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特開2024-126262光検出装置、測定方法、及び距離測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126262
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】光検出装置、測定方法、及び距離測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4865 20200101AFI20240912BHJP
   G01S 17/894 20200101ALI20240912BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20240912BHJP
   H04N 25/705 20230101ALI20240912BHJP
   H04N 25/773 20230101ALI20240912BHJP
【FI】
G01S7/4865
G01S17/894
G01S17/10
H04N25/705
H04N25/773
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034536
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】平野 広之
(72)【発明者】
【氏名】芥川 一樹
(72)【発明者】
【氏名】宮之原 明彦
【テーマコード(参考)】
5C024
5J084
【Fターム(参考)】
5C024CY17
5C024EX12
5C024GX03
5C024GX15
5C024GY39
5C024GY41
5C024GY45
5C024HX27
5C024HX32
5C024JX41
5J084AA05
5J084AA10
5J084AB01
5J084AB07
5J084AB20
5J084AC02
5J084AC07
5J084AD01
5J084BA36
5J084BA40
5J084CA03
5J084CA19
5J084CA31
5J084CA32
5J084CA53
5J084CA70
5J084CA76
5J084CA77
5J084DA01
5J084DA08
5J084DA09
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】本開示では、カウンタ値の変化する所定の時間間隔よりも短いスキューの測定が可能な光検出装置、測定方法及び距離測定システムを提供する。
【解決手段】本開示によれば、複数の画素を有する受光部と、タイミング信号に応じて計測線に第2電気信号パルスを供給可能である信号生成部と、複数の画素の少なくとも1つの画素と計測線を介して接続され、所定の時間間隔で時系列に変化するカウンタ値を用いて、第1電気信号パルス又は第2電気信号パルスの到達タイミングに対応するカウンタ値とタイミング信号の発生タイミングに対応するカウンタ値との差を計測値とする時間計測部と、カウンタ値に基づき、所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値を生成可能である測定処理部と、を備え、信号生成部は、カウンタ値と第2電気信号パルスの発生タイミングとの間に時間的な揺らぎを与える、光検出装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光フォトンに応じて第1電気信号パルスを生成する複数の画素を有する受光部と、
タイミング信号に応じて計測線に第2電気信号パルスを供給可能である信号生成部と、
前記複数の画素の少なくとも1つの画素と前記計測線を介して接続され、所定の時間間隔で時系列に変化するカウンタ値を用いて、前記計測線を介して伝送される前記第1電気信号パルス又は前記第2電気信号パルスの到達タイミングに対応する前記カウンタ値と前記タイミング信号の発生タイミングに対応する前記カウンタ値との差を計測値とする時間計測部と、
前記カウンタ値に基づき、前記所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値を生成可能である測定処理部と、を備え、
前記信号生成部は、前記カウンタ値と前記第2電気信号パルスの発生タイミングとの間に時間的な揺らぎを与える、光検出装置。
【請求項2】
前記計測値に基づいて、前記所定の時間間隔がヒストグラムを構成するビンの時間間隔に対応するヒストグラムを生成するヒストグラム生成回路と、を更に備え、
前記測定処理部は、前記ヒストグラムに基づき、前記所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値を生成する、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記第1電気信号パルスの測定中は、前記タイミング信号に応じて発光部が発光し、
前記計測線には、前記第2電気信号パルスは供給を停止可能に構成され、
前記測定処理部は、測定値に光速に基づく数値を乗算して距離値を生成する、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項4】
スキューの測定期間中には、前記タイミング信号に応じて前記第2電気信号パルスが供給され、
前記計測線には、前記第1電気信号パルスは供給を停止可能に構成され、
前記測定処理部の測定値が前記スキューに対応する、請求項2に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記スキューの測定期間中には、前記タイミング信号は1回以上生成され、
前記信号生成部は、前記複数回生成される前記タイミング信号それぞれに応じて、前記第2電気信号パルスを生成し、前記ヒストグラムの連続する複数のビンに前記計測値が頻度として加算されるように前記第2電気信号パルスに対して時間的な揺らぎを与える、請求項4に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記信号生成部は、統計分布に従い、前記第2電気信号パルスに対して時間的な揺らぎを与える、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記信号生成部は、所定の範囲で発生する乱数に基づき、前記第2電気信号パルスに対して時間的な揺らぎを与える、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項8】
第1発振クロック信号を生成する第1発振器と、
前記第1発振クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、前記発振クロック信号の周期の整数倍または有理数倍の周期の発生数を前記カウンタ値として生成するカウンタと、を更に備え、
前記信号生成部は、
前記第1発振クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、第3電気信号パルスを生成するパルス生成器と、
前記第1発振クロック信号の周期の整数倍にはならず互いに素である周期、または、お互いの周期の最大公約数が第1所定値より小さく、且つ最小公倍数が第2所定値より大きい第2発振クロック信号を生成する第2発振器と、
前記第3電気信号パルスと前記第2発振クロック信号とを入力とし、前記第2電気信号パルスを出力する揺らぎ付与回路であって、前記第2発振クロック信号の立ち上がり、または、立ち下がりのタイミングに基づき前記第3電気信号パルスを出力し、前記第2発振クロック信号の次の立ち上がりまたは、立ち下がりのタイミングに基づき前記第3電気信号パルスの出力を停止する揺らぎ付与回路と、
を有する、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項9】
発振クロック信号を生成する第1発振器を、更に備え、
前記信号生成部は、
前記発振クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、第3電気信号パルスを生成するパルス生成器と、
前記第3電気信号パルスを入力として、前記第3電気信号パルスを可変的に遅延させて前記第2電気信号パルスとして出力する可変遅延回路と、
を有する、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項10】
発振クロック信号を生成する第1発振器と、
前記発振クロック信号における周期の所定倍の周期の第1クロック信号を発生数する第1フェーズロックループ回路と、
前記第1クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、前記第1クロック信号における周期の整数倍又は有理数倍の周期の発生数を前記カウンタ値として生成するカウンタと、を、更に備え、
前記信号生成部は、
前記発振クロック信号の周期の整数倍又は有理数倍の周期の第2クロック信号を発生数する第2フェーズロックループ回路と、
前記第2クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、前記第2電気信号パルスを生成するパルス生成器と、
を有する、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項11】
スキューの測定期間中には、前記タイミング信号は1回以上生成され、
前記信号生成部は、前記複数回生成される前記タイミング信号それぞれに応じて、前記第2電気信号パルスを生成し、
前記測定処理部は、前記計測値の平均値に対応する前記測定値を生成する、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項12】
前記測定処理部は、前記ヒストグラムのビンに対応する前記計測値の出現頻度と、当該前記計測値とを乗算した乗算値を、前記ヒストグラムのビン毎に演算して、加算した値を、前記出現頻度の合計値で除算した値に対応する前記測定値を生成する、請求項2に記載の光検出装置。
【請求項13】
前記計測値に対して、スキューにしたがった発生頻度の補正値を加算する補正処理部を更に備え、
前記測定処理部は、前記計測値に前記補正値を加算した後の数値に基づき、前記測定値を生成する、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項14】
前記計測値に対して、スキューにしたがった発生頻度の補正値を加算する補正処理部を更に備え、
前記ヒストグラム生成回路は、前記計測値に前記補正値を加算した後の数値に基づき、前記ヒストグラムを生成する、請求項2に記載の光検出装置。
【請求項15】
前記時間計測部、及び前記測定処理部は、前記1つ又は複数の画素毎に構成され、前記測定処理部それぞれの測定値には、当該測定値に対応するスキューにしたがった発生頻度の補正値がそれぞれ加算され、
前記ヒストグラム生成回路は、前記補正値がそれぞれ加算された複数の測定値を用いて、前記ヒストグラムを生成する、請求項2に記載の光検出装置。
【請求項16】
前記第1電気信号パルスを可変的に遅延させる可変遅延回路を更に備え、
前記可変遅延回路に対して、スキューにしたがった発生頻度の時間遅れ信号を出力する補正処理部を更に備える、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項17】
