(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126155
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】アレイプローブ用治具
(51)【国際特許分類】
G01N 27/9093 20210101AFI20240912BHJP
【FI】
G01N27/9093
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034364
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】神納 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】浦田 幹康
(72)【発明者】
【氏名】中尾 太哉
(72)【発明者】
【氏名】木村 忠功
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA11
2G053AB21
2G053BA03
2G053BA30
2G053BC14
2G053CA03
2G053DA01
2G053DB02
2G053DB23
2G053DB24
(57)【要約】
【課題】検査対象部位に対するアレイプローブの密着性を向上させることで、より高い精度で欠陥を検出することが可能なアレイプローブ用治具を提供する。
【解決手段】アレイプローブ用治具は、励磁コイルと検出コイルを含む複数のコイルモジュールと、複数のコイルモジュールを、同一面内で配列されるように保持するとともに、弾性変形可能な材料で形成されたコイルホルダと、を有するアレイプローブに取り付け可能なアレイプローブ用治具であって、アレイプローブを検査対象部位に対して押圧する押圧面を有し、内部に充填された流体によって膨張可能な弾性材料で形成された袋体と、袋体を支持する支持部材と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルと検出コイルを含む複数のコイルモジュールと、該複数のコイルモジュールを、同一面内で配列されるように保持するとともに、弾性変形可能な材料で形成されたコイルホルダと、を有するアレイプローブに取り付け可能なアレイプローブ用治具であって、
前記アレイプローブを検査対象部位に対して押圧する押圧面を有し、内部に充填された流体によって膨張可能な弾性材料で形成された袋体と、
該袋体を支持する支持部材と、
を備えるアレイプローブ用治具。
【請求項2】
前記袋体に併設されて、前記アレイプローブを前記検査対象部位に向かう方向に付勢する弾性部材と、
該弾性部材の先端に着脱自在に設けられて、前記アレイプローブを前記検査対象部位に対して押圧する前記押圧面の一部を形成する押圧部材と、
をさらに備える請求項1に記載のアレイプローブ用治具。
【請求項3】
弾性材料で形成され、前記アレイプローブと前記押圧面との間に介在する弾性シート部材をさらに備える請求項1又は2に記載のアレイプローブ用治具。
【請求項4】
ダイラタント性を有する材料で形成され、前記アレイプローブと前記押圧面との間に介在するダイラタントシート部材をさらに備える請求項1又は2に記載のアレイプローブ用治具。
【請求項5】
前記アレイプローブと前記検査対象部位との間に介在する保護シート部材をさらに備える請求項1又は2に記載のアレイプローブ用治具。
【請求項6】
前記保護シート部材と前記検査対象部位との間に潤滑剤を塗布可能な潤滑部をさらに備える請求項5に記載のアレイプローブ用治具。
【請求項7】
前記支持部材は、前記袋体を挟むようにして配置された一対の分割体を有し、
該分割体は、
前記検査対象部位に対して近接する方向と離間する方向とに変位可能な第一部材と、
該第一部材に対して間隔をあけて配置された第二部材と、
前記第一部材と前記第二部材との間に着脱自在に挿入されるシム部材と、
を有する請求項1又は2に記載のアレイプローブ用治具。
【請求項8】
前記検査対象部位と前記アレイプローブとの間に設けられ、該アレイプローブに付加される面圧を検知可能な面圧検知部と、
該面圧検知部が検知した前記面圧が予め定められた範囲に収まるように、前記袋体に充填される前記流体の量を調節可能な流体量調節部と、
をさらに備える請求項1又は2に記載のアレイプローブ用治具。
【請求項9】
前記袋体は、互いに隣接する複数の小袋体を有する請求項1又は2に記載のアレイプローブ用治具。
【請求項10】
前記支持部材は、前記袋体が配置される収容空間を形成するとともに、前記アレイプローブに向かって開口する開口部を有し、前記袋体には、膨張した状態で前記開口部から突出可能な突出部が予め形成されている請求項1又は2に記載のアレイプローブ用治具。
【請求項11】
前記収容空間は、前記押圧面とは反対側に位置する領域の方が、前記押圧面に近接する領域よりも容積が小さく形成されている請求項10に記載のアレイプローブ用治具。
【請求項12】
励磁コイルと検出コイルを含む複数のコイルモジュールと、該複数のコイルモジュールを、同一面内で配列されるように保持するとともに、弾性変形可能な材料で形成されたコイルホルダと、を有するアレイプローブに取り付け可能なアレイプローブ用治具であって、
前記アレイプローブを検査対象部位に向かう方向に付勢する弾性部材と、
該弾性部材の先端に着脱自在に設けられて、前記アレイプローブを前記検査対象部位に対して押圧する押圧面を有する押圧部材と、
