(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126220
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】プレキャスト腰壁設置工法およびプレキャスト腰壁支持構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20240912BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E02D27/00 E
E04B2/56 603E
E04B2/56 642D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034459
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】森川 勝浩
(72)【発明者】
【氏名】岡田 茂樹
【テーマコード(参考)】
2D046
2E002
【Fターム(参考)】
2D046AA18
2E002FB03
2E002HA03
2E002HB02
2E002JA02
2E002JB01
2E002JB07
2E002JB09
2E002MA05
2E002MA07
(57)【要約】
【課題】プレキャスト腰壁を柱よりも先に設置することができ、また、床や土間等において支持用スペースを必要としないプレキャスト腰壁設置工法を提供する。
【解決手段】基礎2に下部側が埋設されたアンカーボルト21の上端ボルト部21aに、基礎2の上端に配置されたプレキャスト腰壁1の下部側の屋内側面部を、自立補助部材3を介在させて連結することにより、プレキャスト腰壁1を基礎2上で自立させる工程と、プレキャスト腰壁1の下部および自立補助部材3をコンクリートCで埋める後打ち工程と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に下部側が埋設されたアンカーボルトの上端ボルト部に、上記基礎の上端に配置されたプレキャスト腰壁の下部側の屋内側面部を、自立補助部材を介在させて連結することにより、上記プレキャスト腰壁を上記基礎上で自立させる工程と、
上記プレキャスト腰壁の下部および上記自立補助部材をコンクリートで埋める後打ち工程と、を含むことを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項2】
請求項1に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記プレキャスト腰壁の下端面と上記基礎の上端との間に設けられた高さ調整部材を用いて、当該下端面の高さ調整を行うことを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項3】
請求項1に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記自立補助部材は、それぞれ貫通孔を有する第1面部およびこの第1面部に直交する第2面部を有しており、上記第1面部の上記貫通孔に通した上記アンカーボルトの上端ボルト部にナットを用いて上記第1面部を固定するとともに、上記プレキャスト腰壁の下部側の屋内側面部に埋設された埋設ナット部に、上記第2面部の上記貫通孔から通したボルトを螺合させ、当該第2面部に上記プレキャスト腰壁を固定することを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項4】
基礎の上端上でプレキャスト腰壁を支持するプレキャスト腰壁支持構造であって、上記基礎に下部側が埋設されたアンカーボルトと、このアンカーボルトの上端ボルト部に固定されるとともに、上記プレキャスト腰壁の下部側の屋内側面部に固定されることで当該プレキャスト腰壁を上記基礎上で自立させる自立補助部材と、上記プレキャスト腰壁の下部および上記自立補助部材に対して後打ちされたコンクリートと、を備えることを特徴とするプレキャスト腰壁支持構造。
【請求項5】
請求項4に記載のプレキャスト腰壁支持構造において、上記プレキャスト腰壁の下端面と上記基礎の上端との間に高さ調整部材を備えることを特徴とするプレキャスト腰壁支持構造。
【請求項6】
請求項4に記載のプレキャスト腰壁支持構造において、上記自立補助部材は、それぞれ貫通孔を有する第1面部およびこの第1面部に直交する第2面部を有しており、上記第1面部の上記貫通孔に通した上記アンカーボルトの上端ボルト部にナットを用いて上記第1面部が固定されるとともに、上記プレキャスト腰壁の下部側の屋内側面部に埋設された埋設ナット部に、上記第2面部の上記貫通孔から通したボルトが螺合され、当該第2面部に上記プレキャスト腰壁が固定されていることを特徴とするプレキャスト腰壁支持構造。
