(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126210
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電源用半導体集積回路および電源装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G05F1/56 320A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034443
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】高野 陽一
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB05
5H430BB09
5H430BB11
5H430CC01
5H430FF03
5H430FF04
5H430FF12
5H430FF13
5H430HH03
5H430LA13
5H430LA14
5H430LA19
(57)【要約】
【課題】バイパスコンデンサを構成するセラミックコンデンサの数を減らす。
【解決手段】電源用半導体集積回路において、外部に配置され前記電源入力端子に一方の端子が接続された第1のコンデンサの他方の端子が接続される第1の外部端子と、外部に配置され前記電源入力端子に一方の端子が接続された第2のコンデンサの他方の端子が接続される第2の外部端子と、前記第1の外部端子の電圧を検知する第1の検知部と、前記第2の外部端子の電圧を検知する第2の検知部と、前記第1の外部端子と接地端子との間に設けられた第1の切替え手段と、前記第2の外部端子と接地端子との間に設けられた第2の切替え手段とを設け、第1の切替え手段は、第1の検知部からの信号を受けて第1のコンデンサの他方の端子を接地電位から切り離し、第2の切替え手段は、第2の検知部からの信号を受けて第2のコンデンサの他方の端子を接地電位から切り離すように構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの電源電圧が入力される電源入力端子と、
電源を出力するための電源出力端子と、
接地電位が印加される接地端子と、を備えた電源用半導体集積回路であって、
外部に配置され前記電源入力端子に一方の端子が接続された第1のコンデンサの他方の端子が接続される第1の外部端子と、
外部に配置され前記電源入力端子に一方の端子が接続された第2のコンデンサの他方の端子が接続される第2の外部端子と、
前記第1の外部端子の電圧を検知する第1の検知部と、
前記第2の外部端子の電圧を検知する第2の検知部と、
前記第1の外部端子と前記接地端子との間に設けられた第1の切替え手段と、
前記第2の外部端子と前記接地端子との間に設けられた第2の切替え手段と、
を有し、
前記第1の切替え手段は、前記第1の検知部からの信号を受けて前記第1のコンデンサの前記他方の端子を接地電位から切り離し、
前記第2の切替え手段は、前記第2の検知部からの信号を受けて前記第2のコンデンサの前記他方の端子を接地電位から切り離すことを特徴とする電源用半導体集積回路。
【請求項2】
第3の外部端子と、第4の外部端子と、をさらに有し、
前記第1の検知部は、前記第1のコンデンサに異常が発生ことを検知したときに、前記第3の外部端子に異常信号を出力し、
前記第2の検知部は、前記第2のコンデンサに異常が発生ことを検知したときに、前記第4の外部端子に異常信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の電源用半導体集積回路。
【請求項3】
前記電源入力端子と前記電源出力端子との間に接続されたトランジスタと、
前記トランジスタを制御する制御回路と、
を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の電源用半導体集積回路。
【請求項4】
直流電源からの電源電圧が入力される電源入力端子と、
電源を出力するための電源出力端子と、
接地電位が印加される接地端子と、
外部に配置され前記電源入力端子に一方の端子が接続された第1のコンデンサの他方の端子が接続される第1の外部端子と、
外部に配置され前記電源入力端子に一方の端子が接続された第2のコンデンサの他方の端子が接続される第2の外部端子と、
前記第1の外部端子の電圧を検知する第1の検知部と、
前記第2の外部端子の電圧を検知する第2の検知部と、
前記第1の検知部からの信号を出力する第5の外部端子と、
