(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126274
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】スピンドルモータ及びハードディスク駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/02 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H02K1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034553
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭彦
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601BB04
5H601CC01
5H601DD02
5H601DD11
5H601HH02
5H601HH18
5H601KK03
(57)【要約】
【課題】ロータハブ表面に形成された孔を封止したスピンドルモータを提供する。
【解決手段】静止部10と、静止部10に対して回転する回転部20と、回転部20に接続されたシャフト70と、を備え、回転部20が介在物を含む金属材料からなり、回転部20の表面に露出した孔80Hに樹脂材が充填されているスピンドルモータ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部と、
前記静止部に対して回転する回転部と、
前記静止部または前記回転部のいずれか一方に接続された軸部材と、
を備えるスピンドルモータであって、
前記回転部が介在物を含む金属材料からなり、
前記回転部の表面に露出した孔に樹脂材が充填されている
スピンドルモータ。
【請求項2】
前記回転部が前記静止部との間に充填された潤滑油と接する
請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項3】
前記樹脂材は、含浸によって前記孔に充填されている
請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項4】
前記樹脂材は、アクリル樹脂である
請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項5】
前記回転部は、ロータハブである
請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のスピンドルモータを備えるハードディスク駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルモータ及びハードディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク駆動装置には、スピンドルモータと呼ばれる特殊なモータが使用されている。スピンドルモータは、記録媒体である記録ディスクを支持及び回転させる役割を担っている。スピンドルモータにおいて、記録ディスクは、回転するロータハブに支持されている。ロータハブの加工精度が悪いと記録ディスクが振動する原因となるため、ロータハブは、高精度の切削加工によって製造されている。従って、ロータハブの材料は、高精度の切削加工に適した快削鋼が用いられている。
【0003】
快削鋼は、快削成分を添加した鋼材である。快削成分は、鋼材の金属組織とは結合せず、介在物となって存在している。このため、ロータハブの回転運動や、ロータハブに生じる振動によって、ロータハブの表面から介在物が脱落することがある。脱落した介在物は、微粒子状のコンタミとなってハードディスク装置内部を汚染させる可能性がある。
【0004】
特許文献1には、塑性加工と切削加工を併用して製造されるスピンドルモータのロータハブが開示されている。塑性加工によって、快削鋼中の介在物が変形、傾斜するため、ロータハブからの介在物の脱落が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、介在物が存在している箇所に切削加工を行うと、介在物の表面が削れて孔になることがある。そのような孔がロータハブ表面に形成されると、介在物が脱落しやすくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ロータハブ表面に形成された孔を封止したスピンドルモータを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、静止部と、前記静止部に対して回転する回転部と、前記静止部または前記回転部のいずれか一方に接続された軸部材と、を備えるスピンドルモータであって、前記回転部が介在物を含む金属材料からなり、前記回転部の表面に露出した孔に樹脂材が充填されているスピンドルモータが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転部の表面に露出した孔には樹脂材が充填されるため、孔を封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
図2のIII部を拡大した孔80Hのイメージ図である。
【
図5】スピンドルモータ103の部分断面図である。
【
図6】スピンドルモータ303の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
図1は、ハードディスク駆動装置1の構成を示す斜視図である。
