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特開2024-126276フィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126276
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】フィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/033 20120101AFI20240912BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
D04H3/033
D04H3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034557
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】恩田 晃
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA28
4L047AB03
4L047BA08
4L047BD01
4L047CB02
4L047EA05
(57)【要約】
【課題】フィラメントの嵩密度を所望の値に調整し、安定した反発力と耐久性を有したフィラメント3次元結合体を製造することが可能となる製造装置を提供する。
【解決手段】第1溶融フィラメントと第2溶融フィラメントを含む複数の溶融フィラメントを排出させる溶融フィラメント供給部と、複数の溶融フィラメントを3次元的に絡み合わせてフィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部を備え、前記溶融フィラメント供給部は、第1溶融樹脂を加熱・加圧して第1ノズル部から第1溶融フィラメントを排出させるとともに、第2溶融樹脂を加熱・加圧して第2ノズル部から第2溶融フィラメントを排出させ、第1溶融フィラメントのノズル吐出量の検出結果に基づいて、第1溶融樹脂の加熱または加圧を制御するとともに、第2溶融フィラメントのノズル吐出量の検出結果に基づいて、第2溶融樹脂の加熱または加圧を制御する製造装置とする。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
別々の第1フィラメントと第2フィラメントを含むフィラメント3次元結合体の製造装置であって、
第1フィラメントの元である第1溶融フィラメントと、第2フィラメントの元である第2溶融フィラメントと、を含む複数の溶融フィラメントを排出させる溶融フィラメント供給部と、
前記複数の溶融フィラメントを3次元的に絡み合わせることによって、接触点が融着結合した第1フィラメントと第2フィラメントを含むフィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部を備え、
前記溶融フィラメント供給部は、
第1溶融樹脂の加熱および加圧を行って、複数のノズル孔を有する第1ノズル部から第1溶融樹脂を第1溶融フィラメントとして排出させる第1溶融フィラメント供給部と、
第2溶融樹脂の加熱および加圧を行って、複数のノズル孔を有する第2ノズル部から第2溶融樹脂を第2溶融フィラメントとして排出させる第2溶融フィラメント供給部と、を備え、
第1溶融フィラメントのノズル吐出量の検出結果に基づいて、第1溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方の強さを制御する第1溶融フィラメント制御部と、
第2溶融フィラメントのノズル吐出量の検出結果に基づいて、第2溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方の強さを制御する第2溶融フィラメント制御部と、を備えたことを特徴とする製造装置。
【請求項2】
第1溶融フィラメント制御部および第2溶融フィラメント制御部の少なくとも一方である特定制御部は、
特定溶融フィラメントの直径と排出速度を測定し、当該測定結果に基づいて特定溶融フィラメントのノズル吐出量を検出することを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記特定制御部は、
特定溶融フィラメントへの所定の時間間隔でのマーキングと、当該マーキングのなされた特定溶融フィラメントの撮影とを行い、当該撮影により得られた画像に基づいて特定溶融フィラメントの直径と排出速度を測定することを特徴とする請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記特定制御部は、
特定溶融フィラメントの直径とノズル吐出量の検出結果に基づいて、特定溶融樹脂の加熱および加圧の両方の強さを制御することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の製造装置。
【請求項5】
フィラメント3次元結合体の製造装置であって、
溶融樹脂の加熱および加圧を行って、複数のノズル孔を有するノズル部から当該溶融樹脂を複数の溶融フィラメントとして排出させる溶融フィラメント供給部と、
前記複数の溶融フィラメントを3次元的に絡み合わせることによって、接触点が融着結合したフィラメントを含むフィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部を備え、
前記溶融フィラメントの直径と排出速度を測定し、当該測定結果に基づいて当該溶融フィラメントのノズル吐出量を検出し、当該検出結果に基づいて前記溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方の強さを制御することを特徴とする製造装置。
【請求項6】
フィラメント3次元結合体の製造方法であって、
溶融樹脂の加熱および加圧を行って、複数のノズル孔を有するノズル部から当該溶融樹脂を複数の溶融フィラメントとして排出させる溶融フィラメント供給ステップと、
前記複数の溶融フィラメントを3次元的に絡み合わせることによって、接触点が融着結合したフィラメントを含むフィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成ステップと、
