(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126189
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240912BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034416
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪口 久仁
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044AA12
5F044AA18
5F044FF04
5F044FF05
5F044FF06
5F044FF08
(57)【要約】
【課題】封止部材の熱膨張に伴う力によりワイヤが離脱する可能性を低減させる。
【解決手段】ワイヤ100は、導電部61に接合され、一方の第1端部を含む接合部100aと、導電部62に接合され、他方の第2端部を含む接合部100bと、導電部61及び導電部62の間を跨いで、接合部100aの第1連結点と接合部100bの第1連結点に対向する第2連結点とを繋ぎ、基板のおもて面から離間する配線部100cと、を含み、導電部61及び導電部62を接続する。ワイヤ100の第1端部から第1連結点に延伸する接合部100aの延伸方向D2aは、接合部100aから接合部100bを繋ぐ方向D3aに対して、封止部材の熱膨張により平面視で接合部100aに生じる力の方向D1に近づくように鋭角に傾いている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電部及び第2導電部がおもて面に設けられた基板と、
前記第1導電部に接合され、一方の第1端部を含む第1接合部と、前記第2導電部に接合され、他方の第2端部を含む第2接合部と、前記第1導電部及び前記第2導電部の間を跨いで、前記第1接合部の第1連結点と前記第2接合部の前記第1連結点に対向する第2連結点とを繋ぎ、前記基板の前記おもて面から離間する第1配線部と、を含み、前記第1導電部及び前記第2導電部を接続する第1ワイヤと、
前記基板及び前記第1ワイヤを収納する収納領域を含むケースと、
前記収納領域に充填されて前記基板及び前記第1ワイヤを封止する封止部材と、
を有し、
前記第1ワイヤの前記第1端部から前記第1連結点に延伸する前記第1接合部の第1延伸方向は、前記第1接合部から前記第2接合部を繋ぐ第1方向に対して、前記封止部材の熱膨張により平面視で前記第1接合部に生じる力の第2方向に近づくように鋭角に傾いている、
電力変換装置。
【請求項2】
前記基板の前記おもて面には第3導電部及び第4導電部がさらに設けられ、
前記電力変換装置は、前記第3導電部に接合され、一方の第3端部を含む第3接合部と、前記第4導電部に接合され、他方の第4端部を含む第4接合部と、前記第3導電部及び前記第4導電部の間を跨いで、前記第3接合部の第3連結点と前記第4接合部の前記第3連結点に対向する第4連結点とを繋ぎ、前記基板の前記おもて面から離間する第2配線部と、を含み、前記第3導電部及び前記第4導電部を接続し、前記封止部材によって封止される第2ワイヤをさらに有し、
前記第2ワイヤの前記第3接合部にも前記第2方向に対する前記力が生じており、
前記第2ワイヤの前記第3接合部から前記第4接合部を繋ぐ方向は、前記第1方向と平行であり、
前記第2ワイヤの前記第3端部から前記第3連結点に延伸する前記第3接合部の第2延伸方向は、前記第1方向に対して前記第2方向に近づくように鋭角に傾いている、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1接合部より前記第3接合部の方が前記第2方向の上流側に配置されており、
前記第2延伸方向の前記第1方向に対する傾き角度は、前記第1延伸方向の前記第1方向に対する傾き角度より大きい、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
充填された前記封止部材の上面より低い位置に、前記基板に対向し、前記第1ワイヤの前記第1接合部及び前記第2ワイヤの前記第3接合部を覆う対向面を含む被覆部材をさらに有し、
前記第1接合部より前記第3接合部の方が、前記第1方向に平行で前記対向面の平面視での中心を通る中心線との距離が近い位置に配置されており、
前記第2延伸方向の前記第1方向に対する傾き角度は、前記第1延伸方向の前記第1方向に対する傾き角度より大きい、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
充填された前記封止部材の上面より低い位置に、前記基板に対向し、前記第1ワイヤの前記第1接合部を覆う対向面を含む被覆部材をさらに有し、
前記第1方向に対する前記第1延伸方向の傾き角度は、前記第1方向に平行で前記対向面の平面視での中心を通る中心線と、前記第1接合部との距離が近いほど、大きく設定される、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記傾き角度は、前記基板の前記おもて面から前記対向面までの高さが低いほど、大きく設定される、
請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
主電極をおもて面に含む半導体チップを備え、
前記基板は絶縁板と前記絶縁板のおもて面に設けられ、前記半導体チップが接合される第1回路パターンを含む複数の回路パターンとを含み、
前記第1導電部は、前記主電極または前記第1回路パターンを除いた前記複数の回路パターンのいずれかであり、
前記第2導電部は、前記主電極または前記第1回路パターンを除いた前記複数の回路パターンのいずれかである、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1ワイヤの径は、300μm以上、500μm以下である、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
第1導電部及び第2導電部がおもて面に設けられた基板と、
前記第1導電部に接合され、一方の第1端部を含む第1接合部と、前記第2導電部に接合され、他方の第2端部を含む第2接合部と、前記第1導電部及び前記第2導電部の間を跨いで、前記第1接合部の第1連結点と前記第2接合部の前記第1連結点に対向する第2連結点とを繋ぎ、前記基板の前記おもて面から離間する第1配線部と、を含み、前記第1導電部及び前記第2導電部を接続する第1ワイヤと、
前記基板及び前記第1ワイヤを収納する収納領域を含むケースと、
前記収納領域に充填されて前記基板及び前記第1ワイヤを封止する封止部材と、
充填された前記封止部材の上面より低い位置に、前記基板に対向し、前記第1ワイヤの前記第1接合部を覆う対向面を含む被覆部材と、
を有し、
前記第1接合部から前記第2接合部を繋ぐ第1方向に対して、前記第1ワイヤの前記第1端部から前記第1連結点に延伸する前記第1接合部の第1延伸方向は、前記第1方向に平行で前記対向面の平面視での中心を通る中心線から前記中心線に直交して前記第1接合部側に向かう第2方向に近づくように、鋭角に傾いている、
電力変換装置。
【請求項10】
前記基板の前記おもて面には第3導電部及び第4導電部がさらに設けられ、
前記電力変換装置は、前記第3導電部に接合され、一方の第3端部を含む第3接合部と、前記第4導電部に接合され、他方の第4端部を含む第4接合部と、前記第3導電部及び前記第4導電部の間を跨いで、前記第3接合部の第3連結点と前記第4接合部の前記第3連結点に対向する第4連結点とを繋ぎ、前記基板の前記おもて面から離間する第2配線部と、を含み、前記第3導電部及び前記第4導電部を接続し、前記封止部材によって封止される第2ワイヤをさらに有し、
前記第3接合部は、前記被覆部材の前記対向面に覆われており、
前記第2ワイヤの前記第3接合部から前記第4接合部を繋ぐ方向は、前記第1方向と平行であり、
前記第1接合部より前記第3接合部の方が前記中心線からの距離が近い位置に配置されており、
前記第2ワイヤの前記第3端部から前記第3連結点に延伸する前記第3接合部の第2延伸方向は、前記第1方向に対して前記第2方向に鋭角に傾いており、かつ、前記第2延伸方向の前記第1方向に対する傾き角度は、前記第1延伸方向の前記第1方向に対する傾き角度より大きい、
請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記第1延伸方向の前記第1方向に対する傾き角度は、前記基板の前記おもて面から前記対向面までの高さが低いほど、大きく設定される、
請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項12】
第1導電部及び第2導電部がおもて面に設けられた基板と、
前記第1導電部に接合され、一方の第1端部を含む第1接合部と、前記第2導電部に接合され、他方の第2端部を含む第2接合部と、前記第1導電部及び前記第2導電部の間を跨いで前記第1接合部と前記第2接合部とを繋ぎ、前記基板の前記おもて面から離間する第1配線部と、を含み、前記第1導電部及び前記第2導電部を接続する第1ワイヤと、
前記基板及び前記第1ワイヤを収納する収納領域を含むケースと、
前記収納領域に充填されて前記基板及び前記第1ワイヤを封止する封止部材と、
を有し、
前記基板の前記おもて面から前記第1配線部が立ち上がる第1立ち上がり方向は、前記おもて面に垂直な第1方向に対して、前記封止部材の熱膨張により平面視で前記第1ワイヤに生じる力の第2方向側に傾いている、
電力変換装置。
【請求項13】
前記基板の前記おもて面には第3導電部及び第4導電部がさらに設けられ、
