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  • -ゴム組成物及びホース 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126286
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びホース
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20240912BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20240912BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240912BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08L23/16
C08L91/00
C08K3/04
C08K5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034570
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彩
(72)【発明者】
【氏名】杉原 孝樹
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE052
4J002BB151
4J002DA036
4J002EK037
4J002EK047
4J002FD016
4J002FD022
4J002FD140
4J002FD148
4J002FD172
4J002GC00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】本発明は、環境負荷を軽減し、耐熱老化性に優れるゴム組成物、及び、ホースを提供することを目的とする。
【解決手段】エチレンの少なくとも一部がバイオマス由来のエチレンであり、かつ、ジエン量が8.0質量%以上であるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体と、カーボンブラックと、パラフィンオイルと、有機過酸化物とを含有するゴム組成物、及び、上記ゴム組成物を用いて形成されたホース。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンの少なくとも一部がバイオマス由来のエチレンであり、かつ、ジエン量が8.0質量%以上であるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体と、カーボンブラックと、パラフィンオイルと、有機過酸化物とを含有するゴム組成物。
【請求項2】
前記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を構成するジエンが、エチリデンノルボルネンを含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体の全エチレン量が、前記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体中の60質量%以下である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を構成するエチレンが、全て、前記バイオマス由来のエチレンである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
ポリマー成分が前記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体のみである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体100質量部に対して、
前記カーボンブラックの含有量が80~100質量部であり、
前記パラフィンオイルの含有量が30~40質量部であり、
前記有機過酸化物の含有量が1.0~4.0質量部である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項7】
ホース用である、請求項1~6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて形成されたホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物及びホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(以下、これを「EPDM」とも称する)は耐熱性や耐候性等の機能性に優れ、比較的低コストであることから、EPDMを含有するゴム組成物(例えば、特許文献1)は、ホース等で広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03-197543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の増加を抑制するため、EPDMについても、サステナブル原料によるEPDMを利用して、環境負荷を軽減する商品開発要求が高まっている。
また、本発明者らはジエン量が高いEPDM及び有機過酸化物を含有するゴム組成物を調製しこれを評価したところ、このようなゴム組成物から得られる硬化物(有機過酸化物による架橋後の硬化物)は耐熱老化性が悪い場合があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、環境負荷を軽減し、耐熱老化性に優れるゴム組成物を提供することを目的とする。
