(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126159
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】デッキプレートの切断装置及び切断方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20240912BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240912BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240912BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E04G21/16
G01B11/00 H
B25J13/08 A
G01B11/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034371
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】篠田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 耕二
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 純一
(72)【発明者】
【氏名】正木 宗親
【テーマコード(参考)】
2E174
2F065
3C707
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174AA03
2E174BA05
2E174DA52
2F065AA01
2F065AA06
2F065AA51
2F065FF04
2F065GG04
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065MM13
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2F065PP22
2F065QQ24
2F065TT08
3C707AS12
3C707AS14
3C707BS10
3C707KS03
3C707KS07
3C707KS36
3C707KT01
3C707MT10
(57)【要約】
【課題】凹凸の寸法、形状が異なる各種のデッキプレートに適用できるデッキプレートの切断装置及び切断方法を提供する。
【解決手段】本発明のデッキプレートの切断装置10は、デッキプレート11の切断箇所を切断する切断手段50をアーム22に備えて移動させるロボットアーム20と、
デッキプレートにマーキングした切断箇所を画像認識するカメラ30と、
デッキプレート面を測距してロボットアームの本体位置を原点とするxyz座標系で切断箇所との位置関係を取得し、切断箇所の形状を計測するレーザセンサ40と、
切断箇所の形状に基づいて、切断箇所に対する切断手段の傾きと切断箇所から所定間隔を開けて切断する切断手段の移動ルートを作成し、移動ルートに沿ってロボットアームを移動させながら切断手段で切断する制御を行う制御手段60を備えたことを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキプレートを切断する切断手段をアームに備えて移動させるロボットアームと、
前記デッキプレートにマーキングした切断箇所を画像認識するカメラと、
前記デッキプレート面を測距して前記ロボットアームの本体位置を原点とするxyz座標系で前記切断箇所との位置関係を取得し、前記切断箇所の形状を計測するレーザセンサと、
前記切断箇所の形状に基づいて、前記切断箇所に対する前記切断手段の傾きと前記切断箇所から所定間隔を開けて切断する前記切断手段の移動ルートを作成し、前記移動ルートに沿って前記ロボットアームを移動させながら前記切断手段で切断する制御を行う制御手段を備えたことを特徴とするデッキプレートの切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたデッキプレートの切断装置であって、
前記制御手段は、前記切断箇所の形状の計測データから、任意の計測データ点における前記切断手段の切断トーチの向きを示す方向ベクトルRと、前記計測データの計測点座標及び前記方向ベクトルR及び前記切断箇所と前記切断トーチとの所定間隔Lから得られるトーチ先端座標を登録した前記移動ルートを算出することを特徴とするデッキプレートの切断装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたデッキプレートの切断装置であって、