前記第2の検知部からの信号を出力する第6の外部端子と、
を有する電源用半導体集積回路を備えた第1の電源用半導体集積回路であって、
外部に配置され前記第1の外部端子と接地点との間に設けられた第1の切替え手段と、
外部に配置され前記第2の外部端子と接地点との間に設けられた第2の切替え手段と、
を有し、
前記第1の切替え手段は、前記第5の外部端子から出力される前記第1の検知部の信号を受けて前記第1のコンデンサの前記他方の端子を接地点から切り離し、
前記第2の切替え手段は、前記第6の外部端子から出力される前記第2の検知部の信号を受けて前記第2のコンデンサの前記他方の端子を接地点から切り離すことを特徴とする電源用半導体集積回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電源用半導体集積回路と、
外部に配置され前記第1の外部端子及び前記第2の外部端子の電圧を監視する電圧監視回路と、
を備えていることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の電源用半導体集積回路と、前記電源入力端子に接続されたバッテリーと、を備えていることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
前記電源出力端子と前記第1の外部端子と間に接続された第3のコンデンサ、及び、前記電源出力端子と前記第2の外部端子と間に接続された第4のコンデンサと
を備えていることを特徴とする請求項6に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を供給する電源用半導体集積回路(電源用IC)および電源装置に関し、例えばレギュレータICやハイサイドスイッチICおよびそれを備えた電源装置に利用することが有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーからの直流電圧を変換して出力するシリーズレギュレータのような電源装置を構成するレギュレータICや電源から負荷へ電源電圧を供給する電源ライン上に設けられ、負荷に電源電圧を供給したり遮断したりするための素子(デバイス)としてハイサイドスイッチICがある。
車載バッテリーに接続される電源用ICには、電源供給ラインのノイズ低減、ICの動作の安定化、電源変動緩和のためにバイパスコンデンサが必須である。
【0003】
車載バッテリーは通常12~14Vであるが、ワースト条件を考えると、バイパスコンデンサは50V程度の耐圧が必要になる場合がある。また、従来、車載用の電源装置のバイパスコンデンサには、一般に、面実装のセラミックコンデンサが使用されている。この面実装のセラミックコンデンサは、高耐圧・高容量になるほどコストやサイズが増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コストを抑えつつバイパスコンデンサの耐圧を補償するとともにショート対策のために、2個のセラミックコンデンサを直列に接続することが考えられる。コンデンサが2個同時にショートする可能性は非常に低いためである。特許文献1には、2個のセラミックコンデンサを直列に接続した電源装置が
図1に開示されている。
しかし、コンデンサを直列に接続した場合、1個のコンデンサの容量値の2倍の容量値が必要になる。また、1列の直列接続の場合、コンデンサの接続が外れるオープン故障に対応することができない。そこで、
図7に示す電源装置のように、2個直列のコンデンサを並列に設けることを考えた(
図7のA)。しかし、直列のコンデンサを2列設けると、合計で4個のコンデンサが必要になるため、コストや部品点数、実装面積が増大するという課題がある。また、電源装置の信頼性向上のため、直列に接続するバイパスコンデンサを増やすとこの問題は大きくなる。
【0006】
なお、特許文献1に記載されている発明は、セラミックコンデンサが短絡したときに流れる過電流を防止することに向けてなされた発明であり、セラミックコンデンサが短絡した場合でも電源装置の機能を維持できる点は開示されていない。
【0007】
