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特開2024-126288中綿、および、当該中綿を備えた衣類
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126288
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】中綿、および、当該中綿を備えた衣類
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/02 20060101AFI20240912BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240912BHJP
   A41D 31/08 20190101ALI20240912BHJP
【FI】
D04H1/02
A41D31/00 502L
A41D31/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034572
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】磯川 侑希
(72)【発明者】
【氏名】松下 淳一
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA17
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA28
4L047AB02
4L047BA09
4L047BA12
4L047BB06
4L047BB09
4L047BC07
4L047CB02
4L047CC01
4L047CC07
(57)【要約】
【課題】
難燃性が向上した中綿の提供と、難燃性に富む衣類(特に、アウトドア用衣類またはキャンプ用衣類)の提供を課題とする。
【解決手段】
本発明にかかる難燃繊維を構成繊維に含んだ中綿では、構成繊維同士をバインダによって接着すると共に、接着繊維によっても構成繊維同士を繊維接着することを特徴としている。そのため、本発明によって、難燃性に富むことに加え洗濯時など力がかかった際に中割れや毛羽立ちの発生が防止された、特に衣料用途で好適に使用可能な中綿を提供できる。そして、限界酸素指数(LOI値)が20よりも高い難燃繊維を構成繊維に含ませることによって、難燃性に富む中綿を提供できる。
そのため、当該中綿を備えることで、難燃性に富む衣類(特に、アウトドア用衣類またはキャンプ用衣類)を提供できる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成繊維と、前記構成繊維同士を接着しているバインダを含んでいる、中綿であって、前記構成繊維は、接着繊維とLOI値が20よりも高い難燃繊維とを含んでおり、前記接着繊維は、前記構成繊維同士を繊維接着している、中綿。
【請求項2】
無荷重時の密度が5854g/mより高く10864g/m未満である、請求項1に記載の中綿。
【請求項3】
0.2gf/cm荷重時の密度が6747g/mより高く11122g/m未満である、請求項1に記載の中綿。
【請求項4】
請求項1~3いずれかに記載の中綿を備えた、衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性に富む中綿、および、当該中綿を備えた衣類(特に、アウトドア用衣類またはキャンプ用衣類)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、衣類用途に使用される中綿や、クッションあるいは布団などの詰め物として使用される中綿として、従来から構成繊維同士が接着してなる中綿が使用されている。
具体例として、特開2007-125153(特許文献1)には、構成繊維に中空ポリエステル短繊維を含む中綿が開示されており、当該中空ポリエステル短繊維の繊度と中空率を調整すること、更に、セルロース系短繊維(綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート、レンチング社製リヨセル(登録商標)など)を配合することで、かさ高でやわらかいといった風合いの良さ、軽量保温性、吸放湿性に優れた中綿を提供できることが開示されている。そして、特許文献1には、バインダによって、および、ポリエチレンテレフタレートで構成された熱接着性複合短繊維を配合することによって、構成繊維同士を熱接着して洗濯耐久性に富む中綿を提供できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-125153
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、特にアウトドア趣味やキャンプ趣味の盛り上がりに伴い、衣類(特に、アウトドア用衣類またはキャンプ用衣類)に難燃性が求められている。つまり、アウトドア活動やキャンプ活動では、火起こしやキャンプファイヤなどを行うことがあるが、その際、衣類に火が触れたり火の粉が降りかかることがある。そのため、当該衣類は難燃性に富むことが求められる。
【0005】
本願出願人は検討の結果、衣類を構成する中綿の難燃性を向上することを通し、難燃性に富む衣類を提供できると考えた。しかしながら、特許文献1が開示するような従来技術にかかる中綿は、難燃性の向上に対する対策が練られたものでは無かった。
【0006】
本発明では、難燃性が向上した中綿の提供と、難燃性に富む衣類(特に、アウトドア用衣類またはキャンプ用衣類)の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
「(請求項1)構成繊維と、前記構成繊維同士を接着しているバインダを含んでいる、中綿であって、前記構成繊維は、接着繊維とLOI値が20よりも高い難燃繊維とを含んでおり、前記接着繊維は、前記構成繊維同士を繊維接着している、中綿。