前記溶融フィラメントの直径と排出速度を測定し、当該測定結果に基づいて当該溶融フィラメントのノズル吐出量を検出し、当該検出結果に基づいて前記溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方の強さを制御する制御ステップと、を含むことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレスや枕などのクッション素材として使用できるフィラメント3次元結合体の製造装置、およびフィラメント3次元結合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マットレス等に使用できるクッション素材として、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーからなるフィラメントを3次元的に融着結合させて得られるフィラメント3次元結合体(立体網状構造体)が注目されている。このクッション素材はリサイクルが容易で、蒸れにくく水洗いができる利点がある。さらには、フィラメントの直径やフィラメントの密度を調整することによって、クッションの反発特性を自在に設計できるので、ユーザーの好みに合ったクッションを容易に製造できる利点がある。
【0003】
このようなフィラメント3次元結合体の製造方法として、例えば特許文献1には、孔径の異なる複数の孔を有するノズル部を用いて、直径の異なる複数のフィラメントを含むフィラメント3次元結合体(立体網状構造体)の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、複数の孔を有するノズル部内の2以上の領域に向けて、2つの押出機から別々の経路で樹脂をノズル部に供給する方法が開示されている。この方法により、樹脂成分の異なる複数種のフィラメントを含むフィラメント3次元結合体(立体網状構造体)を製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-97223号公報
【特許文献2】特開2002-88634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、ノズルの孔径を変えることによって、所望の直径を有する溶融フィラメントを生成しようとする場合、各々の孔径(あるいは孔径比)に対して、生成される溶融フィラメントの直径(あるいは直径比)が一致しないことがあった。
【0007】
この現象は、ノズル通過時の樹脂温において樹脂の貯蔵弾性率が大きい時、溶融フィラメントの直径はノズル孔の孔径より大きくなる傾向があり、逆にノズル通過時の樹脂温において樹脂の貯蔵弾性率が小さい時、溶融フィラメントの直径はノズル孔の孔径より小さくなる傾向があり、その変化の程度はノズル孔上部の樹脂圧と樹脂温に依存する。
【0008】
また、ノズル孔上部の樹脂圧を高くすると、溶融フィラメントの直径が大きくなるとともに、ノズルから落下する単位時間あたりの樹脂の量(ノズル吐出量)が多くなって嵩密度が大きくなる傾向があり、逆にノズル孔上部の樹脂圧を小さくすると、溶融フィラメントの直径が小さくなるとともにノズル吐出量が少なくなり、嵩密度が小さくなる傾向がある。
【0009】
また、ノズル吐出量は、製造されるフィラメント3次元結合体の嵩密度のみならず、溶融フィラメントの接触点密度やループ径(フィラメントの曲率)にも影響を与えるので、反発特性や耐久性の安定化に欠かせない制御パラメータである。しかしながら、一方の孔径のノズル孔について、樹脂圧または樹脂温を調整して溶融フィラメントのノズル吐出量を所望の値に調整することは可能であっても、他方の孔径のノズル孔について、溶融フィラメントのノズル吐出量を所望の値に調整することは難しいといった課題があった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑み、フィラメントの嵩密度を所望の値に調整し、安定した反発力と耐久性を有したフィラメント3次元結合体を製造することが可能となる製造装置および製造方法の提供を目的とする。また本発明は、フィラメントの嵩密度を所望の値に調整し、例えばフィラメントの直径や樹脂成分等の異なる複数種のフィラメントを含みながらも、安定した反発力と耐久性を有したフィラメント3次元結合体の製造が可能となる製造装置および製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るフィラメント3次元結合体の製造装置は、別々の第1フィラメントと第2フィラメントを含むフィラメント3次元結合体の製造装置であって、第1フィラメントの元である第1溶融フィラメントと、第2フィラメントの元である第2溶融フィラメントと、を含む複数の溶融フィラメントを排出させる溶融フィラメント供給部と、前記複数の溶融フィラメントを3次元的に絡み合わせることによって、接触点が融着結合した第1フィラメントと第2フィラメントを含むフィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部を備え、前記溶融フィラメント供給部は、第1溶融樹脂の加熱および加圧を行って、複数のノズル孔を有する第1ノズル部から第1溶融樹脂を第1溶融フィラメントとして排出させる第1溶融フィラメント供給部と、第2溶融樹脂の加熱および加圧を行って、複数のノズル孔を有する第2ノズル部から第2溶融樹脂を第2溶融フィラメントとして排出させる第2溶融フィラメント供給部と、を備え、第1溶融フィラメントのノズル吐出量の検出結果に基づいて、第1溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方の強さを制御する第1溶融フィラメント制御部と、第2溶融フィラメントのノズル吐出量の検出結果に基づいて、第2溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方の強さを制御する第2溶融フィラメント制御部と、を備えた構成とする。
【0012】
本構成によれば、フィラメントの嵩密度を所望の値に調整し、例えばフィラメントの直径や樹脂成分等の異なる複数種のフィラメントを含みながらも、安定した反発力と耐久性を有したフィラメント3次元結合体の製造が可能となる。
【0013】