前記電力変換装置は、前記第3導電部に接合され、一方の第3端部を含む第3接合部と、前記第4導電部に接合され、他方の第4端部を含む第4接合部と、前記第3導電部及び前記第4導電部の間を跨いで前記第3接合部と前記第4接合部とを繋ぎ、前記基板の前記おもて面から離間する第2配線部と、を含み、前記第3導電部及び前記第4導電部を接続し、前記封止部材によって封止される第2ワイヤをさらに有し、
前記第2のワイヤの前記第3接合部にも前記第2方向に対する前記力が生じており、
前記第1ワイヤの前記第1接合部から前記第2接合部を繋ぐ第3方向は、前記第2ワイヤの前記第3接合部から前記第4接合部を繋ぐ方向と平行であり、
前記基板の前記おもて面から前記第2配線部が立ち上がる第2立ち上がり方向は、前記第2方向に対して前記第2方向側に傾いている、
請求項12に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記第1ワイヤより前記第2ワイヤの方が前記第2方向の上流側に配置されており、
前記第1方向に対する前記第2立ち上がり方向の傾き角度は、前記第1方向に対する前記第1立ち上がり方向の傾き角度より大きい、
請求項13に記載の電力変換装置。
【請求項15】
充填された前記封止部材の上面より低い位置に、前記基板に対向し、前記第1ワイヤ及び前記第2ワイヤを覆う対向面を含む被覆部材をさらに有し、
前記第1ワイヤより前記第2ワイヤの方が、前記第3方向に平行で前記対向面の平面視での中心を通る中心線との距離が近い位置に配置されており、
前記第1方向に対する前記第2立ち上がり方向の傾き角度は、前記第1方向に対する前記第1立ち上がり方向の傾き角度より大きい、
請求項13に記載の電力変換装置。
【請求項16】
充填された前記封止部材の上面より低い位置に、前記基板に対向し、前記第1ワイヤを覆う対向面を含む被覆部材をさらに有し、
前記第1方向に対する前記第1立ち上がり方向の傾き角度は、前記第1ワイヤの前記第1接合部から前記第2接合部を繋ぐ第3方向に平行で前記対向面の平面視での中心を通る中心線と、前記第1ワイヤとの距離が近いほど、大きく設定される、
請求項12に記載の電力変換装置。
【請求項17】
前記第1方向に対する前記第1立ち上がり方向の傾き角度は、前記基板の前記おもて面から前記対向面までの高さが低いほど、大きく設定される、
請求項16に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置では、半導体チップ(パワーデバイス)が配置された絶縁回路基板がケースに収納されている。ケース内では、絶縁回路基板や半導体チップ、配線のためのワイヤ等がシリコーンゲル等の封止部材によって封止されている(例えば、特許文献1参照)。また、半導体素子を封止する際にワイヤの変形を抑制するために、シリコーン樹脂シートを配置した半導体装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-77747号公報
【特許文献2】特開2013-206925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、封止部材の熱膨張に伴う力によりワイヤが離脱する可能性が低減された電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の一観点によれば、基板、第1ワイヤ、ケース及び封止部材を有する電力変換装置が提供される。この電力変換装置において、基板は、第1導電部及び第2導電部がおもて面に設けられている。第1ワイヤは、第1導電部に接合され、一方の第1端部を含む第1接合部と、第2導電部に接合され、他方の第2端部を含む第2接合部と、第1導電部及び第2導電部の間を跨いで、第1接合部の第1連結点と第2接合部の第1連結点に対向する第2連結点とを繋ぎ、基板のおもて面から離間する第1配線部と、を含み、第1導電部及び第2導電部を接続する。ケースは、基板及び第1ワイヤを収納する収納領域を含む。封止部材は、収納領域に充填されて基板及び第1ワイヤを封止する。また、第1ワイヤの第1端部から第1連結点に延伸する第1接合部の第1延伸方向は、第1接合部から第2接合部を繋ぐ第1方向に対して、封止部材の熱膨張により平面視で第1接合部に生じる力の第2方向に近づくように鋭角に傾いている。
【0006】
また、発明の一観点によれば、基板、第1ワイヤ、ケース、封止部材及び被覆部材を有する電力変換装置が提供される。この電力変換装置において、基板は、第1導電部及び第2導電部がおもて面に設けられている。第1ワイヤは、第1導電部に接合され、一方の第1端部を含む第1接合部と、第2導電部に接合され、他方の第2端部を含む第2接合部と、第1導電部及び第2導電部の間を跨いで、第1接合部の第1連結点と第2接合部の第1連結点に対向する第2連結点とを繋ぎ、基板のおもて面から離間する第1配線部と、を含み、第1導電部及び第2導電部を接続する。ケースは、基板及び第1ワイヤを収納する収納領域を含む。封止部材は、収納領域に充填されて基板及び第1ワイヤを封止する。被覆部材は、充填された封止部材の上面より低い位置に、基板に対向し、第1ワイヤの第1接合部を覆う対向面を含む。また、第1接合部から第2接合部を繋ぐ第1方向に対して、第1ワイヤの第1端部から第1連結点に延伸する第1接合部の第1延伸方向は、第1方向に平行で対向面の平面視での中心を通る中心線から中心線に直交して第1接合部側に向かう第2方向に近づくように、鋭角に傾いている。
【0007】
さらに、発明の一観点によれば、基板、第1ワイヤ、ケース及び封止部材を有する電力変換装置が提供される。この電力変換装置において、基板は、第1導電部及び第2導電部がおもて面に設けられている。第1ワイヤは、第1導電部に接合され、一方の第1端部を含む第1接合部と、第2導電部に接合され、他方の第2端部を含む第2接合部と、第1導電部及び第2導電部の間を跨いで第1接合部と第2接合部とを繋ぎ、基板のおもて面から離間する第1配線部と、を含み、第1導電部及び第2導電部を接続する。ケースは、基板及び第1ワイヤを収納する収納領域を含む。封止部材は、収納領域に充填されて基板及び第1ワイヤを封止する。また、基板のおもて面から第1配線部が立ち上がる第1立ち上がり方向は、おもて面に垂直な第1方向に対して、封止部材の熱膨張により平面視で第1ワイヤに生じる力の第2方向側に傾いている。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、封止部材の熱膨張に伴う力によりワイヤが離脱する可能性が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態における電力変換装置の第1の平面図である。
【
図2】第1の実施の形態における電力変換装置の側面図である。
【
図3】第1の実施の形態における電力変換装置の側断面図である。
【
図4】第1の実施の形態における電力変換装置の第2の平面図である。
【
図5】第1の実施の形態における電力変換装置の第3の平面図である。
【
図6】第1の実施の形態における電力変換装置の第4の平面図である。
【
図7】第1の実施の形態における電力変換装置の機能の等価回路を示す図である。
【
図8】封止部材の熱膨張による力の方向及びワイヤの接合方向について説明するための図である。
【
図9】第1の実施の形態における電力変換装置の一部を拡大した第1の拡大図である。
【
図10】被覆部材の高さに応じた力の変化及びワイヤの接合方向について説明するための図である。
【
図11】第1の実施の形態における電力変換装置の一部を拡大した第2の拡大図である。
【
図12】第2の実施の形態における電力変換装置におけるワイヤの立ち上がり状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、図の電力変換装置において、上側(+Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「上」とは、図の電力変換装置において、上側(+Z方向)の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、図の電力変換装置において、下側(-Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「下」とは、図の電力変換装置において、下側(-Z方向)の方向を表す。必要に応じて他の図面でも同様の方向性を意味する。「おもて面」、「上面」、「上」、「裏面」、「下面」、「下」、「側面」は、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。また、以下の説明において「主成分」とは、80vol%以上含む場合を表す。
【0011】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態の電力変換装置10について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、第1の実施の形態における電力変換装置の第1の平面図である。
図2は、第1の実施の形態における電力変換装置の側面図である。
図3は、第1の実施の形態における電力変換装置の側断面図である。なお、
図3は、
図1の一点鎖線X1-X1における断面図である。また、
図3は、ワイヤの図示を省略している。
【0012】
電力変換装置10は、裏面に配置された放熱板21と、放熱板21上に設けられ、側面を覆うケース22を備えている。また、電力変換装置10は、放熱板21及びケース22で囲われた収納領域22a内に構成部品を収納し、収納領域22a内の構成部品が封止部材24で封止されている。収納領域22aには、構成部品として、絶縁回路基板や、絶縁回路基板上に配置された半導体チップ、これらを接続するワイヤ等が設けられている。
図3には、絶縁回路基板の一部として絶縁回路基板31,33を示している。また、電力変換装置10は、外部接続端子41~43を備えている。
【0013】
