(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126183
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】肉の遊離イノシン酸含量の推定方法及び推定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20240912BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240912BHJP
G01N 33/12 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G01N21/41 Z
G01N1/28 X
G01N33/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034409
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】509298012
【氏名又は名称】公立大学法人宮城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100191400
【弁理士】
【氏名又は名称】絹川 将史
(72)【発明者】
【氏名】須田 義人
【テーマコード(参考)】
2G052
2G059
【Fターム(参考)】
2G052AA24
2G052AB19
2G052AD32
2G052AD46
2G052ED06
2G052FD08
2G052FD09
2G052GA11
2G052JA03
2G059AA01
2G059BB04
2G059BB11
2G059CC20
2G059DD04
2G059EE04
2G059MM01
2G059MM12
(57)【要約】
【課題】簡易かつ迅速、安価で正確に食味に貢献する化学成分を分析できる肉の遊離イノシン酸含量の推定方法及び推定装置を提供する。
【解決手段】液体中で肉を破砕して肉抽出液を作製し、肉抽出液を活性アルミナで精製して肉精製液を作製し、肉精製液のBrix値を測定し、Brix値と肉のイノシン酸含量との相関関係に基づいて、測定したBrix値から肉の遊離イノシン酸含量を推定する。相関関係は、予め決定した予測式を用いて示すこともできる。
【選択図】
図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中で肉を破砕して肉抽出液を作製し、
前記肉抽出液を活性アルミナで精製して肉精製液を作製し、
前記肉精製液のBrix値を測定し、
Brix値と肉のイノシン酸含量との相関関係に基づいて、測定したBrix値から肉の遊離イノシン酸含量を推定することを特徴とする肉の遊離イノシン酸含量の推定方法。
【請求項2】
前記Brix値は、屈折計を用いて測定することを特徴とする請求項1に記載の肉の遊離イノシン酸含量の推定方法。
【請求項3】
前記肉抽出液は、細胞破砕装置を用いて作製することを特徴とする請求項2に記載の肉の遊離イノシン酸含量の推定方法。
【請求項4】
前記細胞破砕装置は、ビーズ式細胞破砕装置であって、
回転数2000~4000rpm、30秒~3分間処理して肉を破砕することを特徴とする請求項3に記載の肉の遊離イノシン酸含量の推定方法。
【請求項5】
前記肉は、豚肉であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の肉の遊離イノシン酸含量の推定方法。
【請求項6】
前記相関関係は、予測式として推定イノシン酸含量(μmol/g meat)=a×Brix値(%)+bで示され、aは1.1~4.2及びbは-14.6~1.6の範囲にあることを特徴とする請求項5に記載の肉の遊離イノシン酸含量の推定方法。
【請求項7】
液体中で肉を破砕して肉抽出液を作製し、前記肉抽出液を活性アルミナで精製して肉精製液を作製する抽出液・精製液作製部と、
前記肉精製液のBrix値を測定するBrix値取得部と、
Brix値と肉のイノシン酸含量との相関関係に基づいて、測定したBrix値から肉の遊離イノシン酸含量を推定する遊離イノシン含量推定部と、
出力部と、
記憶部と、
を備えることを特徴とする肉の遊離イノシン酸含量の推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性固形成分光屈折率(Brix値)を用いた肉の遊離イノシン酸含量の推定方法及び推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