上記構成としてより具体的には、第1溶融フィラメント制御部および第2溶融フィラメント制御部の少なくとも一方である特定制御部は、特定溶融フィラメントの直径と排出速度を測定し、当該測定結果に基づいて特定溶融フィラメントのノズル吐出量を検出する構成としても良い。また当該構成としてより具体的には、前記特定制御部は、特定溶融フィラメントへの所定の時間間隔でのマーキングと、当該マーキングのなされた特定溶融フィラメントの撮影とを行い、当該撮影により得られた画像に基づいて特定溶融フィラメントの直径と排出速度を測定する構成としても良い。また当該構成としてより具体的には、前記特定制御部は、特定溶融フィラメントの直径とノズル吐出量の検出結果に基づいて、特定溶融樹脂の加熱および加圧の両方の強さを制御する構成としても良い。なおここでの「特定溶融フィラメント」および「特定溶融樹脂」は、特定制御部が第1溶融フィラメント制御部の場合は「第1溶融フィラメント」および「第1溶融樹脂」を意味し、特定制御部が第2溶融フィラメント制御部の場合は「第2溶融フィラメント」および「第2溶融樹脂」を意味する。
【0014】
本発明に係るフィラメント3次元結合体の製造装置は、溶融樹脂の加熱および加圧を行って、複数のノズル孔を有するノズル部から当該溶融樹脂を複数の溶融フィラメントとして排出させる溶融フィラメント供給部と、前記複数の溶融フィラメントを3次元的に絡み合わせることによって、接触点が融着結合したフィラメントを含むフィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部を備え、前記溶融フィラメントの直径と排出速度を測定し、当該測定結果に基づいて当該溶融フィラメントのノズル吐出量を検出し、当該検出結果に基づいて前記溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方の強さを制御する構成とする。本構成によれば、フィラメントの嵩密度を所望の値に調整し、安定した反発力と耐久性を有したフィラメント3次元結合体を製造することが可能となる。
【0015】
本発明に係るフィラメント3次元結合体の製造方法は、溶融樹脂の加熱および加圧を行って、複数のノズル孔を有するノズル部から当該溶融樹脂を複数の溶融フィラメントとして排出させる溶融フィラメント供給ステップと、前記複数の溶融フィラメントを3次元的に絡み合わせることによって、接触点が融着結合したフィラメントを含むフィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成ステップと、前記溶融フィラメントの直径と排出速度を測定し、当該測定結果に基づいて当該溶融フィラメントのノズル吐出量を検出し、当該検出結果に基づいて前記溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方の強さを制御する制御ステップと、を含む方法とする。本方法によれば、フィラメントの嵩密度を所望の値に調整し、安定した反発力と耐久性を有したフィラメント3次元結合体を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るフィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法によれば、フィラメントの嵩密度を所望の値に調整し、安定した反発力と耐久性を有したフィラメント3次元結合体を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るフィラメント3次元結合体の製造装置の概念図である。
図2図1に示す製造装置のA-A’断面の矢視図である。
図3A】溶融フィラメント供給部の右方視点による概略的な断面図である。
図3B】溶融フィラメント供給部の左方視点による概略的な断面図である。
図4】溶融フィラメント供給部10の後方視点による概略的な断面図である。
図5】第1樹脂原料と第2樹脂原料の経路を模式的に示すブロック図である。
図6A】第1溶融フィラメント制御部の構成図である。
図6B】第2溶融フィラメント制御部の構成図である。
図7A】第1溶融フィラメントへのマーキングがなされている様子を示す概念図である。
図7B】第1溶融フィラメントの直径とマーキング間距離を測定している様子を示す概念図である。
図8】各加圧部および各加熱部の制御系統を概略的に示すブロック図である。
図9】第1溶融フィラメント制御部が行う制御動作の一例に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について各図面を参照しながら以下に説明する。なお以下の説明における上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は、各図に示すとおりである。これらの各方向は、鉛直方向が上下方向となり、後述する各押出機11,12における樹脂原料の流れる向きが前後方向となるように、便宜的に定めたものに過ぎない。
【0019】
1.第1実施形態
まず本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係るフィラメント3次元結合体の製造装置1の概略的な構成図である。図2は、図1に示す製造装置1のA-A’断面の矢視図である。図3Aは、図1に示す溶融フィラメント供給部10の右方視点による概略的な断面図(第1スクリュー53を通る断面の図)である。図3Bは、溶融フィラメント供給部10の左方視点による概略的な断面図(第2スクリュー63を通る断面の図)である。図4は、溶融フィラメント供給部10の後方視点による概略的な断面図である。
【0020】
フィラメント3次元結合体の製造装置1は、直径が0.5mm~3mmの複数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメントMF(後述する第1溶融フィラメントMF1と第2溶融フィラメントMF2を含む)を鉛直方向下方へ排出する溶融フィラメント供給部10と、溶融フィラメントMFを3次元的に絡め合わせると同時に、接触点を融着結合させた後、冷却固化させてフィラメント3次元結合体3DFを形成する融着結合形成部20を備える。
【0021】
溶融フィラメント供給部10は、第1押出機11、第2押出機12、溶融樹脂加熱部15(ダイ)、ノズル部16、および、フィードバック制御部40を含む。フィードバック制御部40は、第1溶融フィラメント制御部40A、および第2溶融フィラメント制御部40Bを含む。
【0022】