を備えるアレイプローブ用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アレイプローブ用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接部等の検査対象部位のきずや減肉などの欠陥を非破壊で検査する方法として渦電流探傷方法が知られている。この方法では、検査対象部位の表面に渦電流を形成させる励磁コイルと、検査対象の欠陥個所で生じた渦電流の乱れをインピーダンス変化に基づいて検出する検出コイルとを有するコイルモジュールが用いられる。1つのコイルを励磁コイル、及び検出コイルとして用いる場合もある。例えば、このような技術の具体例として下記特許文献1に記載された装置が知られている。
【0003】
下記特許文献1に係る装置は、プローブと、プローブの被験体に対する角度を固定する固定手段と、その角度を保持したままプローブを所定の方向に移動可能とする可動機構と、を備えている。可動機構によってプローブを移動させるに当たって、プローブの角度が維持され続けるため、被検体に対して常態的に当該プローブを正対させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、溶接部等では、不定形かつ、小さな凹凸が多数形成されていることが一般的である。このため、上記特許文献1に係る装置では、角度こそ一定に維持できるものの、溶接部表面に対してプローブを密着させ続けることが難しい。その結果、欠陥の検出精度が限定的となってしまうという課題があった。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、検査対象部位に対するアレイプローブの密着性を向上させることで、より高い精度で欠陥を検出することが可能なアレイプローブ用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るアレイプローブ用治具は、励磁コイルと検出コイルを含む複数のコイルモジュールと、該複数のコイルモジュールを、同一面内で配列されるように保持するとともに、弾性変形可能な材料で形成されたコイルホルダと、を有するアレイプローブに取り付け可能なアレイプローブ用治具であって、前記アレイプローブを検査対象部位に対して押圧する押圧面を有し、内部に充填された流体によって膨張可能な弾性材料で形成された袋体と、該袋体を支持する支持部材と、を備える。
【0008】
本開示に係るアレイプローブ用治具は、励磁コイルと検出コイルを含む複数のコイルモジュールと、該複数のコイルモジュールを、同一面内で配列されるように保持するとともに、弾性変形可能な材料で形成されたコイルホルダと、を有するアレイプローブに取り付け可能なアレイプローブ用治具であって、前記アレイプローブを前記検査対象部位に向かう方向に付勢する弾性部材と、該弾性部材の先端に着脱自在に設けられて、前記アレイプローブを検査対象部位に対して押圧する押圧面を有する押圧部材と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、検査対象部位に対するアレイプローブの密着性を向上させることで、より高い精度で欠陥を検出することが可能なアレイプローブ用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第一実施形態に係るアレイプローブ、及びアレイプローブ用治具の構成を示す断面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係るアレイプローブ用治具の構成を示す平面図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係る袋体を走査方向に直交する水平方向から見た図である。
【
図4】本開示の第一実施形態に係る袋体と支持部材の構成を示す模式図である。
【
図5】本開示の第一実施形態に係るアレイプローブ用治具の第一変形例を示す断面図である。
【
図6】本開示の第一実施形態に係るアレイプローブ用治具の第二変形例を示す断面図である。
【
図7】本開示の第一実施形態に係るアレイプローブ用治具の第三変形例を示す模式図である。
【
図8】本開示の第一実施形態に係るアレイプローブ用治具の第四変形例を示す模式図である。
【
図9】本開示の第二実施形態に係るアレイプローブ、及びアレイプローブ用治具の構成を示す断面図である。
【
図10】本開示の第三実施形態に係るアレイプローブ、及びアレイプローブ用治具の構成を示す断面図である。
【
図11】本開示の各実施形態に共通するアレイプローブ用治具の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係るアレイプローブ1、及びアレイプローブ用治具2について、
図1から
図4を参照して説明する。このアレイプローブ1は、例えば
図1に示すような検査対象部位100に対して渦電流による探傷検査を行うための装置である。検査対象部位100として、
図1の例では、互いに重ね合わされた2つの板材101の一方側の端面と他方側の表面との間に形成された隅肉溶接部102を示している。隅肉溶接部102は、断面視で円弧状の表面を有し、板材101の端面に沿って延びている。アレイプローブ用治具2は、このような隅肉溶接部102に対してアレイプローブ1を密着させるために用いられる。
【0012】
(アレイプローブ1の構成)