肉は栄養価に優れていて、人間の健康的な体作りに欠かせないタンパク質、アミノ酸、脂質、ビタミン類等を豊富に含む。豚肉は、価格が手頃で美味しいため、消費者に馴染み深い食材の1つとなっている。その需要は高く、今後も世界的な人口の増加とともに伸びる見通しである。豚肉の価格は、枝肉評価基準(豚枝肉取引規格、http://www.jmga.or.jp/standard/pork/)によると、重量及び背脂肪の厚さ、外観、肉質が基準となっていて、主に大きさや見た目に基づいた評価である。一方、そこには美味しさといった食味に影響する評価がない。つまり、生産農家の美味しい肉を作る努力が十分評価されていない状況である。そこで、味に貢献する化学成分や柔らかさ等の物性の情報を含めた美味しさ総合指標の開発が必要である。
【0003】
美味しさに関する化学成分として、アミノ酸や核酸関連物質である旨味成分が知られている。イノシン酸(Inosine 5′-monophosphate、IMP)は、グルタミン酸やグアニル酸等と共に旨味成分として知られ、その含量の違いは食肉のフレーバー形成に大きな影響を与える(非特許文献1)。このことに着目して、豚肉中のアミノ酸や核酸関連物質の測定が試みられ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、標準物質のアデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)、イノシン、ヒポキサンチンと比較することでイノシン酸の同定と定量がなされている(非特許文献2)。また、インピーダンス比及びHPLCを用いて豚肉の熟成度が判定されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.A.MAGA, “Umami flavour of meat, In Flavor of Meat and Meat Products” (ed.) F. Shahidi, Blackie Academic and Professional, London, 1994, p.98-115
【非特許文献2】日豚会誌,2013年3月,第50巻,第1号,p.8-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アミノ酸や核酸関連物質といった食味に関する化学成分を分析するには、非常に高価な液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィー等の装置を主に使用しなければならず、正確な結果を得るには操作者が熟練するまで多くの訓練が必要であり、肉を取り扱う現場で取り入れるには困難があった。
【0007】
本発明は、斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、上記の問題点を解決する簡易かつ迅速、安価で正確に食味に貢献する化学成分を分析可能な食肉中の遊離イノシン酸含量の推定方法及び推定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、肉の理化学特性や物性について、可溶性固形成分光屈折率(Brix値)を用いて網羅的に分析した。Brix値と消費者が感じる食味との関係を調査し、Brix値を決定づける因子としてイノシン酸が大きく貢献することを明らかにした。さらに、精度高く食肉中の遊離イノシン酸含量を推定するため、肉抽出液中のメタボロームの精製手法を改良し、Brix値を用いた肉のイノシン酸含量の推定方法及び推定装置の発明に至った。
【0009】
したがって、本発明は、以下に掲げる構成とした。
本発明の肉の遊離イノシン酸含量の推定方法は、液体中で肉を破砕して肉抽出液を作製し、前記肉抽出液を活性アルミナで精製して肉精製液を作製し、前記肉精製液のBrix値を測定し、Brix値と肉のイノシン酸含量との相関関係に基づいて、測定したBrix値から肉の遊離イノシン酸含量を推定することを特徴とする。
また、前記Brix値は、屈折計を用いて測定することを特徴とする。
また、前記肉抽出液は、加熱することを特徴とする。
また、前記肉抽出液は、遠心した上清を用いることを特徴とする。
また、前記肉抽出液は、細胞破砕装置を用いて作製することを特徴とする。
また、前記細胞破砕装置は、ビーズ式細胞破砕装置であることを特徴とする。
また、前記ビーズ式細胞破砕装置は、回転数2000~4000rpm、30秒~3分間処理して肉を破砕することを特徴とする。
また、前記相関関係は、予測式を用いて示すことを特徴とする。
また、前記予測式は、線形、多項式、対数、指数、シグモイド、累乗等の近似式に当てはめることを特徴とする。
また、前記肉は、豚肉であることを特徴とする。
また、前記予測式は、推定遊離イノシン酸含量=a×Brix値+bで示され、aは1.1~4.2及びbは-14.6~1.6の範囲にあることを特徴とする。
また、前記予測式のaは2.2及びbは-4.0であることを特徴とする。
【0010】
