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特開2024-126214電力回生ブレーキの健全性判断システムおよび健全性判断方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126214
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電力回生ブレーキの健全性判断システムおよび健全性判断方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20240912BHJP
   B60L 7/12 20060101ALI20240912BHJP
   G01M 17/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B60L3/00 N
B60L7/12 A
G01M17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034452
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮内 努
(72)【発明者】
【氏名】工藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】北井 瑳佳
(72)【発明者】
【氏名】小池 潤
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125AC02
5H125CB02
5H125EE02
5H125EE42
5H125EE44
5H125EE51
5H125EE52
5H125EE57
(57)【要約】
【課題】自列車の情報のみを用いて、電圧上昇による回生絞り込み、空転/滑走による電力回生ブレーキ力の絞り込み、ブレーキ指令発生直後の過渡応答などを考慮して健全性を判断する。
【解決手段】対象とする列車の電力回生ブレーキの健全性判断システムとして、列車の、運転指令、列車速度、空転/滑走、モータ電流、架線電流および乗車率の少なくとも一つの情報から、当該列車の電力回生ブレーキの健全性判断を実施するか否かを判定して判断可否信号を出力する健全性判断実施判定部と、運転指令と列車速度と乗車率とから列車の電力回生ブレーキ特性を基にして電力回生ブレーキ力基準値を算出し、電力回生ブレーキ力基準値と列車の電圧とから電力回生ブレーキ絞り込み量を推定し、電力回生ブレーキ力基準値と電力回生ブレーキ絞り込み量と列車の電力回生ブレーキ力と判断可否信号とに基づいて電力回生ブレーキの異常有無を判定する健全性判定部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする列車の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、
前記列車の、運転指令、列車速度、空転/滑走、モータ電流、架線電流および乗車率の少なくとも一つの情報から、当該列車の電力回生ブレーキの健全性判断を実施するか否かを判定して判断可否信号を出力する健全性判断実施判定部と、
前記運転指令と前記列車速度と前記乗車率とから前記列車の電力回生ブレーキ特性を基にして電力回生ブレーキ力基準値を算出し、前記電力回生ブレーキ力基準値と前記列車の電圧とから電力回生ブレーキ絞り込み量を推定し、前記電力回生ブレーキ力基準値と前記電力回生ブレーキ絞り込み量と前記列車の電力回生ブレーキ力と前記判断可否信号とに基づいて電力回生ブレーキの異常有無を判定する健全性判定部と
を備える電力回生ブレーキの健全性判断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、
前記健全性判定部は、前記電力回生ブレーキ力基準値と前記電力回生ブレーキ絞り込み量との差分である推定電力回生ブレーキ力と前記列車の時々刻々の電力回生ブレーキ力との差分値を、基準判定値と比較して、前記電力回生ブレーキの異常有無を判定する
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、
前記健全性判断実施判定部は、前記運転指令が制動でかつ所定時間以上変動することがない場合に、前記判断可否信号を判断可とする
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断システム。
【請求項4】
請求項2に記載の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、
前記健全性判断実施判定部は、前記列車速度が所定の閾値以上の場合に、前記判断可否信号を判断可とする
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断システム。
【請求項5】
請求項2に記載の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、
前記健全性判断実施判定部は、前記列車の空転/滑走が発生した場合に、前記判断可否信号を判断否とする
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断システム。
【請求項6】
請求項5に記載の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、
前記健全性判断実施判定部は、前記運転指令、前記乗車率、前記列車速度および前記列車のモータ電流特性から前記列車のモータ電流基準値を算出し、前記空転/滑走の発生を前記モータ電流基準値と前記列車のモータ電流との差分値に基づいて検知する
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断システム。
【請求項7】
請求項5に記載の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、
前記健全性判断実施判定部は、前記運転指令、前記乗車率、前記列車速度および前記列車の機器の効率から前記列車に対する架線電流基準値を算出し、前記空転/滑走の発生を前記架線電流基準値と前記列車に流れる架線電流との差分値に基づいて検知する
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断システム。
【請求項8】
請求項2に記載の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、
前記健全性判断実施判定部は、前記列車が走行中の乗車率が所定の閾値を超えた場合に、前記判断可否信号を判断否とする
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断システム。
【請求項9】
対象とする列車の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、
前記列車の、運転指令、列車速度、空転/滑走、モータ電流、架線電流および乗車率の少なくとも一つの情報から、前記列車の電力回生ブレーキ力の健全性判断を実施するか否かを判定して判断可否信号を出力する健全性判断実施判定部と、
前記列車の、前記運転指令、前記列車速度、前記乗車率、電圧、前記電力回生ブレーキ力および前記判断可否信号それぞれの履歴データを基にしたクラスタ処理で得られるクラスタ空間を用いて、電力回生ブレーキの異常有無を判定する健全性判定部と
を備える電力回生ブレーキの健全性判断システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、
前記健全性判定部は、前記電力回生ブレーキの異常の判定回数が数回繰り返された場合に、異常として検知する
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断システム。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、
定期的な期間毎に、前記電力回生ブレーキの全判定回数に対する前記電力回生ブレーキの異常の判定回数の割合を表示出力する機能を備える