前記複数の画素は、隣接する任意の数の画素配列により構成される、請求項15に記載の光検出装置。
【請求項18】
前記信号生成部と、前記計測線を選択的に接続するマルチプレクサを更に備える、請求項1記載の光検出装置。
【請求項19】
複数の画素を有する光検出装置における信号線間のスキューを測定する測定方法であって、
タイミング信号に応じて計測線に第2電気信号パルスを供給する信号生成工程と、
前記タイミング信号に応じて所定の時間間隔で時系列に発生するカウンタ値を用いて、前記複数の画素の少なくとも1つの画素に接続される計測線を介して伝送される第2電気信号パルスの到達タイミングに対応する前記カウンタ値と前記タイミング信号の発行タイミングとの差を計測値として計測する時間計測工程と、
前記カウンタ値に基づき、前記所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値をスキューとして生成する測定処理工程と、を備え、
前記信号生成工程は、前記カウンタ値の発生タイミングと前記第2電気信号パルスの発生タイミングとの間に時間的な揺らぎを与える、測定方法。
【請求項20】
光検出装置と、
前記第1電気信号パルスの測定中に、前記タイミング信号に応じて発光する発光部と、
を備え、
前記光検出装置は、
受光フォトンに応じて第1電気信号パルスを生成する複数の画素を有する受光部と、
タイミング信号に応じて計測線に第2電気信号パルスを供給可能である信号生成部と、
前記複数の画素の少なくとも1つの画素と前記計測線を介して接続され、所定の時間間隔で時系列に変化するカウンタ値を用いて、前記計測線を介して伝送される前記第1電気信号パルス又は前記第2電気信号パルスの到達タイミングに対応する前記カウンタ値と前記タイミング信号の発生タイミングに対応する前記カウンタ値との差を計測値とする時間計測部と、
前記カウンタ値に基づき、前記所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値を生成可能である測定処理部と、を有し、
前記信号生成部は、前記カウンタ値と前記第2電気信号パルスの発生タイミングとの間に時間的な揺らぎを与える、
距離測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光検出装置、測定方法、及び距離測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体(対象物)までの距離をToF(Time of Flight)に基づいて計測する距離測定システムが一般に知られている。TOFには、一般に、直接TOF(dTOF)と間接TOF(iTOF)とがある。直接ToFは、受光素子からパルス光を発射し、単一のパルス光が照射された物体からの反射光をSPAD(Single Photon Avalanche Diode)と呼ばれる受光素子で受けてフォトンを検出し、これにより発生したキャリアを、アバランシェ増倍を用いて電気信号パルスに変換して、これをTDC(Time to Digital Converter)に入力することで反射光の到来時刻を計測し、物体までの距離を算出する技術である。一方、間接ToFは、受光素子からパルス光を発射し、物体からの反射光により発生した電荷の検出及びその蓄積量が光の到来タイミングに依存して変化する半導体素子構造を利用して、光の飛行時間を計測する。
【0003】
SPADを用いた距離測定システムは、単一のパルス光に対して、画素を構成する幾つかのSPADによる反応をサンプリング周波数に従った所定の時間間隔ごとに加算したヒストグラムを生成し、そこからピーク値に対応する時刻を採用することにより、距離を算出している。このような距離測定システムは、ライン状に配置された画素列ごとにフォトンを読み出すことにより、画素ごとに距離情報を持った撮像フレーム(距離画像)をリアルタイムに得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2021-505080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置の製造ばらつきや回路設計上の信号線の長短等の問題により発生する信号間のスキュー(遅速)が生じる恐れがある。また、距離測定システムでは時系列に所定の時間間隔ごとに変化するカウンタ値に基づき、測定値が生成される。ところが、所定の時間間隔よりも短いスキューの測定、及び補正は困難となってしまう。
【0006】
そこで、本開示では、カウンタ値の変化する所定の時間間隔よりも短いスキューの測定が可能な光検出装置、測定方法及び距離測定システムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示によれば、受光フォトンに応じて第1電気信号パルスを生成する複数の画素を有する受光部と、
タイミング信号に応じて計測線に第2電気信号パルスを供給可能である信号生成部と、
前記複数の画素の少なくとも1つの画素と前記計測線を介して接続され、所定の時間間隔で時系列に変化するカウンタ値を用いて、前記計測線を介して伝送される前記第1電気信号パルス又は前記第2電気信号パルスの到達タイミングに対応する前記カウンタ値と前記タイミング信号の発生タイミングに対応する前記カウンタ値との差を計測値とする時間計測部と、
前記カウンタ値に基づき、前記所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値を生成可能である測定処理部と、を備え、
前記信号生成部は、前記カウンタ値と前記第2電気信号パルスの発生タイミングとの間に時間的な揺らぎを与える、光検出装置が提供される。
【0008】
前記計測値に基づいて、前記所定の時間間隔がヒストグラムを構成するビンの時間間隔に対応するヒストグラムを生成するヒストグラム生成回路と、を更に備え、
前記測定処理部は、前記ヒストグラムに基づき、前記所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値を生成してもよい。
【0009】
前記第1電気信号パルスの測定中は、前記タイミング信号に応じて発光部が発光し、
前記計測線には、前記第2電気信号パルスは供給を停止可能に構成され、
前記測定処理部の測定値に光速に基づく数値を乗算した値が測定距離に対応してもよい。
【0010】
スキューの測定期間中には、前記タイミング信号に応じて前記第2電気信号パルスが供給され、
前記計測線には、前記第1電気信号パルスは供給を停止可能に構成され、
前記測定処理部の測定値が前記スキューに対応してもよい。
【0011】
前記スキューの測定期間中には、前記タイミング信号は1回以上生成され、
前記信号生成部は、前記複数回生成される前記タイミング信号それぞれに応じて、前記第2電気信号パルスを生成し、前記ヒストグラムの連続する複数のビンに前記計測値が頻度として加算されるように前記第2電気信号パルスに対して時間的な揺らぎを与えてもよい。
【0012】
前記信号生成部は、統計分布に従い、前記第2電気信号パルスに対して時間的な揺らぎを与えてもよい。
【0013】
前記信号生成部は、所定の範囲で発生する乱数に基づき、前記第2電気信号パルスに対して時間的な揺らぎを与えてもよい。
【0014】
第1発振クロック信号を生成する第1発振器と、
前記第1発振クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、前記第1発振クロック信号の周期の整数倍または有理数倍の周期の発生数を前記カウンタ値として生成するカウンタと、を更に備え、
前記信号生成部は、
前記第1発振クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、第3電気信号パルスを生成するパルス生成器と、
前記第1発振クロック信号の周期の整数倍にはならず互いに素である周期、または、お互いの周期の最大公約数が第1所定値より小さく、且つ最小公倍数が第2所定値より大きい第2発振クロック信号を生成する第2発振器と、
前記第3電気信号パルスと前記第2発振クロック信号とを入力とし、前記第2電気信号パルスを出力する揺らぎ付与回路であって、前記第2発振クロック信号の立ち上がり、または、立ち下がりのタイミングに基づき前記第3電気信号パルスを出力し、前記第2発振クロック信号の次の立ち上がり、または、立ち下がりのタイミングに基づき前記第3電気信号パルスの出力を停止する揺らぎ付与回路と、
を有してもよい。
【0015】
発振クロック信号を生成する第1発振器を、更に備え、
前記信号生成部は、
前記発振クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、第3電気信号パルスを生成するパルス生成器と、
前記第3電気信号パルスを入力として、前記第3電気信号パルスを可変的に遅延させて前記第2電気信号パルスとして出力する可変遅延回路と、
を有してもよい。
【0016】
発振クロック信号を生成する第1発振器と、
前記発振クロック信号周期における所定倍の周期の第1クロック信号を発生数する第1フェーズロックループ回路と、
前記第1クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、前記第1クロック信号における周期の整数倍又は有理数倍の周期の発生数を前記カウンタ値として生成するカウンタと、を、更に備え、
前記信号生成部は、
前記発振クロック信号の周期の整数倍又は有理数倍の周期の第2クロック信号を発生数する第2フェーズロックループ回路と、
前記第2クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、前記第2電気信号パルスを生成するパルス生成器と、
を有してもよい。
【0017】
スキューの測定期間中には、前記タイミング信号は1回以上生成され、
前記信号生成部は、前記複数回生成される前記タイミング信号それぞれに応じて、前記第2電気信号パルスを生成し、
前記測定処理部は、前記カウンタ値の平均値に対応する前記測定値を生成してもよい。
【0018】
前記測定処理部は、前記ヒストグラムのビンに対応する前記計測値の出現頻度と、当該前記計測値とを乗算した乗算値を、前記ヒストグラムのビン毎に演算して、加算した値を、前記出現頻度の合計値で除算した値に対応する前記測定値を生成してもよい。
【0019】
前記計測値に対して、スキューにしたがった発生頻度の補正値を加算する補正処理部を更に備え、
前記測定処理部は、前記計測値に前記補正値を加算した後の数値に基づき、前記測定値を生成してもよい。
【0020】
前記計測値に対して、スキューにしたがった発生頻度の補正値を加算する補正処理部を更に備え、
前記ヒストグラム生成回路は、前記計測値に前記補正値を加算した後の数値に基づき、前記ヒストグラムを生成してもよい。
【0021】
前記時間計測部、及び前記測定処理部は、前記1つ又は複数の画素毎に構成され、前記測定処理部それぞれの測定値には、当該測定値に対応するスキューにしたがった発生頻度の補正値がそれぞれ加算され、
前記ヒストグラム生成回路は、前記補正値がそれぞれ加算された複数の測定値を用いて、前記ヒストグラムを生成してもよい。
【0022】
前記第1電気信号パルスを可変的に遅延させる可変遅延回路を更に備え、
前記可変遅延回路に対して、スキューにしたがった発生頻度の時間遅れ信号を出力する補正処理部を更に備えてもよい。
【0023】
前記複数の画素は、隣接する任意の数の画素配列により構成されてもよい。