図2は、ハードディスク駆動装置1に用いられるスピンドルモータ3の一例を示す部分断面図である。
【0013】
ここで、
図2等に示すように、後述するシャフト70の中心軸に平行な方向を軸方向、シャフト70の中心軸周りの方向を周方向、軸方向に垂直な方向を径方向とする。また、説明のために軸方向を上下方向とし、静止部10に対して回転部20側を上、静止部10側を下とする。
【0014】
<ハードディスク駆動装置>
ハードディスク駆動装置1は、筐体2と、スピンドルモータ3と、記録ディスク4と、軸受装置5と、を備える。
【0015】
筐体2は、ケース6と、カバー7と、を備える。ケース6は、略直方体の一方の面が開放された有底の箱状の形状を有する。カバー7は、ケース6の開放された面を塞ぐ板状の部材である。カバー7は、ねじ等の締結手段を用いてケース6に締結される。ケース6とカバー7との間には図示しないシール手段が設けられ、これにより、カバー7は、ケース6と共に密閉された内部空間Sを有する筐体2を形成する。
【0016】
筐体2の内部空間Sには、空気、あるいは空気よりも密度の低いヘリウムガスが充填されている。なお、内部空間Sには、空気やヘリウムガスの他に、例えば窒素ガス、もしくはヘリウムと窒素との混合ガスが充填されてもよい。内部空間Sには、スピンドルモータ3と、記録ディスク4と、軸受装置5とが収容される。
【0017】
スピンドルモータ3は、複数の記録ディスク4を回転可能に支持する。なお、スピンドルモータ3の詳細な構造については、後述する。
【0018】
記録ディスク4は、複数設けられ、それぞれのディスク面が対向するようにスピンドルモータ3に支持される。それぞれの記録ディスク4の間には、隙間が形成される。
【0019】
軸受装置5は、それぞれの記録ディスク4の間の隙間に配置される複数のスイングアーム8を揺動可能に支持する。
【0020】
スイングアーム8は、先端部に磁気ヘッド9を有する。磁気ヘッド9は、記録ディスク4に磁気を与え、また、記録ディスク4から磁気を読み取る。スイングアーム8が揺動すると、磁気ヘッド9は、記録ディスク4の上を移動する。
【0021】
スピンドルモータ3が回転すると、記録ディスク4も回転する。その状態で、スイングアーム8が揺動すると、磁気ヘッド9は、回転する記録ディスク4の上を移動する。そして、磁気ヘッド9は、記録ディスク4に磁気を与え、記録ディスク4にデータを記録する。また、磁気ヘッド9は、記録ディスク4から磁気を読み取って、記録ディスク4に記憶されたデータの読み出しを行う。
【0022】
<スピンドルモータ>
続いて、スピンドルモータ3の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、スピンドルモータ3は、静止部10と、軸受機構を介して静止部10に対して回転する回転部20と、を備える。
【0023】
(静止部)
静止部10は、ベースプレート30と、軸受スリーブ40と、ステータコア50と、磁気吸引板60と、を有する。
【0024】
ベースプレート30は、金属製の部材である。ベースプレート30には、貫通穴31と、円周溝部32と、円周壁部33と、プレート凹部34とが形成される。
【0025】
貫通穴31は、軸受スリーブ40を固定するための穴である。貫通穴31は、ベースプレート30を軸方向に貫通するように設けられる。貫通穴31は、筒形で、筒の内径が軸受スリーブ40の外径と略同じかそれよりも大きい。
【0026】
円周溝部32は、貫通穴31の径方向外側に形成される。円周溝部32は、軸方向視で貫通穴31の中心軸と同軸となるように設けられる環状の溝である。
【0027】
円周壁部33は、径方向において貫通穴31よりも外側かつ円周溝部32の内側に形成される。円周壁部33は、軸方向視で貫通穴31の中心軸と同軸となるように設けられる環状の壁であり、軸方向上向きに突出する。
【0028】
プレート凹部34は、円周壁部33の径方向内側に形成される。プレート凹部34は、軸方向視で貫通穴31の中心軸と同軸となるように設けられる円柱状の空間であり、上方に向けて開口する。プレート凹部34の径は、貫通穴31の外径よりも大きい。プレート凹部34は、貫通穴31の上側と軸方向に接続する。
【0029】
軸受スリーブ40は、シャフト70を回転可能に支持する。軸受スリーブ40は、円筒状のステンレス等の鉄製部材である。軸受スリーブ40は、貫通穴31に挿入される(
図2参照)。軸受スリーブ40は、軸受スリーブ40の外周面と貫通穴31の内周面の片面又は両面に塗布される接着剤によって貫通穴31に固定される。軸受スリーブ40には、ラジアル動圧発生溝41と、スラスト動圧発生溝42とが設けられる。
【0030】
ラジアル動圧発生溝41は、軸受スリーブ40の内周面40aに設けられる。本実施形態においては、ラジアル動圧発生溝41は、内周面40aにおいて、周方向に連続した列状に形成され、且つ軸方向に間隔を隔てて2列形成される。
【0031】
スラスト動圧発生溝42は、軸受スリーブ40の軸方向上側のスリーブ端部43aの端面44に設けられる。スラスト動圧発生溝42は、軸方向視で軸受スリーブ40の中心軸と同軸となるように環状に設けられる。
【0032】
軸受スリーブ40の軸方向下側のスリーブ端部43bには、大径凹部45及び小径凹部46が軸方向に連続して形成される。そして、大径凹部45には、カウンタープレート47が取り付けられる。
【0033】
大径凹部45は、スリーブ端部43bに形成される。大径凹部45は、軸方向視で貫通穴31の中心軸と同軸となるように設けられる円柱状の空間である。大径凹部45は、下方に向けて開口する。
【0034】