第1押出機11は、第1ホッパー51、第1スクリュー53、第1スクリュー53を駆動する第1モーター54、第1スクリューヒーター55、および不図示の複数の温度センサを含み、内部には第1ホッパー51から供給された第1樹脂原料を第1スクリューヒーター55により加熱溶融しながら搬送するための第1シリンダー57が形成されている。
【0023】
第1シリンダー57内には、第1スクリュー53が回転可能に収容されている。第1シリンダー57の下流側端部には、溶融状態の第1樹脂原料(第1溶融樹脂)を溶融樹脂加熱部15に向けて排出するための第1シリンダー排出口11bが形成されている。
【0024】
第1スクリューヒーター55の加熱温度は、例えば第1押出機11に設けた温度センサの検知信号と第1溶融フィラメント制御部40Aに基づいて制御される。第1モーター54の回転数は、第1溶融フィラメント制御部40Aに基づいて制御される。
【0025】
第2押出機12は、第2ホッパー61、第2スクリュー63、第2スクリュー63を駆動する第2モーター64、第2スクリューヒーター65、および不図示の複数の温度センサを含み、内部には第2ホッパー61から供給された第2樹脂原料を第2スクリューヒーター65により加熱溶融しながら搬送するための第2シリンダー67が形成されている。第2シリンダー67内には、第2スクリュー63が回転可能に収容されている。第2シリンダー67の下流側端部には、溶融状態の第2樹脂原料(第2溶融樹脂)を溶融樹脂加熱部15に向けて排出するための第2シリンダー排出口12bが形成されている。
【0026】
第2スクリューヒーター65の加熱温度は、例えば第2押出機12に設けた温度センサの検知信号と第2溶融フィラメント制御部40Bに基づいて制御される。第2モーター64の回転数は、第2溶融フィラメント制御部40Bに基づいて制御される。
【0027】
溶融樹脂加熱部15は、第1押出機11から生成される第1溶融樹脂をノズル部16に導く第1導流路17と、第1導流路17内の第1溶融樹脂を加熱する第1導流路ヒーター19a、19bと、第1導流路17内の第1溶融樹脂温度を測定する図示しない複数の第1導流路温度センサと、第2押出機12から生成される第2溶融樹脂をノズル部16に導く第2導流路18と、第2導流路18内の第2溶融樹脂を加熱する第2導流路ヒーター19c、19dと、第2導流路18内の第2溶融樹脂温度を測定する図示しない複数の第2導流路温度センサを含む。
【0028】
第1導流路ヒーター19a、19bは、第1導流路17を前後方向に挟む位置で、左右方向に複数個が設けられており、第1導流路17内の第1溶融樹脂を加熱する。第2導流路ヒーター19c、19dは、第2導流路18を前後方向に挟む位置で、左右方向に複数個が設けられており、第2導流路18内の第2溶融樹脂を加熱する。
【0029】
第1導流路ヒーター19a、19bの加熱温度は、第1導流路温度センサの検知信号と第1溶融フィラメント制御部40Aに基づいて制御され、第2導流路ヒーター19c、19dの加熱温度は、第2導流路温度センサの検知信号と第2溶融フィラメント制御部40Bに基づいて制御される。第1導流路17と第2導流路18との間には、図示しないセラミック製の断熱板が設けられている。
【0030】
ノズル部16は、複数のノズル孔(開口部)が形成された略直方体の金属製の厚板であり、溶融樹脂加熱部15の下部に設けられている。ノズル部16は、第1導流路17から排出される第1溶融樹脂を受け取り、第1溶融フィラメントMF1を排出する複数のノズル孔からなる第1ノズル部16Aと、第2導流路18から排出される第2溶融樹脂を受け取り、第2溶融フィラメントMF2を排出する複数のノズル孔からなる第2ノズル部16Bとを含む。
【0031】
フィードバック制御部40は、先述したとおり第1溶融フィラメント制御部40Aおよび第2溶融フィラメント制御部40Bを含む。第1溶融フィラメント制御部40Aは、第1溶融フィラメントMF1の直径D1とノズル吐出量F1(単位時間あたりにノズル孔から排出される第1溶融フィラメントMF1の量)を検出し、第1加圧部X1および第1加熱部Y1のフィードバック制御を行う。第2溶融フィラメント制御部40Bは、第2溶融フィラメントMF2の直径D2とノズル吐出量F2(単位時間あたりにノズル孔から排出される第2溶融フィラメントMF2の量)を検出し、第2加圧部X2および第2加熱部Y2のフィードバック制御を行う。本実施形態のフィードバック制御部40は、図2に示すように、ノズル部16の左端近傍の下側の位置(ノズル部16における左端のノズル孔から排出される溶融フィラメントMFに近接する位置)に設けられている。
【0032】
第1加圧部X1は、第1溶融樹脂の加圧を行う役割を果たし、本実施形態の例では第1スクリュー53および第1モーター54が該当する。第1加圧部X1の加圧の強さは、第1モーター54の回転数を変えることにより調整可能であり、これにより、第1ノズル部16Aでの樹脂圧を調整することが可能である。なお第1加圧部X1の具体的形態はこれに限定されず、例えば、第1導流路17に設けたスクリューやポンプなどの加圧手段とし、当該加圧手段の回転数を変えることにより、第1加圧部X1の加圧の強さを調整可能としても良い。
【0033】
第2加圧部X2は、第2溶融樹脂の加圧を行う役割を果たし、本実施形態の例では第2スクリュー63および第2モーター64が該当する。第2加圧部X2の加圧の強さは、第2モーター64の回転数を変えることにより調整可能であり、これにより、第2ノズル部16Bでの樹脂圧を調整することが可能である。なお第2加圧部X2の具体的形態はこれに限定されず、例えば、第2導流路18に設けたスクリューやポンプなどの加圧手段とし、当該加圧手段の回転数を変えることにより、第2加圧部X2の加圧の強さを調整可能としても良い。
【0034】
第1加熱部Y1は、第1溶融樹脂の加熱を行う役割を果たし、本実施形態の例では第1スクリューヒーター55および第1導流路ヒーター19a,19bが該当する。第2加熱部Y2は、第2溶融樹脂の加熱を行う役割を果たし、本実施形態の例では第2スクリューヒーター65および第2導流路ヒーター19c,19dが該当する。
【0035】