また、本発明はホースを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、エチレンの少なくとも一部がバイオマス由来のエチレンであり、かつ、ジエン量が8.0質量%以上であるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体と、カーボンブラックと、パラフィンオイルと、有機過酸化物とを含有するゴム組成物によれば所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0007】
[1] エチレンの少なくとも一部がバイオマス由来のエチレンであり、かつ、ジエン量が8.0質量%以上であるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体と、カーボンブラックと、パラフィンオイルと、有機過酸化物とを含有するゴム組成物。
[2] 上記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を構成するジエンが、エチリデンノルボルネンを含む、[1]に記載のゴム組成物。
[3] 上記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体の全エチレン量が、上記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体中の60質量%以下である、[1]又は[2]に記載のゴム組成物。
[4] 上記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を構成するエチレンが、全て、上記バイオマス由来のエチレンである、[1]~[3]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[5] ポリマー成分が上記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体のみである、[1]~[4]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[6] 上記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体100質量部に対して、
上記カーボンブラックの含有量が80~100質量部であり、
上記パラフィンオイルの含有量が30~40質量部であり、
上記有機過酸化物の含有量が1.0~4.0質量部である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[7] ホース用である、[1]~[6]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[8] [1]~[6]のいずれか1つに記載のゴム組成物を用いて形成されたホース。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、環境負荷を軽減し、耐熱老化性に優れるゴム組成物を提供することができる。
また、本発明によればホースを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明のホースの一例について、各層を切り欠いて表した、模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
本明細書において、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、本発明における「エチレンの少なくとも一部がバイオマス由来のエチレンであり、かつ、ジエン量が8.0質量%以上であるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体」を「特定EPDM」とも称する。
【0011】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、エチレンの少なくとも一部がバイオマス由来のエチレンであり、かつ、ジエン量が8.0質量%以上であるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体(特定EPDM)と、カーボンブラックと、パラフィンオイルと、有機過酸化物とを含有するゴム組成物である。
【0012】
本発明のゴム組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
一般的に、EPDMがジエン成分に由来して有する不飽和結合は、EPDMにおける主鎖骨格には存在せず、主鎖骨格以外の部分(側鎖)に存在するため、EPDMは、ある程度の耐熱性を保持することができる。その一方、EPDM中のジエン成分の量が増えると熱老化時の化学変化を生じる反応点(EPDM中の、ジエン成分に由来する、二重結合のような不飽和結合)が多くなるため、耐熱性が低下する。
しかしながら、本発明においては、EPDMを構成するエチレンの少なくとも一部がバイオマス由来である特定EPDMを含有することによって、特定EPDM中のジエン量が多いにもかかわらず、得られる硬化物は耐熱老化性に優れることが見出された。
以下、本発明のゴム組成物に含有される各成分について詳述する。
【0013】
[特定EPDM]
本発明のゴム組成物は、エチレンの少なくとも一部がバイオマス由来のエチレンであり、かつ、ジエン量が8.0質量%以上であるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体(特定EPDM)を含有する。
本発明のゴム組成物は、特定EPDMを含有することによって、環境負荷を軽減することができ、耐熱老化性に優れる。
特定EPDMは、エチレン(上記エチレンは少なくとも一部がバイオマス由来のエチレンを含む)に由来する構成単位、プロピレンに由来する構成単位、及び、ジエンに由来する構成単位を含む共重合体である。
