(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126182
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】流体圧シリンダの駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
F15B 11/04 20060101AFI20240912BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F15B11/04 E
E02F9/22 Q
F15B11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034407
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小西 勲
(72)【発明者】
【氏名】島原 聖
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義隆
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB07
2D003BA01
2D003BB02
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB03
2D003FA02
3H089AA43
3H089AA50
3H089AA67
3H089BB06
3H089BB15
3H089CC01
3H089DA03
3H089DB03
3H089DB43
3H089EE36
3H089FF03
3H089FF04
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】ストロークエンド近傍での流体圧シリンダの伸縮操作性が良好な流体圧シリンダの駆動制御装置を提供する。
【解決手段】駆動制御装置1は、操作体2の操作に応じて流体圧シリンダ6を伸縮させる伸縮手段7と、流体圧シリンダ6の伸縮位置を検出する位置検出手段17と、流体圧シリンダ6の伸縮速度を検出する速度検出手段18と、流体圧シリンダ6のストロークエンドから所定範囲内での伸縮位置とストロークエンド方向への伸縮速度とに応じて、伸縮手段7による流体圧シリンダ6のストロークエンド方向への伸縮速度を制限する制限手段と、流体圧シリンダ6のストロークエンド近傍の所定位置からの距離が短いほど流体圧シリンダ6への作動流体の供給量を低減させて流体圧シリンダ6の伸縮を所定位置で停止させる停止手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作体の操作に応じて流体圧シリンダを伸縮させる伸縮手段と、
流体圧シリンダの伸縮位置を検出する位置検出手段と、
流体圧シリンダの伸縮速度を検出する速度検出手段と、
流体圧シリンダのストロークエンドから所定範囲内での伸縮位置およびストロークエンド方向への伸縮速度に応じて、伸縮手段による流体圧シリンダのストロークエンド方向への伸縮速度を制限する制限手段と、
流体圧シリンダのストロークエンド近傍の所定位置に近いほど流体圧シリンダへの作動流体の供給量を低減させて流体圧シリンダの伸縮を所定位置で停止させる停止手段と、
を備えることを特徴とする流体圧シリンダの駆動制御装置。
【請求項2】
制限手段は、ストロークエンドから所定範囲内でのストロークエンド方向への伸縮速度の最大値を保持し、その伸縮速度の最大値および伸縮位置に応じて、伸縮手段による流体圧シリンダのストロークエンド方向への伸縮速度を制限するとともに、操作体が所定の中立範囲となったときに、最大値の保持を解除する
ことを特徴とする請求項1記載の流体圧シリンダの駆動制御装置。
【請求項3】
停止手段の機能をオンオフ切り替え可能である
ことを特徴とする請求項1または2記載の流体圧シリンダの駆動制御装置。
【請求項4】
伸縮手段は、位置検出手段と速度検出手段との少なくともいずれかの故障が診断されたときに、流体圧シリンダのストロークエンド方向への伸縮速度を強制的に低減する