この発明は上記のような背景のもとになされたものでその目的とするところは、バイパスコンデンサを構成するセラミックコンデンサの数を減らすことができる電源用半導体集積回路および電源装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、バイパスコンデンサを構成する並列セラミックコンデンサのいずれかの接続が外れオープン、もしくは、短絡などの異常が発生したとしても、電源装置の機能が維持できる電源用半導体集積回路および電源装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、バイパスコンデンサに異常が発生した場合に検出することができる電源用半導体集積回路および電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、
直流電源からの電源電圧が入力される電源入力端子と、
電源を出力するための電源出力端子と、
接地電位が印加される接地端子と、を備えた電源用半導体集積回路において、
外部に配置され前記電源入力端子に一方の端子が接続された第1のコンデンサの他方の端子が接続される第1の外部端子と、
外部に配置され前記電源入力端子に一方の端子が接続された第2のコンデンサの他方の端子が接続される第2の外部端子と、
前記第1の外部端子の電圧を検知する第1の検知部と、
前記第2の外部端子の電圧を検知する第2の検知部と、
前記第1の外部端子と前記接地端子との間に設けられた第1の切替え手段と、
前記第2の外部端子と前記接地端子との間に設けられた第2の切替え手段と、
を有し、
前記第1の切替え手段は、前記第1の検知部からの信号を受けて前記第1のコンデンサの前記他方の端子を接地電位から切り離し、
前記第2の切替え手段は、前記第2の検知部からの信号を受けて前記第2のコンデンサの前記他方の端子を接地電位から切り離すように構成したものである。
【0009】
上記のような構成を有する電源用半導体集積回路によれば、第1の外部端子と第2の外部端子に接続された2個のコンデンサのいずれか一方にショートなどの異常があった場合に、第1または第2の切替え手段が動作して当該異常があったコンデンサを接地電位から切り離す。そのため、2個直列のコンデンサを2列設ける必要がないので、バイパスコンデンサを構成するセラミックコンデンサの数を減らすことができる。
また、並列に設けられ2個のコンデンサそれぞれに、システムが要求する規定容量値を満たすものを使用することで、2個のコンデンサのいずれかの一方のコンデンサがショートまたはオープンなどの異常があったとしても、バイパスコンデンサとして正常に機能することができる。
さらに、第1と第2のコンデンサがそれぞれ接続される外部端子の電圧を、マイコンなどの外部装置によって監視することで、コンデンサに異常が発生した場合にそれを検出することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電源用半導体集積回路によれば、並列接続されたバイパスコンデンサのうち異常のあったバイパスコンデンサを電気的に切り離すことができる。その結果、並列接続されたバイパスコンデンサが有する直列接続のコンデンサの数を減らすことができる。また、バイパスコンデンサを構成する並列セラミックコンデンサのいずれかの接続が外れオープンになったとしても、バイパスコンデンサの機能が損なわれることがないようにすることができる。さらに、バイパスコンデンサに異常が発生した場合に異常を検出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用した電源用ICの一実施形態を有する電源装置の一例を示す回路構成図である。
【
図2】実施形態の電源用ICのより具体的な回路構成の一例を示す回路構成図である。
【
図3】実施形態の電源用ICの動作タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【
図4】実施形態の電源用ICの応用例(利用形態)の一例を示すシステム構成図である。
【
図5】実施形態の電源用ICの応用例(利用形態)の他の例を示すシステム構成図である。
【
図6】実施形態の電源用ICの変形例を有する電源装置の一例を示す回路構成図である。
【
図7】従来の電源用ICを使用した電源装置の構成の一例を示す回路構成図である。
【
図8】実施形態の電源用ICのさらなる変形例を有する電源装置の一例を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した電源用ICを有する電源装置1の一実施形態を示す。なお、
図1において、一点鎖線で囲まれた部分は、単結晶シリコンのような半導体チップ上に半導体集積回路(IC)10として形成され、該IC10の電源出力端子OUTにコンデンサC3が接続されている。また、入力端子INに一方の端子が接続されたバイパスコンデンサとして2個のセラミックコンデンサC1,C2が並列に接続されている。コンデンサC1,C2は、それぞれが単独でバイパスコンデンサとして機能するために必要とされる容量値を有するものが使用される。なお、電源用ICの具体的な例としては、レギュレータICやハイサイドスイッチICがある。