【0024】
前記信号生成部と、前記計測線を選択的に接続するマルチプレクサを更に備える、(1)に記載の光検出装置。
【0025】
本開示によれば、複数の画素を有する光検出装置における信号線間のスキューを測定する測定方法であって、
タイミング信号に応じて計測線に第2電気信号パルスを供給する信号生成工程と、
前記タイミング信号に応じて所定の時間間隔で時系列に発生するカウンタ値を用いて、前記複数の画素の少なくとも1つの画素に接続される計測線を介して伝送される第2電気信号パルスの到達タイミングに対応する前記カウンタ値と前記タイミング信号の発行タイミングとの差を計測値として計測する時間計測工程と、
前記カウンタ値に基づき、前記所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値をスキューとして生成する測定処理工程と、を備え、
前記信号生成工程は、前記カウンタ値の発生タイミングと前記第2電気信号パルスの発生タイミングとの間に時間的な揺らぎを与える、測定方法が提供される。
【0026】
本開示によれば、光検出装置と、
前記第1電気信号パルスの測定中に、前記タイミング信号に応じて発光する発光部と、
を備え、
前記光検出装置は、
受光フォトンに応じて第1電気信号パルスを生成する複数の画素を有する受光部と、
タイミング信号に応じて計測線に第2電気信号パルスを供給可能である信号生成部と、
前記複数の画素の少なくとも1つの画素と前記計測線を介して接続され、所定の時間間隔で時系列に変化するカウンタ値を用いて、前記計測線を介して伝送される前記第1電気信号パルス又は前記第2電気信号パルスの到達タイミングに対応する前記カウンタ値と前記タイミング信号の発生タイミングに対応する前記カウンタ値との差を計測値とする時間計測部と、
前記カウンタ値に基づき、前記所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値を生成可能である測定処理部と、を有し、
前記信号生成部は、前記カウンタ値と前記第2電気信号パルスの発生タイミングとの間に時間的な揺らぎを与える、
距離測定システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本技術の一実施形態における距離測定システムの構成の一例を示すブロック図。
図2】クロック生成部の構成例を示すブロック図。
図3】距離測定システムにおけるスキュー補正処理を説明するためのブロック図。
図4】補正処理の無い場合の測定動作例を示すタイムチャート。
図5】ヒストグラム生成回路が生成したヒストグラムの例を示す図。
図6】スト信号生成部の構成例を図3の構成要素の一部と共に示す図。
図7】テスト電気信号パルスに対応するヒストグラム例を示す図。
図8】時間的な揺らぎを与えたテスト電気信号パルスに対応するヒストグラム例を示す図。
図9】テスト電気信号パルスの測定動作例を示すタイムチャート。
図10】補正処理部の構成例を示すブロック図。
図11図6で示す構成に加算部とディザ付与部と、遅延補正量推定部を追加した図。
図12】第2実施形態に係る画素回路の動作例を示すタイムチャート。
図13】2つの受光素子の出力をまとめて、ヒストグラムを生成する構成例を示す図。
図14】スキューの測定処理例を示すフローチャート。
図15】受光素子の通常測定処理例を示すフローチャート。
図16】第1実施形態の変形例1に係るテスト信号生成部の構成例を示すブロック図。
図17】第1実施形態の変形例2に係るテスト信号生成部の構成例を示すブロック図。
図18】2つの受光素子の出力をまとめて、ヒストグラムを生成する構成例を示す図
図19】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図。
図20】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、光検出装置及び距離測定システムの実施形態について説明する。以下では、光検出装置及び距離測定システムの主要な構成部分を中心に説明するが、光検出装置及び距離測定システムには、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本技術の一実施形態における距離測定システムの構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る距離測定システム1は、パルス光を発射し、パルス光が照射された物体OBJからの反射光に基づいて、物体OBJ(対象物ないしは被写体)までの距離を測定する。すなわち、この距離測定システム1は、例えば、検出装置5と、発光部10と、受光光学系20と、全体制御部30と、を備える。これらの検出装置5と、発光部10と、受光系20と、全体制御部30とは、例えば、CMOS LSIのようなシステム・オン・チップ(SoC)として一体的に構成することが可能であるが、これに限定されない。例えば、発光部10、及び後述する受光部40といった幾つかのコンポーネントが別体のLSIとして構成されてもよい。
【0030】
検出装置5は、反射光をSPAD(Single Photon Avalanche Diode)と呼ばれる受光素子で受光することにより得られる電気信号パルスに基づいて、物体OBJ(対象物ないしは被写体)までの距離を測定するいわゆる直接TOF型測距装置である。本技術は、直接TOF型測距装置を例にして説明されるが、これに限定されない。例えば間接TOF型測距装置に対しても同様に適用することが可能である。すなわち、この検出装置5は、受光部40と、測距処理部50と、制御部60と、通信インタフェース(IF部)部70とを有する。なお、検出装置5の詳細は、後述する。
【0031】
発光部10は、光源を有する。この光源は、後述する全体制御部30、及び制御部60の制御に従い、対象エリアに対して、TOF測距のためのレーザパルス光(以下「パルス光」という。)を発光ないしは出射する。このような測距に用いるためのパルス光は、アクティブ光と称されることもある。光源は、例えば、端面発光型半導体レーザであってもよいし、或いは面発光型半導体レーザであってもよい。例えば、発光部10の光源は、対象エリアに向けて光を空間的に発光することが可能である。本実施形態では、発光部10は、LSIチップの外に設けられているが、これに限られるものではなく、onチップにより構成されてもよい。
【0032】
受光光学系20は、例えば複数のレンズで構成される。この受光光学系20は、パルス光が照射された物体OBJからの反射光を検出装置5の受光部40に導光する。すなわち、受光光学系20は、受光部40の受光面の前方に配置され、体OBJからの反射光を効率よく受光することができるように、レンズ等の光学素子が設けられている。
【0033】
全体制御部30は、距離測定システム1の動作を統括的に制御する。すなわち、全体制御部30は、光検出装置5、及び発光部10の動作を統括的に制御する。
【0034】
ここで、光検出装置5の詳細を説明する。光検出装置5は、受光部40と、測距処理部50と、制御部60と、通信インタフェース部70とを有する。
【0035】
受光部40は、対象エリアから入射する光に反応して、電気信号パルスを出力するセンサである。入射光(観測光)は、測距に対して外乱光として作用する環境光及び発光部10により出射されたパルス光が照射した物体OBJからの反射光を含み得る。
【0036】
本開示において、受光部40は、画素アレイ部42と、駆動回路44とを有する。画素アレイ部42は、2次元アレイ状に配置された複数の画素42Pを有する。各画素42Pは、受光素子(SPAD)421を含み構成されたCMOSイメージセンサである。すなわち、画素アレイ部42は、2次元アレイ状に配置された複数の受光素子(SPAD)421を含み構成されたCMOSイメージセンサである。また、各SPADは、飛来した光(フォトン)を検出し、これにより発生したキャリアを、アバランシェ増倍を用いて電気信号パルスに変換する。なお、隣接する幾つかのSPADの集合体(SPAD群)を画素と称し得る。例えば、画素は、隣接する2×2、3×3、6×6、9×9といった任意の数の配列(アレイパターン)からなるSPADの集合体により構成され、これらの数に限定されない。なお、本実施形態に係る画素42Pが出力する電気信号パルスが第1電気信号パルスに対応する。
【0037】
駆動回路44は、制御部60の制御の下、SPAD群の数を制御する。駆動回路44は、例えば特定のSPAD群(例えば撮像フレームにおける1ライン方向のSPAD群)を有効化し、電気信号パルスを読み出す。したがって、1フレーム時間において順次に各ラインのSPAD群が有効化され、有効化されたSPAD群のそれぞれから出力される電気信号パルスによって、対象エリアに対する1撮像フレームが形成される。受光部40から読み出された電気信号パルスは、例えば所定段数の遅延バッファを含む信号線を介して(図3参照)、測距処理部50に出力される。なお、図1には明示されていないが、受光部40の出力端には、選択された画素42Pから電気信号パルスを読み出すための画素選択スイッチ43(図3参照)が設けられている。駆動回路44は、画素選択スイッチ43を制御する。
【0038】
測距処理部50は、発光部10により出射したパルス光と受光部40により受光した観測光とに基づいて、物体OBJまでの距離を算出する(測距する)コンポーネントである。測距処理部50は、例えば、信号処理プロセッサにより構成される。本開示では、測距処理部50は、時間-デジタルコンバータ(Time-to-Digital Converter:TDC)部52と、補正処理部53と、ヒストグラム生成部54と、測定処理部55とを、有する。また、測定処理部55は、距離演算部56と、遅延補正量推定部58とを、有する。
【0039】
TDC部52は、パルス光が出射された時刻から特定のSPADにより光を受光した時刻までの時間(すなわち、光の到来時間)をデジタルの計測値に変換するコンポーネントである。発光部10は、パルス光は、制御部60の生成するタイミング信号S10(図4参照)に応じて、パルス光を出射する。そなわち、このTDC部52は、タイミング信号S10が発生したタイミングから、電気信号パルスが到達するまでの時間を計測する。なお、本実施形態に係るTDC部52が時間計測部に対応する。
【0040】
補正処理部53は、TDC回路522の出力値を受光素子421ごとのスキューに基づき補正し、ヒストグラム生成部54に出力する。本開示では、補正処理部53は、ヒストグラムの生成に先立ち、計測値に、補正処理部53により算出された補正値を例えば統計分布にしたがい重畳することにより、計測値を補正する。これにより、回路設計等に起因する、画素42Pから読み出される電気信号パルスの遅速(スキュー)が補正可能となる。なお、補正処理部53の詳細は後述する。
【0041】
ヒストグラム生成部54は、補正処理部53で補正されたTDC部52により出力されるサンプリング時間ごとの計測値の合計値に基づいてヒストグラムを生成する。例えば、ヒストグラム生成部54は、生成したヒストグラムに基づくサンループ値を、動作モードに従って、距離演算部56、及び遅延補正量推定部58の少なくともいずれかに出力する。或いは、ヒストグラム生成部54により生成されたヒストグラムは、距離演算部56、及び遅延補正量推定部58により参照される。
【0042】