小径凹部46は、スリーブ端部43bにおいて大径凹部45の上側に形成される。小径凹部46は、軸方向視で貫通穴31の中心軸と同軸となるように設けられる円柱状の空間である。小径凹部46は、大径凹部45と軸方向に接続している。小径凹部46の径は、大径凹部45の径よりも小さい。小径凹部46がスリーブ端部43bに形成されることにより、軸受スリーブ40には、軸方向視で環状の環状面48と、周方向に内周側面49が形成される。
【0035】
カウンタープレート47は、スリーブ端部43bの下方から大径凹部45に挿入される円盤状の蓋である。カウンタープレート47は、大径凹部45及び小径凹部46を塞ぐ。カウンタープレート47は、ステンレス等の鉄製の部材である。カウンタープレート47の外径は、大径凹部45の内径と略等しい。カウンタープレート47の軸方向の厚さは、大径凹部45の深さと略等しい。
【0036】
カウンタープレート47は、大径凹部45に挿入されると、カウンタープレート47の外縁部と大径凹部45の内縁部とがレーザー溶接によって接合される。このようにして、カウンタープレート47は、軸受スリーブ40に対して隙間なく固定されるとともに、大径凹部45及び小径凹部46を塞ぐ。
【0037】
ステータコア50は、軸方向視で環状の電磁鋼板を軸方向に複数積層した部材である。ステータコア50は、円周溝部32の内部に配置され、接着等の方法によって固定される。ステータコア50は、径方向外側に延び、周方向に沿って複数配置される極歯(突極)を有する。極歯にはコイル51が巻き回されている。ステータコア50は、コイル51に電流が流れることによって磁束を発生させる。
【0038】
磁気吸引板60は、後述するロータハブ80の回転を安定させる部材である。磁気吸引板60は、例えば磁性材料により構成される。磁気吸引板60は、コイル51に与えられた電流に応じて、磁束を発生させる。磁気吸引板60は、円周溝部32においてステータコア50よりも径方向外側に設置される。
【0039】
(回転部)
回転部20は、シャフト70と、ロータハブ80と、ロータマグネット90と、を有する。
【0040】
シャフト70(軸部材の一例)は、スピンドルモータ3の回転軸となる部材である。シャフト70は、軸受スリーブ40の内部に回転可能に支持される。シャフト70は、柱状の軸部71と、フランジ部72と、を有する。シャフト70は、軸部71とフランジ部72とが一体となっている。
【0041】
軸部71は、円柱状の軸部材である。軸部71は、下側の軸端部73にフランジ部72が一体となって設けられる。軸部71は、フランジ部72が設けられた軸端部73を下側とするように軸受スリーブ40の内部に配置される。つまり、軸部71の外周面は、軸受スリーブ40の内周面40aに包囲されている。そして、軸部71の外周面と軸受スリーブ40の内周面40aは、微小隙間を隔てて対向する。なお、軸受スリーブ40の内周面40aの代わりに、軸部71の外周面にラジアル動圧発生溝41が形成されていてもよい。
【0042】
フランジ部72は、軸方向視で径方向に拡がる円環状のフランジ部材である。フランジ部72は、シャフト70が軸受スリーブ40に支持される状態において、小径凹部46に配置される。フランジ部72の外径は、小径凹部46の内径よりも小さい。フランジ部72の上面は、軸受スリーブ40に小径凹部46によって形成される環状面48と微小隙間を隔てて対向する。フランジ部72の下面は、カウンタープレート47の上面と微小隙間を隔てて対向する。フランジ部72の側面は、内周側面49と微小隙間を隔てて対向する。フランジ部72が環状面48とカウンタープレート47の間に配置されることによって、フランジ部72及びシャフト70の軸方向の移動は、防止される。
【0043】
シャフト70と軸受スリーブ40との間には、潤滑油が充填される。具体的には、潤滑油は、軸部71の外周面と軸受スリーブ40の内周面40aとの間、フランジ部72の上面と環状面48との間、フランジ部72の下面とカウンタープレート47の上面との間、及び、フランジ部72の側面と内周側面49との間に充填される。
【0044】
ロータハブ80は、シャフト70と共に回転する部材である。ロータハブ80は、シャフト70の上端に取り付けられ、シャフト70と接続される。ロータハブ80は、円板部81と、第1円筒部82と、第2円筒部83と、外縁部84とを有する。なお、ロータハブ80の製造方法については、後述する。
【0045】
円板部81は、軸方向視でシャフト70の中心軸と同軸となるような円盤状の部材である。円板部81は、ロータハブ貫通穴85を有する。ロータハブ貫通穴85は、軸方向視で円板部81の中心に設けられる。円板部81は、シャフト70に対して固定される。具体的には、ロータハブ貫通穴85に対してシャフト70の上端が挿入されて、且つ、圧入や接着等の方法で固定されることにより、円板部81は、シャフト70に対して固定される。円板部81は、シャフト70が軸受スリーブ40に支持される状態において、軸受スリーブ40の端面44と微小隙間を隔てて対向する。
【0046】
第1円筒部82は、径方向に厚さを有する円筒状の部材である。第1円筒部82は、軸方向視でロータハブ貫通穴85の中心軸と同軸となるように設けられ、軸方向下向きに突出する。第1円筒部82の内径は、軸受スリーブ40の外径よりも大きい。第1円筒部82の内周面は、軸受スリーブ40の外周面と隙間を隔てて対向する。第1円筒部82の外径は、円周壁部33の内径よりも小さい。第1円筒部82の外周面は、円周壁部33の内周面と間隔を隔てて対向する。
【0047】
第2円筒部83は、径方向に厚さを有する円筒状の部材である。第2円筒部83は、軸方向視でロータハブ貫通穴85の中心軸と同軸となるように設けられ、軸方向下向きに突出する。第2円筒部83は、円板部81の外縁に設けられる。
