(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126301
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電源装置及び電源装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034594
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 輝男
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴之
(72)【発明者】
【氏名】郭 中為
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE07
5H730FG05
5H730FG07
(57)【要約】
【課題】スイッチング素子の選択肢の制限の緩和と、変換効率の向上と、を両立する。
【解決手段】電源装置は、第1ブリッジ回路と、第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、第1巻線若しくは第2巻線、又は、その両方に直列接続されたリアクトルと、第2巻線から出力される交流電圧を第2電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、出力指令値が第1閾値未満の場合には、第1ブリッジ回路と第2ブリッジ回路との間の絶対的な第1位相差を180°から出力指令値の増大に伴い単調減少させ、出力指令値が第1閾値以上の場合には、入出力電圧比に基づいて、第1位相差を一定値にし、出力指令値が第1閾値以上の場合には、第1ブリッジ回路及び第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を出力指令値の増大に伴い単調減少させる、制御部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧が入力される第1ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、
前記第1巻線若しくは前記第2巻線、又は、その両方に直列接続されたリアクトルと、
前記第2巻線から出力される交流電圧を第2電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、
出力指令値が第1閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の絶対的な第1位相差を180°から出力指令値の増大に伴い単調減少させ、出力指令値が前記第1閾値以上の場合には、前記第1電圧と前記第1巻線の巻数との積と、前記第2電圧と前記第2巻線の巻数との積と、の比である入出力電圧比に基づいて、前記第1位相差を一定値にし、出力指令値が前記第1閾値以上の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を出力指令値の増大に伴い単調減少させる、制御部と、
を含む、
ことを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、
出力指令値が前記第1閾値以上且つ前記入出力電圧比が1:1を含む一定範囲内の場合には、前記第1位相差を予め定められた値で一定にし、
出力指令値が前記第1閾値以上且つ前記入出力電圧比が前記一定の範囲外の場合には、前記第1位相差を、入力電流を循環電流で除した値である入力電流循環電流比率が最大となる値で一定にする、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、
出力指令値が第2閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を一定にし、
出力指令値が前記第2閾値以上の場合には、前記スイッチング周波数を出力指令値の増大に伴い単調減少させ、
出力指令値が第3閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路の中のアーム間の第2位相差及び前記第2ブリッジ回路の中のアーム間の第3位相差を出力指令値の増大に伴い単調減少させ、
出力指令値が前記第3閾値以上の場合には、前記第2位相差及び前記第3位相差を一定にする、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、
出力指令値が第2閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を一定にし、
出力指令値が前記第2閾値以上の場合には、前記スイッチング周波数を出力指令値の増大に伴い単調減少させ、
出力指令値が第3閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内のデューティ比が小さい方のデューティ比を出力指令値の増大に伴い単調増加させ、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内の他方のデューティ比を出力指令値の増大に伴い単調減少させ、
出力指令値が前記第3閾値以上の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子のデューティ比を0.5で一定にする、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項5】
第1電圧が入力される第1ブリッジ回路と、前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、前記第1巻線若しくは前記第2巻線、又は、その両方に直列接続されたリアクトルと、前記第2巻線から出力される交流電圧を第2電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、を含む電源装置の制御方法であって、
出力指令値が第1閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の絶対的な第1位相差を180°から出力指令値の増大に伴い単調減少させ、出力指令値が前記第1閾値以上の場合には、前記第1電圧と前記第1巻線の巻数との積と、前記第2電圧と前記第2巻線の巻数との積と、の比である入出力電圧比に基づいて、前記第1位相差を一定値にし、出力指令値が前記第1閾値以上の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を出力指令値の増大に伴い単調減少させる、
ことを特徴とする、電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置及び電源装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁型DAB(Dual Active Bridge)双方向コンバータが記載されている。DABコンバータは、デューティ比を0.5で一定にし且つスイッチング周波数を一定にした場合、1次側ブリッジ回路と2次側ブリッジ回路との間の位相差を制御することにより、出力電圧、出力電流又は出力電力を制御できる。
【0003】
特許文献2には、スイッチング素子がオフする時の電流を減少させて電力変換効率を向上させるために、スイッチング周波数を変化させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5027264号明細書
【特許文献2】特開2020-5331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DABコンバータの位相差制御では、ソフトスイッチングが出来ずにハードスイッチングになってしまう動作領域が存在する。従って、DABコンバータは、ハードスイッチングを許容できる回路設計が必要となる。そのため、スイッチング素子の選択肢に制限が生じ、また、設計も難化する。
【0006】
また、DABコンバータは、出力電圧、出力電流又は出力電力に依って、即ち、1次側ブリッジ回路と2次側ブリッジ回路との間の位相差に依って、回路内部を循環する電流(循環電流)が増大し、無効電流成分が大きくなり、変換効率が低下する。特許文献2には、ZVS(Zero Volt Switching)を行う、DAB方式のDC-DCコンバータが記載されている。特許文献2記載のDC-DCコンバータは、目標電力に応じて、出力角変調モードまたは位相制御モードを実行する。但し、特許文献2には、変換効率を向上することは、記載されていない。また、特許文献2には、第1フルブリッジ回路と第2フルブリッジ回路との間の位相差を固定することは、記載されていない。
【0007】
本開示は、スイッチング素子の選択肢の制限の緩和と、変換効率の向上と、を両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の電源装置は、
第1電圧が入力される第1ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、
前記第1巻線若しくは前記第2巻線、又は、その両方に直列接続されたリアクトルと、
前記第2巻線から出力される交流電圧を第2電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、
出力指令値が第1閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の絶対的な第1位相差を180°から出力指令値の増大に伴い単調減少させ、出力指令値が前記第1閾値以上の場合には、前記第1電圧と前記第1巻線の巻数との積と、前記第2電圧と前記第2巻線の巻数との積と、の比である入出力電圧比に基づいて、前記第1位相差を一定値にし、出力指令値が前記第1閾値以上の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を出力指令値の増大に伴い単調減少させる、制御部と、
を含む、
ことを特徴とする。
【0009】
前記電源装置において、
前記制御部は、
出力指令値が前記第1閾値以上且つ前記入出力電圧比が1:1を含む一定範囲内の場合には、前記第1位相差を予め定められた値で一定にし、
出力指令値が前記第1閾値以上且つ前記入出力電圧比が前記一定の範囲外の場合には、前記第1位相差を、入力電流を循環電流で除した値である入力電流循環電流比率が最大となる値で一定にする、
ことを特徴とする。
【0010】
前記電源装置において、
前記制御部は、
出力指令値が第2閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を一定にし、
出力指令値が前記第2閾値以上の場合には、前記スイッチング周波数を出力指令値の増大に伴い単調減少させ、
出力指令値が第3閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路の中のアーム間の第2位相差及び前記第2ブリッジ回路の中のアーム間の第3位相差を出力指令値の増大に伴い単調減少させ、
出力指令値が前記第3閾値以上の場合には、前記第2位相差及び前記第3位相差を一定にする、
ことを特徴とする。
【0011】
前記電源装置において、
前記制御部は、
出力指令値が第2閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を一定にし、
出力指令値が前記第2閾値以上の場合には、前記スイッチング周波数を出力指令値の増大に伴い単調減少させ、