(請求項2)無荷重時の密度が5854g/mより高く10864g/m未満である、請求項1に記載の中綿。
(請求項3)0.2gf/cm荷重時の密度が6747g/mより高く11122g/m未満である、請求項1に記載の中綿。
(請求項4)請求項1~3いずれかに記載の中綿を備えた、衣類。」
である。
【発明の効果】
【0008】
まず、本願出願人は次の知見を見出した。
構成繊維同士をバインダのみによって接着してなる中綿は、洗濯時など力がかかった際に毛羽立ちの発生が防止されており、衣類の布地と擦れやすい表面の剛性に富むものの、中綿における厚さ方向の中央部分に剥離(以降、中割れと称することがある)が生じ易いことを見出した。
一方、構成繊維同士を接着繊維のみによって繊維接着してなる中綿は、洗濯時など力がかかった際に中割れの発生が防止されているものの、衣類の布地と擦れ毛羽立ちが発生し易いものであり表面の剛性に劣る傾向があることを見出した。
このような、洗濯時など力がかかった際に中割れや毛羽立ちの発生し易い中綿は、形状安定性に劣る中綿であり、特に衣料用途で好適に使用できない中綿である。
【0009】
それに対し、本発明にかかる難燃繊維を構成繊維に含んだ中綿では、構成繊維同士をバインダによって接着すると共に、接着繊維によっても構成繊維同士を繊維接着することを特徴としている。そのため、本発明によって、難燃性に富むことに加え洗濯時など力がかかった際に中割れや毛羽立ちの発生が防止された、特に衣料用途で好適に使用可能な中綿を提供できる。
【0010】
そして、本願出願人は、JIS K7201-1:2021「プラスチック-酸素指数による燃焼性の試験方法-第1部:一般要求事項」およびJIS K7201-2:2021「プラスチック-酸素指数による燃焼性の試験方法-第2部:室温における試験」によって求められる、限界酸素指数(LOI値)が20よりも高い難燃繊維を構成繊維に含ませることによって、難燃性に富む中綿(特に、LOI値が26以上の中綿)を提供できることを見出した。
【0011】
なお、特許文献1には中綿の構成繊維のうち、バインダに加え熱接着性複合短繊維で接着されている繊維として、一般的なポリエステル短繊維やセルロース系短繊維を採用することが開示されている。しかし、これらの構成繊維は、特開2017-185956(0024)やWO2018-123290(0022)にも開示されているように、いずれもLOI値は20以下であって、本発明が規定する難燃繊維ではない。
【0012】
以上のように、本発明にかかる中綿は難燃性に富む。
【0013】
更に、本願出願人は、難燃繊維を構成繊維に含んだ中綿の難燃性と風合いは、その密度と関係を有していることを見出した。具体的には本発明にかかる中綿における無荷重時の密度を5854g/mより高く調整することによって、LOI値が26以上のより難燃性に富んだ中綿を提供できることを見出した。加えて、当該密度を10864g/m未満となるように調整することによって、風合いに優れた中綿を提供できることを見出した。
【0014】
なお、本願出願人は、衣類内に中綿が設けられ衣類の生地に挟まれ荷重をかけられた状態を想定した中綿の密度、つまり、荷重を受けた状態の中綿の密度(具体例として、0.2gf/cm荷重時の密度)が6747g/mより高くなる中綿は、LOI値が26以上のより難燃性に富むものであることを見出した。加えて、当該密度が11122g/m未満の中綿は、風合いに優れるものであることを見出した。
【0015】
そのため、本発明にかかる中綿は難燃性と風合いに富む。
【0016】
以上のように、本発明にかかる中綿は難燃性に富んでおり、衣料用途で好適に使用可能な中綿である。そのため、当該中綿を備えることで、難燃性に富む衣類(特に、アウトドア用衣類またはキャンプ用衣類)を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載や規定のない限り、常圧のもと温度20℃湿度65%RH条件下で測定を行う。そして、本発明で説明する各種測定結果は特に記載や規定のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出する。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とする。また、本発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0018】
本発明にかかる中綿は、その構成繊維として接着繊維とLOI値が20よりも高い難燃繊維とを含んでいる。本発明にかかる難燃繊維は、JIS K7201-1:2021「プラスチック-酸素指数による燃焼性の試験方法-第1部:一般要求事項」およびJIS K7201-2:2021「プラスチック-酸素指数による燃焼性の試験方法-第2部:室温における試験」によって求められる、限界酸素指数(LOI値)が20よりも高い繊維であって、主として中綿の骨格を成すと共に中綿の難燃性を向上する役割を担う。
【0019】
LOI値が高い難燃繊維を含んでいるほど、難燃性に富む中綿を提供できる傾向がある。そのため、難燃繊維のLOI値は21以上であるのが好ましく、LOI値が21より高いのが好ましく、LOI値が22以上であるのが好ましく、LOI値が22より高いのが好ましく、LOI値が23以上であるのが好ましく、LOI値が23より高いのが好ましく、LOI値が24以上であるのが好ましく、LOI値が24より高いのが好ましく、LOI値が25以上であるのが好ましく、LOI値が25より高いのが好ましく、LOI値が26以上であるのが好ましく、LOI値が26より高いのが好ましく、LOI値が27以上であるのが好ましく、LOI値が27より高いのが好ましく、LOI値が28以上であるのが好ましく、LOI値が28より高いのが好ましく、LOI値が29以上であるのが好ましく、LOI値が29より高いのが好ましく、LOI値が30以上であるのが好ましく、LOI値が30より高いのが好ましく、LOI値が31以上であるのが好ましく、LOI値が31より高いのが好ましく、LOI値が32以上であるのが好ましい。