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断システム。
【請求項12】
対象とする列車の電力回生ブレーキの健全性判断方法であって、
前記列車の、運転指令、列車速度、空転/滑走、モータ電流、架線電流および乗車率の少なくとも一つの情報から、当該列車の電力回生ブレーキの健全性判断を実施するか否かを判定して判断可否信号を出力し、
前記運転指令と前記列車速度と前記乗車率とから前記列車の電力回生ブレーキ特性を基にして電力回生ブレーキ力基準値を算出し、
前記電力回生ブレーキ力基準値と前記列車の電圧とから電力回生ブレーキ絞り込み量を推定し、
前記電力回生ブレーキ力基準値、前記電力回生ブレーキ絞り込み量、前記列車の電力回生ブレーキ力および前記判断可否信号に基づいて、電力回生ブレーキの異常有無を判定する
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電力回生ブレーキの健全性判断方法であって、
前記電力回生ブレーキ力基準値と前記電力回生ブレーキ絞り込み量との差分である推定電力回生ブレーキ力と前記列車の時々刻々の電力回生ブレーキ力との差分値を、基準判定値と比較して、前記電力回生ブレーキの異常有無を判定する
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の電力回生ブレーキの健全性判断方法であって、
前記運転指令が制動でかつ所定時間以上変更されることがない場合に、前記判断可否信号を判断可とする
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断方法。
【請求項15】
請求項12または13に記載の電力回生ブレーキの健全性判断方法であって、
前記列車の空転/滑走が発生した場合に、前記判断可否信号を判断否とする
ことを特徴とする電力回生ブレーキの健全性判断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用電力回生ブレーキの健全性判断システムおよび健全性判断方法に関する
【背景技術】
【0002】
鉄道車両における保守作業の効率化・省力化の観点から、車上機器から取得されるデータを活用した、故障予兆/異常診断技術の開発が求められている。特に、鉄道車両の電力回生ブレーキは、速度0の状態ではブレーキ力が発生しないため、停車中の検査は困難であることから、この診断方法の開発は重要である。この方法の1つとして、自車も含む同一路線を走行する車両の走行中データを用いて電力回生ブレーキの異常を判断するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-147786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の手法は、同一路線を走行する他車両の情報(電圧、電流、位置および速度)を基に、当該車両の電力回生ブレーキの絞り込み量を推定し、推定した絞り込み量と実際の電力回生ブレーキ量との和から、本来出力されるべき電力回生ブレーキ力を引いたものが、所定の範囲に入っているかどうかで電力回生ブレーキの異常を判断するものである。
【0005】
しかしながら、自車両以外の車両も電力回生ブレーキを使用している場合には、他の電力回生車両の影響もあるため、絞り込み量がどれだけあるのかを精度良く推定することが困難である。その結果、異常判断において誤判断をする恐れがある。また、空転/滑走が発生している場合にも、電力回生ブレーキ力が変動していることから、正しい判断ができない恐れもある。
【0006】
そこで、本発明では、電力回生ブレーキ力の健全性を判断するために、自列車の情報のみを用いて、電圧上昇による電力回生ブレーキ力の絞り込みや、空転/滑走による電力回生ブレーキ力の絞り込み、ブレーキ指令が発生した直後の過渡応答などを判断し、これらを考慮して健全性を判断する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の電力回生ブレーキの健全性判断システムの一つは、対象とする列車の、運転指令、列車速度、空転/滑走、モータ電流、架線電流および乗車率の少なくとも一つの情報から、当該列車の電力回生ブレーキの健全性判断を実施するか否かを判定して判断可否信号を出力する健全性判断実施判定部と、運転指令と列車速度と乗車率とから列車の電力回生ブレーキ特性を基にして電力回生ブレーキ力基準値を算出し、電力回生ブレーキ力基準値と列車の電圧とから電力回生ブレーキ絞り込み量を推定し、電力回生ブレーキ力基準値と電力回生ブレーキ絞り込み量と列車の電力回生ブレーキ力と判断可否信号とに基づいて電力回生ブレーキの異常有無を判定する健全性判定部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自列車の走行中のデータのみを用いることによって、電力回生ブレーキ力の健全性を判断することが可能となる。また、空転/滑走やブレーキ指令の変動も考慮した判断が可能となり、精度良い電力回生ブレーキ力の健全性を判断することが可能となる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の、発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
図2】実施例1に係る電力回生ブレーキ力基準値算出部の構成を示す図である。
図3】実施例1に係る健全性判断実施判定処理のフローチャートの一例を示す図である。
図4】電力回生ブレーキ力の絞り込み特性の一例を示す図である。
図5】実施例1に係る電力回生ブレーキ力健全性判定処理のフローチャートの一例を示す図である。
図6】横軸を日時にして縦軸を電力回生ブレーキ力の異常度として示す図である。
図7】本発明の実施例2に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
図8】実施例2に係る電力回生ブレーキ力基準値算出部の構成を示す図である。
図9】実施例2に係る健全性判断実施判定処理のフローチャートの一例を示す図である。
図10】本発明の実施例3に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
図11】実施例3に係る電力回生ブレーキ力基準値算出部の構成を示す図である。
図12】実施例3に係る健全性判断実施判定処理のフローチャートの一例を示す図である。
図13】本発明の実施例4に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
図14】実施例4に係る電力回生ブレーキ力基準値算出部の構成を示す図である。
図15】実施例4に係る健全性判断実施判定に用いるモータ電流特性のグラフの一例を示す図である。
図16】本発明の実施例5に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
図17】実施例5に係る電力回生ブレーキ力基準値算出部の構成を示す図である。
図18】実施例5に係る健全性判断実施判定処理のフローチャートの一例を示す図である。
図19】本発明の実施例6に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
図20】実施例6に係る電力回生ブレーキ力基準値算出部の構成を示す図である。
図21】実施例6に係る健全性判断実施判定処理のフローチャートの一例を示す図である。
図22】本発明の実施例7に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
図23】実施例7に係る電力回生ブレーキ健全性判定部の構成を示す図である。
図24】実施例7に係るクラスタリング処理部の処理結果から得られるクラスタ空間を示す図である。
図25】クラスタ空間を用いた健全性判断の正常/異常の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態として実施例1から7について説明する。なお、これら各実施例により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一の構成部分には同一の符号を付して示している。