【0048】
外縁部84は、環状の部材である。外縁部84は、第2円筒部83の下端に設けられる。外縁部84は、第2円筒部83から径方向外側に突出し、フランジ状に形成される。外縁部84の上方且つ第2円筒部83の径方向外側には、複数の記録ディスク4が設置される(
図1参照)。
【0049】
ロータハブ80と軸受スリーブ40との間には、潤滑油が充填される。具体的には、潤滑油は、第1円筒部82よりも軸方向内側の円板部81の下面と軸受スリーブ40の軸方向上側のスリーブ端部43aの端面44の間に充填される。
【0050】
ロータマグネット90は、軸方向視で周方向に沿って極性がN,S,N,S…と反転する状態で着磁された磁極構造を有する環状の部材である。本実施形態においては、ロータマグネット90は、第2円筒部83の内周面に取り付けられている。ロータマグネット90は、軸方向においてステータコア50と略同一の位置にあり、径方向において磁気吸引板60と略同一の位置にある。
【0051】
<スピンドルモータの動作>
コイル51に通電した場合、ロータマグネット90の磁極とステータコア50の極歯との間で生じる磁気吸引力と磁気反発力とが切り替わる。その結果、回転部20は、シャフト70を回転軸として静止部10に対して回転する。
【0052】
シャフト70は、軸受スリーブ40に対して回転する。この際、ラジアル動圧発生溝41によって潤滑油が加圧されることにより、潤滑油に動圧が発生する。発生した動圧によって、シャフト70は、軸受スリーブ40に対して径方向に非接触状態で支持される。
【0053】
シャフト70が回転することにより、ロータハブ80は、軸受スリーブ40に対して回転する。この際、スラスト動圧発生溝42によって潤滑油が加圧されることにより、潤滑油に動圧が発生する。発生した動圧によって、ロータハブ80は、軸受スリーブ40に対して軸方向に非接触状態で支持される。
【0054】
<ロータハブの製造方法>
続いて、ロータハブ80の製造方法について説明する。ロータハブ80は、高精度の切削加工によって製造される。従って、ロータハブ80の材料は、高精度の切削加工に適した快削鋼が用いられる。
【0055】
ロータハブ80は、快削鋼の母材に切削加工を行うことで形成される。形成されたロータハブ80の表面には、
図3のイメージ図に示すように、孔80Hが形成される。孔80Hは、ロータハブ80の表面に露出している微小な凹みや、長手方向に沿って細長い孔である。孔80Hの開口部の最大径は、例えば、50マイクロメートル以下である。孔80Hは、例えば、快削鋼の金属成分と混ざりあった快削成分の介在物が切削加工によって一部を削られる、また、介在物が切削加工による外力を受けたことによって金属成分から脱落することによって形成される。また、孔80Hは、快削鋼に対して切削加工が行われる際に、快削鋼の金属成分と介在物の間の微小な隙間が表面に露出することによっても形成される。
【0056】
本実施形態におけるロータハブ80は、前述の孔80Hに樹脂材を充填させることで孔80Hを封止している。孔80Hに樹脂材を充填させる方法として、含浸処理を用いている。
【0057】
<ロータハブの含浸処理工程>
続いて、ロータハブ80に対して行う含浸処理について説明する。本実施形態においては、真空加圧含浸処理を採用している。
図4は、真空加圧含浸処理の各工程を示すフローチャートである。真空加圧含浸処理は、S11からS16までの6つの工程で構成される。なお、含浸処理は、真空加圧含浸処理に限らず、加圧工程を省いた真空含浸処理や、ロータハブ80を含浸材に浸漬させる浸漬含浸処理などの任意の含浸処理方法を採用することができる。
【0058】
(S11)
S11は、真空引きの工程である。作業者は、ロータハブ80を減圧及び加圧が可能なチャンバー内部に配置し、チャンバーのフタを閉める。次に、作業者は、チャンバー内部を減圧させ、真空状態(1kPa以下)とする。
【0059】
(S12)
S12は、液入れの工程である。作業者は、真空状態としたチャンバー内部に含浸材を吸入させる。ここで、含浸材は、アクリル樹脂を用いる。なお、使用する含浸材は、例えばエポキシ樹脂等の一般的に含浸処理で使用される樹脂材料を用いてもよい。
【0060】
(S13)
S13は、加圧の工程である。作業者は、含浸材を吸入させたチャンバー内部を加圧させる。これにより、ロータハブ80の孔80Hに含浸材が充填される。作業者は、孔80Hに充分な量の含浸材が充填されるまで時間を経過させた後、チャンバー内部を減圧させ、チャンバー内部から含浸材を抜き取る。次に、作業者は、チャンバー内部の圧力が外気圧と同じ状態になったことを確認し、チャンバーのフタを開け、チャンバー内部からロータハブ80を取り出す。
【0061】
(S14)
S14は、液切りの工程である。作業者は、チャンバー内部から取り出したロータハブ80を遠心分離機に配置する。そして、作業者は、遠心分離機を作動させ、ロータハブ80の表面に付着した余分な含浸材を除去する。次に、作業者は、遠心分離機を停止させ、ロータハブ80を遠心分離機から取り出す。
【0062】
(S15)
S15は、洗浄の工程である。作業者は、遠心分離機から取り出したロータハブ80を洗浄機に配置する。次に、作業者は、洗浄機を作動させ、ロータハブ80に対して、水洗い及び湯洗いを繰り返し行い、ロータハブ80の表面に付着した余分な含浸材をさらに除去する。そして、作業者は、洗浄機を停止させ、ロータハブ80を洗浄機から取り出す。その後、作業者は、ロータハブ80を遠心分離機に配置する。そして、作業者は、遠心分離機を作動させ、ロータハブ80の表面に付着した水分を除去する。次に、作業者は、遠心分離機を停止させ、ロータハブ80を遠心分離機から取り出す。
