(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126235
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】移動体制御装置、移動体制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20240912BHJP
H04W 4/40 20180101ALI20240912BHJP
H04W 76/10 20180101ALI20240912BHJP
H04W 88/06 20090101ALI20240912BHJP
【FI】
H04W52/02 110
H04W4/40
H04W76/10
H04W88/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034488
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】月岡 雅隆
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067CC21
5K067EE02
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】携帯端末との通信を行って移動体に対する携帯端末の位置を測定する場合に、通信に伴う消費電力を、利用者の利便性の低下を抑制して低減する。
【解決手段】移動体制御装置1は、第2通信部40と携帯端末との通信が確立されたときに、第1通信部30を第1測定周期に設定された切替周期で作動状態と停止状態とに切り替えて、第1通信部30と携帯端末との通信を間欠的に行うことによって、第1通信部30と携帯端末との通信状況に基づいて携帯端末の位置を測定する携帯端末位置測定処理を開始し、携帯端末位置測定処理の開始時点から所定時間以内に、携帯端末位置測定処理により測定される携帯端末の位置が移動体100から第2所定距離以下にならなかった場合に、切替周期を第1測定周期よりも長い第2測定周期に変更して携帯端末位置測定処理を継続する携帯端末位置測定部13を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に備えられて第1通信仕様による通信を行う第1通信部と、前記移動体の利用者により使用される携帯端末との間の通信を制御する第1通信制御部と、
前記移動体に備えられて、前記移動体から第1所定距離内の通信範囲で、前記第1通信仕様よりも消費電力が少ない第2通信仕様による通信を行う第2通信部と、前記携帯端末との間の通信を制御する第2通信制御部と、
前記第2通信制御部の制御により前記第2通信部と前記携帯端末との通信が確立されたときに、前記第1通信部を所定の第1測定周期に設定された切替周期で作動状態と停止状態とに切り替えて、前記第1通信制御部の制御により前記第1通信部と前記携帯端末との通信を間欠的に行うことによって、前記第1通信部と前記携帯端末との通信状況に基づいて前記移動体に対する前記携帯端末の位置を測定する携帯端末位置測定処理を開始し、前記携帯端末位置測定処理の開始時点から所定時間以内に、前記携帯端末位置測定処理により測定される前記携帯端末の位置が前記移動体から第2所定距離以下にならなかった場合に、前記切替周期を前記第1測定周期よりも長い第2測定周期に変更して前記携帯端末位置測定処理を継続する携帯端末位置測定部と、
を備える移動体制御装置。
【請求項2】
前記携帯端末位置測定部は、前記切替周期を前記第1測定周期から前記第2測定周期に変更した後に、前記第1通信制御部の制御による前記第1通信部と前記携帯端末との通信が確立された場合に、前記携帯端末位置測定処理を終了して、前記第2通信制御部の制御による前記第2通信部と前記携帯端末との通信における電界強度を測定する電界強度測定処理を開始し、前記電界強度測定処理により測定される前記電界強度が所定レベル以上となったときに、前記携帯端末位置測定処理を再開する
請求項1に記載の移動体制御装置。
【請求項3】
前記携帯端末位置測定部は、前記電界強度測定処理により測定される前記電界強度が前記所定レベル以上となって、前記携帯端末位置測定処理を再開するときに、前記切替周期を前記第2測定周期よりも短い第3測定周期に設定する
請求項2に記載の移動体制御装置。
【請求項4】
コンピュータにより実行される移動体制御方法であって、
移動体に備えられて第1通信仕様による通信を行う第1通信部と、前記移動体の利用者により使用される携帯端末との間の通信を制御する第1通信制御ステップと、
