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特開2024-126200プラスチック分離システムおよびプラスチック分離方法
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  • 特開-プラスチック分離システムおよびプラスチック分離方法 図1
  • 特開-プラスチック分離システムおよびプラスチック分離方法 図2A
  • 特開-プラスチック分離システムおよびプラスチック分離方法 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126200
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】プラスチック分離システムおよびプラスチック分離方法
(51)【国際特許分類】
   B07C 5/342 20060101AFI20240912BHJP
   B65G 47/28 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B07C5/342
B65G47/28 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034428
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 光宏
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
【テーマコード(参考)】
3F079
3F081
【Fターム(参考)】
3F079AB00
3F079CB29
3F079CC03
3F079DA12
3F081AA51
3F081BC13
3F081BD22
3F081BF15
3F081CE20
3F081DA08
(57)【要約】
【課題】プラスチックが非接触選別機に搬送される前に、プラスチック同士の重なりを低減すること。
【解決手段】搬送されるプラスチックを材質に応じて分離する材質判定分離手段と、材質判定分離手段を制御する制御装置とを備えたプラスチック分離システムであって、材質判定分離手段が、搬送されるプラスチックを撮像可能な撮像部と、プラスチックを非接触で選別する非接触選別機と、搬送されるプラスチックに所定の力を作用させる作用部と、を有し、制御部は、複数のプラスチック同士の重なりを判定する重なり判定部を有し、重なり判定部は撮像データを取得して複数の搬送されるプラスチックの存在領域をそれぞれ設定し、複数のプラスチックの存在領域に基づいてプラスチックの重なりの有無を判定し、重なり判定部がプラスチックの重なりが存在すると判定した場合に、制御部は作用部を制御してプラスチックの重なり部分に力を作用させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるプラスチックを前記プラスチックの材質に応じて分離可能に構成された材質判定分離手段と、前記材質判定分離手段を制御する制御部を有する制御装置とを備え、所定の分類で前記プラスチックを分離可能に構成されたプラスチック分離システムであって、
前記材質判定分離手段が、前記搬送されるプラスチックを撮像可能な撮像部と、前記プラスチックを非接触で選別する非接触選別機と、前記搬送されるプラスチックに所定の力を作用させる作用部と、を有し、
前記制御部は、複数の前記プラスチックの重なりを判定する重なり判定部を有し、
前記重なり判定部は、
前記撮像部から撮像データを取得し、
前記撮像データに対して複数の前記搬送されるプラスチックの存在領域をそれぞれ設定し、
複数の前記プラスチックの存在領域に基づいて、前記プラスチックの重なりの有無を判定し、
前記重なり判定部が前記プラスチックの重なりが存在すると判定した場合、前記制御部は、前記作用部を制御して、前記プラスチックの重なり部分に力を作用させる
プラスチック分離システム。
【請求項2】
前記重なり判定部は、前記プラスチックの存在領域として、前記プラスチックを囲む矩形領域を設定する
請求項1に記載のプラスチック分離システム。
【請求項3】
搬送されるプラスチックの材質に応じて分離する材質判定工程を含むプラスチック分離方法であって、
前記材質判定工程の前に、
前記プラスチックの重なりの有無を判定する重なり判定工程と、
前記重なり判定工程において前記プラスチックの重なりが存在すると判定された場合に前記重なりの部分に力を作用させる作用工程と、を含む