測定処理部55の距離演算部56は、生成された画素42Pごとのヒストグラムに基づいて、ヒストグラム中のピーク値に対応する時間(すなわち、到来時間)を測定値として生成する。また、距離演算部56、及び遅延補正量推定部58のそれぞれは、補正処理部53で補正されたTDC部52により出力されるサンプリング時間ごとの計測値を用いて、平均値、重心などの測定値を演算することも可能である。距離演算部56、及び遅延補正量推定部58は、同等の処理が可能であり、スキューの測定には、主として遅延補正量推定部58が用いられ、通常の距離測定には距離演算部56が用いられる。このため、本実施形態では、延補正量推定部58は、距離演算部56の処理と同等の処理が可能である。なお、延補正量推定部58の処理例の説明を省略する場合があるが、距離演算部56の処理は、延補正量推定部58で実施することも可能である。また、延補正量推定部58で実施可能な処理は、距離演算部56で実施することも可能である。
【0043】
すなわち、距離演算部56、及び遅延補正量推定部58のそれぞれは、発光部10の所定の発光タイミングで出射されたパルス光が物体OBJに照射したときの反射光が受光されたとすれば、該発光タイミングから受光タイミングまでの時間は、物体OBJまでの光の往復時間であるから、測定値にc/2(cは光速)を乗算することにより、画素42Pごとに物体OBJまでの距離を算出することができる。したがって、撮像フレームを構成する全ての画素42Pに対して算出された距離により、距離画像を得ることができる。距離演算部56は、各撮像フレームにおける画素42Pごとに算出した距離に係るデータ(測距データ)を通信インタフェース部70に順次に出力する。
【0044】
全体制御部30の制御にしたがい制御部60は、光検出装置5の各構成要素、及び発光部10を制御する。この制御部60は、クロック生成部62と、テスト信号生成部64と、タイミング制御部66とを有する。
【0045】
図2は、クロック生成部62の構成例を示すブロック図である。クロック生成部62は、カウンタ値を生成可能であり、発振器622と、カウンタ624とを有する。発振器622は、例えば振動子を発振させて発振クロック信号を生成する。発振クロック信号の発振周期は、例えば400psである。カウンタ624は発振クロック信号のパルス数をカウントしカウンタ値を出力する。すなわち、このカウンタ624は、所定のサンプリング周波数に従って分割された時間間隔、例えば400psの時間間隔で時系列に変化するカウンタ値を生成する。クロック生成部62は、例えば生成した発振クロック信号、及びカウンタ値の少なくとも一方を例えばテスト信号生成部64、タイミング制御部66、及び測距処理部50に出力する。
【0046】
テスト信号生成部64は、受光素子421ごとのスキューを測定するためのテスト信号を生成する。このテスト信号生成部64は、テスト信号として、タイミング信号に応じて計測線SL(図3参照)に第2電気信号パルスを供給する。テスト信号生成部64は、例えば、第2電気信号パルスの発生タイミングに時間的な揺らぎを与えることが可能である。テスト信号生成部64の詳細も後述する。なお、本実施形態に係るテスト信号生成部64が信号生成部に対応する。
【0047】
タイミング制御部66は、発振器622、及びカウンタ624の少なくともいずれかに基づき、発光部10のパルス光の発光タイミングと、受光部40、及び測距処理部50の駆動タイミングとを制御する。例えば、タイミング制御部66は、所定のタイミング信号S10(図4参照)として出力し、これにより、発光部10の受光素子を駆動する。パルス光は、例えば、数~数十nsのパルス幅を有し得るが、これに限られない。また、1つのヒストグラムを生成するのに、例えば数千回のパルス光が照射される。すなわち、ヒストグラム生成部54が生成するヒストグラムは、例えば数千回分の測定データにより生成される。
【0048】
通信インタフェース部70は、算出された測距データを外部のホストICに出力するためのインタフェース回路である。例えば、通信インタフェース部70は、MIPI(Mobile Industry Processor Interface)に準拠したインタフェース回路であるが、これに限られない。例えば、SPI(Serial Peripheral Interface)やLVDS、SLVS-EC等であってもよいし、これらのインタフェース回路のうちの幾つかを実装していてもよい。
【0049】
図3は、本技術の一実施形態における距離測定システム1におけるスキュー補正処理を説明するためのブロック図である。すなわち、同図は、図1に示した各種のコンポーネントのうち、本技術に特に関連するコンポーネントを中心にした構成を示している。なお、図3では、説明を簡単にするために、画素アレイ部42の複数の受光素子421のなかの2つの受光素子421(1)と、受光素子421(2)とを図示している。また、以後の説明では、受光素子421(1)に対応する素子に(1)を付与し、受光素子421(2)に対応する素子に(2)を付与する場合がある。
【0050】
図3に示すように、画素42Pは、例えば、フォトンを検出するアバランシェフォトダイオード421と、電流源422と、インバータ423とを含み構成される。電流源422は、例えばP型MOSFETにより構成され、また、インバータ423は、例えばCMOSインバータにより構成される。図中、受光素子421は、1つのSPADからなるものとして示されているが、例えば、複数のSPAD群を、ここでいう受光素子421とみなしてもよい。各受光素子421は、画素選択スイッチ43の一端に接続される。画素選択スイッチ43の他端は、計測線SLの一端に接続される。計測線SLの他端は、遅延回路425を介してTDC回路522に接続される。
【0051】
このような受光素子421において、駆動回路44にしたがい、アバランシェフォトダイオード422のアノード側にはアバランシェ増倍が発生する程度の負電圧Vbdが印加される。アバランシェフォトダイオード421へ1フォトンの入射があると、これにより発生した電子がアバランシェ増倍を起こして、大きな電流が流れる。これにより、アバランシェフォトダイオード421のカソードの電圧が一旦負側に向かって大きく振れて、カソード電圧と負電圧Vbd間の電圧がブレイクダウン電圧に達するところでアバランシェ増倍が停止する。このとき、低い電圧になっているアバランシェフォトダイオード421のカソードの電圧は、電流源422によって充電され、再び初期電圧に戻る。このような電圧波形は、インバータ423により整形され、1フォトンの到来時刻を基準点とするパルス状の電気信号パルスとして生成される。そして、画素選択スイッチ43が閉(ON)状態にあると、電気信号パルスは計測線SLを介してTDC回路522に入力し、デジタルの計測値に変換される。
【0052】
制御部60は、補正値の算出処理の間、画素選択スイッチ43を開(OFF)状態にする。そして、第1のマルチプレクサMUX1は、制御部60の制御の下、補正値の算出処理の間、複数の受光素子421のうちの補正値の算出処理に用いる画素42Pと、遅延回路425とを、選択的に接続する。第1のマルチプレクサMUX1は、補正値の算出処理後は、いずれも開状態となる。遅延回路425は、例えば所定段数の遅延バッファで構成される。
【0053】
第2のマルチプレクサMUX2は、第1のマルチプレクサと対となって動作することが可能である。すなわち、第2のマルチプレクサMUX2は、制御部60の制御の下、補正値の算出処理の間、複数の画素42Pのうちのいずれかの計測線SLに対応するヒストグラム生成回路542と補正処理部53とを選択的に接続する。第2のマルチプレクサMUX2は、補正値の算出処理後は、いずれも開(OFF)状態となる。
【0054】
TDC部52は、例えば、画素42Pを構成する特定のSPAD群ごとに設けられたTDC回路522群から構成される。TDC回路522は、例えばDFF(ディーフリップフロップ)である。TDC回路522は、例えば、不図示のD端子と、CLK端子と、Q端子を有する。
【0055】
TDC回路522は、例えば、CLK端子から入力される電気信号パルスが立ち上げる(LからHに遷移させる)タイミングで、D端子のカウンタ値を記憶する。このカウンタ値は、上述のようにカウンタ624(図2参照)が生成し、所定の時間間隔、例えば400psで時系列に変化する。そして、TDC回路522は、記憶したカウンタ値をQ端子から補正処理部53に出力する。
【0056】
補正処理部53は、通常の測定時に、TDC回路522毎の出力値に、スキューにしたがった発生頻度の補正値を付与する。なお、補正処理部53、及び遅延補正量推定部58の詳細は、後述する。本実施形態では、各ヒストグラム生成回路542は、第2のマルチプレクサMUX2を介して、距離演算部56又は遅延補正量推定部58のいずれかに選択的に接続される。
【0057】
ヒストグラム生成部54は、TDC回路522群に対応するヒストグラム生成回路542群を含み構成される。ヒストグラム生成回路542群の生成するヒストグラムは、例えば、図示しないメモリ上に、ある種のデータ構造ないしはテーブルとして保持される。ヒストグラムは、撮像フレームにおける読み出しラインごとに発光されるパルス光に基づいて、画素42Pの数に対応する数だけ生成される。なお、補正処理部53で補正されたTDC部52により出力されるサンプリング時間ごとの計測値も、図示しないメモリ上に、ある種のデータ構造ないしはテーブルとして保持することが可能である。距離演算部56は、これらの保持された計測値を用いて、平均値、重心などの測定値を演算することも可能である。この場合、距離演算部56がヒストグラムを用いた演算を主として行い、遅延補正量推定部58がヒストグラムを用いない演算を行うように、機能分担することも可能である。
【0058】
(通常の測定動作)
以下では、図1乃至図3を参照しつつ、図4を用いて、補正処理の無い場合の測定動作例を説明する。図4は、補正処理の無い場合の測定動作例を示すタイムチャートである。ここでは、受光素子421(1)も受光素子421(2)も同一距離にあるOBJを測定している例で説明する。つまり、受光素子421(1)に対する測定距離と、受光素子421(2)に対する測定距離との差の主因には、スキューが含まれる。
【0059】
図4に示すように、上から、クロック生成62の発振器622の出力する発振クロック信号を「発振器1出力」で示し、タイミング制御部66の生成する発光パルス信号を「発光パルス信号」で示し、クロック生成62のカウンタ624の生成するカウンタ信号のカウンタ値を「カウンタ値」で示し、遅延回路425(1)の出力パルスを「遅延1出力」で示し、TDC回路522(1)の出力信号を「TDC1出力」で示し、遅延回路425(2)の出力パルスを「遅延2出力」で示し、TDC回路522(2)の出力信号を「TDC2出力」で示す。横軸は時間である。なお、実測定でのカウンタ出力は、測定距離に応じて例えば数万オーダまでの数値を出力可能であるが、説明を簡単にするため、図4では0~8で説明する。
【0060】
クロック生成62の発振器622は、発振クロック信号を例えば発振周期400psにより生成する。タイミング制御部66は、発振クロック信号に基づき、所定の周期でタイミング信号S10を出力する。これにより、全体制御部30は、タイミング信号S10の生成タイミング毎に発光パルス信号を発光部10に出力する。
【0061】