前記移動体に備えられて、前記移動体から第1所定距離内の通信範囲で、前記第1通信仕様よりも消費電力が少ない第2通信仕様による通信を行う第2通信部と、前記携帯端末との間の通信を制御する第2通信制御ステップと、
前記第2通信制御ステップの制御により前記第2通信部と前記携帯端末との通信が確立されたときに、前記第1通信部を所定の第1測定周期に設定された切替周期で作動状態と停止状態とに切り替えて、前記第1通信制御ステップの制御により前記第1通信部と前記携帯端末との通信を間欠的に行うことによって、前記第1通信部と前記携帯端末との通信状況に基づいて前記移動体に対する前記携帯端末の位置を測定する携帯端末位置測定処理を開始し、前記携帯端末位置測定処理の開始時点から所定時間以内に、前記携帯端末位置測定処理により測定される前記携帯端末の位置が前記移動体から第2所定距離以下にならなかった場合に、前記切替周期を前記第1測定周期よりも長い第2測定周期に変更して前記携帯端末位置測定処理を継続する携帯端末位置測定ステップと、
を含む移動体制御方法。
【請求項5】
コンピュータを、
移動体に備えられて第1通信仕様による通信を行う第1通信部と、前記移動体の利用者により使用される携帯端末との間の通信を制御する第1通信制御部と、
前記移動体に備えられて、前記移動体から第1所定距離内の通信範囲で、前記第1通信仕様よりも消費電力が少ない第2通信仕様による通信を行う第2通信部と、前記携帯端末との間の通信を制御する第2通信制御部と、
前記第2通信制御部の制御により前記第2通信部と前記携帯端末との通信が確立されたときに、前記第1通信部を所定の第1測定周期に設定された切替周期で作動状態と停止状態とに切り替えて、前記第1通信制御部の制御により前記第1通信部と前記携帯端末との通信を間欠的に行うことによって、前記第1通信部と前記携帯端末との通信状況に基づいて前記移動体に対する前記携帯端末の位置を測定する携帯端末位置測定処理を開始し、前記携帯端末位置測定処理の開始時点から所定時間以内に、前記携帯端末位置測定処理により測定される前記携帯端末の位置が前記移動体から第2所定距離以下にならなかった場合に、前記切替周期を前記第1測定周期よりも長い第2測定周期に変更して前記携帯端末位置測定処理を継続する携帯端末位置測定部と、
して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体制御装置、移動体制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池を搭載する移動体における充給電に関する研究開発が行われている。
例えば、バッテリが搭載された車両において、利用者により使用される携帯端末との間で通信を行って、車両に接近した携帯端末を認証することにより、利用者による車両の使用を許容する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、消費電力が小さく、通信範囲が広いBLE(Bluetooth Low Energy、Bluetoothは登録商標)による通信によって、車両から所定距離以内に接近する携帯端末を検出したときに、位置検出精度が高いUWB(Ultra-Wide Band)通信による位置検出を開始する。
そして、UWBによる通信により測定される携帯端末の位置が車両から遠ざかった場合、携帯端末の位置が変化しない場合、及びバッテリの残充電量が少ない場合に、UWB通信による位置測定を終了するか、或いは位置の測定間隔を広げることによって、UWB通信を実行することによる消費電力を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池を搭載する移動体における充給電に関する技術として、特許文献1に記載された技術のように、移動体の利用者を通信により認識する場合に、通信による位置測定を終了する、或いは通信による位置の測定間隔を広げた場合には、その後の携帯端末の認証を速やかに行うことができなくなるため、利用者が車両を使用する際の利便性が低下するという不都合がある。そこで、携帯端末との通信を行って移動体に対する携帯端末の位置を測定する場合に、通信に伴う消費電力を、利用者が車両を使用する際の利便性の低下を抑制して低減することが本願の課題である。