前記ロボットアームは、切断箇所近傍のデッキプレート面に接続するサポートバーとテーブルを有する固定治具、又は前記切断箇所の床面に設置する昇降テーブルのいずれかの固定手段により取り付けることを特徴とするデッキプレートの切断装置。
【請求項4】
デッキプレートの切断箇所をマーキングする工程と、
ロボットアームのカメラで前記デッキプレートにマーキングした切断箇所を画像認識する工程と、
前記ロボットアームのレーザセンサで前記デッキプレート面を測距して前記ロボットアームの本体位置を原点とするxyz座標系で前記切断箇所との位置関係を取得し、前記切断箇所の形状を計測する工程と、
前記ロボットアームの制御手段により、前記切断箇所の形状に基づいて、前記切断箇所に対する前記ロボットアームの切断手段の傾きと前記切断箇所から所定間隔を開けて切断する前記切断手段の移動ルートを作成し、前記移動ルートに沿って前記ロボットアームを移動させながら前記切断手段で切断する制御を行う工程を有することを特徴とするデッキプレートの切断方法。
【請求項5】
請求項4に記載のデッキプレートの切断方法であって、
前記移動ルートは、前記切断箇所の形状の計測データから、任意の計測データ点における前記切断手段の切断トーチの向きを示す方向ベクトルRと、前記計測データの計測点座標及び前記方向ベクトルR及び前記切断箇所と前記切断トーチとの所定間隔Lから得られるトーチ先端座標を登録したことを特徴とするデッキプレートの切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にコンクリート建物の天井を形成するデッキプレートを切断する切断装置及び切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所などのコンクリート建物の天井にはデッキプレートを取り付けている。デッキプレートは凹凸状にプレス加工して強度を持たせた所定厚みの鋼板である。このような天井の形成方法はデッキプレートを敷き詰め、その上にコンクリートを流し込んで固化している。また天井には各種の配管、ダクトなどを取り付けることがあり、鋼材製のブラケットを用いて支持している。重量物の荷重を受けるブラケットは、デッキプレートとコンクリートに間に埋め込んだ埋込金物に取り付けて補強している。この埋込金物は、コンクリートの固化後に埋込箇所のデッキプレートを切断除去して表面を露出させる必要がある。この作業は上向きの作業姿勢で行わなければならず、作業者にとって大きな負担がかかっていた。
【0003】
従来、このようなデッキプレートを切断除去する装置として、特許文献1に開示の技術は、切断具の先端部がデッキプレートの凹部の内面に近接して移動するように、切断具を備えた回動アームの回動動作を案内溝によって案内している。
しかしながら特許文献1の技術では、デッキプレートの凹部を切断するには適しているが、埋込箇所によっては凸部を含む範囲を切断しなければならない場合には適用することができない。
またデッキプレートにはその凹凸の寸法、形状が異なった各種のプレートが市場に出回っており、現場ごとに異なる種類のプレートが利用されている。特許文献1の案内溝は特定の形状のデッキプレートのみ対応しているため、凹凸の寸法、形状が異なる他のデッキプレートに対しては、そのプレートの形状に適合させた案内溝を別途容易しなければならない。
また切断作業するエリアは、大口径配管や足場等が存在する狭隘な現場が多く、作業に適した広い作業現場を確保することが困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、凹凸の寸法、形状が異なる各種のデッキプレートに適用できるデッキプレートの切断装置及び切断方法を提供することにある。
また狭隘な作業現場でも取り扱いが容易なデッキプレートの切断装置及び切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、デッキプレートの切断箇所を切断する切断手段をアームに備えて移動させるロボットアームと、
前記デッキプレートにマーキングした前記切断箇所を画像認識するカメラと、
前記デッキプレート面を測距して前記ロボットアームのベース本体位置を原点とするxyz座標系で前記切断箇所との位置関係を取得し、前記切断箇所の形状を計測するレーザセンサと、