プラスチック分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック分離システムおよびプラスチック分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低炭素社会および循環型社会を実現するために、廃棄物処理分野においても、様々な要求がなされている。このような要求に対して、具体的に、資源ごみとなるプラスチックを含む廃棄物から、リサイクル用の廃プラスチックや単一材質のプラスチックを選別する廃プラスチックの選別技術が種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、材質による波長の吸収度の相違に基づいて再利用プラスチックを選別する光学式選別装置と、材質による比重の相違に基づいて再利用プラスチックの純度を高める遠心分離機と、を備え、光学式選別装置および遠心分離機を用いて廃プラスチックを処理することにより、再利用プラスチックの少なくとも1種類を種類別の再利用プラスチックとして選別するプラスチック分離システムの技術が開示されている。特許文献1に開示された光学式選別装置においては、搬送コンベア上の廃プラスチックに対して、搬送コンベア上部に設置した光源によってハロゲン光を照射し、プラスチック材質によって光の吸収率が異なる性質を利用して、反射された近赤外光を検出器にて測定し、選別対象のプラスチックの材質を検出する。プラスチック分離システムにおいては、検出されたプラスチックの材質の信号に基づいて選別された対象のプラスチックは、搬送コンベア上のエアノズルからの空気の噴出によって対象物用の開口部に誘導し、回収容器によって回収される。一方、検出されなかった非対象のプラスチックは、エアノズルからの空気が噴出されないことから、搬送コンベアの終端から別の開口部に落下されて回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-170653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術においては、光学式選別機などの非接触選別機において対象物と非対象物とが重なっているとハロゲン光が照射されず、近赤外光の反射も不十分になるため、材質の検出が困難になるという問題がある。そこで、従来のプラスチック分離システムにおいては、搬送コンベアの前に振動コンベアなどを設けることによって、プラスチックが重ならないようにしているが、その場合であってもプラスチック同士が重なる現象が発生するため、プラスチックの材質の検出が困難になるという問題も生じる。そのため、プラスチックが搬送コンベアによって非接触選別機に搬送される前に、プラスチック同士の重なりを低減できる技術の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、プラスチックが非接触選別機に搬送される前に、プラスチック同士の重なりを低減できるプラスチック分離システムおよびプラスチック分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るプラスチック分離システムは、搬送されるプラスチックを前記プラスチックの材質に応じて分離可能に構成された材質判定分離手段と、前記材質判定分離手段を制御する制御部を有する制御装置とを備え、所定の分類で前記プラスチックを分離可能に構成されたプラスチック分離システムであって、前記材質判定分離手段が、前記搬送されるプラスチックを撮像可能な撮像部と、前記プラスチックを非接触で選別する非接触選別機と、前記搬送されるプラスチックに所定の力を作用させる作用部と、を有し、前記制御部は、複数の前記プラスチックの重なりを判定する重なり判定部を有し、前記重なり判定部は、前記撮像部から撮像データを取得し、前記撮像データに対して複数の前記搬送されるプラスチックの存在領域をそれぞれ設定し、複数の前記プラスチックの存在領域に基づいて、前記プラスチックの重なりの有無を判定し、前記重なり判定部が前記プラスチックの重なりが存在すると判定した場合、前記制御部は、前記作用部を制御して、前記プラスチックの重なり部分に力を作用させる。
【0008】
本発明の一態様に係るプラスチック分離システムは、上記の発明において、前記重なり判定部は、前記プラスチックの存在領域として、前記プラスチックを囲む矩形領域を設定する。
【0009】
本発明の一態様に係るプラスチック分離方法は、搬送されるプラスチックの材質に応じて分離する材質判定工程を含むプラスチック分離方法であって、前記材質判定工程の前に、前記プラスチックの重なりの有無を判定する重なり判定工程と、前記重なり判定工程において前記プラスチックの重なりが存在すると判定された場合に前記重なりの部分に力を作用させる作用工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るプラスチック分離システムおよびプラスチック分離方法によれば、プラスチックが非接触選別機に搬送される前に、プラスチック同士の重なりを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態によるプラスチック分離システムを概略的に示すブロック図である。
図2A図2Aは、本発明の一実施形態によるプラスチック分離システムにおける重なり判定を説明するための図である。
図2B図2Bは、本発明の一実施形態によるプラスチック分離システムにおける重なり判定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
【0013】