ことを特徴とする請求項1または2記載の流体圧シリンダの駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作体の操作に応じて流体圧シリンダを伸縮させる流体圧シリンダの駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧シリンダを用いる例えば油圧ショベルなどの作業機械において、油圧シリンダが伸縮限界すなわちストロークエンド近傍に達するときに伸縮速度を減少させ、ストロークエンドの手前では停止させることによって、衝撃を緩和するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の駆動制御装置では、油圧シリンダの伸縮がストロークエンド近傍に達するとパイロット圧の上限値が規定されることで伸縮速度を遅らせているため、例えばストロークエンド近傍において、一旦伸縮停止し、さらにストロークエンド方向に操作したい場合などに、規定されているパイロット圧の上限値により油圧シリンダの伸縮速度が制限されて非常にゆっくりでしか動かせず、ストロークエンド近傍での伸縮操作性が良好でない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ストロークエンド近傍での流体圧シリンダの伸縮操作性が良好な流体圧シリンダの駆動制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、操作体の操作に応じて流体圧シリンダを伸縮させる伸縮手段と、流体圧シリンダの伸縮位置を検出する位置検出手段と、流体圧シリンダの伸縮速度を検出する速度検出手段と、流体圧シリンダのストロークエンドから所定範囲内での伸縮位置およびストロークエンド方向への伸縮速度に応じて、伸縮手段による流体圧シリンダのストロークエンド方向への伸縮速度を制限する制限手段と、流体圧シリンダのストロークエンド近傍の所定位置に近いほど流体圧シリンダへの作動流体の供給量を低減させて流体圧シリンダの伸縮を所定位置で停止させる停止手段と、を備える流体圧シリンダの駆動制御装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の流体圧シリンダの駆動制御装置における制限手段が、ストロークエンドから所定範囲内でのストロークエンド方向への伸縮速度の最大値を保持し、その伸縮速度の最大値および伸縮位置に応じて、伸縮手段による流体圧シリンダのストロークエンド方向への伸縮速度を制限するとともに、操作体が所定の中立範囲となったときに、最大値の保持を解除するものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の流体圧シリンダの駆動制御装置における停止手段の機能をオンオフ切り替え可能であるものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の流体圧シリンダの駆動制御装置における伸縮手段が、位置検出手段と速度検出手段との少なくともいずれかの故障が診断されたときに、流体圧シリンダのストロークエンド方向への伸縮速度を強制的に低減するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、流体圧シリンダ6のストロークエンド側への突入による衝撃を適切に緩和しつつ、流体圧シリンダ6のストロークエンド方向への伸縮速度を確保できるとともに、例えばストロークエンドでのリリーフ操作に起因するリリーフ圧の蓄圧に起因する流体圧シリンダの伸縮操作性の低下を抑制でき、ストロークエンド近傍での流体圧シリンダの伸縮操作性が良好になる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、流体圧シリンダの伸縮位置がストロークエンドから所定範囲にあるときにオペレータが操作体を一旦中立位置付近まで戻してストロークエンド方向への伸縮速度を低下または停止させた場合には、そこからの所定範囲における流体圧シリンダのストロークエンド方向への伸縮速度に制限が掛かりにくくなり、ストロークエンド付近での流体圧シリンダの操作性が良好となる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、オペレータが必要に応じて流体圧シリンダを機械的に停止する位置まで最大に伸縮させたい場合などにも対応できる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、位置検出手段と速度検出手段との少なくともいずれかの故障に起因して制限手段および/または停止手段が正常に働かずに流体圧シリンダがシリンダエンドに対し機械的に激しく衝突することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る流体圧シリンダの駆動制御装置の一実施の形態を備える流体圧回路を示す回路ブロック図である。