放熱板21は、平面視で略矩形の板状部材である。放熱板21の外形は、ケース22の外形より一回り小さくてよい。放熱板21の角部が、R面取り、C面取りされていてもよい。放熱板21は、放熱性に優れた金属により形成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。放熱板21の表面に対して、耐食性を向上させるためにめっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金が挙げられる。
【0014】
放熱板21のおもて面には、はんだ等の接合部材を介して絶縁回路基板が接合されている。絶縁回路基板は、絶縁板と、絶縁板のおもて面に形成された回路パターンと、絶縁板の裏面に形成された金属板とを含む。なお、絶縁回路基板の詳細については後述する。
【0015】
絶縁板は、平面視で矩形状である。絶縁板の角部が、R面取りやC面取りされていてもよい。絶縁板は、熱伝導性の高いセラミックスにより形成されている。このようなセラミックスは、例えば、酸化アルミニウム、窒化珪素、または、窒化アルミニウムを主成分とする材料により構成されている。
【0016】
回路パターンは、導電性に優れた金属により形成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。回路パターンの表面に対して、耐食性を向上させるためにめっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。また、回路パターンには、適宜、半導体チップや外部接続端子41~43が機械的かつ電気的に接続される。なお、回路パターン及び半導体チップの構成については後述する。
【0017】
金属板は、熱伝導性に優れた金属を主成分として形成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。金属板の耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0018】
このような部品を有する絶縁回路基板として、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板を用いることができる。また、絶縁回路基板上の回路パターンと半導体チップや外部接続端子41~43とは、はんだを介して接合される。このはんだは、鉛フリーはんだが用いられる。鉛フリーはんだは、例えば、錫-銀-銅からなる合金、錫-亜鉛-ビスマスからなる合金、錫-銅からなる合金、錫-銀-インジウム-ビスマスからなる合金のうち少なくともいずれかの合金を主成分とする。はんだに代わり、金属焼結体を用いてもよい。金属焼結体の材料は、銀、金、ニッケル、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。
【0019】
また、半導体チップが搭載された絶縁回路基板に対して、半導体チップ間、半導体チップと回路パターン間、複数の回路パターン間がワイヤにより機械的、かつ、電気的に接続されている。ワイヤは、導電性に優れた材質により形成されている。このような材質として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金がある。また、ワイヤの径は、半導体チップの制御電極に用いられる場合には、例えば、20μm以上、300μm以下である。または、ワイヤの径は、半導体チップの主電極に接続され、また、主電流配線に用いられる場合には、例えば、350μm以上、500μm以下である。
【0020】
半導体チップは、シリコンを主成分として構成されてよい。このような半導体チップは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とFWD(Free Wheeling Diode)との機能を合わせ持つRC(Reverse-Conducting)-IGBTを含んでよい。この半導体チップは、裏面に入力電極としてコレクタ電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極及び出力電極としてエミッタ電極をそれぞれ備えている。
【0021】
本実施の形態では、半導体チップがRC-IGBTである場合を例に挙げて説明する。なお、半導体チップは、炭化シリコンを主成分として構成されてよい。このような半導体チップは、例えば、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であってよい。この半導体チップは、パワーMOSFETと共にFWDを備えている。この場合の半導体チップは、裏面に入力電極としてドレイン電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極及び出力電極としてソース電極をそれぞれ備えている。半導体チップは、絶縁回路基板の所定の回路パターンに接合部材を介して接合される。接合部材は、既述のはんだ、または、金属焼結材であってよい。金属焼結体は、例えば、アルミニウム、銅またはこれらの少なくとも一種を含む合金を主成分としてよい。
【0022】
ケース22は、側壁部23と、側壁部23の上部を覆う蓋部25と、を含む。ただし、
図1は蓋部25を除いた状態の平面図を示している。側壁部23の内面は平面視で矩形を成しており、側壁部23は、収納領域22aの四方を取り囲む第1~第4内壁面23a~23dを含む。第1内壁面23a及び第3内壁面23cは短辺に対応し、第2内壁面23b及び第4内壁面23dは長辺に対応している。このような側壁部23の下面が、接着剤等により放熱板21の外縁部に接合されている。また、第4内壁面23dの上部には、
図1の紙面左方向に突出する突出部23eが設けられている。突出部23eの下面は、収納領域22aの底部と対向する平面上の対向面を成している。なお、突出部23eのうち、少なくとも下面の全面が封止部材24に接触している。突出部23eの下面は、封止部材24の上面24aより低い位置となっていてもよい。
【0023】
ケース22は、熱可塑性樹脂により側壁部23及び蓋部25が外部接続端子41~43を含んでインサート成形により一体成形される。このような樹脂として、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリアミド樹脂、または、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂が挙げられる。
【0024】
放熱板21とケース22の側壁部23とによって囲われた収納領域22aには、封止部材24が充填されている。これにより、収納領域22aに配置された絶縁回路基板や回路パターン、半導体チップ、ワイヤ等の構成部品が封止部材24により封止されている。封止部材は、絶縁性の高分子ゲルである。好ましくは、シリコーンゲルを主成分としている。
【0025】
図4は、第1の実施の形態における電力変換装置の第2の平面図である。
図5は、第1の実施の形態における電力変換装置の第3の平面図である。なお、
図4は、
図1の第1の平面図から、ケース22の収納領域22a内の封止部材24を除いた状態を示している。
図4は、ワイヤの図示を省略している。また、
図5は、
図4の第2の平面図から、外部接続端子42をさらに除いた状態を示している。以下、
図3~
図5を用いて外部接続端子41~43について説明する。
【0026】
外部接続端子41~43は、回路パターンと外部装置とを電気的に接続する。外部接続端子41~43は、平板状の導電部材により形成されている。なお、外部接続端子42,43の一部分が端子保持部44により一体的に保持されている。
【0027】
外部接続端子41の一端は、ケース22の蓋部25の上面に露出し、外部装置と接続する外部接続部41aを成す。また、外部接続端子41は、外部接続部41aから他端側に対して、水平部41b,41cを順に含む。水平部41b,41cは、収納領域22aの底面と水平であり、水平部41bの高さは外部接続部41aより低く、水平部41cの高さは水平部41bより低い。外部接続部41a及び水平部41b,41cは、例えば、平板状の外部接続端子41を折り曲げることで形成され、外部接続部41aと水平部41bとの間、及び水平部41bと水平部41cとの間は、いずれも鉛直方向に伸びる連結部によって連結されている。
【0028】
外部接続部41aは、水平方向(Y方向)に対して外部接続部41a1~41a3に分割されている。また、水平部41cは、水平方向(Y方向)に対する中央のスリット41c3を挟んで水平部41c1,41c2に分割されている。さらに、水平部41c1の端部には、下方に延伸された接続部41d1,41d2が形成されている。接続部41d1,41d2は、それぞれ回路パターン31b,31c(後述)に対してはんだを介して電気的かつ機械的に接続されている。また、水平部41c2の端部には、下方に延伸された接続部41d3,41d4が形成されている。接続部41d3,41d4は、それぞれ回路パターン32b,32c(後述)に対してはんだを介して電気的かつ機械的に接続されている。または、例えば、レーザ溶接、超音波による溶接により直接接続されてもよい。
【0029】
外部接続端子42の一端は、ケース22の蓋部25の上面に露出し、外部装置と接続する外部接続部42aを成す。外部接続部42aは、水平方向(Y方向)に対して外部接続部42a1,42a2に分割されている。また、外部接続端子42は、外部接続部42aから他端側に対して水平部42bを含む。水平部42bは収納領域22aの底面と水平であり、水平部42bの高さは外部接続部42aより低い。外部接続部42a及び水平部42bは、平板状の外部接続端子42を折り曲げることで形成され、外部接続部42aと水平部42bとの間は鉛直方向に伸びる連結部によって連結されている。
【0030】