まず、本発明の一実施形態を説明するにあたり、本発明の理解を容易にするために、本発明者が上記課題を解決するために行った鋭意検討について説明する。
【0014】
すなわち、本発明者の知見によれば、プラスチック分離システムに搬入されてくる廃プラスチックが破断や裁断などをされることなく搬入される場合、廃プラスチックを搬送する搬送コンベア上において廃プラスチックが重なる状態になる場合がある。本発明者の知見によれば、装置的な工夫として搬送コンベアとして振動コンベアなどを用いることによって、廃プラスチックの重なりを振動によって散けさせる方法が存在した。
【0015】
しかしながら、振動によって廃プラスチックを散けさせる方法では、重なっている廃プラスチック同士が振動によって同じ方向に振動することから、廃プラスチックの重なりの解消の効率を向上させるのは困難であった。そこで、本発明者は鋭意検討を行い、プラスチック分離システムに設けられた光学式選別機の搬入側の入口の近傍に、カメラなどの廃プラスチックの状態を撮像可能な撮像部を配置して画像データを利用する方法を想到した。すなわち、撮像部から取得した撮像データに対して、複数の廃プラスチック同士の重なりの有無を判定し、複数の廃プラスチックが重なっている場合に、重なりがある廃プラスチックの部分を例えばマニピュレータなどの重なり解除手段によって重なりを解除する方法を想到した。
【0016】
本発明者はさらに、撮像データから廃プラスチック同士の重なりの有無を判定する方法として、搬送コンベアと廃プラスチックとの間の色彩の相違に着目し、廃プラスチックからなる物体の領域の位置を矩形などで絞り込む学習モデルが好ましいことを想到した。具体的に発明者は、物体の領域の位置を矩形などで絞り込む方法として、例えば畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)などの画像認識に用いられる機械学習によって生成された学習モデルを採用することが好ましいことを想到した。これにより、重なり判定学習モデルとしては、認識したい廃プラスチックの領域を、ピクセル単位で分割して判定するセグメンテーションや矩形で囲って抽出するディテクションなどによって、廃プラスチック同士の重なりを検出可能な学習モデルを採用できる。なお、学習モデルは、学習済みモデルとも単にモデルとも称される。重なり判定学習モデルは、セグメンテーションやディテクションなどによる画像認識によって、物体の重なりを検出するとともに、廃プラスチックを、容器、フィルム、または製品などの種類に分類できる。さらに、重なり判定学習モデルによって、廃プラスチック同士のそれぞれの重なり度合を演算により導出し、その結果を指示信号として、重なりを解消する手段として機能する作用部としてのマニピュレータに送信し、指示信号を受信したマニピュレータによって廃プラスチック同士の重なりを解消することができる。
【0017】
以上のように、撮像部によって撮像された搬送コンベア上の廃プラスチックの撮像データを入力パラメータとして重なり判定学習モデルに入力し、廃プラスチック同士の重なりの有無や重なり度合いを出力パラメータとして出力することにより、搬送コンベア上の廃プラスチックの重なりを検出可能となる。重なり判定学習モデルによる検出結果に基づいて、マニピュレータなどによって重なった廃プラスチック同士を散けさせていることにより、自動でプラスチックの重なりを解除することができ、省力化を図ることができるとともに、作業者によって重なりを解消する場合に比して、間違いを軽減可能となる。本発明は、以上の鋭意検討に基づいて案出されたものである。
【0018】
(プラスチック分離システム)
まず、本発明の一実施形態によるプラスチック分離システムについて説明する。図1は、本実施形態によるプラスチック分離システム1を示す概略図である。図1に示すように、プラスチック分離システム1は、制御装置10および材質判定分離装置20を備える。制御装置10と材質判定分離装置20とは、専用線またはVPN回線などのネットワークを介して接続される。なお、ネットワークは、インターネット回線網や携帯電話回線網などであっても良く、WAN(Wide Area Network)や、携帯電話などの電話通信網や、WiFiなどの無線通信網などのその他の通信網を含んでも良い。
【0019】
制御装置10は、制御部11および記憶部12を備える。制御部11は、具体的に、ハードウェアを有するCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサ、およびRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの主記憶部(いずれも図示せず)を備える。
【0020】