【0063】
(S16)
S16は、硬化の工程である。作業者は、ロータハブ80を湯に浸漬させ、孔80Hに充填された含浸材を硬化させる。含浸材が硬化した後、作業者は、ロータハブ80を湯から取り出し、ロータハブ80を乾燥させる。なお、含浸材を硬化させる方法として、ロータハブを湯に浸漬させる方法のほかに、ロータハブをオーブン等に入れて加熱硬化させる方法もある。
【0064】
<孔を封止した効果の確認>
切削加工で形成された同一形状のロータハブ80に対して、前述した含浸処理を行った試料と、含浸処理を行わない試料を用意し、一般的に用いられる発塵測定方法である液中パーティクルカウント法を用いて、パーティクル(粒子)数の測定を次の手順で行った。まず、超純水の入った容器中に試料を浸漬し、容器全体に所定時間超音波を当てた。次に、液中パーティクル測定装置を用いて、容器内の超純水に含まれるパーティクルの数を測定した。その結果、含浸処理を行っていない試料では、パーティクルの数が100であったのに対し、含浸処理を行った試料では、パーティクルの数が39であった。つまり、含浸処理を行ったロータハブ80は、含浸処理を行っていないロータハブに対して脱落する粒子数を低減できることが確認された。
【0065】
<効果>
本実施形態に係るスピンドルモータ3は、静止部10と、静止部10に対して回転する回転部20と、回転部20に接続されたシャフト70と、を備え、回転部20が介在物を含む金属材料からなり、回転部20の表面に露出した孔80Hに樹脂材が充填されている。
【0066】
以上のスピンドルモータ3によれば、回転部20の表面に露出した孔80Hに樹脂材が充填されているため、孔80Hを封止することができる。また、孔80Hが封止されているため、孔80Hから介在物が脱落しにくくなる。
【0067】
また、本実施形態に係るスピンドルモータ3は、回転部20が静止部10との間に充填された潤滑油と接している。
【0068】
以上のスピンドルモータ3によれば、回転部20の孔80Hが封止されている。従って、回転部20から介在物が脱落して、介在物が回転部20と静止部10との間に充填された潤滑油と接触しにくくなるため、潤滑油が劣化しにくくなる。
【0069】
また、本実施形態に係るスピンドルモータ3は、樹脂材が、含浸によって孔80Hに充填されている。
【0070】
以上のスピンドルモータ3によれば、樹脂材が含浸処理によって孔80Hに充填されている。含浸処理は、部材に形成された孔を封止する際に用いられる処理方法である。特に、真空加圧含浸処理は、対象の部材に対して真空引きをした後、加圧することによって樹脂材を充填させるため、微小な孔に対しても樹脂材を充填させやすい。従って、微小な孔である孔80Hに対しても樹脂材が隙間なく充填されやすく、孔80Hの封止漏れが発生しにくい。
【0071】
また、含浸処理は、対象の部材に対して樹脂材を充填させた後、対象の部材を洗浄することによって表面に付着した余分な樹脂材を取り除く。従って、対象の部材に寸法変化を生じさせることなく孔80Hを樹脂材で充填することができる。
【0072】
また、本実施形態に係るスピンドルモータ3は、孔80Hにアクリル樹脂が充填されている。
【0073】
以上のスピンドルモータ3によれば、孔80Hに一般的な樹脂であるアクリル樹脂が充填されているため、孔80Hを封止するために特殊な樹脂材を必要としない。
【0074】
また、本実施形態に係るスピンドルモータ3は、回転部20がロータハブ80である。
【0075】
以上のスピンドルモータ3によれば、ロータハブ80の表面に露出した孔80Hに樹脂材が充填されるため、ロータハブ80から介在物が脱落しにくくなる。
【0076】
また、本実施形態に係るハードディスク駆動装置1は、スピンドルモータ3を備える。
【0077】
以上のハードディスク駆動装置によれば、回転部20の孔80Hが封止されているため、介在物が回転部20から脱落しにくい。従って、ハードディスク駆動装置1の内部が清浄な状態に保たれやすい。
【0078】
<変形例>
上記実施形態にて説明したスピンドルモータ3は、回転部20がシャフト70を含み、ロータハブ80がシャフト70と一体となって回転するものであった。しかしながら、スピンドルモータは、静止部がシャフトを含み、ロータハブがシャフトを中心にして回転するものであってもよい。そのようなスピンドルモータについて、以下に説明する。
【0079】
(1)変形例1
ハードディスク駆動装置1は、上記実施形態にて説明したスピンドルモータ3の代わりに、
図5に示すようなスピンドルモータ103を備えてもよい。
【0080】
<スピンドルモータ>
スピンドルモータ103は、静止部110と、軸受機構を介して静止部110に対して回転する回転部120と、を備える。
【0081】
(静止部)
静止部110は、ベースプレート130と、スリーブ140と、ステータコア150と、磁気吸引板160と、シャフト170と、を有する。
【0082】
ベースプレート130は、金属製の部材である。ベースプレート130には、貫通穴131と、円周溝部132と、円周壁部133とが形成される。
【0083】
貫通穴131は、スリーブ140を固定するための穴である。貫通穴131は、ベースプレート130を軸方向に貫通するように設けられる。貫通穴131は、筒形で、筒の内径がスリーブ140の外径と略同じかそれよりも大きい。
【0084】
円周溝部132は、貫通穴131の径方向外側に形成される。円周溝部132は、軸方向視で貫通穴131の中心軸と同軸となるように設けられる環状の溝である。