【0013】
本実施形態の電源用IC10においては、
図1に示すように、直流電圧VDDが印加される電源入力端子INと負荷となる各種デバイスが接続される電源出力端子OUTとの間に、バッテリー20から供給される直流電圧VDDを変換して出力する電源回路またはバッテリー20の電源電圧を負荷へ供給したり遮断したりするスイッチ回路のような主機能回路11を備える。電源回路またはスイッチ回路のいずれの場合にも、主機能回路11は電源入力端子INと電源出力端子OUTとの間に接続されたNチャンネルMOSトランジスタ、または、PチャンネルMOSトランジスタのような出力用のトランジスタ素子を備える。
【0014】
主機能回路11が電源回路の場合、主機能回路11は、例えば上記トランジスタ素子と、出力電圧を分圧したフィードバック電圧と所定の参照電圧との電位差に応じて出力電圧Voutが所定の電圧となるように上記トランジスタ素子を制御する誤差アンプなどから構成される。また、主機能回路11がスイッチ回路の場合、主機能回路11は、上記トランジスタ素子(スイッチ)と、外部からのオン、オフ制御信号(CE)を入力とし上記トランジスタ素子による電源の供給/遮断を制御する信号を生成するロジック回路や増幅回路などから構成される。
【0015】
本実施形態の電源用IC10には、外部のマイコン(CPU)などからの信号が入力されるチップ制御用の端子CEが設けられており、主機能回路11が電源回路またはスイッチ回路のいずれの場合にも、端子CEがローレベルにされると、当該IC10は動作を停止するように構成される。
また、本実施形態の電源用IC10においては、電源入力端子INに一方の端子が接続されたセラミックコンデンサC1,C2の他方の端子がそれぞれ接続される2個の外部端子C_GND1,C_GND2と、該外部端子C_GND1,C_GND2が設けられている。また、端子C_GND1,C_GND2とICの接地端子GNDとの間にそれぞれ接続されたスイッチ用のNチャンネルMOSトランジスタQ1,Q2(オン抵抗が数mΩ~数100mΩ)が設けられている。
【0016】
さらに、電源用IC10には、上記外部端子C_GND1,C_GND2の電圧と所定の比較電圧Vaとを比較するコンパレータCMP1,CMP2と、上記チップ制御用端子CEの信号を遅延する遅延回路12と、該遅延回路12の出力信号と上記コンパレータCMP1,CMP2の出力信号とを入力とするNANDゲートG1,G2が設けられている。そして、NANDゲートG1,G2の出力信号が、上記スイッチ用MOSトランジスタQ1,Q2のゲート端子にそれぞれ入力されるように構成されている。コンパレータCMP1の一方の入力端子には、外部端子C_GND1が接続され、他方の入力端子には比較電圧Vaが印加されている。コンパレータCMP2の一方の入力端子には、外部端子C_GND2が接続され、他方の入力端子には比較電圧Vaが印加されている。
【0017】
また、NANDゲートG1,G2の各入力端子には、プルダウン抵抗Rd1~Rd3が接続されている。遅延回路12を設けているのは、仮にコンデンサC1,C2にオープンやショートなどの異常があったとしても、電源投入直後はトランジスタQ1,Q2をオン状態にするためである。なお、電源投入直後は、プルダウン抵抗Rd1~Rd3によって、NANDゲートG1,G2の入力信号の少なくとも一方がローレベルにされることで、NANDゲートG1,G2の出力がハイレベルとなり、トランジスタQ1,Q2がオン状態にされる。
【0018】
さらに、電源用IC10は、入力端子INにバッテリー20からの直流電圧VDDが印加された状態で、チップ制御用端子CEにハイレベルの信号が入力されている定常動作状態においては、コンパレータCMP1,CMP2の出力がローレベルである。そのため、NANDゲートG1,G2の出力がハイレベルでトランジスタQ1,Q2がオンとなって、コンデンサC1,C2が正常であれば、外部端子C_GND1,C_GND2が接地電位となり、トランジスタQ1,Q2がオン状態を維持する。
【0019】
上記コンデンサC1,C2のいずれか一方がショートした場合、ショートした方の外部端子C_GND1またはC_GND2の電位が上昇する。そして、C_GND1またはC_GND2の電位がコンパレータCMP1またはCMP2のしきい値(比較電圧Va)を超えると、CMP1またはCMP2の出力がハイレベルとなる。
