命令に従って、制御装置40が処理S1-S3を実行する。
【0018】
<効果>
上記各実施形態においては、以下のような態様が開示される。
【0019】
(態様1)上記実施形態では、所定期間における空調装置の装置負荷の分布を求める処理(S2)と、前記分布から設計偏差値に対応する装置負荷を取得して設計用空調熱負荷とする処理(S3)と、を含む、設計用空調熱負荷の計算方法が提供される。
【0020】
上記構成とすることにより、設計上妥当な設計用空調熱負荷を計算できる。特に、超過危険率の定義などに依存することなく、偏差値によって明確な基準の下で装置負荷を選定できる。また、順位による選定と異なり、装置負荷の分布形状に対応した、適切な設計用空調熱負荷を設定可能である。
【0021】
(態様2)態様1において、所定期間とは、前記空調装置が暖房運転を行う期間であり、設計用熱負荷は、暖房時の設計用装置負荷である。
【0022】
上記構成とすることにより、暖房を使用している期間における、設計用空調熱負荷を適切に計算することができる。
【0023】
(態様3)態様1において、所定期間は、空調装置が冷房運転を行う期間であり、設計用熱負荷は、冷房時の設計用装置負荷である。
【0024】
上記構成とすることにより、冷房を使用している期間における、設計用空調熱負荷を適切に計算することができる。
【0025】
(態様4)態様1から3のいずれかの方法は、コンピュータシステムCを備えた装置によって実行される。
【0026】
(態様5)態様1から3のいずれかの方法は、プログラムPによってコンピュータに実行される。
【0027】
上記構成とすることにより、迅速または正確に設計用空調熱負荷を計算することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
コンピュータシステムC、プログラムP、記憶装置30、制御装置40
図1
図2
図3
図4