【請求項7】
請求項6に記載のプレキャスト腰壁支持構造において、上記自立補助部材の上記第1面部の下面または上面に、当該自立補助部材の水平方向の移動に対して上記後打ちされたコンクリートの抵抗を受ける突起部が設けられていることを特徴とするプレキャスト腰壁支持構造。
【請求項8】
請求項4~請求項6のいずれか1項に記載のプレキャスト腰壁支持構造において、上記プレキャスト腰壁の下部側の屋内側面部に、上記自立補助部材の取り付け位置とは別の位置に第2埋設ナット部が埋設されており、この第2埋設ナット部に、当該プレキャスト腰壁の水平方向の移動に対して上記後打ちされたコンクリートの抵抗を受ける棒状部材が螺合されていることを特徴とするプレキャスト腰壁支持構造。
【請求項9】
請求項6に記載のプレキャスト腰壁支持構造において、上記自立補助部材の第1面部の上記貫通孔よりも小径の小径貫通孔を有する座金が上記アンカーボルトの上端ボルト部に外嵌めされており、上記座金の周囲部が上記第1面部の上面上に溶接されていることを特徴とするプレキャスト腰壁支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレキャスト腰壁を基礎上に取り付けるプレキャスト腰壁設置工法およびプレキャスト腰壁支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の支柱間にプレキャストコンクリート製の腰壁を配置して取付ける取付け方法が開示されている。この取付け方法では、複数の支柱の配列方向に設けられた基礎の上面であって、支柱より外側の上面に、支柱の配列方向に沿った嵌合溝を形成し、腰壁の下面には、上記嵌合溝に嵌合する嵌合突部を形成し、腰壁の下部の内側面にはフックを突設し、腰壁の上部と支柱には、これらを接合するボルト接合手段を有し、腰壁を、その下端の嵌合突部を上記嵌合溝に嵌合して立設し、その後、腰壁の上部を支柱に上記ボルト接合手段により仮止め保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のプレキャスト腰壁の取付け方法は、プレキャスト腰壁の上部を柱にボルト接合手段により仮止め保持するため、プレキャスト腰壁を柱よりも先に設置することができず、建物の構築手順が限定されて、効率的な建物の構築が行えない欠点がある。なお、プレキャスト腰壁を柱よりも先に設置する方法として、プレキャスト腰壁を支えるサポート材の基部を1階床、土間或いは土間施工前地盤に差し込んだアンカーや単管で固定することが考えられるが、上記サポート材の基部用のスペースを確保する必要が生じる。
【0005】
この発明は、プレキャスト腰壁を柱よりも先に設置することができ、また、床や土間等においてプレキャスト腰壁の支持用スペースを必要としないプレキャスト腰壁設置工法およびプレキャスト腰壁支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のプレキャスト腰壁設置工法は、基礎に下部側が埋設されたアンカーボルトの上端ボルト部に、上記基礎の上端に配置されたプレキャスト腰壁の下部側の屋内側面部を、自立補助部材を介在させて連結することにより、上記プレキャスト腰壁を上記基礎上で自立させる工程と、上記プレキャスト腰壁の下部および上記自立補助部材をコンクリートで埋める後打ち工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
上記の設置工法であれば、上記プレキャスト腰壁を、上記アンカーボルトおよび上記自立補助部材によって、上記基礎の上端上で自立させるので、このプレキャスト腰壁を柱によって保持する必要は無く、プレキャスト腰壁を柱よりも先に設置して建物構築を効率化することが可能となる。また、上記プレキャスト腰壁は上記基礎上で自立するので、床や土間等においてプレキャスト腰壁の支持用スペースを確保する必要も生じない。また、上記アンカーボルトおよび上記自立補助部材を用いて上記プレキャスト腰壁を自立させるので、定着用鉄筋を突出させたプレキャスト腰壁とする必要が無く、プレキャスト腰壁の搬送等を含めた全体的な施工の効率化も図れる。
【0008】
上記の設置工法において、上記プレキャスト腰壁の下端面と上記基礎の上端との間に設けられた高さ調整部材を用いて、当該下端面の高さ調整を行なってもよい。これによれば、上記基礎上に、高い鉛直度で上記プレキャスト腰壁を設置することが容易になる。