【
図2】同上駆動制御装置を備える作業機械の例を示す側面図である。
【
図3】同上駆動制御装置の制御ロジックを示す説明図である。
【
図4】同上駆動制御装置における流体圧シリンダの位置と最大値保持部からの出力値との対応関係の一例を示すグラフである。
【
図5】同上駆動制御装置における流体圧シリンダの位置および伸縮速度と、
図3の制御ロジックに応じて出力される出力値および上限との関係の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、
図1乃至
図5に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0016】
図1において、1は流体圧シリンダの駆動制御装置を示す。この駆動制御装置1は、基本的に、レバーやペダルなどの操作体2の倒し角などの操作量を示す入力信号に基づいて制御信号をコントローラ3により生成して、その生成した制御信号によりポンプ4からの作動流体の吐出流量および/またはコントロールバルブ5の電磁可変式のスプールの開度および動作方向を制御することで、流体圧シリンダ6の伸縮挙動を制御するものである。つまり、コントローラ3、ポンプ4およびコントロールバルブ5などにより、操作体2の操作に応じて流体圧シリンダ6を伸縮させる伸縮手段7が構成されている。操作体2の操作量は、例えば角度センサなどにより電気的に検出可能である。
【0017】
本駆動制御装置1における流体圧回路の例を
図1に示す。ポンプ通路10がポンプ4からコントロールバルブ5に接続され、ポンプ通路10には、回路圧をリリーフ設定圧に制御するメインリリーフ弁11がタンク12との間に接続されている。また、コントロールバルブ5のスプールと流体圧シリンダ6のヘッド側とロッド側との間に、作動流体の供給路13,14が接続され、コントロールバルブ5のスプールの動作により、供給路13,14が選択的にポンプ通路10またはタンク12への戻り通路15と接続されることで、作動流体が流体圧シリンダ6に給排される。
【0018】
また、本実施の形態の駆動制御装置1は、流体圧シリンダ6の位置を検出する位置検出手段17と、流体圧シリンダ6の伸縮速度を検出する速度検出手段18と、をさらに備える。位置検出手段17は、例えば流体圧シリンダ6からその位置を直接検出してもよいし、間接的に検出してもよい。位置検出手段17および速度検出手段18としては、IMUセンサが好適に用いられる。
【0019】
そして、駆動制御装置1は、流体圧シリンダ6の位置がストロークエンドから所定範囲であるスナバ領域にあるときに、これら位置検出手段17により検出された位置および速度検出手段18により検出されたストロークエンド方向への伸縮速度に応じて、流体圧シリンダ6の伸縮速度を制限する制限手段の機能(スナバ速度制御)を有する。つまり、スナバ領域とは、流体圧シリンダ6のストロークエンド近傍の変位範囲において、流体圧シリンダ6がストロークエンド方向へと伸縮する際に、その伸縮位置および伸縮速度に基づいて流体圧シリンダ6の伸縮速度に制限が掛かる範囲をいう。さらに、流体圧シリンダ6の伸縮をストロークエンド近傍の所定位置で強制的に停止させる機能(停止制御)を有する。本実施の形態では、コントローラ3が、制限手段および停止手段の機能を有する。
【0020】
上記の駆動制御装置1は、流体圧シリンダ6を用いる任意の装置に対して適用可能であるが、本実施の形態では、作動流体圧である作動油圧により作動される
図2に示される油圧駆動式の作業機械20に搭載した例を示す。例えば、作業機械20は、油圧ショベル型の作業機械を例に挙げる。
【0021】
