(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126232
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両用シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B60N2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034481
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000151760
【氏名又は名称】株式会社東洋シート
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白銀 秀基
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087BC04
3B087BC05
(57)【要約】
【課題】上下方向の寸法を短くしてコンパクト化を図ることが可能な車両用シートスライド装置を提供する。
【解決手段】車両用シートスライド装置1のロックプレート4、5は、車幅方向に延びるとともに、アッパレール3に対して車幅方向に変位可能に保持されている。ロアレール2の内部またはアッパレール3の内部には、前後方向に延びるシャフト62が軸芯周りに回動可能に支持されている。シャフト62の前側部分には、ロック解除時の力をシャフト62に伝達してシャフト62を回動させる入力部65が軸芯から径方向にオフセットして設けられている。シャフト62には、ロックプレート4、5に係合し、回動力をロックプレート4、5に作用させるための解除操作部66が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアに固定されて車両前後方向に延びるロアレールと、前記ロアレールに対して車両前後方向にスライド可能に係合するとともに、シートの下部に固定されたアッパレールとを備え、前記アッパレールに保持されたロックプレートを、前記ロアレールの車両前後方向に並ぶ複数のロック孔のうち、任意のロック孔に差し込むことよって前記アッパレールを前記ロアレールに対してロック可能にした車両用シートスライド装置であって、
前記アッパレールに対して上下方向に揺動自在に取り付けられ、前記ロックを解除する際に乗員によって操作されるロック解除操作用部材を備え、
前記ロックプレートは、車幅方向に延びるとともに、前記アッパレールに対して車幅方向に変位可能に保持され、前記ロックプレートにおける車幅方向一方側にはロック歯が形成され、
前記ロック孔は、前記ロアレールの車幅方向一方側に前記ロック歯に対応するように形成され、
前記ロアレールの内部または前記アッパレールの内部には、車両前後方向に延びるシャフトが軸芯周りに回動可能に支持され、
前記シャフトの前側部分には、前記ロック解除操作用部材のロック解除時の揺動力を前記シャフトに伝達して当該シャフトを前記軸芯周りの所定方向に回動させる入力部が前記軸芯から径方向にオフセットして設けられ、
前記シャフトにおける前記入力部から後側に離れた部分には、前記ロックプレートに係合し、前記所定方向の回動力を前記ロックプレートに対して車幅方向他方側に向けて作用させるための解除操作部が設けられていることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、
前記ロックプレートは、第1ロックプレートと、前記第1ロックプレートの下に配置される第2ロックプレートとを含んでおり、
前記第1ロックプレート及び前記第2ロックプレートの車幅方向中間部分には、それぞれ上下方向に貫通する第1貫通孔及び第2貫通孔が形成され、
前記解除操作部は、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔の内部に配置されるとともに、前記所定方向の回動によって前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔における車幅方向他方側の縁部を押圧するように配置されることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シートを前後方向にスライドさせて所望の位置に固定可能にする車両用シートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のシートは、車両用シートスライド装置を介して車体フロアに取り付けられている。車両用シートスライド装置は、フロアに固定されたロアレールと、シートに固定されたアッパレールとを備えており、アッパレールがロアレールに対して前後方向にスライド可能に係合している。
【0003】