また、水平部42bの端部には、下方に延伸された接続部42c1,42c2が形成されている。接続部42c1,42c2は、それぞれ回路パターン33b,34b(後述)に対してはんだを介して電気的かつ機械的に接続されている。または、例えば、レーザ溶接、超音波による溶接により直接接続されてもよい。
【0031】
外部接続端子43の一端は、ケース22の蓋部25の上面に露出し、外部装置と接続する外部接続部43aを成す。また、外部接続端子43は、外部接続部43aから他端側に対して、水平部43b,43cを順に含む。水平部43b,43cは、収納領域22aの底面と水平であり、水平部43bの高さは外部接続部43aより低く、水平部43cの高さは水平部43bより低い。外部接続部43a及び水平部43b,43cは、平板状の外部接続端子43を折り曲げることで形成され、外部接続部43aと水平部43bとの間、及び水平部43bと水平部43cとの間は、いずれも鉛直方向に伸びる連結部によって連結されている。
【0032】
外部接続部43aは、水平方向(Y方向)に対して外部接続部43a1,43a2に分割されている。また、水平部43cの端部には、下方に延伸された接続部43d1,43d2が形成されている。接続部43d1,43d2は、それぞれ回路パターン31a,32a(後述)に対してはんだを介して電気的かつ機械的に接続されている。または、例えば、レーザ溶接、超音波による溶接により直接接続されてもよい。
【0033】
端子保持部44は、外部接続端子42の外部接続部42a及び水平部42bを連結する連結部と、外部接続端子43の外部接続部43a及び水平部43b,43cをそれぞれ連結する連結部と、水平部43bとを封止している。これにより、外部接続端子42,43が近接して配置されても絶縁性が維持される。また、このような端子保持部44は、ケース22と同様の材料により構成されてよい。
【0034】
なお、図示は省略するものの、制御端子を設けてよい。制御端子もまた、一端がケース22またはケース22の蓋部25から露出し、他端が収納領域22a内に配置される。制御端子の他端は、半導体チップの制御電極に電気的に接続される。制御端子の他端は、半導体チップの制御電極に対して制御用のワイヤにより機械的かつ電気的に接続されてよい。制御端子の他端と制御用のワイヤとは回路パターンを介してよい。なお、制御用のワイヤの径は、主電流配線で用いられるワイヤの径よりも細くてよい。
【0035】
外部接続端子41の水平部41c、外部接続端子42の水平部42b、及び外部接続端子43の水平部43cは、封止部材24の上面24aより低い位置に配置され、封止部材24により封止されている。
【0036】
図6は、第1の実施の形態における電力変換装置の第4の平面図である。なお、
図6は、
図5の第3の平面図から外部接続端子41,43を除いた状態を示している。以下、
図6を用いて絶縁回路基板、半導体チップ及びワイヤの構成について説明する。
【0037】
放熱板21のおもて面には、絶縁回路基板31~34が接合されている。絶縁回路基板31に含まれる絶縁板31dのおもて面には、回路パターン31a~31cが形成されている。絶縁回路基板32に含まれる絶縁板32dのおもて面には、回路パターン32a~32cが形成されている。絶縁回路基板33に含まれる絶縁板33dのおもて面には、回路パターン33a,33bが形成されている。絶縁回路基板34に含まれる絶縁板34dのおもて面には、回路パターン34a,34bが形成されている。
【0038】
回路パターン31aは平面視でT字型を成している。回路パターン31aは絶縁板31dの+Y方向の端部側に寄って設けられている。回路パターン31aには半導体チップ51a~51cが配置されている。半導体チップ51a,51bは回路パターン31aの±X方向の両側に配置されている。半導体チップ51cは、回路パターン31aの半導体チップ51a,51bの間であって、中央に配置されている。半導体チップ51a~51cの裏面と回路パターン31aとが接合部材であるはんだにより機械的かつ電気的に接合されている。
【0039】
回路パターン31b,31cは、平面視で矩形状を成している。回路パターン31b,31cは、絶縁板31dに回路パターン31aの-Y方向に突出した部分を挟んでそれぞれ配置されている。半導体チップ51aのおもて面の出力電極と回路パターン31bとの間は、ワイヤ111により機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ51bのおもて面の出力電極と回路パターン31cとの間は、ワイヤ112により機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ51cのおもて面の出力電極と回路パターン31b,31cとの間は、ワイヤ113により機械的かつ電気的に接続されている。
【0040】
回路パターン31bと回路パターン33aとの間は、ワイヤ151により機械的かつ電気的に接続されている。回路パターン31cと回路パターン33aとの間は、ワイヤ152により機械的かつ電気的に接続されている。
【0041】
また、回路パターン31aの領域31a1には、外部接続端子43の接続部43d1がはんだにより電気的かつ機械的に接続されている。回路パターン31bの領域31b1には、外部接続端子41の接続部41d1がはんだにより電気的かつ機械的に接続されている。回路パターン31cの領域31c1には、外部接続端子41の接続部41d2がはんだにより電気的かつ機械的に接続されている。
【0042】
回路パターン32aは平面視でT字型を成している。回路パターン32aは絶縁板32dの+Y方向の端部側に寄って設けられている。回路パターン32aには半導体チップ52a~52cが配置されている。半導体チップ52a,52bは回路パターン32aの±X方向の両側に配置されている。半導体チップ52cは、回路パターン32aの半導体チップ52a,52bの間であって、中央に配置されている。半導体チップ52a~52cの裏面と回路パターン32aとが接合部材であるはんだにより機械的かつ電気的に接合されている。
【0043】
回路パターン32b,32cは、平面視で矩形状を成している。回路パターン32b,32cは、絶縁板32dに回路パターン32aの-Y方向に突出した部分を挟んでそれぞれ配置されている。半導体チップ52aのおもて面の出力電極と回路パターン32bとの間は、ワイヤ121により機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ52bのおもて面の出力電極と回路パターン32cとの間は、ワイヤ122により機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ52cのおもて面の出力電極と回路パターン32b,32cとの間は、ワイヤ123により機械的かつ電気的に接続されている。
【0044】
回路パターン32bと回路パターン34aとの間は、ワイヤ153により機械的かつ電気的に接続されている。回路パターン32cと回路パターン34aとの間は、ワイヤ154により機械的かつ電気的に接続されている。なお、ワイヤ154については
図11に図示している。
【0045】
また、回路パターン32aの領域32a1には、外部接続端子43の接続部43d2がはんだにより電気的かつ機械的に接続されている。回路パターン32bの領域32b1には、外部接続端子41の接続部41d3がはんだにより電気的かつ機械的に接続されている。回路パターン32cの領域32c1には、外部接続端子41の接続部41d4がはんだにより電気的かつ機械的に接続されている。
【0046】
回路パターン33aは、平面視でU字型を成している。回路パターン33aは絶縁板33dの-Y方向側の端部に寄って設けられている。回路パターン33aには半導体チップ53a~53cが配置されている。半導体チップ53a,53bは回路パターン33aの窪みを挟んだ両側に配置されている。半導体チップ53cは、回路パターン33aの半導体チップ53a,53bの間であって、-Y方向側の端部の中央に配置されている。半導体チップ53a~53cの裏面と回路パターン33aとが接合部材であるはんだにより機械的かつ電気的に接合されている。
【0047】
回路パターン33bは、平面視でT字型を成し、回路パターン33aの窪み内であって、絶縁板33dの+Y方向側の端部に寄って形成されている。半導体チップ53aのおもて面の出力電極と回路パターン33bとの間は、ワイヤ131により機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ53bのおもて面の出力電極と回路パターン33bとの間は、ワイヤ132により機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ53cのおもて面の出力電極と回路パターン33bとの間は、ワイヤ133により機械的かつ電気的に接続されている。
【0048】
回路パターン34aは、平面視でU字型を成している。回路パターン34aは絶縁板34dの-Y方向側の端部に寄って設けられている。回路パターン34aには半導体チップ54a~54cが配置されている。半導体チップ54a,54bは回路パターン34aの窪みを挟んだ両側に配置されている。半導体チップ54cは、回路パターン34aの半導体チップ54a,54bの間であって、-Y方向側の端部の中央に配置されている。半導体チップ54a~54cの裏面と回路パターン34aとがはんだにより機械的かつ電気的に接合されている。
【0049】
回路パターン34bは、平面視でT字型を成し、回路パターン34aの窪み内であって、絶縁板34dの+Y方向側の端部に寄って形成されている。半導体チップ54aのおもて面の出力電極と回路パターン34bとの間は、ワイヤ141により機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ54bのおもて面の出力電極と回路パターン34bとの間は、ワイヤ142により機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ54cのおもて面の出力電極と回路パターン34bとの間は、ワイヤ143により機械的かつ電気的に接続されている。