出力指令値が第3閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内のデューティ比が小さい方のデューティ比を出力指令値の増大に伴い単調増加させ、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内の他方のデューティ比を単調減少させ、
出力指令値が前記第3閾値以上の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子のデューティ比を0.5で一定にする、
ことを特徴とする。
【0012】
本開示の一態様の電源装置の制御方法は、
第1電圧が入力される第1ブリッジ回路と、前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、前記第1巻線若しくは前記第2巻線、又は、その両方に直列接続されたリアクトルと、前記第2巻線から出力される交流電圧を第2電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、を含む電源装置の制御方法であって、
出力指令値が第1閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の絶対的な第1位相差を180°から出力指令値の増大に伴い単調減少させ、出力指令値が前記第1閾値以上の場合には、前記第1電圧と前記第1巻線の巻数との積と、前記第2電圧と前記第2巻線の巻数との積と、の比である入出力電圧比に基づいて、前記第1位相差を一定値にし、出力指令値が前記第1閾値以上の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を出力指令値の増大に伴い単調減少させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、スイッチング素子の選択肢の制限の緩和と、変換効率の向上と、を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電源装置の回路構成を示す図である。
【
図2】
図2は、DABのブリッジ回路間の位相差と出力電力との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、DABのブリッジ回路間の位相差と循環電流との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、第1比較例の動作領域を示す図である。
【
図5】
図5は、第1比較例の動作領域を示す図である。
【
図6】
図6は、第2比較例の出力指令値と位相差との関係の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2比較例の出力指令値とスイッチング周波数との関係の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2比較例の動作領域を示す図である。
【
図9】
図9は、第2比較例の動作領域を示す図である。
【
図10】
図10は、第2比較例の出力指令値と出力電力との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、第1比較例及び第2比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図12】
図12は、第1比較例及び第2比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図13】
図13は、第1比較例及び第2比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図14】
図14は、DABのブリッジ回路間の第1位相差φ
p-sと変換電力との関係を示す図である。
【
図15】
図15は、DABのブリッジ回路間の第1位相差φ
p-sと入力電流循環電流比率との関係を示す図である。
【
図16】
図16は、DABのブリッジ回路間の第1位相差φ
p-sと入力電流循環電流比率との関係を示す図である。
【
図18】
図18は、第4比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図19】
図19は、第4比較例の制御部の構成例を示す図である。
【
図21】
図21は、第5比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図23】
図23は、第6比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図24】
図24は、第1実施形態の電源装置の制御を説明する図である。
【
図25】
図25は、第1実施形態の電源装置の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図26】
図26は、第1実施形態の電源装置の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図27】
図27は、第1実施形態の電源装置の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図28】
図28は、第1実施形態の電源装置の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図29】
図29は、第1実施形態の電源装置の制御部の構成例を示す図である。
【
図30】
図30は、第2実施形態の電源装置の制御例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本開示が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0016】
<第1実施形態>
本開示では、ソフトスイッチングが出来ていることの指標として、スイッチング素子がオフからオンになる時に電流が負であり、且つ、スイッチング素子がオンからオフになる時に電流が正である、という指標を用いる。
【0017】
(回路構成)
図1は、第1実施形態の電源装置の回路構成を示す図である。電源装置1は、DAB(Dual Active Bridge)方式であり、双方向のDC-DCコンバータである。実施形態では、電源装置1は、電源2から出力されコンデンサ3で平滑化後の直流の電圧Vinの供給を受けて、直流の電圧Voutを負荷4に出力するものとする。
【0018】
電源装置1は、1次側の第1ブリッジ回路12と、リアクトル13と、トランス14と、2次側の第2ブリッジ回路15と、コンデンサ16と、制御部18と、を含む。
【0019】
第1ブリッジ回路12は、第1アーム21及び第2アーム22を含む単相フルブリッジ回路である。第1アーム21は、トランジスタTr1及びトランジスタTr2を含む。第2アーム22は、トランジスタTr3及びトランジスタTr4を含む。
【0020】
実施形態では、各トランジスタがMOSFETであることとしたが、本開示はこれに限定されない。各トランジスタは、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイス(例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))などでも良い。
【0021】
各トランジスタは、積極的に電流を流すことができる寄生ダイオード(ボディダイオード)を有する、又は、逆並列にダイオードが接続されている。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。
【0022】
トランジスタTr1のソースは、トランジスタTr2のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr1のドレインは、トランジスタTr3のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr3のソースは、トランジスタTr4のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr2のソースは、トランジスタTr4のソースに電気的に接続されている。
【0023】
トランジスタTr1のドレイン及びトランジスタTr3のドレインは、第1ブリッジ回路12の一方の入力端子12aに電気的に接続されている。トランジスタTr2のソース及びトランジスタTr4のソースは、第1ブリッジ回路12の他方の入力端子12bに電気的に接続されている。
【0024】
入力端子12aは、コンデンサ3の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。入力端子12bは、コンデンサ3の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0025】
入力端子12aと入力端子12bとの間には、電圧Vinが供給される。
【0026】
トランジスタTr1のソース及びトランジスタTr2のドレインは、第1ブリッジ回路12の一方の出力端子12cに電気的に接続されている。トランジスタTr3のソース及びトランジスタTr4のドレインは、第1ブリッジ回路12の他方の出力端子12dに電気的に接続されている。
【0027】
リアクトル13の一端は、出力端子12cに電気的に接続されている。なお、本開示では、リアクトル13を1次側に配置したが、これに限定されない。リアクトル13は、2次側に配置しても良いし、1次側及び2次側の両方に配置しても良い。
【0028】
トランス14は、第1巻線14aと、第2巻線14bと、コア14cと、を含む。第1巻線14a及び第2巻線14bは、コア14cに巻回されている。
【0029】
トランス14が、本開示の「変圧器」の一例に相当する。
【0030】
第1巻線14aと第2巻線14bとの巻数比は、1:1が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0031】
第1巻線14aの一端は、リアクトル13の他端に電気的に接続されている。第1巻線14aの他端は、出力端子12dに電気的に接続されている。
【0032】
第1ブリッジ回路12は、電圧Vin、電圧-Vin、又は、0Vを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0033】
例えば、第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1及びトランジスタTr4がオン状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr3がオフ状態に制御されている場合、電圧Vinを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0034】
また例えば、第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1及びトランジスタTr4がオフ状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr3がオン状態に制御されている場合、電圧-Vinを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0035】
また例えば、第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1及びトランジスタTr3がオン状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr4がオフ状態に制御されている場合、0Vを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0036】