【0020】
なお、このような難燃性繊維として、株式会社カネカ製のモダクリル繊維であるプロテックスM(LOI値:32、登録商標)、プロテックスS(LOI値:32、登録商標)、ダイワボウレーヨン製のレーヨン繊維であるDFG(LOI値:28以上、登録商標)、東レ製のポリフェニレンサルファイド繊維であるトルコン(LOI値:34、登録商標)、帝人製のメタ系アラミド繊維であるコーネックス(LOI値:27~38、登録商標)などを採用できる。
【0021】
難燃繊維の、繊度や繊維長あるいは繊維断面形状は適宜調整できる。難燃繊維の繊度は特に限定するものではないが、乾式法により繊維ウェブを形成する場合には引張強度に優れる中綿を実現できるように、1dtex以上であるのが好ましく、1.5dtex以上であるのがより好ましく、2dtex以上であるのがより好ましい。他方、均一な地合に優れる中綿を実現できるように、100dtex以下であるのが好ましく、50dtex以下であるのがより好ましく、30dtex以下であるのがより好ましく、10dtex以下であるのが更に好ましい。
【0022】
また、難燃繊維の繊維長も特に限定するものではないが、引張強度に優れる中綿を実現できるように、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましい。他方、繊維長が110mmを超えると、乾式法でのカード通過性が悪くなり地合の均一性が劣るおそれがあることから、110mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましい。このように、特定の繊維長を有するようカットされ調製されたステープル繊維を採用できる。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定できる。
【0023】
難燃繊維の繊維断面形状は特に限定するものではないが、略円形や楕円形以外にも異形断面を有していても良い。なお、異形断面として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などを挙げることができる。なお、難燃繊維は中実繊維でも中空繊維でも良いが、効率良く難燃性に優れる中綿を調製できるよう中実の難燃繊維を採用するのが好ましい。
【0024】
本発明にかかる接着繊維は、中綿の構成繊維同士を繊維接着する役割を担う。中綿の構成繊維同士が接着繊維によって繊維接着されていることによって、バインダの使用量を増やすことなく構成繊維同士が接着してなる中綿を提供できる。その結果、本構成を有する中綿は、難燃性の低下を招く恐れのあるバインダの含有量を少なくでき、難燃性の低下を防止して難燃性に富む。
【0025】
また、バインダの含有量を少なくした場合であっても構成繊維同士を効果的に接着できることで、中割れの発生が防止されていることに加え、洗濯時や使用時に中綿から構成繊維の抜けが生じることが防止されている。
【0026】
接着繊維の種類は特に限定するものではなく、一部融解型の接着繊維であっても、全融解型の接着繊維であってもよい。一部融解型の接着繊維を採用することで、構成繊維同士を繊維接着している接着繊維自体は全融解することなく繊維形状を保つことで、効果的に中綿の骨格を成すことができる。一部融解型の接着繊維として、例えば、芯部に高融点樹脂を備え鞘部に低融点樹脂を備えた芯鞘型接着繊維や、高融点樹脂と低融点樹脂とからなるサイドバイサイド型接着繊維などを採用できる。なお、高融点樹脂と低融点樹脂の組み合わせは、適宜選択できる。
【0027】
また、繊維を構成する樹脂が当該低融点樹脂のみからなる、全融解型の接着繊維であることができる。
【0028】
接着繊維を構成する樹脂は適宜選択でき、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をニトリル基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)などを挙げることができ、公知の有機樹脂一種類又は複数種類から構成できる。
【0029】
なお、これらの有機樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また有機樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0030】
特に、接着繊維を構成する低融点樹脂が変性ポリエチレンテレフタレートを含んでいる(好ましくは、低融点樹脂が変性ポリエチレンテレフタレートのみであると)と、難燃繊維など他の構成繊維との繊維接着が強固になる傾向があり好ましい。
【0031】
中綿の製造に際し採用する接着繊維の繊度は特に限定するものではないが、乾式法により繊維ウェブを形成する場合には引張強度に優れる中綿を実現できるように、1dtex以上であるのが好ましく、1.5dtex以上であるのがより好ましく、2dtex以上であるのがより好ましい。他方、均一な地合に優れる中綿を実現できるように、100dtex以下であるのが好ましく、50dtex以下であるのがより好ましく、30dtex以下であるのがより好ましく、10dtex以下であるのが更に好ましい。
【0032】
また、接着繊維の繊維長も特に限定するものではないが、引張強度に優れる中綿を実現できるように、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましい。他方、繊維長が110mmを超えると、乾式法でのカード通過性が悪くなり地合の均一性が劣るおそれがあることから、110mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましい。このように、特定の繊維長を有するようカットされ調製されたステープル繊維を採用できる。