本発明の肉の遊離イノシン酸含量の推定装置は、液体中で肉を破砕して肉抽出液を作製し、前記肉抽出液を活性アルミナで精製して肉精製液を作製する抽出液・精製液作製部と、前記肉精製液のBrix値を測定するBrix値取得部と、Brix値と肉のイノシン酸含量との相関関係に基づいて、測定したBrix値から肉の遊離イノシン酸含量を推定する遊離イノシン含量推定部と、出力部と、記憶部とを備えることを特徴とする。
また、前記Brix値は、屈折計を用いて測定することを特徴とする。
また、前記肉抽出液は、加熱することを特徴とする。
また、前記肉抽出液は、遠心した上清を用いることを特徴とする。
また、前記肉抽出液は、細胞破砕装置を用いて作製することを特徴とする。
また、前記細胞破砕装置は、ビーズ式細胞破砕装置であることを特徴とする。
また、前記ビーズ式細胞破砕装置は、回転数2000~4000rpm、30秒~3分間処理して肉を破砕することを特徴とする。
また、前記相関関係は、予測式を用いて示すことを特徴とする。
また、前記予測式は、線形、多項式、対数、指数、シグモイド、累乗等の近似式に当てはめることを特徴とする。
また、前記肉は、豚肉であることを特徴とする。
また、前記予測式は、推定遊離イノシン酸含量=a×Brix値+bで示され、aは1.1~4.2及びbは-14.6~1.6の範囲にあることを特徴とする。
また、前記予測式のaは2.2及びbは-4.0であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の肉のイノシン酸含量の推定方法及び推定装置を用いることにより、屈折計を用いてBrix値を測定し、その値から簡易かつ安価に肉のイノシン酸含量を推定できる。また、肉の抽出から1時間程度で迅速に測定ができる。また、本発明の肉精製液を用いることにより、Brix値とイノシン酸含量との高い相関関係を利用して、食味に大きく貢献する肉のイノシン酸含量の推定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る肉の遊離イノシン酸含量を推定するための処理の例を示すフローチャートである。
【
図2】実施の形態に係る肉の遊離イノシン酸含量の推定装置の概略構成の例を示す。
【
図3】
図3は、肉の理化学特性とBrix値の関係についての説明である。
【
図4】
図4は、GCMSによる肉のメタボローム分析結果を示す。
【
図5】
図5は、Brix値が高い肉と低い肉の2群について、判別スコアを用いた判別分析の結果を示す。
【
図6A】
図6Aは、活性アルミナで精製しない場合のBrix値について、Brix値とイノシン酸(IMP)濃度の相関関係を示す。
【
図6B】
図6Bは、活性アルミナで精製した場合のBrix値について、Brix値とイノシン酸(IMP)濃度の相関関係を示す。
【
図7】
図7は、活性アルミナで精製した場合のBrix値に対して、予測式が取り得る範囲について示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.肉の遊離イノシン酸含量の推定方法
本発明の肉の遊離イノシン酸含量の推定方法は、以下の(1)~(4)の工程から構成される。記載順は便宜的なものであり、実際に行う処理順序は前後する場合や、一部省略する場合もある。
図1に実施の形態1に係る肉の遊離イノシン酸含量を推定するための処理の流れの例を示す。本発明の実施の形態1にかかる方法は、検査技師や現場職員等により手動で行われてもよいし、推定装置や制御プログラムをインストールされた情報処理装置により自動的に行われてもよいし、半自動で行われてもよい。
【0014】
(1)肉抽出液を作製する工程(S1)
液体中でサンプルとなる肉を、細胞破砕装置やホモジナイザー等を用いて破砕して、肉抽出液を作製する。肉抽出液は、好ましくは遠心分離を行い、回収した上清を用いる。また、肉抽出液は、好ましくは加熱処理を行う。
(2)肉精製液を作製する工程(S2)
(1)の工程で作製した肉抽出液を活性アルミナで精製して、肉精製液を作製する。活性アルミナは、肉抽出液中に行き渡るように攪拌する。攪拌は、ボルテックス等を用いてもよい。肉精製液は、夾雑物を除くため、好ましくは遠心分離等を行い、回収した上清を用いる。肉精製液の作製にあたり、(1)の工程の処理を組み合わせて行ってもよい。
(3)Brix値を取得する工程(S3)
(2)の工程で作製した肉精製液を用いて、屈折計等でBrix値を測定する。
(4)肉の遊離イノシン酸含量を推定する工程(S4)
(3)の工程で取得したBrix値を用いて、Brix値と肉のイノシン酸含量との相関関係に基づいて、サンプルとなる肉の遊離イノシン酸含量を推定する。好ましくは、複数サンプルの肉精製液のBrix値とイノシン酸含量の測定値から予め決定した予測式を用いて、肉の遊離イノシン酸含量を推定する。
【0015】