アレイプローブ1は、複数のコイルモジュール(図示省略)と、これらコイルモジュールを同一面内で配列した状態で保持するコイルホルダと、を有する。各コイルモジュールは、励磁コイルと、検出コイルと、を有する。励磁コイルは、検査対象部位100の表面付近で渦電流を発生させる。検出コイルは、この渦電流が割れや減肉等の欠陥によって乱された場合に、当該乱れ成分を検出する。一例として、励磁コイルと検出コイルは、それぞれ環状をなし、互いの軸線が交差するように一方が他方の内周側に挿入されたクロスコイルを形成している。
【0013】
コイルホルダは、弾性変形可能な樹脂材料で一体に形成された板状をなしている。つまり、コイルホルダは、隅肉溶接部102等の曲面形状に対して追従するようにして自在に変形することが可能である。なお、当初から曲率を有してコイルホルダが湾曲した状態で形成されていてもよい。コイルホルダには、上記のコイルモジュールを収容するための複数の凹部が形成されている。このように構成されたアレイプローブ1における検査対象部位100側を向く面を以下の説明では検査面11と呼ぶことがある。
【0014】
(アレイプローブ用治具2の構成)
アレイプローブ用治具2は、袋体21と、支持部材22と、弾性部材23と、押圧部材24と、弾性シート部材25と、保護シート部材26と、案内部材27と、を備える。
【0015】
袋体21は、例えばゴムやシリコン等で形成された袋状の風船であり、外部から供給された流体(例えば空気)によって膨張することが可能である。つまり、流体が内部に充填されることによって、袋体21の内圧が上昇して、外側で隣接する部材に対する面圧を発生させることが可能とされている。また、袋体21は、外側で隣接する他の部材によって形成される空間の形状に合わせて自在に変形することができる。袋体21における検査対象部位100側を向く面は、後述する弾性シート部材25等を介してアレイプローブ1を押圧する押圧面31を形成している。
【0016】
支持部材22は、上記の袋体21を外側から囲むようにして支持している。支持部材22は、袋体21を挟むようにして配置された一対の分割体41と、これら分割体41同士を接続する接続部材42と、を有する。これら分割体41のうち一方(第一分割体43)は、検査対象部位100としての隅肉溶接部102の上方に位置し、他方(第二分割体44)は、隅肉溶接部102の下方に位置している。このうち、第一分割体43は、さらに3つの部材によって構成されている。即ち、第一分割体43は、第一部材45と、第二部材46と、シム部材47と、を有する。
【0017】
第一部材45は、検査対象部位100に対して近接・離間する方向に変位することが可能な状態で第二部材46によって支持されている。第一部材45の検査対象部位100側を向く面は、傾斜端面48とされている。傾斜端面48は、袋体21から離間するに従って検査対象部位100から次第に離間する方向に延びている。第二部材46は、第一部材45よりも上方(つまり、検査対象部位100から離間する側)に位置している。第一部材45と第二部材46との間には、複数のシム部材47が挿入されている。シム部材47は、予め定められた厚さを有する板材であり、当該シム部材47の挿入される数を適宜変更することで、第一部材45の第二部材46に対する高さ位置を変化させることが可能とされている。つまり、検査対象部位100における板材101の板厚の大小に合わせて、これらシム部材47の数を増減することで、板材101によって形成された段差に対応することができる。第一部材45と第二部材46とは、例えばボルトとナットによって接続されており、シム部材47は、これら部材同士の間の隙間に介在している。
【0018】
第二分割体44は、袋体21を挟んで第一分割体43とは反対側に位置している。第二分割体44の上面は、接続部材42を介して第一分割体43の上面と一体に接続されている。第二分割体44には、弾性部材23、及び押圧部材24を収容する収容孔61が形成されている。収容孔61は、板材101の端縁の延びる方向(つまり、アレイプローブ1を走査させる方向)に間隔をあけて複数設けられている。弾性部材23は、例えば圧縮コイルバネである。弾性部材23は、第二分割体44に固定されている。弾性部材23の先端(アレイプローブ1を向く側の端部)には、押圧部材24が着脱自在に取り付けられている。つまり、弾性部材23は、押圧部材24をアレイプローブ1側に向かって付勢している。
【0019】
一例として、押圧部材24のアレイプローブ1側を向く面(傾斜面51)は、弾性部材23としてのコイルバネの中心軸Xに対して直交しない状態で交差するように傾斜している。傾斜面51は、上述した袋体21とともに、アレイプローブ1を押圧するための押圧面31の一部を形成している。つまり、アレイプローブ1は、袋体21と押圧部材24によって検査対象部位100に対して押し付けられている。また、弾性部材23の中心軸Xは、板材101の法線方向に対して傾斜する方向に延びている。より具体的には、中心軸Xは、円弧状をなす隅肉溶接部102の表面の径方向に延びている。なお、隅肉溶接部102の表面は完全な円弧でない場合があるが、ここで言う「径方向」とは当該円弧を巨視的に見た場合の実質的な径方向を指すものとする。さらに言い換えれば、中心軸Xは、板材101同士の接合部(隅肉溶接部102の最下端であって上側の板材101の端縁)に向かって延びている。接続部材42は、第二分割体44、弾性部材23、及び押圧部材24が上記のような姿勢となるようにして、第一分割体43と第二分割体44とを接続している。つまり、接続部材42は、断面視で屈曲している。また、接続部材42は、袋体21が外部に飛び出さないように押さえる蓋の役割も果たしている。したがって、第一分割体43と第二分割体44は一体に形成されていてもよい。