【0085】
円周壁部133は、軸方向視で円周溝部132の底面から貫通穴131に沿って軸方向上向きに突出する環状の壁面部として形成される。円周壁部133は、貫通穴131と円周溝部132を仕切る。
【0086】
スリーブ140は、シャフト170をベースプレート130に対して固定するとともに、回転部120との間に動圧軸受部を形成する。スリーブ140は、円筒状のステンレス等の鉄製部材である。スリーブ140は、貫通穴131に挿入される。スリーブ140は、スリーブ140の外周面と貫通穴131の内周面の片面又は両面に塗布される接着剤によって貫通穴131に固定される。スリーブ140には、スリーブ貫通穴141と、スリーブ凹部142とが形成される。
【0087】
スリーブ貫通穴141は、軸方向視でスリーブ140の中心に設けられ、スリーブ140を軸方向に貫通するように設けられる。スリーブ貫通穴141の径は、シャフト170の外径と略同じか、それよりも大きい。
【0088】
スリーブ凹部142は、スリーブ140に軸方向視で円形に形成される凹みである。スリーブ凹部142は、軸方向視でスリーブ貫通穴141の中心軸と同軸に設けられる。スリーブ凹部142は、スリーブ貫通穴141と接続し、スリーブ貫通穴141の上側に形成される。スリーブ凹部142の底面には、スラスト動圧発生溝143が形成されている。スラスト動圧発生溝143は、軸方向視で環状に設けられる。
【0089】
ステータコア150は、軸方向視で環状の電磁鋼板を軸方向に複数積層した部材である。ステータコア150は、円周溝部132の内部に配置され、接着等の方法によって固定される。ステータコア150は、径方向外側に延び、周方向に沿って複数配置される極歯(突極)を有する。極歯にはコイル151が巻き回されている。ステータコア150は、コイル151に電流が流れることによって磁束を発生させる。
【0090】
磁気吸引板160は、後述するロータハブ180の回転を安定させる部材である。磁気吸引板160は、例えば磁性材料により構成される。磁気吸引板160は、コイル151に与えられた電流に応じて、磁束を発生させる。磁気吸引板160は、円周溝部132においてステータコア150よりも径方向外側に設置される。
【0091】
シャフト170は、円柱状の金属製部材である。シャフト170の外径は、スリーブ貫通穴141の内径と略同じか、それよりも小さい。シャフト170は、下側をスリーブ貫通穴141に挿入される。シャフト170は、シャフト170の外周面とスリーブ貫通穴141の内周面の片面又は両面に塗布される接着剤によってスリーブ貫通穴141に固定され、スリーブ140に接続される。シャフト170は、ラジアル動圧発生溝171と、フランジ部172と、を有する。
【0092】
ラジアル動圧発生溝171は、シャフト170の外周面において、後述するロータハブ180に挿入されている部位に設けられる。本変形例においては、ラジアル動圧発生溝171は、シャフト170の外周面において、周方向に連続した列状に形成され、且つ軸方向に間隔を隔てて2列形成されている。
【0093】
フランジ部172は、シャフト170の上端にシャフト170と一体に形成される。フランジ部172は、円筒部173と、突出部174と、スラスト動圧発生溝175と、を有する。
【0094】
円筒部173は、シャフト170の中心軸と同軸の円筒形状を有する部材である。円筒部173は、フランジ部172の軸方向上端部に形成される。
【0095】
突出部174は、シャフト170の中心軸と同軸の環状形状を有する部材である。突出部174は、円筒部173の下端から径方向外側に向けて突出するように形成される。突出部174は、その外周側面176が軸方向に傾斜している。従って、突出部174の上面174aと下面174bを比べると、下面174bの外径が上面174aの外径よりも大きくなっている。
【0096】
スラスト動圧発生溝175は、突出部174の下面174bに形成される。スラスト動圧発生溝175は、軸方向視で環状に設けられる。
【0097】
(回転部)
回転部120は、ロータハブ180と、ロータマグネット190と、エンドキャップ200と、を有する。
【0098】
ロータハブ180は、スリーブ140及びシャフト170に対して回転する部材である。ロータハブ180は、シャフト170の外側に配置され、下方の一部がスリーブ凹部142に配置される。ロータハブ180は、内側円筒壁部181と、円板部182と、外側円筒壁部183と、外縁部184と、立壁部185と、環状溝186とを有する。なお、ロータハブ180の製造方法については、後述する。
【0099】
内側円筒壁部181は、略円筒形状の部材である。内側円筒壁部181の下端面と、スリーブ140のスリーブ凹部142の底面の間には隙間210aが形成される。内側円筒壁部181の中心(ロータハブ180の回転中心にあたる部分)には、軸方向にロータハブ180を貫通するロータハブ貫通穴187が形成される。ロータハブ貫通穴187の径は、シャフト170の外径よりも大きい。ロータハブ貫通穴187には、シャフト170が挿入される。ロータハブ貫通穴187の内周面と、シャフト170の外周面の間には隙間210bが形成される。
【0100】
円板部182は、軸方向視で内側円筒壁部181の中心と同軸となるような円盤状の部材である。円板部182は、内側円筒壁部181の上端側から径方向外側に向かって形成される。
【0101】
外側円筒壁部183は、径方向に厚さを有する円筒状の部材である。外側円筒壁部183は、軸方向視で内側円筒壁部181の中心と同軸となるように設けられ、軸方向下向きに突出する。外側円筒壁部183は、円板部182の外縁に設けられる。