すなわち、本実施の形態の作業機械20は、下部走行体21およびこの下部走行体21に旋回可能に設けられた旋回体である上部旋回体22を備える旋回型作業機械を例に挙げる。上部旋回体22には、オペレータが着座する運転室であるキャブ23と、作業装置24とが搭載されている。例えばキャブ23内にコントローラ(車載コントローラ)3が設置される。
【0022】
上部旋回体22には、キャブ23の側方に作業装置24が軸連結される。また、上部旋回体22には、エンジンやポンプ4(
図1)、コントロールバルブ5(
図1)などが収容された機械室25が設けられ、作業装置24を挟んでキャブ23と反対側の側方に、作動油タンクや燃料タンクなどの各種タンクなどが設けられ、かつ、機械室25や各種タンクに対して作業装置24とは反対側の端部に、カウンタウエイト26が搭載される。
【0023】
作業装置24は、複数のリンク部材28を備え、それらリンク部材28が流体圧シリンダ(油圧シリンダ)6の伸縮に応じて動作される。本実施の形態において、作業装置24は、リンク部材としてのブーム28a、リンク部材としてのアーム(スティック)28b、リンク部材としてのバケット28cを有する。ブーム28aは、基端部が上部旋回体22に軸連結され、アーム28bは、基端部がブーム28aの先端部に軸連結され、バケット28cは、アーム28bの先端部に軸連結される。ブーム28a、アーム28b、および、バケット28cは、それぞれ流体圧シリンダである油圧シリンダとしてのブームシリンダ6a、流体圧シリンダである油圧シリンダとしてのアームシリンダ(スティックシリンダ)6b、および、流体圧シリンダである油圧シリンダとしてのバケットシリンダ6cにより回動される。ブーム28aは、機体、すなわち上部旋回体22に対して上下回動可能であり、アーム28bは、ブーム28aに対して前後回動可能であり、バケット28cは、アーム28bに対して前後回動可能である。なお、作業装置24の構成は、この構成に限定されず、4以上のリンク部材28を備えるように構成してもよいし、バケット28cに代えて、適宜のアタッチメントが取り付けられてもよい。
【0024】
次に、上記の制御装置1のスナバ速度制御および停止制御について説明する。
【0025】
スナバ速度制御は、流体圧シリンダ6がストロークエンドから所定範囲(スナバ領域)にあるときに、流体圧シリンダ6の伸縮位置およびストロークエンド方向への伸縮速度に応じてコントローラ3により流体圧シリンダ6の伸縮制御用の制御信号の上限を設定することで、流体圧シリンダ6のストロークエンド方向への伸縮速度に制限を掛け、流体圧シリンダ6の伸縮がストロークエンド側に突入する際の衝撃を緩和する制御である。すなわち、スナバ速度制御は、スナバ領域において、ストロークエンド方向への流体圧シリンダ6の伸縮速度に制限を掛け、ストロークエンドとは反対方向への流体圧シリンダ6の伸縮速度については制限を掛けない制御である。
【0026】
本実施の形態において、スナバ速度制御は、スナバ領域での流体圧シリンダ6の伸縮位置がストロークエンドに近いほど、また、ストロークエンド方向への伸縮速度が大きいほど、流体圧シリンダ6のストロークエンド方向への伸縮速度制限を大きくする。
【0027】
つまり、このスナバ速度制御では、基本的に、コントローラ3は、スナバ領域において流体圧シリンダ6がストロークエンドに近いほど制御信号の上限を絞って小さくする。一方で、スナバ領域において、コントローラ3は、流体圧シリンダ6のストロークエンド方向への伸縮速度が低いほど制御信号の上限を緩和する。
【0028】
好ましくは、コントローラ3は、流体圧シリンダ6が継続的に伸縮しつつスナバ領域に入った場合、流体圧シリンダ6のストロークエンド方向への伸縮速度の最大値を保持し、その最大値に基づいて制御信号の上限の緩和の度合いを設定する。但し、流体圧シリンダ6がスナバ領域に入った後に、オペレータが流体圧シリンダ6を一旦停止または所定速度以下に低下させ、その後再度流体圧シリンダ6をストロークエンド方向へと伸縮させる場合を想定し、本実施の形態では、操作体2が所定の中立範囲になった場合には、コントローラ3が伸縮速度の最大値の保持を解除する。所定の中立範囲とは、例えば操作体2の中立位置を含む範囲であって、最大動作範囲の半分以下の範囲をいう。