本実施形態においては、第1ノズル部16Aに形成されるノズル孔の断面形状は内径(孔径)1.2mmの円形で、隣接するノズル間の距離(ピッチ)を10mmとし、第2ノズル部16Bに形成されるノズル孔の断面形状は内径(孔径)0.8mmの円形で、隣接するノズル間の距離(ピッチ)を10mmとしている。但し各ノズル部16A,16Bの具体的形態はこれに限定されず、第1ノズル部16Aのノズル孔と第2ノズル部16Bのノズル孔は、孔径が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
第1樹脂原料および第2樹脂原料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、非晶性ポリスチレン系エラストマー、結晶性ポリスチレン系エラストマーなどを用いることができる。第1樹脂原料と第2樹脂原料は同じ種類の樹脂原料であっても良く、異なる種類の樹脂原料であってもよい。
【0037】
製造するフィラメント3次元結合体3DFの仕様に基づき、第1ノズル部16Aと第2ノズル部16Bにおけるノズル形状、ノズルの孔径、ノズル間隔、および、ノズル配置の形状、並びに、第1加圧部X1および第2加圧部X2による加圧条件や、第1加熱部Y1および第2加熱部Y2による加熱条件を適宜調整することによって、当該フィラメント3次元結合体3DFにおいて所望のフィラメント直径と嵩密度が得られる。
【0038】
融着結合形成部20は、冷却水槽21、前後一対の無端コンベア26,27、複数の搬送ローラ28~35、前後一対のシュート22,23と、一対のシュート22,23の上部に冷却水を各々供給する冷却水供給部24,25を含む。冷却水槽21は、冷却水Wを溜めておくための水槽である。冷却水槽21の内部には、一対の無端コンベア26,27と、複数の搬送ローラ28~35が配設されている。一対の無端コンベア26,27および複数の搬送ローラ28~35は、不図示の駆動モーターにより駆動される。
【0039】
一対のシュート22,23は、第1溶融フィラメントMF1と第2溶融フィラメントMF2を含む溶融フィラメントMFの厚さ方向端部(前後方向の両端部)の溶融フィラメントを受け留め、溶融フィラメントMFの厚さを薄く小さくする方向に寄せる。本実施形態においては、一対のシュート22,23は屈曲した平板状となっているが、曲面状であってもよく、四角形や楕円形の空間を形成するように一体化した形状であってもよい。
【0040】
図5は、製造装置1における第1樹脂原料と第2樹脂原料の経路を模式的に示すブロック図である。
【0041】
第1樹脂原料は、第1ホッパー51から第1押出機11に供給され、第1シリンダー57内で加熱溶融された後、溶融樹脂加熱部15内の第1導流路17に供給される。その後、ノズル部16における第1ノズル部16Aの複数のノズル孔から、第1溶融フィラメントMF1として排出される。
【0042】
第2樹脂原料は、第2ホッパー61から第2押出機12に供給され、第2シリンダー67内で加熱溶融された後、溶融樹脂加熱部15内の第2導流路18に供給される。その後、ノズル部16における第2ノズル部16Bの複数のノズル孔から、第2溶融フィラメントMF2として排出される。
【0043】
第1溶融フィラメントMF1と第2溶融フィラメントMF2は、融着結合形成部20のシュート22,23によって前後方向の厚さを薄く小さくする方向に寄せられた後、冷却水槽21の冷却水Wの中に落下する。第1溶融フィラメントMF1と第2溶融フィラメントMF2は、冷却水Wの浮力等によってランダムなループを形成する。ループ化することによって撓んだ第1溶融フィラメントMF1と第2溶融フィラメントMF2は、隣接する溶融フィラメントどうしの接触点において融着し、フィラメント3次元結合体3DFを形成する。このとき、一部の第1溶融フィラメントMF1は、一部の第2溶融フィラメントMF2と接触し融着する。
【0044】
フィラメント3次元結合体3DFは、一対の無端コンベア26、27の間に挟み込まれた状態で所定の速度で鉛直方向下方向に搬送された後、複数の搬送ローラ28~35によって冷却水Wの中で冷却されながら搬送され、最終的に冷却水槽21から排出される。冷却水槽21から排出されたフィラメント3次元結合体3DFは切断加工等が施され、マットレスや枕などのクッション素材として使用可能となる。
【0045】
図6Aは、第1溶融フィラメント制御部40Aの構成図である。本図に示すように第1溶融フィラメント制御部40Aは、第1溶融フィラメントMF1(第1ノズル部16Aにおける左端のノズル孔から排出される第1溶融フィラメントMF1)に近接対向する位置に配置されている。
【0046】
第1溶融フィラメント制御部40Aは、近接対向する第1溶融フィラメントMF1へ所定の時間間隔でマーキングを行う第1マーキング部41Aと、撮影により第1溶融フィラメントMF1の直径D1とマーキング間距離L1(第1マーキング部41Aによりマーキングが施された箇所どうしの距離)が分かる画像を取得する第1カメラ42Aと、第1コントローラ43Aとを備える。第1コントローラ43Aは、当該画像に基づいて、第1溶融フィラメントMF1の直径D1を測定するとともに、この直径D1とマーキング間距離L1からノズル吐出量F1を算出する。
【0047】
図6Bは、第2溶融フィラメント制御部40Bの構成図である。本図に示すように第2溶融フィラメント制御部40Bは、第2溶融フィラメントMF2(第2ノズル部16Bにおける左端のノズル孔から排出される第2溶融フィラメントMF2)に近接対向する位置に配置されている。
【0048】
第2溶融フィラメント制御部40Bは、近接対向する第2溶融フィラメントMF2へ所定の時間間隔でマーキングを行う第2マーキング部41Bと、撮影により第2溶融フィラメントMF2の直径D2とマーキング間距離L2(第2マーキング部41Bによりマーキングが施された箇所どうしの距離)が分かる画像を取得する第2カメラ42Bと、第2コントローラ43Bとを備える。第2コントローラ43Bは、当該画像に基づいて、第2溶融フィラメントMF2の直径D2を測定するとともに、この直径D2とマーキング間距離L2からノズル吐出量F2を算出する。
【0049】
図7Aは、第1溶融フィラメント制御部40Aにおいて、第1マーキング部41Aにより第1溶融フィラメントMF1へのマーキングがなされている様子を示す概念図である。
【0050】