本発明において、サンプルとなる肉は、獣、鳥類、魚類等の肉である。肉は、好ましくは、食用に供される食肉である。獣はブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ等が、鳥類は鶏、七面鳥、アヒル、ホロホロチョウ、ウズラ等が、魚類はマグロ、サケ、サバ、アジ、ウナギ、アユ等が挙げられる。肉は、骨格筋や臓器、それらに付随する組織等のいかなる部位も用いることができる。肉の部位は、ロース、肩ロース、モモ、ヒレ、バラ、タン、テール、レバー、赤身、トロ等が挙げられる。肉の形態は、切り身、挽き肉、肉粉、すり身等のいかなる成形した形態も用いることができ、合い挽き肉といった複数の動物種や部位の肉を混合した形態でもよい。肉の状態は、肉抽出液が作製できればいかなる状態でもよく、常温、冷蔵、冷凍、粉末、乾燥、生体、焼肉、茹で肉、蒸し肉等といった状態が挙げられる。
【0016】
本発明において、サンプルとなる豚肉は、肉が取得できれば、いかなる部位、形態、状態でも用いることができる。豚の品種は、大ヨークシャー種、ヨークシャー種、ランドレース種、デュロック種、バークシャー種、ハンプシャー種、イベリコ豚、トウキョウX、アグー、梅山豚、金華豚等が挙げられる。雑種強勢を利用して、肉質の良い品種や子豚を多く生む品種を複数掛け合わせて肉豚を生産することもある。
【0017】
本発明の肉抽出液は、液体中で肉を破砕して、肉中のメタボローム(代謝物の総体)を抽出した液である。液体は、肉を入れて破砕できればよく、水、緩衝液等を用いる。好ましくは、水であり、不純物をほとんど含まない純水や超純水がより好ましい。緩衝液等を用いる際には、溶質によってBrix値が上昇する場合は、その上昇するBrix値を補正してBrix値を算出することもできる。
【0018】
肉の破砕は、肉のメタボロームを抽出するために、細胞破砕装置等を用いた物理的な方法、抽出試薬等を用いた化学的な方法、それらの組み合わせ等により行う。細胞破砕装置は、圧力式、回転式、超音波式、ビーズ式、震盪式、それらの組み合わせ等があり、手動又は自動で行うことができる。肉の破砕条件を設定するため、好ましくは、自動で行う細胞破砕装置を用い、より好ましくは、回転式ホモジナイザーやビーズ型細胞破砕装置を用いる。肉の固さや柔らかさに合わせて破砕度合いを調節することができる。例えば、ビーズ型細胞破砕装置であれば、回転数が低いと肉の固さを反映した肉抽出液が得られ、回転数が高いとより多くの肉の化学成分やメタボロームが肉抽出液に得られ、それぞれBrix値に反映される。ビーズ型細胞破砕装置であれば、好ましくは回転数1000~5000rpm、10秒~5分間破砕を行い、より好ましくは回転数2000~4000rpm、30秒~3分間破砕を行う。破砕用のビーズは、ガラス、ジルコニア、シリカ、ステンレス等の素材があり、サイズは0.01、0.1、0.5、1.0、2.0、3.0、5.0、10.0、20.0mm等が挙げられ、好ましくは0.1~10.0mmである。抽出試薬は、塩酸、過塩素酸、エタノール、メタノール、クロロホルム、TCA、アセトン、界面活性剤等が挙げられる。
【0019】
本発明の肉精製液は、イノシン酸以外の肉の成分を選択的に除去する目的で、活性アルミナを用いて精製した液である。活性アルミナは、大きな表面積を持つ多孔質の酸化アルミニウムであり、水酸化アルミナを300~500℃で脱水して製造される、水、ガス等に対して高い吸着能を持ち、吸着剤、乾燥剤、触媒等に利用される。活性アルミナは酸性(pH4)、塩基性(pH9)、中性(pH7.5)を用いる。好ましくは、塩基性タイプを用いる。
【0020】
肉抽出液や肉精製液は、好ましくはイノシン酸以外の成分を含む夾雑物を除去する。夾雑物の除去は、重力沈降法や遠心分離法等を用いる。迅速かつ一定の条件で行うため、好ましくは遠心分離法を用いる。遠心分離法は、遠心力を利用して、粒子の大きさ、形状、密度、媒体の粘性、およびロータの速度に応じて、溶液から粒子を分離する。
【0021】
肉抽出液や肉精製液は、好ましくはイノシン酸以外の成分であるタンパク質等を不活化させて除去する。タンパク質等の不活化は、加熱処理や化学処理を行う。加熱処理は、好ましくは35~100℃、より好ましくは40~70℃で、さらに好ましくは45~60℃で加熱する。化学処理は、酸や塩基を加えてpHを変化させる等により行う。このようにタンパク質等を除く操作を加えることにより、Brix値と遊離イノシン酸含量の相関関係が高くなる。
【0022】
