IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電業工作株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-周波数共用アンテナ 図1
  • 特開-周波数共用アンテナ 図2
  • 特開-周波数共用アンテナ 図3
  • 特開-周波数共用アンテナ 図4
  • 特開-周波数共用アンテナ 図5
  • 特開-周波数共用アンテナ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126186
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】周波数共用アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/28 20060101AFI20240912BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20240912BHJP
   H01Q 21/30 20060101ALI20240912BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20240912BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20240912BHJP
   H01Q 9/44 20060101ALI20240912BHJP
   H01Q 19/10 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01Q21/28
H01Q21/24
H01Q21/30
H01Q9/16
H01Q13/08
H01Q9/44
H01Q19/10
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034412
(22)【出願日】2023-03-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「アクティブ空間無線リソース制御技術に関する研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000232287
【氏名又は名称】日本電業工作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149113
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 謹矢
(72)【発明者】
【氏名】丸山 央
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】陸田 裕子
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA06
5J020BC09
5J020BC13
5J020CA04
5J020DA06
5J020DA08
5J021AA06
5J021AA13
5J021AB03
5J021AB06
5J021BA01
5J021JA03
5J021JA05
5J021JA07
5J045AB05
5J045CA01
5J045DA10
5J045LA04
(57)【要約】
【課題】特性の劣化が抑制された小型な周波数共用アンテナを提供する。
【解決手段】周波数共用アンテナは、第1の周波数帯の電波を送受信するダイポールアンテナと、第1の周波数帯より高い第2の周波数帯の電波を送受信する第1のパッチアンテナと、第2の周波数帯より高い第3の周波数帯の電波を送受信する第2のパッチアンテナと、を備え、ダイポールアンテナは、ダイポール素子と、ダイポール素子に接続され、バランとして機能する接続部材と、を有し、接続部材は、一対の接続導体で構成され、接地電位に設定される接地部材に接続される部分の間隔が、ダイポール素子に接続される部分の間隔より広く、第1のパッチアンテナの第1の基板は、第2の周波数帯に対応して厚さと誘電率が設定され、第2のパッチアンテナの第2の基板は、第3の周波数帯に対応して厚さと誘電率が設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯の電波を送受信するダイポールアンテナと、
前記第1の周波数帯より高い第2の周波数帯の電波を送受信する第1のパッチアンテナと、
前記第2の周波数帯より高い第3の周波数帯の電波を送受信する第2のパッチアンテナと、を備え、
前記ダイポールアンテナは、
ダイポール素子と、当該ダイポール素子に接続され、バランとして機能する接続部材と、を有し、
前記接続部材は、一対の接続導体で構成され、接地電位に設定される接地部材に接続される部分の間隔が、前記ダイポール素子に接続される部分の間隔より広く、
前記第1のパッチアンテナの第1の基板は、前記第2の周波数帯に対応して厚さと誘電率が設定され、
前記第2のパッチアンテナの第2の基板は、前記第3の周波数帯に対応して厚さと誘電率が設定されている
周波数共用アンテナ。
【請求項2】
前記ダイポールアンテナの前記接続部材における前記一対の接続導体は、前記接地部材に接続される部分が、当該接地部材の表面に沿って広げられていることを特徴とする請求項1に記載の周波数共用アンテナ。
【請求項3】
前記ダイポールアンテナは、無給電素子を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の周波数共用アンテナ。
【請求項4】
前記第1のパッチアンテナは、第1の無給電素子を備え、
前記接地部材から前記第1の無給電素子までの距離が、当該接地部材から前記ダイポールアンテナにおける前記ダイポール素子までの距離に近いように、前記第1のパッチアンテナの前記第1の基板の厚さが設定されていることを特徴とする請求項1に記載の周波数共用アンテナ。
【請求項5】
前記第1のパッチアンテナの前記第1の基板の誘電率は、前記第2のパッチアンテナの前記第2の基板の誘電率より、低いことを特徴とする請求項4に記載の周波数共用アンテナ。
【請求項6】
前記第1の周波数帯の電波を送受信する他のダイポールアンテナをさらに備え、
前記ダイポールアンテナは、前記第1の周波数帯の偏波を送受信し、前記他のダイポールアンテナは、当該第1の周波数帯の当該偏波と交差する偏波を送受信し、
前記他のダイポールアンテナは、
ダイポール素子と、バランとして機能する接続部材と、を有し、
前記接続部材は、一対の接続導体で構成され、接地電位に設定される接地部材に接続される部分の間隔が、前記ダイポール素子に接続される部分の間隔より広いことを特徴とする
請求項1に記載の周波数共用アンテナ。
【請求項7】
前記第3の周波数帯より高い第4の周波数帯の電波を送受信する第3のパッチアンテナと、
前記第4の周波数帯より高い第5の周波数帯の電波を送受信する第4のパッチアンテナと、を備え、
前記第3のパッチアンテナの第3の基板は、前記第4の周波数帯に対応して厚さと誘電率が設定され、