【0020】
第一分割体43と第二分割体44との間の空間は、袋体21を収容するための収容空間Vとされている。収容空間Vは、板材101の端縁が延びる方向から見た場合、検査対象部位100側に近接するに従って次第に断面積が小さくなるように形成されている。また、
図3に示すように、板材101の端縁が延びる方向に直交する水平方向から見た場合、収容空間Vの上方の一対の角部は切り欠かれている。これにより、収容空間Vは、押圧面31とは反対側に位置する領域の方が、押圧面31に近接する領域よりも容積が小さくなっている。さらに
図4に示すように、収容空間Vの下方(つまり、検査対象部位100を向く側)には、開口部Aが形成されている。この開口部Aの開口面積に対して、袋体21の押圧面31の容積は十分に大きくなるように設定されている。言い換えると、袋体21は、開口部Aからその表面の一部のみが露出するように構成されている。したがって、開口部Aから露出する押圧面31は、袋体21の角部等の形状の影響を受けず、平坦となっている。
【0021】
図1に示すように、弾性シート部材25は、押圧面31とアレイプローブ1との間に介在している。弾性シート部材25は、コイルホルダと同様に弾性変形可能な樹脂材料によって形成されている。具体的に弾性シート部材25の材質としては、イソプレンラバー、ポリウレタンゴム、ゴムシート(NBR)、及び天然ゴム等が考えられる。弾性シート部材25は、押圧面31によって押圧されることで、検査対象部位100の凹凸形状に倣うようにアレイプローブ1と一体となって弾性変形することが可能である。なお、アレイプローブ1のコイルホルダを形成する材料は、弾性シート部材25よりも大きな弾性係数を有してもよいし、小さな弾性係数を有してもよい。また、弾性シート部材25に代えて、又は弾性シート部材25とともに、ダイラタント特性を有するダイラタントシート部材28を設けることも可能である。ダイラタント特性とは、短時間のうちに加えられる力に対しては高い剛性を示す一方で、長時間をかけて加えられる力に対しては低い剛性を示す特性を指す。この種のシートを用いた場合には、アレイプローブ1の検査面11とは反対側の面に敷設される各種の配線等を外力から保護することが可能である。
【0022】
保護シート部材26は、アレイプローブ1の検査面11を外側から覆っている。保護シート部材26は、アレイプローブ1の検査面11が検査対象部位100による摩擦で損耗することを防ぐために設けられている。保護シート部材26としては、テント生地のような布素材や、テフロン(登録商標)、充填剤入りテフロン(登録商標)、その他の樹脂材料を用いることができる。また、保護シート部材26は、第一分割体43、及び第二分割体44に対して着脱自在に取り付けられている。具体的には、接着剤や面ファスナー等によって保護シート部材26が第一分割体43、及び第二分割体44に固定されている。したがって、保護シート部材26が損耗した場合には交換が可能である。
【0023】
案内部材27は、アレイプローブ1、及びアレイプローブ用治具2を、検査対象部位100の隅肉溶接部102に沿って案内するために設けられている。
図2に示すように、案内部材27は、第一分割体43、及び第二分割体44を外側から囲むC字状をなしている。案内部材27の二つの端部は、隅肉溶接部102の下端に当接している。つまり、アレイプローブ1を隅肉溶接部102に沿って走査させる際に、当該案内部材27を走査方向の前方側と後方側で隅肉溶接部102に当接させ続けることで、当該隅肉溶接部102から逸脱せずに探傷検査を続けることが可能とされている。
【0024】
(作用効果)
次に、上述のアレイプローブ1、及びアレイプローブ用治具2の取り扱い方法の一例について説明する。アレイプローブ1による探傷検査を行うに当たっては、まず、上述の案内部材27の先端を隅肉溶接部102に当接させる。さらに、袋体21に流体を注入して、袋体21の内圧によってアレイプローブ1が隅肉溶接部102の凹凸に合わせて密着した状態とする。この時、弾性部材23によって押圧部材24がアレイプローブ1側に付勢させることで、アレイプローブ1はさらに隅肉溶接部102の凹凸に合わせて変形した状態となる。この状態でアレイプローブ1による探傷検査を開始し、隅肉溶接部102の延びる方向にアレイプローブ1、及びアレイプローブ用治具2を移動させる(走査する。)。隅肉溶接部102にきずや減肉等の欠陥が生じた場合には、不図示のモニター装置によって当該欠陥の視覚化と解析が適宜行われる。ここで、溶接部等では、不定形かつ、小さな凹凸が多数形成されていることが一般的である。このため、従来の技術では、当該凹凸等の影響を受けて探傷検査の精度が低下する恐れがあった。しかしながら、本実施形態に係るアレイプローブ1、及びアレイプローブ用治具2は、上述の各構成を採用することでこの課題を解決している。
【0025】