【0033】
接着繊維の繊維断面形状は特に限定するものではないが、略円形や楕円形以外にも異形断面を有していても良い。なお、異形断面として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などを挙げることができる。なお、接着繊維は中実繊維でも中空繊維でも良い。
【0034】
また、接着繊維は捲縮した繊維であってもよく、かさ高性に優れる中綿を提供でき好ましい。このような捲縮した繊維として、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現した繊維やクリンプを有する繊維などを使用できる。
【0035】
本発明にかかる中綿は、構成繊維として難燃繊維と接着繊維以外の繊維(以降、別繊維と称する)を含んでいてもよい。なお、別繊維は、LOI値が難燃繊維よりも低く融点を有していない樹脂で構成された繊維、あるいは、接着繊維の低融点樹脂よりも高い融点を有する樹脂で構成された繊維である。
【0036】
別繊維を構成する樹脂は適宜選択でき、公知の有機樹脂一種類又は複数種類から構成できる。なお、当該有機樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また有機樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0037】
別繊維の繊度は特に限定するものではないが、乾式法により繊維ウェブを形成する場合には引張強度に優れる中綿を実現できるように、1dtex以上であるのが好ましく、1.5dtex以上であるのがより好ましく、2dtex以上であるのがより好ましい。他方、均一な地合に優れる中綿を実現できるように、100dtex以下であるのが好ましく、50dtex以下であるのがより好ましく、30dtex以下であるのがより好ましく、10dtex以下であるのが更に好ましい。
【0038】
また、別繊維の繊維長も特に限定するものではないが、引張強度に優れる中綿を実現できるように、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましい。他方、繊維長が110mmを超えると、乾式法でのカード通過性が悪くなり地合の均一性が劣るおそれがあることから、110mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましい。このように、特定の繊維長を有するようカットされ調製されたステープル繊維を採用できる。
【0039】
別繊維の繊維断面形状は特に限定するものではないが、略円形や楕円形以外にも異形断面を有していても良い。なお、異形断面として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などを挙げることができる。
【0040】
また、別繊維は捲縮した繊維であってもよく、かさ高性に優れる中綿を提供でき好ましい。このような捲縮した繊維として、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現した繊維やクリンプを有する繊維などを使用できる。
【0041】
また、本発明にかかる中綿はその構成繊維に、潜在捲縮繊維の捲縮が発現した繊維を含んでいてもよく、工程通過性のため適度な捲縮が付与されている一般的なステープル繊維よりも捲縮数が多くなるよう特別に捲縮が付与された捲縮繊維を含んでいても良い。
また、本発明にかかる中綿は構成繊維に、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、界面活性剤、加熱を受け発泡する粒子、無機粒子、酸化防止剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0042】
中綿の構成繊維の総質量に占める、難燃繊維の質量百分率と接着繊維の質量百分率は適宜調整できる。例えば、難燃繊維の質量百分率は5~95質量%であることができ、10~90質量%であることができ、20~80質量%であることができ、30~70質量%であることができ、40~60質量%であることができる。一方、接着繊維の質量百分率は5~95質量%であることができ、10~90質量%であることができ、20~80質量%であることができ、30~70質量%であることができ、40~60質量%であることができる。なお、中綿の構成繊維が難燃繊維と接着繊維のみである場合、難燃繊維の質量百分率と接着繊維の質量百分率を足すと、100質量%となる。
【0043】
また、中綿が構成繊維に別繊維を含んでいる場合、中綿の構成繊維に含まれる別繊維の質量百分率は5~95質量%であることができ、10~90質量%であることができ、20~80質量%であることができ、30~70質量%であることができ、40~60質量%であることができる。なお、中綿が構成繊維に別繊維を含んでいる場合、難燃繊維の質量百分率と接着繊維の質量百分率ならびに別繊維の質量百分率を足すと、100質量%となる。
【0044】
中綿は、構成繊維と当該構成繊維同士を接着しているバインダを含んでいるのであれば、その態様は適宜調整できる。例えば、粒状の形状を有する中綿であっても、繊維シートなど平板状の形状を有する中綿であってもよい。
【0045】
繊維シートなど平板状の形状を有する中綿として、例えば、不織布や織物あるいは編物などの布帛を備える中綿、あるいは、当該布帛のみで構成された中綿であることができる。特に、不織布を備えた中綿(好ましくは、不織布のみで構成された中綿)であると、通気性ならびに柔軟性やクッション性に富む中綿を実現でき好ましい。
【0046】