前記第4のパッチアンテナの第4の基板は、前記第5の周波数帯に対応して厚さと誘電率が設定されている
ことを特徴とする請求項6に記載の周波数共用アンテナ。
【請求項8】
前記ダイポールアンテナと、前記他のダイポールアンテナとは、クロスダイポールを構成し、
前記第1のパッチアンテナと、前記第2のパッチアンテナと、前記第3のパッチアンテナと、前記第4のパッチアンテナとは、クロスダイポールで仕切られた領域に各々が配置されていることを特徴とする請求項7に記載の周波数共用アンテナ。
【請求項9】
第1の周波数帯の電波を送受信する第1のパッチアンテナと、
前記第1の周波数帯より高い第2の周波数帯の電波を送受信する第2のパッチアンテナと、を備え、
前記第1のパッチアンテナの第1の基板は、前記第1の周波数帯に対応して厚さと誘電率が設定され、
前記第2のパッチアンテナの第2の基板は、前記第2の周波数帯に対応して厚さと誘電率とが設定されている
周波数共用アンテナ。
【請求項10】
前記第1のパッチアンテナの前記第1の基板の誘電率は、前記第2のパッチアンテナの前記第2の基板の誘電率より、低いことを特徴とする請求項9に記載の周波数共用アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数共用アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の発展に伴い、多数の周波数帯の電波を送受信する周波数共用アンテナが求められている。
【0003】
特許文献1には、第1周波数帯に適用される第1ダイポールアンテナと第2周波数帯に適用される第2ダイポールアンテナとを備え、前記第1ダイポールアンテナと前記第2ダイポールアンテナとは第1地板から同じ高さに配置され、前記第1ダイポールアンテナと前記第2ダイポールアンテナとは近接して並行に配置され、前記第2ダイポールアンテナは第2地板から一定の高さに配置され、前記第2地板は前記第1地板から一定の高さに配置される、アンテナ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-2166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、周波数共用アンテナを実現する手法の一つとして、周波数帯域の異なる複数のアンテナ素子を一つの筐体に配置する方法がある。周波数共用アンテナの小型化には、アンテナ素子間を近づけることが有効であるが、周波数帯域が異なるアンテナ素子を近接させると特性が劣化するおそれがある。
本発明は、特性の劣化が抑制された小型な周波数共用アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が適用される周波数共用アンテナは、第1の周波数帯の電波を送受信するダイポールアンテナと、第1の周波数帯より高い第2の周波数帯の電波を送受信する第1のパッチアンテナと、第2の周波数帯より高い第3の周波数帯の電波を送受信する第2のパッチアンテナと、を備え、ダイポールアンテナは、ダイポール素子と、ダイポール素子に接続され、バランとして機能する接続部材と、を有し、接続部材は、一対の接続導体で構成され、接地電位に設定される接地部材に接続される部分の間隔が、ダイポール素子に接続される部分の間隔より広く、第1のパッチアンテナの第1の基板は、第2の周波数帯に対応して厚さと誘電率が設定され、第2のパッチアンテナの第2の基板は、第3の周波数帯に対応して厚さと誘電率が設定されている。
このような周波数共用アンテナにおいて、ダイポールアンテナの接続部材における一対の接続導体は、接地部材に接続される部分が、接地部材の表面に沿って広げられていることを特徴とすることができる。
また、ダイポールアンテナは、無給電素子を備えることを特徴とすることができる。
【0007】
そして、このような周波数共用アンテナにおいて、第1のパッチアンテナは、第1の無給電素子を備え、接地部材から第1の無給電素子までの距離が、接地部材からダイポールアンテナにおけるダイポール素子までの距離に近いように、第1のパッチアンテナの第1の基板の厚さが設定されていることを特徴とすることができる。
【0008】
さらに、このような周波数共用アンテナにおいて、第1のパッチアンテナの第1の基板の誘電率は、第2のパッチアンテナの第2の基板の誘電率より、低いことを特徴とすることができる。
【0009】
このような周波数共用アンテナにおいて、第1の周波数帯の電波を送受信する他のダイポールアンテナをさらに備え、ダイポールアンテナは、第1の周波数帯の偏波を送受信し、他のダイポールアンテナは、第1の周波数帯の偏波と交差する偏波を送受信し、他のダイポールアンテナは、ダイポール素子と、バランとして機能する接続部材と、を有し、接続部材は、一対の接続導体で構成され、接地電位に設定される接地部材に接続される部分の間隔が、ダイポール素子に接続される部分の間隔より広いことを特徴とすることができる。
また、第3の周波数帯より高い第4の周波数帯の電波を送受信する第3のパッチアンテナと、第4の周波数帯より高い第5の周波数帯の電波を送受信する第4のパッチアンテナと、を備え、第3のパッチアンテナの第3の基板は、第4の周波数帯に対応して厚さと誘電率が設定され、第4のパッチアンテナの第4の基板は、第5の周波数帯に対応して厚さと誘電率が設定されていることを特徴とすることができる。
そして、ダイポールアンテナと、他のダイポールアンテナとは、クロスダイポールを構成し、第1のパッチアンテナと、第2のパッチアンテナと、第3のパッチアンテナと、第4のパッチアンテナとは、クロスダイポールで仕切られた領域に各々が配置されていることを特徴とすることができる。
【0010】
他の観点から捉えると、本発明が適用される周波数共用アンテナは、第1の周波数帯の電波を送受信する第1のパッチアンテナと、第1の周波数帯より高い第2の周波数帯の電波を送受信する第2のパッチアンテナと、を備え、第1のパッチアンテナの第1の基板は、第1の周波数帯に対応して厚さと誘電率が設定され、第2のパッチアンテナの第2の基板は、第2の周波数帯に対応して厚さと誘電率とが設定されている。
【0011】
このような周波数共用アンテナにおいて、第1のパッチアンテナの第1の基板の誘電率は、第2のパッチアンテナの第2の基板の誘電率より、低いことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特性の劣化が抑制された小型な周波数共用アンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態が適用される周波数共用アンテナを説明する図である。(a)は、周波数共用アンテナの斜視図、(b)は、周波数共用アンテナの側面図である。
図2】本実施の形態が適用される周波数共用アンテナにおけるダイポールアンテナの構成を説明する図である。(a)は、ダイポール素子基板の平面図、(b)は、ダイポール素子基板において形成されるバランの形状、(c)は、無給電素子基板の平面図である。