クロック生成部62のカウンタ624は、発振クロック信号に基づき、発振クロック信号がロウレベルからハイレベルになるタイミングの回数を出力する。そしてし、カウンタ624は、タイミング信号S10で0にリセットされる。このように、カウンタ624は、所定の時間間隔、例えば400psで時系列に変化するカウンタ値を出力する。
【0062】
発光パルスの反射光を受光した受光素子421(1)の電圧波形は、インバータ423により整形され、1フォトンの到来時刻を基準点とするパルス状の電気信号パルスとして生成される。この電気信号パルスは、遅延回路425(1)で所定の時間遅延し、「遅延1出力」で示される電気信号パルスとして、TDC回路522(1)のCLK端子に入力する。また、「カウンタ値」の情報を有するカウンタ信号は、TDC回路522(1)のD端子に入力される。これにより、TDC回路522(1)は、CLK端子に入力する電気信号パルスの立ち上がりのタイミングで、カウンタ値を記憶し、ヒストグラム生成回路542(1)に出力する。例えば、TDC回路522(1)は、2、2、1、、、などの測定値を、ヒストグラム生成回路542(1)に出力する。すなわち、TDC回路522(1)は、電気信号パルスの到達タイミングに対応するカウンタ値とタイミング信号の発生タイミングに対応するカウンタ値との差を計測値とする。
【0063】
同様に、受光素子421(2)の電圧波形は、インバータ423により整形され、1フォトンの到来時刻を基準点とするパルス状の電気信号パルスが生成される。この電気信号パルスは、遅延回路425(2)で所定の時間遅延し、「遅延2出力」で示される電気信号パルスとして、TDC回路522(2)のCLK端子に入力する。また、「カウンタ値」の情報を有するカウンタ信号は、TDC回路522(2)のD端子に入力される。これにより、TDC回路522(2)は、CLK端子に入力する電気信号パルスの立ち上がりのタイミングで、カウンタ値を記憶し、ヒストグラム生成回路542(2)に出力する。例えば、TDC回路522(2)は、3、2、2、、、などの測定値を、ヒストグラム生成回路542(1)に出力する。
【0064】
図5は、ヒストグラム生成回路542が生成したヒストグラムの例を示す図である。図5(a)はヒストグラム生成回路542(1)が生成したヒストグラム例である。図5(b)はヒストグラム生成回路542(2)が生成したヒストグラム例である。横軸は、カウンタ値を示し、縦軸はカウンタ値の出現頻度を示す。
【0065】
なお、図5に示すように、本実施形態では、ヒストグラムを形成する長方形の基本単位をビンと称し、ビンの幅をビン幅と称する場合がある。例えば本実施形態に係るビン幅は、カウンタ値の所定の時間間隔、例えば400psに対応する。
【0066】
これらから分かるように、本実施形態に係るカウンタ値は、パルス光の発光タイミングからの経過時間に対応する。通常は、同一のOBJに対して数千回の測定を行うので、カウンタ値は、測定光の反射光に基づく測定光の時間的な分布は正規分布に近づき、その分布にレーザパルスの形状を畳み込ませた分布を有する。すなわち、ヒストグラム生成回路542(1)が生成したヒストグラムは、正規分布の特徴を有する形状となる。この分布は、アバランシェフォトダイオード422の統計的な揺らぎにより生じる。これにより、停止している同一のOBJを測定しても、ヒストグラムは、測定回数を増加させれば、正規分布の特徴を有する形状に近づくものである。
【0067】
測定処理部55の距離演算部56は、このヒストグラムの統計分布特性を利用し、距離値をビン幅よりも高精度に演算することが可能となる。例えば、距離演算部56は、ヒストグラム頻度の重心を演算する。例えば、ビン1における出現頻度が1、ビン2における出現頻度が3、ビン3における出現頻度が7、ビン4における出現頻度が2とすると、重心1は、(1×1+2×3+3×7+4×2)/13=2.77となる。このように、距離演算部56は、TDC回路522の計測値の平均値に対応する測定値を生成することが可能である。なお、この平均値は、計測値が増加するにしたがい、一般にヒストグラムのピーク位置の値に近づくものである。
【0068】
また、距離演算部56は、2.77にビン幅に対応する時間に高速C/2を乗算して距離値を生成する。このように、ビン幅は1のオーダであるが、測定値は、例えば、ビン幅の100分の1のオーダまで演算可能となる。このオーダは、測定回数により有効桁数が統計的に定まり、例えば測定回数を増加させれば、ビン幅の数千分の1のオーダまで演算可能となる。すなわち、距離演算部56は、カウンタ値に基づき、所定の時間間隔である400psよりも、最小値のオーダが小さい測定値を生成可能である。
【0069】
距離演算部56は、ヒストグラム生成回路542(2)が生成したヒストグラムに対しても同様の演算を行う。例えば、距離演算部56は、ヒストグラム生成回路542(2)が生成したヒストグラムに基づき、例えば2.85を生成する。この差分2.85-2.77=0.08は受光素子421(1)と、受光素子421(2)との間で生じるスキューが主因となる。
【0070】
<スキューの測定>
ここで、図6乃至図9を用いて、スキューの測定の詳細を説明する。図6は、テスト信号生成部64の構成例を図3の構成要素の一部と共に示す図である。テスト信号生成部64は、スキューを測定する際のテスト信号P64bを生成する。このテスト信号生成部64は、テストパルス生成器642と、揺らぎ付与回路644とを有する。更に揺らぎ付与回路644は、発振器646と、DFF(ディーフリップフロップ)648と、を有する。
【0071】
テストパルス生成器642は、例えばインバータ423の生成する電気信号パルスに対応するテスト電気信号パルスP64aを、タイミング制御部66の制御に従い生成する。揺らぎ付与回路644は、テストパルス生成器642が生成する電気パルスP64に時間的な揺らぎを与えたテスト電気信号パルスP64bを生成し、各遅延回路425に供給する。
【0072】
(揺らぎを与えない場合)
図7は、テストパルス生成器642が生成したテスト電気信号パルスP64aを遅延回路425(1)、TDC回路522(1)を介して、ヒストグラム生成回路542(1)で生成した例を示す図である。例えば、テスト電気信号パルスP64aに対して、遅延回路425(1)で遅延し、例えば、カウンタ値の2.12(実際には、2.12の付与はできない)のタイミングでTDC回路522(1)に入力した場合、TDC回路522(1)は2を出力する。テストパルス生成器642には、時間的な揺らぎはないので、例えば1000回のテスト電気信号パルスP64aを出射しても、常に2.12でTDC回路522(1)に入力し、TDC回路522(1)は2を出力する。
【0073】
これから分かるように、ヒストグラム生成回路542(1)は、カウンタ値2の頻度を増加させるのみである。このため、遅延補正量推定部58が、ヒストグラム生成回路542(1)が生成したヒストグラムを用いて重心演算しても2しか生成することができなくなってしまう。同様に、例えば、2.00~2.99の遅延が生じている場合にも、2しか生成することができなくなってしまうことを示している。このように、テストパルス生成器642が生成したテスト電気信号パルスP64aに揺らぎが無い場合には、スキューの測定精度はビン幅のオーダとなってしまう。
【0074】
(揺らぎを与える場合)
図8は、テストパルス生成器642が生成したテスト電気信号パルスP64aに揺らぎ付与回路644が時間的な揺らぎを与えた場合の、ヒストグラム例である。すなわち、時間的な揺らぎを与えたテスト電気信号パルスP64bを遅延回路425(1)、TDC回路522(1)を介して、ヒストグラム生成回路542(1)で生成した例を示す図である。なお、本実施形態に係る時間的な揺らぎを与えたテスト電気信号パルスP64bが第2電気信号パルスに対応する。
【0075】
例えば、揺らぎ付与回路644が、2から-2の間で均等に発生する乱数にビンの時間を乗算し、時間的な揺らぎとして、テストパルス生成器642が生成したテスト電気信号パルスに与えた例である。揺らぎ付与回路644が付与する時間的な揺らぎは、任意の分布を与えることが可能である。本実施形態では、均等な発生頻度の揺らぎを与えるがこれに限定されない。例えば、正規分布などにしたがった時間的な揺らぎを与えることも可能である。
【0076】
このように揺らぎ付与回路644は、テスト電気信号パルスP64aに対して例えば時間的に対称な揺らぎを与えることが可能となる。これにより、TDC回路522の計測値も数値的に揺らぎを生じ、ヒストグラム生成回路542(1)で生成するヒストグラムにも幅が生じる。これにより、遅延補正量推定部58が生成する重心値(平均値)を、2.12に近づけることが可能となる。例えば、揺らぎ付与回路644は、テスト測定の回数と、測定オーダに合わせ、時間的な揺らぎの幅、統計分布の種類を設定可能である。
【0077】
再び図6を参照し、発振器646は、発振周期が例えば1633psであり、発振器622に対して時間的な揺らぎを有している。発振器646は、発振クロック信号をDFF(ディーフリップフロップ)648のCLK端子に入力する。また、テストパルス生成器642は、テスト電気信号パルスをDFF(ディーフリップフロップ)648のD端子に入力する。これにより、DFF648は、時間的に対称に揺らいだテスト電気信号パルスP64bを生成可能となる。
【0078】
発振器646の発振周期は、非同期性を担保するため、発振器622の発振周波数の整数倍に一致しないように構成する。例えば、発振器646は、発振器622の発振クロック信号の周期の整数倍にはならず互いに素である周期、または、発振器622、及び発振器646のお互いの周期の最大公約数が第1所定値より小さく、且つ最小公倍数が第2所定値より大きい発振クロック信号を生成する。例えば発振器622の発振周期が400psだとすると、発振器646の発振周期は1600psではなく、1633psに構成される。また、例えばテストパルス生成器642の出力パルス幅の半分より大きく構成される。これにより、一様性が担保可能となる。
【0079】
図9は、テスト電気信号パルスの測定動作例を示すタイムチャートである。図9に示すように、上から、クロック生成62の発振器622の出力する発振クロック信号を「発振器1出力」で示し、テストパルス生成器642が生成したテスト電気信号パルスP64aを「テストパルス」で示し、クロック生成部62のカウンタ624の生成するカウンタ信号のカウンタ値を「カウンタ値」で示し、発振器646の出力する発振クロック信号を「発振器2出力」で示し、DFF648の出力する時間的に揺らぎを与えたテスト電気信号パルスP64bを「DFF出力」で示し、遅延回路425(1)の出力を「遅延1出力」で示し、TDC回路522(1)の出力を「TDC1出力」で示し、遅延回路425(2)の出力を「遅延2出力」で示し、TDC回路522(2)の出力を「TDC2出力」で示す。横軸は時間である。
【0080】
クロック生成62の発振器622は、発振クロック信号を例えば発振周期400psにより生成する。タイミング制御部66は、発振クロック信号に基づき、発振クロック信号の所定の周期毎にタイミング信号S10を出力する。クロック生成部62のカウンタ624は、発振器622の発振クロック信号に基づき、発振クロック信号がハイレベルになったタイミングの回数を出力し、タイミング信号S10に応じて0にリセットする。これにより、テストパルス生成器642は、クロックカウントが0となるタイミング毎にテスト電気信号パルスP64aを発生する。発振器646は、発振クロック信号を例えば発振周期1633psにより生成する。