記憶部12は、RAMなどの揮発性メモリ、ROMなどの不揮発性メモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、およびリムーバブルメディアなどから選ばれた記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、または、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、もしくはBD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体である。また、記憶部12を、外部から装着可能なメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて構成しても良い。
【0021】
記憶部12には、制御装置10の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベースなどが記憶可能である。ここで、各種プログラムには、本実施形態による学習モデルや学習済みモデルなどのモデルに基づいた処理を実現する、情報処理プログラムも含まれる。これらの各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。また、記憶部12は、重なり判定学習モデル121を有する。なお、記憶部12は、種々のネットワークを介して通信可能な他のサーバに設けても良い。
【0022】
制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部などを制御することによって、所定の目的に合致した機能を実現できる。本実施形態においては、制御部11は、記憶部12に格納されたプログラムの実行によって、重なり判定部111の機能を実行する。具体的に例えば、制御部11は、記憶部12からプログラムである重なり判定学習モデル121を読み込むことによって、重なり判定部111の機能を実行する。また、制御部11は、記憶部12から所定のプログラムを読み込むことによって、材質判定分離装置20の各機能を制御する。
【0023】
材質判定分離手段としての材質判定分離装置20は、ローラ22aを有するコンベア22、近赤外線センサ23、気体供給部24、気体噴射部25、分離回収トレイ26a,26bを有する回収部26、撮像部27、およびマニピュレータ28を備えて構成される。材質判定分離装置20は制御装置10によって制御される。制御装置10は、材質判定分離装置20の各部の要素、すなわち、コンベア22、近赤外線センサ23、気体供給部24、撮像部27、およびマニピュレータ28を制御する。
【0024】
材質判定分離装置20には、様々な形状や種類の廃プラスチックSa,Sbが搬入される。ここで、廃プラスチックSa,Sbは破砕も裁断もされていない状態の廃プラスチックである場合が多いが、必ずしも限定されない。搬入された種々の形状や種類の廃プラスチックSa,Sbは、ローラ22aの回転に伴って、コンベア22によって搬送される。コンベア22上で搬送されるそれぞれの廃プラスチックSa,Sbは、撮像部27によって撮像される。撮像部27によって撮像された撮像データは、ネットワークを介して制御装置10に送信される。
【0025】
図2Aおよび図2Bはそれぞれ、撮像部27によって撮像された、コンベア22上で搬送される廃プラスチックSa,Sbの状態を示す上面図である。なお、図2Aは、廃プラスチックSa,Sbが散けた状態の撮像データに対して画像認識を行った例であり、図2Bは、廃プラスチックSa,Sbが重なった状態の撮像データに対して画像認識を行った例である。
【0026】
撮像部27は、例えばCCDカメラなどの撮像カメラなどから構成される。撮像部27は、図2Aに示すようなコンベア22上を撮像した撮像データを、ネットワークを介して制御装置10に送信する。制御装置10の制御部11は、撮像部27から取得した撮像データを入力パラメータとして、重なり判定部111に入力する。なお、制御部11は、撮像部27から取得した撮像データを記憶部12に格納する。
【0027】
重なり判定部111は、記憶部12に格納されたプログラムである重なり判定学習モデル121を読み込んで実行される機能である。すなわち制御部11は、撮像部27から取得した撮像データを入力パラメータとして、重なり判定学習モデル121に入力する。重なり判定部111は、取得した撮像データに含まれる廃プラスチックSa,Sbのそれぞれに対して、例えばテクスチャなどの矩形領域La,Lbを設定する。なお、図2Aにおいては、2つの廃プラスチックSa,Sbに対してそれぞれ、2つの矩形領域La,Lbを設定しているが、廃プラスチックSa,Sbに対する矩形領域La,Lbは、撮像データに含まれる廃プラスチックSa,Sbとして認識された全ての物体に対して設定される。
【0028】
また、重なり判定部111は、矩形領域La,Lbが設定された撮像データに対して、これらの矩形領域La,Lbが重なっているか否かを判定する。重なり判定部111は、矩形領域La,Lbの重なり状態を判定して、出力パラメータとして重なり度合いを出力する。図2Aに示す例において制御部11の重なり判定部111は、矩形領域La,Lbが重なっていない状態であると判定して、重なり度合いを例えば0%として出力する。一方、撮像部27によって撮像された撮像データが、例えば図2Bに示すような撮像データである場合、撮像データを取得した制御部11は、矩形領域La,Lbが重なった状態であると判定して、重なり度合いを例えば30%などと導出して出力する。
