(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126263
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】沸騰冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/427 20060101AFI20240912BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01L23/46 A
F28D15/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034537
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝典
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136AA10
5F136BA03
5F136CC35
5F136CC37
5F136CC40
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】凍結破損を防止することができる沸騰冷却装置を提供する。
【解決手段】沸騰冷却装置は、冷媒を収容し、発熱体からの熱を受ける受熱部と、前記受熱部からの熱を放熱する放熱部と、受熱部冷媒が気化されることにより生成された気相冷媒を放熱部に輸送し、放熱部で気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を受熱部に輸送する熱輸送管部と、を備え、受熱部は、受熱本体を有し、受熱本体には、鉛直線に沿って延び、互いに離間する複数の貫通孔と、前記複数の貫通孔よりも鉛直下方に配置され、複数の貫通孔に連通する第1空間と、が設けられており、複数の貫通孔および第1空間には、冷媒が収容されており、第1空間は、複数の貫通孔のそれぞれよりも狭い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を収容し、発熱体からの熱を受ける受熱部と、
前記受熱部からの熱を放熱する放熱部と、
前記受熱部で前記冷媒が気化されることにより生成された気相冷媒を前記放熱部に輸送し、前記放熱部で前記気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を前記受熱部に輸送する熱輸送管部と、を備え、
前記受熱部は、受熱本体を有し、
前記受熱本体には、鉛直線に沿って延び、互いに離間する複数の貫通孔と、前記複数の貫通孔よりも鉛直下方に配置され、前記複数の貫通孔に連通する第1空間と、が設けられており、
前記複数の貫通孔および前記第1空間には、前記冷媒が収容されており、
前記第1空間は、前記複数の貫通孔のそれぞれよりも狭い、
ことを特徴とする沸騰冷却装置。
【請求項2】
前記第1空間の内壁面の間の距離の最小値は、前記複数の貫通孔のそれぞれの内壁面の間の距離の最小値よりも小さい、
請求項1に記載の沸騰冷却装置。
【請求項3】
前記第1空間の前記鉛直線に沿った第1長さは、前記複数の貫通孔のそれぞれの前記鉛直線に直交する方向の第2長さよりも短い、
請求項1に記載の沸騰冷却装置。
【請求項4】
前記第2長さは、前記第1空間に向かって縮小しており、
前記第1長さは、前記第2長さの最小値よりも小さい、
請求項3に記載の沸騰冷却装置。
【請求項5】
前記受熱本体には、前記複数の貫通孔と前記熱輸送管部との間に配置され、前記複数の貫通孔に連通する第2空間が、さらに設けられ、
前記第2空間の前記鉛直線に沿った第3長さは、前記第1空間の前記鉛直線に沿った第1長さよも長い、
請求項1に記載の沸騰冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒の沸騰に伴う潜熱による熱輸送を利用して発熱体を冷却する沸騰冷却装置が知られている。当該沸騰冷却装置として、特許文献1に冷却装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の冷却装置は、受熱器と熱交換器と第1の流路と第2の流路とを備える。受熱器は、冷媒を収容し、発熱体からの熱を奪う。熱交換器は、冷媒の熱を放熱する。第1の流路は、受熱器から熱交換器に冷媒を送る。第2の流路は、熱交換器から受熱器に冷媒を送る。
【0004】