即ち、上記構成によれば、アレイプローブ1が弾性変形可能なコイルホルダを有することによって、当該アレイプローブ1自体が曲面や段差等に追従しやすくなる。さらに、このアレイプローブ1を袋体21の押圧面31によって、つまり、点でなく面によって押圧することで、アレイプローブ1を曲面や段差等の小さな凹凸にさらに密着させたまま検査を行うことが可能となる。これにより、検査の精度をさらに向上させることができる。他方で、アレイプローブ1が凹凸に追従しきれない場合には、アレイプローブ1と検査対象部位100との間に隙間が形成され、当該隙間の影響によって探傷検査の精度が低下してしまう。上記構成によれば、このような可能性を低減し、高精度で安定的な探傷検査を行うことが可能となる。また、袋体21に注入する流体の量を適宜調節することで、当該袋体21の内圧を自在に変化させることができる。これにより、押圧面31で生じる面圧を適切に調節することが可能となる。したがって、様々な形状の検査対象部位100に対してアレイプローブ1を用いることが可能となる。つまり、アレイプローブ用治具2の汎用性を向上させることができる。
【0026】
さらに、上記構成によれば、袋体21に加えて、アレイプローブ1を押圧部材24によって押圧することで、当該アレイプローブ1を曲面や段差等の小さな凹凸にさらに密着させたまま検査を行うことが可能となる。これにより、検査の精度をさらに向上させることができる。特に、弾性部材23としてのコイルバネのバネ定数を適宜変更することで、押圧力を自在に変化させることが可能である。これにより、様々な形状の検査対象部位100に対してアレイプローブ1を用いることが可能となる。つまり、アレイプローブ用治具2の汎用性を向上させることができる。
【0027】
上記構成によれば、弾性シート部材25が介在することで、アレイプローブ1と押圧面31との間の面圧を均一に分散させることができる。これにより、アレイプローブ1を検査対象部位100に対してさらに密接に接触させることが可能となる。また、上記構成によれば、ダイラタント性を有するダイラタントシート部材28を設けることで、アレイプローブ1の押圧面31側に設けられた各種の配線等を外力から保護することができる。これにより、断線等のトラブルが回避され、安定的かつ円滑に検査を継続することが可能となる。一方で、これら弾性シート部材25、又はダイラタントシート部材28を設けない場合には、アレイプローブ1のコイルホルダの柔軟性のみに基づいて当該アレイプローブ1を弾性変形させる必要がある。このため、位置によっては、袋体21等の押圧力が均一に付加されず、アレイプローブ1の追従性が低下する可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、このような可能性を低減して、アレイプローブ1をさらに密接に検査対象部位100に対して面接触させることが可能となる。
【0028】
また、上記構成によれば、アレイプローブ1における検査対象部位100を向く側の面(検査面11)が保護シート部材26で保護されている。これにより、検査対象部位100との摩擦によるアレイプローブ1の摩耗や損傷を回避することができる。したがって、アレイプローブ1の寿命をさらに延ばすことが可能となる。さらに、この保護シート部材26が着脱自在に取り付けられていることから、当該保護シート部材26が損耗した場合にはすぐに新品に交換することができる。これにより、アレイプローブ用治具2の可用性を高めることが可能となる。
【0029】
加えて、上記構成によれば、シム部材47を第一部材45と第二部材46との間で着脱することで、検査対象部位100と第一部材45との間の離間距離を変化させることができる。つまり、第一部材45の高さ位置を自在に調節することができる。したがって、上述したような板材101を2つ重ね合わせることで形成された段差部がある場合であっても、当該段差の大きさ(板材101の厚さ)に合わせて第一部材45の位置を変化させることで、アレイプローブ1に対する押圧力を確保することができる。その結果、アレイプローブ1を検査対象部位100に対してさらに柔軟に追従させることが可能となる。
【0030】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0031】
例えば、
図5に第一変形例として示すように、袋体21を複数の小袋体121に分割して配置することも可能である。
図5の例では、押圧面31に沿う方向に袋体21が複数に分割されている。この構成によれば、仮に一部の小袋体121が破損した場合であっても、他の小袋体121をさらに膨張させることによって、破損した小袋体121の分のスペースを補完することができる。したがって、押圧面31における面圧に変化を生じさせることなく、検査を続けることが可能となる。つまり、装置自体のロバスト性と可用性を向上させることが可能となる。また、
図6に第二変形例として示すように、
図5の例よりもさらに多くの小袋体121によって袋体21を構成することも可能である。この構成によれば、小袋体121が多数設けられていることによって、収容空間Vの隅部等でも万遍なく内圧を発揮させることができる。これにより、押圧面31での面圧を場所によらずにさらに均一かつ安定的に維持することが可能となる。
【0032】
さらに、
図7に第三変形例として示すように、袋体21における収容空間Vの開口部Aを臨む面に、当該開口部Aから突出する突出部122を予め形成することも可能である。つまり、袋体21に流体を注入することで自然にこのような突出部122が形成されるように、袋体21の形状を予め決定しておく。この構成によれば、膨張した状態で開口部Aから突出する突出部122が袋体21に予め形成されていることから、袋体21の内圧を過度に高めることなく、突出部122の形状そのものによって押圧面31における面圧を十分に確保することが可能となる。また、高い内圧による袋体21の劣化等も回避することができる。また、