図7Aに示す例では、第1マーキング部41A(マーキング装置)としてインクジェットノズルを利用し、黒色のインクを所定の時間間隔(例えば1秒間に1回)で第1溶融フィラメントMF1に向けて噴射して、第1溶融フィラメントMF1にマーキング(Pn~Pn+4)を施している。当該マーキングに使用するインクとしては、水性インクであってもよいし、ワックスインクであってもよい。インクの色については、第1カメラ42Aで撮影できれば特に制限はなく、例えば無色の赤外線吸収顔料であってもよい。また第1マーキング部41Aについて、インクジェットノズルの代わりに、撮影可能な粉体を噴霧するパウダージェットノズルを適用してもよい。
【0051】
図7Bは、第1溶融フィラメント制御部40Aが第1溶融フィラメントMF1の直径D1とマーキング間距離L1を測定している様子を示す概念図である。
【0052】
図7Bに示す例では、第1カメラ42Aは、点線で示す領域(図7Bで示すタイミングにおいては、マーキングPn+2とマーキングPn+3を含む領域)の第1溶融フィラメントMF1を撮影し、当該撮影により得られた画像データは第1コントローラ43Aに送られる。第1コントローラ43Aは、この画像データに表れている第1溶融フィラメントMF1の幅(前後方向寸法)を直径D1として測定するとともに、隣合うマーキングどうしの距離(図7Bの例では、マーキングPn+2とマーキングPn+3の距離)をマーキング間距離L1として測定する。更に第1コントローラ43Aは、直径D1にマーキング間距離L1に基づいてノズル吐出量F1を算出する。ノズル吐出量F1は、直径D1の円の面積にマーキング間距離L1を乗じて算出されても良い。このようにして第1溶融フィラメント制御部40Aは、直径D1とノズル吐出量F1を検出することができる。
【0053】
なお、第2溶融フィラメント制御部40Bにおける直径D2とノズル吐出量F2の検出手法は、上述した第1溶融フィラメント制御部40Aにおける直径D1とノズル吐出量F1の検出手法と基本的に同様である。そのためここでは、第2溶融フィラメント制御部40Bにおける直径D2とノズル吐出量F2の検出手法についての詳細な説明は省略する。
【0054】
図8は、製造装置1における各加圧部X1,X2および各加熱部Y1,Y2の制御系統を概略的に示すブロック図である。本図に示すように、第1コントローラ43Aは、第1マーキング部41Aと第1カメラ42Aの機能を利用して第1溶融フィラメントMF1の直径D1とノズル吐出量F1を検出し、この情報に基づいて、第1加圧部X1の加圧の強さと第1加熱部Y1の加熱の強さを制御する。また第2コントローラ43Bは、第2マーキング部41Bと第2カメラ42Bの機能を利用して第2溶融フィラメントMF2の直径D2とノズル吐出量F2を検出し、この情報に基づいて、第2加圧部X2の加圧の強さと第2加熱部Y2の加熱の強さを制御する。
【0055】
より詳細に説明すると、第1溶融フィラメント制御部40Aにおいては、既に説明したとおり、第1マーキング部41Aによるマーキングおよび第1カメラ42Aの撮影による画像を利用して、第1コントローラ43Aが第1溶融フィラメントMF1の直径D1とノズル吐出量F1を検出する。更に第1コントローラ43Aは、検出された直径D1とノズル吐出量F1それぞれを予め設定された目標値と比較して差分を求め、補正が必要か否かを判断する。
【0056】
補正が必要と判断した場合に第1コントローラ43Aは、例えば予め実験等により作成しておいた計算式に従って、最適な第1加圧部X1の加圧の強さ(第1モーター54の回転数)と第1加熱部Y1の加熱の強さ(第1スクリューヒーター55および第1導流路ヒーター19a,19bの加熱温度)を求め、これに基づいて第1加圧部X1の加圧の強さと第1加熱部Y1の加熱の強さを制御する。またその他、補正が必要と判断した場合に第1コントローラ43Aは、当該差分から第1モーター54の回転数の補正量と第1加熱部Y1の加熱温度の補正量を求め、これに基づいて第1加圧部X1の加圧の強さと第1加熱部Y1の加熱の強さを制御するようにしても良い。このような制御の結果、第1溶融フィラメントMF1の直径D1とノズル吐出量F1を適正化し、製造されるフィラメント3次元結合体3DFの第1溶融フィラメントMF1に対応する領域のフィラメントの直径や嵩密度を所望の状態とすることが可能である。
【0057】
また、第2溶融フィラメント制御部40Bにおいても同様に、第2マーキング部41Bによるマーキングおよび第2カメラ42Bの撮影による画像を利用して、第2コントローラ43Bが第2溶融フィラメントMF2の直径D2とノズル吐出量F2を検出する。更に第2コントローラ43Bは、検出された直径D2とノズル吐出量F2それぞれを予め設定された目標値と比較して差分を求め、補正が必要か否かを判断する。
【0058】
補正が必要と判断した場合に第2コントローラ43Bは、例えば予め実験等により作成しておいた計算式に従って、最適な第2加圧部X2の加圧の強さ(第2モーター64の回転数)と第2加熱部Y2の加熱の強さ(第2スクリューヒーター65および第2導流路ヒーター19c,19dの加熱温度)を求め、これに基づいて第2加圧部X2の加圧の強さと第2加熱部Y2の加熱の強さを制御する。またその他、補正が必要と判断した場合に第2コントローラ43Bは、当該差分から第2モーター64の回転数の補正量と第2加熱部Y2の加熱温度の補正量を求め、これに基づいて第2加圧部X2の加圧の強さと第2加熱部Y2の加熱の強さを制御するようにしても良い。このような制御の結果、第2溶融フィラメントMF2の直径D2とノズル吐出量F2を適正化し、製造されるフィラメント3次元結合体3DFの第2溶融フィラメントMF2に対応する領域のフィラメントの直径や嵩密度を所望の状態とすることが可能である。
【0059】
なお、第1加圧部X1の加圧の強さを上げるほど、第1溶融フィラメントMF1の直径D1が大きくなるとともに、ノズル吐出量F1が多くなる傾向にある。また、第1加熱部Y1の加熱の強さを上げるほど、ノズル吐出量F1が多くなる傾向にある。
【0060】
そのため基本的には、直径D1を大きくするためには、第1加圧部X1の加圧の強さを上げる制御を行えば良く、直径D1を小さくするためには、第1加圧部X1の加圧の強さを下げる制御を行えば良い。またノズル吐出量F1を大きくするためには、第1加圧部X1の加圧の強さを上げる制御、および、第1加熱部Y1の加熱の強さを上げる制御の両方または一方を行えば良く、ノズル吐出量F1を小さくするためには、第1加圧部X1の加圧の強さを下げる制御、および、第1加熱部Y1の加熱の強さを下げる制御の両方または一方を行えば良い。
