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  • 特開-列車運行装置および列車運行方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126221
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】列車運行装置および列車運行方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/12 20220101AFI20240912BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B61L27/12
B61L25/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034460
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 祥太
(72)【発明者】
【氏名】宮内 努
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘隆
(72)【発明者】
【氏名】細川 恭彦
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB02
5H161BB06
5H161BB20
5H161JJ27
5H161JJ29
(57)【要約】
【課題】停電などにより変電所が機能しない緊急事態発生時に、蓄電装置の残量内でより多くの列車を緊急走行可能とする列車運行装置を提供する。
【解決手段】列車運行装置は、路線上の列車の停車位置を取得する列車停車位置取得部と、列車に電力を供給する蓄電装置の蓄電装置残量を取得する蓄電装置残量取得部と、列車の補機電力を取得する補機電力取得部と、停電を含む緊急事態発生時に、列車の停車位置、蓄電装置残量および列車の補機電力に基づいて当該列車に対する緊急走行ダイヤを作成する緊急走行ダイヤ作成部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路線上の列車の停車位置を取得する列車停車位置取得部と、
前記列車に電力を供給する蓄電装置の蓄電装置残量を取得する蓄電装置残量取得部と、
前記列車の補機電力を取得する補機電力取得部と、
停電を含む緊急事態発生時に、前記列車の停車位置、前記蓄電装置残量および前記列車の補機電力に基づいて当該列車に対する緊急走行ダイヤを作成する緊急走行ダイヤ作成部と
を備える列車運行装置。
【請求項2】
請求項1に記載の列車運行装置であって、
前記緊急走行ダイヤ作成部は、前記蓄電装置残量により前記路線内の全てまたは一部の列車の緊急走行が完了できるか否かを判断し、完了できない場合には、前記列車の乗車率および前記列車の特性の少なくともいずれかに基づく前記補機電力の低減可能な優先度に従い当該優先度の高い列車から順に前記補機電力を制限するための補機電力制限指令を出力する
ことを特徴とする列車運行装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の列車運行装置であって、
前記緊急走行ダイヤに基づいて前記列車を制御し、前記補機電力制限指令が出力された場合には当該補機電力制限指令に基づいて前記列車の補機電力も制限する列車制御装置を
さらに備える列車運行装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の列車運行装置であって、
前記列車停車位置取得部は、停電を含む緊急事態発生直前の前記列車の在線位置および速度から前記停電を含む緊急事態発生後の前記列車の停車位置を推定する
ことを特徴とする列車運行装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の列車運行装置であって、
前記補機電力取得部は、季節、曜日および時間帯の少なくともいずれか一つで参照可能な前記列車の補機電力のデータベースを有し、停電を含む緊急事態発生時の季節、曜日および時間帯の少なくともいずれか一つで前記データベースを参照して前記列車の補機電力を取得する
ことを特徴とする列車運行装置。
【請求項6】