【0029】
スナバ速度制御において、コントローラ3は、上記の二つの条件の積により制御信号の上限を設定する。
【0030】
また、停止制御は、流体圧シリンダ6がスナバ領域においてストロークエンド近傍の所定位置に近づくにしたがい、ポンプ吐出量を絞るおよび/またはコントロールバルブ5のスプール開度を低下させて流体圧シリンダ6への作動流体の供給を徐々に低減させ、所定位置で強制的に停止させるように、コントローラ3により流体圧シリンダ6の伸縮制御用の制御信号の上限を設定する制御である。
【0031】
この停止制御は、スナバ速度制御で設定された制御信号の上限とは別個に、コントローラ3が、ストロークエンド近傍の所定位置に近づくほど制御信号の上限を絞って小さくし、最終的にストロークエンド近傍の所定位置で停止させる制御信号を実質的に0とする。この停止制御は、ストロークエンド寸前、つまり機械的にシリンダエンドに接触する寸前の非常に狭い領域でのみ有効となるように設定されている。この停止制御が有効となる領域は、流体圧シリンダ6の大きさや各検出手段の検出精度などに基づいて設定されるが、例えばシリンダエンドから10~20mm以内程度の領域を想定する。
【0032】
そして、コントローラ3では、スナバ速度制御と停止制御とにより設定された制御信号の上限のうち、小さい方を制御信号の真の上限とする。
【0033】
なお、作業機械20を駐機姿勢とする場合、吊り作業をする場合、あるいは、暖機運転のために流体圧シリンダ6(例えばアームシリンダ6b)をストロークエンドで強制的にリリーフさせたりする場合など、オペレータが流体圧シリンダ6を機械的に停止する位置まで伸縮させたい場合があるため、停止制御、つまりコントローラ3における停止手段の機能は、オペレータがキャブ23内に設置されたコンソールやスイッチの操作などにより任意にオンオフ切り替えできるようにすることが好ましい。
【0034】
これらの制御の制御ロジックの例を
図3に示す。この
図3に示される制御ロジックについては、例えばコントローラ3にインストールされたソフトウェアなどにより実行可能となる。
【0035】
コントローラ3には、流体圧シリンダ6(
図1)の伸縮位置30、ストロークエンド方向への伸縮速度31、および、操作体2(
図1)の操作量に応じた制御信号32が入力される。ここで、伸縮位置30とは、ストロークエンド(伸張端、または、収縮端)からの距離を示す。例えば、伸縮位置30については、流体圧シリンダ6(
図1)がブームシリンダ6a(
図2)である場合、伸縮位置と相関を有するブーム28aとアーム28bとがなす角度などが入力されてもよい。
【0036】
入力された伸縮位置30に対し、予め設定された対応マップ35に基づき、出力値(スケーラ)SC1が出力される。図示されるように、対応マップ35は、ストロークエンドからの伸縮位置30が遠いほど(マップ中の右側ほど)小さい値を出力するように設定されている。出力値SC1は、0以上1以下の値であり、本実施の形態では、伸縮位置30に対し連続的に設定されている。出力値SC1が大きいほど、制御信号32を大きく絞るようになっている。
【0037】
一方、入力された伸縮速度31に対し、予め設定された対応マップ36に基づき、出力値(スケーラ)SC2が出力される。図示されるように、対応マップ36は、伸縮速度31が大きいほど(マップ中の右側ほど)大きい値を出力するように設定されている。出力値SC2は、0以上1以下の値であり、本実施の形態では、伸縮速度31に対し連続的に設定されている。出力値SC2が大きいほど、制御信号32を大きく絞るようになっている。
【0038】
出力値SC2は、最大値保持部38に入力される。最大値保持部38には、出力値SC2の他に、伸縮位置30に基づくセット信号STと、制御信号32に基づくリセット信号RSと、が入力可能となっている。セット信号STは、伸縮位置30がスナバ領域直前のスナバ制御領域に入ると、制御周期毎に最大値保持部38に入力され、そのセット信号STの入力の都度、出力値SC2が最大値保持部38に入力される。ここで、スナバ制御領域とは、流体圧シリンダ6に対しスナバ速度制御を行うに当たり、流体圧シリンダ6の伸縮範囲において、位置検出手段17(
図1)および速度検出手段18(