寒冷環境での輸送および保管時において、冷媒の凍結に伴って冷媒が体積膨張し、冷却装置が凍結破損するおそれがある。特許文献1に記載の冷却装置では、凍結破損の防止のために、純水にエタノールを0.1質量%から5質量%で加えた混合作動液を冷媒として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、当該文献に記載のように、冷媒に不純物を添加して凍結破損を防止する方法では、凍結破損を充分に防止することが難しい。また、冷媒に不純物を添加すると、冷却装置の冷却性能が低下する場合や、受熱器の構成材料および冷媒の種類によっては受熱器が腐食する場合がある。このため、沸騰冷却装置の凍結破損を防止する他の方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本開示の好適な態様に係る沸騰冷却装置は、冷媒を収容し、発熱体からの熱を受ける受熱部と、前記受熱部からの熱を放熱する放熱部と、前記受熱部で前記冷媒が気化されることにより生成された気相冷媒を前記放熱部に輸送し、前記放熱部で前記気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を前記受熱部に輸送する熱輸送管部と、を備え、前記受熱部は、受熱本体を有し、前記受熱本体には、鉛直線に沿って延び、互いに離間する複数の貫通孔と、前記複数の貫通孔よりも鉛直下方に配置され、前記複数の貫通孔に連通する第1空間と、が設けられており、前記複数の貫通孔および前記第1空間には、前記冷媒が収容されており、前記第1空間は、前記複数の貫通孔のそれぞれよりも狭い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る沸騰冷却装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】
図2に示す受熱本体における冷媒の凍結を説明するための図である。
【
図5】比較例の受熱本体における冷媒の凍結を説明するための図である。
【
図6】第2実施形態に係る沸騰冷却装置の断面図である
【
図7】
図6に示す受熱本体における冷媒の凍結を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0010】
1.第1実施形態
1-1.沸騰冷却装置1の概要
図1は、第1実施形態に係る沸騰冷却装置1の概略構成を示す斜視図である。以下の説明は、便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向とは反対の方向がX2方向である。Y軸に沿う一方向がY1方向であり、Y1方向とは反対の方向がY2方向である。Z軸に沿う一方向がZ1方向であり、Z1方向とは反対の方向がZ2方向である。
【0011】
典型的には、Z軸が鉛直線であり、Z1方向が鉛直上方に相当し、Z2方向が鉛直下方に相当する。なお、実空間でのZ軸の向きは、沸騰冷却装置1の設置姿勢に応じて決められる。Z軸は、鉛直線に対して45°以下の範囲内で傾斜してもよい。また、以下では、単に「上方」とは、鉛直線に沿う方向での位置を示しており、鉛直上方および鉛直斜め上方の双方を概念として含む。同様に、単に「下方」とは、鉛直線に沿う方向での位置を示しており、鉛直下方および鉛直斜め下方の双方を概念として含む。
【0012】
図1に示すように、沸騰冷却装置1は、2個の発熱体9を冷却する。各発熱体9は、例えば、ダイオードまたはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体素子である。パワー半導体素子は、例えば、鉄道車両、自動車または家庭用電気機械等に搭載されるインバーターまたは整流器等のパワーエレクトロニクス製品に搭載される。
【0013】
図1に示す例では、各発熱体9がXZ平面に沿う扁平形状をなす。2個の発熱体9は、沸騰冷却装置1を挟むように、Y軸に沿う方向に並んで配置される。なお、
図1では、発熱体9の外形が概略的に示される。発熱体9の形状は、
図1に示す例に限定されず、任意である。また、2個の発熱体9のうちの一方が省略されてもよい。また、発熱体9は、パワー半導体素子に限定されず、冷却を必要とするのであれば、駆動または通電等により発熱する他の電気部品または電子部品でもよい。
【0014】
沸騰冷却装置1は、気化した冷媒REと液化した冷媒REとの密度差を利用したループ型サーモサイフォンの冷却器である。沸騰冷却装置1は、受熱部10と放熱部20と熱輸送管部30とを有する。熱輸送管部30は、第1管部40と第2管部50で構成される。
【0015】