【実施例0011】
図1は、本発明の実施例1に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システム104の構成を示す図である。
電力回生ブレーキ装置健全性判断システム104は、電力回生ブレーキ力基準値算出部101と、電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102と、電力回生ブレーキ健全性判定部103と、から構成される。
【0012】
電力回生ブレーキ力基準値算出部101は、列車の時々刻々の力行、惰行、制動などの動作を指令する運転指令151、当該列車の乗車率152および当該列車の速度153を入力として、図示していない電力回生ブレーキ特性を基に当該列車が制動する際に得られる電力回生ブレーキ力基準値154と、電力回生ブレーキの健全性判断を実施するか否かを示す判断可否信号155とを算出する。
【0013】
電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102は、電力回生ブレーキ力基準値154および当該列車の電圧156を入力として、電力回生ブレーキ絞り込み量157を推定する。ここで、列車の電圧は、架線から入力された列車内の直流リンク電圧に代表されるものである。
【0014】
電力回生ブレーキ健全性判定部103は、当該列車の電力回生ブレーキ力158、電力回生ブレーキ力基準値154、判断可否信号155および電力回生ブレーキ絞り込み量157を入力として、電力回生ブレーキの異常有無(正常か異常か)を判断して、電力回生ブレーキ異常有無信号159を出力する。
【0015】
図2は、実施例1に係る電力回生ブレーキ力基準値算出部101の構成を示す図である。
電力回生ブレーキ力基準値算出部101は、少なくとも当該列車の電力回生ブレーキ特性251を格納する列車特性テーブル201と、当該列車の電力回生ブレーキ特性251、運転指令151、乗車率152および速度153を入力として、列車として出力されるべき電力回生ブレーキ力基準値154を算出する基準電力回生ブレーキ力算出部202と、運転指令151を基に健全性判断を実施するか否かを示す判断可否信号155を決定する健全性判断実施判定部203と、から構成される。
【0016】
ここで、列車特性テーブル201に含まれている電力回生ブレーキ特性251について説明する。
電力回生ブレーキ特性251は、運転指令、速度および乗車率を基に、電力回生ブレーキ力が一意に定まるように設定される特性である。例えば、運転指令がB1、速度50km/hおよび乗車率が50%であれば、電力回生ブレーキ力は10[kN/MM]、また、運転指令がB3、速度40km/hおよび乗車率が40%であれば、電力回生ブレーキ力は15[kN/MM]、といった形で設定される。
【0017】
次に、基準電力回生ブレーキ力算出部202で算出される電力回生ブレーキ力基準値154の計算方法について説明する。
運転指令151、乗車率152および速度153に対して定義されている電力回生ブレーキ特性251が列車特性テーブル201に存在する場合には、それをそのまま用いる。
【0018】
しかし、定義されている電力回生ブレーキ特性251が列車特性テーブル201に存在しない場合には、運転指令151と同一の運転指令で定義されている電力回生ブレーキ特性251の中から、以下(1)から(4)に示す、X1、X2、X3およびX4のデータを抽出し、乗車率152と速度153に対して線形補間を行うことで、電力回生ブレーキ力基準値154を算出する。
(1)乗車率152よりも小さい中で最も大きい乗車率P1、かつ速度153よりも小さい中で最も大きい速度S1、で定まる電力回生ブレーキ力X1
(2)乗車率152よりも小さい中で最も大きい乗車率P1、かつ速度153よりも大きい中で最も小さい速度S2、で定まる電力回生ブレーキ力X2
(3)乗車率152よりも大きい中で最も小さい乗車率P2、かつ速度153よりも小さい中で最も大きい速度S1、で定まる電力回生ブレーキ力X3
(4)乗車率152よりも大きい中で最も小さい乗車率P2、かつ速度153よりも大きい中で最も小さい速度S2、で定まる電力回生ブレーキ力X4
ここで、線形補間の方法は、一般的な方法であるため説明は省略する。
【0019】
また、電力回生ブレーキ特性251が、架線電圧と先の運転指令、速度および乗車率に架線電圧を加え、これら4つのパラメータを基に電力回生ブレーキ力が一意に定まるように設定される特性であってもよい。その場合には、例えば、架線電圧が1650V、運転指令がB1、速度50km/hおよび乗車率が50%であれば、電力回生ブレーキ力が10[kN/MM]といった形で設定されていればよい。その場合に、図1に示す電力回生ブレーキ力基準値算出部101および図2に示す基準電力回生ブレーキ力算出部202のそれぞれの入力として電圧156を追加し、基準電力回生ブレーキ力算出部202を、以下のようにすることで、計算可能である。
【0020】
運転指令151、乗車率152、速度153および電圧156に対して定義されている電力回生ブレーキ特性251が列車特性テーブル201に存在する場合には、それをそのまま用いる。
【0021】
しかし、定義されている電力回生ブレーキ特性251が列車特性テーブル201に存在しない場合には、運転指令151と同一の運転指令で定義されている電力回生ブレーキ特性251の中から、以下の(1)から(8)に示す、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7およびY8のデータを抽出し、乗車率152、速度153および電圧156に対して線形補間を行うことで、電力回生ブレーキ力基準値154を算出する。
(1)乗車率152よりも小さい中で最も大きい乗車率P1、かつ速度153よりも小さい中で最も大きい速度S1、かつ電圧156よりも小さい中で最も大きい電圧V1、で定まる電力回生ブレーキ力Y1
(2)乗車率152よりも小さい中で最も大きい乗車率P1、かつ速度153よりも大きい中で最も小さい速度S2、かつ電圧156よりも小さい中で最も大きい電圧V1、で定まる電力回生ブレーキ力Y2
(3)乗車率152よりも大きい中で最も小さい乗車率P2、かつ速度153よりも小さい中で最も大きい速度S1、かつ電圧156よりも小さい中で最も大きい電圧V1、で定まる電力回生ブレーキ力Y3
(4)乗車率152よりも大きい中で最も小さい乗車率P2、かつ速度153よりも大きい中で最も小さい速度S2、かつ電圧156よりも小さい中で最も大きい電圧V1、で定まる電力回生ブレーキ力Y4
(5)乗車率152よりも小さい中で最も大きい乗車率P1、かつ速度153よりも小さい中で最も大きい速度S1、かつ電圧156よりも大きい中で最も小さい電圧V2、で定まる電力回生ブレーキ力Y5
(6)乗車率152よりも小さい中で最も大きい乗車率P1、かつ速度153よりも大きい中で最も小さい速度S2、かつ電圧156よりも大きい中で最も小さい電圧V2、で定まる電力回生ブレーキ力Y6
(7)乗車率152よりも大きい中で最も小さい乗車率P2、かつ速度153よりも小さい中で最も大きい速度S1、かつ電圧156よりも大きい中で最も小さい電圧V2、で定まる電力回生ブレーキ力Y7
(8)乗車率152よりも大きい中で最も小さい乗車率P2、かつ速度153よりも大きい中で最も小さい速度S2、かつ電圧156よりも大きい中で最も小さい電圧V2、で定まる電力回生ブレーキ力Y8
ここで、線形補間の方法は、一般的な方法であるため説明は省略する。
【0022】
次に、健全性判断実施判定部203について、図3を用いて説明する。
図3は、健全性判断実施判定処理のフローチャートの一例を示す図である。このフローチャートを実行する主体は、健全性判断実施判定部203であるが、以下ではこの主体の記載を省略する。
【0023】
ステップS301では、本判定処理が、当該日時においてこれまで実施されていないか否かをチェックする。実施されていないのならば(Yes)、ステップS302に進む。実施されていれば(No)、ステップS303に進む。
【0024】
ステップS302では、運転指令同一判定カウントを0にリセットし、ステップS303に進む。