Brix値は、可溶性固形成分光屈折率のことであり、溶液中の物質と光の屈折率を利用し、それを溶液中の物質濃度に換算した値である。Brix値は、一般的に20℃のショ糖溶液の質量百分率に相当する値である糖度として認識され、ショ糖1gのみを溶質として含む水溶液100gをBrix屈折計で測定したときの示度であるBrix値1%となる。一方、本発明の肉抽出液や肉精製液のようなショ糖以外の固形成分を含む溶液では、Brix値は固形成分濃度の目安になる。つまり、ショ糖以外の糖成分、アミノ酸や食塩といった糖成分以外も屈折作用を持つため、Brix値に反映される。屈折計は、光の屈折原理を利用して溶液の濃度を測定する機器であり、プリズム、光源、検出器等から構成される。ハンディタイプや卓上型といった様々の市販の屈折計も利用できる。
【0023】
本発明において、肉のBrix値が上昇するとイノシン酸含量も上昇し、正の相関が認められることから、複数サンプルから取得したBrix値とイノシン酸含量との相関関係から算出した予測式を用いて、肉中の遊離イノシン酸含量の推定を行う。予測式は、線形、多項式、対数、指数、シグモイド、累乗等の近似式に当てはめることができる。予め決定した予測式を作成するため、イノシン酸含量は、液体クロマトグラフィー等の核酸関連物質分析により取得する。予め決定した予測式は、測定されたサンプルの蓄積と共に、予測式の精度を高めてもよい。また、動物種や品種、肉の部位、形態、状態等によって、異なる予測式を用いてもよい。
【0024】
豚肉のロース芯部肉であれば、予測式が線形回帰式の場合、推定遊離イノシン酸含量(μmol/g meat)=a×Brix値(%)+bで示され、aは1.1~4.2、bは-14.6~1.6の範囲にある。好ましくは、aは1.5~3.0、bは-7.0~-2.0の範囲にあり、さらに好ましくは、aは2.2、bは-4.0である。測定したBrix値を予測式に代入することによって、肉中の遊離イノシン酸含量が推定できる。
【0025】
Brix値は、咀嚼時の柔らかさ及び旨味と正の相関関係があるため、肉の美味しさに関与するといえる。さらに、Brix値と呈味性を示す遊離イノシン酸含量とも正の相関関係があるため、イノシン酸も肉の美味しさに関与すると推察される。Brix値と遊離イノシン酸含量の相関関係により、獣、鳥類、魚類等のあらゆる肉において、遊離イノシン酸含量の推定が適用可能である。食肉の理化学評価指標や遺伝的改良指標としての利用、さらには品質管理指標、肉の熟成度評価指標としての利用ができる。
【0026】
実施の形態2.肉の遊離イノシン酸含量の推定装置
本発明の肉の遊離イノシン酸含量の推定装置の構成を
図2に示す。肉の遊離イノシン酸含量の推定装置10は、抽出液・精製液作製部11、Brix値取得部12、入力部13、記憶部14、遊離イノシン酸含量推定部15、出力部16を主に備えている。
【0027】
抽出液・精製液作製部11は、実施の形態1で説明した肉抽出液を作製する工程(S1)及び肉精製液を作製する工程(S2)を行う。抽出液・精製液作製部11は、Brix値を測定するための肉抽出液や肉精製液を作製するための構成部位であり、肉抽出液や肉精製液を作製するための細胞破砕、ホモジナイズ、遠心分離、ボルテックス、加熱、秤量、分注、活性アルミナ処理等の機能を持つ作製手段を有する。このような作製手段は、肉のイノシン酸含量の推定装置10とは別に構成されていてもよく、作製した肉抽出液や肉精製液を用いて、Brix値取得部12で直接測定してもよい。
【0028】
Brix値取得部12は、実施の形態1で説明したBrix値を測定する工程(S3)を行う。Brix値取得部12は、肉精製液のBrix値の測定を行う構成部位であり、Brix値を測定するための屈折計等の測定手段を有する。このような測定手段は、肉のイノシン酸含量の推定装置10とは別に構成されていてもよく、測定したデータ等をネットワークや記憶媒体を用いて入力部13を介して入力してもよい。
【0029】
入力部13は、抽出液・精製液作製部11やBrix値取得部12における処理や測定の指示や、遊離イノシン酸含量推定部15で行う演算処理の指示等を入力することができる。入力部13は、インターフェイス等であり、キーボード、マウス等の操作部も含む。これにより、入力部13は、抽出液・精製液作製部11やBrix値取得部12で測定したデータや遊離イノシン酸含量推定部15で行う演算処理の指示等を入力することができる。また、入力部13は、例えば抽出液・精製液作製部11やBrix値取得部12が外部にある場合は、操作部とは別に、測定したデータ等をネットワークや記憶媒体を介して入力することができるインターフェイス部を含んでもよい。
【0030】
記憶部14は、抽出液・精製液作製部11やBrix値取得部12で測定したデータ、入力部13から入力された指示、遊離イノシン酸含量推定部15で行った演算処理結果等の他、情報処理装置の各種処理に用いられる制御プログラムやデータベースなどを記憶する。記憶部14はRAM、ROM、フラッシュメモリ等のメモリ装置、ハードディスクドライブ等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置などを有する。制御プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ、外付けハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体や、インターネットを介してインストールされてもよい。制御プログラムは、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部14にインストールされる。