受熱部10では、冷媒REが発熱体9からの熱により加熱され、冷媒REが気化されることにより、気相冷媒が生成される。当該気相冷媒は、密度の減少により第1管部40を通じて上昇し、放熱部20に輸送される。放熱部20では、当該気相冷媒が放熱により冷却され、当該気相冷媒が凝縮されることにより、液相冷媒が生成される。当該液相冷媒は、密度の増大により第2管部50を通じて下降することにより受熱部10に輸送される。このように、受熱部10からの冷媒REが、第1管部40、放熱部20、第2管部50および受熱部10の順に循環することで、発熱体9は冷却される。
【0016】
かかる沸騰冷却装置1では、発熱体9の非駆動時における凍結による受熱部10の破損を抑制するよう、受熱部10の構成が工夫されている。特に、発熱体9の非駆動時に沸騰冷却装置1が冬季または寒冷環境において保管等される場合であっても、沸騰冷却装置1によれば受熱部10の凍結による破損を防止することができる。
【0017】
1-2.沸騰冷却装置1の各部
図2は、
図1に示す沸騰冷却装置1の断面図である。
図3は、
図2中のA-A線断面図である。なお、
図2では、沸騰冷却装置1をX軸およびZ軸を含む平面で切断した断面が示される。また、
図3では、受熱部10をX軸およびY軸を含む平面で切断した断面が示される。
【0018】
1-2a.受熱部10
図2に示す受熱部10は、液状の冷媒REを収容し、発熱体9からの熱を受ける。受熱部10では、発熱体9の熱によって冷媒REが気化されることにより気相冷媒が生成される。
【0019】
冷媒REとしては、特に限定されないが、例えば、水等の水系冷媒、メタノール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒、エチレングリコール等のグリコール系冷媒、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HFC134a等のフロン系冷媒、およびブタン等の炭化水素系冷媒等が挙げられる。なお、冷媒REには、必要に応じて、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤または炭化水素系界面活性剤等の界面活性剤等が添加されてもよい。また、冷媒REは、前述の冷媒の2種以上を組み合わせてもよい。
【0020】
受熱部10は、受熱本体11を有する。受熱本体11は、収容室S10を有する。収容室S10は、液状の冷媒REを収容する空間である。収容室S10は、第1空間S11と複数の貫通孔S1と第2空間S12と有する。複数の貫通孔S1は、第1空間S11と第2空間S12との間に設けられ、これらを接続する。
【0021】
図3に示すように、第1空間S11は、X-Y平面に広がる平板状の空間である。図示の例では、第1空間S11の平面形状、すなわち鉛直線に沿った方向から見たときの形状は、四角形であるが、これ以外の形状でもよい。
【0022】
図2に示すように、第1空間S11は、第1長さL11を有する。第1長さL11は、第1空間S11の鉛直線に沿った方向の長さである。第1長さL11は、第1空間S11のX軸に沿った方向の長さ、およびY軸に沿った方向の長さのそれぞれよりも短い。また、図示の例では、第1長さL11は、一定である。
【0023】
図2に示すように、複数の貫通孔S1は、第1空間S11の鉛直上方に配置される。図示の例では、複数の貫通孔S1として5つの貫通孔S1が設けられる。各貫通孔S1は、鉛直線に沿って直線状に延在する。複数の貫通孔S1は、互いに離間し、等間隔でX軸に沿った方向に並ぶ。複数の貫通孔S1の鉛直線に沿った長さは、互いに等しい。
【0024】
図3に示すように、各貫通孔S1の横断面形状は、円形である。各貫通孔S1の横断面積は、第1空間S11の平面積よりも小さい。各貫通孔S1は、平面視で第1空間S11に重なる。
【0025】
図2に示すように、各貫通孔S1は、第2長さL1を有する。第2長さL1とは、各貫通孔S1の幅であり、各貫通孔S1の鉛直線に直交する方向での長さである。本実施形態では、各貫通孔S1の横断面形状は円形であるため、第2長さL1は、各貫通孔S1の直径である。また、第2長さL1は、前述の第1長さL11よりも長い。また、第2長さL1は、一定である。
【0026】
なお、貫通孔S1の数は、5に限定されず、2、3、4および6以上でもよい。また、複数の貫通孔S1は、等間隔に並んでおらず、不規則に並んでいてもよい。ただし、複数の貫通孔S1が等間隔に並んでいることで、側面113における冷却性能の均一化を図り易い。冷却性の均一化の観点から、複数の貫通孔S1は、例えば、千鳥状または行列状等に規則的に配置されてもよい。また、各貫通孔S1の横断面の形状は、四角形等の多角形、楕円形等でもよい。各貫通孔S1は、屈曲または湾曲する部分を有してもよい。また、複数の貫通孔S1の鉛直線に沿った長さは、互いに等しいが、互いに異なっていてもよい。複数の貫通孔S1の第2長さL1は、互いに等しいが、互いに異なっていてもよい。