【0009】
上記の設置工法において、上記自立補助部材は、それぞれ貫通孔を有する第1面部およびこの第1面部に直交する第2面部を有しており、上記第1面部の上記貫通孔に通した上記アンカーボルトの上端ボルト部にナットを用いて上記第1面部を固定するとともに、上記プレキャスト腰壁の下部側の屋内側面部に埋設された埋設ナット部に、上記第2面部の上記貫通孔から通したボルトを螺合させ、当該第2面部に上記プレキャスト腰壁を固定してもよい。これによれば、上記基礎上に、比較的簡単な締結作業で上記プレキャスト腰壁を自立させることができる。
【0010】
また、この発明のプレキャスト腰壁支持構造は、基礎の上端上でプレキャスト腰壁を支持するプレキャスト腰壁支持構造であって、上記基礎に下部側が埋設されたアンカーボルトと、このアンカーボルトの上端ボルト部に固定されるとともに、上記プレキャスト腰壁の下部側の屋内側面部に固定されることで当該プレキャスト腰壁を上記基礎上で自立させる自立補助部材と、上記プレキャスト腰壁の下部および上記自立補助部材に対して後打ちされたコンクリートと、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記のプレキャスト腰壁支持構造において、上記プレキャスト腰壁の下端面と上記基礎の上端との間に高さ調整部材を備えてもよい。
【0012】
上記のプレキャスト腰壁支持構造において、上記自立補助部材は、それぞれ貫通孔を有する第1面部およびこの第1面部に直交する第2面部を有しており、上記第1面部の上記貫通孔に通した上記アンカーボルトの上端ボルト部にナットを用いて上記第1面部が固定されるとともに、上記プレキャスト腰壁の下部側の屋内側面部に埋設された埋設ナット部に、上記第2面部の上記貫通孔から通したボルトが螺合され、当該第2面部に上記プレキャスト腰壁が固定されていてもよい。
【0013】
上記のプレキャスト腰壁支持構造において、上記自立補助部材の上記第1面部の下面または上面に、当該自立補助部材の水平方向の移動に対して上記後打ちされたコンクリートの抵抗を受ける突起部が設けられていてもよい。これによれば、プレキャスト腰壁にかかる水平方向のせん断力を上記突起部によって上記後打ちされたコンクリートに伝達することができる。
【0014】
上記のプレキャスト腰壁支持構造において、上記プレキャスト腰壁の下部側の屋内側面部に、上記自立補助部材の取り付け位置とは別の位置に第2埋設ナット部が埋設されており、この第2埋設ナット部に、当該プレキャスト腰壁の水平方向の移動に対して上記後打ちされたコンクリートの抵抗を受ける棒状部材が螺合されていてもよい。これによれば、プレキャスト腰壁にかかる水平方向のせん断力を上記棒状部材によって上記後打ちされたコンクリートに伝達することができる。
【0015】
上記のプレキャスト腰壁支持構造において、上記自立補助部材の第1面部の上記貫通孔よりも小径の小径貫通孔を有する座金が上記アンカーボルトの上端ボルト部に外嵌めされており、上記座金の周囲部が上記第1面部の上面上に溶接されていてもよい。これによれば、プレキャスト腰壁にかかる水平方向のせん断力を上記アンカーボルトに負担させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明であれば、プレキャスト腰壁を柱よりも先に設置する効率的な建物構築が可能となり、また、上記プレキャスト腰壁は上記基礎上で自立するので、床や土間等においてプレキャスト腰壁の支持用スペースを確保する必要も生じない。さらに、アンカーボルトおよび自立補助部材を用いてプレキャスト腰壁を自立させるので、定着用鉄筋を突出させたプレキャスト腰壁とする必要が無く、プレキャスト腰壁の搬送等を含めた全体的な施工の効率化も図れるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態で用いる一般部のプレキャスト腰壁を示した図であって、同図(A)は平面説明図、同図(B)は正面説明図である。
【
図2】同図(A)は、実施形態の設置工法の途中工程を示した説明図であり、同図(B)は同図(A)の一部を拡大した図である。
【
図3】実施形態で用いる柱部のプレキャスト腰壁を示した図であって、同図(A)は平面説明図、同図(B)は正面説明図である。
【
図4】実施形態の設置工法の柱部における途中工程を示した説明図である。
【