【0061】
同様に第2溶融フィラメントMF2については、直径D2を大きくするためには、第2加圧部X2の加圧の強さを上げる制御を行えば良く、直径D2を小さくするためには、第2加圧部X2の加圧の強さを下げる制御を行えば良い。またノズル吐出量F2を大きくするためには、第2加圧部X2の加圧の強さを上げる制御、および、第2加熱部Y2の加熱の強さを上げる制御の両方または一方を行えば良く、ノズル吐出量F2を小さくするためには、第2加圧部X2の加圧の強さを下げる制御、および、第2加熱部Y2の加熱の強さを下げる制御の両方または一方を行えば良い。
【0062】
また、フィードバック制御部40が行う各加圧部X1,X2および各加熱部Y1,Y2の具体的な制御方法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に限定されない。当該制御方法の一例としては、図9のフローチャートに示す方法が採用されても良く、以下、この方法について説明する。なおここでは、第1溶融フィラメント制御部40Aが行う制御動作について図9のフローチャートを参照しながら説明し、第2溶融フィラメント制御部40Bが行う制御動作については、第1溶融フィラメント制御部40Aが行う制御動作と基本的に同様であるため説明を省略する。
【0063】
第1溶融フィラメント制御部40Aは、最新の第1溶融フィラメントMF1の直径D1およびノズル吐出量F1を検出する(ステップS1)。なお、直径D1およびノズル吐出量F1の検出手法については、既に説明したとおりである。
【0064】
次に、第1溶融フィラメント制御部40Aは、今回検出されたノズル吐出量F1と所定の許容範囲Fxとの大小関係を判別する(ステップS2~S3)。その結果、ノズル吐出量F1が許容範囲Fxの下限値より少ない場合は(ステップS2のYes)、第1溶融フィラメント制御部40Aは、第1加熱部Y1の加熱の強さを少し上げるとともに、第1加圧部X1の加圧の強さを少し上げるように制御し(ステップS6)、ステップS1の動作を繰返す。一方、ノズル吐出量F1が許容範囲Fxの上限値より多い場合は(ステップS3のYes)、第1溶融フィラメント制御部40Aは、第1加熱部Y1の加熱の強さを少し下げるとともに、第1加圧部X1の加圧の強さを少し下げるように制御し(ステップS7)、ステップS1の動作を繰返す。
【0065】
今回検出されたノズル吐出量F1が許容範囲Fxに収まっている場合は(ステップS3のNo)、次に、第1溶融フィラメント制御部40Aは、今回検出された直径D1と所定の許容範囲Dxとの大小関係を判別する(ステップS4~S5)。その結果、直径D1が許容範囲Dxの下限値より小さい場合は(ステップS4のYes)、第1溶融フィラメント制御部40Aは、第1加熱部Y1の加熱の強さを少し下げるとともに、第1加圧部X1の加圧の強さを少し上げるように制御し(ステップS8)、ステップS1の動作を繰返す。一方、直径D1が許容範囲Dxの上限値より大きい場合は(ステップS5のYes)、第1溶融フィラメント制御部40Aは、第1加熱部Y1の加熱の強さを少し上げるとともに、第1加圧部X1の加圧の強さを少し下げるように制御し(ステップS9)、ステップS1の動作を繰返す。また、今回検出された直径D1が許容範囲Dxに収まっている場合は(ステップS5のNo)、ステップS1の動作を繰返す。
【0066】
上述したステップS1~S9の一連の動作が行われることにより、ノズル吐出量F1と直径D1の検出結果に基づいて、これらの値が許容範囲Fx,Dxに収まるように第1溶融樹脂の加熱および加圧がフィードバック制御される。なお、ステップS6の動作では、第1加熱部Y1の加熱の強さを上げる処理と第1加圧部X1の加圧の強さを上げる処理の両方を行うことにより、加熱と加圧をバランス良く調節することが可能であるが、これらの処理のうち一方のみが行われるようにすることも可能である。また、ステップS7の動作では、第1加熱部Y1の加熱の強さを下げる処理と第1加圧部X1の加圧の強さを下げる処理の両方を行うことにより、加熱と加圧をバランス良く調節することが可能であるが、一方の処理のみが行われるようにすることも可能である。
【0067】
また、ステップS8の動作では、第1加圧部X1の加圧の強さを上げることにより直径D1が大きくなるようにしながらも、同時に第1加熱部Y1の加熱の強さを下げることにより、ノズル吐出量F1への影響を極力抑えることが可能である。また、ステップS9の動作では、第1加圧部X1の加圧の強さを下げることにより直径D1が小さくなるようにしながらも、同時に第1加熱部Y1の加熱の強さを上げることにより、ノズル吐出量F1への影響を極力抑えることが可能である。なお、直径D1を許容範囲内に収めることを考慮する必要が無い場合、ノズル吐出量F1の検出結果に基づいて、この値が許容範囲Fxに収まるように第1溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方がフィードバック制御されるようにしても良い。この場合には、ステップS1~S9の一連の動作のうち、ステップS4、S5、S8およびS9の動作を省略すれば良い。
【0068】
以上に説明した製造装置1は、別々の第1フィラメントと第2フィラメントを含むフィラメント3次元結合体の製造装置であって、溶融フィラメント供給部10と融着結合形成部20を備える。溶融フィラメント供給部10は、第1フィラメントの元である第1溶融フィラメントMF1と、第2フィラメントの元である第2溶融フィラメントMF2と、を含む複数の溶融フィラメントを排出させる。融着結合形成部20は、当該複数の溶融フィラメントを3次元的に絡み合わせることによって、接触点が融着結合した第1フィラメントと第2フィラメントを含むフィラメント3次元結合体を形成する。
【0069】
溶融フィラメント供給部10は、第1溶融フィラメント供給部と第2溶融フィラメント供給部とを別々に備える。第1溶融フィラメント供給部は、第1溶融樹脂の加熱および加圧を行って、複数のノズル孔を有する第1ノズル部から第1溶融樹脂を第1溶融フィラメントMF1として排出させる。第2溶融フィラメント供給部は、第2溶融樹脂の加熱および加圧を行って、複数のノズル孔を有する第2ノズル部から第2溶融樹脂を第2溶融フィラメントMF2として排出させる。
【0070】