【0027】
また、各貫通孔S1の内壁面W1は、伝熱面として機能する。内壁面W1のそれぞれは、冷媒REと接触する。内壁面W1の各近傍の冷媒REが沸点以上の温度に過熱されることにより、内壁面W1のそれぞれに複数の気泡が発生する。発生した気泡は、浮力により内壁面W1から離脱した後、冷媒REの液面RE0よりも上方で気相冷媒となる。
【0028】
なお、各貫通孔S1の内壁面W1は平坦であってもよいし、粗面であってもよい。内壁面W1が粗面であることで、内壁面W1の表面積を増大させることができる。このため、内壁面W1で生じる冷媒REの核沸騰による気泡量を増やすことができる。よって、冷却性能を高めることができる。
【0029】
図2に示すように、第2空間S12は、複数の貫通孔S1の鉛直上方に配置され、貫通孔S1と熱輸送管部30との間に配置される。平面図は省略するが、第2空間S12は、X-Y平面に広がる平板状の空間である。第2空間S12の平面形状、すなわち鉛直線に沿った方向から見たときの形状は、四角形であるが、これ以外の形状でもよい。第2空間S12の平面形状は、第1空間S11の平面形状と同じである。第2空間S12の平面積は、第1空間S11の平面積と等しい。第2空間S12は、平面視で第1空間S11に重なる。なお、第2空間S12の平面形状は、第1空間S11と平面形状と異なっていてもよく、第2空間S12は、第1空間S11と重なっていない部分を有してもよい。また、第2空間S12は、平面視で複数の貫通孔S1と重なる。
【0030】
第2空間S12は、第3長さL12を含む。第3長さL12は、第2空間S12の鉛直線に沿った方向の長さである。第3長さL12は、第1長さS2、および第2長さL1のそれぞれよりも長い。また、第2空間S12の体積は、第1空間S11の体積、および各貫通孔S1の体積よりも大きい。
【0031】
かかる収容室S10において、冷媒REは、主に、第1空間S11および複数の貫通孔S1に設けられる。したがって、第1空間S11および複数の貫通孔S1は、冷媒REの液面RE0よりも下方に配置される。
【0032】
受熱本体11の外表面は、上面111と下面112と側面113とを含む。上面111および下面112のそれぞれは、鉛直線に直交する平面であるX-Y平面に広がる面である。側面113は、上面111と下面112とを接続する。側面113には、2個の発熱体9が熱的に接続される。「熱的に接続」とは、次の条件a、bまたはcのいずれかを満たすことをいう。条件a:2つの部材が物理的に直接に接する。条件b:2つの部材が50μm以下の間隙を介して配置される。条件c:2つの部材が10W・m-1・K-1以上の熱伝導率の他の部材を介して物理的に接続される。なお、各条件における2つの部材間には、伝熱グリースおよび接着剤等が存在してもよい。この場合、接着剤は、熱伝導性を高める観点から、熱伝導性のフィラー等を含むことが好ましい。
【0033】
また、受熱本体11は、天板110を有する。天板110は、上面111を含む。天板110には、第1管部40および第2管部50との接続のための2つの孔が設けられる。
【0034】
受熱本体11は、熱伝導性に優れる材料で構成される。受熱部10の具体的な材料としては、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料が挙げられる。なお、受熱本体11は、均一材料で構成されていてもよいし、異なる材料の組み合わせで構成されてもよい。ただし、受熱本体11は、製造の容易性の観点から、好ましくは均一材料で構成される。
【0035】
1-2b.放熱部20
放熱部20は、凝縮室S20を有する構造体であり、受熱部10からの熱を放熱する。凝縮室S20は、冷媒REを気化した状態から凝縮液化させる空間である。放熱部20では、受熱部10で生成された気相冷媒が凝縮されることにより液相冷媒が生成される。放熱部20は、凝縮室S20の気相冷媒を外部の流体との熱交換により放熱することにより凝縮液化させる。当該外部の流体は、凝縮室S20の外部を流動する流体であればよく、特に限定されず、液体でも気体でもよいが、典型的には、例えば空気である。
【0036】