【0031】
遊離イノシン酸含量推定部15は、実施の形態1で説明した肉の遊離イノシン酸含量を推定する工程(S4)を行う。遊離イノシン酸含量推定部15は、Brix値取得部12で測定されたBrix値から、肉の遊離イノシン酸含量を推定するための構成部位である。このために、記憶部14に記憶している制御プログラムに従って、Brix値取得部12で測定され記憶部14に記憶されたデータに対して、各種の演算処理を実行する。演算処理は、遊離イノシン酸含量推定部15に含まれるCPUによりおこなわれる。このCPUは、抽出液・精製液作製部11、Brix値取得部12、入力部13、記憶部14、遊離イノシン酸含量推定部15、出力部16を制御する機能モジュールを含み、各種の制御を行うことができる。これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェアなどで構成されてもよい。
【実施例0032】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0033】
実施例1.Brix値に貢献する化学物質の検討
供試豚は、デュロック種(シムコ)446頭を用いた。飼料給与は、一般配合飼料を用いた飽食給与とし、増体に合わせて3段階に分けた。水給与は、任意給水とした。飼育期間は6ヶ月、出荷体重は120±10kgとした。供試豚の遺伝的背景は明確かつ均一であり、飼育環境も統一した。豚肉は、ロース芯部肉を用いた。
【0034】
<Brix値の測定>
凍結した豚肉0.4gを2.0mlコニカル型チューブ(TM-625、TOMY)に採取した。超純水400μlと200μlチューブ1杯分の粉砕用ジルコニアビーズ(YTZボール寸法0.5φmm ニッカトー、トミー精工)を加え、ビーズ式細胞破砕装置(Micro Smash MS-100、TOMY)を用いて、0、2000、3000、4000rpmのいずれかの回転数で、30秒間2回処理して豚肉を破砕した。遠心分離を5000rpm、15分間、4℃で行い上清を回収し、上清300μlを用いてポケット屈折計(Pocket Refractometer PAL-1、アタゴ)でBrix値を測定した。
【0035】
<ガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)によるメタボローム分析>
凍結した豚肉0.4gを2.0mlコニカル型チューブ(TM-625、TOMY)に採取した。超純水400μlと200μlチューブ1杯分の粉砕用ジルコニアビーズ(YTZボール寸法0.5φmm ニッカトー、トミー精工)を加え、ビーズ式細胞破砕装置(Micro Smash MS-100、TOMY)を用いて、3000rpm、30秒間2回処理して豚肉を破砕した。遠心分離を5000rpm、15分間、4℃で行い上清を回収し、上清にメトキシアミン塩酸塩100μlを加え、30℃で90分処理した。さらにMSTFA50μlを加え、37℃で30分処理した。液をバイアルに移し、ガスクロマトグラフィー(G-6000、日立ハイテク)のメーカープロトコルに従って定性分析を行った。
【0036】
<アミノ酸分析>
凍結した0.5gの豚肉を2.0mlコニカル型チューブ(TM-625、TOMY)に採取した。75%エタノール200μlと200μlチューブ1杯分の粉砕用ジルコニアビーズ(YTZボール寸法0.5φmm ニッカトー、トミー精工)を加え、ビーズ式細胞破砕装置(Micro Smash MS-100、TOMY)を用いて、5000rpm、30秒間処理を行い、さらに氷上で75%エタノール800μlを添加し、2000rpm、10秒間処理して豚肉を破砕した。遠心分離を5000rpm、15分間、20℃で行い上清を得た。シリンジで上清700μlを吸い、シリンジの先にフィルターを装着し、バイアルに注入し、アミノ酸分析機(LA8080 AminoSAAYA、日立ハイテク)のメーカープロトコルに従って分析を行った。
【0037】
<核酸関連物質分析>