【0050】
また、回路パターン33bの領域33b1には、外部接続端子42の接続部42c1がはんだにより電気的かつ機械的に接続されている。回路パターン34bの領域34b1には、外部接続端子42の接続部42c2がはんだにより電気的かつ機械的に接続されている。
【0051】
上記のワイヤ111~113,121~123,131~133,141~143,151~154は、導電性に優れた金属を主成分とするボンディングワイヤである。このような金属は、アルミニウム、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金により構成されている。本実施の形態において、上記のワイヤ111~113,121~123,131~133,141~143,151~154は主電流配線に用いられ、それらの径は例えば300μm以上、500μm以下である。
【0052】
なお、導電部(回路パターンまたは半導体チップのおもて面の出力電極)に対するワイヤ111~113,121~123,131~133,141~143,151~154の接合は、ボンディング装置を用いてよい。ボンディング装置に含まれるボンディングツールにより、ワイヤ111~113,121~123,131~133,141~143,151~154を導電部に押圧しつつ、超音波振動が行われる。このようなウェッジボンディングにより、ワイヤ111~113,121~123,131~133,141~143,151~154が導電部に接合される。
【0053】
また、上記の半導体チップ51a~51c,52a~52c,53a~53c,54a~54cは、既述の通り、IGBT及びFWDの機能を合わせ持つRC-IGBTである。ここで、
図7を用いて、電力変換装置10の電力変換機能について説明する。
【0054】
図7は、第1の実施の形態における電力変換装置の機能の等価回路を示す図である。
図7は、RC-IGBTを含む半導体チップ51a~51c,52a~52c及び半導体チップ53a~53c,54a~54cにより構成されるインバータ回路を示している。半導体チップ51a~51c,52a~52cは、スイッチング素子(IGBT)M1とダイオード素子(FWD)D1とを含む。半導体チップ53a~53c,54a~54cは、スイッチング素子(IGBT)M2とダイオード素子(FWD)D2を含む。
【0055】
電力変換装置10は、上アーム部A及び下アーム部Bを含むハーフブリッジ回路を構成する。電力変換装置10の上アーム部Aは、絶縁回路基板31及び絶縁回路基板32上に配置されたワイヤ111~113及びワイヤ121~123、半導体チップ51a~51c及び半導体チップ52a~52c、外部接続端子43を含む。さらに、絶縁回路基板31及び絶縁回路基板32の回路パターン31b,31c及び回路パターン32b,32c上に配置された外部接続端子41を含む。
【0056】
電力変換装置10の下アーム部Bは、絶縁回路基板33及び絶縁回路基板34上に配置されたワイヤ131~133及びワイヤ141~143、半導体チップ53a~53c及び半導体チップ54a~54c、外部接続端子42を含む。
【0057】
絶縁回路基板31,32及び絶縁回路基板33,34は、ワイヤ151,152及びワイヤ153,154により接続されている。これにより、上アーム部Aと下アーム部Bとが接続される。こうすることで、電力変換装置10は、上アーム部A及び下アーム部Bを含むハーフブリッジ回路として機能させることができる。
【0058】
この場合、電力変換装置10では、外部電源(図示を省略)の正極に接続される接続点Pと半導体チップ51a~51c,52a~52cの裏面の入力電極(コレクタ電極)の接続点C1とを繋ぐ配線55aが、外部接続端子43及び回路パターン31a,32aに対応する。つまり、外部接続端子43は、ハーフブリッジ回路で正極側の入力端子を構成するP端子である。
【0059】
負荷(図示を省略)の端子に接続される接続点Mと半導体チップ51a~51c及び半導体チップ52a~52cの出力電極(エミッタ電極)及び半導体チップ53a~53c及び半導体チップ54a~54cの入力電極(コレクタ電極)の接続点E1C2とを繋ぐ配線55cが、外部接続端子41と回路パターン31b,31c及び回路パターン32b,32cとワイヤ151,152及びワイヤ153,154と回路パターン33a,34aとに対応する。つまり、外部接続端子41は、ハーフブリッジ回路で出力端子を構成するM端子である。
【0060】
外部電源の負極に接続される接続点Nと半導体チップ53a~53c,54a~54cの出力電極(エミッタ電極)の接続点E2とを繋ぐ配線55bが、外部接続端子42及び回路パターン33b,34bに対応する。つまり、外部接続端子42は、ハーフブリッジ回路で負極側の入力端子を構成するN端子である。
【0061】
また、制御信号が入力される接続点G1及び接続点G2と半導体チップ51a~51c,52a~52c及び半導体チップ53a~53c,54a~54cの制御電極(ゲート電極)とを繋ぐ配線55d,55eが、図示を省略する制御端子に対応する。
【0062】
ところで、前述のように、ケース22の収納領域22aには封止部材24が充填されている。そして、上記の半導体チップ51a~51c,52a~52c,53a~53c,54a~54cやワイヤ111~113,121~123,131~133,141~143,151~154は、封止部材24によって封止されている。
【0063】
また、半導体チップは稼働すると発熱し、その熱によって半導体チップの周囲の封止部材24が膨張する。例えば、封止部材24の上方(Z方向)に収納領域22aの底面と対向する対向面を含む被覆部材が存在する場合、封止部材24の上方への膨張が抑制され、封止部材24は水平方向(X-Y平面に沿った方向)に対して膨張する。その結果、水平方向に対して封止部材24の熱膨張による力が発生し得る。
【0064】
以下では、封止部材24の熱膨張による力を受けるワイヤについて
図8を用いて説明する。
図8は、封止部材の熱膨張による力の方向及びワイヤの接合方向について説明するための図である。
図8には、導電部61と導電部62とを接続するワイヤ100を例示している。
図8の紙面上側には側面図を示しており、
図8の紙面下側には平面図を示している。なお、導電部61は、回路パターンまたは半導体チップの出力電極である。導電部62も同様に、回路パターンまたは半導体チップの出力電極である。このように導電部61,62はワイヤの接合対象物であって、回路パターン、出力電極に限らず、例えば、他の電子部品の電極、リードフレーム、金属ブロックであってもよい。
【0065】
ワイヤ100は、接合部100a,100bと配線部100cを含む。接合部100aは、ワイヤ100のボンディングツールにより導電部61に対して押圧されつつ超音波振動により接合された部分である。このような接合部100aは、ワイヤ100の一方の端部100a1から連結部100a2まで延伸し、その全体が導電部61に接合される。接合部100bも同様にワイヤ100のボンディングツールにより導電部62に接合された部分である。接合部100bは、ワイヤ100の他方の端部100b1から連結部100b2まで延伸し、その全体が導電部62に接合される。配線部100cは、導電部61と導電部62との間を跨いで、接合部100aの連結部100a2と接合部100bの連結部100b2とを繋ぎ、導電部61,62が配置された絶縁回路基板のおもて面から上方(
図8の側面図における上方)に離間する。
【0066】
図8では例として、接合部100a,100bを結ぶ直線L1に対して紙面上側に直交する方向D1に、封止部材24の熱膨張による力が発生しているとする。このような力がワイヤ100に加わる場合、その根元である接合部100a,100bに発生する応力によって、接合部100a,100bが導電部61,62から離脱(リフトオフ)する可能性がある。特に、ヒートサイクル試験やパワーサイクル試験等の繰り返し応力が発生するケース内では、ワイヤ100が離脱する可能性が高くなる傾向がある。
【0067】
ここで、熱膨張により接合部100a,100bにかかる力を低減する方法としては、例えば、膨張した封止部材24の移動を規制するための仕切り部材を配置する方法が考えられる。例えば
図8において、導電部61,62に対して力の発生源方向(紙面下方向)の位置に、直線L1に平行な略平板状の仕切り部材が配置される。この仕切り部材は、例えば、ケース22の蓋部25から下方に対して、収納領域22aの底面部との間で隙間が空くように延伸されて形成される。しかし、このような仕切り部材を半導体チップやワイヤの位置に応じて配置することは、電力変換装置10の開発・製造コストを上昇させるという問題がある。また、回路パターンや半導体チップ、ワイヤの配置の自由度が制限され、場合によっては電力変換装置10全体が大型化するという問題もある。
【0068】
そこで、本実施の形態では、ワイヤ100の接合部100a,100bの接合方向を封止部材24の熱膨張による力の方向D1に近づくように傾けることで、ワイヤ100が離脱する可能性を低減する。具体的には、接合部100aの端部100a1から連結部100a2への延伸方向D2aが、接合部100aから接合部100bを繋ぐ方向D3aに対して角度θ(ただし、θ>0)だけ傾くように、ワイヤ100が接合される。また、接合部100bの端部100b1から連結部100b2への延伸方向D2bが、接合部100bから接合部100aを繋ぐ方向D3bに対して角度θだけ傾くように、ワイヤ100が接合される。ただし、