特許文献1に開示されている車両用シートスライド装置のアッパレールには、ロックプレートが上下方向に変位可能に保持されており、ロックプレートは下方に向けて常時付勢されている。ロックプレートの下部には複数のロック歯が前後方向に並ぶように形成されている。また、アッパレールにおけるロックプレートから前後方向に離れた部分には、ロック解除レバーが上下方向に揺動自在に取り付けられており、ロック解除レバーは、操作部材によって操作されるようになっている。
【0004】
一方、ロアレールにおけるロック歯に対応する部分には、複数のロック孔が前後方向に間隔をあけて複数形成されている。ロック時には、下方に付勢されているロックプレートのロック歯がロアレールのロック孔に差し込まれた状態になり、これにより、アッパレールがロアレールに対して固定される。ロックを解除する際には、乗員が操作部材を上方に揺動させると、操作部材の揺動力がロック解除レバーに伝達されてロック解除レバーが上下方向に揺動し、ロック解除レバーの揺動によってロックプレートが上方へ変位する。これにより、ロック歯がロック孔から抜けてアッパレールがロアレールに対して前後方向にスライド可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、ロックプレートをロック位置からロック解除位置に切り替える際に上方に変位させる必要がある。このため、ロックプレートが車両用シートスライド装置から上方へ突出可能なように車両用シートスライド装置の上方にスペースを確保しておかなければならない。また、アッパレールの上部はロアレールから上方へ突出しており、このアッパレールの上部にロック解除レバーが支持されているので、車両用シートスライド装置の上方にはロック解除レバーを配設するためのスペースも必要になる。つまり、特許文献1の車両用シートスライド装置では、上下方向のコンパクト化が難しく、ひいてはシートとフロアとの間に無駄なスペースができてしまう場合がある。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、上下方向の寸法を短くしてコンパクト化を図ることが可能な車両用シートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、車両のフロアに固定されて車両前後方向に延びるロアレールと、前記ロアレールに対して車両前後方向にスライド可能に係合するとともに、シートの下部に固定されたアッパレールとを備え、前記アッパレールに保持されたロックプレートを、前記ロアレールの車両前後方向に並ぶ複数のロック孔のうち、任意のロック孔に差し込むことよって前記アッパレールを前記ロアレールに対してロック可能にした車両用シートスライド装置を前提とすることができる。車両用シートスライド装置は、前記アッパレールに対して上下方向に揺動自在に取り付けられ、前記ロックを解除する際に乗員によって操作されるロック解除操作用部材をさらに備えている。前記ロックプレートは、車幅方向に延びるとともに、前記アッパレールに対して車幅方向に変位可能に保持され、前記ロックプレートにおける車幅方向一方側にはロック歯が形成されている。前記ロック孔は、前記ロアレールの車幅方向一方側に前記ロック歯に対応するように形成されている。前記ロアレールの内部または前記アッパレールの内部には、車両前後方向に延びるシャフトが軸芯周りに回動可能に支持されている。前記シャフトの前側部分には、前記ロック解除操作用部材のロック解除時の揺動力を前記シャフトに伝達して当該シャフトを前記軸芯周りの所定方向に回動させる入力部が前記軸芯から径方向にオフセットして設けられている。前記シャフトにおける前記入力部から後側に離れた部分には、前記ロックプレートに係合し、前記所定方向の回動力を前記ロックプレートに対して車幅方向他方側に向けて作用させるための解除操作部が設けられている。
【0009】
この構成によれば、ロックプレートが車幅方向に延びる姿勢とされていて、かつ、車幅方向に変位可能にアッパレールに保持されているので、従来の上下方向に変位するロックプレートを配設する場合に比べて車両用シートスライド装置の上下方向の寸法が短くなる。また、ロックプレートを駆動するための部材であるシャフトがロアレールの内部またはアッパレールの内部に収容されているので、ロアレールやアッパレールの内部空間が有効に利用される。さらに、入力部及び解除操作部がシャフトに設けられているので、入力部及び解除操作部もロアレールやアッパレールの内部に収容することが可能になる。これらのことによっても、ロックプレートを駆動するための部材を含んだ車両用シートスライド装置の上下方向の寸法が短くなる。
【0010】
前記ロックプレートは、第1ロックプレートと、前記第1ロックプレートの下に配置される第2ロックプレートとを含んでいてもよい。前記第1ロックプレート及び前記第2ロックプレートの車幅方向中間部分には、それぞれ上下方向に貫通する第1貫通孔及び第2貫通孔が形成されていてもよく、前記解除操作部は、前記所定方向の回動によって前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔の内部に配置されるとともに、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔における車幅方向他方側の縁部を押圧するように配置することができる。