本願は、上記課題の解決のため、移動体に対する携帯端末の位置の測定を携帯端末との通信により行う際の消費電力を、利用者の利便性の低下を抑制して低減することを目的としたものである。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための第1態様として、移動体に備えられて第1通信仕様による通信を行う第1通信部と、前記移動体の利用者により使用される携帯端末との間の通信を制御する第1通信制御部と、前記移動体に備えられて、前記移動体から第1所定距離内の通信範囲で、前記第1通信仕様よりも消費電力が少ない第2通信仕様による通信を行う第2通信部と、前記携帯端末との間の通信を制御する第2通信制御部と、前記第2通信制御部の制御により前記第2通信部と前記携帯端末との通信が確立されたときに、前記第1通信部を所定の第1測定周期に設定された切替周期で作動状態と停止状態とに切り替えて、前記第1通信制御部の制御により前記第1通信部と前記携帯端末との通信を間欠的に行うことによって、前記第1通信部と前記携帯端末との通信状況に基づいて前記移動体に対する前記携帯端末の位置を測定する携帯端末位置測定処理を開始し、前記携帯端末位置測定処理の開始時点から所定時間以内に、前記携帯端末位置測定処理により測定される前記携帯端末の位置が前記移動体から第2所定距離以下にならなかった場合に、前記切替周期を前記第1測定周期よりも長い第2測定周期に変更して前記携帯端末位置測定処理を継続する携帯端末位置測定部と、を備える移動体制御装置が挙げられる。
【0006】
上記移動体制御装置において、前記携帯端末位置測定部は、前記切替周期を前記第1測定周期から前記第2測定周期に変更した後に、前記第1通信制御部の制御による前記第1通信部と前記携帯端末との通信が確立された場合に、前記携帯端末位置測定処理を終了して、前記第2通信制御部の制御による前記第2通信部と前記携帯端末との通信における電界強度を測定する電界強度測定処理を開始し、前記電界強度測定処理により測定される前記電界強度が所定レベル以上となったときに、前記携帯端末位置測定処理を再開する構成としてもよい。
【0007】
上記移動体制御装置において、前記携帯端末位置測定部は、前記電界強度測定処理により測定される前記電界強度が前記所定レベル以上となって、前記携帯端末位置測定処理を再開するときに、前記切替周期を前記第2測定周期よりも短い第3測定周期に設定する構成としてもよい。
【0008】
上記目的を達成するための第2態様として、コンピュータにより実行される移動体制御方法であって、移動体に備えられて第1通信仕様による通信を行う第1通信部と、前記移動体の利用者により使用される携帯端末との間の通信を制御する第1通信制御ステップと、前記移動体に備えられて、前記移動体から第1所定距離内の通信範囲で、前記第1通信仕様よりも消費電力が少ない第2通信仕様による通信を行う第2通信部と、前記携帯端末との間の通信を制御する第2通信制御ステップと、前記第2通信制御ステップの制御により前記第2通信部と前記携帯端末との通信が確立されたときに、前記第1通信部を所定の第1測定周期に設定された切替周期で作動状態と停止状態とに切り替えて、前記第1通信制御ステップの制御により前記第1通信部と前記携帯端末との通信を間欠的に行うことによって、前記第1通信部と前記携帯端末との通信状況に基づいて前記移動体に対する前記携帯端末の位置を測定する携帯端末位置測定処理を開始し、前記携帯端末位置測定処理の開始時点から所定時間以内に、前記携帯端末位置測定処理により測定される前記携帯端末の位置が前記移動体から第2所定距離以下にならなかった場合に、前記切替周期を前記第1測定周期よりも長い第2測定周期に変更して前記携帯端末位置測定処理を継続する携帯端末位置測定ステップと、を含む移動体制御方法が挙げられる。
【0009】
上記目的を達成するための第3態様として、コンピュータを、移動体に備えられて第1通信仕様による通信を行う第1通信部と、前記移動体の利用者により使用される携帯端末との間の通信を制御する第1通信制御部と、前記移動体に備えられて、前記移動体から第1所定距離内の通信範囲で、前記第1通信仕様よりも消費電力が少ない第2通信仕様による通信を行う第2通信部と、前記携帯端末との間の通信を制御する第2通信制御部と、前記第2通信制御部の制御により前記第2通信部と前記携帯端末との通信が確立されたときに、前記第1通信部を所定の第1測定周期に設定された切替周期で作動状態と停止状態とに切り替えて、前記第1通信制御部の制御により前記第1通信部と前記携帯端末との通信を間欠的に行うことによって、前記第1通信部と前記携帯端末との通信状況に基づいて前記移動体に対する前記携帯端末の位置を測定する携帯端末位置測定処理を開始し、前記携帯端末位置測定処理の開始時点から所定時間以内に、前記携帯端末位置測定処理により測定される前記携帯端末の位置が前記移動体から第2所定距離以下にならなかった場合に、前記切替周期を前記第1測定周期よりも長い第2測定周期に変更して前記携帯端末位置測定処理を継続する携帯端末位置測定部と、して機能させるプログラムが挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の移動体制御装置によれば、携帯端末との通信を行って移動体に対する携帯端末の位置を測定する場合に、通信に伴う消費電力を、利用者が車両を使用する際の利便性の低下を抑制して低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、移動体制御装置により、車両に接近する携帯端末を探索する態様の説明図である。