停電を含む緊急事態発生時に、路線上の列車の停車位置、前記列車に電力を供給する蓄電装置の蓄電装置残量および前記列車の補機電力に基づいて、前記列車に対する緊急走行ダイヤを作成する
ことを特徴とする列車運行方法。
【請求項7】
請求項6に記載の列車運行方法であって、
前記蓄電装置残量により前記路線内の全てまたは一部の列車の緊急走行が完了できるか否かを判断し、完了できない場合には、前記列車の乗車率および前記列車の特性の少なくともいずれかに基づく前記補機電力の低減可能な優先度に従い当該優先度の高い列車から順に前記補機電力を制限するための補機電力制限指令を出力する
ことを特徴とする列車運行方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の列車運行方法であって、
前記緊急走行ダイヤに基づいて前記列車を制御すると共に、前記補機電力制限指令を出力する際には当該補機電力制限指令に基づいて前記列車の補機電力も制限する
ことを特徴とする列車運行方法。
【請求項9】
請求項6または7に記載の列車運行方法であって、
停電を含む緊急事態発生直前の前記列車の在線位置および速度から前記停電を含む緊急事態発生後の前記列車の停車位置を推定する
ことを特徴とする列車運行方法。
【請求項10】
請求項6または7に記載の列車運行方法であって、
季節、曜日および時間帯の少なくともいずれか一つで参照可能な前記列車の補機電力のデータベースを設け、停電を含む緊急事態発生時の季節、曜日および時間帯の少なくともいずれか一つで前記データベースを参照して前記列車の補機電力を取得する
ことを特徴とする列車運行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電などの緊急時を想定した列車運行装置および列車運行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
停電が発生すると、電力会社から変電所への電力供給が停止し、列車は緊急停車する。その上で、電力供給が復旧するまで多くの時間を要する場合があり、旅客を長時間列車内に閉じ込める恐れがある。
【0003】
これを防止するため、地上蓄電装置や車上蓄電装置を導入する場合がある。これら蓄電装置を導入することで、最寄り駅への列車の緊急走行が可能となり、停電発生時の旅客の閉じ込め時間を短縮することが可能となる。
【0004】
ただし、停電発生後に蓄電装置からの給電に切り替わると、列車が搭載する補機により電力が消費され、蓄電装置の残量は時々刻々低下していく。そのため、緊急走行順序の決定を迅速に行い、なるべく早く緊急走行へ移行する必要がある。しかし、どの順番で列車を緊急走行させれば、より多くの列車を走行させることが可能か、を迅速に判断することには困難な面がある。
【0005】
この課題を解決する技術として、例えば、特許文献1がある。特許文献1には、車上に搭載した蓄電装置を用いて、列車を駅まで緊急走行させる指示をする列車走行指示手段が提案されている。この列車走行指示手段は、列車と駅までの距離、列車毎の乗車率および列車の種類に応じて優先度を判断し、緊急走行ダイヤを作成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-40955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術を利用することで、緊急走行ダイヤを速やかに決定し、緊急走行への移行を迅速に行うことが可能となる。しかし、特許文献1には、列車の補機電力に関しては、蓄電量が駅間に在線する列車を1本も駅まで走行させることができない量にまで減少した場合に、駅間に在線する列車の補機に残りの蓄電電力を供給する点が言及されているが、列車の補機電力を考慮して緊急走行ダイヤの決定を行うことについては言及されていない。
【0008】
また、停電などの緊急事態発生時には、信号システムが正常に動作していないケースも想定され、その場合は、低速で最寄り駅まで走行することになり、全列車の走行完了までに多くの時間を要する。走行完了までの時間が長いと、補機電力により蓄電装置の残量が低下することは避けられない。そのため、補機電力を考慮せずに、駅までの距離や乗車率だけで緊急走行ダイヤを決定すると、走行可能な列車本数が減る可能性がある。
【0009】