前記切断箇所の形状に基づいて、前記切断箇所に対する前記切断手段の傾きと前記切断箇所から所定間隔を開けて切断する前記切断手段の移動ルートを作成し、前記移動ルートに沿って前記ロボットアームを移動させながら前記切断手段で切断する制御を行う制御手段を備えたことを特徴とするデッキプレートの切断装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、凹凸の寸法、形状が異なった各種のデッキプレートを切断することができ、現場ごとに異なる様々な形状のデッキプレートであっても適用することができる。デッキプレートの凹凸に係わらず切断することができ、切断箇所の適用範囲の選択の幅を広げることができる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記制御手段は、前記切断箇所の形状の計測データから、任意の計測データ点における前記切断手段の切断トーチの向きを示す方向ベクトルRと、前記計測データの計測点座標及び前記方向ベクトルR及び前記切断箇所と前記切断トーチとの所定間隔Lから得られるトーチ先端座標を登録した前記移動ルートを算出することを特徴とするデッキプレートの切断装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、切断手段を備えたロボットアームにより切断箇所の自動切断が実現でき、作業員の負担を大幅に低減できる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は第2の手段において、前記ロボットアームは、切断箇所近傍のデッキプレート面に接続するサポートバーとテーブルを有する固定治具、又は前記切断箇所の床面に設置する昇降テーブルのいずれかの固定手段により取り付けることを特徴とするデッキプレートの切断装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、狭隘な作業現場であっても装置の搬入及び設置が容易であり、作業者の負担を大幅に軽減して作業時間を短縮することができる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、デッキプレートの切断箇所をマーキングする工程と、
ロボットアームのカメラで前記デッキプレートにマーキングした切断箇所を画像認識する工程と、
前記ロボットアームのレーザセンサで前記デッキプレート面を測距して前記ロボットアームの本体位置を原点とするxyz座標系で前記切断箇所との位置関係を取得し、前記切断箇所の形状を計測する工程と、
前記ロボットアームの制御手段により切断箇所の形状に基づいて、前記切断箇所に対する前記ロボットアームの切断手段の傾きと前記切断箇所から所定間隔を開けて切断する前記切断手段の移動ルートを作成し、前記移動ルートに沿って前記ロボットアームを移動させながら前記切断手段で切断する制御を行う工程を有することを特徴とするデッキプレートの切断方法を提供することにある。
上記第4の手段によれば、凹凸の寸法、形状が異なった各種のデッキプレートを切断することができ、現場ごとに異なる様々な形状のデッキプレートであっても適用することができる。デッキプレートの凹凸に係わらず切断することができ、切断箇所の適用範囲の選択の幅を広げることができる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第5の手段として、第4の手段において、前記移動ルートは、前記切断箇所の形状の計測データから、任意の計測データ点における前記切断手段の切断トーチの向きを示す方向ベクトルRと、前記計測データの計測点座標及び前記方向ベクトルR及び前記切断箇所と前記切断トーチとの所定間隔Lから得られるトーチ先端座標を登録したことを特徴とするデッキプレートの切断方法を提供することにある。
上記第5の手段によれば、切断手段を備えたロボットアームにより切断箇所の自動切断が実現でき、作業員の負担を大幅に低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、凹凸の寸法、形状が異なった各種のデッキプレートを切断することができ、現場ごとに異なる様々な形状のデッキプレートであっても適用することができる。
また狭隘な作業現場であっても装置の搬入及び設置が容易であり、作業者の負担を大幅に軽減して作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のデッキプレートの切断装置の構成概略図である。
【
図2】本発明のデッキプレートの切断装置のブロック図である。
【
図11】本発明のデッキプレートの切断方法の工程図である。
【
図12】二次元コードを用いたマーキングの説明図である。
【
図14】レーザセンサによるデッキ形状の計測の説明図である。
【