【
図3】
図3は、携帯端末の位置測定処理の第1のフローチャートである。
【
図4】
図4は、携帯端末の位置測定処理の第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.車両に接近する携帯端末の探索]
図1を参照して、本実施の形態の移動体制御装置1による、車両100に接近する利用者Uが所持する携帯端末2の探索の態様の概要について説明する。移動体制御装置1は、車両100に搭載されて、車両100の作動を制御するECU(Electronic Control Unit)の機能として構成されている。
【0013】
携帯端末2には電子鍵アプリ(アプリケーション)がインストールされており、携帯端末2は、電子鍵アプリを実行することによって、車両100の遠隔操作機能を含む電子鍵として機能する。携帯端末2は、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、スマートウォッチ等のウェアラブルデバイスであり、利用者Uにより携帯或いは装着して使用される。
【0014】
車両100と携帯端末2とは、BLE(Bluetooth Low Energy、Bluetoothは登録商標)、及びUWB(Ultra-Wide Band)の通信仕様により相互に通信を行う。UWBの通信仕様は本開示の第1通信仕様に相当し、BLEの通信仕様は本開示の第2通信仕様に相当する。UWB通信では、500MHz~十数GHzの帯域(例えば、8GHz帯周辺)が使用される。
【0015】
車両100には、UWBによる通信を行う第1通信部30、第1通信部30に接続されたUWBアンテナ31a~31d,32a~32d、BLEによる通信を行う第2通信部40、及び第2通信部40に接続されたBLEアンテナ41が備えられている。移動体制御装置1、第1通信部30、及び第2通信部40は、車両100に備えられたバッテリから供給される電力によって作動する。
【0016】
UWBアンテナ31a~31dは車両100の車体の四隅に配置され、UWBアンテナ32a~32dは車両100の車室に配置されている。また、運転席ドア111には、ハンドル50が設けられ、利用者Uによるハンドル50の操作がハンドルセンサ50a(
図2参照)により検出される。
【0017】
移動体制御装置1は、第2通信部40を介してBLE通信によるポーリングを行い、携帯端末2が第2通信部40によるBLE通信の通信エリアAr1の外側(C1の状態)から内側(C2の状態)に入ったときに、通信エリアAr1内の携帯端末2との間でBLE通信が確立される。通信エリアAr1は、本開示の移動体から第1所定距離内の通信範囲に相当する。BLE通信による通信可能範囲はUWB通信よりも広く、また、BLE通信による消費電力はUWB通信よりも少ないため、このように、BLE通信によるポーリングを行うことにより、車両100に接近する携帯端末2を、消費電力を抑えて認識することができる。
【0018】
そして、移動体制御装置1は、携帯端末2との間で電子鍵の認証を行って、携帯端末2が車両100の電子鍵として登録されていることを確認する。具体的には、移動体制御装置1は、携帯端末2から送信される認証コード(携帯端末2の端末識別情報)と、移動体制御装置1のメモリに保存された認証コードとを照合することにより、携帯端末2が車両100の電子鍵として登録されていることを確認する。
【0019】
続いて、移動体制御装置1は、第1通信部30を起動して4つのUWBアンテナ31a~31dをアクティブにする。携帯端末2がUWB距離測定範囲である通信エリアAr2の外側(C2の状態)から内側(C3の状態)に入ったときに、第1通信部30と携帯端末2とのUWB通信が確立される。
【0020】
移動体制御装置1は、UWB通信により、携帯端末2の車両100からの距離を測定し、携帯端末2がUWB位置測定範囲である通信エリアAr3の外側(C3の状態)から内側(C4の状態)に入ったことを認識したときに、UWBアンテナ32a~32dもアクティブとして(全てのUWBアンテナ31a~31d,32a~32dをアクティブとした状態)、携帯端末2の位置を測定する。UWB通信による携帯端末2の距離及び位置の測定は、特開2021-096134号公報等に開示された公知の手法を用いて行うことができる。