図3】本実施の形態が適用される周波数共用アンテナにおけるパッチアンテナの構成を説明する図である。(a)は、4個のパッチアンテナの斜視図、(b)は、2個のパッチアンテナの側面図、(c)は、4個のパッチ素子基板の平面図、(d)は、4個の無給電素子基板の平面図である。
図4】比較のために示す、従来の周波数共用アンテナを説明する図である。(a)は、周波数共用アンテナの斜視図、(b)は、周波数共用アンテナの側面図である。
図5】従来の周波数共用アンテナにおけるダイポールアンテナの構成を説明する図である。(a)は、ダイポール素子基板の平面図、(b)は、ダイポール素子基板において形成されるバランの形状である。
図6】従来の周波数共用アンテナにおけるパッチアンテナの構成を説明する図である。(a)は、4個のパッチアンテナの斜視図、(b)は、2個のパッチアンテナの側面図、(c)は、パッチ素子基板の平面図、(d)は、無給電素子基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
無線通信環境において、多数の周波数帯が用いられるようになっている。例えば、Wi-Fi(登録商標) 6Eでは、2.4GHz帯、5GHz帯、及び6GHz帯の3つの周波数帯が用いられる。この場合、各周波数帯に対応する複数の種類のアンテナ素子を一つの筐体に配置された小型の周波数共用アンテナが求められる。周波数共用アンテナの小型化には、アンテナ素子の配置間隔を近づけることが求められる。ダイポール素子をアンテナ素子とした場合、反射板とダイポール素子との間の距離、つまりダイポール素子から反射板までの距離(高さと表記する。)が周波数帯により異なる。反射板を共通とした場合、低周波数帯のダイポール素子は、高周波数帯のダイポール素子に比べ、反射板からの距離が大きい。アンテナがダイポール素子と反射板とを含むとすると、低周波数帯のアンテナ(以下では、低周波数帯アンテナと表記する。)は高姿勢となり、高周波数帯のアンテナ(以下では、高周波数帯アンテナと表記する。)は低姿勢となる。低姿勢の高周波数帯アンテナを、高姿勢の低周波数帯アンテナに近づけて配置すると、高周波数帯のダイポール素子が低周波数帯のダイポール素子の下側(反射板側)に設けられることになり、高周波数帯アンテナの放射パターンなどの特性が、低周波数帯アンテナの影響により劣化するおそれがある。
【0015】
そこで、高周波数帯のダイポール素子の高さ(低周波数帯のダイポール素子に対する反射板からの高さ)と低周波数帯のダイポール素子の高さとを同じにした周波数共用アンテナが知られている(引用文献1参照)。ここでは、高周波数帯のダイポール素子に対する反射板と、低周波数帯のダイポール素子に対する反射板とを別に設けている。この構成では、周波数共用アンテナの大きさは、低周波数帯のダイポール素子の反射板からの高さに依存する。したがって、アンテナ素子間の距離が短くなったとしても、周波数共用アンテナは、小型化されない。さらに、高周波数帯のダイポール素子に対応する反射板を別途設けるため、周波数共用アンテナの構造が複雑になってコスト高になる。
【0016】
低周波数帯のアンテナを低姿勢化し、高周波数帯のアンテナを高姿勢化すれば、周波数共用アンテナの小型になる。ここでは、低周波数帯のアンテナの低姿勢化と、高周波数帯のアンテナの高姿勢化とにより、周波数共用アンテナを小型化した。
以下において、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。反射板は、接地されて使用されることが多いことから、接地板と表記する。なお、接地板は、接地されなくてもよい。接地電位をGNDと表記することがある。
【0017】
図1は、本実施の形態が適用される周波数共用アンテナ1を説明する図である。図1(a)は、周波数共用アンテナ1の斜視図、図1(b)は、周波数共用アンテナ1の側面図である。図1(a)に示すように、後述する接地板30の右方向をx方向、接地板30の上方向をy方向、及び接地板30に垂直な方向をz方向とする。図1(b)は、-y方向から見た側面図である。図1(b)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がz方向、及び紙面の裏面方向がy方向である。+z方向を上方向又は上方、-z方向を下方向又は下方と表記することがある。図1(a)では、後述する無給電素子基板16、26を透明にしている。
【0018】
図1(a)において、周波数共用アンテナ1を説明する。
周波数共用アンテナ1は、低周波数帯アンテナの一例としての2個のダイポールアンテナ10(区別する場合は、ダイポールアンテナ10-1、10-2と表記する。)と、第1中間周波数帯アンテナの一例としてのパッチアンテナ20-1と、第2高周波数帯アンテナの一例としてのパッチアンテナ20-2と、第1高周波数帯アンテナの一例としてのパッチアンテナ20-3と、第2中間周波数帯アンテナの一例としてのパッチアンテナ20-4と、接地板30とを備える。なお、低周波数帯、第1中間周波数帯、第2中間周波数帯、第1高周波数帯、及び第2高周波数帯は、この順で周波数が高くなるとする。パッチアンテナ20-1、20-2、20-3、20-4(パッチアンテナ20-1~20-4と表記する。)を区別しない場合は、パッチアンテナ20と表記する。
【0019】
周波数共用アンテナ1は、低周波数帯、第1中間周波数帯、第2中間周波数帯、第1高周波数帯、及び第2高周波数帯の5つの異なる周波数帯の電波を送受信する。第1中間周波数帯と第2中間周波数帯とが同じ周波数帯(ここでは、中間周波数帯と表記する。)であってもよい。また、第1高周波数帯と第2高周波数帯とが同じ周波数帯(ここでは、高周波数帯と表記する。)であってもよい。周波数共用アンテナ1は、少なくとも低周波数帯、中間周波数帯、及び高周波数帯の3つの異なる周波数帯の電波を送受信すればよい。つまり、パッチアンテナ20-1、20-2、20-3、20-4の内、いくつかは同じ周波数帯の電波を送受信してもよい。ここで、低周波数帯が第1の周波数帯の一例、第1中間周波数帯が第2の周波数帯の一例、第2中間周波数帯が第3の周波数帯の一例、第1高周波数帯が第4の周波数帯の一例、及び第2高周波数帯が第5の周波数帯の一例である。
【0020】
接地板30は、平面形状が四角形(ここでは、一例として正方形)の平板状である。2個のダイポールアンテナ10、4個のパッチアンテナ20は、接地板30上に配列されている。つまり、周波数共用アンテナ1は、平面アンテナである。ここでは、周波数共用アンテナ1は、y方向が地表に垂直であるとする。そこで、x方向を水平方向、y方向を垂直方向と表記する。なお、周波数共用アンテナ1は、必ずしもy方向を地表に対して垂直に設置されなくてもよい。
【0021】