図8に示すように、袋体21の曲面的な外形に合わせて、収容空間Vの壁部を曲面状に形成することも可能である。この構成によれば、袋体21による押圧力を余すことなく、押圧面31に集中させることができる。その結果、アレイプローブ1に対する押圧力が増大し、当該アレイプローブ1をさらに追従性よく弾性変形させることが可能となる。
【0033】
<第二実施形態>
続いて、本開示の第二実施形態に係るアレイプローブ用治具202について、
図9を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0034】
本実施形態では、検査対象部位100の形状が上記第一実施形態とは異なっている。それに合わせて、アレイプローブ用治具2の構成も第一実施形態とは異なっている。具体的には
図9に示すように、検査対象部位100は、突き合わせ溶接された一対の板材101同士の間に形成された突き合わせ溶接部103である。突き合わせ溶接部103の表面は、板材101の板厚方向に曲面状に突出している。アレイプローブ用治具202は、アレイプローブ1をこの曲面形状に追従させるように弾性変形させることが可能である。
【0035】
より詳細には、アレイプローブ用治具202は、上記第一実施形態で説明したアレイプローブ用治具2を、突き合わせ溶接部103を基準として対称となるように2つ連結した構成を採っている。つまり、上述した袋体21、弾性部材23、及び押圧部材24が、それぞれ2つずつ設けられている。それぞれの弾性部材23は、突き合わせ溶接部103の曲面に向かって、当該曲面がなす円弧の径方向に一致するようにして延びている。なお、突き合わせ溶接部103の表面は完全な円弧でない場合があるが、ここで言う「径方向」とは当該円弧を巨視的に見た場合の実質的な径方向を指すものとする。
【0036】
上記構成によれば、突き合わせ溶接部103に対しても、第一実施形態で説明したものと同様の作用効果を伴って、高精度かつ安定的な探傷検査を行うことが可能となる。また、上記のように、第一実施形態で説明したアレイプローブ用治具2を2つ連結させることによってアレイプローブ用治具202を構成できる。これにより、隅肉溶接部102、及び突き合わせ溶接部103にそれぞれ対応させるようにして装置の変更を施すことで、アレイプローブ用治具2の汎用性をさらに高めることが可能となる。その結果、装置の製造コストやメンテナンスコストが削減できるとともに、管理すべき部品点数も削減できるため、探傷検査の経済性をさらに向上させることが可能となる。
【0037】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0038】
<第三実施形態>
次に、本開示の第三実施形態に係るアレイプローブ用治具302について、
図10を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0039】
図10に示すように、本実施形態では、検査対象部位100として、2つの板材101をL字型に組んだ際に形成される三角形状の隅肉溶接部104が挙げられる。隅肉溶接部104は、2つの板材101によって形成される角部の内側に形成されている。アレイプローブ用治具302は、このような隅肉溶接部104に合わせて、
図10のような構成を採っている。即ち、アレイプローブ用治具302は、支持部材22と、1つの袋体21と、接続部材42と、案内部材27と、弾性シート部材25と、保護シート部材26と、を有する。
図10の例では、スペース節約のために、弾性部材23、及び押圧部材24は設けられていない。また、支持部材22は、狭隘なスペースに対応するために、第一実施形態よりも薄型に形成されている。
【0040】
上記構成によれば、狭隘な領域に形成された隅肉溶接部104に対しても、第一実施形態で説明したものと同様の作用効果を伴って、高精度かつ安定的な探傷検査を行うことが可能となる。
【0041】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0042】
<その他の実施形態>
上記の各実施形態に共通する変形例、及びその他の実施形態として、以下の事項が挙げられる。
【0043】
上記の各実施形態では、袋体21に充填される流体として空気を用いた例について説明した。しかしながら、流体は空気に限定されず、油やアルコール等の液体であってもよい。ただし、袋体21が破損して流体が散逸した際の影響が小さいという観点からは、流体は空気であることが最も望ましい。
【0044】
また、押圧部材24の押圧面31は、上記の各実施形態によっては限定されず、例えば押圧面31がアレイプローブ1から離間する方向に凹む断面形状を有していてもよい。この場合であっても、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
さらに、上記の第一実施形態、及び第二実施形態では、袋体21と、弾性部材23、及び押圧部材24と、を用いてアレイプローブ1を押圧する例について説明した。しかしながら、第三実施形態のように袋体21のみによってアレイプローブ1を押圧する構成を採ってもよい。反対に、弾性部材23、及び押圧部材24のみによってアレイプローブ1を押圧する構成を採ることも可能である。いずれの構成であっても、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