【0025】
ステップS303では、運転指令151が前回の運転指令と同一かつブレーキ指令か否かを判断する。同一かつブレーキ指令であれば(Yes)、ステップS304に進む。否であれば(No)、ステップS305に進む。
【0026】
ステップS304では、運転指令同一判定カウントを1増加させ、ステップS306に進む。
【0027】
ステップS305では、運転指令同一判定カウントを0にリセットし、ステップS306に進む。
【0028】
ステップS306では、運転指令同一判定カウントが所定値以上か否かを判断する。所定値以上であれば(Yes)、ステップS307に進む。所定値未満であれば(No)、ステップS308に進む。ここで、所定値は、任意に決められる。例えば、ブレーキ指令が出てから出力が安定するまでにかかる時間を基に、定めてよい。
【0029】
ステップS307では、健全性判断の判断可否信号155を判断可にし、これにより処理フローは終了に至る。
【0030】
ステップS308では、健全性判断の判断可否信号155を判断否にし、これにより処理フローは終了に至る。
【0031】
次に、電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102の処理について、図4を用いて説明する。
図4は、電力回生ブレーキ力の絞り込み特性の一例を示す図である。横軸が電圧、縦軸が電流である。
【0032】
電力回生ブレーキ力は、電圧がある値V0を超えると電流を絞り込む特性を有する。図4に示す例では、電圧がV0以下までは、電流Imaxまでの電力回生ブレーキ力が得られるが、電圧がV0よりも上昇すると、電流が絞り込まれ、電圧Vmaxに到達すると電流は0となる。従って、電圧によって電力回生ブレーキの上限電流が決まり、上限電流と、その時の電圧と機器の効率μによって、絞り込みも含めた最大電力回生ブレーキ力Pが決まることになる。
【0033】
電力回生ブレーキの絞り込み量は、設計上得られる電力回生ブレーキ力から、最大電力回生ブレーキ力Pを引いた値Wによって求められる。W>0の場合には、Wが絞り込み量である。W<0の場合には、設計上得られる電力回生ブレーキ力が出力可能であることから、絞り込み量Wは0となる。このようにして得られた絞り込み量Wが、電力回生ブレーキ絞り込み量157として出力される。
【0034】
次に、電力回生ブレーキ健全性判定部103の処理について、図5を用いて説明する。
図5は、電力回生ブレーキ力健全性判定処理のフローチャートの一例を示す図である。このフローチャートを実行する主体は、電力回生ブレーキ健全性判定部103であるが、以下ではこの主体の記載を省略する。
【0035】
ステップS501では、健全性判断の判断可否信号155が判断可か否かをチェックする。判断可(Yes)であれば、ステップS502に進む。一方、判断否(No)であれば、終了する。
【0036】
ステップS502では、電力回生ブレーキ力基準値154と電力回生ブレーキ絞り込み量157との差から、推定電力回生ブレーキ力Pnを算出し、ステップS503に進む。
【0037】
ステップS503では、推定回生ブレーキ力Pnと当該列車の時々刻々の電力回生ブレーキ力158の差の絶対値が、基準判定値以下かどうかを判断する。基準判定値以下の場合(Yes)であれば、ステップS504に進む。基準判定値を超える場合(No)であれば、ステップS505に進む。ここで、基準判定値は、一般的には0であるが、センシング誤差などを考慮して微小な値を設定する。
【0038】
ステップS504では、判定結果を正常とし、これにより処理フローは終了に至る。
ステップS505では、判定結果を異常とし、これにより処理フローは終了に至る。
【0039】
ここで、本処理フローの結果、判定結果が異常となった場合においても、即座に異常を出力せず、異常の判定が数回繰り返された場合に、異常として検知する誤検知対策を施してもよい。その際において、例えば、ステップS503で、基準判定値との差分が一定以上大きくなった場合には、異常の可能性が高くなったとして、異常と判定する方法でもよい。
【0040】
また、正常/異常の結果を基に、健全性の指標を出す方法も考えられる。例えば、1日毎あるいは1か月毎といった定期的な期間毎に、異常とされた判定回数/全判定回数で計算された「異常度」を表示する。これにより、異常と思われる電力回生ブレーキ装置を抽出し、保守員が作業する際に、優先的かつ精査すべき装置を示すことができる。
【0041】
図6は、横軸を日時にして縦軸を電力回生ブレーキ力の異常度として示す図である。これにより、異常の予兆を捉えることも可能となる。また、真の異常と判定するための閾値を設け、異常度の割合が真の異常と判定する閾値を超えたら、異常と判定するようにしてもよい。
上述した処理フローを用いることで、電力回生ブレーキ力の健全性を判定することが可能となる。
【0042】
なお、本実施例1に係る構成では、図1および図2に示したように、健全性判断実施判定部203を、電力回生ブレーキ力基準値算出部101の中に含めているが、必ずしも電力回生ブレーキ力基準値算出部101の中に含める必要はなく、独立させる構成であってもよい。
【0043】
または、健全性判断実施判定部203を電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102に含める構成としてもよい。ただし、この場合には、電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102は、運転指令151を入力とする必要がある。
【実施例0044】
図7は、本発明の実施例2に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
実施例2に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システム702は、図1に示す実施例1の電力回生ブレーキ力基準値算出部101を、電力回生ブレーキ力基準値算出部701に置き換えたものである。
【0045】
図8は、電力回生ブレーキ力基準値算出部701の構成を示す図である。
電力回生ブレーキ力基準値算出部701は、列車の電力回生ブレーキ特性251を格納する列車特性テーブル201からの電力回生ブレーキ特性251、運転指令151、乗車率152および速度153を基に、列車として出力されるべき電力回生ブレーキ力基準値154を算出する基準電力回生ブレーキ力算出部202と、速度153を基に健全性判断の判断可否信号155を決定する健全性判断実施判定部801とから構成される。
【0046】
次に、健全性判断実施判定部801について、図9を用いて説明する。
図9は、実施例2に係る健全性判断実施判定処理のフローチャートの一例を示す図である。このフローチャートを実行する主体は、健全性判断実施判定部203であるが、以下ではこの主体の記載を省略する。
【0047】
ステップS901では、速度153が閾値速度以上かを判断する。閾値速度以上(Yes)であれば、ステップS902に進み、閾値速度未満(No)であれば、ステップS903に進む。
【0048】
ステップS902では、健全性判断の判断可否信号155を判断可にし、これにより処理フローは終了に至る。
【0049】
ステップS903では、健全性判断の判断可否信号155を判断否にし、これにより処理フローは終了に至る。
【0050】
ここで、閾値速度としては、電力回生ブレーキが検知可能な速度を用いるのがよい。その理由は、電力回生ブレーキが検知できない速度では、電力回生ブレーキが発生したとしても、その妥当性を判断することができないからである。
【0051】
上述した処理フローを実行した後に、先の実施例1で説明したところの図4以降で示した処理を行うことで、電力回生ブレーキ力の健全性を判定することが可能となる。
なお、本実施例2に係る構成は、図7および図8で示すように、健全性判断実施判定部801を、電力回生ブレーキ力基準値算出部701の中に含めているが、必ずしも電力回生ブレーキ力基準値算出部701の中に含める必要はなく、独立させる構成であってもよい。
【0052】