また例えば、第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1及びトランジスタTr3がオフ状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr4がオン状態に制御されている場合、0Vを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0037】
第2ブリッジ回路15は、第3アーム31及び第4アーム32を含む単相フルブリッジ回路である。第3アーム31は、トランジスタTr5及びトランジスタTr6を含む。第4アーム32は、トランジスタTr7及びトランジスタTr8を含む。
【0038】
トランジスタTr5のソースは、トランジスタTr6のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr5のドレインは、トランジスタTr7のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr7のソースは、トランジスタTr8のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr6のソースは、トランジスタTr8のソースに電気的に接続されている。
【0039】
トランジスタTr5のソース及びトランジスタTr6のドレインは、第2ブリッジ回路15の一方の入力端子15aに電気的に接続されている。トランジスタTr7のソース及びトランジスタTr8のドレインは、第2ブリッジ回路15の他方の入力端子15bに電気的に接続されている。
【0040】
トランジスタTr5のドレイン及びトランジスタTr7のドレインは、第2ブリッジ回路15の一方の出力端子15cに電気的に接続されている。トランジスタTr6のソース及びトランジスタTr8のソースは、第2ブリッジ回路15の他方の出力端子15dに電気的に接続されている。
【0041】
入力端子15aは、第2巻線14bの一端に電気的に接続されている。入力端子15bは、第2巻線14bの他端に電気的に接続されている。
【0042】
出力端子15cは、コンデンサ16の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。出力端子15dは、コンデンサ16の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0043】
コンデンサ16の電圧が、電圧Voutである。コンデンサ16の一端(高電位側端)は、負荷4の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。コンデンサ16の他端(低電位側端)は、負荷4の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0044】
制御部18は、複数の第1駆動パルスP1を第1アーム21に出力し、複数の第2駆動パルスP2を第2アーム22に出力し、複数の第3駆動パルスP3を第3アーム31に出力し、複数の第4駆動パルスP4を第4アーム32に出力することにより、第1アーム21から第4アーム32までを制御する。
【0045】
本開示では、電圧Vinとトランス14の第1巻線14aの巻数との積と、電圧Voutとトランス14の第2巻線14bの巻数との積と、の比を、入出力電圧比nと称する。また、入力電流を循環電流で除した値を、入力電流循環電流比率と称する。
【0046】
(第1比較例の制御)
図2は、DABのブリッジ回路間の位相差と出力電力との関係を示す図である。
図2において、横軸は、位相差(deg)を表し、縦軸は、正規化した出力電力を表す。波形201は、位相差(deg)と、正規化した出力電力と、の関係を示す。
【0047】
図3は、DABのブリッジ回路間の位相差と循環電流との関係を示す図である。
図3において、横軸は、位相差(deg)を表し、縦軸は、正規化した循環電流を表す。波形202は、位相差(deg)と、正規化した循環電流と、の関係を示す。
【0048】
図3の波形202で示すように、位相差-180°から-90°までの範囲、及び、+90°から+180°までの範囲では、負荷4への電力供給に寄与しない循環電流が多くなる。
【0049】
そこで、第1比較例は、デューティ比を0.5で一定にし且つスイッチング周波数を一定(例えば、50kHz)にする。そして、第1比較例は、
図2及び
図3に示すように、位相差0°を中心(無負荷時)として、出力指令値に応じて位相差-90°から+90°までの範囲(以下、「第1比較例の位相差範囲210」と称する。)で位相差制御する。
【0050】
図4は、第1比較例の動作領域を示す図である。
図4において、横軸は、位相差(deg)を表し、縦軸は、1次側電圧(電圧Vin)に対する2次側電圧(電圧Vout)の比を表す。
【0051】
なお、
図4において、電圧比が負の領域は、計算上のものである。実際の回路(
図1参照)へ負電圧を印加した場合、トランジスタの寄生ダイオードが導通してしまうので、電源装置1は動作を行うことができない。
【0052】
第1比較例では、
図4の領域301及び領域303は、ソフトスイッチング動作領域であるが、領域302、領域304、領域305及び領域306は、ハードスイッチング動作領域である。
【0053】
図5は、第1比較例の動作領域を示す図である。
図5は、
図4の中の領域310の拡大図である。
【0054】
(第2比較例の制御)
第2比較例は、循環電流(
図3参照)を利用してソフトスイッチング動作を実現する。つまり、第2比較例は、出力指令値に応じて、±180°(絶対的な位相差)を中心(無負荷時)として位相差制御を行う。DABコンバータの制御の観点では、絶対的な位相差+180°と絶対的な位相差-180°とは、等価である。
【0055】
図2及び
図3を参照すると、第2比較例は、出力指令値に応じて、±180°(絶対的な位相差)を中心(無負荷時)として、一例として+90°(絶対的な位相差)から-90°(絶対的な位相差)までの範囲(以下、「第2比較例の位相差範囲211」と称する。)で位相差制御を行う。
【0056】
なお、第2比較例は、後述するように位相差及びスイッチング周波数の2つの値で制御することとすると、+90°(絶対的な位相差)より小さい位相差範囲211a及び-90°(絶対的な位相差)より大きい位相差範囲211bを利用することも可能である。位相差範囲211a及び位相差範囲211bでは、出力電力が小さくなるというデメリットがあるものの、損失を小さくすることができるというメリットがある。例えば、
図2に示すように位相差範囲211から位相差範囲211bへ動作点が移動した場合は、電力的には低下傾向を示すが、
図3に示すように、循環電流も低下傾向を示す。具体的には、
図2で示すところの約-112.5°(位相差範囲211)と約-67.5°(位相差範囲211b)とでは周波数が同一であれば同等の出力になる。その時、
図3を参照すると、循環電流は明らかに約-67.5°の方が少なくなる(低損失になる)結果となる。周波数を変更した場合、変換電力は変化する(2倍の周波数で電力は半分になる)が、出力電力と循環電流との比率(
図2と
図3との比率)は変化しない。そのため、ハードスイッチング領域へ入ってしまわないように注意が必要であるが、損失低減のために、位相差範囲211bまで踏み込んでしまってもよい。
【0057】
第2比較例の位相差範囲211では、第1比較例の位相差範囲210と比して、トランジスタがオフからオンになるとき負の向き、オンからオフになるとき正の向きの循環電流が多く流れる。第2比較例は、上記の循環電流を利用することにより、上記した指標を満たすことができる。
【0058】
図6は、第2比較例の出力指令値と位相差との関係の一例を示す図である。
図6において、横軸は、正規化した出力指令値を表し、縦軸は、±180°(絶対的な位相差)に対する相対的な位相差(deg)を表す。
【0059】
第2比較例は、波形501で示すように、出力指令値が-100から100まで増加するに従って、位相差を-90°(相対的な位相差。絶対的な位相差としては+90°)から、+90°(相対的な位相差。絶対的な位相差としては-90°)まで、単調増加させる。
【0060】
但し、このままでは、循環電流が必要以上に多くなり、損失が大きくなる。そこで、第2比較例は、スイッチング周波数を制御することにより、上記の環流電流を調整(抑制)する。第2比較例は、スイッチング周波数を高くすることにより、環流電流を抑制できる。
【0061】
図7は、第2比較例の出力指令値とスイッチング周波数との関係の一例を示す図である。
図7において、横軸は、正規化した出力指令値を表し、縦軸は、スイッチング周波数(kHz(キロヘルツ))を表す。
【0062】
第2比較例は、波形511で示すように、出力指令値が0(無負荷時)の場合にスイッチング周波数を最大にし、出力指令値が0から離れるに従って、スイッチング周波数を低くする。第2比較例では、出力指令値が0(無負荷時)の場合にスイッチング周波数を200kHzにし、出力指令値が±100の場合にスイッチング周波数を50kHzにする。
【0063】
図8は、第2比較例の動作領域を示す図である。
図8において、横軸は、±180°(絶対的な位相差)に対する相対的な位相差(deg)を表し、縦軸は、1次側電圧(電圧Vin)に対する2次側電圧(電圧Vout)の比を表す。
【0064】
なお、
図8において、電圧比が負の領域は、計算上のものである。実際の回路(
図1参照)へ負電圧を印加した場合、トランジスタの寄生ダイオードが導通してしまうので、電源装置1は動作を行うことができない。
【0065】
第2比較例では、
図8の領域322は、ソフトスイッチング動作領域であり、領域321、領域323、領域324、領域325及び領域326は、ハードスイッチング動作領域である。
【0066】
図9は、第2比較例の動作領域を示す図である。
図9は、
図8の中の領域330の拡大図である。
図9に示す範囲では、全部がソフトスイッチング動作領域(領域322)である。
【0067】
図9を
図5と比較すると、第2比較例は、
図6及び
図7で示す位相差制御及びスイッチング周波数制御を行うことにより、第1比較例ではハードスイッチングであった領域(
図5の領域302、領域305参照)で、ソフトスイッチング動作を可能とすることができる。
【0068】
なお、
図8及び
図9では、横軸を位相差としている。しかし、第2比較例では、電圧Voutは、位相差だけではなく、スイッチング周波数にも依存する。
図8及び
図9の横軸は、あくまでも、第2比較例の位相差だけに着目した特性となる。
【0069】
また、
図2を参照すると、第1比較例の位相差範囲210では、位相差と出力電力との関係が正の相関(右肩上がり、
図2の-90°(絶対的な位相差)から+90°(絶対的な位相差)までの範囲参照)である。これに対して、第2比較例の位相差範囲211では、位相差と出力電力との関係が負の相関(右肩下がり、
図2の+90°(絶対的な位相差)から-90°(絶対的な位相差)までの範囲参照)である。そのため、第2比較例では、出力指令値と出力電力との関係が、負の相関(比較例と逆)になる。
【0070】
図10は、第2比較例の出力指令値と出力電力との関係を示す図である。
図10において、横軸は、正規化した出力指令値を表し、縦軸は、正規化した出力電力を表す。
【0071】