【0011】
この構成によれば、第1ロックプレートと第2ロックプレートを設けた場合に、共通の解除操作部で両ロックプレートを操作することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、車幅方向に延びるロックプレートを同方向に変位可能に設け、ロックプレートを駆動するためのシャフト等をロアレールやアッパレールの内部に設けることができるので、上下方向の寸法を短くして車両用シートスライド装置のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートスライド装置の使用状態を示す左側面図である。
【
図2】車両用シートスライド装置の分解斜視図である。
【
図3】ロック状態にある車両用シートスライド装置の前後方向に沿った縦断面図である。
【
図9】上側ロックプレートがロック状態にある場合を示す図である。
【
図10】下側ロックプレートがロック状態にある場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用シートスライド装置1によってシート100をフロア200(仮想線にて一部を示す)に取り付けた状態を示す側面図である。
図1におけるフロア200は、例えば乗用自動車の車室の床面であり、前後方向に延びるとともに、車幅方向に延びている。この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。車幅方向は、車両の左右方向ということもできる。
【0016】
シート100は、車室の前側に設けられる前席シートであってもよいし、車室の後側に設けられる後席シートであってもよい。シート100が前席シートである場合、運転席シートであってもよいし、助手席シートであってもよい。シート100は、シートクッション101と、シートバック102とを備えており、シートクッション101の後部にシートバック102の下部がリクライニング可能に連結されている。シート100の構造は上述した構造に限られるものではなく、どのような構造のシートであっても本発明を適用できる。
【0017】
図2や
図3等に示すように、車両用シートスライド装置1は、シート100をフロア200に対して前後方向にスライド可能に支持するとともに、所定範囲内で所望の位置に固定するための装置であり、シートクッション101の左側と右側にそれぞれ設けられている。
図1では、左側の車両用シートスライド装置1を示しているが、右側の車両用シートスライド装置は左側の車両用シートスライド装置1と同様に構成することができる。以下、左側の車両用シートスライド装置1について詳細に説明する。
【0018】
車両用シートスライド装置1は、ロアレール2と、アッパレール3と、アッパレール3をロアレール2に対してロックするための上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5と、上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5を動作させるための駆動機構6と、駆動機構6を操作するためのロック解除操作用部材7とを備えている。
図3、
図4及び
図5は、アッパレール3をロアレール2に対してロックした状態を示しており、
図6、
図7及び
図8は、ロックを解除した状態を示している。
【0019】
ロアレール2は、フロア200に固定されて前後方向に延びる部材であり、例えば鋼板等の高強度な部材を成形してなる。ロアレール2は、フロア200に固定される下板部20と、下板部20の左端部から上方へ延びる左ロア側壁部21と、下板部20の右端部から上方へ延びる右ロア側壁部22とを備えている。
図4に示すように、左ロア側壁部21の上側部分は右側へ屈曲した後、下方へ屈曲するように形成されており、左ロア側壁部21の上側部分には、アッパレール3との間に介在する左側鋼球B1が収容されるようになっている。左側鋼球B1は下方にも設けられている。
【0020】
右ロア側壁部22の上下方向中間部分は右側へ膨出するように形成されている。右ロア側壁部22の上側部分は、左側へ屈曲した後、下方へ屈曲して延びるように形成されており、右ロア側壁部22の上側部分には、アッパレール3との間に介在する右側鋼球B2が収容されるようになっている。右ロア側壁部22の上側部分における下方へ延びる部分は、縦板部22aとされている。縦板部22aは、左ロア側壁部21の上端部よりも上に位置付けられている。
【0021】