また、健全性判断実施判定部801を電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102に含める構成であってもよい。ただし、この場合には、電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102は、速度153を入力とする必要がある。
【実施例0053】
図10は、本発明の実施例3に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
実施例3では、図1に示す実施例1に比べて、空転/滑走情報1051を入力として追加し、実施例1の電力回生ブレーキ力基準値算出部101を電力回生ブレーキ力基準値算出部1001に、また、実施例1の電力回生ブレーキ装置健全性判断システム104を電力回生ブレーキ装置健全性判断システム1002に、それぞれ変更したものである。
【0054】
電力回生ブレーキ力基準値算出部1001は、空転/滑走情報1051、列車の時々刻々の力行、惰行、制動などの動作を指令する運転指令151、当該列車の乗車率152および当該列車の速度153から、図示していない電力回生ブレーキ特性を基にして、当該列車が制動する際に得られる電力回生ブレーキ力基準値154および電力回生ブレーキの健全性の判断を実施するか否かを示す判断可否信号155を算出する。
【0055】
電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102および電力回生ブレーキ健全性判定部103それぞれの機能については、実施例1と同様である。
【0056】
図11は、電力回生ブレーキ力基準値算出部1001の構成を示す図である。
電力回生ブレーキ力基準値算出部1001は、列車の電力回生ブレーキ特性251を格納する列車特性テーブル201からの電力回生ブレーキ特性251、運転指令151、乗車率152および速度153を基に、列車として出力されるべき電力回生ブレーキ力基準値154を算出する基準電力回生ブレーキ力算出部202と、空転/滑走情報1051を基に健全性判断の判断可否信号155を決定する健全性判断実施判定部1101とから構成される。
【0057】
次に、健全性判断実施判定部1101について、図12を用いて説明する。
図12は、実施例3に係る健全性判断実施判定処理のフローチャートの一例を示す図である。このフローチャートを実行する主体は、健全性判断実施判定部1101であるが、以下ではこの主体の記載を省略する。
【0058】
ステップS1201では、空転/滑走情報1051が、空転/滑走になっているか否かを判断する。空転/滑走になっていれば(Yes)、ステップS1202に進み、空転/滑走になっていなければ(No)、ステップS1203に進む。
【0059】
ステップS1202では、健全性判断の判断可否信号155を判断否にし、これにより処理フローは終了に至る。
【0060】
ステップS1203では、健全性判断の判断可否信号155を判断可にし、これにより処理フローは終了に至る。
【0061】
上述した処理フローを実行した後に、先の実施例1で説明したところの図4以降で示した処理を行うことで、電力回生ブレーキ力の健全性を判定することが可能となる。
【0062】
なお、本実施例3に係る構成は、図10および図11に示すように、健全性判断実施判定部1101を、電力回生ブレーキ力基準値算出部1001の中に含めているが、必ずしも電力回生ブレーキ力基準値算出部1001の中に含める必要はなく、独立させる構成であってもよい。
【0063】
また、健全性判断実施判定部1101を電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102に含める構成であってもよい。ただし、この場合には、電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102は、空転/滑走情報1051を入力とする必要がある。
【実施例0064】
実施例4は、先の実施例3の変形例である。
図13は、本発明の実施例4に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
実施例4では、図10に示す実施例3の空転/滑走情報1051に替えてモータ電流1351を入力として追加し、実施例3の、電力回生ブレーキ力基準値算出部1001を電力回生ブレーキ力基準値算出部1301に、また、電力回生ブレーキ装置健全性判断システム1002を電力回生ブレーキ装置健全性判断システム1302に、それぞれ変更したものである。
【0065】
電力回生ブレーキ力基準値算出部1301は、モータ電流1351、列車の時々刻々の力行、惰行、制動などの動作を指令する運転指令151、当該列車の乗車率152と、当該列車の速度153から、図示していない電力回生ブレーキ特性を基にして、当該列車が制動する際に得られる電力回生ブレーキ力基準値154と電力回生ブレーキの健全性の判断を実施するか否かを示す判断可否信号155を算出する。
【0066】
電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102および電力回生ブレーキ健全性判定部103それぞれの機能については、実施例3と同様である。
【0067】
図14は、電力回生ブレーキ力基準値算出部1301の構成を示す図である。
電力回生ブレーキ力基準値算出部1301は、少なくとも当該列車の電力回生ブレーキ特性251およびモータ電流特性1451を格納する列車特性テーブル1401からの電力回生ブレーキ特性251、運転指令151、乗車率152および速度153を基に、列車として出力されるべき電力回生ブレーキ力基準値154を算出する基準電力回生ブレーキ力算出部202と、列車特性テーブル1401からのモータ電流特性1451、運転指令151、乗車率152および速度153を基に、列車として出力されるべきモータ電流基準値1452を算出する基準モータ電流算出部1402と、モータ電流基準値1452とモータ電流1351とを基に、健全性判断の判断可否信号155を決定する健全性判断実施判定部1403とから構成される。
【0068】
列車のモータ電流特性1451は、運転指令、速度および乗車率を基にして電力回生ブレーキ力が一意に定まるように設定されている特性である。例えば、運転指令がB1、速度50km/h、乗車率が50%であれば、モータ電流は150[A/MM]、運転指令がB3、速度40km/h、乗車率が40%であれば、モータ電流は188[A/MM]、といった形で設定されている。
【0069】
基準モータ電流算出部1402で算出されるモータ電流基準値1452の計算方法について説明する。
運転指令151、乗車率152および速度153に対して定義されているモータ電流特性1451が列車特性テーブル1401にある場合には、それをそのまま用いる。
【0070】
しかし、定義されているモータ電流特性1451が列車特性テーブル1401にない場合には、運転指令151と同一の運転指令で定義されているモータ電流特性1451の中から、以下の(1)から(4)に示す、A1、A2、A3およびA4のデータを抽出し、乗車率152および速度153に対して線形補間を行うことで、モータ電流基準値1452を算出する。
(1)乗車率152よりも小さい中で最も大きい乗車率P1、かつ速度153よりも小さい中で最も大きい速度S1、で定まるモータ電流A1
(2)乗車率152よりも小さい中で最も大きい乗車率P1、かつ速度153よりも大きい中で最も小さい速度S2、で定まるモータ電流A2
(3)乗車率152よりも大きい中で最も小さい乗車率P2、かつ速度153よりも小さい中で最も大きい速度S1、で定まるモータ電流A3
(4)乗車率152よりも大きい中で最も小さい乗車率P2、かつ速度153よりも大きい中で最も小さい速度S2、で定まるモータ電流A4
ここで、線形補間の方法は、一般的な方法であるため説明は省略する。
【0071】
また、モータ電流特性1451が、架線電圧、運転指令、速度および乗車率を基に、モータ電流が一意に定まるように設定されている特性であってもよい。その場合には、例えば、架線電圧が1650V、運転指令がB1、速度50km/hおよび乗車率が50%であれば、モータ電流が160[A/MM]といった形で設定されていればよい。