2個のダイポールアンテナ10(ダイポールアンテナ10-1、10-2)は、無給電素子付きダイポールアンテナである。図1(a)に示すように、水平方向(x方向)に設けられたダイポールアンテナ10-1と、垂直方向(y方向)に設けられたダイポールアンテナ10-2とは、それぞれの中央部で互いに交差する。ダイポールアンテナ10-1とダイポールアンテナ10-2とは、クロスダイポールを構成する。ダイポールアンテナ10-1は、水平方向の偏波(以下では、水平偏波と表記する。)を送受信し、ダイポールアンテナ10-2は、垂直方向の偏波(以下では、垂直偏波と表記する。)を送受信する。図1(b)には、ダイポールアンテナ10-1の側面が示されている。ダイポールアンテナ10-1がダイポールアンテナの一例であり、ダイポールアンテナ10-2が他のダイポールアンテナの一例である。
【0022】
ダイポールアンテナ10-1に示すように、ダイポールアンテナ10は、ダイポール素子12と、接続部材13と、無給電素子17とを備える。一例として、ダイポール素子12と接続部材13とは、ダイポール素子基板11に設けられ、無給電素子17は、無給電素子基板16に設けられている。なお、無給電素子17は、ダイポールアンテナ10-1に対する無給電素子17-1と、ダイポールアンテナ10-2に対する無給電素子17-2とが一体となったクロス状である。無給電素子17-1、17-2を区別しない場合は、無給電素子17と表記する。
なお、ダイポールアンテナ10の詳細については、後述する。
【0023】
4個のパッチアンテナ20(パッチアンテナ20-1~20-4)は、無給電素子付きパッチアンテナである。図1(a)に示すように、4個のパッチアンテナ20は、接地板30上に水平方向(x方向)に2個、垂直方向(y方向)に2個並ぶように配列されている。パッチアンテナ20-1とパッチアンテナ20-2とが水平方向(x方向)に配列され、パッチアンテナ20-3とパッチアンテナ20-4とが水平方向(x方向)に配列されている。パッチアンテナ20-1とパッチアンテナ20-3とが垂直方向(y方向)に配列され、パッチアンテナ20-2とパッチアンテナ20-4とが垂直方向(y方向)に配列されている。垂直方向(y方向)に配列された、パッチアンテナ20-1とパッチアンテナ20-3との間、及びパッチアンテナ20-2とパッチアンテナ20-4との間に、ダイポールアンテナ10-1が設けられている。水平方向(x方向)に配列された、パッチアンテナ20-1とパッチアンテナ20-2との間、及びパッチアンテナ20-3とパッチアンテナ20-4との間に、ダイポールアンテナ10-2が設けられている。
【0024】
言い換えれば、クロスするダイポールアンテナ10-1、10-2で仕切られた4つの領域(隙間)にパッチアンテナ20(パッチアンテナ20-1~20-4)が各々配置されている。
パッチアンテナ20-1が第1のパッチアンテナの一例、パッチアンテナ20-2が第2のパッチアンテナの一例、パッチアンテナ20-3が第3のパッチアンテナの一例、及びパッチアンテナ20-4が第4のパッチアンテナの一例である。
【0025】
パッチアンテナ20-1~20-4の基本構成は同じである。ここでは、パッチアンテナ20-2において、パッチアンテナ20の構成を説明する。
パッチアンテナ20は、パッチ素子22と、接地導体23と、無給電素子27とを備える。ここでは、パッチ素子22及び接地導体23はパッチ素子基板21に設けられ、無給電素子27は無給電素子基板26に設けられている。パッチ素子基板21の平面形状は、一例として円形である。一方、無給電素子基板26の平面形状は、一例として四角形(ここでは、正方形)である。パッチ素子基板21の一方の面(+z方向側の面)にパッチ素子22が設けられ、パッチ素子基板21の他方の面(-z方向側の面)に接地導体23が設けられている。無給電素子基板26の一方の面(-z方向側の面)に無給電素子27が設けられている。
【0026】
パッチ素子基板21は、パッチアンテナ20(パッチアンテナ20-1~20-4)毎に設けられている。区別する場合は、パッチ素子基板21-1~21-4と表記する。同様に、無給電素子基板26も、パッチアンテナ20(パッチアンテナ20-1~20-4)毎に設けられている。区別する場合は、無給電素子基板26-1~26-4と表記する(後述する図3参照。)。パッチ素子基板21-1が第1の基板の一例、パッチ素子基板21-2が第2の基板の一例、パッチ素子基板21-3が第3の基板の一例、及びパッチ素子基板21-4が第4の基板の一例である。
なお、パッチアンテナ20の詳細については後述する。
【0027】
上記のダイポール素子基板11、無給電素子基板16、26、及びパッチ素子基板21は、誘電体基板であり、例えば、FR-4などのガラスエポキシ基板、耐熱性に優れるポリイミド樹脂基板、高周波特性に優れるフッ素樹脂基板、又はセラミック基板である。ダイポール素子12、無給電素子17、27、及びパッチ素子22は、誘電体基板に設けられた導電体層を加工することにより形成されている。導電体層は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)などで構成されている。なお、接地導体23は、上記の導電体層で構成され、誘電体基板の全面、又は大部分の面積を覆うように設けられている。
【0028】
接地板30は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)などの導電性の金属板や、誘電体基板上に導電体層が設けられた基板である。誘電体基板及び導電体層は、上記と同様である。ここでは、接地板30は、金属板であるとして説明する。接地板30は、ダイポールアンテナ10の反射板として機能する。接地板30には、ダイポールアンテナ10及びパッチアンテナ20との間で信号を送受信する配線やコネクタが設けられてもよい。接地板30が接地部材の一例である。
【0029】
図1(b)において、周波数共用アンテナ1をさらに説明する。
接地板30上(+z方向側)に、パッチアンテナ20のパッチ素子基板21が設置されている。パッチ素子基板21は、接地導体23側が接地板30に接触して電気的に接続されるように設置されている。
パッチアンテナ20の無給電素子基板26は、パッチ素子基板21の上方(+z方向)の予め定められた距離に設置されている。無給電素子基板26は、無給電素子27がパッチ素子22に対向するように、パッチ素子基板21に対して平行に設けられている。
【0030】
ダイポール素子12及び接続部材13が設けられたダイポール素子基板11は、接地板30に垂直に設けられている。無給電素子17が設けられた無給電素子基板16は、ダイポール素子基板11の上方(+z方向)に配置されている。無給電素子基板16は、無給電素子17がダイポール素子12に対して予め定められた距離において対向するように、接地板30に平行に設けられている。ダイポールアンテナ10の無給電素子基板16は、パッチアンテナ20の無給電素子基板26より上方(+z方向)に配置されている。
【0031】
ダイポール素子基板11は、設けられた接続部材13が接地板30に接続されるように、パッチアンテナ20の無給電素子27が設けられた無給電素子基板26、及びパッチ素子22が設けられたパッチ素子基板21を貫いて設けられている。
【0032】
(周波数共用アンテナ1におけるダイポールアンテナ10)