【0029】
制御部11の重なり判定部111は、取得した撮像データに基づいて導出した矩形領域La,Lbの重なり度合いを廃プラスチックSa,Sbの重なり度合いとして設定する。重なり判定部111は、重なり判定工程を実行する。
【0030】
重なり判定部111によって導出された廃プラスチックSa,Sb同士の重なり度合いが所定の重なり度合い以上であったり所定の重なり度合いより大きかったりした場合、制御部11は、作用部としてのマニピュレータ28を制御する。すなわち、制御部11は、撮像データに基づいて、重なっていると判定した廃プラスチックSa,Sbに対して、例えば矩形領域La,Lbの重なり領域に力を作用可能に構成されたマニピュレータ28を動作させる。これにより、マニピュレータ28によって作用工程が実行される。なお、所定の重なり度合いは、あらかじめ設定して記憶部12に格納しておくことが可能であり、具体的には例えば0%や10%や20%などの重なり度合いとして設定することが可能である。
【0031】
以上により、重なっていると判定された廃プラスチックSa,Sbにおける、特に重なり領域に対してマニピュレータ28を接触させることにより、廃プラスチックSa,Sb同士の重なりが解消される。なお、上述した例では2つの廃プラスチックSa,Sb同士の重なりについて説明したが、3つ以上の廃プラスチック同士の重なりにおいても同様の処理が実行される。また、撮像データは撮像部27によって連続的に撮像されて、継続して制御装置10に送信され、逐次または随時、重なり判定部111による画像認識処理による重なり判定、および必要に応じて制御部11によるマニピュレータ28の制御が実行される。
【0032】
重なりが解消された廃プラスチックSa,Sbはそれぞれ、コンベア22上を近赤外線センサ23に向かって搬送される。非接触選別機としての近赤外線センサ23は、コンベア22上の廃プラスチックに近赤外線Lを照射して反射した近赤外光を受信することによって、廃プラスチックの材質を識別する。すなわち、近赤外線センサ23によって材質判定工程が実行される。近赤外線センサ23によって検出された近赤外光のセンサ情報は、制御部11に出力される。制御部11は、入力されたセンサ情報に基づいて、気体供給部24を制御することにより、所定のタイミングで、コンベア22の搬出側において気体噴射部25から例えば空気などの気体Aを噴射するエアジェットを行う。これにより、異なる材質の廃プラスチックSa,Sbが分類されてそれぞれ、分離回収トレイ26a,26bに分離回収される。
【0033】
以上説明した一実施形態によれば、プラスチック分離システム1における制御装置10において、制御部11が重なり判定学習モデル121に基づいた処理が実行可能な重なり判定部111を有し、撮像部27によって撮像された撮像データに対して、コンベア22上の廃プラスチックSa,Sb同士の重なり度合いを重なり判定部111によって判定し、重なり判定部111が重なりを検出した時点で、制御部11がマニピュレータ28を制御して重なりを解消していることにより、廃プラスチックSa,Sbがコンベア22によって近赤外線センサ23に搬送される前に、廃プラスチック同士の重なりを低減することができる。そのため、近赤外線センサ23において対象物と非対象物とが重なっているとハロゲン光が照射されず、近赤外光の反射も不十分になるため、材質の検出が困難になるという問題を回避することが可能となる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いても良い。上述した各実施形態および各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【0035】
例えば、上述した一実施形態においては、撮像データに対する処理によって、対象物である廃プラスチックSa,Sbの存在領域を矩形領域La,Lbなどの矩形状の領域で囲むようにしているが、画像認識によって囲む領域の形状は必ずしも限定されず、廃プラスチックSa,Sbの存在領域を外縁や輪郭の領域で囲むようにすることも可能である。
【0036】
また、例えば上述した一実施形態においては、廃プラスチックSa,Sbに対して力を作用させる作用部としてマニピュレータ28を用いているが、廃プラスチックSa,Sbに対して力を作用させる作用部としてはマニピュレータ28に限定されず、エアジェットなどを採用しても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 プラスチック分離システム
10 制御装置
11 制御部
12 記憶部
20 材質判定分離装置
22 コンベア
22a ローラ
23 近赤外線センサ
24 気体供給部
25 気体噴射部
26 回収部
26a 分離回収トレイ
26b 分離回収トレイ
27 撮像部
28 マニピュレータ
111 判定部
121 判定学習モデル
A 気体
L 近赤外線
La,Lb 矩形領域
Sa,Sb 廃プラスチック
図1
図2A
図2B