図3に示すように、縦板部22aには、複数のロック孔22bが前後方向に間隔をあけて並ぶように形成されている。複数のロック孔22bの形状及び高さは同一であり、前後方向の間隔は全て同じに設定されている。複数のロック孔22bが形成されている範囲は、縦板部22aの前後方向中間部分の所定範囲とされている。
【0022】
アッパレール3は、シートクッション101の下部に固定されて前後方向に延びる部材であり、ロアレール2と同様に、例えば鋼板等の高強度な部材を成形してなる。アッパレール3は、ロアレール2に対して前後方向にのみスライド可能となるように係合しており、アッパレール3がロアレール2に対して車幅方向及び上下方向には移動しないようになっている。すなわち、アッパレール3は、ロアレール2の下板部20と略平行に配置される上板部30と、上板部30の左端部から下方へ延びる左アッパ側壁部31と、上板部30の右端部から下方へ延びる右アッパ側壁部32とを備えている。上板部30がシートクッション101の下部に対して図示しない締結部材等によって締結されている。
【0023】
左アッパ側壁部31の下側部分は左側へ屈曲した後、上方へ屈曲するように形成されており、左ロア側壁部21の上側部分の内方に位置付けられている。左側鋼球B1は、左ロア側壁部21の上側部分と左アッパ側壁部31の下側部分との間で転動自在となっている。右アッパ側壁部32の下側部分は右側へ屈曲した後、上方へ屈曲するように形成されており、右ロア側壁部22の上側部分の内方に位置付けられている。右側鋼球B2は、右ロア側壁部22の上側部分と右アッパ側壁部32の下側部分との間で転動自在となっている。右側鋼球B2は下方にも設けられている。
【0024】
図2に示すように、左アッパ側壁部31の前後方向中間部分には、左右方向に長い左側スリット31aが形成されている。右アッパ側壁部32の前後方向中間部分にも、左右方向に長い右側スリット32aが形成されている(
図4参照)。左側スリット31aと右側スリット32aとは同じ形状とされており、高さ及び前後方向の位置は同じである。よって、アッパレール3を左右方向から見たとき、左側スリット31aと右側スリット32aとが互いに重複するようになっている。左側スリット31a及び右側スリット32aは、後述する上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5を差し込むための差込孔である。上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5は、左側スリット31a及び右側スリット32aに差し込まれた状態で、左右方向にのみ変位可能となるように案内される。また、上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5は、左ロア側壁部21の上端部の上方に配置される。
【0025】
本実施形態では、ロックプレートが2枚のロックプレート、即ち上側ロックプレート(第1ロックプレート)4及び下側ロックプレート(第2ロックプレート)5を含んでいる例について説明する。上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5は、車幅方向に延びており、上側ロックプレート4の下に下側ロックプレート5が配置され、上側ロックプレート4と下側ロックプレート5とが厚み方向に重なっている。
【0026】
上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5の車幅方向の寸法は、アッパレール3の左アッパ側壁部31と右アッパ側壁部32の間隔よりも長く設定されている。上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5の左側は左側スリット31aに差し込まれ、また、上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5の右側は右側スリット32aに差し込まれている。上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5は、左側スリット31aと右側スリット32aに差し込まれた状態でアッパレール3に対して車幅方向に変位可能に保持されている。上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5が左側スリット31aと右側スリット32aに差し込まれると、アッパレール3に対して前後方向及び上下方向への移動は左側スリット31a及び右側スリット32aの周縁部によって規制されることになり、よって、上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5は車幅方向にのみ変位可能になる。尚、左側スリット31a及び右側スリット32aは、上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5の断面よりも若干大きめに設定されているので、上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5がアッパレール3に対して多少がたつくことは許容されている。