また、袋体21の個数や、弾性部材23、及び押圧部材24の個数は上記の各実施形態によっては限定されず、設計や仕様、又は検査対象部位100の面積等に応じて適宜増減することが可能である。
【0047】
加えて、弾性シート部材25のみをアレイプローブ1と押圧面31との間に設ける構成を採ってもよいし、ダイラタントシート部材28を弾性シート部材25とともに用いる構成を採ることも可能である。この場合、アレイプローブ1側にダイラタントシート部材28を配置することが望ましい。
【0048】
さらに加えて、アレイプローブ1に接するようにして、検査面11の反対側に面圧検知部71としての面圧センサを用いることも可能である。面圧検知部71は、アレイプローブ1を押圧する圧力の分布を数値化できるセンサである。このような面圧検知部71の検知結果に基づいて、袋体21の内圧が予め定められた範囲内に収まるように、袋体21に供給される流体の量を調節する流体量調節部72を設けることが考えられる(
図11)。この構成によれば、押圧面31上での面圧の大きさが適正化され、アレイプローブ1を検査対象部位100に対してより確実に密着させることが可能となる。
【0049】
また、アレイプローブ用治具2を用いて検査対象部位100を走査させるに当たっては、人力で当該アレイプローブ用治具2を移動させてもよいし、自走可能な台車等にアレイプローブ用治具2を搭載して、自律的に検査対象部位100を走査させてもよい。いずれの構成であっても、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
<付記>
各実施形態に記載のアレイプローブ用治具2は、例えば以下のように把握される。
【0051】
(1)第1の態様に係るアレイプローブ用治具2は、励磁コイルと検出コイルを含む複数のコイルモジュールと、該複数のコイルモジュールを、同一面内で配列されるように保持するとともに、弾性変形可能な材料で形成されたコイルホルダと、を有するアレイプローブ1に取り付け可能なアレイプローブ用治具2であって、前記アレイプローブ1を検査対象部位100に対して押圧する押圧面31を有し、内部に充填された流体によって膨張可能な弾性材料で形成された袋体21と、該袋体21を支持する支持部材22と、を備える。
【0052】
上記構成によれば、アレイプローブ1が弾性変形可能なコイルホルダを有することによって、当該アレイプローブ1自体が曲面や段差等に追従しやすくなる。さらに、このアレイプローブ1を袋体21の押圧面31によって押圧することで、アレイプローブ1を曲面や段差等の小さな凹凸に密着させたまま検査を行うことが可能となる。これにより、検査の精度をさらに向上させることができる。
【0053】
(2)第2の態様に係るアレイプローブ用治具2は、(1)のアレイプローブ用治具2であって、前記袋体21に併設されて、前記アレイプローブ1を前記検査対象部位100に向かう方向に付勢する弾性部材23と、該弾性部材23の先端に着脱自在に設けられて、前記アレイプローブ1を前記検査対象部位100に対して押圧する前記押圧面31の一部を形成する押圧部材24と、をさらに備える。
【0054】
上記構成によれば、アレイプローブ1を押圧部材24によって押圧することで、当該アレイプローブ1を曲面や段差等の小さな凹凸に密着させたまま検査を行うことが可能となる。これにより、検査の精度をさらに向上させることができる。
【0055】
(3)第3の態様に係るアレイプローブ用治具2は、(1)又は(2)のアレイプローブ用治具2であって、弾性材料で形成され、前記アレイプローブ1と前記押圧面31との間に介在する弾性シート部材25をさらに備える。
【0056】
上記構成によれば、弾性シート部材25が介在することで、アレイプローブ1と押圧面31との間の面圧を均一に分散させることができる。これにより、アレイプローブ1を検査対象部位100に対してさらに密接に接触させることが可能となる。
【0057】
(4)第4の態様に係るアレイプローブ用治具2は、(1)から(3)のいずれか一態様に係るアレイプローブ用治具2であって、ダイラタント性を有する材料で形成され、前記アレイプローブ1と前記押圧面31との間に介在するダイラタントシート部材28をさらに備える。
【0058】
上記構成によれば、ダイラタント性を有するダイラタントシート部材28を設けることで、アレイプローブ1の押圧面31側に設けられた各種の配線等を外力から保護することができる。これにより、断線等のトラブルが回避され、安定的かつ円滑に検査を継続することが可能となる。
【0059】
(5)第5の態様に係るアレイプローブ用治具2は、(1)から(4)のいずれか一態様に係るアレイプローブ用治具2であって、前記アレイプローブ1と前記検査対象部位100との間に介在する保護シート部材26をさらに備える。
【0060】
上記構成によれば、アレイプローブ1における検査対象部位100を向く側の面が保護シート部材26で保護されている。これにより、検査対象部位100との摩擦によるアレイプローブ1の摩耗や損傷を回避することができる。したがって、アレイプローブ1の寿命をさらに延ばすことが可能となる。
【0061】
(6)第6の態様に係るアレイプローブ用治具2は、(5)のアレイプローブ用治具2であって、前記保護シート部材26と前記検査対象部位100との間に潤滑剤を塗布可能な潤滑部をさらに備える。
【0062】