【0102】
外縁部184は、環状の部材である。外縁部184は、外側円筒壁部183の下端に設けられる。外縁部184は、外側円筒壁部183から径方向外側に突出し、フランジ状に形成される。外縁部184の上方且つ外側円筒壁部183の径方向外側には、複数の記録ディスク4が設置される(
図1参照)。
【0103】
立壁部185は、環状の部材である。立壁部185は、円板部182の上面においてロータハブ貫通穴187に対して径方向外側に設けられ、軸方向上向きに突出する。立壁部185の径方向内側の空間には、フランジ部172が収容される。立壁部185よりも径方向内側の円板部182の上面と突出部174の下面174bの間には隙間210cが形成される。
【0104】
環状溝186は、エンドキャップ200の位置決め及び固定に用いられる。環状溝186は、円板部182の上面において立壁部185よりも径方向外側に設けられる。
【0105】
ロータマグネット190は、軸方向視で周方向に沿って極性がN,S,N,S…と反転する状態で着磁された磁極構造を有する環状の部材である。ロータマグネット190は、外側円筒壁部183の内周面に取り付けられている。ロータマグネット190は、軸方向においてステータコア150と略同一の位置にあり、径方向において磁気吸引板160と略同一の位置にある。
【0106】
エンドキャップ200は、動圧軸受部で用いられる潤滑油の漏れ出しを防止する。エンドキャップ200は、略円筒形状の部材である。エンドキャップ200は、天板部201と、側壁部202とを有する。
【0107】
天板部201は、円形の部材である。天板部201の中央には、エンドキャップ貫通穴203が形成される。エンドキャップ貫通穴203には、フランジ部172の円筒部173が挿通される。エンドキャップ貫通穴203の内周面は、円筒部173の外周面と近接して対向するように配置される。
【0108】
側壁部202は、環状の部材である。側壁部202は、軸方向視で天板部201の中心と同軸となるように設けられ、軸方向下向きに突出する。側壁部202は、天板部201の外縁に設けられる。側壁部202は、内周面を立壁部185に嵌合させた状態で環状溝186に収容される。側壁部202が接着や溶着等の手段によって立壁部185や環状溝186に固定されることにより、エンドキャップ200は、ロータハブ180に対して固定される
【0109】
ロータハブ180とスリーブ140の間、及び、ロータハブ180とシャフト170の間には、潤滑油が充填される。具体的には、隙間210a、210b、210cに潤滑油が充填される。
【0110】
<スピンドルモータの動作>
コイル151に通電した場合、ロータマグネット190の磁極とステータコア150の極歯との間で生じる磁気吸引力と磁気反発力とが切り替わる。その結果、回転部120は、シャフト170を中心にして静止部110に対して回転する。
【0111】
ロータハブ180は、シャフト170に対して回転する。この際、ラジアル動圧発生溝171及びスラスト動圧発生溝175によって潤滑油が加圧されることにより、潤滑油に動圧が発生する。ラジアル動圧発生溝171が発生させた動圧によって、ロータハブ180は、シャフト170に対して径方向に非接触状態で支持される。また、スラスト動圧発生溝175が発生させた動圧によって、ロータハブ180は、シャフト170に対して軸方向に非接触状態で支持される。
【0112】
ロータハブ180は、スリーブ140に対して回転する。この際、スラスト動圧発生溝143によって潤滑油が加圧されることにより、潤滑油に動圧が発生する。スラスト動圧発生溝143によって発生した動圧によってロータハブ180は、スリーブ140に対して軸方向に非接触状態で支持される。
【0113】
<ロータハブの製造方法>
続いて、ロータハブ180の製造方法について説明する。ロータハブ180は、前述した実施形態と同様に、高精度の切削加工によって形成される。この際、形成されたロータハブ180の表面には、ロータハブ80と同様に孔80Hが形成される。ロータハブ180は、孔80Hに樹脂材を充填させることで孔80Hを封止する。孔80Hに樹脂材を充填させる方法としては、含浸処理を用いることが好ましい。なお、含浸処理については、前述したものと同一であるため詳細の説明を省略する。
【0114】
(2)変形例2
ハードディスク駆動装置1は、上記実施形態にて説明したスピンドルモータ3の代わりに、
図6に示すようなスピンドルモータ303を備えてもよい。
【0115】
<スピンドルモータ>
スピンドルモータ303は、静止部310と、軸受機構を介して静止部310に対して回転する回転部320と、を備える。
【0116】
(静止部)
静止部310は、ベースプレート330と、シャフト340と、ステータコア350と、を有する。
【0117】
ベースプレート330は、金属製の部材である。ベースプレート330には、貫通穴331と、円周溝部332と、円周壁部333とが形成される。
【0118】
貫通穴331は、シャフト340を固定するための穴である。貫通穴331は、ベースプレート330を軸方向に貫通するように設けられる。貫通穴331は、筒形で、筒の内径がシャフト340の外径と略同じかそれよりも大きい。
【0119】
円周溝部332は、貫通穴331の径方向外側に形成される。円周溝部332は、軸方向視で貫通穴331の中心軸と同軸となるように設けられる環状の溝である。
【0120】
円周壁部333は、軸方向視で円周溝部332の底面から軸方向上向きに突出する環状の壁面部として形成される。円周壁部333の径は、貫通穴331の径よりも大きい。
【0121】