繊維シートは、例えば、構成繊維をカード装置やエアレイ装置などへ供することで繊維を絡み合わせる乾式法、構成繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)などを用いることで紡糸され吐出され捕集される前の繊維へカットファイバー(繊維長:110mm以下)を混合すると共に混合し合った繊維群を捕集する方法などによって調製できる。
【0047】
更に、構成繊維を絡合および/または一体化させることができる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどして、接着繊維によって構成繊維同士を繊維接着して一体化させる方法などを挙げることができる。
【0048】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射し加熱する方法などを用いることができる。
本発明に係る中綿はバインダを備えており、当該バインダは中綿の構成繊維同士を接着する役割を担う。中綿の構成繊維がバインダにより接着されていることによって、洗濯時など力がかかった際に毛羽立ちの発生が防止されており、衣類の布地と擦れやすい表面が剛性に富む中綿を提供できる。
【0049】
バインダの種類は適宜選択でき、上述した別繊維を構成可能であるとして記載した樹脂などを採用できるが、風合いと耐久性を適宜調整できる観点からアクリル系樹脂を採用するのが好ましい。なお、バインダは、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、界面活性剤、加熱を受け発泡する粒子、無機粒子、酸化防止剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0050】
中綿に含まれているバインダの存在態様は適宜調整でき、粒子状や不定形状あるいは被膜状の形状を有しており、主として中綿の一方の主面または両主面に存在している態様、中綿全体に存在している態様、中綿の一方の主面からもう一方の主面に向かい漸増して存在している態様であることができる。
【0051】
効率良く中綿の構成繊維同士を接着できるように、バインダが主として中綿の一方の主面または両主面に存在している態様であるのが好ましい。このような態様の中綿は、中綿を調製するため使用する繊維シートの、少なくとも一方の主面へバインダをスプレー付与することで調製できる。
【0052】
中綿が含んでいるバインダの質量は適宜調整できる。例えば、0.5~200g/mであることができ、5~100g/mであることができ、10~50g/mであることができる。
【0053】
本発明にかかる難燃繊維を構成繊維に含んだ中綿では、構成繊維同士をバインダによって接着していると共に、接着繊維によっても構成繊維同士が繊維接着していることを特徴としている。そのため、本発明によって、難燃性に富むことに加え洗濯時など力がかかった際に中割れや毛羽立ちの発生が防止された、特に衣料用途で好適に使用可能な中綿を提供できる。
【0054】
中綿の目付は、例えば、50~500g/mであることができ、80~300g/mであることができ、100~250g/mであることができる。ここでいう目付とは、測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1mあたりの質量をいう。
【0055】
中綿の厚みは適宜選択するが、以下の厚みを有することができる。
無荷重時の厚みは、デジタルノギスを用いて、無荷重時の中綿における両主面間の距離を測定することで求められる。厚みは1~50mmであることができ、3~40mmであることができ、5~30mmであることができる。
【0056】
また、後述する0.2gf/cm荷重時の密度を求めるため測定する、0.2gf/cm荷重時の厚みは、JIS L1913:2010「一般不織布試験法(6.1厚さ(ISO法))」に記載の測定器(厚みによってB法あるいはC法いずれかを採用する)を用いて求められる。厚みは1~50mmであることができ、3~40mmであることができ、5~30mmであることができる。
【0057】
本願出願人は、難燃繊維を構成繊維に含んだ中綿の難燃性と風合いは、その密度と関係を有していることを見出した。具体的には本発明にかかる中綿における無荷重時の密度を5854g/mより高く調整することによって、LOI値が26以上のより難燃性に富んだ中綿を提供できることを見出した。加えて、当該密度を10864g/m未満となるように調整することによって、風合いに優れた中綿を提供できることを見出した。
【0058】
そのため、より難燃性と風合いに優れる中綿を提供できるよう、当該密度は5900g/m以上であるのが好ましく、6000g/m以上であるのが好ましく、6100g/m以上であるのが好ましく、6200g/m以上であるのが好ましく、6209g/m以上であるのが好ましい。一方、上限値は10500g/m以下であるのが好ましく、10000g/m以下であるのが好ましく、9500g/m以下であるのが好ましく、9000g/m以下であるのが好ましく、8500g/m以下であるのが好ましく、8161g/m以下であるのが好ましく、8000g/m以下であるのが好ましく、7800g/m以下であるのが好ましく、7600g/m以下であるのが好ましく、7575g/m以下であるのが好ましい。
【0059】
なお、密度(単位:g/m)は、測定された目付(単位:g/m)を厚み(単位:m)で割り算出できる。
【0060】
また、本願出願人は、衣類内に中綿が設けられ衣類の生地に挟まれ荷重をかけられた状態を想定した中綿の密度、つまり、荷重を受けた状態の中綿の密度(具体例として、0.2gf/cm荷重時の密度)が6747g/mより高くなる中綿は、LOI値が26以上のより難燃性に富むものであることを見出した。加えて、当該密度が11122g/m未満の中綿は、風合いに優れるものであることを見出した。
【0061】