図1)の検出結果がコントローラ3に入力される範囲をいう。また、リセット信号RSは、操作体2(
図1)が所定の中立範囲に入ったことが検出されると入力される。最大値保持部38では、リセット信号RSが入力されるまで、出力値SC2の最大値が保持され、その最大値が出力値SC2maxとして出力される。すなわち、操作体2(
図1)が所定の中立範囲に入らない限り、言い換えるとオペレータが操作体2(
図1)を中立位置付近まで戻すことなく操作している限り、最大値保持部38は出力値SC2の最大値を保持する。
【0039】
例えば、
図4には、オペレータがストロークエンド方向に徐々に伸縮速度を上げていき、スナバ制御領域SCAに入ってからストロークエンド方向に徐々に伸縮速度を下げていった場合の例を示す。このとき、
図3に示される最大値保持部38は、スナバ制御領域SCAにおける最大値(
図4中のピーク値)を出力値SC2maxとして保持することとなる。
【0040】
出力値SC1,SC2maxが乗算器40に入力されて乗算され、乗算値MP1として出力される。さらに、乗算値MP1と制御信号32とが乗算器41に入力されて乗算され、乗算値MP2として減算器42に入力される。減算器42では、制御信号32から乗算値MP2が減算された値がスナバ速度制御用の上限LT1として制限部43に出力され、制限部43に入力された制御信号32がこの上限LT1以下となるように絞られた制御信号32aとして出力される。
【0041】
つまり、
図5に示されるように、スナバ速度制御においては、伸縮位置30が小さく、すなわち流体圧シリンダ6(
図1)がストロークエンドに近く、かつ、ストロークエンド方向への伸縮速度が大きい場合に、制御信号が大きく絞られ、それ以外の条件では制御信号の絞りが小さくなるように設定される。
【0042】
また、
図3に戻って、入力された伸縮位置30に対し、予め設定された対応マップ45に基づき、停止制御用の上限LT2が出力される。図示されるように、対応マップ45は、伸縮位置30がストロークエンド近傍(マップ中の左端近傍)でのみ、伸縮位置30が小さいほどつまりストロークエンドに近づくほど小さい値を出力し、それ以外では一定値を出力するように設定されている。つまり、この上限LT2については、伸縮位置30がストロークエンド近傍である場合にのみ有効であり、それ以外の伸縮位置30に対しては基本的に作用しない。本実施の形態では、上限LT2は伸縮位置30に対し連続的に設定されている。
【0043】
そして、上限LT2が制限部46に入力され、制限部46に入力された制限信号32aが上限LT2以下となるように絞られた制御信号32bとして出力される。
【0044】
また、停止制御については、オペレータの切り替えに応じてオンオフされるため、そのオンオフに応じて、コントローラ3からの出力は、制御信号32bまたは制御信号32aとなる。
【0045】
そして、コントローラ3から出力された制御信号32aまたは制御信号32bにより、
図1に示されるポンプ4の吐出流量および/またはコントロールバルブ5のスプールの開度および動作方向が制御されることで、上記のスナバ速度制御、停止制御が実施される。
【0046】
なお、対応マップ35,36,45は、入力値に対して出力値が不連続に設定されるテーブルなどでもよい。
【0047】
このように、一実施の形態によれば、流体圧シリンダ6のストロークエンドから所定範囲内つまりスナバ領域での伸縮位置とストロークエンド方向への伸縮速度とに応じて、流体圧シリンダ6のストロークエンド方向への伸縮速度を制限することで、流体圧シリンダ6のストロークエンド側への突入による衝撃を適切に緩和しつつ、流体圧シリンダ6のストロークエンド方向への伸縮速度を確保できる。
【0048】
例えば、流体圧シリンダ6のストロークエンドから所定範囲内つまりスナバ領域での伸縮位置のみに基づいて、流体圧シリンダ6の伸縮位置がストロークエンドに近いほど流体圧シリンダ6のストロークエンド方向への伸縮速度を制限する場合には、スナバ領域に入りさらにストロークエンド方向に流体圧シリンダ6を伸縮させたい場合に、その伸縮位置に応じて伸縮速度の上限値が一意に規定されているために、ストロークエンドに近づくほど伸縮速度が抑えられ、流体圧シリンダ6を非常にゆっくりでないと動かせないという問題が生じ得る。そのために、スナバ領域において一旦流体圧シリンダ6の伸縮を停止させ、再度ストロークエンド方向に動かすような動作の場合、伸縮位置に応じて上限が規定されていることで、ポンプ流量が少なく、かつ、コントロールバルブ5のスプールストロークも小さく、ポンプ流量をタンク12にバイパスするバイパススプールの開口量も大きいことにより、流体圧シリンダ6の伸縮速度やシリンダ推力が極めて小さい状態となる。