図8のように方向D3a,D3bに対して力の方向D1が直交する場合、接合部100a,100bと配線部100cとの間の角度の差が大きくなり過ぎないように、傾き角度は鋭角(すなわちθは90度未満)とされる。
【0069】
これにより、接合部100a,100bの延伸方向D2a,D2bが力の方向D1に近づけられ、力によって接合部100a,100bを導電部61,62から離脱させようとする力が低減される。その結果、力により接合部100a,100bが導電部61,62から離脱する可能性を低減できる。
【0070】
なお、
図8では、接合部100a,100bを結ぶ直線L1に対して封止部材24の熱膨張による力の方向D1が直交する場合を例示した。この場合に限らず、力の方向D1が直線L1と直交しない場合でも、上記の延伸方向D2a,D2bはそれぞれ方向D3a,D3bに対して力の方向D1に近づくように傾けられればよい。
【0071】
例えば、方向D1と方向D3aとの角度が90度未満の場合に、延伸方向D2aを方向D3aと一致させてしまうと、接合部100aに対して配線部100c側から力がかかることになり、これは接合部100aを導電部61からはがす方向の力となる。方向D3aに対する延伸方向D2aを方向D1に近づくように傾けることで、このような力を逃がすことができ、接合部100aが離脱する可能性を低減できる。
【0072】
次に、電力変換装置10におけるワイヤ接合の具体例について説明する。
【0073】
図9は、第1の実施の形態における電力変換装置の一部を拡大した第1の拡大図である。
図9は、
図6のうち絶縁回路基板31の周辺領域を拡大して示した図である。
【0074】
また、
図9には、
図4及び
図5に示す外部接続端子41の水平部41c1の位置を破線によって示している。
図9に示すように、ワイヤ111,112,113_1,113_2の上部(+Z方向)は水平部41c1により覆われている。この場合、水平部41c1の下側においては、封止部材24の上方(+Z方向)に対する熱膨張の方向が水平部41c1により規制されるので、封止部材24は水平方向に膨張する。
【0075】
ここで、水平部41c1の紙面左右方向(±X方向)に対する中心を通る直線を、中心線L2とする。また、水平部41c1の下側(-Z方向)においては半導体チップ51a~51cが熱源となる。これらの半導体チップ51a~51cは中心線L2に対して左右対称に配置されている。このようなケースでは、封止部材24は中心線L2から左右方向に対して膨張する。
【0076】
ワイヤ111は、半導体チップ51aの出力電極と接合する接合部111aと、回路パターン31bと接合する接合部111bと、接合部111a,111b間を接続する配線部111cを含む。接合部111aから接合部111bを結ぶ方向は、中心線L2と平行である。この場合、接合部111a,111bに対しては中心線L2から紙面左方向(-X方向)に対して、封止部材24の熱膨張による力が生じる。そこで、接合部111aの端部から配線部111cとの連結部に向かう方向が、接合部111aから接合部111bに向かう方向に対して力方向(紙面左方向)に近づくように鋭角に傾けられている。
図9ではこの傾き角度をθ1として表しており、0<θ1<90である。これにより、力によって接合部111aが半導体チップ51aから離脱する可能性を低減できる。
【0077】
また、接合部111bに関しても、接合部111bの端部から配線部111cとの連結部に向かう方向が、接合部111bから接合部111aに向かう方向に対して力方向(紙面左方向(-X方向))に近づくように鋭角に傾けられている。これにより、力により接合部111bが回路パターン31bから離脱する可能性を低減できる。
【0078】
ワイヤ112は、半導体チップ51bの出力電極と接合する接合部112aと、回路パターン31cと接合する接合部112bと、接合部112a,112b間を接続する配線部112cを含む。そして、接合部112aから接合部112bを結ぶ方向も中心線L2と平行である。この場合、接合部112a,112bに対しては中心線L2から紙面右方向(+X方向)に対して、封止部材24の熱膨張による力が生じる。そこで、接合部112aの端部から配線部112cとの連結部に向かう方向が、接合部112aから接合部112bに向かう方向に対して力方向(紙面右方向)に近づくように鋭角に傾けられている。これにより、力によって接合部112aが半導体チップ51bから離脱する可能性を低減できる。
【0079】
また、接合部112bに関しても、接合部112bの端部から配線部112cとの連結部に向かう方向が、接合部112bから接合部112aに向かう方向に対して力方向(紙面右方向)に近づくように鋭角に傾けられている。これにより、力により接合部112bが回路パターン31cから離脱する可能性を低減できる。
【0080】
次に、ワイヤ113としては、中心線L2を挟んで紙面左側(-X方向)に位置するワイヤ113_1と、紙面右側(+X方向)に位置するワイヤ113_2とがある。
【0081】
ワイヤ113_1は、半導体チップ51cの出力電極と接合する接合部113_1aと、半導体チップ51cの出力電極と接合する接合部113_1b1と、回路パターン31bと接合する接合部113_1b2と、接合部113_1a,113_1b1間を接続する配線部113_1c1と、接合部113_1b1,113_1b2間を接続する配線部113_1c2を含む。このようなワイヤ113_1に対しては、封止部材24の熱膨張により紙面左方向(-X方向)の力が生じる。
【0082】
ここで、接合部113_1aから接合部113_1b1を結ぶ方向は中心線L2と平行である。そこで、ワイヤ113_1では、少なくとも接合部113_1aの接合方向が傾けられる。すなわち、接合部113_1aの端部から配線部113_1c1との連結部に向かう方向が、接合部113_1aから接合部113_1b1に向かう方向に対して力方向(紙面左方向(-X方向))に近づくように鋭角に傾けられている。
図9ではこの傾き角度をθ2として表しており、0<θ2<90である。これにより、力によって接合部113_1aが半導体チップ51cから離脱する可能性を低減できる。
【0083】
一方、ワイヤ113_2は、半導体チップ51cの出力電極と接合する接合部113_2aと、半導体チップ51cと接合する接合部113_2b1と、回路パターン31cと接合する接合部113_2b2と、接合部113_2a,113_2b1間を接続する配線部113_2c1と、接合部113_2b1,113_2b2間を接続する配線部113_2c2を含む。このようなワイヤ113_2に対しては、封止部材24の熱膨張により紙面右方向(+X方向)の力が生じる。
【0084】
ここで、接合部113_2aから接合部113_2b1を結ぶ方向は中心線L2と平行である。そこで、ワイヤ113_2では、少なくとも接合部113_2aの接合方向が傾けられる。すなわち、接合部113_2aの端部から配線部113_2c1との連結部に向かう方向が、接合部113_2aから接合部113_2b1に向かう方向に対して力方向(紙面右方向(+X方向))に近づくように鋭角に傾けられている。これにより、力によって接合部113_2aが半導体チップ51cから離脱する可能性を低減できる。
【0085】
なお、この他に例えば、接合部113_1b2の端部から配線部113_1c2との連結部に向かう方向が、接合部113_1b2から接合部113_1b1に向かう方向に対して力方向(紙面左方向(-X方向))に近づくように鋭角に傾けられていてもよい。また、接合部113_2b2の端部から配線部113_2c2との連結部に向かう方向が、接合部113_2b2から接合部113_2b1に向かう方向に対して力方向(紙面右方向(+X方向))に近づくように鋭角に傾けられていてもよい。
【0086】
ところで、
図9の紙面左右方向(±X方向)に対しては、中心線L2に近いほど(すなわち、力方向の上流側ほど)封止部材24の熱膨張による力が大きくなる。例えば、中心線L2に対するワイヤ113_1の距離D12は、中心線L2に対するワイヤ111の距離D11より短い。このため、ワイヤ113_1に対して生じる力は、ワイヤ111に対して生じる力より大きい。この場合、例えば、ワイヤ113_1の接合部113_1aの傾き角度θ2は、ワイヤ111の接合部111aの傾き角度θ1より大きく設定される。これにより、ワイヤ113_1の接合部113_1aの離脱をより確実に防止できる。
【0087】
また、封止部材24の熱膨張による力の大きさは、例えば、ワイヤを覆う被覆部材の高さによっても変化する。この点について、次の
図10を用いて説明する。
【0088】
図10は、被覆部材の高さに応じた力の変化及びワイヤの接合方向について説明するための図である。
図10の紙面上側に示す側面図は、ワイヤ111の周辺領域を
図9の一点鎖線Y1-Y1の方向から見た状態を示している。
図10の紙面下側に示す平面図は、ワイヤ111の周辺領域を拡大して示した図である。なお、
図10では被覆部材として、外部接続端子41(に含まれる水平部41c1)を例に挙げている。被覆部材は、封止部材24に封止され、ワイヤの上方(+Z方向)に設けられているものであればよい。被覆部材は、外部接続端子41~43に限らず、例えば、ケース22内に設けられ、対向面を含む梁(図示を省略)であってもよい。また、被覆部材の対向面が封止部材24の上面よりも低い位置(-Z方向)に配置されていればよく、被覆部材の全体が封止部材24に封止される必要はない。
【0089】
ワイヤ111の上部(+Z方向)は、外部接続端子41の水平部41c1により覆われている。ここで、水平部41c1の高さが低いほど、封止部材24の上方(+Z方向)に対する膨張が強く規制され、その分だけ水平方向に対して膨張しやすくなり、水平方向に対する力が大きくなる。
【0090】