図5】同図(A)は、実施形態の設置工法の一般部の後打ちを示した説明図であり、同図(B)は、実施形態の設置工法の柱部の後打ちを示した説明図である。
【
図6】同図(A)は、実施形態のプレキャスト腰壁支持構造において、プレキャスト腰壁の屋外側へのせん断力および回転モーメントに対する自立補助部材等の荷重伝達を説明する説明図であり、同図(B)は、プレキャスト腰壁の屋内側へのせん断力および回転モーメントに対する自立補助部材等の荷重伝達を説明する説明図である。
【
図7】他の実施形態の一般部のプレキャスト腰壁および棒状部材を示した図であって、同図(A)は平面説明図、同図(B)は正面説明図である。
【
図8】他の実施形態におけるプレキャスト腰壁のせん断力に対する棒状部材の荷重伝達を説明する説明図である。
【
図9】他の実施形態におけるプレキャスト腰壁および角座金を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、添付する説明図においては、プレキャスト腰壁および基礎の輪郭は二点鎖線で、内部の鉄筋は実線で示している。
【0019】
図1(A),(B)および
図2(A),(B)に示すように、この実施形態で用いるプレキャスト腰壁1は、内部に網目状に鉄筋11を有している。また、プレキャスト腰壁1には、当該プレキャスト腰壁1の延設方向に互いに離間して2個の自立補助部材3が固定できるように、各自立補助部材3に対して、2個の埋設ナット部12が、当該プレキャスト腰壁1の下部側の屋内側面部に埋設されている。各2個の埋設ナット部12は、プレキャスト腰壁1の面内の鉛直方向および上記延設方向に離間することで対角に位置している。
【0020】
各自立補助部材3は、例えば、山形鋼からなり、水平に位置される第1面部31およびこの第1面部31に直交する第2面部32を有する。各自立補助部材3の幅方向(プレキャスト腰壁1の延設方向)の中央位置には、リブ板33が縦配置されて第1面部31および第2面部32に溶接されている。また、第1面部31には、2個の貫通孔が、上記リブ板33で1個ずつに分けられた態様で形成されている。同様に、第2面部32には、2個の貫通孔が、上記リブ板33で1個ずつに分けられた態様で形成されている。第2面部32の2個の貫通孔の配置は、2個の埋設ナット部12の配置位置に対応している。また、第1面部31の2個の貫通孔の配置は、後述する2個のアンカーボルト21の配置位置に対応している。
【0021】
自立補助部材3の第1面部31の下面の隅部4か所には、当該自立補助部材3の水平方向の移動に対して後述する後打ちのコンクリートC(
図5参照)の抵抗を受ける突起部(コッター筋)34が溶接により設けられている。突起部34としては、例えば、長さ30mmで直径10mm程度の鋼棒等が用いられる。なお、突起部34を第1面部31の上面に設けることもできる。
【0022】
基礎2には、内部に鉄筋が埋設されるとともに、下部側が基礎2内に埋設されて上端側が基礎2の上端から突出するようにアンカーボルト21が設けられている。基礎2は基礎を作製するコンクリートBで作製される。アンカーボルト21は、各自立補助部材3の第1面部31に対して2本設けられる。各2本のアンカーボルト21は、プレキャスト腰壁1の面外方向およびプレキャスト腰壁1の延設方向に離間することで対角に位置しており、各2本のアンカーボルト21がプレキャスト腰壁1の面外方向に離間しないで並ぶ形態に比べて、プレキャスト腰壁1の面外方向に対する支持力を高めることができる。
【0023】
アンカーボルト21は、例えば、以下のようにして設けられる。すなわち、基礎2を作製するコンクリートBの投入前に、基礎型枠の上端側に釘等で固定した支持角材によって両縁部が支えられた鉄板の孔部にアンカーボルト21の上端ボルト部21aを通し、この上端ボルト部21aへのナットの締結によって上記鉄板からアンカーボルト21を垂下させ、この垂下状態でコンクリートBを投入して養生することで、アンカーボルト21の下部側をコンクリートBに埋設することができる。
【0024】
また、基礎2の上部の屋外寄りの箇所には、例えば螺子部材の回転操作で高さが変化する高さ調整部材23が埋設されている。この高さ調整部材23の上端には、基礎2上に載せられたプレキャスト腰壁1の下端面が当接する。すなわち、プレキャスト腰壁1の下端面と基礎2の上端との間に高さ調整部材23が設けられ、この高さ調整部材23を用いて、プレキャスト腰壁1の下端面の高さ調整を行うことができる。なお、高さ調整部材23をプレキャスト腰壁1の下端面側に埋設する態様とすることもできる。
【0025】
なお、
図3(A),(B)および