図2に示す例では、放熱部20は、容器21と複数の放熱フィン22とを有する。容器21は、凝縮室S20を内部空間として有する。容器21は、底板211と天板212と側壁213とを有する。これらで囲まれた空間が凝縮室S20である。底板211および天板212のそれぞれは、Z軸に交差する方向に広がる平板である。底板211は、天板212に対してZ2方向に設けられる。底板211には、第1管部40および第2管部50との接続のための2つ孔が設けられる。底板211および天板212は、互いに平行となるように配置されており、これらの間には、側壁213が配置される。側壁213は、底板211および天板212の外周同士を全周にわたって連結する。
【0037】
本実施形態では、側壁213が円筒状であり、凝縮室S20が円柱状である。なお、凝縮室S20の形状は、円柱状に限定されず、例えば、角柱状でもよい。また、側壁213の内周面および外周面の形状は、互いに異なってもよい。また、容器21は、熱伝導性に優れる材料で構成される。容器21の具体的な材料としては、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料が挙げられる。
【0038】
各放熱フィン22は、容器21に熱的に接続される。各放熱フィン22は、平板状の部材である。複数の放熱フィン22は、互いに厚さ方向に間隔を隔てて配置される。各放熱フィン22は、熱伝導性に優れる材料で構成される。放熱フィン22の具体的な材料としては、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料が挙げられる。各放熱フィン22には、容器21を挿入するための孔が設けられる。放熱フィン22は、例えば、容器21に対して拡管、圧入、接着剤、ネジ止め、ロウ付けまたは溶接等により固定される。なお、放熱フィン22の形状は、
図2に示す例に限定されず、任意である。また、放熱フィン22は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。ただし、放熱部20が複数の放熱フィン22を有することにより、気相冷媒を効率的に凝縮液化させることができる。
【0039】
1-2c.第1管部40
第1管部40は、受熱部10で冷媒REが気化されることにより生成された気相冷媒を放熱部20に輸送する。第1管部40は、蒸気管41で構成される。蒸気管41は、Z軸に沿って直線状に延在する。蒸気管41は、第1流路S40を内部空間として有する管である。
【0040】
蒸気管41は、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料で構成される。また、蒸気管41は、受熱本体11および容器21のそれぞれに接続される。具体的には、蒸気管41は、天板110および底板211に対してロウ付け等により固定される。なお、蒸気管41の構成材料は、金属材料に限定されず、例えば、セラミックス材料または樹脂材料等でもよい。
【0041】
蒸気管41は、開口41aと開口41bとを含む。開口41aは、受熱本体11に向けて開口する。開口41bは、容器21に向けて開口する。開口41aは、第1管部40の内周面41cのZ2方向での端縁で囲まれる空間である。開口41bは、第1管部40の内周面41cのZ1方向での端縁で囲まれる空間である。開口41aは、天板110のZ2方向を向く面と同一平面上に位置する。また、第1管部40の一部は、底板211よりもZ1方向に突出する。したがって、開口41bは、底板211よりもZ1方向に位置する。なお、第1流路S40は、蒸気管41と天板110の一部とにより形成されてもよい。この場合、開口41aは、天板110に設けられる孔により形成される。
【0042】
第1流路S40は、第1管部40の内周面41cで囲まれる空間である。第1流路S40は、開口41aを介して収容室S10に連通するとともに、開口41bを介して凝縮室S20に連通する。
図2に示す例では、第1流路S40の幅は、一定である。また、第1流路S40の断面積は、一定である。第1流路S40の横断面の形状は、円形であるが、四角形等の多角形、楕円形等でもよい。また、第1流路S40は、屈曲または湾曲する部分を有してもよい。
【0043】
1-2d.第2管部50
第2管部50は、放熱部20で気相冷媒が凝縮されることにより生成された液相冷媒を受熱部10に輸送する。第2管部50は、液管51で構成される。液管51は、Z軸に沿って直線状に延在する。液管51は、第2流路S50を内部空間として有する管である。
【0044】
液管51は、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料で構成される。また液管51は、受熱本体11および放熱部20のそれぞれに接続される。液管51は、天板110および底板211に対してロウ付け等により固定される。なお、液管51の構成材料は、金属材料に限定されず、例えば、セラミックス材料または樹脂材料等でもよい。また、液管51の構成材料は、蒸気管41の構成材料と同一であってもよいし異なってもよい。