図10の紙面左側では、ワイヤ111が接合された半導体チップ51aの上面から、水平部41c1の下面(絶縁回路基板31に対する対向面)までの高さはH1となっている。また、ワイヤ100の接合部111aの傾き角度はθ1aとなっている。一方、
図10の紙面右側では、半導体チップ51aの上面から水平部41c1の下面までは高さH2となっており、H2>H1である。また、ワイヤ100の接合部111aの傾き角度はθ1bとなっている。
【0091】
このような場合、紙面左方向(-X方向)に発生する力の大きさは、高さH1である紙面左側のケースの方が大きくなる。このため、ワイヤ111の接合部111aの傾き角度θ1aは、傾き角度θ1bより大きく設定される。これにより、ワイヤ111の接合部111aの離脱をより確実に防止できる。
【0092】
なお、
図10の紙面上側に示すように、ワイヤ111の立ち上がり方向が封止部材24の熱膨張による力の方向側に傾けられてもよい。
図10のケースでは、封止部材24の熱膨張により紙面左側(-X方向)に対して力がかかるので、ワイヤ111は鉛直上方向(Z方向)に対して紙面左側(-X方向)に傾けられる。これにより、接合部111a,111bを離脱させようとする力が低減される。
【0093】
ワイヤ111の立ち上がり方向は、封止部材24の熱膨張による力が大きいほど大きく傾けられることが望ましい。
図10では、被覆部材の高さがH1の場合、ワイヤ111の立ち上がり方向の傾き角度はθ1cであり、被覆部材の高さがH2(>H1)の場合、ワイヤ111の立ち上がり方向の傾き角度はθ1dである。上記のように高さがH1の場合の方が熱膨張による力が大きいため、ワイヤ111の立ち上がり方向の傾き角度はθ1c>θ1dとなるように設定される。これにより、接合部111aが離脱する可能性を低減できる。
【0094】
また、封止部材24の熱膨張による力が大きいほど、ワイヤ111の立ち上がり方向の傾き角度とともに、接合部111a,111bの接合方向の傾き角度も大きくなる。これにより、平面視で接合部111a,111bからワイヤ111の中央部方向に対してワイヤ111が大きく折り曲げられることなく延伸される。立ち上がり部分でのワイヤ111の折れ曲がりによって当該部分の強度が低下する可能性があるが、上記のようにワイヤ111の立ち上がり方向を接合部111a,111bの接合方向に傾き角度に応じて傾けることで、このような強度低下を抑制できる。
【0095】
図11は、第1の実施の形態における電力変換装置の一部を拡大した第2の拡大図である。
図11は、
図6のうち絶縁回路基板33,34の周辺領域を拡大して示した図である。
【0096】
また、
図11には、
図5に示す外部接続端子43の水平部43cの位置を破線によって示している。
図11に示すように、ワイヤ132,141の全体の上部(+Z方向)、及びワイヤ152,153,133,143の一部の上部(+Z方向)は水平部43cにより覆われている。この場合、水平部43cの下側(-Z方向)においては、封止部材24の上方(+Z方向)に対する膨張方向が水平部43cにより規制されるので、封止部材24は水平方向に膨張する。
【0097】
ここで、水平部43cの紙面左右方向(±X方向)に対する中心を通る直線を、中心線L3とする。また、水平部43cの下側においては半導体チップ53b,53c,54a,54cが熱源となる。これらの半導体チップ53b,53c,54a,54cは中心線L3に対して左右対称に配置されている。このようなケースでは、封止部材24は中心線L3から左右方向に対して膨張する。
【0098】
ワイヤ132は、回路パターン33bと接合する接合部132aと、半導体チップ53bの出力電極と接合する接合部132bと、接合部132a,132b間を接続する配線部132cを含む。接合部132aから接合部132bを結ぶ方向は、中心線L3と平行である。この場合、接合部132a,132bに対しては中心線L3から紙面左方向(-X方向)に対して、封止部材24の熱膨張による力が生じる。このため、接合部132aの端部から配線部132cとの連結部に向かう方向が、接合部132aから接合部132bに向かう方向に対して力方向(紙面左方向(-X方向))に近づくように鋭角に傾けられている。これにより、力によって接合部132aが回路パターン33bから離脱する可能性を低減できる。
【0099】
また、接合部132bに関しても、接合部132bの端部から配線部132cとの連結部に向かう方向が、接合部132bから接合部132aに向かう方向に対して力方向(紙面左方向)に近づくように鋭角に傾けられている。これにより、力により接合部132bが半導体チップ53bから離脱する可能性を低減できる。
【0100】
一方、ワイヤ141は、中心線L3に対してワイヤ132と対向する位置に設けられている。ワイヤ141は、回路パターン34bと接合する接合部141aと、半導体チップ54aの出力電極と接合する接合部141bと、接合部141a,141b間を接続する配線部141cを含む。接合部141aから接合部141bを結ぶ方向は、中心線L3と平行である。この場合、接合部141a,141bに対しては中心線L3から紙面右方向(+X方向)に対して、封止部材24の熱膨張による力が生じる。このため、接合部141aの端部から配線部141cとの連結部に向かう方向が、接合部141aから接合部141bに向かう方向に対して力方向(紙面右方向(+X方向))に近づくように鋭角に傾けられている。これにより、力によって接合部141aが回路パターン34bから離脱する可能性を低減できる。
【0101】
また、接合部141bに関しても、接合部141bの端部から配線部141cとの連結部に向かう方向が、接合部141bから接合部141aに向かう方向に対して力方向(紙面右方向(+X方向))に近づくように鋭角に傾けられている。これにより、力により接合部141bが半導体チップ54aから離脱する可能性を低減できる。
【0102】
ワイヤ152は、回路パターン31cと接合する接合部152aと、回路パターン33aと接合する接合部152bと、接合部152a,152b間を接続する配線部152cを含む。接合部152aと接合部152bとを結ぶ方向は、中心線L3と平行である。また、接合部152a,152bのうち接合部152bの上部(+Z方向)のみが水平部43cに覆われている。この場合、接合部152bに対しては中心線L3から紙面左方向(-X方向)に対して、封止部材24の熱膨張による力が生じる。このため、接合部152bの端部から配線部152cとの連結部に向かう方向が、接合部152bから接合部152aに向かう方向に対して力方向(紙面左方向(-X方向))に近づくように鋭角に傾けられている。これにより、力によって接合部152bが回路パターン33aから離脱する可能性を低減できる。
【0103】
一方、ワイヤ153は、中心線L3に対してワイヤ152と対向する位置に設けられている。ワイヤ153は、回路パターン32bと接合する接合部153aと、回路パターン34aと接合する接合部153bと、接合部153a,153b間を接続する配線部153cを含む。接合部153aから接合部153bを結ぶ方向は、中心線L3と平行である。また、接合部153a,153bのうち接合部153bの上部のみが水平部43cに覆われている。この場合、接合部153bに対しては中心線L3から紙面右方向(+X方向)に対して、封止部材24の熱膨張による力が生じる。このため、接合部153bの端部から配線部153cとの連結部に向かう方向が、接合部153bから接合部153aに向かう方向に対して力方向(紙面右方向(+X方向))に近づくように鋭角に傾けられている。これにより、力によって接合部153bが回路パターン34aから離脱する可能性を低減できる。
【0104】
なお、ワイヤ133の接合部133aも、その上部が水平部43cに覆われているので、接合部133aに対しては紙面左方向(-X方向)に対して力が生じ得る。このため、接合部133aの接合方向も傾けられてもよい。同様に、ワイヤ143の接合部143aも、その上部(+Z方向)が水平部43cに覆われているので、接合部143aに対しては紙面右方向(+X方向)に対して力が生じ得る。このため、接合部143aの接合方向も傾けられてもよい。
【0105】
次に、ワイヤ154に対する力について説明する。ワイヤ154は、回路パターン32cに接合する接合部154aと、回路パターン34aに接合する接合部154bと、接合部154a,154b間を接続する配線部154cを含む。また、ワイヤ154は側壁部23の第4内壁面23dの近傍に設けられている。そして、接合部154aから接合部154bに繋ぐ方向は、第4内壁面23dの延伸方向(紙面上下方向(±Y方向))と平行である。なお、ワイヤ154の上部は、第4内壁面23dから紙面左方向(-X方向)に突出する突出部23e(
図1,6参照)によって覆われている。
【0106】
このような第4内壁面23dの近傍領域では、封止部材24が熱によって膨張した場合、第4内壁面23dの方向(+X方向)に対する膨張が規制されるので、封止部材24は第4内壁面23dに対向する方向(-X方向)に膨張する。このため、第3内壁面23dからワイヤ154に向かう方向(紙面左方向(-X方向))に対して力が生じる。また、当該領域の上方向(Z方向)に対する膨張は突出部23eやケース22の蓋部25によって規制され得るので、第4内壁面23dに対向する方向に対して一層力が生じやすくなる。特に、突出部23eの高さが低いほど力は大きくなり得る。
【0107】
そこで、ワイヤ154の離脱を防止するために、接合部154a,154bの接合方向が傾けられる。具体的には、接合部154aの端部から配線部154cとの連結部に向かう方向が、接合部154aから接合部154bに向かう方向に対して力方向(紙面左方向(-X方向))に近づくように鋭角に傾けられている。これにより、力によって接合部154aが回路パターン32aから離脱する可能性を低減できる。また、接合部154bの端部から配線部154cとの連結部に向かう方向が、接合部154bから接合部154aに向かう方向に対して力方向(紙面左方向(-X方向))に近づくように鋭角に傾けられている。これにより、力によって接合部154bが回路パターン34aから離脱する可能性を低減できる。