第2比較例では、波形521で示すように、出力指令値が増加すると、出力電力が減少する。第2比較例は、この特性のままで使用しても良い。或いは、例えば、出力指令値の符号が反転されて制御部18に入力されることとして、出力指令値と出力電力との関係が正の相関になるようにしても良い。
【0072】
図11から
図13までは、第1比較例及び第2比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
図11は、逆方向最大出力時(位相差=-90°(相対的な位相差))の回路シミュレーション結果を示す図である。
図12は、無出力時(無負荷時)(位相差=0°(相対的な位相差))の回路シミュレーション結果を示す図である。
図13は、順方向最大出力時(位相差=+90°(相対的な位相差))の回路シミュレーション結果を示す図である。
【0073】
図11から
図13までにおいて、第1行目は、電圧Vinと電圧Voutとの電圧比が1:2の場合(
図5及び
図9の動作点401、動作点404及び動作点407参照)の回路シミュレーション結果を示す。
【0074】
第2行目は、電圧Vinと電圧Voutとの電圧比が1:1の場合(
図5及び
図9の動作点402、動作点405及び動作点408参照)の回路シミュレーション結果を示す。
【0075】
第3行目は、電圧Vinと電圧Voutとの電圧比が2:1の場合(
図5及び
図9の動作点403、動作点406及び動作点409参照)の回路シミュレーション結果を示す。
【0076】
図11から
図13までの各欄において、1番目の波形は、第1ブリッジ回路12のトランジスタ(例えば、トランジスタTr1)のドレイン-ソース間の電圧を表す。ドレインーソース間の電圧がハイレベルの場合、トランジスタはオフである。ドレインーソース間の電圧がローレベルの場合、トランジスタはオンである。
【0077】
2番目の波形は、第1ブリッジ回路12のトランジスタ(例えば、トランジスタTr1)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0078】
3番目の波形は、第2ブリッジ回路15のトランジスタ(例えば、トランジスタTr5)のドレイン-ソース間の電圧を表す。ドレインーソース間の電圧がハイレベルの場合、トランジスタはオフである。ドレインーソース間の電圧がローレベルの場合、トランジスタはオンである。
【0079】
4番目の波形は、第2ブリッジ回路15のトランジスタ(例えば、トランジスタTr5)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0080】
図11を参照すると、欄601は、第1比較例の回路シミュレーション結果(
図5の動作点401参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0081】
欄602は、第2比較例の回路シミュレーション結果(
図9の動作点401参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0082】
欄603は、第1比較例の回路シミュレーション結果(
図5の動作点402参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0083】
欄604は、第2比較例の回路シミュレーション結果(
図9の動作点402参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0084】
欄605は、第1比較例の回路シミュレーション結果(
図5の動作点403参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0085】
欄606は、第2比較例の回路シミュレーション結果(
図9の動作点403参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0086】
図12を参照すると、欄611は、第1比較例の回路シミュレーション結果(
図5の動作点404参照)を示す。この場合、第1ブリッジ回路12のトランジスタは上記した指標を満たしていないので(1番目及び2番目の波形参照)、ハードスイッチング動作である。
【0087】
欄612は、第2比較例の回路シミュレーション結果(
図9の動作点404参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0088】
欄613は、第1比較例の回路シミュレーション結果(
図5の動作点405参照)を示す。この場合、第1ブリッジ回路12のトランジスタは上記した指標を満たしていないので(1番目及び2番目の波形参照)、ハードスイッチング動作である。第2ブリッジ回路15のトランジスタも上記した指標を満たしていないので(3番目及び4番目の波形参照)、ハードスイッチング動作である。
【0089】
欄614は、第2比較例の回路シミュレーション結果(
図9の動作点405参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0090】
欄615は、第1比較例の回路シミュレーション結果(
図5の動作点406参照)を示す。この場合、第2ブリッジ回路15のトランジスタは上記した指標を満たしていないので(3番目及び4番目の波形参照)、ハードスイッチング動作である。
【0091】
欄616は、第2比較例の回路シミュレーション結果(
図9の動作点406参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0092】
図13を参照すると、欄621は、第1比較例の回路シミュレーション結果(
図5の動作点407参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0093】
欄622は、第2比較例の回路シミュレーション結果(
図9の動作点407参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0094】
欄623は、第1比較例の回路シミュレーション結果(
図5の動作点408参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0095】
欄624は、第2比較例の回路シミュレーション結果(
図9の動作点408参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0096】
欄625は、第1比較例の回路シミュレーション結果(
図5の動作点409参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0097】
欄626は、第2比較例の回路シミュレーション結果(
図9の動作点409参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0098】
図11から
図13までに示すように、第2比較例は、動作点401から動作点409までの全部でソフトスイッチング動作が可能であることが確認できた。
【0099】
このように、第2比較例は、第1比較例と比べて、ソフトスイッチング動作が可能な領域を拡げることができる。これにより、第2比較例は、スイッチング素子の選択肢の増加、スイッチング損失の低減、サージノイズ抑制、安全動作領域改善による素子のストレス低減などが可能となる。また、電源装置1は、結果的に設計の容易化、低コスト化、電力変換効率の向上、小型化等の性能向上も見込める。
【0100】
但し、第2比較例は、高出力時では、循環電流が多く、変換効率が低くなる。
【0101】
(第3比較例の制御)
第3比較例では、入出力電圧比n=1.0:0.5の場合について説明する。
【0102】
第3比較例は、デューティ比を0.5で一定にし且つスイッチング周波数を一定にし、1次側ブリッジ回路と2次側ブリッジ回路との間の第1位相差φp-sを制御することにより、出力電圧、出力電流又は出力電力を制御する。
【0103】
第3比較例は、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2と、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4と、の間の第1位相差φp-sを制御することにより、第1ブリッジ回路12と第2ブリッジ回路15との間の第1位相差φp-sを制御する。
【0104】
図14は、DABのブリッジ回路間の第1位相差φ
p-sと変換電力との関係を示す図である。
図14において、横軸は、第1位相差φ
p-s(deg)を表し、縦軸は、正規化した変換電力を表す。線701は、第1位相差φ
p-s(deg)と、正規化した変換電力と、の関係を示す。
【0105】
線701で示すように、電源装置1は、第1位相差φp-sを制御することにより、双方向の電力変換が可能である。
【0106】
図15は、DABのブリッジ回路間の第1位相差φ
p-sと入力電流循環電流比率との関係を示す図である。
図15において、横軸は、第1位相差φ
p-s(deg)を表し、縦軸は、入力電流循環電流比率を表す。線702は、第1位相差φ
p-s(deg)と、入力電流循環電流比率と、の関係を示す。
【0107】
点702aで示すように、入力電流循環電流比率は、第1位相差φp-sがおよそ50degの場合にピーク(変換効率最大)となり、およそ50degより大きい場合及び小さい場合のいずれも低下(変換効率低下)する。
【0108】
つまり、
図14に示すように、変換電力の絶対値は、±90degまで上昇傾向を示す。しかし、
図15に示すように、入力(出力も同じ)電流を得るために必要な循環電流の割合は、特定の位相差(本例では、およそ50deg)で最小値まで低下し、その他では増大して行く。これにより、多くの領域で回路内部の電流導通損失割合が多く、変換効率の低下、各種回路構成素子の負担が増大しやすい。
【0109】
(第4比較例の制御)
図16は、DABのブリッジ回路間の第1位相差φ
p-sと入力電流循環電流比率との関係を示す図である。
図16において、横軸は、第1位相差φ
p-s(deg)を表し、縦軸は、入力電流循環電流比率を表す。
【0110】
線711は、入出力電圧比n=1.0:0.5の場合の、第1位相差φp-s(deg)と、入力電流循環電流比率と、の関係を示す。点711aで示すように、入力電流循環電流比率は、第1位相差φp-sがおよそ50degの場合にピーク(変換効率最大)となり、およそ50degより大きい場合及び小さい場合のいずれも低下(変換効率低下)する。
【0111】
線712は、入出力電圧比n=1.0:0.75の場合の、第1位相差φp-s(deg)と、入力電流循環電流比率と、の関係を示す。点712aで示すように、入力電流循環電流比率は、第1位相差φp-sがおよそ30degの場合にピーク(変換効率最大)となり、およそ30degより大きい場合及び小さい場合のいずれも低下(変換効率低下)する。
【0112】
線713は、入出力電圧比n=1.0:0.9の場合の、第1位相差φp-s(deg)と、入力電流循環電流比率と、の関係を示す。点713aで示すように、入力電流循環電流比率は、第1位相差φp-sがおよそ20degの場合にピーク(変換効率最大)となり、およそ20degより大きい場合及び小さい場合のいずれも低下(変換効率低下)する。
【0113】
線714は、入出力電圧比n=1.0:0.99の場合の、第1位相差φp-s(deg)と、入力電流循環電流比率と、の関係を示す。点714aで示すように、入力電流循環電流比率は、第1位相差φp-sがおよそ10degの場合にピーク(変換効率最大)となり、およそ10degより大きい場合及び小さい場合のいずれも低下(変換効率低下)する。
【0114】