【0021】
ここで、通常であれば、利用者Uがさらに車両100に近づいて運転席ドア111のハンドル50を操作したときに、移動体制御装置1は、利用者Uが運転席110を使用すると判断して、携帯端末2の認証コードに対応してメモリに保存されている設定条件に応じて、運転席110に備えられたパワーシート装備のポジションを設定する等の処理を行う。
【0022】
しかしながら、車両100に近づいた利用者Uが直ぐには車両100に乗車せずに、運転席ドア111の付近に留まる場合もある。そして、この場合に、携帯端末2とのUWB通信を継続すると、UWB通信による消費電力が多くなってしまうため、移動体制御装置1は、第1通信部30を所定の切替周期で作動状態と停止状態に切り替えることにより、UWB通信による消費電力を抑制する処理を実行する。以下では、このように、UWB通信を間欠的に実行して、車両100に対する携帯端末2の位置を測定する移動体制御装置1の構成と、位置測定の処理について説明する。
【0023】
[2.移動体制御装置の構成]
図2を参照して、移動体制御装置1の構成について説明する。移動体制御装置1には、上述した第1通信部30、第2通信部40、及びハンドルセンサ50a等が接続されている。移動体制御装置1は、プロセッサ10、メモリ20等を備えた制御ユニットであり、メモリ20には、移動体制御装置1の制御用のプログラム21、利用者登録情報22等が保存されている。プログラム21は、移動体制御装置1により記録媒体(光ディスク、フラッシュメモリ等)から読み込まれてメモリ20に保存されてもよく、移動体制御装置1により、図示しない外部サーバー等からダウンロードされてメモリ20に保存されてもよい。
【0024】
利用者登録情報22には、車両100の利用者Uにより使用される携帯端末2の認証コードと、認証コードに対応付けられた車両100の特定装備の設定条件(利用者Uにより設定された条件)が含まれる。車両100が複数の利用者Uによって共用される場合には、各利用者Uについて、認証コードと特定設備の設定条件が個別に保存される。
【0025】
プロセッサ10は、プログラム21を読み込んで実行することにより、第1通信制御部11、第2通信制御部12、携帯端末位置測定部13、及び対象識別情報認識部14として機能する。第1通信制御部11により実行される処理は、本開示の移動体制御方法における第1通信制御ステップに相当し、第2通信制御部12により実行される処理は、本開示の移動体制御方法における第2通信制御ステップに相当する。携帯端末位置測定部13により実行される処理は、本開示の移動体制御方法における携帯端末位置測定ステップに相当する。
【0026】
第1通信制御部11は、上述した第1通信部30と携帯端末2との間のUWB通信の制御を行う。第2通信制御部12は、上述した第2通信部40と携帯端末との間のBLE通信の制御を行う。携帯端末位置測定部13は、第1通信制御部11の制御によるUWB通信と第2通信制御部12の制御によるBLE通信を行って、車両100に対する携帯端末2の位置を測定する。携帯端末位置測定部13による携帯端末2の位置の測定処理の詳細については後述する。対象識別情報認識部14は、上述したように、運転席ドア111のハンドル50が操作されたことをハンドルセンサ50aの検出信号によって認識したときに、携帯端末2の認証コードと対応付けられた設定条件により、運転席110のシートポジション等を設定する。
【0027】
[3.携帯端末の位置測定処理]
図3~
図4に示したフローチャートに従って、移動体制御装置1により実行される、携帯端末2の位置測定処理について説明する。
図3のステップS1とステップS2により、携帯端末位置測定部13は、ステップS1で第2通信制御部12の制御によってBLE通信によるポーリングを行って、第2通信部40と携帯端末2とのBLE通信が確立されたときにステップS3に処理を進める。
【0028】
ステップS3で、携帯端末位置測定部13は、UWB通信を間欠的に行う際の切替周期を、第1測定周期T1(例えば、数100msec)に設定する。次のステップS4で、携帯端末位置測定部13は、所定時間以内に携帯端末2が車両100から第2所定距離(例えば数m~数10m)以下まで接近したか否かを判断するために、所定時間をタイムアップまでの設定時間とするタイマをスタートさせる。
【0029】