これにより、NANDゲートG1またはG2の出力がローレベルとなり、ショートした方のコンデンサに接続されているトランジスタQ1またはトランジスタQ2がオフされ、ショートしたコンデンサが接地電位から切り離される。ただし、コンデンサC1,C2は、それぞれが単独でバイパスコンデンサとして機能するために必要とされる容量値を有しているので、いずれか一方のコンデンサが切り離されたとしても、電源装置は正常に動作することができる。コンデンサC1,C2のいずれか一方がオープンになった場合は他方のコンデンサが正常に機能しているため、電源装置は正常動作を維持することができる。
【0020】
次に、
図2を用いて遅延回路12の具体的な回路例を説明する。なお、
図2においては、
図1におけるコンパレータCMP2とNANDゲートG2の図示を省略している。
図2において、MOSトランジスタQ2のゲート端子には、図示を省略したNANDゲートG2の出力信号が入力される。
図2に示すように、遅延回路12は、ソース端子が入力端子INに接続されゲート端子が共通接続されることでカレントミラー回路を構成する一対のPチャンネルMOSトランジスタQ3,Q4と、入力端子INと接地端子GNDとの間に上記トランジスタQ3と直列に接続された定電流源CC1およびNチャンネルMOSトランジスタQ5を備える。このトランジスタQ5のゲート端子には制御端子CEの入力信号が印加されている。
【0021】
また、上記遅延回路12は、上記トランジスタQ4のドレイン端子と接地点との間に接続されたNチャンネルMOSトランジスタQ6を備え、該トランジスタQ6のゲート端子には制御端子CEの入力信号をインバータINV1で反転した信号が印加されている。さらに、上記トランジスタQ4のドレイン端子は電源用IC10に設けられた外部端子CDに接続されているとともに、外部端子CDと接地点との間には外付けのコンデンサCdが接続されている。また、遅延回路12は、上記トランジスタQ4のドレイン電圧が非反転入力端子に入力され、反転入力端子に比較電圧Vbが入力されたコンパレータCMP3が設けられ、コンデンサCdとコンパレータCMP3とでアナログタイマ回路を構成している。なお、コンパレータCMP3の非反転入力端子と接地点との間には、プルダウン抵抗Rd4が接続されている。
なお、図示を省略したコンパレータCMP2とNANDゲートG2の回路例は、コンパレータCMP1とNANDゲートG1と同じ回路図になる。
【0022】
次に、遅延回路12の機能と動作を
図3の動作タイミングチャートを用いて説明する。
タイミングt1で電源用IC10の入力端子INにバッテリー20からの直流電圧VDDが入力されるとチップ内部がイニシャライズされる。そして、タイミングt2でチップ制御用端子CEにハイレベルの信号が入力されると、トランジスタQ5がオン状態にされてカレントミラー回路(Q3,Q4)が活性化されるとともにトランジスタQ6がオフ状態にされる。
すると、カレントミラー回路を構成するトランジスタQ4に流れる電流によって外部端子CDに接続されているコンデンサCdが充電され、外部端子CDすなわちトランジスタQ4のドレイン端子の電圧が次第に上昇する。そして、外部端子CDの電圧がコンパレータCMP3のしきい値(比較電圧Vb)に達すると、コンパレータCMP3の出力がハイレベルに変化し(タイミングt3)、電源用IC10は定常動作を開始する。
【0023】
その後、タイミングt4で、コンデンサC1がショートしたとすると、外部端子C_GND1の電位が急に上昇する。すると、コンパレータCMP1の出力がハイレベルに変化し、NANDゲートG1の出力がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、スイッチ用のトランジスタQ1がオフにされ、ショートしたコンデンサC1を接地電位から切り離す。そのため、それ以降、コンデンサC1は、入力端子INに設けられたバイパスコンデンサとして機能しなくなる。一方、コンデンサC2は正常に機能しているため、電源装置1としては正常に動作し続ける。
他方のコンデンサC2がショートした場合についてもコンデンサC1がショートした場合と同様である。コンデンサC2がショートしたとすると、NANDゲートG1の出力がローレベルに変化して、スイッチ用のトランジスタQ2がオフにされ、コンデンサC2が接地電位から切り離される。
【0024】