そのため、より難燃性と風合いに優れる中綿を提供できるよう、当該密度は6800g/m以上であるのが好ましく、7000g/m以上であるのが好ましく、7200g/m以上であるのが好ましく、7400g/m以上であるのが好ましく、7461g/m以上であるのが好ましい。一方、上限値は11100g/m以下であるのが好ましく、10994g/m以下であるのが好ましく、10700g/m以下であるのが好ましく、10500g/m以下であるのが好ましく、10300g/m以下であるのが好ましく、10100g/m以下であるのが好ましく、10000g/m以下であるのが好ましく、9900g/m以下であるのが好ましく、9804g/m以下であるのが好ましい。
【0062】
本発明では、より難燃性に富む中綿であるか否かの基準として、中綿のLOI値が26以上であるか否かを判断基準としている。当該LOI値を判断基準とした理由としては、特開2021-36037(0284)や特開2020-139254(0023)ならびに特開2022-45049(0044)などに開示されている通り、LOI値が26以上の繊維シートは難燃性に富むという公知の知見に基づく。
【0063】
なお、繊維シートのLOI値は、繊維シートをJIS L1091:1999「繊維製品の燃焼性試験方法」E法(酸素指数法試験)のE-2号を用いた方法へ供し、測定することによって求めることができる。
【0064】
以上のように、本発明にかかる中綿は難燃性と風合いに富む。そのため、当該中綿を備えることで、難燃性に富む衣類(特に、アウトドア用衣類あるいはキャンプ用衣類)を提供できる。
【0065】
次に、本発明にかかる中綿の製造方法について説明する。なお、上述にて説明した項目と構成を同じくする点については説明を省略する。本発明にかかる中綿の製造方法は適宜選択するが、一例として、
工程1.難燃繊維と接着繊維が混綿してなる繊維ウェブ、あるいは、難燃繊維と接着繊維さらに別繊維が混綿してなる繊維ウェブを用意する工程、
工程2.バインダを溶媒に溶かしたバインダ溶液、あるいは、バインダを分散媒に分散させたバインダ分散液である、バインダ液を用意する工程、
工程3.繊維ウェブの少なくとも一方の主面へ、バインダ液を付与する工程、
工程4.バインダ液を付与した繊維ウェブを加熱し放冷することで、繊維ウェブからバインダ液に含まれる溶媒あるいは分散媒を除去するのに併せ、接着繊維によって構成繊維同士を繊維接着すると共にバインダによって構成繊維同士を接着する工程、
を備える、中綿の製造方法であることができる。
【0066】
工程1について説明する。
繊維ウェブを調製するため混綿する各繊維の質量百分率は、調製しようとする中綿の構成繊維の質量百分率を実現できるよう調整する。一例として、難燃繊維と接着繊維を等質量となるよう混綿してなる繊維ウェブを用いることで、構成繊維に等質量の難燃繊維と接着繊維を含んだ中綿を調製できる。
構成繊維を混綿して繊維ウェブを調製する方法は適宜選択できるが、カード機へ供した後にニードルパンチ処理や水流絡合処理などの絡合手段へ供する方法を採用できる。
【0067】
工程2について説明する。
溶媒ならびに分散媒の種類は適宜選択するが、繊維ウェブの構成繊維を溶解しないなど繊維ウェブの組成を変化させないあるいは変化させ難い、溶媒あるいは分散媒を採用するのが望ましい。このような溶媒あるいは分散媒として、水を使用できる。
【0068】
バインダ液に含まれるバインダの割合(固形分濃度)や、バインダ液の粘度は適宜調整できる。また、バインダ液に前述した添加剤を混合してもよい。
【0069】
工程3について説明する。
繊維ウェブの少なくとも一方の主面へ、バインダ液を付与する方法は適宜選択できるが、スプレーを用いて付与する方法、含浸する方法、スキージ―やローラーなどを用いて塗布する方法などを用いることができる。また、繊維ウェブへ付与するバインダ液の量は、中綿に含まれるバインダの質量が望むものになるよう、適宜調整する。
【0070】
工程4について説明する。
繊維ウェブを加熱する方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して加熱する方法などを用いることができる。
加熱温度は、バインダ液に含まれる溶媒や分散媒を除去できると共に、接着繊維における繊維接着に関与する樹脂、および、バインダによって構成繊維同士の繊維接着が成されるよう適宜調整する。このとき、繊維ウェブの他の構成成分(難燃繊維や別繊維、接着繊維における接着に関与しない樹脂など)を融解させないなど、繊維ウェブの構造を変化させ難い温度となるように調整する。
【0071】
なお、本加熱工程において両主面間に圧力を作用させるなどして、厚みを調整してもよい。そして、加熱した後の繊維ウェブを放冷する方法は適宜調整するが、室温雰囲気下で放冷する方法、冷蔵庫へ供する方法などを採用できる。
【0072】
また、
工程1.難燃繊維と接着繊維が混綿してなる繊維ウェブ、あるいは、難燃繊維と接着繊維さらに別繊維が混綿してなる繊維ウェブを用意する工程、
工程2.繊維ウェブを加熱し放冷することで、接着繊維によって構成繊維同士を繊維接着する工程、
工程3.バインダを溶媒に溶かしたバインダ溶液、あるいは、バインダを分散媒に分散させたバインダ分散液である、バインダ液を用意する工程、
工程4.繊維ウェブの少なくとも一方の主面へ、バインダ液を付与する工程、
工程5.バインダ液を付与した繊維ウェブを加熱し放冷することで、繊維ウェブからバインダ液に含まれる溶媒あるいは分散媒を除去するのに併せ、バインダによっても構成繊維同士を接着する工程、
を備える、中綿の製造方法であることができる。
【0073】
あるいは、
工程1.難燃繊維と接着繊維が混綿してなる繊維ウェブ、あるいは、難燃繊維と接着繊維さらに別繊維が混綿してなる繊維ウェブを用意する工程、
工程2.バインダを溶媒に溶かしたバインダ溶液、あるいは、バインダを分散媒に分散させたバインダ分散液である、バインダ液を用意する工程、
工程3.繊維ウェブの少なくとも一方の主面へ、バインダ液を付与する工程、