続くステップS5で、携帯端末位置測定部13は、第1通信部30を切替周期で作動状態と停止状態とに切り替えて、第1通信制御部11の制御により第1通信部30と携帯端末2とのUWB通信を間欠的に行うことにより、車両100に対する携帯端末2の位置を測定する携帯端末位置測定処理を開始する。
【0030】
次のステップS6、S7、及びステップS20のループ処理により、携帯端末位置測定部13は、ステップS20でタイマがタイムアップするまで、ステップS6で携帯端末位置測定処理を実行し、ステップS7で、携帯端末位置測定処理により測定された携帯端末2の位置が、車両100から第2所定距離(例えば数m)以内であるか否かを判断する。
【0031】
ステップS6の携帯端末位置測定処理では、携帯端末位置測定部13は、4つのUWBアンテナ31a~31dをアクティブとして、第1通信制御部11の制御による第1通信部30と携帯端末2とのUWB通信を行って、携帯端末2の位置を測定する。ステップS7で、携帯端末位置測定部13は、携帯端末2の位置が車両100から第2所定距離以内であるときはステップS8に処理を進め、携帯端末2の位置が車両100から第2所定距離を超えているときにはステップS20に処理を進める。
【0032】
ステップS8で、携帯端末位置測定部13は、全てのUWBアンテナ31a~31d,32a~32dをアクティブとして、第1通信制御部11の制御による第1通信部30と携帯端末2とのUWB通信を行って、携帯端末2の位置を測定する(
図1のC4の状態)。これにより、携帯端末位置測定部13は、運転席110付近の存在する携帯端末2の位置を精度良く測定し、対象識別情報認識部14は、上述したように、運転席110を使用する利用者Uの認証コードを認識する。
【0033】
ステップS20でタイマがタイムアップしたとき、すなわち、所定時間が経過するまでに、携帯端末位置測定処理により測定される携帯端末2の車両100からの距離が第2所定距離以内にならなかったときは、携帯端末位置測定部13は、
図4のステップS40に処理を進める。
【0034】
ステップS40で、携帯端末位置測定部13は、携帯端末位置測定処理において、第1通信部30を作動状態と停止状態とに切り替える切替周期を、第1測定周期T1よりも長い第2測定周期T2(>T1)に変更する。第2測定周期T2は、例えば数10秒から数分に設定される。
【0035】
続くステップS41、S42、及びステップS50のループ処理により、携帯端末位置測定部13は、ステップS50で、携帯端末2と第2通信部40とのBLE通信が遮断されるまで(携帯端末2を所持した利用者Uが車両100から遠ざかるまで)、ステップS41で携帯端末位置測定処理を実行して、ステップS42で、携帯端末2と第1通信部30とのUWB通信が確立されたか否かを判断する。
【0036】
ステップS41の携帯端末位置測定処理では、携帯端末位置測定部13は、4つのUWBアンテナ31a~31dをアクティブとして、第1通信制御部11の制御による第1通信部30と携帯端末2とのUWB通信を行って、携帯端末2の位置を測定する。ステップS41の携帯端末位置測定処理は、第1通信部30を作動状態と停止状態とに切り替える切替周期が第1測定周期T1よりも長い第2測定周期T2に変更されるため、携帯端末位置測定処理におけるUWB通信の消費電力を低減することができる。
【0037】
ステップS43で携帯端末2と第1通信部30とのUWB通信が確立されたときに、携帯端末位置測定部13はステップS43に処理を進めて、携帯端末位置測定処理を終了する。続くステップS44で、携帯端末位置測定部13は、携帯端末2と第2通信部40とのBLE通信における電界強度を、第2通信部40により受信される携帯端末2からの電波の受信レベルに基づいて測定する電界強度測定処理を実行する。
【0038】
携帯端末2と第2通信部40とのBLE通信における電界強度のレベルは、携帯端末2と車両100との距離が短くなるに従って高くなるため、電界強度のレベルによって、車両100に対する携帯端末2の接近度合を認識することができる。そして、BLE通信の消費電力はUWB通信の消費電力よりも少ないため、携帯端末2の車両100への接近を携帯端末2との通信によって検出する際の消費電力を抑制することができる。ステップS45で、電界強度測定処理により測定される電界強度のレベルが、所定レベル以上となったときに、携帯端末位置測定部13は、
図3のステップS3に所定を進め、これにより、ステップS5で携帯端末位置測定処理が再開される。
【0039】