【0072】
更に、図13に示す電力回生ブレーキ力基準値算出部1301および図14に示す基準モータ電流算出部1402のそれぞれの入力に、電圧156を追加し、基準モータ電流算出部1402を以下のようにすることで、モータ電流の計算が可能である。
【0073】
運転指令151、乗車率152、速度153および電圧156に対して定義されているモータ電流特性1451が列車特性テーブル1401にある場合には、それをそのまま用いる。
【0074】
しかし、定義されているモータ電流特性1451が列車特性テーブル1401にない場合には、運転指令151と同一の運転指令で定義されているモータ電流特性1451の中から、以下の(1)から(8)に示す、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7およびC8のデータを抽出し、乗車率152、速度153および電圧156に対して線形補間を行うことで、モータ電流基準値1452を算出する。
(1)乗車率152よりも小さい中で最も大きい乗車率P1、かつ速度153よりも小さい中で最も大きい速度S1、かつ電圧156よりも小さい中で最も大きい電圧V1、で定まるモータ電流C1
(2)乗車率152よりも小さい中で最も大きい乗車率P1、かつ速度153よりも大きい中で最も小さい速度S2、かつ電圧156よりも小さい中で最も大きい電圧V1、で定まるモータ電流C2
(3)乗車率152よりも大きい中で最も小さい乗車率P2、かつ速度153よりも小さい中で最も大きい速度S1、かつ電圧156よりも小さい中で最も大きい電圧V1、で定まるモータ電流C3
(4)乗車率152よりも大きい中で最も小さい乗車率P2、かつ速度153よりも大きい中で最も小さい速度S2、かつ電圧156よりも小さい中で最も大きい電圧V1、で定まるモータ電流C4
(5)乗車率152よりも小さい中で最も大きい乗車率P1、かつ速度153よりも小さい中で最も大きい速度S1、かつ電圧156よりも大きい中で最も小さい電圧V2、で定まるモータ電流C5
(6)乗車率152よりも小さい中で最も大きい乗車率P1、かつ速度153よりも大きい中で最も小さい速度S2、かつ電圧156よりも大きい中で最も小さい電圧V2、で定まるモータ電流C6
(7)乗車率152よりも大きい中で最も小さい乗車率P2、かつ速度153よりも小さい中で最も大きい速度S1、かつ電圧156よりも大きい中で最も小さい電圧V2、で定まるモータ電流C7
(8)乗車率152よりも大きい中で最も小さい乗車率P2、かつ速度153よりも大きい中で最も小さい速度S2、かつ電圧156よりも大きい中で最も小さい電圧V2、で定まるモータ電流C8
ここで、線形補間の方法は、一般的な方法であるため説明は省略する。
【0075】
次に、健全性判断実施判定部1403について、図15を用いて説明する。
図15は、健全性判断実施判定に用いるモータ電流特性のグラフの一例を示す図である。このグラフは、横軸が経過時刻、縦軸がモータ電流であり、モータ電流基準値1452と時々刻々のモータ電流1351とを示している。
【0076】
例えば、モータ電流基準値1452に対して、時々刻々のモータ電流1351が乖離する現象が発生した場合(具体的には、図15に示すように、時々刻々のモータ電流1351が、モータ電流基準値1452よりも低下し、その後転じて、モータ電流基準値1452に戻すように再上昇するケース)には、空転/滑走が発生したと判断し、健全性判断の判断可否信号155を判断否にする。このケースが発生しない間は、健全性判断の判断可否信号155を判断可にする。
【0077】
上述した判断処理で得られた値を用いて、先の実施例1で説明したところの図4以降で示した処理を行うことで、電力回生ブレーキ力の健全性を判定することが可能となる。
なお、本実施例4に係る構成は、図14に示す、基準モータ電流算出部1402および健全性判断実施判定部1403を、電力回生ブレーキ力基準値算出部1301の中に含めているが、必ずしも電力回生ブレーキ力基準値算出部1301の中に含める必要はなく、独立させる構成であってもよい。
【0078】
また、健全性判断実施判定部1403を電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102に含める構成であってもよい。ただし、この場合には、電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102は、モータ電流1351およびモータ電流基準値1452を入力とする必要がある。
【実施例0079】
実施例5は、先の実施例4の変形例である。
図16は、本発明の実施例5に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
実施例5では、図13に示す実施例4のモータ電流1351に替えて、架線電流1651と列車内で使用される照明や空調に供給される補機の電力(補機電力)1652を入力として追加し、実施例4の、電力回生ブレーキ力基準値算出部1301を電力回生ブレーキ力基準値算出部1601に、また、電力回生ブレーキ装置健全性判断システム1302を電力回生ブレーキ装置健全性判断システム1602に、それぞれ変更したものである。更に、電圧156を、電力回生ブレーキ力基準値算出部1601の入力に追加している。
【0080】
電力回生ブレーキ力基準値算出部1601は、架線電流1651、補機電力1652、列車の時々刻々の力行、惰行、制動などの動作を指令する運転指令151、当該列車の乗車率152、当該列車の速度153および当該列車の電圧156から、図示していない車両特性を基にして、当該列車が制動する際に得られる電力回生ブレーキ力基準値154と電力回生ブレーキの健全性の判断を実施するか否かを示す判断可否信号155とを算出する。
【0081】
電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102および電力回生ブレーキ健全性判定部103それぞれの機能については、実施例4と同様である。
【0082】
図17は、電力回生ブレーキ力基準値算出部1601の構成を示す図である。
電力回生ブレーキ力基準値算出部1601は、少なくとも当該列車の電力回生ブレーキ特性251および機器の効率1751を格納する列車特性テーブル1701と、前記列車の電力回生ブレーキ特性251、運転指令151、乗車率152および速度153を基に、列車として出力されるべき電力回生ブレーキ力基準値154を算出する基準電力回生ブレーキ力算出部202と、機器の効率1751、速度153、電力回生ブレーキ力基準値154、電圧156および補機電力1652を基に、列車として出力されるべき架線電流基準値1752を算出する基準架線電流算出部1702と、架線電流基準値1752および架線電流1651を基に、健全性判断の判断可否信号155を決定する健全性判断実施判定部1703とから構成される。なお、架線電流1651の向きは、車両から架線に流れる方向を正とする。
【0083】
ここで、機器の効率1751は、列車内で使用される駆動機器の効率を示す。この値は、一定値の場合や、速度によって変化する場合や、速度および電力回生ブレーキ力によって変化する場合が考えられる。
【0084】
次に、基準架線電流算出部1702で行われる架線電流基準値1752の計算方法について説明する。
機器の効率1751をμ[%]、速度153をS[km/h]、電力回生ブレーキ力基準値154をBef(>0)[kN]、電圧156をV[V]、補機電力1652をP[kW]とした場合、架線電流基準値1752は、以下に記す式で計算可能である。
架線電流基準値1752[A]=(Bef×S/3.6×μ/100-P)×1000/V
【0085】
更に、健全性判断実施判定部1703について、図18を用いて説明する。
図18は、健全性判断実施判定に用いる架線電流特性のグラフの一例を示す図である。このグラフは、横軸が経過時刻、縦軸が架線電流であり、架線電流基準値1752と時々刻々の架線電流1651とを示している。
【0086】