図2は、本実施の形態が適用される周波数共用アンテナ1におけるダイポールアンテナ10の構成を説明する図である。図2(a)は、ダイポール素子基板11の平面図、図2(b)は、ダイポール素子基板11において形成されるバランの形状、図2(c)は、無給電素子基板16の平面図である。図2(a)は、図1(b)と同様に、ダイポールアンテナ10-1を示している。図2(c)は、無給電素子17(無給電素子17-1、17-2)が設けられた無給電素子基板16の面(-z方向側の面)を示している。図2(a)には、ダイポール素子基板11に加えて、無給電素子17が設けられた無給電素子基板16を示している。よって、図2(a)は、ダイポールアンテナ10の側面図に当たる。図2(b)は、後述する接続導体13a、13bの間の空隙を模式的に取り出して示した図である。なお、空隙を間隙と表記してもよい。図2(a)、(b)において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をz方向、紙面の裏面方向をy方向とする。図2(c)において、紙面の左方向をx方向、紙面の上方向をy方向、紙面の裏面方向をz方向とする。
【0033】
図2(a)に示すように、ダイポール素子基板11には、ダイポール素子12及び接続部材13が設けられている。
ダイポール素子12は、ダイポールを構成する一対のダイポール導体12a、12bを備える。一対のダイポール導体12a、12bは、ダイポール素子基板11に設けられた導電体層を加工して構成された板状の導電性部材である。ダイポール導体12aは、ダイポール素子12の中央部から外側(-x方向側)へ向かう部分と、外側(-x方向側)の端部から折り曲げられて内側(+x方向側)に向かう部分を有する。ダイポール導体12bは、ダイポール素子12の中央部から外側(+x方向側)へ向かう部分と、外側(+x方向側)の端部から折り曲げられて内側(-x方向側)に折り曲げられた部分を有する。ダイポール素子12は、折り曲げダイポールである。ダイポール素子12の中央部に給電点15が設けられている。ここでは、ダイポール素子12は、折り曲げダイポールとしたが、ダイポール導体12a、12bにおいて、外側へ向かう部分と内側へ向かう部分との間が導体で埋められていてもよく、内側へ向かう部分を有しなくもよい。
【0034】
接続部材13は、一対の接続導体13a、13bを備える。接続導体13a、13bは、ダイポール導体12a、12bから、接地板30側に延びる板状の導電性部材である。ダイポール素子基板11上において、接続導体13aの一端部(+z方向側の端部)は、ダイポール導体12aの一端部(ダイポール素子12の中央部分における端部)に接続されている。そして、接続導体13aは、ダイポール導体12aの一端部からダイポール導体12aから離れる方向(-z方向)に延びる部分13a-1と、ダイポール導体12aに沿う方向(-x方向)に延びる部分13a-2とを有する。そして、接続導体13aは、ダイポール素子基板11の端部(-z方向の端部)まで延びる。なお、ダイポール素子基板11は、接地板30(図1(b)参照)に差し込まれて、接続導体13aと接地板30とが電気的に接続される。接続導体13aと接地板30との電気的な接続が容易になるように、接続導体13aは、接地板30側(-z方向側)の端部の幅が±x方向に広げられている。
【0035】
接続導体13aと同様に、ダイポール素子基板11上において、接続導体13bの一端部(+z方向側の端部)は、ダイポール導体12bの一端部(ダイポール素子12の中央部分における端部)に接続されている。そして、接続導体13bは、ダイポール導体12bの一端部からダイポール導体12bから離れる方向(-z方向)に延びる部分13b-1と、ダイポール導体12bに沿う方向(+x方向)に延びる部分13b-2とを有する。そして、接続導体13bは、ダイポール素子基板11の端部(-z方向の端部)まで延びる。なお、接続導体13bと接地板30とは、接続導体13aと同様に電気的に接続される。接続導体13bと接地板30との電気的な接続が容易になるように、接続導体13bは、接地板30側(-z方向側)の端部の幅が±x方向に広げられている。接続部材13は、ダイポール素子12と接地板30とを接続することから、接続部材と表記する。
接続導体13aと接続導体13bとは、ダイポール素子基板11上において、接地板30側(-z方向側)の端部間が導電性部材で接続されていてもよい。
【0036】
ダイポール素子12(ダイポール導体12a、12b)及び接続部材13(接続導体13a、13b)は、ダイポール素子12のx方向の中心を通り接地板30に垂直な中心線(一点鎖線で示す。)に対して対称に設けられている。なお、ダイポール素子12(ダイポール導体12a、12b)及び接続部材13(接続導体13a、13b)は、中心線に対して完全な対称性を有さなくてもよく、一部が異なっていてもよい。
【0037】
接続導体13a、13bの間の空隙は、バラン14として機能する。図2(a)に示すように、接続導体13a、13bの間(間隔)は、ダイポール素子12側ではダイポール導体12a、12bが対向する間隔であるが、接地板30側(-z方向側)の端部の間隔は、接地板30の表面に沿う方向(±x方向)に広げられている。つまり、ダイポール素子12側(+z方向側)が、長手方向が接地板30に垂直(±z方向)な四角形(図2(b)では、長方形)であり、接地板30側(-z方向側)が、長手方向が接地板30に平行(±y方向)な四角形(図2(b)では、長方形)である。つまり、図2(b)に示すように、バラン14は、二つの長方形(点線で境を示す。)を合成した形状であって、接地板30側(-z方向側)を下側とした場合、“T”字の上下を逆にした“逆T”字状である。バラン(balun)は、平衡-非平衡変換回路として機能する。
【0038】
バラン14は、接続導体13aと接続導体13bとの間隔が、接地板30側(-z方向側)がダイポール素子12側(+z方向側)より広く設けられていればよい。接続導体13aと接続導体13bとの間(空隙)で構成されるバラン14の形状は、二つの長方形を合成した形状でなくてもよく、台形等の四角形が組み合わされた形状であってもよい。さらに、接続導体13aと接続導体13bとが直線状であってもよい。ダイポール導体12側(+z方向)を上底とし、接地板30側を下底としたとき、バラン14の形状は、下底が上底より広い台形であってもよい。
【0039】
図2(a)において、ダイポール素子12の長さ(±x方向における端部間の距離)をダイポール素子長LD1、ダイポール素子12のダイポール導体12a、12bの+z方向側の端部から接続部材13の-z方向側の端部との間の距離をダイポール素子高さHD1とする。無給電素子17と接続部材13の-z方向側の端部との間の距離をダイポールアンテナ10の高さHL1とする。
【0040】
図2(c)に示すように、無給電素子17の平面形状は、ダイポールアンテナ10-1のダイポール素子12に対応する長方形であって±x方向に延びる無給電素子17-1と、ダイポールアンテナ10-2のダイポール素子12に対応する長方形であって±y方向に延びる無給電素子17-2とが一体となったクロス状である。無給電素子17は、板状の導電性部材である。無給電素子17は、ダイポールアンテナ10-1のダイポール素子12、及びダイポールアンテナ10-2のダイポール素子12と対向するように、無給電素子基板16の裏面側(-z方向側)の面に設けられている。