特定EPDMは、上記エチレン、プロピレン、及び、エチリデンノルボルネンの三元共重合体であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0014】
[バイオマス由来のエチレン]
本発明において、特定EPDMを構成するエチレンのうち、少なくとも一部がバイオマス由来のエチレンである。
バイオマスは、再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものを指す。
バイオマス由来のエチレンとしては、例えば、サトウキビのような植物由来のバイオエタノールを原料として製造されたエチレンが挙げられる。
【0015】
(バイオマス由来のエチレンの含有量)
環境負荷をより軽減することができ、耐熱老化性により優れるという観点から、特定EPDMを構成する全エチレンのうちの50~100質量%がバイオマス由来のエチレンであることが好ましく、特定EPDMを構成するエチレンが、全て、バイオマス由来のエチレンであることがより好ましい。
【0016】
(バイオマス由来のエチレン以外のエチレン)
特定EPDMを構成するエチレンがバイオマス由来のエチレン以外のエチレンを含む場合、バイオマス由来のエチレン以外のエチレンは特に制限されない。例えば、石油由来のエチレンが挙げられる。
【0017】
(特定EPDM中の全エチレン量)
特定EPDMの全エチレン量(特定EPDMを構成するエチレン全量)は、環境負荷をより軽減することができ、耐熱老化性により優れるという観点から、特定EPDM中の60質量%以下であることが好ましく、40~50質量%がより好ましく、40~49質量%が更に好ましい。
なお、特定EPDMの上記全エチレン量は、特定EPDM中の、バイオマス由来のエチレンを少なくとも含む、全てのエチレン量を指す。
【0018】
[プロピレン]
特定EPDMを構成するプロピレンは特に制限されない。
上記プロピレンは、石油由来、バイオマス由来のいずれであってもよいが、石油由来であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
なお、特定EPDMのプロピレン量(特定EPDMを構成するプロピレンの量)は、特定EPDM中の、上記全エチレン量及び後述するジエン量の合計量(質量%)を、特定EPDM全体である100質量%から除いた範囲とできる。
【0019】
[ジエン]
特定EPDMを構成するジエンは特に制限されない。
上記ジエンは、耐熱老化性により優れるという観点から、非共役ジエン(例えば、エチリデンノルボルネン又はビニルノルボルネン)を含むことが好ましく、エチリデンノルボルネン(例えば5-エチリデン-2-ノルボルネン)を含むことがより好ましい。
上記ジエンは、石油由来、バイオマス由来のいずれであってもよいが、石油由来であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0020】
[ジエン量]
本発明において、特定EPDMのジエン量は、特定EPDM中の8.0質量%以上である。
本発明のゴム組成物において、特定EPDMのジエン量が特定EPDM中の8.0質量%以上であることによって、本発明のゴム組成物が補強材(例えば金属の補強材。補強材は補強層を形成することができる。以下同様)に対して使用される場合、本発明のゴム組成物と上記補強材との接着性を良好にすることができる。
その一方、EPDM中のジエン成分の量が増えると熱老化時の化学変化を生じる反応点が多くなるため、耐熱性が低下する。
しかしながら、本発明においては、エチレンの少なくとも一部がバイオマス由来である特定EPDMを含有することによって、特定EPDM中のジエン量が多い(特定EPDM中の8.0質量%以上)にもかかわらず、得られる硬化物は耐熱老化性に優れることが見出された。
特定EPDMのジエン量は、環境負荷をより軽減することができ、耐熱老化性により優れ、ゴム組成物に対して使用される補強材との接着性が優れるという観点から、特定EPDM中の9.0~19質量%であることが好ましく、9.0~18質量%がより好ましい。
【0021】
特定EPDMの製造方法は特に制限されない。例えば、少なくとも一部がバイオマス由来のエチレンであるエチレンと、プロピレンと、モノマー成分全量中の8.0質量%以上のジエンとを従来公知の方法で重合させて、特定EPDMを製造する方法が挙げられる。
【0022】
(特定EPDMのムーニー粘度)
特定EPDMの100℃でのムーニー粘度は、環境負荷をより軽減することができ、耐熱老化性により優れるという観点から、90以上であることが好ましく、95~110がより好ましい。
特定EPDMのムーニー粘度は、JIS K6300-1:2013に準じて、ロータの形状はL形、予熱時間は1分間、ロータの回転時間4分、試験温度は100℃で測定さすることができる。
【0023】
本発明のゴム組成物は、環境負荷をより軽減することができ、耐熱老化性により優れるという観点から、ポリマー成分が特定EPDMのみであることが好ましい。
なお、本発明のゴム組成物が特定EPDM以外のポリマーを更に含有する場合、特定EPDM以外のポリマーは特に制限されない。
【0024】
[カーボンブラック]
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック(CB)を含有する。
【0025】
(CBのよう素吸着量)
カーボンブラックは、耐熱老化性により優れるという観点から、よう素吸着量が15~60mg/gであるカーボンブラックを含有することが好ましく、よう素吸着量が15~50mg/gを含有することがより好ましい。
カーボンブラックのよう素吸着量は、JIS K6217-1:2008に準じて測定できる。
【0026】
(CBの窒素吸着比表面積)