【0027】
図9に示すように、上側ロックプレート4における右側(車幅方向一方側)には、右側へ突出する複数のロック歯40が前後方向に間隔をあけて形成されている。複数のロック歯40の間隔は、複数のロック孔22bの間隔と同じに設定されている。ロック歯40は、ロック孔22bに差し込み可能となっている。
【0028】
上側ロックプレート4の前側には、上下方向に貫通する上側位置決め孔41が形成されている。上側位置決め孔41は円形とされている。上側ロックプレート4の後側には、下方へ突出する上側位置決め突部42が形成されている。上側位置決め突部42の外形状は円形であり、上側位置決め孔41よりも若干小さくなっている。さらに、上側ロックプレート4の車幅方向中間部分には、上下方向に貫通する上側貫通孔(第1貫通孔)43が形成されている。上側貫通孔43は、上側位置決め孔41と上側位置決め突部42との間に位置付けられており、前後方向に長い形状とされている。
【0029】
図4及び
図5は、上側ロックプレート4が右方向へ移動してロック歯40がロック孔22bに差し込まれたロック状態を示している。
図9では、上側ロックプレート4がロック状態になると、点P1で示すように上側ロックプレート4の後縁部が右側スリット32aの後縁部に当接し、点P2で示すように上側ロックプレート4の前縁部が左側スリット31aの前縁部に当接し、点P3で示すように各ロック歯40の前縁部がロック孔22bの前縁部に当接している。これにより、アッパレール3のロアレール2に対する前方向のガタが抑制される。
【0030】
下側ロックプレート5は、上側ロックプレート4と同じ部材で構成されており、上側ロックプレート4を上下反転させることによって下側ロックプレート5として使用できる。すなわち、
図10に示すように、下側ロックプレート5における右側(車幅方向一方側)には、右側へ突出する複数のロック歯50が前後方向に間隔をあけて形成されている。複数のロック歯50の間隔は、上側のロック歯40の間隔と等しくなっており、ロック歯50は、ロック孔22bに差し込み可能となっている。
【0031】
下側ロックプレート5の前側には、上方へ突出する下側位置決め突部51が形成されている。下側位置決め突部51は、上側ロックプレート4の上側位置決め孔41に下から挿入される。下側ロックプレート5の後側には、上下方向に貫通する下側位置決め孔52が形成されている。下側位置決め孔52に、上側ロックプレート4の上側位置決め突部42が上から挿入される。下側位置決め突部51が上側位置決め孔41に挿入され、かつ、上側位置決め突部42が下側位置決め孔52に挿入されると、上側ロックプレート4と下側ロックプレート5とが前後方向及び左右方向に相対的に移動するのが規制される。尚、上側位置決め孔41が下側位置決め突部51よりも若干大きく、下側位置決め孔52が上側位置決め突部42よりも若干大きいので、上側ロックプレート4と下側ロックプレート5とは前後方向及び左右方向に僅かに相対移動可能になっている。
【0032】
下側ロックプレート5の車幅方向中間部分には、上下方向に貫通する下側貫通孔(第2貫通孔)53が形成されている。下側貫通孔53の形成範囲と上側貫通孔43の形成範囲とは、上下方向に見たときに互いに重複している。
【0033】
図4及び
図5は、下側ロックプレート5が右方向へ移動してロック歯50がロック孔22bに差し込まれたロック状態を示している。
図10では、下側ロックプレート5がロック状態になると、点P4で示すように下側ロックプレート5の前縁部が右側スリット32aの前縁部に当接し、点P5で示すように下側ロックプレート5の後縁部が左側スリット31aの後縁部に当接し、点P6で示すように各ロック歯40の後縁部がロック孔22bの後縁部に当接している。これにより、アッパレール3のロアレール2に対する後方向のガタが抑制される。
【0034】
上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5がアッパレール3に保持されているので、上側ロックプレート4のロック歯40及び下側ロックプレート5のロック歯50を任意のロック孔22bに差し込むことよってアッパレール3をロアレール2に対してロックすることが可能になる。一方、ロック位置にある上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5を左側へ移動させてロック歯40、50をロック孔22bから抜くことで、アッパレール3がロアレール2に対して前後方向にスライド可能になる。この状態をロック解除状態という。
【0035】
図3及び
図6に示すように、ロック解除操作用部材7は、アッパレール3に対して上下方向に揺動自在に取り付けられ、ロックを解除する際に乗員によって操作される部材である。具体的には、