上述したように、本実施形態の電源用IC10においては、それぞれが単独でバイパスコンデンサとして機能するために必要とされる容量値を有する2個のセラミックコンデンサC1,C2がバイパスコンデンサとして設けられている。そのため、コンデンサC1またはコンデンサC2のいずれかがショートした場合に、ショートしたコンデンサが切り離されたとしても、他方のコンデンサがバイパスコンデンサとして正常に動作することができる。
また、コンデンサC1,C2と直列に接続されたスイッチ(Q1,Q2)を設けて、このスイッチをオフすることでショートしたコンデンサを切り離す構成である。そのため、
図7のAに示すように、バイパスコンデンサの耐圧補償対策やショート対策及びオープン対策として、4個のコンデンサを接続する必要がなくなり、コストや部品点数、実装面積の増大を回避することができる。
また、一例として、
図7の従来例では直列に接続されるバイパスコンデンサの数を2個としているが3個以上の場合も考えられる。すなわち、本発明の直列に接続されるバイパスコンデンサの数は1個に限られず、直列に接続されるバイパスコンデンサの数が2個以上も含まれる。
【0025】
(応用例)
次に、上記実施形態の電源用IC10の応用例について説明する。
図4には上記実施形態の電源用IC10を有する電源装置2の第1応用例(第1利用形態)が示されている。
この応用例は、
図4に示すように、コンデンサC1,C2の接地側の端子が接続されている外部端子C_GND1,C_GND2の電圧を、マイコンへ入力することによって、コンデンサC1またはC2がショートしているか監視するようにしたものである。このようにシステムを構成することで、コンデンサC1,C2にショートなどの異常が発生したことを検知することができるとともに、異常が発生した場合に、コンデンサC1またはC2のいずれで異常が発生したか検出することができる。
コンデンサC1とコンデンサC2が同時に故障する可能性は非常に低い。そのため、マイコンが異常を検知した後に、故障したコンデンサを交換することができる。その結果、電源装置が故障する可能性を限りなく低くすることができる。
【0026】
図5には上記実施形態の電源用IC10を有する電源装置3の第2応用例(第2利用形態)が示されている。
図5に示す応用例は、上記実施形態の電源用IC10の出力側にバイパスコンデンサとして、一方の端子がそれぞれ電源用IC10の出力側に接続され、他方の端子が電源出力端子OUTに接続された並列接続のコンデンサC3とC4を設け、コンデンサC3とC4の他方の端子を、入力側のコンデンサC1,C2と共通の外部端子C_GND1,C_GND2にそれぞれ接続するように構成したものである。このような実施形態は、電源用IC10がハイサイドスイッチICである場合に特に有効である。
【0027】
上記のような構成によれば、出力側に設けられるバイパスコンデンサを構成するコンデンサC3またはC4のいずれか一方がショートした場合に、ショートした側の外部端子(C_GND1またはC_GND2)に接続されているスイッチ用トランジスタQ1またはQ2をオフすることができる。その結果、ショートが発生したコンデンサを接地電位から切り離すことができ、直流電源20から電源/スイッチ11を介して接地電位、または直流電源20から接地電位へ短絡電流が流れるのを防止することができる。
従って、
図7のAに示す出入力側のバイパスコンデンサと同様、耐圧補償対策やショート対策のために2個直列のコンデンサを2列設ける場合に比べて使用素子数を減らすことができる。
また、コンデンサC3,C4として、それぞれが単独でバイパスコンデンサとして機能するために必要とされる容量値を有するコンデンサを使用することで、コンデンサC3またはC4のいずれか一方がオープン、または、ショートした場合にもバイパスコンデンサとして有効に機能することができる。
【0028】
(変形例)
次に、上記実施形態の電源用IC10の変形例について説明する。
図6には上記実施形態の電源用IC10の変形例を有する電源装置4における回路構成が示されている。
図6に示す変形例の電源用IC10は、エラーフラグ端子EF1,EF2を設けて、コンデンサC1またはC2のいずれかがショートなどの異常が発生した場合に、マイコン等の外部装置へ異常検出信号を出力するように構成したものである。
【0029】
具体的には、
図6に示すように、エラーフラグ端子EF1,EF2にドレイン端子が接続されたNチャンネルMOSトランジスタQ7,Q8を設ける。さらに、スイッチ用のトランジスタQ1,Q2のオン、オフ制御信号を生成するNANDゲートG1,G2の出力信号をインバータINV2,INV3によって反転した信号を、これらのトランジスタQ7,Q8のゲート端子に入力するように構成されている。