カーボンブラックは、得られる硬化物の機械的物性及びゴム組成物の加工性(具体的には例えば均一分散性。加工性について以下同様。)が優れるという観点から、窒素吸着比表面積(NSA)が5~50m/gであるカーボンブラックを含有することが好ましく、NSAが20~40m/gであるカーボンブラックを含有することがより好ましい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2008に準じて測定できる。
【0027】
(CBのジブチルフタレート吸油量)
カーボンブラックは、得られる硬化物の機械的物性及びゴム組成物の加工性が優れるという観点から、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が30~150ml/100gであるカーボンブラックを含有することが好ましく、DBPが50~130mg/gであるカーボンブラックを含有することがより好ましい。
カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6217-4:2008に準じて、測定できる。
【0028】
(カーボンブラックの種類)
カーボンブラックは、得られる硬化物の機械的物性及びゴム組成物の加工性が優れるという観点から、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT及びMTカーボンブラックからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましく、FEF、GPF、SRF、FT及びMTカーボンブラックからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことがより好ましく、FEF及び/又はSRFカーボンブラックを含むことが更に好ましい。
【0029】
(カーボンブラックの含有量)
カーボンブラックの含有量は、耐熱老化性により優れ、得られる硬化物の機械的物性及びゴム組成物の加工性が優れるという観点から、特定EPDM100質量部に対して、60~100質量部であることが好ましく、70~90質量部がより好ましく、80~90質量部が更に好ましい。
【0030】
[パラフィンオイル]
本発明のゴム組成物は、パラフィンオイルを含有する。
本発明のゴム組成物はパラフィンオイルを含有することによって、得られる硬化物の機械的物性及びゴム組成物の加工性が優れる。
パラフィンオイルは特に制限されない。例えば、従来公知のパラフィンオイルが挙げられる。
【0031】
(パラフィンオイルの動粘度)
パラフィンオイルの40℃の条件下における動粘度(動粘度@40℃)は、耐熱老化性により優れ、得られる硬化物の機械的物性及びゴム組成物の加工性が優れるという観点から、50~1,000mm/sであることが好ましく、300~800mm/sであることがより好ましく、400~450mm/sであることが更に好ましい。
パラフィンオイルの動粘度は、JIS K 2283:2000に準じて測定することができる。
【0032】
(パラフィンオイルの含有量)
パラフィンオイルの含有量は、耐熱老化性により優れ、得られる硬化物の機械的物性及びゴム組成物の加工性が優れるという観点から、特定EPDM100質量部に対して、20~50質量部であることが好ましく、30~40質量部がより好ましく、37~40質量部が更に好ましい。
【0033】
[有機過酸化物]
本発明のゴム組成物は、有機過酸化物を含有する。
有機過酸化物は加硫剤(架橋剤)として機能することができる。
有機過酸化物は、ゴムの過酸化物架橋に使用できるものであれば特に制限されない。例えば、従来公知の有機過酸化物が挙げられる。具体的には例えば、ジクミルパーオキサイド、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロビル)ベンゼン、4,4′-ジ(t-ブチルパーオキシ)吉草酸n-ブチル、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが挙げられる。
なお、本明細書において有機過酸化物によるゴムの架橋を加硫ともいう。
【0034】
(有機過酸化物の含有量)
有機過酸化物の含有量は、耐熱老化性により優れるという観点から、特定EPDM100質量部に対して、1.0~4.0質量部であることが好ましく、2.0~3.0質量部がより好ましい。なお、上記の有機過酸化物の含有量は正味の有機過酸化物の含有量を指す。
【0035】
(添加剤)
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、加硫促進助剤(例えば、ステアリン酸)、共架橋剤、トリアジン系化合物、加硫促進剤、加硫遅延剤、老化防止剤などが挙げられる。
【0036】
(共架橋剤)
本発明のゴム組成物が更に共架橋剤を含有する場合、得られる硬化物の機械的特性が良好となる観点から好ましい。
共架橋剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ジアリルフタレート(DAP)、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、1,3-ブチレングルコールジメタクリレート(BD)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、トリアリルシアヌレート(TAC)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)、分子量1,000~5,000の1,2-ポリブタジエン(1,2PB)、P,P′-ジベンゾイルキノンジオキシム(DGM)、N,N′-m-フェニレンビスマレイミド、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート(GMA)、硫黄が挙げられる。