【0041】
図2(c)において、ダイポールアンテナ10の無給電素子17の±y方向の長さを無給電素子長LN1とする。なお、無給電素子17の±x方向の長さも無給電素子長LN1である。ここでは、無給電素子長LN1は、ダイポール素子長LD1に比べて小さい。つまり、ダイポール素子長LD1は、ダイポールアンテナ10の長さLL1である(LD1=LL1)。
【0042】
図2(a)において、周波数帯の中心周波数を2.45GHzとした場合において、電圧定在波比VSWR及び指向性を、後述する従来の周波数共用アンテナ2と同様となるように調整して求めたアンテナ長LL1(47mm)、ダイポール素子高さHD1(8.5mm)、及びアンテナ高さHL1(17mm)を( )内に示す。
【0043】
(周波数共用アンテナ1におけるパッチアンテナ20)
図3は、本実施の形態が適用される周波数共用アンテナ1におけるパッチアンテナ20の構成を説明する図である。図3(a)は、4個のパッチアンテナ20(パッチアンテナ20-1~20-4)の斜視図、図3(b)は、2個のパッチアンテナ20(パッチアンテナ20-1、20-2)の側面図、図3(c)は、4個のパッチ素子基板21(パッチ素子基板21-1~21-4)の平面図、図3(d)は、4個の無給電素子基板26(パッチ素子基板26-1~26-4)の平面図である。なお、図3(a)、(b)には、接地板30を合わせて示している。図3(a)におけるx方向、y方向、及びz方向は、図1(a)と同様である。図3(b)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がz方向、紙面の裏面方向がy方向である。図3(c)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がy方向、紙面の表面方向がz方向である。図3(d)において、紙面の左方向がx方向、紙面の上方向がy方向、紙面の裏面方向がz方向である。
【0044】
図3(a)に示す、4個のパッチアンテナ20の斜視図は、図1(a)に示した周波数共用アンテナ1から、2個のダイポールアンテナ10-1、10-2を除いたものである。
【0045】
前述したように、パッチアンテナ20は、パッチ素子基板21と、パッチ素子22と、接地導体23と、無給電素子基板26と、無給電素子27とを備える。パッチ素子22は、パッチ素子基板21の一方の面(+z方向側の面)に設けられ、接地導体23は、パッチ素子基板21の他方の面(-z方向側の面)に設けられている。接地導体23は、パッチ素子基板21の他方の面(-z方向側の面)の全面に設けられている。接地導体23は、所謂パッチアンテナの地板である。そして、無給電素子27は、無給電素子基板26の一方の面(-z方向側の面)に設けられ、パッチ素子22と予め定められた距離で対向する。
【0046】
図3(b)に示すように、パッチアンテナ20-1とパッチアンテナ20-2とでは、パッチ素子基板21の厚さh(厚さh1、h2)を異ならせている。また、パッチアンテナ20-1とパッチアンテナ20-2とでは、パッチ素子22から無給電素子27までの距離d(距離d1、d2)を異ならせている。さらに、パッチアンテナ20-1とパッチアンテナ20-2とでは、接地板30から無給電素子27までの距離HP2(パッチアンテナ20の高さHP2)(高さHP21、HP22)を異ならせている。これらの値は、他のパッチアンテナ20-3、20-4とも異なっている。このように、誘電体基板であるパッチ素子基板21の厚さhを、周波数(周波数帯)毎に設定し、パッチアンテナ20の高さHP2を調整している。これにより、ダイポールアンテナ10など他のアンテナの影響による特性の劣化を抑制する。
【0047】
パッチアンテナの周波数(共振周波数と呼ばれる。)は、誘電体基板であるパッチ素子基板21の厚さh、パッチ素子基板21の誘電率ε、導電体であるパッチ素子22の電界方向の長さLによって決まる。よって、予め定められた周波数(周波数帯)に対して、誘電率ε及びパッチ素子22の電界方向の長さLを調整することで、パッチ素子基板21の厚さhが設定される。そして、パッチ素子22から無給電素子27までの距離d、及びパッチアンテナ20の高さHP2が設定される。なお、パッチ素子22の電界方向の長さLは、実効波長λに対応する。
【0048】
より詳細に説明する。
パッチアンテナは、マイクロストリップ線路を用いたマイクロストリップアンテナにおいて、マイクロストリップ線路の幅を広げて電波をよく放射するようにしたアンテナである。マイクロストリップ線路における実効波長λは、周波数f、基板(パッチ素子基板21)の誘電率ε、基板(パッチ素子基板21)の厚さh、マイクロストリップ線路の幅w、そして導体(パッチ素子22)の厚さtによって算出されることが知られている。ここでは、自由空間における波長をλとし、基板(パッチ素子基板21)の透磁率をμとする。
【0049】
式(1)は、周波数fにおける実効波長λを示す。式(2)は、周波数fにおける実効誘電率εr,eff(f)を示す。式(3)は、0Hzでの実効誘電率εr,eff(0)を示す。式(4)は、0Hzでのマイクロストリップ線路の実効幅weff(0)を示す。なお、式(3)は、weff(0)/h>1の場合、式(4)は、w/h≧1/2πの場合である。
【0050】
【数1】
【0051】
式(1)~式(4)に基づいて求められる、実効波長λgと基板(パッチ素子基板21)の厚さhとの関係は、厚さhが厚くなると実効波長λが小さくなる関係にある。また、式(1)に示されているように、実効波長λは、実効誘電率εr,eff(f)の関数である。よって、予め定められた周波数f(周波数帯)に対して、誘電率ε及びパッチ素子22の電界方向の長さLを調整することで、パッチ素子基板21の厚さhを設定することができる。
【0052】
パッチアンテナ20の高さHP2を高くする場合において、周波数が高い側のパッチアンテナ20に、周波数が低い側のパッチアンテナ20より誘電率εが大きいパッチ素子基板21を用いるとよい。なお、図3(b)では、パッチアンテナ20-1、20-2において、パッチアンテナ20の高さHP2を異ならせたが、同じに設定してもよい。
【0053】
図3(c)に示すように、パッチ素子基板21-1~21-4は、一例として平面形状が円形で、同じ半径である。パッチ素子基板21-1~21-4の平面形状は、円形以外の楕円、四角形、多角形などでもよい。また、パッチ素子基板21-1~21-4の平面形状は、互いに異なっていてもよい。
【0054】