更に製造装置1は、第1溶融フィラメント制御部40Aと第2溶融フィラメント制御部40Bとを備える。第1溶融フィラメント制御部40Aは、第1溶融フィラメントMF1のノズル吐出量F1の検出結果に基づいて、第1溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方を制御する。第2溶融フィラメント制御部40Bは、第2溶融フィラメントMF2のノズル吐出量F2の検出結果に基づいて、第2溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方を制御する。
【0071】
また、第1溶融フィラメント制御部40Aは、第1溶融フィラメントの直径D1と第1ノズル部からの排出速度を測定し、当該測定結果に基づいて第1溶融フィラメントMF1のノズル吐出量F1を検出する。また先述したステップS1~S9の一連の動作によれば、第1溶融フィラメント制御部40Aは、直径D1とノズル吐出量F1の検出結果に基づいて、第1溶融樹脂の加熱および加圧の両方の強さをフィードバック制御することになる。
【0072】
なお、第1溶融フィラメント制御部40Aは、第1溶融フィラメントMF1への所定の時間間隔でのマーキングと、当該マーキングのなされた第1溶融フィラメントMF1の撮影とを行い、当該撮影により得られた画像に基づいて第1溶融フィラメントMF1の直径D1と排出速度(第1溶融フィラメントMF1がノズル孔から排出される速度)を測定するようになっている。これにより、第1溶融フィラメントMF1の直径D1とノズル吐出量F1を極力精度良くかつ迅速に検出し、第1溶融樹脂の加熱や加圧の強さの高度なフィードバック制御が可能である。
【0073】
第2溶融フィラメント制御部40Bは、第2溶融フィラメントMF2の直径D2と第2ノズル部からの排出速度を測定し、当該測定結果に基づいて第2溶融フィラメントMF2のノズル吐出量F2を検出する。また先述したステップS1~S9の一連の動作によれば、第2溶融フィラメント制御部40Bは、直径D2とノズル吐出量F2の検出結果に基づいて、第2溶融樹脂の加熱および加圧の両方の強さをフィードバック制御することになる。
【0074】
なお、第2溶融フィラメント制御部40Bは、第2溶融フィラメントMF2への所定の時間間隔でのマーキングと、当該マーキングのなされた第2溶融フィラメントMF2の撮影とを行い、当該撮影により得られた画像に基づいて第2溶融フィラメントMF2の直径D2と排出速度を測定するようになっている。これにより、第2溶融フィラメントMF2の直径D2とノズル吐出量F2を極力精度良くかつ迅速に検出し、第2溶融樹脂の加熱や加圧の強さの高度なフィードバック制御が可能である。
【0075】
また、本実施形態の製造装置1は別々の第1フィラメントと第2フィラメントを含むフィラメント3次元結合体の製造装置としているが、本発明における溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方の強さを制御する手法は、このような製造装置に限らず、全体が同じ樹脂原料を用いて構成される一般的なフィラメント3次元結合体の製造装置にも適用可能である。
【0076】
この場合のフィラメント3次元結合体の製造装置は、溶融樹脂の加熱および加圧を行って、複数のノズル孔を有するノズル部から当該溶融樹脂を複数の溶融フィラメントとして排出させる溶融フィラメント供給部と、前記複数の溶融フィラメントを3次元的に絡み合わせることによって、接触点が融着結合したフィラメントを含むフィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部を備え、前記溶融フィラメントの直径と排出速度を測定し、当該測定結果に基づいて当該溶融フィラメントのノズル吐出量を検出し、当該検出結果に基づいて前記溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方の強さを制御する制御装置としても良い。
【0077】
またフィラメント3次元結合体の製造方法は、溶融樹脂の加熱および加圧を行って、複数のノズル孔を有するノズル部から当該溶融樹脂を複数の溶融フィラメントとして排出させる溶融フィラメント供給ステップと、前記複数の溶融フィラメントを3次元的に絡み合わせることによって、接触点が融着結合したフィラメントを含むフィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成ステップと、前記溶融フィラメントの直径と排出速度を測定し、当該測定結果に基づいて当該溶融フィラメントのノズル吐出量を検出し、当該検出結果に基づいて前記溶融樹脂の加熱および加圧の少なくとも一方の強さを制御する制御ステップと、を含む製造方法としても良い。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、フィラメント3次元結合体の製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 製造装置
10 溶融フィラメント供給部
11 第1押出機
11b 第1シリンダー排出口
12 第2押出機
12b 第2シリンダー排出口
15 溶融樹脂加熱部
16 ノズル部
16A 第1ノズル部
16B 第2ノズル部
17 第1導流路
18 第2導流路
19a、19b 第1導流路ヒーター
19c、19d 第2導流路ヒーター
20 融着結合形成部
21 冷却水槽
22、23 シュート
24、25 冷却水供給部
26、27 無端コンベア
28~35 搬送ローラ
40 フィードバック制御部
40A 第1溶融フィラメント制御部
40B 第2溶融フィラメント制御部
41A 第1マーキング部
41B 第2マーキング部
42A 第1カメラ
42B 第2カメラ
43A 第1コントローラ
43B 第2コントローラ
51 第1ホッパー
53 第1スクリュー(第1加圧部)
54 第1モーター(第1加圧部)
55 第1スクリューヒーター(第1加熱部)
57 第1シリンダー
61 第2ホッパー
63 第2スクリュー(第2加圧部)
64 第2モーター(第2加圧部)
65 第2スクリューヒーター(第2加熱部)
67 第2シリンダー
MF 溶融フィラメント
MF1 第1溶融フィラメント
MF2 第2溶融フィラメント
3DF フィラメント3次元結合体
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9