【0108】
また、第4内壁面23dに近い位置ほど、封止部材24の熱膨張による力が大きくなる。このため、接合部154a,154bと第4内壁面23dとの距離が近いほど、接合部154a,154bにおける延伸方向の傾き角度が大きく設定される。これにより、ワイヤ154の接合部154a,154bの離脱をより確実に防止できる。
【0109】
以上説明した第1の実施の形態において、電力変換装置10は、導電部61,62がおもて面に設けられた絶縁回路基板31と、導電部61,62を接続するワイヤ100と、絶縁回路基板31及びワイヤ100を収納する収納領域22aを含むケース22と、収納領域22aに充填されて絶縁回路基板31及びワイヤ100を封止する封止部材24とを有する。ワイヤ100は、導電部61に接合され、一方の端部100a1を含む接合部100aと、導電部61に接合され、他方の端部100b1を含む接合部100bと、導電部61,62間を跨いで、接合部100aの連結部100a2と接合部100bの連結部100a2に対向する連結部100b2とを繋ぎ、絶縁回路基板31のおもて面から離間する配線部100cを含む。そして、ワイヤ100の端部100a1から連結部100a2に延伸する接合部100aの延伸方向は、接合部100aから接合部100bを繋ぐ方向に対して、封止部材24の熱膨張により平面視で接合部100aに生じる力の方向に近づくように鋭角に傾いている。これにより、封止部材24の熱膨張に伴う力により、ワイヤ100の接合部100aが導電部61から離脱する可能性を低減することができる。
【0110】
また、電力変換装置10は、半導体チップ51a及び回路パターン31bがおもて面に設けられた絶縁回路基板31と、半導体チップ51aと回路パターン31bとを接続するワイヤ111と、絶縁回路基板31及びワイヤ111を収納する収納領域22aを含むケース22と、収納領域22aに充填されて絶縁回路基板31及びワイヤ111を封止する封止部材24とを有する。ワイヤ111は、半導体チップ51aに接合され、一方の第1端部を含む接合部111aと、回路パターン31bに接合され、他方の第2端部を含む接合部111bと、半導体チップ51aと回路パターン31bとの間を跨いで、接合部111aの第1連結点と接合部111bの第1連結点に対向する第2連結点とを繋ぎ、絶縁回路基板31のおもて面から離間する配線部111cとを含む。また、電力変換装置10は、充填された封止部材24の上面24aより低い位置に、絶縁回路基板31に対向し、ワイヤ111の接合部111aを覆う対向面を含む水平部41c1を有する。そして、接合部111aから接合部111bを繋ぐ第1方向に対して、ワイヤ111の第1端部から第1連結点に延伸する接合部111aの第1延伸方向は、第1方向に平行で対向面の平面視での中心を通る中心線L2から中心線L2に直交して接合部111a側に向かう第2方向に近づくように、鋭角に傾いている。これにより、封止部材24の熱膨張に伴う力により、ワイヤ111の接合部111aが半導体チップ51aから離脱する可能性を低減することができる。
【0111】
[第2の実施の形態]
上記の第1の実施の形態では、接合部の端部からの延伸方向を力の方向に近づけるように傾けることで、接合部の離脱を防止した。これに対して、ワイヤの立ち上がり方向を力の方向側に傾けることで、接合部の離脱を防止することもできる。
【0112】
図12は、第2の実施の形態における電力変換装置におけるワイヤの立ち上がり状態を示す図である。
図12の紙面上側に示す側面図は、電力変換装置10におけるワイヤ111,113の周辺領域を
図9の一点鎖線Y2-Y2の方向から見た状態を示している。
図12の紙面下側に示す平面図は、ワイヤの周辺領域を拡大して示した図である。
【0113】
図12の側面図に示すように、封止部材24が熱により膨張した際、ワイヤ111,113に対しては、水平部41c1の中心線L2からワイヤ111,113に向かう方向(紙面左方向(-X方向))に対して力が生じる。この場合、ワイヤ111の配線部111cの立ち上がり方向は、鉛直上側方向(+Z方向)に対して力の方向に傾けられる。これにより、力によってワイヤ111の接合部111a,111bが回路パターン31bから離脱する可能性を低減できる。同様に、ワイヤ113の配線部113cの立ち上がり方向は、鉛直上側方向(+Z方向)に対して力の方向に傾けられる。これにより、力によってワイヤ113の接合部113a,113bが半導体チップ51cから離脱する可能性を低減できる。
【0114】
また、前述のように、中心線L2からの水平方向に対する距離が近いほど力が大きくなる。
図12の例では、中心線L2からのワイヤ111の距離D11よりも、中心線L2からのワイヤ113の距離D12の方が短いので、ワイヤ113の方が大きな力がかかる。このため、ワイヤ111の配線部111cの傾き角度θ3aより、ワイヤ113の配線部113cの傾き角度θ4aの方が大きく設定される。
【0115】
また、
図10に示したように、絶縁回路基板31から水平部41cのような被覆部材の下面までの高さが低いほど、力は大きくなる。このため、水平部41cの高さが低いほど、ワイヤ111,113の傾き角度が大きく設定される。
【0116】
さらに、
図11に示したように、鉛直方向に起立する部材の側面(
図11では側壁部23の第3内壁面23d)の近傍にワイヤが存在する場合、封止部材24が熱によって膨張すると側面に対向する方向(-X方向)に向かう力がワイヤにかかる。このため、ワイヤの立ち上がり方向は、力の方向(ワイヤから見て側面とは逆方向)に傾けられる。これにより、力によってワイヤの接合部が接合面から離脱する可能性を低減できる。また、ワイヤと側面との距離が近いほど、ワイヤにかかる力が大きくなるので、ワイヤの傾き角度が大きく設定される。
【0117】
以上説明した第2の実施の形態において、電力変換装置10は、半導体チップ51a及び回路パターン31bがおもて面に設けられた絶縁回路基板31と、半導体チップ51aと回路パターン31bとを接続するワイヤ111と、絶縁回路基板31及びワイヤ111を収納する収納領域22aを含むケース22と、収納領域22aに充填されて絶縁回路基板31及びワイヤ111を封止する封止部材24とを有する。ワイヤ111は、半導体チップ51aに接合され、一方の第1端部を含む接合部111aと、回路パターン31bに接合され、他方の第2端部を含む接合部111bと、半導体チップ51aと回路パターン31bとの間を跨いで接合部111aと接合部111bとを繋ぎ、絶縁回路基板31のおもて面から離間する配線部111cとを含む。そして、絶縁回路基板31のおもて面から配線部111cが立ち上がる立ち上がり方向は、当該おもて面に垂直な方向に対して、封止部材24の膨張により平面視でワイヤ111に生じる力の方向側に傾いている。これにより、封止部材24の熱膨張に伴う力により、ワイヤ111の接合部111a,111bが半導体チップ51a及び回路パターン31bから離脱する可能性を低減することができる。
【0118】
なお、ワイヤの接合部の延伸方向を傾ける第1の実施の形態の方法と、ワイヤの立ち上がり方向を傾ける第2の実施の形態の方法は、併用されてもよい。
図12の例では紙面下側の平面図に示すように、ワイヤ111の接合部111aとワイヤ113の接合部113aが傾けられている。具体的には、接合部111aの端部から配線部111cとの連結部に向かう方向が、接合部111aから接合部111bに向かう方向に対して、熱膨張による力の方向(紙面左方向(-X方向))に近づくように傾き角度θ3bだけ傾けられている。また、接合部113aの端部から配線部113cとの連結部に向かう方向が、接合部113aから接合部113bに向かう方向に対して、熱膨張による力の方向(紙面左方向(-X方向))に近づくように傾き角度θ4bだけ傾けられている。これにより、接合部111a,113aが熱膨張による力によって半導体チップ51a,51cから離脱する可能性を低減することができる。
【0119】
また、前述のように、水平部41c1の中心線L2からの水平方向に対する距離が近いほど、熱膨張による力が大きくなる。
図12の例では、中心線L2からのワイヤ111の距離D11よりも、中心線L2からのワイヤ113の距離D12の方が短いので、ワイヤ113の方が大きな力がかかる。このため、ワイヤ111の接合部111aの傾き角度θ3bより、ワイヤ113の接合部113aの傾き角度θ4bの方が大きく設定される。
【符号の説明】
【0120】
10 電力変換装置
21 放熱板
22 ケース
22a 収納領域
23 側壁部
23a~23d 第1~第4内壁面
23e 突出部
24 封止部材
24a 上面
25 蓋部
31~34 絶縁回路基板
31a~31c,32a~32c,33a,33b,34a、34b 回路パターン
31a1~31c1,32a1~32c1,33b1,34b1 領域
31d,32d,33d,34d 絶縁板
41~43 外部接続端子
41a,41a1~41a3,42a,42a1,42a2,43a,43a1,43a2 外部接続部
41b,41c,41c1,41c2,42b,43b,43c 水平部
41c3 スリット
41d1~41d4,42c1,42c2,43d1,43d2 接続部
44 端子保持部
51a~51c,52a~52c,53a~53c,54a~54c 半導体チップ
55a~55e 配線
61,62 導電部
100,111~113,121~123,131~133,141~143,151~154 ワイヤ
100a,100b 接合部
100c 配線部
100a1,100b1 端部
100a2,100b2 連結部