凍結した50mgの豚肉を2.0mlコニカル型チューブ(TM-625、TOMY)に採取した。チューブに5%過塩素酸1mlと200μlチューブ1杯分の粉砕用ジルコニアビーズ(YTZボール寸法0.5φmm ニッカトー、トミー精工)を加え、ビーズ式細胞破砕装置(Micro Smash MS-100、TOMY)を用いて、5000rpm、30秒間処理して豚肉を破砕した。遠心分離を3000g、15min、4℃で行い、上清を得た。シリンジで上清800μlを吸い、シリンジの先にフィルターを装着し、1.5mlチューブに移し、5mol/l水酸化カリウム55μlを加え中和した。上清をフィルターの装着されたシリンジに移し、バイアルに注入し、液体クロマトグラフィー(カラムオーブン;CO-965、ポンプ;PU-980、検出器;FP-920、JASCO)のメーカープロトコルに従って分析を行った。
【0038】
統計解析は、エクセル2016を用いた。重回帰分析は、増減法で投入基準P値20%、除去基準P値20%とした。目的変数をBrix値、説明変数をアミノ酸、核酸関連物質とした。
【0039】
豚肉の理化学特性とBrix値の関係について
図3に示す。溶液中に豚肉のメタボローム含量が増えると、屈折率が高くなり、Brix値も高くなる。Brix値が高いことは、測定液のメタボローム含量が高いことを示す。また、固い肉と柔らかい肉では、柔らかい肉の方がより少ない回転数で破砕でき、溶液中の化学成分やメタボローム含量が増える。ここで、回転数を2000~4000rpmで処理を行うと、化学的特性と物性の双方を加味することができ、豚肉の総合的評価が可能なBrix値となり得た。
【0040】
GCMSによる豚肉中のメタボローム分析の結果を
図4に示す。豚肉を破砕した上清におけるBrix値を決定する溶液中の主な化学物質は、糖類や有機酸であった。また、核酸分解物質やアミン系物質の割合も高かった。
【0041】
アミノ酸分析及び核酸関連物質分析から、Brix値に対する全ての測定値を説明変量とした線形重回帰分析を行った。表1は、Brix値を目的変数とした必須アミノ酸と核酸関連物質の線形重回帰分析による網羅的な評価を示す。標準偏回帰係数はイノシン酸が0.6782(p<0.001)であり、特定された旨味を呈する化学物質の中では、突出して大きい貢献度であった。一方、呈味性を示す化学物質は他にも確認されたが、イノシン酸より格段に貢献度が低かった。このことから、Brix値に対してイノシン酸の相対的貢献度は非常に高く、Brix値に貢献する呈味性物質はイノシン酸であった。
【0042】
【0043】
実施例2.Brix値と食味性の関係
<食味テスト>
豚肉は、実施例1で供試したデュロック種446頭のうち、Brix値の高低で各10頭の2群に分けたサンプルを用いた。サンプルはロース芯部2cm四方で10g準備し、180℃に設定したホットプレートで表裏を1分ずつ加熱した。室温に戻してから、21~22歳の女子大学生50名により、食味試験を実施した。統計解析は、エクセル2016を用いた。重回帰分析は、増減法で投入基準P値20%、除去基準P値20%とした。目的変数をBrix値、説明変数をアミノ酸、核酸関連物質とした。
【0044】
消費者型食味テストから、Brix値と食味性との相関関係を調査した。表2にBrix値を説明変数に含めた線形判別分析を示す。Brix値との相関係数は、咀嚼時の柔らかさが0.639(p<0.001)及び旨味が0.362と正の相関関係があり、Brix値は美味しさと関連性が高かった。さらに、Brix値と化学物質の相関係数は、イノシン酸が0.695(p<0.001)、イノシンが-0.482(p<0.05)、ヒポキサンチンが-0.687(p<0.001)であり、それぞれ有意な相関があった。核酸関連物質はイノシン酸、イノシン、ヒポキサンチンの順に分解されるが、Brix値はイノシン酸と正の相関、イノシン及びヒポキサンチンと負の相関を示すため、核酸関連物質の分解過程と一致した。さらに、旨味とイノシン酸の相関係数は0.320と正の相関もあったため、イノシン酸は豚肉の旨味への貢献度が極めて高いと推察された。なお、一般的に美味しいとされる豚肉は、柔らかくて旨味が強いとされるが、本実施例で用いた供試豚は、近親交配かつ餌を統一したため、肉の脂肪は均一であり、食味への脂の関与性は低かった。
【0045】
【0046】
人の感じる食味において、Brix値が高い豚肉と低い豚肉を分ける要因を判別分析によって特定した。表3にBrix値に対する食味性やイノシン酸含量等の相対的関係性を示す。標準化判別係数を算出し、イノシン酸、イノシン、咀嚼時の柔らかさの係数が、高い正の値を示したことから、Brix値の高低には、これらの因子が大きく貢献していた。この標準化判別係数を用いて判別スコアを設定し、判別スコア=1.50(イノシン酸)+1.26(イノシン)-0.43(ヒポキサンチン)+0.95(咀嚼時の柔らかさ)-0.78(多汁性)-0.07(旨味)-0.02(脂っぽい香り)+0.01(肉様の香り)とした。するとBrix値の高低を2群にした判別分析より、判別スコアを用いてBrix値の高低の2群を明確に分けることができた(
図5、p<0.001)。
【0047】
【0048】