【0081】
DFF648は、発振周期1633psの発振クロック信号がロウレベルからハイレベルになったタイミングの、テスト電気信号パルスP64aを記憶し、テスト電気信号パルスP64bとして出力する。DFF648は、次に発振周期1633psの発振クロック信号がロウレベルからハイレベルになったタイミングで、リセットする。これにより、DFF648は、ロウレベル信号を出力する。このように、DFF648は、発振器622に対する発振器646の時間的な揺らぎを反映したテスト電気信号パルスを「DFF出力」として、遅延回路425(1)に出力する。
【0082】
遅延回路425(1)は時間的な揺らぎを反映したテスト電気信号パルスを遅れさせ、TDC回路522(1)のCLK端子に入力する。TDC回路522(1)のD端子には、カウンタ624のカウンタ値が入力される。これにより、TDC回路522(1)は、カウンタ値に対して時間的な揺らぎを有するテスト電気信号パルスP64bがロウレベルからハイレベルになったタイミングのカウンタ値を記憶し、ヒストグラム生成回路542(1)に計測値として出力する。例えば、TDC回路522(1)は、2、2、1、、、などをヒストグラム生成回路542(1)に出力する。
【0083】
遅延回路425(2)は時間的な揺らぎを反映したテスト電気信号パルスを遅れさせ、TDC回路522(2)のCLK端子に入力する。TDC回路522(2)のD端子には、カウンタ624のカウンタ値が入力される。これにより、TDC回路522(2)は、カウンタ値に対して時間的な揺らぎを有するテスト電気信号パルスP64bがロウレベルからハイレベルになったタイミングのカウンタ信号を記憶し、ヒストグラム生成回路542(2)に計測値として出力する。例えば、TDC回路522(2)は、3、2、3、、、などをストグラム生成回路542(2)に出力する。
【0084】
遅延補正量推定部58は、ヒストグラム生成回路542(1)が生成したヒストグラム頻度の重心を演算する。例えば遅延補正量推定部58は、重心として平均値1.67を生成する。同様に遅延補正量推定部58は、ヒストグラム生成回路542(2)が生成したヒストグラム頻度の重心を演算する。例えば遅延補正量推定部58は、重心として平均値2.33を生成する。これにより、測素子間遅延差=(2.33-1.67)=0.66×1binの時間間隔(例えば400ps)となる。これらの、重心値は、全ての受光素子421毎に測定される。そして、延補正量推定部58は、これらの重心の値をスキューとして補正処理部53に供給する。例えば1ビンの時間間隔は、例えば400psであるので、素子間遅延差は、0.66×400ps=264psとなる。なお、例えば1ビンの時間間隔が、100psであれば、素子間遅延差は、0.66×100ps=66psとなる。
【0085】
ここで、図10、及び図11を用いて、補正処理部53の詳細を説明する。図10は、補正処理部53の構成例を示すブロック図である。図10に示すように、補正処理部53は、各受光素子421の補正値生成部532と、記憶部534とを有する。また、記憶部534は、延補正量推定部58から供給された各受光素子421のスキューを記憶する。
【0086】
補正値生成部532は、ディザ付与部532aと、乱数発生部532bとを有する。図11は、図6で示す構成に加算部530とディザ付与部532aと、遅延補正量推定部58を追加した図である。
【0087】
図10、及び図11に示すように、補正値生成部532は、ディザ付与部532aと、乱数発生部532bとを有する。例えば、補正値生成部532は、記憶部534に記憶される素子間遅延差が0.6である時に、距離演算部56が生成する重心値が-0.6ほど補正されるように、統計値にしたがい生成したデジタル値をTDC回路522に加算する。
【0088】
乱数発生部532は、例えば0.0~1.0の一応分布の乱数を発生する。なお、乱数発生部532bは、任意の分布、及び幅の乱数を発生させることも可能である。
【0089】
ディザ付与部532aは、記憶部534に記憶される素子間遅延差が例えば、0.6であれば、-1を60パーセントの確率で発生さ、0を40パーセントの確率で発生させる。ディザ付与部532aは、例えば、乱数発生部532の発生値が、0.0以上、0.4未満であれば0を生成し、0.4以上であれば-1を生成する。
【0090】
ディザ付与部532aは、乱数発生部532が生成した統計的に発生した補正値を、TDC回路522がカウンタ値を出力する度に、加算部530により加算する。これにより、例えば、0、-1、0、-1、-1、0、-1、0、-1、-1のように、0の発生頻度が4、-1の発生頻度が6の割合となり、ヒストグラム生成回路542が生成するヒストグラムの重心を、―0.6ずらすことが可能となる。このため、距離演算部56が生成する重心値が-0.6ほど補正される
【0091】
なお、ディザ付与部532aは、「0、-1、0、-1、-1、0、-1、0、-1、-1」を周期的に生成してもよい。これにより、ヒストグラムの重心を、―0.6ずらすことが可能となる。すなわち、この場合、ディザ付与部532aは、乱数発生部532が生成した統計的に発生した補正値を、TDC回路522がカウンタ値を出力する度に、周期的に加算部530により加算する。これにより、ヒストグラム生成回路542が生成するヒストグラムの重心を、―0.6ずらすことが可能となる。このため、距離演算部56が生成する重心値が-0.6ほど補正される
【0092】
<補正処理の効果>
補正値生成部532による補正処理は、特に複数の受光素子421をまとめて1出力とする場合に、より有効となる。図12は、2つの受光素子421の出力をまとめて、ヒストグラム生成回路542(1、2)で生成する構成例を示す図である。なお、1出力にまとめる受光素子421の数は2に限定されない。例えば、上述したように、隣接する3×3や、6×6、9×9といった任意の数の複数の受光素子421をまとめて1出力としてもよい。
【0093】
(単純加算による補正)
図12(a)は、スキューの補正をしていないヒストグラムh12を示す。ヒストグラムh12は、横軸が時間に対応し、縦軸がカウンタ値の出現頻度を示す。ヒストグラムh12では、受光素子421(1)に対応する分布のピークと、受光素子421(2)に対応する分布のピークとが分離している。すなわち、ヒストグラムh12では、所謂ピーク割れが生じている。
【0094】
図12(b)は、ヒストグラム生成回路542(1、2)の生成したそれぞれのヒストグラムに対してスキューの補正をしたヒストグラムhs12を示す。ヒストグラムhs12は、横軸が時間に対応し、縦軸がカウンタ値の出現頻度を示す。ヒストグラムhs12aでは、受光素子421(1)に対応する分布のピークと、受光素子421(2)に対応する分布のピークとは、スキュー(1、2)の補正値に応じてシフトするが、ピークの分離は維持される。すなわち、ヒストグラムhs12aでは、所謂ピーク割れが生じている。
【0095】
(統計処理による補正)
図13は、2つの受光素子421の出力をまとめて、ヒストグラム生成回路542(1、2)で生成する構成例を示す図である。図13(a)は、加算部530から統計値な補正値を加算していない例を示す図である。すなわち、スキューの補正をしていないヒストグラムh12を示す。ヒストグラムh12は、横軸が時間に対応し、縦軸がカウンタ値の出現頻度を示す。ヒストグラムh12では、受光素子421(1)に対応する分布のピークと、受光素子421(2)に対応する分布のピークとが分離している。すなわち、ヒストグラムの所謂ピーク割れが生じている。
【0096】
図13(b)は、TDC回路522(1、2)の生成したカウンタ値に、統計的なスキューの補正値、例えば、0、-1、0、-1、-1、0、-1、0、-1、-1などをそれぞれのTDC回路522に加算したヒストグラムhs12bを示す。ヒストグラムhs12bは、横軸が時間に対応し、縦軸がカウンタ値の出現頻度を示す。ヒストグラムhs12bでは、受光素子421(1)に対応する分布のピークと、受光素子421(2)に対応する分布のピークとは、スキュー(1、2)の統計的な補正値に応じてシフトする。これにより、ピークの分離が解消され、1つのピークとなる。すなわち、ヒストグラムを引き締める、所謂ジッタ(jitter)低減効果を有する。1つのピークとなると、特に環境光などに対するノイズ耐性が向上し、より測定精度が向上する。
【0097】
以上が本実施形態に係る構成の説明であるが、以下に制御処理例を説明する。図14は、スキューの測定処理例を示すフローチャートである。まず、全体制御部30の制御にしたがい駆動回路44は、全ての画素選択スイッチ43をOFF(非接続状態)にし、マルチプレクサMUX1は、スキューの測定対象となる受光素子421の測定系をON(接続状態)にし、マルチプレクサMUX2は、スキューの測定対象となる受光素子421の測定系を、遅延補正量推定部58側にON(接続状態)にする(ステップS100)。なお、マルチプレクサMUX2は、測定対象となる受光素子421の測定系を除き、OFF(非接続状態)にする。
【0098】
次に、テスト信号生成部64は、全体制御部30の制御にしたがい、時間的な揺らぎを反映したテスト電気信号パルスP64bを測定対象となる受光素子421の測定系に供給する。このような測定を例えば、1000回繰り返し、時間的な揺らぎを反映したテスト電気信号パルスP64bの測定を行う(ステップS102)。
【0099】
次に、遅延補正量推定部58は、例えば1000回の繰り返し測定により、ヒストグラム生成回路542が生成したヒストグラムの重心に基づき、スキューを生成する(ステップS104)。遅延補正量推定部58は、このスキューを補正値として、補正処理部53の記憶部534の補正テーブルに記憶させる(ステップS106)。
【0100】
次に、全体制御部30は、全ての受光素子421の測定系に対するスキューの測定処理が終了したか否かを判定する(ステップS108)。全体制御部30は、終了していないと判定する場合(ステップS108のN)に、対称となる受光素子421の測定系を変更して、ステップS100からの処理をくり返す。一方で、全体制御部30は、終了したと判定する場合(ステップS108のY)に、駆動回路44を制御して、全ての画素選択スイッチ43をON(接続状態)にし、マルチプレクサMUX1を全てOFF(接続状態)にし、マルチプレクサMUX2を距離測定部65側に切り換え、処理を終了する。
【0101】
図15は、受光素子421の通常測定処理例を示すフローチャートである。ここでは、1つの受光素子421に対する測定例について説明する。なお、他の受光素子421も並行して測定が行われる。発光部10は、全体制御部30、及びタイミング制御部66の制御にしたがい、パルス光を発光する(ステップS200)。
【0102】
次に、物体OBJで反射し、受光素子421(2)で受光されたフォトンの電圧波形は、インバータ423により整形され、1フォトンの到来時刻を基準点とするパルス状の電気信号パルスが生成され、TDC回路522は、遅延回路425で所定の時間遅延したタイミングに応じたカウンタ値を測定値として出力する(ステップS202)。
【0103】
次に、補正値生成部532による統計値にしたがった補正値が、TDC回路522が出力するカウンタ信号に加算部530により加算される(ステップS204)。続けて、ヒストグラム生成回路542は、加算部530により加算処理されたカウンタ値に対応するビンの頻度を1、増加させる(ステップS206)。