上記構成によれば、保護シートと検査対象部位100との間に潤滑剤を供給することによって、保護シート自体の摩耗や損傷が生じる可能性を低減することができる。
【0063】
(7)第7の態様に係るアレイプローブ用治具2は、(1)から(6)のいずれか一態様に係るアレイプローブ用治具2であって、前記支持部材22は、前記袋体21を挟むようにして配置された一対の分割体41を有し、該分割体41は、前記検査対象部位100に対して近接する方向と離間する方向とに変位可能な第一部材45と、該第一部材45に対して間隔をあけて配置された第二部材46と、前記第一部材45と前記第二部材46との間に着脱自在に挿入されるシム部材47と、を有する。
【0064】
上記構成によれば、シム部材47を第一部材45と第二部材46との間で着脱することで、検査対象部位100と第一部材45との間の離間距離を変化させることができる。したがって、検査対象部位100に段差が形成されている場合であっても、当該段差の大きさに合わせてアレイプローブ1を柔軟に追従させることが可能となる。
【0065】
(8)第8の態様に係るアレイプローブ用治具2は、(1)から(7)のいずれか一態様に係るアレイプローブ用治具2であって、前記検査対象部位100と前記アレイプローブ1との間に設けられ、該アレイプローブ1に付加される面圧を検知可能な面圧検知部71と、該面圧検知部71が検知した前記面圧が予め定められた範囲に収まるように、前記袋体21に充填される前記流体の量を調節可能な流体量調節部72と、をさらに備える。
【0066】
上記構成によれば、面圧検知部71が検知した面圧に基づいて、袋体21への流体の流入量が調整される。これにより、押圧面31上での面圧の大きさが適正化され、アレイプローブ1を検査対象部位100に対してより確実に密着させることが可能となる。
【0067】
(9)第9の態様に係るアレイプローブ用治具2は、(1)から(8)のいずれか一態様に係るアレイプローブ用治具2であって、前記袋体21は、互いに隣接する複数の小袋体121を有する。
【0068】
上記構成によれば、袋体21が複数の小袋体121から構成されている。これにより、仮に一部の小袋体121が破損した場合であっても、他の小袋体121をさらに膨張させることによって、破損した小袋体121の分のスペースを補完することができる。したがって、押圧面31における面圧に変化を生じさせることなく、検査を続けることが可能となる。
【0069】
(10)第10の態様に係るアレイプローブ用治具2は、(1)から(9)のいずれか一態様に係るアレイプローブ用治具2であって、前記支持部材22は、前記袋体21が配置される収容空間Vを形成するとともに、前記アレイプローブ1に向かって開口する開口部Aを有し、前記袋体21には、膨張した状態で前記開口部Aから突出可能な突出部122が予め形成されている。
【0070】
上記構成によれば、膨張した状態で開口部Aから突出する突出部122が袋体21に予め形成されていることから、袋体21の内圧を過度に高めることなく、突出部122の形状そのものによって押圧面31における面圧を十分に確保することが可能となる。また、高い内圧による袋体21の劣化等も回避することができる。
【0071】
(11)第11の態様に係るアレイプローブ用治具2は、(10)のアレイプローブ用治具2であって、前記収容空間Vは、前記押圧面31とは反対側に位置する領域の方が、前記押圧面31に近接する領域よりも容積が小さく形成されている。
【0072】
上記構成によれば、収容空間Vにおける押圧面31に近接する領域の方が容積が大きいことから、袋体21の内圧の大部分を当該押圧面31に対する面圧として有効に活用することができる。これにより、アレイプローブ1を検査対象部位100に対してさらに密接に接触させることができる。
【0073】
(12)第12の態様に係るアレイプローブ用治具2は、励磁コイルと検出コイルを含む複数のコイルモジュールと、該複数のコイルモジュールを、同一面内で配列されるように保持するとともに、弾性変形可能な材料で形成されたコイルホルダと、を有するアレイプローブ1に取り付け可能なアレイプローブ用治具2であって、前記アレイプローブ1を検査対象部位100に向かう方向に付勢する弾性部材23と、該弾性部材23の先端に着脱自在に設けられて、前記アレイプローブ1を前記検査対象部位100に対して押圧する押圧面31を有する押圧部材24と、を備える。
【0074】
上記構成によれば、アレイプローブ1を押圧部材24によって押圧することで、当該アレイプローブ1を曲面や段差等の小さな凹凸に密着させたまま検査を行うことが可能となる。これにより、検査の精度をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0075】
1…アレイプローブ 2…アレイプローブ用治具 11…検査面 21…袋体 22…支持部材 23…弾性部材 24…押圧部材 25…弾性シート部材 26…保護シート部材 27…案内部材 28…ダイラタントシート部材 31…押圧面 41…分割体 42…接続部材 43…第一分割体 44…第二分割体 45…第一部材 46…第二部材 47…シム部材 48…傾斜端面 51…傾斜面 61…収容孔 71…面圧検知部 72…流体量調節部 100…検査対象部位 101…板材 102…隅肉溶接部 103…突き合わせ溶接部 104…隅肉溶接部 121…小袋体 122…突出部 202…アレイプローブ用治具 302…アレイプローブ用治具 A…開口部 V…収容空間 X…中心軸