図15】移動ルートに沿って移動する切断手段の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のデッキプレートの切断装置及び切断方法の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0014】
[デッキプレートの切断装置10]
図1は、本発明のデッキプレートの切断装置の構成概略図である。
図2は本発明のデッキプレートの切断装置のブロック図である。
本発明のデッキプレートの切断装置10(以下、単に切断装置ということあり)は、デッキプレート11とコンクリートの間に埋め込まれた埋込金属12を露出させるために、デッキプレート11の一部を任意の形状に切断する装置である。
切断装置10は、デッキプレート11を切断する切断手段をアーム22に備えて移動させるロボットアーム20と、デッキプレート11にマーキングした切断箇所を画像認識するカメラ30と、デッキプレート面を測距してロボットアーム20の本体位置を原点とするxyz座標系で切断箇所との位置関係を取得し、切断箇所の形状を計測するレーザセンサ40と、切断箇所の形状に基づいて、切断箇所に対する切断手段50の傾きと切断箇所から所定間隔を開けて切断する切断手段50の移動ルートを作成し、移動ルートに沿ってロボットアーム20を移動させながら切断手段50で切断する制御を行う制御手段60を備えている。
【0015】
ロボットアーム20は、デッキプレート11の切断箇所を自動で切断するように制御するものである。ロボットアーム20は、ベース本体24と、複数の軸を介して連結された複数のアーム22で構成された多軸型ロボットアームである。アーム22間には複数のモータが配置されており、各モータの駆動により先端のアーム22を、ベース本体24を基点として前後左右に移動自在に構成されている。
カメラ30は、デッキプレート11の切断箇所を撮影して動画、画像として取得できるものであり、本実施形態では一例としてCCDカメラなどを適用している。カメラ30は先端のアーム22と後述する切断手段50の切断トーチ52の間に取り付けている。またカメラ30は画像解析プログラムを記憶したメモリ、中央処理装置(CPU)を備えるコンピュータとなるカメラ制御手段を備えている。カメラ制御手段はカメラ30が取得した画像データ、動画データの画像処理を行って、デッキプレート11の切断箇所のマーキングを画像認識して、後述する制御手段60に送信する。
【0016】
レーザセンサ40は、レーザを測定対象に向けて照射し、測定対象で反射したレーザを受光することによって測定対象までの距離を測定するセンサである。レーザセンサ40は先端のアーム22と後述する切断手段50の切断トーチ52の間に取り付けている。レーザセンサ40は切断箇所の形状計測プログラムを記録したメモリ、中央処理装置(CPU)を備えるコンピュータとなるレーザ制御手段を備えている。レーザ制御手段は、レーザをマーキングに沿って走査させて取得した測距データを用いて、切断対象の形状を計測して、後述する制御手段60に送信する。
またレーザセンサ40は、作業現場に装置を設置した後、まずデッキプレート面を測距してロボットアーム20のベース本体24を原点(0,0,0)とするxyz座標系で前記切断箇所との位置関係を取得する。
【0017】
アーム22の最先端には切断手段50を取り付けている。切断手段50はデッキプレート11の切断箇所を切断する溶断加工機を用いている。溶断加工機は例えば、プラズマ切断機、ガス切断機などを適用する。溶断加工は発生させた熱エネルギーを使用して材料を溶かすことで切断できるため、デッキプレート11の厚さや材質を考慮することなく切断することができる。溶断加工機はアーム22先端に取り付ける切断トーチ52と、切断トーチ52とケーブルを介して接続する切断機本体54を備えた構成である。
制御手段60は、ロボットアーム20、カメラ30、レーザセンサ40、切断手段50と電気的に接続している。制御手段60は、ロボットアーム20の制御プログラム、切断手段50の移動ルート作成プログラムなどの各種プログラムを記憶したメモリ、各種データを記憶する記憶部、中央処理装置(CPU)を備えるコンピュータである。
【0018】
移動ルート作成プログラムは、アーム22の先端に取り付けた切断手段50(切断トーチ)がマーキングに沿って移動する移動ルートを作成するプログラムである。
図3~8は移動ルートの説明
図1~6である。同図では、一例として、ケガキ線が1本線の場合について説明する。座標系はロボットアーム20のベース本体24を原点とするxyz座標系を用いている。計測データはレーザセンサ40の測距データをxyz座標系に変換した後の計測データ点(例えば、全11点)を用いている(