【0104】
全体制御部30は、例えば所定回数である1000回の測定が終了したか否かを判定する(ステップS208)。全体制御部30は、終了していないと判定する場合(ステップS208のN)に、ステップS200からの処理をくり返す。一方で、全体制御部30は、終了したと判定する場合(ステップS208のY)に、距離演算部56に距離値を演算させ、処理を終了する。
【0105】
以上説明したように、本実施形態によれば、テスト信号生成部64が、テストパルス生成器642が生成するテスト電気パルスP64aに時間的な揺らぎを与えたテスト電気信号パルスP64bを生成することとした。これにより、ヒストグラム生成回路542が生成するヒストグラムのビンの時間間隔よりも短いスキューの測定が可能となる。
【0106】
(第1実施形態の変形例1)
第1実施形態の変形例1に係る距離測定システム1は、テスト信号生成部64aの揺らぎ付与回路644aを可変遅延回路で構成した点で、第1実施形態に係る距離測定システム1と相違する。以下では第1実施形態に係る距離測定システム1と相違する点を説明する。
【0107】
図16は、第1実施形態の変形例1に係るテスト信号生成部64aの構成例を示すブロック図である。図16に示すように、揺らぎ付与回路644aを可変遅延回路で構成した点で、第1実施形態に係る距離測定システム1と相違する。揺らぎ付与回路644aは、遅延時間を多段階に変更可能な遅延回路である。
【0108】
これにより、テストパルス生成器642は、例えばインバータ423の生成する電気パルスに対応するテスト電気信号パルスP64aを、タイミング制御部66の制御に従い生成する。揺らぎ付与回路644aは、テストパルス生成器642が生成する電気パルスP64aに時間的な揺らぎを与えたテスト電気信号パルスP64cを生成し、各遅延回路425に供給する。揺らぎ付与回路644aが付与する時間的な揺らぎは、任意の遅延パターンで付与可能である。本実施形態では、均等な時間的な揺らぎを与えるがこれに限定されない。例えば、正規分布などにしたがった時間的な揺らぎを与えることも可能である。
【0109】
このように揺らぎ付与回路644aは、例えテスト電気信号パルスP64aに対して時間的な揺らぎを与えることが可能となる。これにより、TDC回路522の出力値も数値的に揺らぎを生じ、ヒストグラム生成回路542で生成するヒストグラムにも幅が生じる。これにより、遅延補正量推定部58が生成する重心値(平均値)を、ヒストグラムのビン幅のオーダより小さくすることが可能となる。
【0110】
(第1実施形態の変形例2)
第1実施形態の変形例2に係る距離測定システム1は、テストパルス生成器642は、揺らぎ付与回路644bの入力に基づき、テストパルス生成器642が生成するテスト電気パルスP64cと、カウンタ624の起動タイミングとの間に時間的な揺らぎを与えたテスト電気信号パルスP64cを生成する点で、第1実施形態に係る距離測定システム1と相違する。以下では第1実施形態に係る距離測定システム1と相違する点を説明する。
【0111】
図17は、第1実施形態の変形例2に係るテスト信号生成部64bの構成例を示すブロック図である。図17に示すように、揺らぎ付与回路644bをフェーズロックループ(PLL:Phase Locked Loop)2回路で構成した点で、第1実施形態に係る距離測定システム1と相違する。PLL2回路644bは、発振器622の発振パルス信号の1倍を含む整数又は有理数倍の周波数のテスト電気信号パルスP64cを生成する。
【0112】
また、カウンタ624側には、PLL1回路626が構成される。PLL1回路626は、発振器622の発振パルス信号の1倍を含む整数又は有理数倍の周波数の電気パルスP64dを生成する。本実施形態では、例えばPLL1回路、及びPLL2回路は、発振器622の発振パルス信号と同周期のパルス信号を生成する。PLL1回路、及びPLL2回路それぞれのパルスの生成タイミングはランダムな時間的な揺らぎを有する。これにより、ストパルス生成器642が生成するテスト電気パルスP64cと、カウンタ624のカウントの起動タイミング(カウンタが0となるタイミング)4との間に時間的な揺らぎ生じる。すなわち、テスト電気パルスP64cと、カウンタ624のカウンタ値との間には、ランダムな時間的な揺らぎが生じる。
【0113】
このように揺らぎ付与回路644bは、例えテスト電気信号パルスP64aに対して時間的な揺らぎを与えることが可能となる。これにより、TDC回路522の出力値も数値的に揺らぎを生じ、ヒストグラム生成回路542で生成するヒストグラムにも幅が生じる。これにより、遅延補正量推定部58が生成する重心値を、ヒストグラムのビン幅のオーダより小さくすることが可能となる。
【0114】
(第1実施形態の変形例3)
第1実施形態の変形例3に係る距離測定システム1は、補正処理部53は、受光素子421の生成する電気パルスに対して、遅速に応じた統計的な時間揺らぎを与える点で、第1実施形態に係る距離測定システム1と相違する。以下では第1実施形態に係る距離測定システム1と相違する点を説明する。
【0115】
(統計処理による電気パルスの補正)
図18は、2つの受光素子421の出力をまとめて、ヒストグラム生成回路542(1、2)で生成する構成例を示す図である。図18は、遅延回路425の代わりに可変遅延回路425bで構成される点で、図13に示した構成例と相違する。
【0116】
図18は、加算部530から統計値な補正値を加算していない例を示す図である。補正処理部53は、可変遅延回路425bに、統計的なスキューの補正値、例えば、(0、1、0、1、1、0、1、0、1、1)×カウンタ値の間隔(ビンの時間間隔)などを順に入力し、受光素子421の生成する電気パルスをスキュー(1、2)に応じて統計的に遅延させる。
【0117】
ヒストグラムhs12cは、横軸が時間に対応し、縦軸がカウンタ値の出現頻度を示す。ヒストグラムhs12cでは、受光素子421(1)に対応する分布のピークと、受光素子421(2)に対応する分布のピークとは、スキュー(1、2)の統計的な補正値に応じてシフトする。これにより、ピークの分離が解消され、1つのピークとなる。すなわち、ヒストグラムを引き締める、所謂ジッタ(jitter)低減効果を有する。1つのピークとなると、特に環境光などに対するノイズ耐性が向上し、より測定精度が向上する。
【0118】
<<応用例>>
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0119】
図19は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図19に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0120】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。図19では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0121】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝送するための駆動力伝送機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0122】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0123】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0124】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0125】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0126】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0127】
ここで、図20は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910、7912、7914、7916、7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912、7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0128】
なお、図20には、それぞれの撮像部7910、7912、7914、7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b、cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912、7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910、7912、7914、7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0129】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920、7922、7924、7926、7928、7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920、7926、7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0130】
図19に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0131】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0132】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0133】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0134】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0135】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX(登録商標)、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0136】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、例えば、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0137】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0138】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0139】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0140】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0141】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0142】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を生成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0143】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図19の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0144】