例えば、架線電流基準値1752に対して、時々刻々の架線電流1651が乖離する現象が発生した場合(具体的には、時々刻々の架線電流1651が、架線電流基準値1752よりも低下し、その後転じて、架線電流基準値1752に戻すように再上昇するケース)には、空転/滑走が発生したと判断し、健全性判断の判断可否信号155を判断否にする。このケースが発生しない間は、健全性判断の判断可否信号155を判断可にする。
【0087】
上述した判断処理で得られた値を用いて、先の実施例1で説明したところの図4以降で示した処理を行うことで、電力回生ブレーキ力の健全性を判定することが可能となる。
なお、本実施例5に係る構成は、図17に示す、基準架線電流算出部1702および健全性判断実施判定部1703を、電力回生ブレーキ力基準値算出部1601の中に含めているが、必ずしも電力回生ブレーキ力基準値算出部1601の中に含める必要はなく、独立させる構成であってもよい。
【0088】
また、健全性判断実施判定部1703を電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102に含める構成であってもよい。ただし、この場合には、電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102は、架線電流1651および架線電流基準値1752を入力とする必要がある。
【実施例0089】
列車は、勾配や曲線を走行する際に傾くことがある。その結果、乗車率を測定している空気バネ圧力が変動し、乗車率が急変することがある。また、乗車率の急変は、電力回生ブレーキ力にも大きく影響を与える可能性がある。
実施例6は、この乗車率の急変に対処するものである。
【0090】
図19は、本発明の実施例6に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
実施例6に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システム1902は、図1に示す実施例1の電力回生ブレーキ力基準値算出部101を電力回生ブレーキ力基準値算出部1901に置き換えたのみである。
【0091】
図20は、電力回生ブレーキ力基準値算出部1901の構成を示す図である。
電力回生ブレーキ力基準値算出部1901は、少なくとも当該列車の電力回生ブレーキ特性251を格納する列車特性テーブル201と、列車の電力回生ブレーキ特性251、運転指令151、乗車率152および速度153を基に、列車として出力されるべき電力回生ブレーキ力基準値154を算出する基準電力回生ブレーキ力算出部202と、乗車率152を基に、健全性判断の判断可否信号155を決定する健全性判断実施判定部2001とから構成される。
【0092】
次に、健全性判断実施判定部2001について、図21を用いて説明する。
図21は、健全性判断実施判定処理のフローチャートの一例を示す図である。このフローチャートを実行する主体は、健全性判断実施判定部2001であるが、以下ではこの主体の記載を省略する。
【0093】
ステップS2101では、時々刻々の乗車率152の変動幅が閾値以下か否かを判断する。閾値以下(Yes)であればステップS2102に進み、閾値超過(No)であればステップS2103に進む。
【0094】
ステップS2102では、健全性判断の判断可否信号155を判断可にし、これにより処理フローは終了に至る。
【0095】
ステップS2103では、健全性判断の判断可否信号155を判断否にし、これにより処理フローは終了に至る。
【0096】
ここで、閾値は、モニタリング装置の分解能およびセンシング誤差によって定めるのがよい。一般的に、勾配も曲線もないところを走行する場合、モニタリング装置のセンシング誤差分は変動する可能性があるが、それ以上は変動しない。このため、センシング誤差を考慮して定める。
【0097】
なお、モニタリング装置の分解能がセンシング誤差よりも大きい場合には、その分解能にする必要がる。例えば、1%/1bitの分解能でセンシング誤差が3%であれば、閾値は3[%]であるが、5%/bitの分解能でセンシング誤差が3%であれば、閾値は5[%]である。
【0098】
上述した処理フローを実行した後に、先の実施例1で説明したところの図4以降で示した処理を行うことで、電力回生ブレーキ力の健全性を判定することが可能となる。
なお、本実施例6に係る構成は、図20で示すように、健全性判断実施判定部2001を、電力回生ブレーキ力基準値算出部1901の中に含めているが、必ずしも電力回生ブレーキ力基準値算出部1901の中に含める必要はなく、独立させる構成であってもよい。
【0099】
また、健全性判断実施判定部2001を電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102に含める構成であってもよい。ただし、この場合には、電力回生ブレーキ絞り込み量推定部102は、乗車率152を入力とする必要がある。
なお、以上の実施例1から実施例6それぞれで示した健全性判断実施判定部は、それぞれの健全性判断実施判定部を複数組み合わせて判定したものであっても差し支えない。
【実施例0100】
図22は、本発明の実施例7に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システムの構成を示す図である。
実施例7に係る電力回生ブレーキ装置健全性判断システム2203は、列車の時々刻々の力行、惰行、制動などの動作を指令する運転指令151、当該列車の乗車率152および当該列車の速度153を基に、電力回生ブレーキの健全性の判断を実施するか否かを示す判断可否信号155を算出する健全性判断実施判定部2201と、運転指令151、乗車率152、速度153、判断可否信号155、電圧156および当該列車の電力回生ブレーキ力158を基に、電力回生ブレーキの異常有無(正常か異常か)を判断して電力回生ブレーキ異常有無信号159を出力する電力回生ブレーキ健全性判定部2202とから構成される。
【0101】
ここで、健全性判断実施判定部2201については、実施例1、2または6で示した方法を用い、それらを単独または組み合わせた方法で実施することができる。また、実施例3から5に示した方法を用いてもよい。この場合には、実施例3から5で示した方法を実施するために必要なデータを追加することで、実施可能となる。
【0102】
次に、電力回生ブレーキ健全性判定部2202について、図23を用いて説明する。
図23は、電力回生ブレーキ健全性判定部2202の構成を示す図である。
電力回生ブレーキ健全性判定部2202は、運転指令151、乗車率152、速度153、判断可否信号155、電圧156および当該列車の電力回生ブレーキ力158それぞれの履歴データを基に、クラスタ処理を行うクラスタリング処理部2301と、クラスタリング処理部2301の処理結果から得られるクラスタ空間2351、運転指令151、乗車率152、速度153、判断可否信号155、電圧156および当該列車の電力回生ブレーキ力158を基に、電力回生ブレーキの異常有無(正常か異常か)を判断して電力回生ブレーキ異常有無信号159を出力する健全性判断処理部2302とから構成される。
【0103】
クラスタリング処理部2301およびその処理結果から得られるクラスタ空間2351について、図24を用いて説明する。
図24は、クラスタリング処理部2301の処理結果から得られるクラスタ空間2351を示す図である。ここで、クラスタリング処理部2301は、健全性判断の判断可否信号155が判断可になっている場合に処理を実施する。図24では、運転指令151、乗車率152、速度153、電圧156および電力回生ブレーキ力158の5軸空間上に、クラスタが構成される。
【0104】
また、健全性判断処理部2302について、図25を用いて説明する。
図25は、クラスタ空間を用いた健全性判断の正常/異常の状態を示す図である。
クラスタリング処理部2301の処理結果から得られたクラスタ空間2351上に、健全性判断の判断可否信号155が判断可となっている状態における、運転指令151、乗車率152、速度153、電圧156および電力回生ブレーキ力158で定まるデータ(▲点)をプロットした状態を示している。この時、健全性判断処理部2302は、既にあるクラスタとの距離の近さなどにより正常か異常かを判断する。ここで、クラスタリング処理の手法については、様々な手法があり、どの手法を用いて判断しても本発明における内容は差し支えないものである。