図3参照、同図中の矢印は切断トーチの移動方向を示す)。このうちPn(Xn,Yn,Zn)に対する移動ルートの作成手順について以下説明する。
【0019】
移動ルートはアーム22先端に取り付けた切断トーチ52が特定の方向、例えば、切断するデッキプレート面と切断トーチ52が鉛直、もしくは鉛直に近い角度を向いた状態で切断箇所に切断トーチ52が接触しないように所定距離L(数mm程度)開けた場所を通過させるのが望ましい。このような移動ルートは計測データから3次元ベクトルを作成して、計算処理によって作成することができる。そして作成された移動ルートは各計測データ点に対応した(n番目のデータの場合)切断トーチの先端座標Pn‘(xn’,yn‘,zn’)及び方向ベクトルRn(φn,θn,ψn)が登録されている(
図4参照)。
方向ベクトルRを求めるために必要な情報は、求めたい方向ベクトルRを「デッキプレートと垂直方向のベクトル」と仮定する。そこで方向ベクトルRを求めるためにはデッキプレート11の平面に反ったベクトルが2本必要となる。2本のベクトルがあればベクトルの外積計算によって方向ベクトルRがわかる(
図5参照)。
【0020】
2本のベクトルの求め方は、まず1本目はケガキ線が直線上に存在することから全ての計測データが平面上にあると推定して、平面に対する法線ベクトルNを作成する。Nベクトルは実際のデッキプレート11平面と平行なベクトルとなる。2本目は、切断トーチ52の移動方向は固定した状態で、各計測データ点における移動方向ベクトルMを作成する。移動方向クトルMはデッキプレート11の表面と平行なベクトルとなる(
図6参照)。
方向ベクトルRは法線ベクトルNと移動方向ベクトルMnの外積計算結果を正規化することで求められる。
R=(N×Mn)/|N×Mn|
切断トーチ52の先端座標Pn‘はPnからマイナスの方向ベクトルRnに所定距離Lだけ進めることで求められる(
図7参照)。
Pn‘=Pn-L・R
【0021】
方向ベクトルRの任意の角度θだけ傾けた方向ベクトルR‘に変更したい場合、方向ベクトルRを移動方向ベクトルMnの方向へθだけ傾ければ良い(
図8参照)。
なお
図3~
図8に示すケガキ線は直線の場合における具体例を示したが、ケガキ線が矩形など異なる形状の場合でも、「デッキプレート11の平面に沿った2本のベクトル」を計測データから作成することにより移動ルートを作成することができる。
【0022】
以上より、1からn点(全n点)の移動ルートの作成方法は、以下の(1)~(5)により求めることができる。
(1)レーザセンサ40による(例えば、1本線など)全計測データを使い法線ベクトルNを作成する。
(2)各計測データ点に対して移動方向ベクトルMnを作成する。
(3)各計測データ点において法線ベクトルNと移動方向ベクトルMnを外積計算により方向ベクトルRnを作成する。
(4)計測点座標Pn、方向ベクトルR、所定距離Lよりトーチ先端座標Pn‘を計算する。
(2)~(4)を全n数、すなわちn回繰り返し行う。
(5)トーチ先端座標Pn‘および方向ベクトルRnをロボットアーム20の移動ルートとして登録する。
操作手段70は作業員が携帯する携帯端末であり、キーボード及びディスプレイを備えている。操作手段70は、制御手段60と有線又は無線通信を介して接続して、キーボードにより各種の操作及び入力ができる。
また操作手段70により制御手段60を遠隔操作するように構成することもできる。
【0023】
[切断装置の固定手段]
切断作業を行うエリアは、必ずしも広くて安定した作業現場が確保できるとは限らず、大口径配管や足場等が存在する狭隘な環境もあり得る。本発明の切断装置10は現場環境に応じて固定手段を選択(変更)できる。
図9は切断装置の固定手段の説明
図1である。
図10は切断装置の固定手段の説明
図2である。本発明の切断装置10は、一体で数十キロの重さであり、作業員が運搬することができる。
【0024】
狭隘な作業現場で切断装置を設置する場合、固定治具80を用いている(
図9参照)。固定治具80は切断装置10を載置するテーブル82と、テーブル82に接続するサポートバー84と、サポートバー84の上端に取り付けたマグネット86の構成である。テーブル82は切断装置10を載置できる大きさであり、棒状のサポートバー84は上端のマグネット86を介してデッキプレート11に磁力で接着、非接着できる。サポートバー84は伸縮式で床面からのテーブル高さを任意に調整できる構成であっても良い。このような構成の固定治具80は、作業現場の床面に、大口径配管や足場等があって狭隘な環境下でも、天井と床面の間の空いたスペースに切断装置10を配置して固定することができる。また固定治具80の着脱はマグネット86の磁力により容易に取付作業を行える。