図4に示すように、柱5が支持される基礎2の柱支持部22には、例えば、上面から突出する柱用アンカーボルトのボルト部22aが位置しており、柱5の柱脚部51に形成された貫通孔に上記ボルト部22aが通され、ナット締結によって、柱5が柱支持部22に固定される。プレキャスト腰壁1は、柱5よりも屋外側に配置される。また、柱5の横に配置されるプレキャスト腰壁1の端面の下側角部には、柱支持部22と干渉しないように切欠きが形成されている。
【0026】
この実施形態のプレキャスト腰壁設置工法では、基礎2の作製に際して、高さ調整部材23を埋設するとともに、アンカーボルト21の下部側をコンクリートBで埋設固定する工程と、基礎2に下部側が埋設されたアンカーボルト21の上端ボルト部21aに、基礎2の上端に配置されたプレキャスト腰壁1の下部側の屋内側面部を、自立補助部材3を介在させて連結することにより、プレキャスト腰壁1を基礎2上で自立させる工程と、
図5(A),(B)に示すように、プレキャスト腰壁1の下部、自立補助部材3、柱支持部22、および柱脚部51を後打ちのコンクリートCで埋める後打ち工程と、を含む。なお、後打ちのコンクリートCは、基礎2とプレキャスト腰壁1との間に配置されたシール材Sによって外部への漏出が防止される。
【0027】
上記のプレキャスト腰壁設置工法であれば、プレキャスト腰壁1を、アンカーボルト21および自立補助部材3によって、基礎2の上端上で自立させるので、このプレキャスト腰壁1を柱5により保持する必要は無く、プレキャスト腰壁1を柱5よりも先に設置して建物構築を効率化することが可能となる。また、プレキャスト腰壁1は基礎2上で自立するので、床や土間等においてプレキャスト腰壁1の支持用スペースを確保する必要も生じない。また、アンカーボルト21および自立補助部材3を用いてプレキャスト腰壁1を自立させるので、定着用鉄筋を突出させたプレキャスト腰壁とする必要が無く、プレキャスト腰壁1の搬送等を含めた全体的な施工の効率化も図れる。
【0028】
また、この実施形態では、プレキャスト腰壁1の下端面と基礎2の上端との間に設けられた高さ調整部材23を用いて当該下端面の高さ調整を行うので、基礎2上に、高い鉛直度でプレキャスト腰壁1を設置することが容易になる。
【0029】
また、各自立補助部材3の第1面部31の上記貫通孔に通した上端ボルト部21aに、ナットによって当該第1面部31を固定し、プレキャスト腰壁1の下部側の屋内側面部に埋設された埋設ナット部12に、第2面部32の上記貫通孔から通したボルト4を螺合させ、当該第2面部32にプレキャスト腰壁1を固定するので、基礎2上に、比較的簡単な締結作業でプレキャスト腰壁1を自立させることができる。
【0030】
また、上記のプレキャスト腰壁設置工法により、実施形態のプレキャスト腰壁支持構造が得られる。このプレキャスト腰壁支持構造は、基礎2に下部側が埋設されたアンカーボルト21と、このアンカーボルト21の上端ボルト部21aに固定されるとともに、プレキャスト腰壁1の下部側の屋内側面部に固定されることで当該プレキャスト腰壁1を基礎2上で自立させる自立補助部材3と、プレキャスト腰壁1の下部および自立補助部材3に対して後打ちされたコンクリートCと、を備える。
【0031】
また、実施形態のプレキャスト腰壁支持構造は、プレキャスト腰壁1の下端面と基礎2の上端との間に高さ調整部材23を備える。
【0032】
さらに、実施形態のプレキャスト腰壁支持構造は、自立補助部材3の第1面部31の下面(または上面)に、当該自立補助部材3の水平方向の移動に対して上記後打ちのコンクリートCの抵抗を受ける突起部34を備える。これにより、
図6(A)に示すように、プレキャスト腰壁1の屋外側への面外方向のせん断力を、突起部34によって上記後打ちのコンクリートCに伝達させる一方、各2本のアンカーボルト21には引張力を負担させることができる。また、プレキャスト腰壁1の屋外方向の曲げモーメント(転倒力)に対しては、各2本のアンカーボルト21に引張力を負担させることができる。アンカーボルト21は、上記引張力を負担できるサイズを有するものであり、仮設的なものではない。
【0033】
また、
図6(B)に示すように、プレキャスト腰壁1の屋内方向の曲げモーメント(転倒力)は、屋外寄りの方の1つのアンカーボルト21に対する引張力と、このアンカーボルト21よりも屋内寄りの側での自立補助部材3の第1面部31の下面によるコンクリートCに対する圧縮力に置換される。また、この圧縮力によって発生する第1面部31の下面とコンクリートCとの間の摩擦力によって、プレキャスト腰壁1にかかるせん断力をコンクリートCへ伝達することもできる。