本発明の課題は、停電などにより変電所が機能しない緊急事態発生時に、蓄電装置の残量内でより多くの列車を緊急走行可能とする列車運行装置および列車運行方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の列車運行装置の一つは、路線上の列車の停車位置を取得する列車停車位置取得部と、列車に電力を供給する蓄電装置の蓄電装置残量を取得する蓄電装置残量取得部と、列車の補機電力を取得する補機電力取得部と、停電を含む緊急事態発生時に、列車の停車位置、蓄電装置残量および列車の補機電力に基づいて当該列車に対する緊急走行ダイヤを作成する緊急走行ダイヤ作成部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、停電などの緊急事態発生時にも蓄電装置の残量内でより多くの列車を緊急走行可能にする緊急走行ダイヤを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係る列車運行装置の構成例を示すブロック図である。
図2】緊急走行ダイヤ作成部が実行する処理のフローチャートの一例を示す図である。
図3】緊急走行ランカーブの一例を示す図である。
図4】本発明の実施例2に係る列車運行装置の構成例を示すブロック図である。
図5】本発明の実施例3に係る列車運行装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態として実施例1から3について説明する。なお、これら実施例により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【実施例0014】
図1は、本発明の実施例1に係る列車運行装置の構成例を示すブロック図である。
実施例1に係る列車運行装置は、列車停車位置取得部101、蓄電装置残量取得部102、補機電力取得部103、緊急走行ダイヤ作成部104および列車制御装置105から構成される。
【0015】
列車停車位置取得部101は、対象路線内で緊急停車した各列車の停車位置を取得し、停車位置情報111として出力する。列車の停車位置は、運行管理装置や信号保安システムから取得したものを利用してもよいし、車上装置が認識している列車位置を無線通信で受信したものを利用してもよい。すなわち、列車停車位置取得部101の設置は、地上側でも車上側でもよい。
【0016】
蓄電装置残量取得部102は、対象路線内の列車に電力を供給可能な蓄電装置の蓄電装置残量を取得し、蓄電装置残量情報112として出力する。蓄電装置残量取得部102の設置は、蓄電装置の設置場所に応じて、地上側でも車上側でもよい。
【0017】
補機電力取得部103は、対象路線内に在線する各列車の補機電力を取得し、補機電力情報113として出力する。補機電力は、列車内で使用される機器の種類や稼働状況に応じて瞬時的に変動する場合があるため、直近の数分~数十分程度の電力の平均値を計算して用いるのが望ましい。また、補機電力取得部103の設置は、車上側となる。
【0018】
緊急走行ダイヤ作成部104は、停車位置情報111、蓄電装置残量情報112および補機電力情報113を入力し、緊急走行ダイヤ114を作成して出力すると共に、必要に応じて補機電力制限指令124を出力する。緊急走行ダイヤ作成部104の処理の詳細については、後述する。また、緊急走行ダイヤ作成部104の設置は、地上側が一般となる。
【0019】
列車制御装置105は、入力された緊急走行ダイヤ114に従い列車を制御し、補機電力制限指令124の入力があれば、補機電力制限指令124に基づき補機の消費電力を低下させた状態で緊急走行ダイヤ114に従い列車を制御する。列車制御装置105の設置は、地上側でも車上側でもよい。
【0020】
図2は、緊急走行ダイヤ作成部104が実行する処理のフローチャートの一例を示す図である。このフローチャートを実行する主体は、緊急走行ダイヤ作成部104であるが、以下ではこの主体の記載を省略する。
【0021】
ステップS200では、緊急走行が必要な列車を探索するために、各列車の緊急停車位置から、緊急走行が必要か否かを判定する。
緊急走行が必要か否かの判定方法の一例としては、列車の扉が所定の個数、ホームに差し掛かっているかを確認し、差し掛かっている場合は緊急走行不用、差し掛かっていない場合は緊急走行必要と判定する方法が考えられる。