工程4.バインダ液を付与した繊維ウェブを加熱し放冷することで、繊維ウェブからバインダ液に含まれる溶媒あるいは分散媒を除去することで、バインダによって構成繊維同士を接着する工程、
工程5.繊維ウェブを加熱し放冷することで、接着繊維によっても構成繊維同士を繊維接着する工程、
を備える、中綿の製造方法であることができる。
【0074】
以上のようにして調製した中綿に対し、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層する工程、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程などの、各種二次工程を備えていてもよい。
また、リライアントプレス処理などの、表面を平滑とするための加圧処理工程を備えていてもよい。
【0075】
以上のようにして調製した中綿は、難燃性に富んでおり、布団綿やクッション綿あるいはホビー用途に用いる綿などの用途に使用できるものであり、特に、衣料用途で好適に使用可能な中綿である。そのため、例えば布地の間に当該中綿を挟み込んでなる服飾基材を用いることで、難燃性に富む衣類(特に、アウトドア用衣類またはキャンプ用衣類)を提供できる。具体例として、コート、ジャケット、ベスト、パンツなどの衣類を提供できる。
【実施例0076】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0077】
(使用した繊維)
難燃繊維:モダクリル繊維(プロテックス(登録商標)M、株式会社カネカ、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm、LOI値:32、中実のステープル繊維)
接着繊維:芯部が融点260℃のポリエチレンテレフタレートであり、鞘部が融点110℃の変性ポリエチレンテレフタレートである芯鞘型複合接着繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm、LOI値:20以下、中実のステープル繊維)
別繊維:融点260℃のポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm、LOI値:20以下、中実のステープル繊維)
【0078】
(使用したバインダ液)
アクリル系樹脂を水に分散させて調製したバインダ液(アクリル系樹脂の固形分濃度:16質量%)
【0079】
(比較例1)
難燃繊維50質量%と接着繊維30質量%および別繊維20質量%とを混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製した。
次いで、温度170℃に設定した熱風ドライヤーへ供し、接着繊維の鞘成分を融解させた。
その後、放冷することによって、構成繊維同士が接着繊維のみによって接着してなる不織布を調製した。以上のようにして調製した不織布を、中綿とした。
【0080】
(比較例2)
難燃繊維50質量%と別繊維50質量%とを混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製した。
次いで、スプレー装置を用いて、バインダ液を繊維ウェブの両主面へ付与した。その後、温度170℃に設定した熱風ドライヤーへ供し、バインダ液に含まれる分散媒を除去することに併せ、バインダによって構成繊維同士を接着させた。
以上のようにして、構成繊維同士がバインダのみによって接着してなる不織布(バインダ量:8g/m)を調製した。このようにして調製した不織布を、中綿とした。
【0081】
(比較例3)
バインダ液の付与量が多くなるよう調節したこと以外は比較例2と同様にして、構成繊維同士がバインダのみによって接着してなる不織布(バインダ量:12g/m)を調製した。このようにして調製した不織布を、中綿とした。
【0082】
(比較例4)
難燃繊維50質量%と別繊維50質量%とを混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製した。そして、繊維ウェブの一方の主面からもう一方の主面へ向かいニードルパンチ処理を施すことで、ニードルパンチ不織布を調製した。
繊維ウェブの代わりに、このようにして調製したニードルパンチ不織布を用いたこと以外は、比較例2と同様にして、構成繊維同士がバインダのみによって接着してなる不織布を調製した。このようにして調製した不織布を、中綿とした。
【0083】
(比較例5)
難燃繊維50質量%と別繊維50質量%とを混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製した。そして、繊維ウェブの一方の主面からもう一方の主面へ向かいニードルパンチ処理を施した後に、当該繊維ウェブのもう一方の主面から一方の主面へ向かいニードルパンチ処理を施すことで、ニードルパンチ不織布を調製した。
繊維ウェブの代わりに、このようにして調製したニードルパンチ不織布を用いたこと以外は、比較例2と同様にして、構成繊維同士がバインダのみによって接着してなる不織布を調製した。このようにして調製した不織布を、中綿とした。
【0084】
(実施例1)
難燃繊維50質量%と接着繊維10質量%および別繊維40質量%とを混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製した。
このようにして調製した繊維ウェブを用いたこと以外は、比較例2と同様にバインダを付与し、熱風ドライヤーで処理をして、バインダ液に含まれる分散媒を除去することに併せ、融解した接着繊維の鞘成分とバインダによって、構成繊維同士を接着させた。
以上のようにして、構成繊維同士が接着繊維およびバインダによって接着してなる不織布を調製した。このようにして調製した不織布を、中綿とした。
【0085】
調製した各中綿(不織布)の諸構成と、物性を表1にまとめた。なお、物性の評価は以下の通り行った。
【0086】