図2にも示すように、ロック解除操作用部材7は、アッパレール3の前端部から前方へ突出する前側部材70と、前側部材70の後側に固定され、後方へ向けて延びる後側部材71とを備えている。
図1に示すように、前側部材70の前端部は、シートクッション101の前端部の下方に配置されるようになっており、乗員が前側部材70の前端部に手を掛けやすくなっている。
【0036】
図3に示すように、後側部材71の後側部分は、アッパレール3の内部に収容されていて左アッパ側壁部31と右アッパ側壁部32との間に配置されている。後側部材71の前後方向中間部分は、左右方向に延びる支軸72を介して左アッパ側壁部31と右アッパ側壁部32に対して支持されている。この支軸72周りにロック解除操作用部材7が揺動自在となっている。
【0037】
図4に示すように、ロアレール2及びアッパレール3の内部には、駆動機構6が設けられている。
図2に示すように、駆動機構6は、ブラケット61と、シャフト62と、シャフト付勢部材63とを有している。ブラケット61は、前後方向に長い形状とされており、
図4に示すように、ロアレール2及びアッパレール3の左右方向中心から右側に偏位している。ブラケット61の上側部分がアッパレール3の内部に収容された状態で右アッパ側壁部32に対して固定されている。ブラケット61の下側部分はロアレール2の内部に達するまで下方へ延びている。
【0038】
ブラケット61には、ロック解除操作用部材7を付勢するためのねじりコイルバネ74が取り付けられている。ねじりコイルバネ74は、ロック解除操作用部材7の前側部材70が下方に位置するように、即ち後側部材71の後端部が上方に位置するように、ロック解除操作用部材7を常時付勢している。これにより、乗員による操作力が作用しない状態で、後側部材71の後端部が常時上方に配置されることになる。乗員がロック解除操作用部材7の前側部材70を引き上げる方向に操作すると、ロック解除操作用部材7はねじりコイルバネ74の付勢力に抗して支軸72周りに揺動して後側部材71の後端部が下方に位置することになる。ロック解除操作用部材7の前側部材70を引き上げる操作は、詳細は後述するが、ロック解除時の操作である。
【0039】
図2に示すように、ブラケット61の前側部分及び前後方向中間部には、左側へ突出するように屈曲したシャフト支持部61a、61bが設けられている。シャフト62は、軸芯が前後方向に延びる姿勢とされてブラケット61の左側に配置されている。この位置にあるシャフト62は、ロアレール2の内部またはアッパレール3の内部に収容された状態になる。
【0040】
シャフト62の前端部は、ブラケット61のシャフト支持部61aに対して当該シャフト62の軸芯周りに回転可能に支持されている。また、シャフト62の後端部は、ブラケット61のシャフト支持部61bに対して当該シャフト62の軸芯周りに回転可能に支持されている。ブラケット61がアッパレール3に固定されているので、シャフト62はブラケット61を介してアッパレール3に対して軸芯周りに回転可能に支持されることになる。
【0041】
シャフト付勢部材63は、コイルバネで構成されている。シャフト62はシャフト付勢部材63の内部に収容されている。シャフト付勢部材63の一端部がシャフト62に係止され、他端部がブラケット61に係止されている。シャフト付勢部材63による付勢力は、シャフト62に対して当該シャフト62を右方向に回動させるように常時作用する。
【0042】
図4に示すように、シャフト62の前側部分には入力部65が設けられている。具体的には、入力部65は、シャフト62の軸芯から径方向にオフセットして設けられており、シャフト62の外周面から上方かつ左側方へ突出している。入力部65の上方には、ロック解除操作用部材7の後側部材71の後端部が配置されている。乗員がロック解除操作用部材7の前側部材70を引き上げる操作(ロック解除操作)を行うと、ロック解除操作用部材7の後側部材71の後端部が入力部65を下方へ押動させ、この押動力はシャフト62に伝達される。入力部65がシャフト62の軸芯から左側方にオフセットしているので、入力部65に作用した下向きの押動力により、シャフト62がシャフト付勢部材63の付勢力に抗して軸芯周りに左方向(所定方向)に回動することになる。つまり、入力部65は、ロック解除操作用部材7のロック解除時の揺動力をシャフト62に伝達して当該シャフト62を軸芯周りの所定方向に回動させるための部分である。
【0043】
図2に示すように、シャフト62における入力部65から後側に離れた部分には、解除操作部66が設けられている。
図5に示すように、解除操作部66は、シャフト62の軸芯から径方向にオフセットして設けられており、シャフト62の外周面から上方かつ左側方へ突出している。解除操作部66は、上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5に係合し、シャフト62に作用する左方向の回動力を上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5に対して左側に向けて作用させるための部分である。