なお、図19に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0145】
なお、図1を用いて説明した本実施形態に係る距離測定システム1の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを、いずれかの制御ユニット等に実装することができる。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供することもできる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0146】
以上説明した車両制御システム7000において、図1を用いて説明した本実施形態に係る距離測定システム1は、図19に示した応用例の統合制御ユニット7600に適用することができる。例えば、距離測定システム1は、撮像部7410に相当する。
【0147】
なお、本技術は以下のような構成を取ることができる。
【0148】
(1)
受光フォトンに応じて第1電気信号パルスを生成する複数の画素を有する受光部と、
タイミング信号に応じて計測線に第2電気信号パルスを供給可能である信号生成部と、
前記複数の画素の少なくとも1つの画素と前記計測線を介して接続され、所定の時間間隔で時系列に変化するカウンタ値を用いて、前記計測線を介して伝送される前記第1電気信号パルス又は前記第2電気信号パルスの到達タイミングに対応する前記カウンタ値と前記タイミング信号の発生タイミングに対応する前記カウンタ値との差を計測値とする時間計測部と、
前記カウンタ値に基づき、前記所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値を生成可能である測定処理部と、を備え、
前記信号生成部は、前記カウンタ値と前記第2電気信号パルスの発生タイミングとの間に時間的な揺らぎを与える、光検出装置。
(2)
前記計測値に基づいて、前記所定の時間間隔がヒストグラムを構成するビンの時間間隔に対応するヒストグラムを生成するヒストグラム生成回路と、を更に備え、
前記測定処理部は、前記ヒストグラムに基づき、前記所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値を生成する、(1)に記載の光検出装置。
(3)
前記第1電気信号パルスの測定中は、前記タイミング信号に応じて発光部が発光し、
前記計測線には、前記第2電気信号パルスは供給を停止可能に構成され、
前記測定処理部の測定値に光速に基づく数値を乗算した値が測定距離に対応する、(1)に記載の光検出装置。
(4)
スキューの測定期間中には、前記タイミング信号に応じて前記第2電気信号パルスが供給され、
前記計測線には、前記第1電気信号パルスは供給を停止可能に構成され、
前記測定処理部の測定値が前記スキューに対応する、(2)に記載の光検出装置。
(5)
前記スキューの測定期間中には、前記タイミング信号は1回以上生成され、
前記信号生成部は、前記複数回生成される前記タイミング信号それぞれに応じて、前記第2電気信号パルスを生成し、前記ヒストグラムの連続する複数のビンに前記計測値が頻度として加算されるように前記第2電気信号パルスに対して時間的な揺らぎを与える、(4)に記載の光検出装置。
(6)
前記信号生成部は、統計分布に従い、前記第2電気信号パルスに対して時間的な揺らぎを与える、(1)に記載の光検出装置。
(7)
前記信号生成部は、所定の範囲で発生する乱数に基づき、前記第2電気信号パルスに対して時間的な揺らぎを与える、(1)に記載の光検出装置。
(8)
第1発振クロック信号を生成する第1発振器と、
前記第1発振クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、前記第1発振クロック信号の周期の整数倍または有理数倍の周期の発生数を前記カウンタ値として生成するカウンタと、を更に備え、
前記信号生成部は、
前記第1発振クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、第3電気信号パルスを生成するパルス生成器と、
前記第1発振クロック信号の周期の整数倍にはならず互いに素である周期、または、お互いの周期の最大公約数が第1所定値より小さく、且つ最小公倍数が第2所定値より大きい第2発振クロック信号を生成する第2発振器と、
前記第3電気信号パルスと前記第2発振クロック信号とを入力とし、前記第2電気信号パルスを出力する揺らぎ付与回路であって、前記第2発振クロック信号の立ち上がり、または、立ち下がりのタイミングに基づき前記第3電気信号パルスを出力し、前記第2発振クロック信号の次の立ち上がりまたは、立ち下がりのタイミングに基づき前記第3電気信号パルスの出力を停止する揺らぎ付与回路と、
を有する、(1)に記載の光検出装置。
(9)
発振クロック信号を生成する第1発振器を、更に備え、
前記信号生成部は、
前記発振クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、第3電気信号パルスを生成するパルス生成器と、
前記第3電気信号パルスを入力として、前記第3電気信号パルスを可変的に遅延させて前記第2電気信号パルスとして出力する可変遅延回路と、
を有する、(1)に記載の光検出装置。
(10)
発振クロック信号を生成する第1発振器と、
前記発振クロック信号の周期の所定倍の周期の第1クロック信号を発生数する第1フェーズロックループ回路と、
前記第1クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、前記第1クロック信号の周期の整数又は有理数倍の周期の発生数を前記カウンタ値として生成するカウンタと、を、更に備え、
前記信号生成部は、
前記発振クロック信号の周期の整数又は有理数倍の周期の第2クロック信号を発生数する第2フェーズロックループ回路と、
前記第2クロック信号、及び前記タイミング信号に基づき、前記第2電気信号パルスを生成するパルス生成器と、
を有する、(1)に記載の光検出装置。
(11)
スキューの測定期間中には、前記タイミング信号は1回以上生成され、
前記信号生成部は、前記複数回生成される前記タイミング信号それぞれに応じて、前記第2電気信号パルスを生成し、
前記測定処理部は、前記カウンタ値の平均値に対応する前記測定値を生成する、(1)に記載の光検出装置。
(12)
前記測定処理部は、前記ヒストグラムのビンに対応する前記計測値の出現頻度と、当該前記計測値とを乗算した乗算値を、前記ヒストグラムのビン毎に演算して、加算した値を、前記出現頻度の合計値で除算した値に対応する前記測定値を生成する、(2)に記載の光検出装置。
(13)
前記計測値に対して、スキューにしたがった発生頻度の補正値を加算する補正処理部を更に備え、
前記測定処理部は、前記計測値に前記補正値を加算した後の数値に基づき、前記測定値を生成する、(1)に記載の光検出装置。
(14)
前記計測値に対して、スキューにしたがった発生頻度の補正値を加算する補正処理部を更に備え、
前記ヒストグラム生成回路は、前記計測値に前記補正値を加算した後の数値に基づき、前記ヒストグラムを生成する、(2)に記載の光検出装置。
(15)
前記時間計測部、及び前記測定処理部は、前記1つ又は複数の画素毎に構成され、前記測定処理部それぞれの測定値には、当該測定値に対応するスキューにしたがった発生頻度の補正値がそれぞれ加算され、
前記ヒストグラム生成回路は、前記補正値がそれぞれ加算された複数の測定値を用いて、前記ヒストグラムを生成する、(2)に記載の光検出装置。
(16)
前記第1電気信号パルスを可変的に遅延させる可変遅延回路を更に備え、
前記可変遅延回路に対して、スキューにしたがった発生頻度の時間遅れ信号を出力する補正処理部を更に備える、(1)に記載の光検出装置。
(17)
前記複数の画素は、隣接する任意の数の画素配列により構成される、(15)に記載の光検出装置。
(18)
前記信号生成部と、前記計測線を選択的に接続するマルチプレクサを更に備える、(1)に記載の光検出装置。
(19)
複数の画素を有する光検出装置における信号線間のスキューを測定する測定方法であって、
タイミング信号に応じて計測線に第2電気信号パルスを供給する信号生成工程と、
前記タイミング信号に応じて所定の時間間隔で時系列に発生するカウンタ値を用いて、前記複数の画素の少なくとも1つの画素に接続される計測線を介して伝送される第2電気信号パルスの到達タイミングに対応する前記カウンタ値と前記タイミング信号の発行タイミングとの差を計測値として計測する時間計測工程と、
前記カウンタ値に基づき、前記所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値をスキューとして生成する測定処理工程と、を備え、
前記信号生成工程は、前記カウンタ値の発生タイミングと前記第2電気信号パルスの発生タイミングとの間に時間的な揺らぎを与える、測定方法。
(20)
光検出装置と、
前記第1電気信号パルスの測定中に、前記タイミング信号に応じて発光する発光部と、
を備え、
前記光検出装置は、
受光フォトンに応じて第1電気信号パルスを生成する複数の画素を有する受光部と、
タイミング信号に応じて計測線に第2電気信号パルスを供給可能である信号生成部と、
前記複数の画素の少なくとも1つの画素と前記計測線を介して接続され、所定の時間間隔で時系列に変化するカウンタ値を用いて、前記計測線を介して伝送される前記第1電気信号パルス又は前記第2電気信号パルスの到達タイミングに対応する前記カウンタ値と前記タイミング信号の発生タイミングに対応する前記カウンタ値との差を計測値とする時間計測部と、
前記カウンタ値に基づき、前記所定の時間間隔よりも、最小値のオーダが小さい測定値を生成可能である測定処理部と、を有し、
前記信号生成部は、前記カウンタ値と前記第2電気信号パルスの発生タイミングとの間に時間的な揺らぎを与える、
距離測定システム。
【0149】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0150】
1:距離測定システム、5:光検出装置、40:受光部、42P:画素、52:TDC部(時間計測部)、53:補正処理部、55:測定処理部、64:テスト信号生成部(信号生成部)、425b:可変遅延回路、542:ヒストグラム生成回路、622:発振器(第1発振器)、624:カウンタ、626:PLL1回路、642:テストパルス生成器(パルス生成器)、644:揺らぎ付与回路、644a:揺らぎ付与回路(可変遅延回路)、644b:揺らぎ付与回路(PLL2回路)、646:発振器(第2発振器)、SL:計測線、MUX1:マルチプレクサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2023-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
【特許文献1】特開2020-148682号公報