【0025】
一方、広い作業スペースが確保できる場合には、昇降テーブル90を用いている。昇降テーブル90はジャッキ92を備え、その上に切断装置10を載置するテーブルを固定している(
図10参照)。切断装置10の高さはジャッキ92による上下移動により容易に調整することができる。
このように本発明の切断装置10は、全体構成がコンパクト化、軽量化された可搬式であり、現場の作業環境に合わせて設置方法を変更することにより、環境の異なる様々な現場に適用することができる。
【0026】
[デッキプレートの切断方法]
上記構成による本発明のデッキプレートの切断方法について、以下説明する。
図11は本発明のデッキプレートの切断方法の工程図である。
(ステップ1)
デッキプレート11の切断箇所をマーキングする。マーキングは、作業員の手作業によるケガキ線13と、作業員による二次元コード14の貼り付けの方法がある。
ケガキ線13は作業員が切断箇所の凹凸に沿って線引きする。ケガキ線13はカメラ30の画像認識で判別できる色、太さに設定している(
図11参照)。
図12は二次元コードを用いたマーキングの説明図である。二次元コード14は例えば、切断箇所が矩形の場合、作業員が矩形の角の2か所以上に二次元コード14のシールを張り付ける。同図に示す二次元コード14の場合、カメラ30の画像認識で4つの二次元コード14で囲まれた内側の角を認識して、4つの角を結んで囲まれた箇所(破線)が切断箇所となる。
二次元コード14を用いた場合、デッキプレート11の凹凸に係わらずシールを張り付けるだけでマーキング作業が完了するため作業員の負担が軽減される。
【0027】
(ステップ2)
切断装置10を作業現場に運搬する。切断装置10は装置全体が軽量化された可搬式であるため作業員が容易に運搬できる。
(ステップ3)
切断装置10を固定手段により作業現場に設置、固定する。設置方法は、作業現場の環境に応じて固定治具80又は昇降テーブル90を選択できる。
図11は固定治具80により切断装置10を固定している。
【0028】
(ステップ4)
切断装置10の自動切断開始を開始する。
マッピング
図13はレーザセンサとカメラの説明図である。切断装置10のアームロボット20とデッキプレート11の切断箇所の位置を把握する。
ロボットアーム20を移動させながらレーザセンサ40でプレート面にレーザ照射して3点以上計測する。
カメラ30で切断箇所を撮影して画像認識を利用してマーキング(
図13はケガキ線13を示す)を認識する。
【0029】
図14はレーザセンサによるデッキ形状の計測の説明図である。レーザセンサ40を用いてデッキ形状を計測する。ロボットアーム20でレーザセンサ40をマーキングに沿って移動する。同図ではケガキ線に沿ってレーザセンサ40が平行移動する(
図14中のx方向、zは高さ方向、y方向は紙面と直交する方向)。カメラ30の撮影箇所の画像認識とレーザセンサ40のデッキ形状の計測は、画像上に照射させたレーザを認識することにより、画像データと計測データを紐づけできる。
デッキ形状の計測データに基づいて切断トーチ52、換言するとロボットアーム20の移動ルートを作成する。移動ルートは前述の移動ルート作成プログラムにより作成する。
【0030】
図15は移動ルートに沿って移動する切断手段の説明図である。登録した移動ルートに従ってロボットアーム20の移動を開始する。
デッキプレート11と切断手段50の先端(切断トーチ52)の距離を調整しながら作成した移動ルートに沿って切断して、切断が完了する。
本発明の切断装置は、デッキプレートの切断箇所、すなわち一部を切断するのみならず、デッキプレートを解体除去する際にも適用することができる。
また切断作業は、切断箇所の近辺で作業者が制御操作するのみならず、作業現場から離れた遠隔の作業所から操作することもできる。
また本発明の切断装置は、断面凹凸形状を有するデッキプレートのみならず、断面凹凸形状を有する様々な鋼板に適用することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 デッキプレートの切断装置
11 デッキプレート
12 埋込金属
13 ケガキ線
14 二次元コード
20 ロボットアーム
22 アーム
24 ベース本体
30 カメラ
40 レーザセンサ
50 切断手段
52 切断トーチ
54 切断機本体
60 制御手段
70 操作手段
80 固定治具
82 テーブル
84 サポートバー
86 マグネット
90 昇降テーブル
92 ジャッキ