【0044】
具体的には、解除操作部66の上端部は、入力部65の上端部よりも高くなっている。解除操作部66は、上側ロックプレート4の上側貫通孔43と下側ロックプレート5の下側貫通孔53とに下方から差し込まれるように位置付けられており、これにより、解除操作部66が、上側貫通孔43及び下側貫通孔53の内部に配置されることになる。この状態でシャフト62が左方向に回動すると、解除操作部66が上側貫通孔43及び下側貫通孔53の内部の内部で同方向に回動し、上側貫通孔43及び下側貫通孔53の左縁部を押圧する。その結果、上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5を左側に移動させることが可能になる。
【0045】
(実施形態の作用効果)
乗員がロック解除操作用部材7を操作していない時には、
図3に示すようにロック解除操作用部材7がロック位置にある。ロック解除操作用部材7がロック位置にある時には、
図4に示すようにロック解除操作用部材7の後側部材71の後端部が入力部65の上方に配置されるので、シャフト62はシャフト付勢部材63の付勢力により、右方向に回動して図示しないストッパによって停止している。シャフト62が右方向に回動して停止している状態では、
図5に示すように、解除操作部66が上側ロックプレート4の上側貫通孔43の右縁部及び下側ロックプレート5の下側貫通孔53の右縁部を右方向へ押圧するので、上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5が右方向に付勢される。これにより、上側ロックプレート4のロック歯40及び下側ロックプレート5のロック歯50がロック孔22bに差し込まれるので、
図9及び
図10に示すように前後方向のガタが抑制された状態で、アッパレール3がロアレール2に対して固定される。
【0046】
一方、乗員がロック解除操作用部材7の前側部材70を引き上げる方向に操作すると、ロック解除操作用部材7の後側部材71の後端部が入力部65を下方へ押動させ、シャフト62が軸芯周りに左方向に回動する。シャフト62が左方向に回動すると、解除操作部66が同方向に回動して上側ロックプレート4の上側貫通孔43の左縁部及び下側ロックプレート5の下側貫通孔53の左縁部を左方向へ押圧するので、上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5が左方向に移動する。これにより、上側ロックプレート4のロック歯40及び下側ロックプレート5のロック歯50がロック孔22bから抜けるので、ロックが解除されてアッパレール3がロアレール2に対してスライド可能になる。
【0047】
本実施形態では、上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5が左右方向に延びる姿勢とされていて、かつ、左右方向に変位可能にアッパレール3に保持されているので、従来のように上下方向に変位するロックプレートを配設する場合に比べて車両用シートスライド装置1の上下方向の寸法が短くなる。また、上側ロックプレート4及び下側ロックプレート5を駆動するための部材であるシャフト62がロアレール2の内部またはアッパレール3の内部に収容されているので、ロアレール2やアッパレール3の内部空間が有効に利用される。さらに、入力部65及び解除操作部66がシャフト62に設けられているので、入力部65及び解除操作部66もロアレール2やアッパレール3の内部に収容することが可能になる。これらのことによっても、車両用シートスライド装置1の上下方向の寸法が短くなるので、車両用シートスライド装置1のコンパクト化を図ることができる。
【0048】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば入力部65及び解除操作部66は、シャフト62の右側に突出するように設けられていてもよい。また、入力部65は、シャフト62の下側に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本開示に係る車両用シートスライド装置は、例えば自動車に搭載されるシートを前後方向に位置調整可能にする場合に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 車両用シートスライド装置
2 ロアレール
3 アッパレール
4 上側ロックプレート(第1ロックプレート)
40 ロック歯
43 上側貫通孔(第1貫通孔)
5 下側ロックプレート(第2ロックプレート)
50 ロック歯
53 下側貫通孔(第2貫通孔)
7 ロック解除操作用部材
22b ロック孔
62 シャフト
65 入力部
66 解除操作部
100 シート