パッチ素子基板21-1~21-4に設けられたパッチ素子22-1~22-4は、平面形状が八角形の導電性部材である。そして、パッチ素子22は、八角形の互いに対向する辺が平行である。また、八角形において、対向する一組の辺が水平方向(x方向)と平行に設けられ、他の対向する一組の辺が垂直方向(y方向)と平行に設けられている。そして、水平方向(x方向)と平行な一組の辺と、垂直方向(y方向)と平行な他の対向する一組の辺との間の辺は、+45度又は-45度に設定されている。ここで、+45度とは、x方向からy方向へ+45度傾いた角度であり、-45度とは、x方向から-y方向へ-45度傾いた角度である。つまり、パッチ素子22-1~22-4は、正方形(パッチ素子22-1では、一辺長W)に内接する八角形である。そして、隣接する2個のパッチ素子22間は、水平方向(x方向)及び垂直方向(y方向)共に距離Dである。
【0055】
パッチ素子22-1~22-4には、パッチ素子22-2に示すように、2個の給電点24(給電点24a、24b)が水平方向(x方向)に並んで設けられている。給電点24aは、水平方向の右側(+x方向側)、給電点24bが水平方向の左側(-x方向側)に設けられている。給電点24aは、+45度偏波を送受信し、給電点24bは、-45度偏波を送受信する。
【0056】
パッチ素子22の大きさ(電界方向の長さL)は、上述したようにパッチアンテナ20の周波数帯を設定する。ここでは、第1中間周波数帯のパッチアンテナ20-1、第2中間周波数帯のパッチアンテナ20-4、第1高周波数帯のパッチアンテナ20-3、第2高周波数帯のパッチアンテナ20-2の順に、パッチ素子22(パッチ素子22-1、22-2、22-3、22-4)の大きさを小さく示している。
【0057】
図3(d)に示すように、無給電素子基板26-1~26-4は、一例として平面形状が正方形で、同じ大きさである。無給電素子基板26-1~26-4の平面形状は、正方形以外の円、楕円、四角形、多角形などでもよい。また、無給電素子基板26-1~26-4の平面形状は、互いに異なっていてもよい。
【0058】
無給電素子基板26-1~26-4に設けられた無給電素子27-1~27-4は、一例として平面形状が円形である。無給電素子27-1~27-4の平面形状は、円形以外の楕円、四角形、多角形などでもよい。無給電素子27-1~27-4の半径は、パッチ素子22-1~22-4に対応して設定される。ここでは、第1中間周波数帯のパッチアンテナ20-1、第2中間周波数帯のパッチアンテナ20-4、第1高周波数帯のパッチアンテナ20-3、第2高周波数帯のパッチアンテナ20-2の順に、無給電素子27(無給電素子27-1、27-2、27-3、27-4)の半径を小さく示している。なお、無給電素子27の半径は、同じに設定されてもよい。無給電素子27は、板状の導電性部材である。そして、隣接する2個の無給電素子27間は、水平方向(x方向)及び垂直方向(y方向)共に、パッチ素子22間と同じ距離Dである。+z方向側から見た場合、無給電素子27は、パッチ素子22の全面を覆うように設けられている。なお、無給電素子27は、+z方向側から見た場合において、パッチ素子22の全面を覆っていなくともよい。
【0059】
次に、比較例として、2周波数帯を共用する従来の周波数共用アンテナ2を説明する。(周波数共用アンテナ2)
図4は、比較のために示す、従来の周波数共用アンテナ2を説明する図である。図4(a)は、周波数共用アンテナ2の斜視図、図4(b)は、周波数共用アンテナ2の側面図である。図4(a)、(b)に示すx方向、y方向、及びz方向は、図1(a)、(b)と同じである。なお、図4(b)は、-y方向から見た周波数共用アンテナ2の側面図である。
【0060】
周波数共用アンテナ2は、2個のダイポールアンテナ40(ダイポールアンテナ40-1、40-2)と、4個のパッチアンテナ50(パッチアンテナ50-1~50-4)と、接地板30とを備える。2個のダイポールアンテナ40は低周波数帯アンテナであり、4個のパッチアンテナ50は高周波数帯アンテナである。接地板30は、図1(a)、(b)に示した周波数共用アンテナ1と同じである。よって、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0061】
図4(a)に示すように、水平方向(x方向)に設けられたダイポールアンテナ40-1と、垂直方向(y方向)に設けられたダイポールアンテナ40-2とは、それぞれの中央部で互いに交差する。つまり、ダイポールアンテナ40-1とダイポールアンテナ40-2とは、クロスダイポールを構成する。ダイポールアンテナ40-1は、水平偏波を送受信し、ダイポールアンテナ40-2は、垂直偏波を送受信する。図4(b)では、ダイポールアンテナ40-1の側面が示されている。
【0062】
ダイポールアンテナ40は、ダイポール素子42と接続部材43とを備える。ここでは、一例として、ダイポール素子42及び接続部材43は、ダイポール素子基板41に設けられている。ダイポール素子42及び接続部材43は、ダイポール素子基板41の一方の面に設けられている。ダイポール素子基板41は、接地板30に垂直に設けられている。ダイポールアンテナ40は、無給電素子を備えない。
【0063】
(周波数共用アンテナ2におけるダイポールアンテナ40)
図5は、従来の周波数共用アンテナ2におけるダイポールアンテナ40の構成を説明する図である。図5(a)は、ダイポール素子基板41の平面図、図5(b)は、ダイポール素子基板41において形成されるバランの形状である。図5(a)、(b)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がz方向、紙面の裏面方向がy方向である。図5(a)は、図4(b)と同様に、ダイポールアンテナ40-1を示している。図5(b)は、後述する接続導体43a、43bの間の空隙を模式的に取り出して示した図である。
【0064】
図5(a)に示すように、ダイポール素子基板41に設けられたダイポール素子42は、ダイポールを構成する一対のダイポール導体42a、42bを備える。一対のダイポール導体42a、42bは、横方向(±x方向)に並ぶように設けられた線状又は板状の導電性部材である。ダイポール素子42の中央部に給電点45が設けられている。
【0065】
ダイポール素子基板41に設けられた接続部材43は、一対の接続導体43a、43bを備える。接続導体43a、43bは、ダイポール導体42a、42bから、接地板30側(-z方向側)に延びる板状の導電性部材である。なお、図5(a)に示すように、ダイポール素子基板41の-z方向の端部において、接続導体43a、43bが互いに接続されているが、接続されていなくともよい。
【0066】
ダイポール素子42(ダイポール導体42a、42b)及び接続部材43(接続導体43a、43b)は、ダイポール素子42のx方向の中心を通り接地板30に垂直な中心線(一点鎖線で示す。)に対して対称に設けられている。
【0067】
接続導体43a、43bの間の空隙は、バラン44として機能する。図5(a)に示すように、接続導体43a、43bの間(間隔)は、ダイポール素子42側から接地板30に接続されるダイポール素子基板41の端部側(-z方向側)まで、同じ幅で構成されている。つまり、バラン44は、図5(b)に示すように、長手方向が接地板30に垂直な四角形である。
【0068】