シャフト340は、円柱棒状の金属製部材である。シャフト340には、下端部から順に、貫通穴挿入部341、第1取付部342、第2取付部343が形成されている。それぞれの部位は、軸方向に離間している。
【0122】
貫通穴挿入部341は、貫通穴331に挿入され、接合される。貫通穴挿入部341の外径が貫通穴331の径よりも大きい場合、貫通穴挿入部341は、例えば圧入によって貫通穴331に挿入され、接合される。このようにして、シャフト340がベースプレート330に固定され、接続される。なお、貫通穴挿入部341の外径が貫通穴331の径よりも小さい場合、貫通穴挿入部341は、貫通穴331に挿入された後、接着等の方法によって貫通穴331に接合される。
【0123】
第1取付部342には、下側円錐軸受部材361が固定され、第2取付部343には、上側円錐軸受部材362が固定される(
図6参照)。下側円錐軸受部材361及び上側円錐軸受部材362は、円錐外面を有し、円錐外面が径方向外側を向いている。
【0124】
ステータコア350は、軸方向視で環状の電磁鋼板を軸方向に複数積層した部材である。ステータコア350は、円周溝部332の内部に配置され、接着等の方法によって固定される。ステータコア350は、径方向外側に延び、周方向に沿って複数配置される極歯(突極)を有する。極歯にはコイル351が巻き回されている。ステータコア350は、コイル351に電流が流れることによって磁束を発生させる。
【0125】
(回転部)
回転部320は、ロータハブ370と、ロータマグネット380と、を有する。
【0126】
ロータハブ370は、シャフト340に対して回転する部材である。ロータハブ370は、内側円筒壁部371と、円板部372と、外側円筒壁部373と、外縁部374とを有する。なお、ロータハブ370の製造方法については、後述する。
【0127】
内側円筒壁部371は、略円筒形状の部材である。内側円筒壁部371の中心(ロータハブ370の回転中心にあたる部分)には、軸方向にロータハブ370を貫通するロータハブ貫通穴375が形成される。ロータハブ貫通穴375には、シャフト340が挿通される。ロータハブ貫通穴375は、下側の端部に下側円錐内面376を、上側の端部に上側円錐内面377を、それぞれ有する。
【0128】
下側円錐内面376は、微小隙間390aを介して下側円錐軸受部材361と対向する。また、上側円錐内面377は、微小隙間390bを介して上側円錐軸受部材362と対向する。
【0129】
円板部372は、軸方向視で内側円筒壁部371の中心と同軸となるような円盤状の部材である。円板部372は、内側円筒壁部371から径方向外側に向かって形成される。
【0130】
外側円筒壁部373は、径方向に厚さを有する円筒状の部材である。外側円筒壁部373は、軸方向視で内側円筒壁部371の中心と同軸となるように設けられ、軸方向上向き及び下向きそれぞれに突出する。外側円筒壁部373は、円板部372の外縁に設けられる。
【0131】
外縁部374は、環状の部材である。外縁部374は、外側円筒壁部373の下端に設けられる。外縁部374は、外側円筒壁部373から径方向外側に突出し、フランジ状に形成される。外縁部374の上方且つ外側円筒壁部373の径方向外側には、複数の記録ディスク4が設置される(
図1参照)。
【0132】
ロータマグネット380は、軸方向視で周方向に沿って極性がN,S,N,S…と反転する状態で着磁された磁極構造を有する環状の部材である。ロータマグネット380は、外側円筒壁部373の内周面に取り付けられている。ロータマグネット380は、軸方向においてステータコア350と略同一の位置にある。
【0133】
微小隙間390aと、微小隙間390bには、潤滑油が充填される。さらに、下側円錐内面376と下側円錐軸受部材361の少なくとも何れか一方、及び、上側円錐内面377と上側円錐軸受部材362の少なくとも何れか一方には、動圧発生溝(不図示)が形成される。これにより、流体動圧軸受391が形成される。
【0134】
<スピンドルモータの動作>
コイル351に通電した場合、ロータマグネット380の磁極とステータコア350の極歯との間で生じる磁気吸引力と磁気反発力とが切り替わる。その結果、回転部320は、シャフト340を中心にして回転する。
【0135】
回転部320のロータハブ370が高速で回転することにより、下側円錐内面376と下側円錐軸受部材361の間の微小隙間390a、及び、上側円錐内面377と上側円錐軸受部材362の間の微小隙間390bに充填された潤滑油は、動圧発生溝によって加圧される。その結果、流体動圧軸受391には、動圧が発生する。発生した動圧によって、ロータハブ370は、シャフト340、下側円錐軸受部材361及び上側円錐軸受部材362に対して非接触状態で支持されながら回転する。
【0136】
<ロータハブの製造方法>
続いて、ロータハブ370の製造方法について説明する。ロータハブ370は、前述した実施形態と同様に、高精度の切削加工によって形成される。この際、形成されたロータハブ370の表面には、ロータハブ80と同様に孔80Hが形成される。ロータハブ370は、孔80Hに樹脂材を充填させることで孔80Hを封止する。孔80Hに樹脂材を充填させる方法としては、含浸処理を用いることが好ましい。なお、含浸処理については、前述したものと同一であるため詳細の説明を省略する。
【符号の説明】
【0137】
1…ハードディスク駆動装置,3,103,303…スピンドルモータ,10,110,310…静止部,20,120,320…回転部,70,170,340…シャフト(軸部材),80,180,370…ロータハブ,80H…孔