本発明のゴム組成物が更に共架橋剤を含有する場合、共架橋剤の含有量は、耐熱老化性により優れ、得られる硬化物の機械的特性が良好となるという観点から、特定EPDM100質量部に対して、1.0~10.0質量部であることが好ましい。
【0037】
(トリアジン系化合物)
本発明のゴム組成物が更にトリアジン系化合物を含有する場合、本発明のゴム組成物は補強材との接着性が良好となる観点から好ましい。
本発明のゴム組成物が更に含有することができるトリアジン系化合物は、トリアジン骨格を有する化合物である。トリアジン系化合物としては、例えば、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、6-アルキル-2,4-ジメルカプト-1,3,5-トリアジンのような、メルカプト基を有するトリアジン系化合物が挙げられる。
本発明のゴム組成物が更にトリアジン系化合物を含有する場合、トリアジン系化合物は、耐熱老化性により優れるという観点から、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジンを含むことが好ましい。
本発明のゴム組成物が更にトリアジン系化合物を含有する場合、トリアジン系化合物の含有量は、補強材との接着性に優れるという観点から、特定EPDM100質量部に対して、0.1~5.0質量部であることが好ましい。
【0038】
本発明のゴム組成物は、硫黄を含有しないものとすることができる。
【0039】
(ゴム組成物の製造方法)
本発明のゴム組成物はその製造方法について特に制限されない。例えば、上記必須成分と、必要に応じて使用することができる任意成分とを100~180℃の条件下で混合することによって本発明のゴム組成物を製造することができる。
【0040】
(ゴム組成物の加硫)
本発明のゴム組成物を加硫(有機過酸化物による加硫)する方法は特に制限されない。本発明のゴム組成物を、例えば、140~190℃の条件下において加硫することができる。加硫する方法としては具体的には例えば、プレス加硫、蒸気加硫、オーブン加硫(熱気加硫)又は温水加硫が挙げられる。本発明のゴム組成物を加硫することによって、硬化物を得ることができる。
【0041】
(用途)
本発明のゴム組成物は、例えば、ホースに適用することができる。
上記ホースとしては、例えば、パワーステアリング用のホースが挙げられる。
本発明のゴム組成物をホースの最外層に適用することが好ましい。
【0042】
[ホース]
本発明のホースは、本発明のゴム組成物を用いて形成されたホースである。
本発明のホースは、本発明のゴム組成物を用いて形成されること以外は特に制限されない。本発明のホースに使用されるゴム組成物は本発明のゴム組成物であれば特に制限されない。本発明のホースのいずれの部材を本発明のゴム組成物で形成するかは特に制限されない。
【0043】
(最外層)
本発明のゴム組成物から得られる硬化物は耐熱老化性に優れるという観点から、本発明のホースは、本発明のゴム組成物で形成された最外層を有することが好ましい。
最外層の厚みは例えば0.2~4mmとすることができる。
【0044】
本発明のホースは最外層以外に、更に、補強層、最内層及び中間ゴム層からなる群から選ばれる少なくとも1種を有することができる。最外層は1層又は複数の層であってもよい。最内層、補強層及び中間ゴム層も同様である。
本発明のホースは、例えば、最内層、補強層及び最外層をこの順番で有することができる。
【0045】
(最内層)
本発明のホースが有することができる最内層は特に制限されない。例えば、従来公知の最内層が挙げられる。最内層を形成するために使用される組成物は、例えば、ゴム組成物及び樹脂組成物のいずれであってもよい。
最内層の厚みは例えば0.2~4mmとすることができる。
【0046】
(補強層)
本発明のホースが有することができる補強層は特に限定されない。例えば、従来公知の補強層が挙げられる。
補強層を構成する補強材としては、例えば、金属の補強材、繊維補強材が挙げられる。
補強層の形態としては、例えば、スパイラル構造及び/又はブレード構造に編組されたものが挙げられる。
【0047】
本発明のホースの例について添付の図面を参照して説明する。本発明は添付の図面に制限されない。
図1は、本発明のホースの一例について、各層を切り欠いて表した、模式的な斜視図である。
図1において、ホース1は、最内層2を有し、最内層2の上に補強層3を有し、補強層3の上に最外層4を有する。最外層4を本発明のゴム組成物で形成することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0048】
本発明のホースはその製造方法について特に制限されない。例えば、マンドレル上に、最内層を形成するための組成物、補強層、及び最外層を形成するためのゴム組成物(例えば本発明のゴム組成物)をこの順に積層させて積層体とし、上記積層体をナイロン布などで覆い、上記ナイロン布などで覆われた積層体を140~190℃、30~180分の条件で、プレス加硫、蒸気加硫、オーブン加硫(熱気加硫)又は温水加硫することにより加硫して各層を接着させて本発明のホースを製造することができる。
【0049】
本発明のホースの用途としては、例えば、パワーステアリング用のホースが挙げられる。
【実施例0050】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0051】
<ゴム組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、各組成物を製造した。なお、第1表中の「その他の配合」の詳細を第3表に示す。
具体的には、まず、下記各表に示す成分のうち有機過酸化物を除く成分をバンバリーミキサー(1.5リットル)で5分間混合し、140℃に達したときに放出し、マスターバッチを得た。