図5(a)において、ダイポール素子42の長さ(±x方向における端部間の距離)をダイポール素子長LD4、ダイポール素子12のダイポール導体42a、42bの+z方向側の端部から接続部材43の-z方向側の端部との間の距離をダイポール素子高さHD4とする。なお、ダイポールアンテナ40は、無給電素子を備えないので、ダイポール素子高さHD4は、ダイポールアンテナ40の高さHL4である(HD4=HL4)。また、ダイポール素子長LD4は、ダイポールアンテナ40のアンテナ長LL4である(LD4=LL4)。周波数帯の中心周波数を2.45GHzとした場合におけるアンテナ長LL4(49mm)、及びアンテナ高さHL4(34mm)を( )内に示す。
【0069】
(周波数共用アンテナ2におけるパッチアンテナ50)
図6は、従来の周波数共用アンテナ2におけるパッチアンテナ50の構成を説明する図である。図6(a)は、4個のパッチアンテナ50の斜視図、図6(b)は、2個のパッチアンテナ50の側面図、図6(c)は、パッチ素子基板51の平面図、図6(d)は、無給電素子基板56の平面図である。図6(a)におけるx方向、y方向、及びz方向は、図4(a)と同様である。図6(b)は、-y方向から見た2個のパッチアンテナ50の側面図である。図6(b)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がz方向、紙面の裏面方向がy方向である。図6(c)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がy方向、紙面の表面方向がz方向である。図6(d)において、紙面の左方向がx方向、紙面の上方向がy方向、紙面の裏面方向がz方向である。
【0070】
図6(a)に示す、4個のパッチアンテナ50の斜視図は、図4(a)に示した周波数共用アンテナ2の斜視図から、2個のダイポールアンテナ40-1、40-2を除いたものである。ここでは、4個のパッチアンテナ50は、同じであって、且つ一括して構成されているので、4個のパッチアンテナ50-2をパッチアンテナ50として説明する。なお、図6(a)、(b)には、接地板30を合わせて示している。
【0071】
パッチアンテナ50は、パッチ素子基板51と、パッチ素子52と、接地導体53と、無給電素子基板56と、無給電素子57とを備える。パッチ素子基板51と無給電素子基板56とは、4つのパッチアンテナ50において共通である。
【0072】
図6(a)、(b)に示すように、パッチ素子52は、パッチ素子基板51の一方の表面(+z方向側の面)に設けられている。図6(c)に示すように、パッチ素子52は、パッチ素子22と同様に、平面形状が八角形の導電性部材で構成されている。そして、パッチ素子52には、パッチ素子22と同様に、2個の給電点54(給電点54a、54b)が水平方向(x方向)に並んで設けられている。図6(b)に示すように、接地板30から無給電素子57までを距離HP5(パッチアンテナ50の高さHP5)とする。
【0073】
接地導体53は、パッチ素子基板51の他方の面(-z方向側の面)に設けられている。接地導体53は、所謂パッチアンテナの地板である。なお、接地導体53は、パッチ素子基板51の裏面の全面に設けられなくともよく、パッチ素子52に対向して設けられていればよい。
【0074】
図6(d)に示すように、無給電素子57は、無給電素子基板56の一方の面(-z方向側の面)に設けられている。無給電素子57は、板状の導電性部材である。無給電素子57は、予め定められた距離でパッチ素子52に対向する。ここでは、無給電素子57の平面形状は、円である。
【0075】
図5(a)に示したように、従来の周波数共用アンテナ2では、低周波数帯アンテナとして用いられているダイポールアンテナ40は、アンテナの高さHL4が34mmである。図4(b)示したように、パッチアンテナ50のアンテナ高さHP5図6(b)参照)は、ダイポールアンテナ40のアンテナ高さHL4に比べて低い。よって、ダイポールアンテナ40に、パッチアンテナ50を近接させて配置すると、パッチアンテナ50の特性が劣化する恐れがある。
【0076】
一方、本実施の形態が適用される周波数共用アンテナ1では、低周波数帯アンテナとして用いられるダイポールアンテナ10は、アンテナ高さHL1が17mmと、ダイポールアンテナ40のアンテナ高さHL4(=34mm)に比べて低い。さらに、パッチアンテナ20-1~20-4は、異なる周波数帯に対応するとともに、アンテナ高さHP2図3(b)のアンテナ高さHP21、HP22)がパッチ素子基板21の厚さh及び誘電率εによって調整されている。つまり、パッチアンテナ20は、パッチ素子基板21の厚さh及び誘電率εが調整されて、アンテナ高さHP2が設定されている。これにより、図1(b)に示すように、パッチアンテナ20-1~20-4の無給電素子27の位置(接地板30からの距離)が、ダイポールアンテナ10のダイポール素子12の位置(接地板30からの距離)に近づけられている。したがって、周波数共用アンテナ1では、パッチアンテナ20をダイポールアンテナ10に近接させて配置しても、ダイポールアンテナ10の影響によるパッチアンテナ20の特性の劣化が抑制される。そして、反射板である接地板30をアンテナ毎に設けることを要しない。また、ダイポールアンテナ10のアンテナ高さHL1が従来の周波数共用アンテナ2のダイポールアンテナ40のアンテナ高さHL4に比べて低い。よって、周波数共用アンテナ1は、従来の周波数共用アンテナ2に比べて小型化される。
【0077】
周波数共用アンテナ1では、低周波数帯アンテナの一例であるダイポールアンテナ10は、水平偏波と垂直偏波とを送受信し、中間周波数帯アンテナ(第1中間周波数帯アンテナ及び第2中間周波数帯アンテナ)と高周波数帯アンテナ(第1高周波数帯アンテナ及び第2高周波数帯アンテナ)との一例であるパッチアンテナ20は、±45度偏波を送受信するとした。しかし、中間周波数帯アンテナ及び高周波数帯アンテナが、水平偏波と垂直偏波とを送受信する構成であってもよい。また、低周波数帯アンテナが、±45度偏波を送受信する構成であってもよい。
【0078】
本実施の形態が適用される周波数共用アンテナ1は、偏波共用としたが、片偏波としてもよい。
【0079】
本実施の形態が適用される周波数共用アンテナ1では、接地電位に設定される接地板30を設けたが、接地板30の代わりに、パッチアンテナ20のパッチ素子基板21の裏面(-z方向側の面)に設けられた接地導体23を接地板30としてもよい。
【0080】
さらに、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行っても構わない。
【符号の説明】
【0081】
1、2…周波数共用アンテナ、10、40…ダイポールアンテナ、11、41…ダイポール素子基板、12、42…ダイポール素子、13、43…接続部材、16、26、56…無給電素子基板、17、27、57…無給電素子、20、50…パッチアンテナ、21、51…パッチ素子基板、22、52…パッチ素子、23、53…接地導体、30…接地板
図1
図2
図3
図4
図5
図6