【0022】
ステップS201以降の処理は、ステップS200で緊急走行必要と判定された列車を対象に、各種計算処理が行われる。
【0023】
ステップS201では、各列車が緊急停車位置を出発してから次駅停目位置に到着するまでの緊急走行ランカーブを計算する。
緊急走行ランカーブは、例えば、図3に示す一例のように、緊急走行時の制限速度まで力行した後に、定速走行で緊急走行時の制限速度を維持し、減速して次駅停目位置に停車するように作成される。また、緊急走行ランカーブとして、惰行運転などを組み込んだ省エネ走行のランカーブを作成してもよい。
【0024】
ステップS202では、各列車の緊急走行消費電力量ERunを計算する。
緊急走行消費電力量ERunは、緊急走行ランカーブに基づいて走行する際に消費する電力量であり、その計算式を式(1)に示す。
【数1】
ENDt:緊急走行ランカーブ走行終了までにかかる時間
Run :制駆動装置の電力[kW]
APS :補機電力[kW]
【0025】
ここで、制駆動装置の電力PRunの計算式を、以下の式(2)に示す。また、補機電力PAPSは、補機電力取得部103から入力する。
【数2】
Tf:引張力[kN]
力行時、定速走行時、減速時で異なる。
力行時は、運転操作ノッチ、速度、乗車率に応じて変化するため、これを考慮し
て算出する。
定速走行時は、曲線抵抗、勾配抵抗、走行抵抗を合算して算出する。なお、合算
値の符号が負となった場合は0とする。
減速時は0とする。
Bf:電制力[kN]
力行時、定速走行時、減速時で異なる。
力行時は0とする。
定速走行時は、曲線抵抗、勾配抵抗、走行抵抗を合算して算出する。なお、合算
値の符号が正となった場合は0とする。
減速時は、運転操作ノッチ、速度、乗車率に応じて変化するため、これを考慮し
て算出する。
η :機器効率
V :速度[km/h]
before:計算の1step前の時点の速度[km/h]
【0026】
ステップS203では、緊急走行順序を設定する。設定方法は任意でよく、例えば、列車番号が若い順に設定してもよい。
【0027】
ステップS204では、各列車の待機時間TWaitを計算する。待機時間TWaitの計算式を、以下の式(3)に示す。
【数3】
WaitBefore :走行順序が1つ前の順番の列車の待機時間[s]
走行順序が1番目の列車の待機時間を計算する場合には、この値は
0となる。
RunBefore :走行順序が1つ前の順番の列車の緊急走行時間[s]
走行順序が1番目の列車の待機時間を計算する場合には、この値は
0となる。
BufBefore :走行順序が先の列車の緊急走行が終了してから、次の列車を動か
し始めるまでの準備にかかる時間[s]
走行順序が1番目の列車の待機時間を計算する場合には、緊急停車
から緊急走行を開始するまでの準備時間をあらかじめ設定し、その
値を用いることが望ましい。
【0028】
ステップS205では、各列車の待機電力量EWaitを計算する。待機電力量EWaitの計算式を、以下の式(4)に示す。
【数4】
【0029】
ステップS206では、全列車の合計消費電力量ESumを計算する。合計消費電力量ESumの計算式を、以下の式(5)に示す。
【数5】
【0030】
ステップS207では、蓄電装置が出力できる電力量と、ステップS206で計算した全列車の合計消費電力量ESumとを比較し、蓄電装置が出力できる電力量の方が大きい場合(Y)は、全列車走行可能と判定してステップS208へ進み、全列車の合計消費電力量の方が大きい場合(N)は、全列車走行不可能と判定してステップS209へ進む。
なお、列車に電力を供給可能な蓄電装置が複数存在する場合は、全ての蓄電装置が出力できる電力量を合算して判定に用いることが望ましい。
【0031】
ステップS208では、各列車の出発時刻と到着時刻を計算し、緊急走行ダイヤ114として各列車へ出力する。出発時刻CStartの計算式を、以下の式(6)に、到着時刻CEndの計算式を、以下の式(7)に、それぞれ示す。
【数6】
Base:基準時刻
各列車が緊急停車した時刻に、緊急停車から緊急走行を開始するまでの準備
時間を加算した時刻を設定することが望ましい。
【0032】
ステップS209では、試行可能な緊急走行順序のパターンが存在しないか否かを判定し、存在しないと判定された場合(Y)には、ステップS211へ、存在すると判定された場合(N)には、ステップS210へ進む。