次に、上記のとおり得られた各マスターバッチに有機過酸化物を加え、これらをオープンロールで混合し、ゴム組成物を製造した。
【0052】
<評価>
上記のとおり製造された各ゴム組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0053】
(加硫シートの作製)
上記のとおり得られた各ゴム組成物を153℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で45分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。
【0054】
(常態物性)
上記各加硫シートからJIS K6251に準拠したJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、初期試験片を得た。
上記各初期試験片を用いて、JIS K6251:2017に準じて、23℃±2℃、引張速度500mm/分の条件下で引張試験を行い、初期試験片の破断時伸び(EB)[%]を測定した。
本発明において、初期試験片の破断時伸び(EB)が、200%以上であれば、ゴム組成物から得られた硬化物の機械的特性が優れるものとする。上記初期試験片の破断時伸び(EB)が200%より大きい程、機械的特性がより優れる。
【0055】
(老化物性)
上記のとおり得た各初期試験片を150℃の条件下に72時間置く熱老化試験を行って、熱老化後の試験片を得た。
上記各熱老化後試験片を用いて、JIS K6251:2017に準じて、23℃±2℃、引張速度500mm/分の条件下で引張試験を行い、熱老化後試験片の破断時伸び(EB)[%]を測定した。
【0056】
(ΔEB)
ΔEB(%)を以下の式に従って算出した。
ΔEB(%)=(B-A)/A×100
A:初期試験片の破断時伸び(EB)[%]
B:熱老化後試験片の破断時伸び(EB)[%]
【0057】
(ΔEBの評価基準)
本発明において、上記のとおり算出したΔEBが-40%以上であった場合、ゴム組成物から得られる硬化物の耐熱老化性が優れると評価した。ΔEBが-40%より大きい程、耐熱老化性がより優れる。
一方、ΔEBが-40%未満であった場合、耐熱老化性が悪いと評価した。
【0058】
【表1】
【0059】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(特定EPDM)
・Keltan ECO6950C(商品名):ARLANXEO社製
上記のEPDMは、エチレンの全部がバイオマス由来のエチレンであり、かつ、ジエン量が8.0質量%以上である、エチレン-プロピレン-5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体である。
【0060】
(特定EPDM以外のEPDM)
・Keltan 6950C(CHINA)(商品名):ARLANXEO社製
・ESPRENE505(商品名):住友化学社製
上記のEPDMは、いずれも、ジエン量が8.0質量%以上である、エチレン-プロピレン-5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体であるが、上記のEPDMのエチレンはバイオマス由来のエチレンを含まない。
下記第2表に、各EPDMのムーニー粘度等を示す。
【表2】
なお、上記各EPDMのプロピレン量は、100質量%から、各EPDM中の、エチレン量及びジエン量の合計量(質量%)を除いた値である。
【0061】
・・カーボンブラック1(SRF):旭カーボン社製SRF級カーボンブラック。よう素吸着量15~25mg/g、NSA:25±5m/g、DBP吸油量55~79ml/100g。
・カーボンブラック2(FEF):日鉄カーボン(株)社製FEF級カーボンブラック。よう素吸着量39~46mg/g、DBP吸油量115~127ml/100g。
【0062】
・パラフィンオイル1:日本サン石油社製Sunpar2280。40℃の条件下における動粘度411mm/s。
・パラフィンオイル2(PW-90):商品名ダイアナプロセスオイルPW-90。出光興産社製。パラフィンオイル。40℃の条件下における動粘度91mm/s。
【0063】
・有機過酸化物:化薬アクゾ社製パーカドックス14-40。1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン。有機過酸化物濃度は40質量%
なお、第1表の「有機過酸化物」欄には、使用された有機過酸化物の正味の量を示す。
【0064】
(その他の配合)
下記第3表に、第1表のその他の配合の内容を示す。
【表3】

第3表に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
・ZnO:酸化亜鉛。正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・St:ステアリン酸。日本油脂社製ビーズステアリン酸
・TAIC:トリアリルイソシアヌレート。化薬アクゾ社製パーカリンク 301-70DPD
・トリアジン:2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン。三協化成製ZISNET F-OT
【0065】
第1表に示す結果から、特定EPDMを含有せず、代わりにバイオマス由来のエチレンによる繰り返し単位を有さないEPDMを含有する比較例1~5は耐熱老化性が悪かった。
【0066】
これに対して、本発明のゴム組成物は、環境負荷を軽減し、耐熱老化性が優れた。
また、本発明のゴム組成物によれば、これを用いて形成されるホースは、環境負荷を軽減し、耐熱老化性が優れる。
【符号の説明】
【0067】
1:ホース
2:最内層
3:補強層
4:最外層
図1