【0045】
第2管部50は、開口51aと開口51bとを含む。開口51aは、受熱部10に向けて開口する。開口51bは、放熱部20に向けて開口する。開口51aは、第2管部50の内周面51cのZ2方向での端縁で囲まれる空間である。開口51bは、第2管部50の内周面51cのZ1方向での端縁で囲まれる空間である。また、第2管部50の一部は、受熱部10の天板110よりもZ2方向に突出する。したがって、開口51aは、天板110よりもZ2方向に位置し、収容室S10に配置される。なお、開口51aは、収容室S10の第2空間S12に位置するが、いずれかの貫通孔S1に位置してもよい。また、開口51bは、底板211のZ1方向を向く面と同一平面上に位置する。なお、第2流路S50は、液管51と底板211の一部とにより形成されてもよい。この場合、開口51bは、底板211に設けられる孔により形成される。
【0046】
第2流路S50は、第2管部50の内周面51cで囲まれる空間である。第2流路S50は、開口51aを介して収容室S10に連通するとともに、開口51bを介して凝縮室S20に連通する。
図2に示す例では、第2流路S50の幅は、一定である。また、第2流路S50の断面積は、一定である。第2流路S50の横断面の形状は、円形であるが、四角形等の多角形、楕円形等でもよい。また、第2流路S50は、屈曲または湾曲する部分を有してもよい。
【0047】
また、前述の第1流路S40の断面積は、第2流路S50の断面積よりも大きい。このため、第1流路S40の断面積が第2流路S50の断面積以下である構成に比べて、第1流路S40での気相冷媒の輸送を円滑に行うことができる。なお、第2流路S50の断面積は、第1流路S40の断面積に等しくてもよい。
【0048】
1-3.受熱部10の凍結防止の作用
前述のように、受熱部10は、受熱本体11の凍結破損を防止するよう構成されている。発熱体9の駆動時では、受熱本体11の内部の冷媒REは、発熱体9からの熱を受け取って液体となる。一方、発熱体9の駆動していない非駆動時では、冬季または寒冷環境において、受熱本体11の内部の冷媒REが凍結するおそれがある。かかる冷媒REの凍結による受熱本体11の破損を抑制するよう、受熱本体11は構成される。
【0049】
図4は、
図2に示す受熱本体11における冷媒REの凍結を説明するための図である。前述のように、受熱本体11は、第1空間S11および複数の貫通孔S1を有する。そして、第1空間S11は、各貫通孔S1よりも狭い。冷媒REは、受熱本体11の内表面の近くから凍結していく。
【0050】
冷媒REは、主に第1空間S11および複数の貫通孔S1に収容される。このため、第1空間S11および各貫通孔S1に冷媒REの凍結した部分である凍結部F0が生じる。そして、狭い空間ほど優先的に凍結により閉塞する。第1空間S11は各貫通孔S1よりも狭いため、第1空間S11は、各貫通孔S1よりも先に閉塞する。つまり、受熱本体11に各貫通孔S1よりも狭い第1空間S11を設けることで、第1空間S11を各貫通孔S1よりも優先的に凍結閉塞させることができる。このため、第1空間S11における冷媒REの凍結による体積膨張を各貫通孔S1、さらには第2空間S12へと逃がすことができる。この結果、受熱本体11が破損するおそれを抑制することができる。よって、冬季または寒冷環境における沸騰冷却装置1の凍結破損を抑制することができる。
【0051】
図5は、比較例の受熱本体11xにおける冷媒REの凍結を説明するための図である。
図5に示す比較例の受熱本体11xが有する第1空間S11xは、各貫通孔S1よりも広い。このため、各貫通孔S1は、第1空間S11xよりも先に凍結により閉塞する。第1空間S11xでは、冷媒REの残留液RE1の凍結時の体積膨張により、内圧が上昇してしまう。この結果、受熱本体11xの第1空間S11近傍に破損が生じてしまう。一方、
図4に示す本実施形態の受熱本体11では、第1空間S11は、各貫通孔S1よりも狭い。このため、前述のように凍結破損を抑制することができる。
【0052】
また、例えば、受熱本体11よりも伝熱性能に優れる他の部材を受熱本体11に部分的に接合することにより、当該他の部材の近傍から冷媒REを優先的に凍結させる方法が考えられる。本実施形態によれば、そのような他の部材を別途設けず、かつ受熱本体11が均一材料であっても、受熱本体11の凍結破損を抑制することができる。すなわち、複数の貫通孔S1よりも狭い第1空間S11を設けるという簡単な構成で、受熱本体11の凍結破損を抑制することができる。なお、受熱本体11よりも伝熱性能に優れる他の部材を受熱本体11の下面112に接合してもよい。