【0034】
(実施形態2)
以下、この発明の一態様に係る他の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、実施形態1で示した部材と同様の部材には、同一の符号を付記してその説明を省略する。また、以下では、実施形態1と異なる部分を主に述べており、ここで特に述べていない事項については、実施形態1と共通する。
【0035】
図7(A),(B)に示すように、この実施形態の施工方法においては、プレキャスト腰壁1Aを用いる。このプレキャスト腰壁1Aは、プレキャスト腰壁1Aの下部側の屋内側面部に、自立補助部材3A用の埋設ナット部12とは別の第2埋設ナット部13が埋設されており、この第2埋設ナット部13に、プレキャスト腰壁1Aの水平方向の移動に対して上記後打ちのコンクリートCの抵抗を受ける棒状部材6を螺合させることができる。棒状部材6の第2埋設ナット部13への螺合は、例えば、基礎2上へのプレキャスト腰壁1Aの自立処理工程後、コンクリートCの打設前に行う。なお、自立補助部材3Aは、自立補助部材3において、突起部34を有しないものに相当する。
【0036】
棒状部材6としては、例えば、一端側に螺子部が形成された異形鉄筋、或いは、アンカーボルトと同様、両端に螺子部が形成され、一方の螺子部にナット等が螺合されたものや、丸鋼の一端側に螺子部が形成され他端側に板部材が溶接されたもの等が用いられる。
【0037】
この実施形態2によれば、
図8に示すように、プレキャスト腰壁1Aの面外方向、面内方向および延設方向のせん断力を、棒状部材6によって上記後打ちのコンクリートCに伝達させることができる。
【0038】
また、上記のプレキャスト腰壁設置工法により、実施形態2のプレキャスト腰壁支持構造が得られる。すなわち、このプレキャスト腰壁支持構造においては、プレキャスト腰壁1Aの下部側の屋内側面部に、自立補助部材3の取り付け位置とは別の位置に第2埋設ナット部13が埋設されており、この第2埋設ナット部13に、当該プレキャスト腰壁1Aの水平方向の移動に対して上記後打ちのコンクリートCの抵抗を受ける棒状部材6が螺合されている。
【0039】
なお、上記の実施形態1および実施形態2において、自立補助部材3,3Aの第1面部31の貫通穴は、アンカーボルト21の設置誤差を考慮して、当該アンカーボルト21の外径よりも10mm程度大きい直径を有する。
【0040】
(実施形態3)
以下、この発明の一態様に係る他の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、実施形態1で示した部材と同様の部材には、同一の符号を付記してその説明を省略する。また、以下では、実施形態1と異なる部分を主に述べており、ここで特に述べていない事項については、実施形態1と共通する。
【0041】
図9に示すように、この実施形態の施工方法においては、プレキャスト腰壁1と自立補助部材3Aとを用いる。そして、自立補助部材3Aの第1面部31の上記貫通孔よりも小径(アンカーボルト21の外径+1mm程度)の小径貫通孔を有する例えば角形の座金35を、アンカーボルト21の上端ボルト部21aに外嵌めし、座金35の周囲部を第1面部31の上面上に溶接する。これによれば、現場溶接作業が必要になるものの、プレキャスト腰壁1に対するせん断力を、アンカーボルト21に伝達させることができる。
【0042】
また、上記のプレキャスト腰壁設置工法により、実施形態3のプレキャスト腰壁支持構造が得られる。すなわち、このプレキャスト腰壁支持構造においては、自立補助部材3Aの第1面部31の上記貫通孔よりも小径の小径貫通孔を有する座金35がアンカーボルト21の上端ボルト部21aに外嵌めされており、座金35の周囲部が第1面部31の上面上に溶接されている。
【0043】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 :プレキャスト腰壁
1A :プレキャスト腰壁
2 :基礎
3 :自立補助部材
3A :自立補助部材
4 :ボルト
5 :柱
6 :棒状部材
11 :鉄筋
12 :埋設ナット部
13 :第2埋設ナット部
21 :アンカーボルト
21a :上端ボルト部
22 :柱支持部
22a :ボルト部
23 :高さ調整部材
31 :第1面部
32 :第2面部
33 :リブ板
34 :突起部
35 :角座金
51 :柱脚部
B :基礎を作製するコンクリート
C :後打ちのコンクリート
S :シール材