【0033】
ステップS210では、各列車の緊急走行順序を更新し、ステップS204へ進む。更新方法としては、まだ試行していない緊急走行順序を総当たり的に設定する方法が考えられる。
【0034】
ステップS211では、これ以上補機電力を低減可能な列車が存在しないか否かを判定し、存在しないと判定された場合(Y)には、ステップS208へ、存在すると判定された場合(N)には、ステップS212へ進む。
【0035】
ステップS212では、優先度の高い列車から順に低減する形で、電力量計算に用いる各列車の補機電力PAPSを更新する。補機電力PAPSを低減する際は、車両の制御に関わる装置が消費する電力は最低限確保しつつ、照明機器や空調装置などの消費電力分を制限する形で低減することが望ましい。
【0036】
また、補機電力を低減する列車の優先順位については、旅客の快適性を考慮し、気密性が高く空調を停止してもしばらく快適性が維持できる列車(例えば、新幹線や在来線の特急列車)、冷房使用時には乗車率が低い列車、暖房使用時には乗車率が高い列車、の優先度が高くなるように設定することが望ましい。
【0037】
ステップS213では、ステップS212で補機電力の更新が発生した場合に、補機電力制限指令124を対象となる列車へ出力する。
【0038】
本実施例1の構成により、補機電力を考慮して高精度に緊急走行ダイヤを作成することが可能となる。また、停車時の補機電力を維持した状態で全列車が緊急走行できない場合においても、優先度の高い列車の補機電力を低減する指令を出し、より多くの列車を走行させることができる。
【0039】
なお、本実施例1では、緊急走行ダイヤを作成する際に、緊急走行順序を総当たり的に試行して緊急走行ダイヤを作成する手法について説明したが、必ずしも毎回総当たり的に計算を行う必要はない。
【0040】
例えば、地下鉄のように一定の間隔で列車が発着する路線では、列車同士の走行位置が一致するタイミングが数分に1回程度発生する。また、季節が同じであれば、補機電力も大きく変化しない。
【0041】
そのため、緊急走行を行った際に、緊急走行ダイヤ作成に使用した緊急走行順序を、季節や時間帯で参照できる形でデータベースに格納し、同じ季節や時間帯に停電などの緊急事態が発生した際に、データベースから緊急走行順序を取得し、取得した緊急走行順序を基に回送ダイヤを作成してもよい。
また、局所最適法などの探索アルゴリズムを用いて、探索した中で最も総消費電力量が小さい緊急走行順序を取得し、回送ダイヤを作成してもよい。
【実施例0042】
図4は、本発明の実施例2に係る列車運行装置の構成を示すブロック図である。
実施例2に係る列車運行装置は、列車停車位置取得部401、蓄電装置残量取得部102、補機電力取得部103、緊急走行ダイヤ作成部104および列車制御装置105から構成される。ここで、列車停車位置取得部401以外の構成は、実施例1と同じであるため、説明を省略する。
【0043】
列車停車位置取得部401は、停電などの緊急事態発生直前の各列車の位置および速度を起点とし、非常制動時の減速度で走行を続けた場合の停車位置を推定し、推定した停車位置を停車位置情報111として出力する。
【0044】
本実施例2によれば、停電などの緊急事態発生に伴い信号システムや運行管理装置等の列車位置を取得するシステムが停止した状況においても、列車位置を推定して緊急走行ダイヤを作成することが可能となる。
【実施例0045】
図5は、本発明の実施例3に係る列車運行装置の構成を示すブロック図である。
実施例3に係る列車運行装置は、列車停車位置取得部101、蓄電装置残量取得部102、補機電力取得部503、緊急走行ダイヤ作成部104および列車制御装置105から構成される。ここで、補機電力取得部503以外の構成は、実施例1と同じであるため、説明を省略する。
【0046】
補機電力取得部503は、季節、曜日、時間帯等で参照可能な補機電力のデータベース(図5では、補機電力データベースとして示す)を有し、停電などの緊急事態発生時の季節、曜日、時間帯等でこのデータベースを参照して補機電力を取得し、補機電力情報113として出力する。
【0047】
本実施例3によれば、列車の補機電力をリアルタイムで取得する手段が無い路線においても、列車の補機電力を考慮した高精度な緊急走行ダイヤを作成することが可能となる。