図16では、降圧の場合を示したが、昇圧の場合も同様に、入力電流循環電流比率にピークが存在する。
【0115】
図16に示されるDABの性質に鑑み、第4比較例は、入出力電圧比nに基づいて、第1位相差φ
p-sを、入力電流循環電流比率が最大となる値で一定にする(固定する)。例えば、第4比較例は、入出力電圧比n=1.0:0.5である場合、第1位相差φ
p-sを、およそ50degで一定にする。
【0116】
但し、第1位相差φp-sを入力電流循環電流比率が最大となる値で一定にすることに限定されない。第1位相差φp-sを入力電流循環電流比率が最大となる値の近傍で一定にすることとしても良い。制御上の都合などにより、あえて第1位相差φp-sを入力電流循環電流比率が最大となる値から微妙にずらす場合もあり得る。
【0117】
これにより、第4比較例は、変換効率を向上でき、各種回路構成素子の負担を軽減できる。
【0118】
なお、入出力電圧比n=1.0:1.0では、第1位相差φp-sが0degになってしまい、出力電力がゼロになってしまう。そこで、第4比較例は、入出力電圧比nがn=1.0:1.0を含む一定範囲内(例えば、n=0.99:1.0からn=1.0:0.99までの範囲内)の場合には、第1位相差φp-sを予め定められた値(例えば、10deg)で一定にすると良い。
【0119】
また、第4比較例は、第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4のスイッチング周波数fを可変することにより、出力電流(出力電力)を制御できる。
【0120】
第4比較例は、スイッチング周波数fを低くすると、出力電流を多くすることができる。第4比較例は、スイッチング周波数fを高くすると、出力電流を少なくすることができる。
【0121】
なお、理論上は、スイッチング周波数fを高くすればするほど、出力電流を少なくすることができる。しかし、実際には、回路内の各素子は、動作速度に限界がある。つまり、スイッチング周波数fには限界があり、出力電流の抑制には限界がある。
【0122】
そこで、第4比較例は、出力指令値(電流指令値)が相対的に大きい領域では、スイッチング周波数fを可変して出力電流を可変し、第1アーム21と第2アーム22との間の第2位相差φp-p、及び、第3アーム31と第4アーム32との間の第3位相差φs-sを一定にする。一方、第4比較例は、出力指令値が相対的に小さい領域では、スイッチング周波数fを一定にし、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを可変して、出力電流を可変する。
【0123】
第4比較例は、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを小さくすると、出力電流を多くすることができる。第4比較例は、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを大きくすると、出力電流を少なくすることができる。
【0124】
これにより、第4比較例は、広い領域にわたって、出力電流を可変することができる。
【0125】
なお、第4比較例では、第2位相差φp-pと第3位相差φs-sとを同じとするが、本開示はこれに限定されない。第2位相差φp-pと第3位相差φs-sとは、異なっても良い。
【0126】
図17は、第4比較例の制御を説明する図である。
図17は、入出力電圧比n=1.0:0.5である場合の制御例を示す。
図17の上段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、正規化されたスイッチング周波数fを表す。
図17の下段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、位相差φ(deg)を表す。
【0127】
線721は、出力指令値と、スイッチング周波数fと、の関係を示す。線722は、出力指令値と、第1位相差φp-sと、の関係を示す。線723は、出力指令値と、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sと、の関係を示す。
【0128】
第4比較例は、入出力電圧比n=1.0:0.5であるので、線722で示すように、第1位相差φp-sをおよそ50degで一定にする。
【0129】
第4比較例は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、50)未満の領域(矢印725参照)では、線721で示すように、スイッチング周波数fを一定にする。
【0130】
第4比較例は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、50)以上の領域(矢印724参照)では、線721で示すように、出力指令値が大きくなるほど、スイッチング周波数fを単調減少(
図17の例では直線状に減少)させる。
【0131】
以下、スイッチング周波数fを変更する出力指令値の領域(矢印724参照)を、「周波数変調領域」と称する場合がある。
【0132】
第4比較例は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、50)未満の領域(矢印725参照)では、線723で示すように、出力指令値が大きくなるほど、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sを単調減少(
図17の例では直線状に減少)させる。
【0133】
以下、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを変更する出力指令値の領域(矢印725参照)を、「位相変調領域」と称する場合がある。
【0134】
第4比較例は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、50)以上の領域(矢印724参照)では、線723で示すように、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを0degで一定にする。
【0135】
図18は、第4比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
図18において、横軸は、正規化された入力電流を表し、縦軸は、入力電流循環電流比率を表す。
【0136】
線731は、第4比較例の入力電流と入力電流循環電流比率との関係を示す。線732は、第3比較例の入力電流と入力電流循環電流比率との関係を示す。矢印733は、周波数変調領域と位相変調領域との境目(変調制御の切替点)を表す。矢印734は、周波数変調領域を表す。矢印735は、位相変調領域を表す。
【0137】
線731で示すように、第4比較例は、第3比較例と比較して、全範囲にわたって、入力電流循環電流比率、つまり、変換効率を向上させることができる。
【0138】
図19は、第4比較例の制御部の構成例を示す図である。
図19は、定電流制御の場合の制御部18の構成例を示す図である。
【0139】
制御部18は、第1算出部51と、減算器52と、第2算出部53と、合成器54と、駆動パルス生成部55と、1次側パルス駆動部56と、2次側パルス駆動部57と、を含む。
【0140】
第1算出部51は、入出力電圧比nに基づいて、第1位相差φ
p-sを算出(
図16の点711a、712a、713a、714a参照)し、合成器54に出力する。なお、第1算出部51は、数式、マップデータ等を用いて、第1位相差φ
p-sを算出することとしても良い。
【0141】
減算器52は、電流指令値から出力電流検出値を減算した電流偏差(出力指令値)を第2算出部53に出力する。
【0142】
第2算出部53は、電流偏差に基づいて、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-s(
図17の線723参照)、並びに、スイッチング周波数f(
図17の線721参照)を算出し、合成器54に出力する。なお、第2算出部53は、数式、マップデータ等を用いて、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-s、並びに、スイッチング周波数fを算出することとしても良い。
【0143】
合成器54は、第1位相差φp-s、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-s、並びに、スイッチング周波数fを合成した信号Sを、駆動パルス生成部55に出力する。
【0144】
駆動パルス生成部55は、信号Sに基づいて、第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4を生成する。駆動パルス生成部55は、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2を1次側パルス駆動部56に出力する。駆動パルス生成部55は、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4を2次側パルス駆動部57に出力する。
【0145】
1次側パルス駆動部56は、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2の電圧レベルを変換し、第1アーム21及び第2アーム22に出力する。
【0146】
2次側パルス駆動部57は、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4の電圧レベルを変換し、第3アーム31及び第4アーム32に出力する。
【0147】
以上説明したように、第4比較例の制御部18は、入出力電圧比nに基づいて、第1位相差φp-sを、入力電流循環電流比率が最大となる値で一定にする。
【0148】
これにより、第4比較例は、変換効率を向上でき、各種回路構成素子の負担を軽減できる。
【0149】
また、第4比較例の制御部18は、スイッチング周波数fを可変することにより、出力電流(出力電力)を制御できる。
【0150】
また、第4比較例の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(第2閾値Th2)以上の場合は、スイッチング周波数fを可変して出力電流を可変し、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを一定にする。一方、第4比較例の制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(第1閾値Th1)未満の場合は、スイッチング周波数fを一定にし、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを可変して、出力電流を可変する。
【0151】
これにより、第4比較例は、広い領域にわたって、出力電流を可変することができる。
【0152】
但し、第4比較例は、ソフトスイッチング領域の拡大が出来ていない。
【0153】
(第5比較例の制御)
第4比較例では、制御部18は、第1閾値Th1と第2閾値Th2とを同じにした。つまり、第4比較例の制御部18は、周波数変調領域(
図17の矢印724参照)と、位相変調領域(
図17の矢印725参照)と、がオーバーラップしないようにした。一方、第5比較例では、制御部18は、第1閾値Th1<第2閾値Th2とする。つまり、第5比較例の制御部18は、周波数変調領域と、位相変調領域と、がオーバーラップするようにする。
【0154】
図20は、第5比較例の制御例を説明する図である。
図20は、入出力電圧比n=1.0:0.5である場合の制御例を示す。