また、エラーフラグ端子EF1,EF2に接続される外部の信号線には、プルアップ抵抗Rp1,Rp2がそれぞれ接続されている。トランジスタQ7,Q8がオンされるとプルアップ抵抗Rp1,Rp2に電流が流れることでローレベルの信号を、またトランジスタQ7,Q8がオフされるとハイレベルの信号を外部装置へ伝達するように構成される。コンデンサC1の異常出力信号がエラーフラグ端子EF1であり、コンデンサC2の異常出力信号がエラーフラグ端子EF2である。
【0030】
コンデンサC1がショートした場合は、外部端子C_GND1の電圧がVaよりも高くなり、コンパレータCMP1がハイレベルの信号を出す。遅延回路からのハイレベルの信号を待ち、NANDゲートG1がローレベルを出力する。これによりトランジスタQ7がオンされ、電源用IC10はエラーフラグ端子EF1からローレベルの信号を外部に出力する。
コンデンサC2がショートした場合は、外部端子C_GND2の電圧がVaよりも高くなり、コンパレータCMP2がハイレベルの信号を出す。遅延回路からのハイレベルの信号を待ち、NANDゲートG2がローレベルを出力する。これによりトランジスタQ8がオンされ、電源用IC10はエラーフラグ端子EF2からローレベルの信号を外部に出力する。
【0031】
なお、
図6に示すように、2個のエラーフラグ端子EF1,EF2を設ける代わりに、例えば1個のエラーフラグ端子と該端子にドレイン端子が接続された1個のMOSトランジスタを設ける。さらに、インバータINV2,INV3の出力信号を入力とするORゲートを設け、その出力信号をエラーフラグ端子にドレイン端子が接続された上記MOSトランジスタのゲート端子に入力するように構成しても良い。
また、本変形例の電源用IC10は、
図5に示す応用例と同様に、出力側のバイパスコンデンサであるコンデンサC3,C4も外部端子C_GND1,C_GND2にそれぞれ接続する利用形態が可能である。
【0032】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態においては、シリーズレギュレータのような電源回路を備えた電源用ICまたはハイサイドスイッチとして機能する電源用ICに適用した場合を説明したが、電源回路はシリーズレギュレータに限定されず、スイッチング方式のDC-DCコンバータやLDO(Low Drop Out))のようなリニアレギュレータであっても良い。
【0033】
また、主機能回路11に設けられる入力-出力端子間のトランジスタは、オン抵抗を下げるためオンシリコンの素子でなくディスクリートのトランジスタを使用してもよい。
さらに、スイッチ用のトランジスタQ1,Q2も、オン抵抗を下げるためオンシリコンの素子でなくディスクリートのトランジスタQD1,QD2を使用してもよい。また、
図8に示すように、電源用IC10に、NANDゲートG1,G2の出力信号を出力する端子D1、D2を設けてもよい。
ここで、トランジスタQD1を外部端子C_GND1と接地点との間に設け、トランジスタQD1のゲート電極に出力端子D1を接続する。また、トランジスタQD2を外部端子C_GND2と接地点との間に設け、トランジスタQD2のゲート電極に出力端子D2を接続する。そして、電源用IC10およびディスクリートのトランジスタQD1,QD2を、1つのパッケージ内に封入した電源用IC10Aとして構成するようにしても良い。その結果、本実施例に係る電源用ICを購入した顧客側でのトランジスタの実装を不要とすることができる。
【0034】
また、前記実施形態(
図1)や変形例(
図6)の電源用IC10に、過電流検出回路やカレントリミット回路、サーマルシャットダウン回路のような異常を検出する機能回路を設けるようにしても良い。そして、その場合、それらの異常検出信号を出力する端子を設けても良いし、それらの異常検出信号とNANDゲートG1,G2の出力信号との論理和をとって、
図6に示す外部端子EF1,EF2より出力するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0035】
10…電源用IC、11…主機能回路、12…遅延回路、20…直流電源、C1,C2…入力側のバイパスコンデンサとして用いられるコンデンサ、C3,C4…出力側のバイパスコンデンサとして用いられるコンデンサ、Q1,Q2…スイッチ用トランジスタ(切替え手段)、CE…制御用の外部端子、C_GND1,C_GND2…コンデンサ接続用の外部端子