実施例3.イノシン酸と相関の高いBrix溶液の豚肉からの抽出とそれを用いたイノシン酸含量の推定
実施例2から、Brix値は美味しさを評価できる指標であり、特にイノシン酸は旨味と正の相関があったことから、よりイノシン酸と相関が高いBrix値が検出できる豚肉抽出物の精製法を検討した。実施例1で示したメタボロームに含まれる物質粒子の大きさや多くのメタボロームの化学特性も考慮して、活性アルミナの性質を利用した検討を行った。
【0049】
豚肉は、実施例1で供試したデュロック種446頭のうち、無作為に選んだ26頭のロース芯部肉(シムコ)を供試した。飼料給与は、一般配合飼料を用いた飽食給与とし、増体に合わせて3段階に分けた。水給与は、任意給水とした。飼育期間は6ヶ月、出荷体重は120±10kgとした。
【0050】
<Brix値の測定>
凍結した豚肉0.4gを2.0mlコニカル型チューブ(TM-625、TOMY)に採取した。超純水400μlと200μlチューブ1杯分の粉砕用ジルコニアビーズ(YTZボール寸法0.5φmm ニッカトー、トミー精工)を加え、ビーズ式細胞破砕装置(Micro Smash MS-100、TOMY)を用いて、3000rpm、30秒間2回処理して豚肉を破砕した。遠心分離を5000rpm、15分間、4℃で行い、活性アルミナで精製しない上清を得た。さらに、得られた上清を1.5mlチューブに移し、50℃で20分間加熱し、4℃で5000rpm、15分間遠心分離をした。その上清を1.5mlチューブに移し、5mgの活性アルミナ(019-08295 ガスクロマトグラフ用、富士フイルム和光純薬)を加えてボルテックスした。遠心分離を5000rpm、15分間、4℃で行い上清を回収し、活性アルミナで精製した上清を得た。それぞれのBrix値を300μl用いてポケット屈折計(Pocket Refractometer PAL-1、アタゴ)でBrix値を測定した。
【0051】
肉のイノシン酸含量は、5.378~8.504μmol/g meatの範囲(平均±標準偏差は7.28±0.61)にあった。
図6Aに活性アルミナで精製しない場合のBrix値とイノシン酸含量との関係を示した。Brix値は6.13~7.3%(平均±標準偏差は6.75±0.32)の範囲にあり、Brix値とイノシン酸含量の相関係数は0.1995と正の弱い相関を示した。
【0052】
一方、
図6Bに活性アルミナで精製した場合のBrix値とイノシン酸含量との関係を示した。Brix値は4.8~5.8%の範囲(平均±標準偏差は5.18±0.23%)にあり、Brix値とイノシン酸含量の相関係数は0.8134(p<0.01)と有意な正の強い相関を示した。
【0053】
このように活性アルミナで精製した場合のBrix値とイノシン酸含量は、極めて高い正の相関を示したことから、回帰式に当てはめて、豚肉の遊離イノシン酸含量の推定に用いた。予測式となる回帰式は、推定遊離イノシン酸含量(μmol/g meat)=2.181×Brix値(%)-4.0077であった。この予測式に、測定したBrix値を代入することによって、遊離イノシン酸含量が推定できた。例えば、Brix値が5.5のサンプルであれば、この予測式から推定遊離イノシン酸含量7.9878μmol/g meatと予測された。イノシン酸と旨味は正の相関を持つため、このBrix値を測定することで、美味しさの評価ができた。このBrix値が5.5のサンプルの場合、イノシン酸含量は平均値よりも高いと推定されたため、美味しい豚肉という評価を具体的な数値に基づいて決定できた。このようにBrix値の測定は、高価で時間と高度な手技を必要とする分析装置を使用しないため、低コストかつ短時間で簡単にイノシン酸含量の推定ができ、さらに肉の美味しさの評価も可能となった。
【0054】
図7は、
図6Bで示した各Brix値とイノシン酸含量のプロットについて、値が得られた範囲について灰色で示す。この範囲から、推定イノシン酸濃度(μmol/g meat)=a×Brix値(%)+bの予測式について、傾きaと切片bが取り得る範囲を求めた。すると、傾きaは1.1~4.2、切片bは-14.6~1.6の範囲に予測式を設定できた。この値の範囲の予測式を用いることにより、Brix値から遊離イノシン酸濃度を精度高く推定できた。
本発明によって肉のイノシン酸含量を推定できれば、食肉処理場、市場、店舗といった現場で、簡易かつ迅速に遊離イノシン酸含量を評価でき、肉の旨味といった美味しさを数値化した情報を消費者や食肉業者へ提供できる。食味に関する肉の理化学特性を客観的に評価できる総合マーカーとなり、消費者水準の価値を付与した質の高い評価が可能となる。価格や量で不利な肉においても、食味や美味しさによる差別化を簡易に図ることができる。特に、消費者が美味しさを意識した嗜好にあった肉を選択でき、消費意欲を高める効果も期待される。