【0049】
それに対し、本実施の形態では、スナバ領域での流体圧シリンダ6のストロークエンド方向への伸縮速度を加味して伸縮速度の制限を設定することで、流体圧シリンダ6のストロークエンド側への突入による衝撃を適切に緩和しつつ、スナバ領域でのストロークエンド方向への伸縮速度が小さい場合には、伸縮速度の制限を緩和して、ストロークエンド側へと伸縮させたり、ストロークエンド近傍でのシリンダ推力を確保したりでき、かつ、ストロークエンド近傍での流体圧シリンダ6の伸縮が過剰に遅くなることがない。そのため、例えば作業機械20の吊り作業などにおいて流体圧シリンダ6をゆっくり伸張させた場合にシリンダ推力が制限を受けにくく、操作性が向上する。
【0050】
また、駆動制御装置1が、流体圧シリンダ6の伸縮速度に拘らず、流体圧シリンダ6のストロークエンド近傍の所定位置に近いほど流体圧シリンダ6への作動流体の供給量を低減させて流体圧シリンダ6の伸縮を所定位置で停止(ソフトウェアストップ)させることで、ストロークエンドにおいてさらに操作体2の操作を追い込んでポンプ圧の上昇に伴いメインリリーフ弁11を作動させる、リリーフ操作に起因するリリーフ圧の蓄圧すなわち閉じ込み圧を防止でき、流体圧シリンダ6をストロークエンドとは反対方向に伸縮させたときに閉じ込み圧が抜けることで初動時に流体圧シリンダ6が飛び出し気味に動作することがなく、例えば作業機械20における水平引き作業のように、アームシリンダ6bをストロークエンド近傍から伸び方向にゆっくり動かしたい場合などであっても、操作性が良好になる。
【0051】
したがって、ストロークエンド近傍での流体圧シリンダ6の伸縮操作性が良好である。
【0052】
操作体2が所定の中立範囲となったときに、コントローラ3が、スナバ速度制御における伸縮速度の最大値の保持を解除することで、流体圧シリンダ6の伸縮位置がスナバ領域にあるときにオペレータが操作体2を一旦中立位置付近まで戻してストロークエンド方向への伸縮速度を低下または停止させた場合には、そこからのスナバ領域における流体圧シリンダ6のストロークエンド方向への伸縮速度に制限が掛かりにくくなり、ストロークエンド付近でのシリンダ推力を得ることができる。
【0053】
コントローラ3の停止手段の機能つまり停止制御をオンオフ切り替え可能であるため、オペレータが必要に応じて流体圧シリンダ6を機械的に停止する位置まで最大に伸縮させたい場合などにも対応できる。しかも、コントローラ3の停止手段の機能つまり停止制御をオフさせても制限手段の機能すなわちスナバ速度制御には影響がないので、流体圧シリンダ6のストロークエンド側への突入による衝撃は適切に緩和することができる。
【0054】
なお、伸縮手段7は、位置検出手段17と速度検出手段18との少なくともいずれかの故障が診断されたときに、流体圧シリンダ6のストロークエンド方向への伸縮速度を強制的に低減することが好ましい。位置検出手段17と速度検出手段18との故障については、例えば断線検出の結果がコントローラ3に入力されることで実施される。この場合には、位置検出手段17と速度検出手段18との少なくともいずれかの故障に起因して制限手段および/または停止手段の機能、すなわち上記のスナバ速度制御および/または停止制御が正常に働かずに流体圧シリンダ6がシリンダエンドに対し機械的に激しく衝突することを抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、流体圧シリンダの駆動制御装置および作業機械を製造、販売する産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 駆動制御装置
2 操作体
3 制限手段および停止手段の機能を有するコントローラ
6 流体圧シリンダ
7 伸縮手段