【0053】
また、本実施形態の受熱本体11によれば、凍結防止のために冷媒REの種類を限定する必要がない。よって、冷媒REの種類を受熱本体11の材料に応じて選択することができるので、受熱本体11に腐食が生じるおそれを抑制することができる。さらに、冷媒REの種類が限定されないため、冷却性能に優れる冷媒REを用いることができる。よって、凍結破損を抑制し、かつ冷却性能に優れる沸騰冷却装置1を提供することができる。
【0054】
また、第1空間S11が有する内壁面W11の間の距離の最小値は、各貫通孔S1が有する内壁面W1の間の距離の最小値よりも小さい。
図3に示す例では、内壁面W11の間の距離の最小値は、第1長さL11に相当する。また、内壁面W1の間の距離の最小値は、第2長さL1に相当する。したがって、
図3に示す例では、第1空間S11の第1長さL11は、各貫通孔S1の第2長さL1よりも小さい。
【0055】
第1長さL11が第2長さL1よりも小さいことで、前述のように、寒冷環境で冷媒REが凍結する場合、各貫通孔S1よりも先に第1空間S11を閉塞させることができる。よって、冬季または寒冷環境において受熱部10が破損するおそれを抑制することができる。なお、
図3に示す例では、第1長さL11は一定であるが、第1長さL11が第2長さL1よりも短ければ、第1長さL11は一定でなくてもよい。
【0056】
また、
図2に示すように、複数の貫通孔S1は、第1空間S11と第2空間S12との間に配置される。別の見方をすると、第1空間S11は、複数の貫通孔S1よりも鉛直下方に配置される。このため、第1空間S11の冷媒REの凍結による体積膨張を、各貫通孔S1およびこれよりも鉛直上方へと逃すことができる。よって、第1空間S11の冷媒REの凍結による体積膨張により、第1空間S11の内圧が上昇して受熱本体11が破損するおそれを特に効果的に抑制することができる。
【0057】
また、
図2に示すように、受熱本体11には、第1空間S11および複数の貫通孔S1に加え、第2空間S12が設けられる。第2空間S12は、複数の貫通孔S1と第1管部40との間に配置され、複数の貫通孔S1に連通する。そして、第2空間S12の第3長さL12は、第1空間S11の第1長さL11よりも長い。かかる第2空間S12が設けられることで、第1空間S11の冷媒REの凍結による体積膨張を、各貫通孔S1だけでなく、各貫通孔S1よりも鉛直上方の第2空間S12へと逃すことができる。
【0058】
また、冷媒REは、非凍結時において、主に第1空間S11および複数の貫通孔S1に収容される。冷媒REが第1空間S11および複数の貫通孔S1において凍結し始めると、体積膨張により、未凍結の冷媒REが第2空間S12へと移動する。当該未凍結の冷媒REで第2空間S12が埋め尽くされると、寒冷環境下の温度によっては、当該未凍結の冷媒REが凍結して第2空間S12が閉塞するおそれがある。さらには、第1管部40および第2管部50に未凍結の冷媒REが移動して凍結すると、第1管部40の一部および第2管部50の一部が閉塞するおそれがある。この結果、第1管部40および第2管部50に破損が生じるおそれがある。
【0059】
第2空間S12等が閉塞するおそれを回避するため、第2空間S12の体積は、冷媒REの凍結による体積膨張分を考慮した体積であることが好ましい。つまり、冷媒REが全て凍結した場合の体積は、収容室S10の体積以下であることが好ましい。また、冷媒REを封入した量、換言すると非凍結時の冷媒REの体積をVl、密度をρl、凍結時の体積をVs、凍結時の密度をρsとすると、体積膨張ΔV(=Vs-Vl)はΔV=Vl×(ρl/ρs-1)となる。なお、冷媒REが水の場合、凍結時とは0°のときである。したがって、冷媒REの凍結により少なくとも第2空間S12が閉塞しないためには、第2空間S12の平面積をAとした場合に非凍結時の液面と受熱本体11の上面111との距離δをΔ>ΔV/A=Vl×(ρl/ρs-1)/Aとする必要がある。
【0060】
以上の沸騰冷却装置1によれば、発熱体9の非駆動時における凍結破損を簡単な構成で防止することができる。
【0061】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が前述の実施形態と同様である要素については、前述の実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0062】