ステップS45からステップS3に処理が進む際に、ステップS3で、切替周期が、ステップS40で設定された第2測定周期T2から第1測定周期T1に戻される。この場合の第1測定周期T1は、本開示の第3測定周期に相当する。これにより、ステップS5で再開される携帯端末位置測定処理による携帯端末2の位置測定の応答性を高めて、携帯端末2の位置を速やかに測定することができる。なお、ステップS45から
図3のステップS3に処理を進めて、携帯端末位置測定処理を再開する際の切替周期を、第2測定周期T2よりも短い周期で、第1測定周期T1とは異なる周期に設定してもよい。
【0040】
[4.他の実施形態]
上記実施形態では、
図4のステップS42~S45で、携帯端末2と第2通信部40とのBLE通信における電界強度を測定して、車両100への携帯端末2の接近を検出する処理を行ったが、この処理を省略した構成としてもよい。
【0041】
上記実施形態では、本開示の移動体として車両100を例示したが、本開示の移動体は、移動体の利用者により使用される携帯端末の接近を、携帯端末との通信によって検出する移動体であればよく、飛行体、船舶等であってもよい。
【0042】
上記実施形態では、UWB通信により車両100に対する携帯端末2の位置を認識する第1通信部30と、BLE通信により車両100に対する携帯端末2の位置を認識する第2通信部40とを例示したが、他の通信仕様により車両100に対する携帯端末2の位置を認識する構成としてもよい。
【0043】
なお、
図1、
図2は、本開示の発明の理解を容易にするために、移動体制御装置1の構成を、主な処理内容により区分して示した概略図であり、移動体制御装置1の構成を、他の区分によって構成してもよい。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアユニットにより実行されてもよいし、複数のハードウェアユニットにより実行されてもよい。また、
図3、
図4に示した各構成要素による処理は、1つのプログラムにより実行されてもよいし、複数のプログラムにより実行されてもよい。
【0044】
[5.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成の具体例である。
【0045】
(構成1)移動体に備えられて第1通信仕様による通信を行う第1通信部と、前記移動体の利用者により使用される携帯端末との間の通信を制御する第1通信制御部と、前記移動体に備えられて、前記移動体から第1所定距離内の通信範囲で、前記第1通信仕様よりも消費電力が少ない第2通信仕様による通信を行う第2通信部と、前記携帯端末との間の通信を制御する第2通信制御部と、前記第2通信制御部の制御により前記第2通信部と前記携帯端末との通信が確立されたときに、前記第1通信部を所定の第1測定周期に設定された切替周期で作動状態と停止状態とに切り替えて、前記第1通信制御部の制御により前記第1通信部と前記携帯端末との通信を間欠的に行うことによって、前記第1通信部と前記携帯端末との通信状況に基づいて前記移動体に対する前記携帯端末の位置を測定する携帯端末位置測定処理を開始し、前記携帯端末位置測定処理の開始時点から所定時間以内に、前記携帯端末位置測定処理により測定される前記携帯端末の位置が前記移動体から第2所定距離以下にならなかった場合に、前記切替周期を前記第1測定周期よりも長い第2測定周期に変更して前記携帯端末位置測定処理を継続する携帯端末位置測定部と、を備える移動体制御装置。
構成1の移動体制御装置によれば、携帯端末位置測定部は、携帯端末を所持した利用者が移動体に接近して第2通信部と携帯端末との通信が確立され、第1通信部と携帯端末との通信を間欠的に行う携帯端末位置測定処理を開始したが、所定時間が経過するまでに、携帯端末の位置が移動体から第2所定距離以下にならなかった場合に、第1通信部を作動させる切替周期を第1測定周期よりも長い第2測定周期に変更する。これにより、携帯端末位置測定処理を継続して、移動体に対する携帯端末の位置を測定する場合に、通信に伴う消費電力を、利用者が車両を使用する際の利便性の低下を抑制して低減することができる。
【0046】
(構成2)前記携帯端末位置測定部は、前記切替周期を前記第1測定周期から前記第2測定周期に変更した後に、前記第1通信制御部の制御による前記第1通信部と前記携帯端末との通信が確立された場合に、前記携帯端末位置測定処理を終了して、前記第2通信制御部の制御による前記第2通信部と前記携帯端末との通信における電界強度を測定する電界強度測定処理を開始し、前記電界強度測定処理により測定される前記電界強度が所定レベル以上となったときに、前記携帯端末位置測定処理を再開する構成1に記載の移動体制御装置。