【0048】
以上で説明した実施例1から3に係る列車運行装置の設置に関しては、地上側でも、車上側でも、列車運行装置の構成要素を地上側と車上側とで混在させる形でもよい。
また、以上の実施例によれば、少なくとも以下の各技術事項が包含されることになる。
<技術事項1>
路線上の列車の停車位置を取得する列車停車位置取得部と、列車に電力を供給する蓄電装置の蓄電装置残量を取得する蓄電装置残量取得部と、列車の補機電力を取得する補機電力取得部と、停電を含む緊急事態発生時に、列車の停車位置、蓄電装置残量および列車の補機電力に基づいて当該列車に対する緊急走行ダイヤを作成する緊急走行ダイヤ作成部とを備える列車運行装置。
【0049】
<技術事項2>
上記技術事項1に記載した列車運行装置であって、緊急走行ダイヤ作成部は、蓄電装置残量により路線内の全てまたは一部の列車の緊急走行が完了できるか否かを判断し、完了できない場合には、列車の乗車率および列車の特性の少なくともいずれかに基づく優先順位に従い当該優先順位の高い列車から順に前記補機電力を制限するための補機電力制限指令を出力する。
【0050】
<技術事項3>
上記技術事項1または2に記載した列車運行装置であって、緊急走行ダイヤに基づいて列車を制御し、補機電力制限指令が出力された場合には当該補機電力制限指令に基づいて列車の補機電力も制限する列車制御装置をさらに備える。
【0051】
<技術事項4>
上記技術事項1から3のいずれかに記載した列車運行装置であって、列車停車位置取得部は、停電を含む緊急事態発生直前の列車の在線位置および速度から停電を含む緊急事態発生後の列車の停車位置を推定する。
【0052】
<技術事項5>
上記技術事項1から4のいずれかに記載した列車運行装置であって、補機電力取得部は、季節、曜日および時間帯の少なくともいずれか一つで参照可能な列車の補機電力のデータベースを有し、停電を含む緊急事態発生時の季節、曜日および時間帯の少なくともいずれか一つでデータベースを参照して列車の補機電力を取得する。
【0053】
<技術事項6>
停電を含む緊急事態発生時に、路線上の列車の停車位置、列車に電力を供給する蓄電装置の蓄電装置残量および列車の補機電力に基づいて、列車に対する緊急走行ダイヤを作成する列車運行方法。
【0054】
<技術事項7>
上記技術事項6に記載した列車運行方法であって、蓄電装置残量により路線内の全てまたは一部の列車の緊急走行が完了できるか否かを判断し、完了できない場合には、列車の乗車率および列車の特性の少なくともいずれかに基づく補機電力の低減可能な優先度に従い当該優先度の高い列車から順に補機電力を制限するための補機電力制限指令を出力する。
【0055】
<技術事項8>
上記技術事項6または7に記載した列車運行方法であって、緊急走行ダイヤに基づいて列車を制御すると共に、補機電力制限指令を出力する際には当該補機電力制限指令に基づいて列車の補機電力も制限する。
【0056】
<技術事項9>
上記技術事項6から8のいずれかに記載した列車運行方法であって、停電を含む緊急事態発生直前の列車の在線位置および速度から停電を含む緊急事態発生後の列車の停車位置を推定する。
【0057】
<技術事項10>
上記技術事項6から9のいずれかに記載した列車運行方法であって、季節、曜日および時間帯の少なくともいずれか一つで参照可能な列車の補機電力のデータベースを設け、停電を含む緊急事態発生時の季節、曜日および時間帯の少なくともいずれか一つでデータベースを参照して列車の補機電力を取得する。
【0058】
本発明は、上記の実施例1から3に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施例1から3で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施例に係る構成の一部を、他の実施例に係る構成に追加または置換することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
101,401・・・列車停車位置取得部、102・・・蓄電装置残量取得部、
103,503・・・補機電力取得部、104・・・緊急走行ダイヤ作成部、
105・・・列車制御装置
図1
図2
図3
図4
図5