図6は、第2実施形態に係る沸騰冷却装置1Aの断面図である。
図7は、
図6に示す受熱本体11Aにおける冷媒REの凍結を説明するための図である。
【0063】
沸騰冷却装置1Aは、受熱部10に代えて受熱部10Aを有すること以外は、前述の第1実施形態の沸騰冷却装置1と同様である。受熱部10Aは、複数の貫通孔S1の代わりに複数の貫通孔S1Aを有すること以外は、前述の第1実施形態の受熱部10と同様である。
【0064】
図6に示す受熱部10Aが有する受熱本体11Aは、複数の貫通孔S1Aを有する。なお、複数の貫通孔S1Aについて、第1実施形態の複数の貫通孔S1と同様の内容は適宜省略する。
【0065】
図6に示す例では、複数の貫通孔S1Aは、第2空間S12から第1空間S11に向かって徐々に狭くなる。したがって、各貫通孔S1の断面積は、一定ではなく、第2空間S12から第1空間S11に向かって徐々に小さくなる。別の見方をすれば、各貫通孔S1の第2長さL1は、一定ではなく、第2空間S12から第1空間S11に向かって縮小している。そして、第1長さL11は、第2長さL1の最小値L0よりも小さい。このため、本実施形態においても第1実施形態と同様に、第1空間S11を各貫通孔S1Aよりも優先的に凍結閉塞させることができる。よって、第1空間S11における冷媒REの凍結による体積膨張を各貫通孔S1Aおよび第2空間S12へと逃がすことができる。この結果、受熱本体11Aが破損するおそれを抑制することができる。よって、冬季または寒冷環境における沸騰冷却装置1Aの凍結破損を簡単な構成で抑制することができる。
【0066】
また、前述のように、各貫通孔S1の第2長さL1は、第2空間S12から第1空間S11に向かって縮小している。このため、
図7に示すように、各貫通孔S1において、冷媒REは、第1空間S11から第2空間S12に向かって凍結閉塞していく。このため、第1実施形態に比べ、冷媒REの凍結による体積膨張を鉛直上方へと効率良く逃すことができる。よって、第1空間S11の冷媒REの凍結による体積膨張により、第1空間S11および各貫通孔S1Aの内圧が上昇して受熱本体11が破損するおそれを特に効果的に抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、複数の貫通孔S1の最小値L0は、互いに等しいが、互いに異なっていてもよい。
【0068】
3.応用例
図8は、沸騰冷却装置1の応用例を示す斜視図である。
図8では、複数の沸騰冷却装置1により複数の発熱体9を冷却する場合の例が示される。
【0069】
図8に示す例では、複数の沸騰冷却装置1と複数の発熱体9とがY軸に沿う方向に交互に配置される。ここで、複数の沸騰冷却装置1および複数の発熱体9は、図示しない固定具により、互いに隣り合う沸騰冷却装置1と発熱体9とが密着するよう固定される。以上の構成により、複数の沸騰冷却装置1により複数の発熱体9を冷却することができる。
【0070】
なお、互いに隣り合う2つの沸騰冷却装置1の放熱フィン22が一体で構成されてもよい。また、沸騰冷却装置1の数は、冷却すべき発熱体9の数に応じて決められ、
図8に示す例に限定されず、5個以下または7個以上でもよい。また、
図8に示す例は、沸騰冷却装置1を用いるが、複数の沸騰冷却装置1のうちの少なくとも1つに代えて、前述の沸騰冷却装置1Aを用いてもよいし、沸騰冷却装置1および1Aを適宜に組み合わせてもよい。
【0071】
以上、本発明について図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。また、本発明の各部の構成は、前述した実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【符号の説明】
【0072】
1…沸騰冷却装置、1A…沸騰冷却装置、9…発熱体、10…受熱部、10A…受熱部、11…受熱本体、11A…受熱本体、11x…受熱本体、20…放熱部、21…容器、22…放熱フィン、30…熱輸送管部、40…第1管部、41…蒸気管、41a…開口、41b…開口、41c…内周面、50…第2管部、51…液管、51a…開口、51b…開口、51c…内周面、110…天板、111…上面、112…下面、113…側面、211…底板、212…天板、213…側壁、L0…最小値、F0…凍結部、RE…冷媒、RE0…液面、RE1…残留液、S1…貫通孔、S10…収容室、S11…第1空間、S11x…第1空間、S12…第2空間、S1A…貫通孔、S20…凝縮室、S40…第1流路、S50…第2流路、W1…内壁面、W11…内壁面、L1…第1長さ、L2…第2長さ。