(中割れの評価方法)
表地および裏地としてポリエステルタフタを用意した。そして、表地及び裏地の間に中綿を挟み周囲を縫い合わせた試料を作成した。そして、作成した試料を洗濯及び乾燥し、この操作を3回繰り返した。その後、試料の表地及び裏地を外して中綿単体を取り出した。
このようにして取り出した中綿について、中綿における厚さ方向の中央部分に剥離が生じているか否かを、目視で確認した。確認の結果、中央部分に剥離が生じていない中綿を「○」と評価した。それに対し、中央部分に剥離が生じていた中綿を「×」と評価した。
評価結果は表中の「中割れ」欄に記載した。
【0087】
(洗濯後の外観変化の評価方法)
上述した(中割れの評価方法)を行った後の中綿について、その主面に毛羽立ちが発生しているか否かを、目視で確認した。確認の結果、少なくともバインダ液を付与した側の主面に毛羽立ちが生じていない中綿を「○」と評価した。それに対し、両主面に毛羽立ちが生じていた中綿を「×」と評価した。
評価結果は表中の「毛羽立ち」欄に記載した。
【0088】
【表1】
【0089】
(比較例6および比較例9~10)
難燃繊維および別繊維の混綿割合を表2に記載の割合に変更し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製したこと以外は、比較例2と同様にして、構成繊維同士がバインダのみによって接着してなる不織布を調製した。このようにして調製した不織布を、中綿とした。
【0090】
(比較例7)
熱風ドライヤーへ供した後の、バインダ液が付与された不織布をロール装置へ供してから放冷することで、厚みを潰したこと以外は、比較例6および比較例9~10と同様にして、構成繊維同士がバインダのみによって接着してなる不織布を調製した。このようにして調製した不織布を、中綿とした。
【0091】
(比較例8)
難燃繊維と接着繊維および別繊維の混綿割合を表2に記載の割合に変更し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製したこと以外は、比較例1と同様にして、構成繊維同士が接着繊維のみによって接着してなる不織布を各々調製した。このようにして調製した不織布を、中綿とした。
【0092】
(実施例2~7)
難燃繊維と接着繊維および別繊維の混綿割合を表2に記載の割合に変更し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製した。
このようにして調製した繊維ウェブを用いたこと以外は、比較例2と同様にバインダを付与し、熱風ドライヤーで処理をして、バインダ液に含まれる分散媒を除去することに併せ、融解した接着繊維の鞘成分とバインダによって、構成繊維同士を接着させた。
以上のようにして、構成繊維同士が接着繊維およびバインダによって接着してなる不織布を調製した。このようにして調製した不織布を、中綿とした。
【0093】
調製した各中綿(不織布)の諸構成と、物性を表2にまとめた。
【0094】
【表2】
【0095】
以上の結果から、本発明にかかる中綿は構成繊維に難燃繊維を含んでいるため難燃性が向上している中綿であるが、加えて、洗濯時など力がかかった際に毛羽立ちの発生と中割れの発生が防止された中綿であった。
【0096】
また、上述のようにして調製した各中綿の諸物性を、表3および表4にまとめた。なお、表3は実施例のみを記載した表であり、表4は実施例および比較例で調製した中綿を、 その無荷重時の密度順に並べた表である。
【0097】
なお、各中綿における風合いの評価は以下の通り行い評価した。
(風合いの評価方法)
比較例7で調製した中綿を、人が触ったり屈曲させたりした際に感じた柔らかさを、基準「△」とした。なお、比較例で調製した中綿は柔らかで、風合いに富むものであった。
そして、比較例7で調製した中綿よりも柔らかで、更に風合いに富むと感じた中綿を「〇」と評価した。
一方、比較例7で調製した中綿よりも柔らかさを感じず、風合いに劣ると感じたものを「×」と評価した。
【0098】
【表3】
【0099】
表3にまとめた結果から、無荷重時の密度が5854g/mより高い(より具体的には、当該密度が6209g/m以上の)本発明にかかる構成を備える中綿は、LOI値が26以上のより難燃性に優れる中綿であった。
【0100】
【表4】
【0101】
また、表4にまとめた結果から、無荷重時の密度が10864g/m未満(より具体的には、当該密度が8161g/m以下、好ましくは7575g/m以下)の本発明にかかる構成を備える中綿は、風合いに優れる中綿であった。
【0102】
同様に、上述のようにして調製した各中綿の諸物性を、表5および表6にまとめた。なお、表5は、表6に記載している実施例のみをまとめた表である。
【0103】
【表5】
【0104】
表5にまとめた結果から、0.2gf/cm荷重時の密度が6747g/mより高い(より具体的には、当該密度が7461g/m以上の)本発明にかかる構成を備える中綿は、LOI値が26以上のより難燃性に優れる中綿であった。
【0105】
【表6】
【0106】
また、表6にまとめた結果から、0.2gf/cm荷重時の密度が11122g/m未満(より具体的には、当該密度が10994g/m以下、好ましくは9804g/m以下)の本発明にかかる構成を備える中綿は、風合いに優れる中綿であった。
【0107】
以上のように、本発明によって、難燃性に富むことに加え風合いに優れる中綿を提供できる。そのため、当該中綿を備えることで、難燃性に富む衣類(特に、アウトドア用衣類あるいはキャンプ用衣類)を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の中綿は、特に、難燃性に富む中綿、および、当該中綿を備えた衣類(特に、アウトドア用衣類あるいはキャンプ用衣類)に使用できる。また、本発明の中綿は、他にも、手芸用綿、一般衣料用の中綿などにも使用できる。