図20の上段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、正規化されたスイッチング周波数fを表す。
図20の下段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、位相差φ(deg)を表す。
【0155】
線741は、出力指令値と、スイッチング周波数fと、の関係を示す。線742は、出力指令値と、第1位相差φp-sと、の関係を示す。線743は、出力指令値と、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sと、の関係を示す。
【0156】
第5比較例の制御部18は、入出力電圧比n=1.0:0.5であるので、線742で示すように、第1位相差φp-sをおよそ50degで一定にする。
【0157】
第5比較例の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、35)未満の領域では、線741で示すように、スイッチング周波数fを一定にする。
【0158】
第5比較例の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、35)以上の領域(矢印744参照)では、線741で示すように、出力指令値が大きくなるほど、スイッチング周波数fを単調減少(
図20の例では直線状に減少)させる。
【0159】
第5比較例の制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、65)未満の領域(矢印745参照)では、線743で示すように、出力指令値が大きくなるほど、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sを単調減少(
図20の例では直線状に減少)させる。
【0160】
第5比較例の制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、65)以上の領域では、線743で示すように、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを一定にする。
【0161】
ここで、第1閾値Th1<第2閾値Th2である。これにより、第5比較例の制御部18は、周波数変調領域(
図20の矢印744参照)と、位相変調領域(
図20の矢印745参照)と、がオーバーラップするようにできる。
【0162】
図21は、第5比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
図21において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、正規化された出力電力を表す。
【0163】
線751は、第5比較例(オーバーラップ有り)の出力指令値と出力電力との関係を表す。線752は、第4比較例(オーバーラップ無し)の出力指令値と出力電力との関係を表す。
【0164】
第4比較例(オーバーラップ無し)では、出力指令値50を境に、周波数変調と位相変調とが切り替わる。そのため、第4比較例では、出力指令値が0から50までの領域と、出力指令値が50から100までの領域と、では、線752の傾きが大きく異なっており、出力指令値50近辺で出力特性が急峻に変化する。
【0165】
一方、第5比較例(オーバーラップ有り)では、出力指令値が35から65の領域で周波数変調及び位相変調の両方を行う。そのため、第5比較例では、出力指令値の全範囲にわたって、傾きが大きく異なることはなく、出力指令値50近辺で出力特性が急峻に変化することもない。つまり、出力特性がよりリニアに近くなる。
【0166】
第5比較例の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1以上の領域では、周波数変調制御を行う。また、第5比較例の制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2未満の領域では、位相差変調制御を行う。ここで、第1閾値Th1<第2閾値Th2である。
【0167】
これにより、第5比較例は、第4比較例と比較して、出力特性の急峻な変化を抑制することができる。
【0168】
但し、第5比較例は、ソフトスイッチング領域の拡大が出来ていない。
【0169】
(第6比較例の制御)
第4比較例及び第5比較例では、制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2未満の領域では、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを制御することとした。一方、第6比較例では、制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2未満の領域では、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを制御することに代えて、第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4のデューティ比を制御する。
【0170】
第6比較例の制御部18は、出力指令値の増大に伴い、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路15の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内のデューティ比が小さい方のデューティ比を大きくし、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内の他方のデューティ比を小さくすると、出力電流を多くすることができる。
【0171】
なお、各アームのハイサイドのデューティ比とローサイドのデューティ比との和は、1になる(デッドタイムや、素子に起因する誤差要因等を除く)。例えば、ハイサイドのデューティ比が0.1且つローサイドのデューティ比が0.9の場合は、ハイサイドのデューティ比が0.9且つローサイドのデューティ比が0.1の場合と等価である。
【0172】
なお、第6比較例では、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2のデューティ比と、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4のデューティ比と、とを同じとするが、本開示はこれに限定されない。第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2のデューティ比と、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4のデューティ比とは、異なっても良い。
【0173】
図22は、第6比較例の制御例を説明する図である。
図22は、入出力電圧比n=1.0:0.5である場合の制御例を示す。
図22の上段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、スイッチング周波数f(kHz)を表す。
図22の下段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、第1位相差φ
p-s(deg)及びデューティ比を表す。
【0174】
線761は、出力指令値と、スイッチング周波数fと、の関係を示す。線762は、出力指令値と、第1位相差φp-sと、の関係を示す。線763は、出力指令値と、デューティ比と、の関係を示す。
【0175】
第6比較例の制御部18は、入出力電圧比n=1.0:0.5であるので、線762で示すように、第1位相差φp-sをおよそ50degで一定にする。
【0176】
第6比較例の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、50)未満の領域(矢印765参照)では、線761で示すように、スイッチング周波数fを一定にする。
【0177】
第6比較例の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、50)以上の領域(矢印764参照)では、線761で示すように、出力指令値が大きくなるほど、スイッチング周波数fを単調減少(
図22の例では直線状に減少)させる。
【0178】
第6比較例の制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、50)未満の領域(矢印765参照)では、線763で示すように、出力指令値が大きくなるほど、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路15の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内のデューティ比が小さい方のデューティ比を単調増加(
図22の例では直線状に増加)させ、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内の他方のデューティ比を単調減少させる。第6比較例の制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2以上の領域(矢印764参照)では、線763で示すように、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子のデューティ比を0.5で一定にする。
【0179】
以下、デューティ比を変更する出力指令値の領域(矢印765参照)を、「デューティ比変調領域」と称する場合がある。
【0180】
第6比較例の制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、50)以上の領域(矢印764参照)では、線763で示すように、デューティ比を一定(例えば、0.5)にする。
【0181】
図23は、第6比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
図23において、横軸は、正規化された入力電流を表し、縦軸は、入力電流循環電流比率を表す。
【0182】
先に説明した線731は、第4比較例の入力電流と入力電流循環電流比率との関係を示す。線771は、第6比較例の入力電流と入力電流循環電流比率との関係を示す。
【0183】
線771で示すように、第6比較例は、第4比較例とほぼ同様の入力電流循環電流比率、つまり、類似の変換効率を達成することができる。
【0184】
第6比較例の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1以上の領域では、周波数変調制御を行う。また、第6比較例の制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2以下の領域では、デューティ比変調制御を行う。
【0185】
これにより、第6比較例は、第4比較例と同様に、変換効率を向上でき、各種回路構成素子の負担を軽減できる。また、第6比較例は、デューティ比を可変することにより、出力電流(出力電力)を制御できる。
【0186】
なお、第4比較例及び第5比較例は、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを可変するので、3相DABには適用できない。
【0187】
一方、第6比較例は、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを可変しないので、3相DABにも適用可能である。