構成2の移動体制御装置によれば、携帯端末位置測定処理により第1通信部と携帯端末が確立されて、携帯端末が移動体の付近に存在していることが認識された場合に、消費電力が多い第1通信部による通信を伴う携帯端末位置測定処理を終了して、消費電力が少ない第2通信部による通信の電界強度を測定する電界強度測定処理を開始し、電界強度に基づいて携帯端末の移動体への接近を監視することにより、携帯端末の接近を認識する際の通信による消費電力を低減することができる。
【0047】
(構成3)前記携帯端末位置測定部は、前記電界強度測定処理により測定される前記電界強度が前記所定レベル以上となって、前記携帯端末位置測定処理を再開するときに、前記切替周期を前記第2測定周期よりも短い第3測定周期に設定する構成2に記載の移動体制御装置。
構成3の移動体制御装置によれば、電界強度測定処理により測定される電界強度の上昇によって、携帯端末が移動体の付近にまで接近したと判断される場合に、携帯端末位置測定処理において第2通信部を停止状態から作動状態に切り替える切替周期を短くすることにより、携帯端末の位置の測定の応答性を高めて、携帯端末の認証等の処理を速やかに実行可能とすることができる。
【0048】
(構成4)コンピュータにより実行される移動体制御方法であって、移動体に備えられて第1通信仕様による通信を行う第1通信部と、前記移動体の利用者により使用される携帯端末との間の通信を制御する第1通信制御ステップと、前記移動体に備えられて、前記移動体から第1所定距離内の通信範囲で、前記第1通信仕様よりも消費電力が少ない第2通信仕様による通信を行う第2通信部と、前記携帯端末との間の通信を制御する第2通信制御ステップと、前記第2通信制御ステップの制御により前記第2通信部と前記携帯端末との通信が確立されたときに、前記第1通信部を所定の第1測定周期に設定された切替周期で作動状態と停止状態とに切り替えて、前記第1通信制御ステップの制御により前記第1通信部と前記携帯端末との通信を間欠的に行うことによって、前記第1通信部と前記携帯端末との通信状況に基づいて前記移動体に対する前記携帯端末の位置を測定する携帯端末位置測定処理を開始し、前記携帯端末位置測定処理の開始時点から所定時間以内に、前記携帯端末位置測定処理により測定される前記携帯端末の位置が前記移動体から第2所定距離以下にならなかった場合に、前記切替周期を前記第1測定周期よりも長い第2測定周期に変更して前記携帯端末位置測定処理を継続する携帯端末位置測定ステップと、を含む移動体制御方法。
構成4の移動制御方法をコンピュータにより実行することによって、構成1の移動体制御装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
(構成5)コンピュータを、移動体に備えられて第1通信仕様による通信を行う第1通信部と、前記移動体の利用者により使用される携帯端末との間の通信を制御する第1通信制御部と、前記移動体に備えられて、前記移動体から第1所定距離内の通信範囲で、前記第1通信仕様よりも消費電力が少ない第2通信仕様による通信を行う第2通信部と、前記携帯端末との間の通信を制御する第2通信制御部と、前記第2通信制御部の制御により前記第2通信部と前記携帯端末との通信が確立されたときに、前記第1通信部を所定の第1測定周期に設定された切替周期で作動状態と停止状態とに切り替えて、前記第1通信制御部の制御により前記第1通信部と前記携帯端末との通信を間欠的に行うことによって、前記第1通信部と前記携帯端末との通信状況に基づいて前記移動体に対する前記携帯端末の位置を測定する携帯端末位置測定処理を開始し、前記携帯端末位置測定処理の開始時点から所定時間以内に、前記携帯端末位置測定処理により測定される前記携帯端末の位置が前記移動体から第2所定距離以下にならなかった場合に、前記切替周期を前記第1測定周期よりも長い第2測定周期に変更して前記携帯端末位置測定処理を継続する携帯端末位置測定部と、して機能させるプログラム。
構成5のプログラムをコンピュータにより実行することによって、構成1の移動体制御装置の構成を実現することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…移動体制御装置、2…携帯端末、10…プロセッサ、11…第1通信制御部、12…第2通信制御部、13…携帯端末位置測定部、14…対象識別情報認識部、20…メモリ、21…プログラム、22…利用者登録情報、30…第1通信部、31a~31f,32a~32d…UWBアンテナ、40…第2通信部、41…BLEアンテナ、50…ハンドル、50a…ハンドルセンサ、100…車両(移動体)、110…運転席、111…運転席ドア、U…利用者。