【0105】
以上で述べた実施例1から7により、自列車の走行中のデータを用いることによって、電力回生ブレーキ力の健全性を判断することが可能となる。また、空転/滑走やブレーキ指令の変動も考慮した判断も可能となり、精度の良い電力回生ブレーキ力の健全性を判断することが可能となる。
【0106】
また、以上の実施例によれば、少なくとも以下の各技術事項が包含されることになる。
<技術事項1>
対象とする列車の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、列車の、運転指令、列車速度、空転/滑走、モータ電流、架線電流および乗車率の少なくとも一つの情報から、当該列車の電力回生ブレーキの健全性判断を実施するか否かを判定して判断可否信号を出力する健全性判断実施判定部と、運転指令と列車速度と乗車率とから列車の電力回生ブレーキ特性を基にして電力回生ブレーキ力基準値を算出し、電力回生ブレーキ力基準値と列車の電圧とから電力回生ブレーキ絞り込み量を推定し、電力回生ブレーキ力基準値と電力回生ブレーキ絞り込み量と列車の電力回生ブレーキ力と判断可否信号とに基づいて電力回生ブレーキの異常有無を判定する健全性判定部とを備える。
【0107】
<技術事項2>
上記技術事項1に記載した電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、健全性判定部は、電力回生ブレーキ力基準値と電力回生ブレーキ絞り込み量との差分である推定電力回生ブレーキ力と列車の時々刻々の電力回生ブレーキ力との差分値を、基準判定値と比較して、電力回生ブレーキの異常有無を判定する。
【0108】
<技術事項3>
上記技術事項1または2に記載した電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、健全性判断実施判定部は、列車の運転指令が制動でかつ所定時間以上変動することがない場合に、判断可否信号を判断可とする。
【0109】
<技術事項4>
上記技術事項1から3のいずれかに記載した電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、健全性判断実施判定部は、列車速度が所定の閾値以上の場合に、判断可否信号を判断可とする。
【0110】
<技術事項5>
上記技術事項1から4のいずれかに記載した電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、健全性判断実施判定部は、列車の空転/滑走が発生した場合に、判断可否信号を判断否とする。
【0111】
<技術事項6>
上記技術事項5に記載した電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、運転指令、乗車率、列車速度および列車のモータ電流特性から列車のモータ電流基準値を算出し、空転/滑走の発生をモータ電流基準値と列車のモータ電流との差分値に基づいて検知する。
【0112】
<技術事項7>
上記技術事項5に記載した電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、健全性判断実施判定部は、運転指令、乗車率、列車速度および列車の機器の効率から列車に対する架線電流基準値を算出し、空転/滑走の発生を架線電流基準値と列車に流れる架線電流との差分値に基づいて検知する。
【0113】
<技術事項8>
上記技術事項1から7のいずれかに記載した電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、健全性判断実施判定部は、列車が走行中の乗車率が所定の閾値を超えた場合に、判断可否信号を判断否とする。
【0114】
<技術事項9>
対象とする列車の電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、列車の、運転指令、列車速度、空転/滑走、モータ電流、架線電流および乗車率の少なくとも一つの情報から、列車の電力回生ブレーキ力の健全性判断を実施するか否かを判定して判断可否信号を出力する健全性判断実施判定部と、列車の、運転指令、列車速度、乗車率、電圧、電力回生ブレーキ力および判断可否信号それぞれの履歴データを基にしたクラスタ処理で得られるクラスタ空間を用いて、電力回生ブレーキの異常有無を判定する健全性判定部とを備える。
【0115】
<技術事項10>
上記技術事項1から9のいずれかに記載した電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、健全性判定部は、電力回生ブレーキの異常の判定回数が数回繰り返された場合に、異常として検知する。
【0116】
<技術事項11>
上記技術事項1から10のいずれかに記載した電力回生ブレーキの健全性判断システムであって、定期的な期間毎に、電力回生ブレーキの全判定回数に対する電力回生ブレーキの異常の判定回数の割合を表示出力する機能を備える。
【0117】
<技術事項12>
対象とする列車の電力回生ブレーキの健全性判断方法であって、列車の、運転指令、列車速度、空転/滑走、モータ電流、架線電流および乗車率の少なくとも一つの情報から、当該列車の電力回生ブレーキの健全性判断を実施するか否かを判定して判断可否信号を出力し、運転指令と列車速度と乗車率とから列車の電力回生ブレーキ特性を基にして電力回生ブレーキ力基準値を算出し、電力回生ブレーキ力基準値と列車の電圧とから電力回生ブレーキ絞り込み量を推定し、電力回生ブレーキ力基準値、電力回生ブレーキ絞り込み量、列車の電力回生ブレーキ力および判断可否信号に基づいて、電力回生ブレーキの異常有無を判定する。
【0118】
<技術事項13>
技術事項12に記載した電力回生ブレーキの健全性判断方法であって、電力回生ブレーキ力基準値と電力回生ブレーキ絞り込み量との差分である推定電力回生ブレーキ力と列車の時々刻々の電力回生ブレーキ力との差分値を、基準判定値と比較して、電力回生ブレーキの異常有無を判定する。
【0119】
<技術事項14>
技術事項12または13に記載した電力回生ブレーキの健全性判断方法であって、列車の運転指令が制動でかつ所定時間以上変更されることがない場合に、判断可否信号を判断可とする。
【0120】
<技術事項15>
技術事項12から14のいずれかに記載した電力回生ブレーキの健全性判断方法であって、列車の空転/滑走が発生した場合に、判断可否信号を判断否とする。
【0121】
以上、本発明を実施するための形態として実施例1から7について説明したが、本発明は、上述した実施例1から7に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0122】
101,701,1001,1301,1601,1901…電力回生ブレーキ力基準値算出部、
102…電力回生ブレーキ絞り込み量推定部、
103,2202…電力回生ブレーキ健全性判定部、
104,702,1002,1302,1602,1902,2203…電力回生ブレーキ装置健全性判断システム、
151…運転指令、152…乗車率、153…速度、
154…電力回生ブレーキ力基準値、155…判断可否信号、156…電圧、
157…電力回生ブレーキ絞り込み量、158…電力回生ブレーキ力、
159…電力回生ブレーキ異常有無信号、
201,1401,1701…列車特性テーブル、
202…基準電力回生ブレーキ力算出部、
203,801,1101,1403,1703,2001,2201…健全性判断実施判定部、
251…電力回生ブレーキ特性、1351…モータ電流、
1402…基準モータ電流算出部、1451…モータ電流特性、
1452…モータ電流基準値、1501…空転/滑走情報、1651…架線電流、
1652…補機電力、1751…機器の効率、1752…架線電流基準値、
2301…クラスタリング処理部、2302…健全性判断処理部、
2351…クラスタ空間
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