【0188】
第6比較例において、第5比較例と同様に、第1閾値Th1<第2閾値Th2としても良い。つまり、第6比較例の制御部18は、周波数変調領域と、デューティ比変調領域と、がオーバーラップするようにしても良い。
【0189】
これにより、第6比較例は、第5比較例と同様に、出力特性の急峻な変化を抑制することができる。
【0190】
但し、第6比較例は、ソフトスイッチング領域の拡大が出来ていない。
【0191】
(第1実施形態の制御)
先に示した
図17の矢印724で示す周波数変調領域は、ソフトスイッチング領域であり、矢印725で示す領域は、ハードスイッチング領域である。そこで、第1実施形態の制御部18は、矢印725で示す領域では、第1位相差φ
p-sを第2比較例と同様に180deg側へ変更することにより、ソフトスイッチング動作を実現する。これにより、第1実施形態の制御部18は、矢印724で示す領域と矢印725で示す領域との両方、即ち全部の領域で、第2比較例と同様にソフトスイッチング動作を実現することができる。
【0192】
なお、入力電流循環電流比率が最大となる第1位相差φ
p-sは、原理的に±90deg以内にしか発生しない。そこで、出力指令値を例えば55から0へ変更する場合、即ち第1位相差φ
p-sを入力電流循環電流比率が最大となる値(例えば、50deg)から180degまで変更する場合を検討する。この場合、変更開始(例えば、50deg)から90degまでの範囲(以下、「正帰還範囲」と称する場合がある。)では、先に示した
図2の線212で示すように、そのままでは出力特性が逆(増大方向)となる。第1実施形態の制御部18は、出力特性が減少方向となるようにパラメータを組み合わせることで、最終的に必要とされる出力特性を得ることができる。
【0193】
図24は、第1実施形態の電源装置の制御を説明する図である。
図24は、入出力電圧比n=1.0:0.5である場合の制御例を示す。
図24の上段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、正規化されたスイッチング周波数fを表す。
図24の下段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、位相差φ(deg)を表す。
【0194】
線801は、出力指令値と、スイッチング周波数fと、の関係を示す。線802は、出力指令値と、第1位相差φp-sと、の関係を示す。線803は、出力指令値と、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sと、の関係を示す。
【0195】
第1実施形態の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、55)以上の領域では、入出力電圧比n=1.0:0.5であるので、線802で示すように、第1位相差φp-sを一定(例えば、50deg)にする。
【0196】
第1実施形態の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、55)未満の領域(矢印805参照)では、線802で示すように、出力指令値が大きくなるほど、第1位相差φ
p-sを180degから例えば50degまで単調減少させる。
図24では、単調減少の一例として、第1位相差φ
p-sを直線状に減少させているが、本開示はこれに限定されない。
【0197】
以下、第1位相差φp-sを変更する出力指令値の領域(矢印805参照)を、「第1位相差変調領域」と称する場合がある。
【0198】
第1実施形態の制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、40)未満の領域では、線801で示すように、スイッチング周波数fを一定(例えば、2.0)にする。
【0199】
第1実施形態の制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、40)以上の領域(矢印804参照)では、線801で示すように、出力指令値が大きくなるほど、スイッチング周波数fを2.0から例えば1.0まで単調減少させる。
図24では、単調減少の一例として、スイッチング周波数fを直線状に減少させているが、本開示はこれに限定されない。
【0200】
第1実施形態の制御部18は、出力指令値が第3閾値Th3(例えば、50)以上の領域では、線803で示すように、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを一定(例えば、0deg)にする。
【0201】
なお、本開示において、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを0degにするということは、従来のDABと同じにするということである。第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sは、実際のゲート電圧の波形で見ると、180degである。
【0202】
第1実施形態の制御部18は、出力指令値が第3閾値Th3(例えば、50)未満の領域(矢印806参照)では、線803で示すように、出力指令値が大きくなるほど、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sを例えば180degから0degまで単調減少させる。
図24では、単調減少の一例として、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sを直線状に減少させているが、本開示はこれに限定されない。なお、
図24の例では、出力指令値が0の場合に第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sを180degとしたが、本開示はこれに限定されない。第1実施形態の制御部18は、循環電流が少なすぎて制御ゲインに影響が出たり、ソフトスイッチングを維持するための循環電流が確保できない場合には、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sを180degより小さくすると良い。
【0203】
以下、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを変更する出力指令値の領域(矢印806参照)を、「第2第3位相差変調領域」と称する場合がある。
【0204】
なお、第1実施形態の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1以上の領域では、第1位相差φp-sが一定であるので、第1位相差φp-sに依る出力電力調整が出来ない。そこで、第1実施形態の制御部18は、第2閾値Th2≦第1閾値Th1とすると好ましい。これにより、第1実施形態の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1以上の領域では、スイッチング周波数fに依る出力電力調整が可能となる。
【0205】
また、出力指令値が例えば55から38へ変化する場合について検討する。第1実施形態の制御部18は、矢印807で示すように、第1位相差φ
p-sを50degから90degへ変更することになる。この場合、先に示した
図2の線212で示すように、そのままでは出力特性が逆(増大方向)となる。そこで、第1実施形態の制御部18は、線801で示すように、第1閾値Th1から第2閾値Th2までの区間で、スイッチング周波数fを例えば1.75から例えば2.0へ増加させる。スイッチング周波数fが増加することは、出力電力が抑制されることである。従って、第1実施形態の制御部18は、出力指令値が55から38へ変化する場合であっても、出力特性が逆(増大方向)となることを抑制できる。なお、制御部18は、スイッチング周波数fを増加させることに代えて、又は、加えて、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sを増加させることとしても良い。
【0206】
なお、
図24の例では、第1閾値Th1を55とし、第2閾値Th2を40とし、第3閾値Th3を50としたが(第2閾値Th2<第3閾値Th3<第1閾値Th1)、本開示はこれに限定されない。これらの閾値は、製品の仕様などに応じて、種々の変更が可能である。
【0207】
上記したように、スイッチング周波数f又は第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sの一方又は両方に依る出力電力調整を可能とし、また、出力特性が逆(増大方向)となることを抑制するために、第2閾値Th2≦第1閾値Th1であることが好ましい。
【0208】
また、
図24の例では、第2閾値Th2(例えば、40)は、第1位相差φ
p-sが位相差90degとなる値X(
図24の例では、38)より大きいこととしたが、同じであっても良いし、小さくても良い。つまり、値X<第2閾値Th2であっても良いし、値X=第2閾値Th2であっても良いし、第2閾値Th2<値Xであっても良い。
【0209】
なお、上記では、制御部18は、第1閾値Th1以上の領域において、第1位相差φp-sを一定に制御することとしたが、本開示はこれに限定されない。制御部18は、出力指令値対出力特性を整形するために、第1閾値Th1以上の領域においても、変換特性に影響の少ない範囲で第1位相差φp-sを少々変化させても良い。
【0210】
(第1実施形態の回路シミュレーション結果)
図25から
図27までは、第1実施形態の電源装置の回路シミュレーション結果を示す図である。
図25から
図27までは、入出力電圧比n=1.0:0.5である場合の回路シミュレーション結果を示す。
図25から
図27までにおいて、横軸は、時間を表し、縦軸は、電圧又は電流を表す。
【0211】
図25から
図27では、第1アーム21から第4アーム32までの中のトランジスタの内のローサイドのトランジスタTr2、Tr4、Tr6及びTr8の波形を示している。ソフトスイッチングは、ハイサイド及びローサイドの内の一方のトランジスタで成立していれば、ハイサイド及びローサイドの内の他方のトランジスタでも成立するからである。
【0212】
図25は、無負荷時(例えば、出力指令値=0、第1位相差φ
p-s=180deg(絶対的な位相差)、第2位相差φ
p-p=第3位相差φ
s-s=150deg)の回路シミュレーション結果を示す図である。
【0213】
線811は、1次側U相(第1アーム21)のローサイドのトランジスタTr2のドレイン-ソース間電圧Vdsを表す。ドレインーソース間の電圧がハイレベルの場合、トランジスタはオフである。ドレインーソース間の電圧がローレベルの場合、トランジスタはオンである。
【0214】
線812は、1次側U相(第1アーム21)のローサイドのトランジスタTr2のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流Idを表す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0215】
線813は、1次側V相(第2アーム22)のローサイドのトランジスタTr4のドレイン-ソース間電圧Vdsを表す。
【0216】
線814は、1次側V相(第2アーム22)のローサイドのトランジスタTr4のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流Idを表す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0217】
線815は、2次側U相(第3アーム31)のローサイドのトランジスタTr6のドレイン-ソース間電圧Vdsを表す。
【0218】
線816は、2次側U相(第3アーム31)のローサイドのトランジスタTr6のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流Idを表す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0219】
線817は、2次側V相(第4アーム32)のローサイドのトランジスタTr8のドレイン-ソース間電圧Vdsを表す。
【0220】
線818は、2次側V相(第4アーム32)のローサイドのトランジスタTr8のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流Idを表す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0221】
図26は、半負荷時(例えば、出力指令値=約50、第1位相差φ
p-s=85deg(絶対的な位相差)、第2位相差φ
p-p=第3位相差φ
s-s=22deg)の回路シミュレーション結果を示す図である。
【0222】
線821は、1次側U相(第1アーム21)のローサイドのトランジスタTr2のドレイン-ソース間電圧Vdsを表す。
【0223】
線822は、1次側U相(第1アーム21)のローサイドのトランジスタTr2のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流Idを表す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0224】
線823は、1次側V相(第2アーム22)のローサイドのトランジスタTr4のドレイン-ソース間電圧Vdsを表す。
【0225】
線824は、1次側V相(第2アーム22)のローサイドのトランジスタTr4のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流Idを表す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0226】
線825は、2次側U相(第3アーム31)のローサイドのトランジスタTr6のドレイン-ソース間電圧Vdsを表す。
【0227】
線826は、2次側U相(第3アーム31)のローサイドのトランジスタTr6のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流Idを表す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0228】
線827は、2次側V相(第4アーム32)のローサイドのトランジスタTr8のドレイン-ソース間電圧Vdsを表す。
【0229】
線828は、2次側V相(第4アーム32)のローサイドのトランジスタTr8のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流Idを表す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0230】
図27は、全負荷時(例えば、出力指令値=100、第1位相差φ
p-s=50deg(絶対的な位相差)、第2位相差φ
p-p=第3位相差φ
s-s=0deg)の回路シミュレーション結果を示す図である。
【0231】
線831は、1次側U相(第1アーム21)のローサイドのトランジスタTr2のドレイン-ソース間電圧Vdsを表す。
【0232】
線832は、1次側U相(第1アーム21)のローサイドのトランジスタTr2のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流Idを表す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0233】
線833は、1次側V相(第2アーム22)のローサイドのトランジスタTr4のドレイン-ソース間電圧Vdsを表す。
【0234】
線834は、1次側V相(第2アーム22)のローサイドのトランジスタTr4のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流Idを表す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0235】
線835は、2次側U相(第3アーム31)のローサイドのトランジスタTr6のドレイン-ソース間電圧Vdsを表す。
【0236】
線836は、2次側U相(第3アーム31)のローサイドのトランジスタTr6のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流Idを表す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0237】
線837は、2次側V相(第4アーム32)のローサイドのトランジスタTr8のドレイン-ソース間電圧Vdsを表す。
【0238】
線838は、2次側V相(第4アーム32)のローサイドのトランジスタTr8のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流Idを表す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0239】
図25から
図27までに示す通り、第1実施形態の電源装置1は、無負荷時、半負荷時及び全負荷時の全部の場合において、ソフトスイッチング動作が可能である。
【0240】
図28は、第1の実施形態の電源装置の回路シミュレーション結果を示す図である。
図28は、入出力電圧比n=1.0:0.5である場合の回路シミュレーション結果を示す。
図28において、横軸は、正規化された出力電流を表し、縦軸は、入力電流循環電流比率を表す。
【0241】
線841は、第1実施形態の電源装置1の出力電流と入力電流循環電流比率との関係を示す。線842は、第2比較例の出力電流と入力電流循環電流比率との関係を示す。
【0242】
線841で示すように、第1実施形態の電源装置1は、第2比較例と比較して、全範囲にわたって、入力電流循環電流比率、つまり、変換効率を向上させることができる。
【0243】
(第1実施形態の制御部の構成例)
図29は、第1実施形態の電源装置の制御部の構成例を示す図である。
図29は、定電流制御の場合の制御部18の構成例を示す図である。
【0244】
制御部18は、第1位相差極大値設定部61と、第1位相差算出部62と、第2第3位相差臨界値算出部63と、スイッチング周波数算出部64と、第2第3位相差算出部65と、駆動パルス生成部66と、1次側パルス駆動部67と、2次側パルス駆動部68と、を含む。
【0245】
第1位相差極大値設定部61は、入出力電圧比nに基づいて、第1位相差φ
p-sの極大値(
図16の点711a、712a、713a、714a参照)を設定し、第1位相差算出部62に出力する。なお、第1位相差極大値設定部61は、数式、マップデータ等を用いて、第1位相差φ
p-sの極大値を設定することとしても良い。
【0246】
第1位相差算出部62は、電流指令値(出力指令値)及び第1位相差φ
p-sの極大値に基づいて、第1位相差φ
p-sを算出し(
図24の線802参照)、第2第3位相差臨界値算出部63、スイッチング周波数算出部64及び駆動パルス生成部66に出力する。なお、第1位相差算出部62は、数式、マップデータ等を用いて、第1位相差φ
p-sを算出することとしても良い。
【0247】
第2第3位相差臨界値算出部63は、入出力電圧比n及び第1位相差φ
p-sに基づいて、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sの臨界値を算出し、第2第3位相差算出部65に出力する。
図4及び
図5で示したように、第1位相差φ
p-sは、入出力電圧比nに応じて、ソフトスイッチング領域とハードスイッチング領域との臨界値(境界値)が存在する。これと同様に、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sにも、入出力電圧比n及び第1位相差φ
p-sに応じて、ソフトスイッチング領域とハードスイッチング領域との臨界値が存在する。そこで、第2第3位相差臨界値算出部63は、入出力電圧比n及び第1位相差φ
p-sに基づいて、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sの、ソフトスイッチング領域とハードスイッチング領域との臨界値を算出する。なお、第2第3位相差臨界値算出部63は、数式、マップデータ等を用いて、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sの臨界値を算出することとしても良い。
【0248】
スイッチング周波数算出部64は、電流指令値(出力指令値)及び第1位相差φ
p-sに基づいて、スイッチング周波数fを算出し(
図24の線801参照)、駆動パルス生成部66に出力する。なお、スイッチング周波数算出部64は、数式、マップデータ等を用いて、スイッチング周波数fを算出することとしても良い。
【0249】
第2第3位相差算出部65は、電流指令値(出力指令値)及び第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sの臨界値に基づいて、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sを算出し(
図24の線803参照)、駆動パルス生成部66に出力する。なお、第2第3位相差算出部65は、数式、マップデータ等を用いて、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sを算出することとしても良い。
【0250】
駆動パルス生成部66は、第1位相差φp-s、第2位相差φp-p、第3位相差φs-s及びスイッチング周波数fに基づいて、第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4を生成する。駆動パルス生成部66は、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2を1次側パルス駆動部67に出力する。駆動パルス生成部66は、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4を2次側パルス駆動部68に出力する。
【0251】
1次側パルス駆動部67は、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2の電圧レベルを変換し、第1アーム21及び第2アーム22に出力する。
【0252】
2次側パルス駆動部68は、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4の電圧レベルを変換し、第3アーム31及び第4アーム32に出力する。
【0253】
(まとめ)
以上説明したように、第1実施形態の電源装置1は、第2比較例と同様に、ソフトスイッチング動作が可能な領域を拡大することができる。これにより、第1実施形態の電源装置1は、スイッチング素子の選択肢の増加、スイッチング損失の低減、サージノイズ抑制、安全動作領域改善による素子のストレス低減などが可能となる。また、第1実施形態の電源装置1は、結果的に設計の容易化、低コスト化、電力変換効率の向上、小型化等の性能向上も見込める。
【0254】
また、第1実施形態の電源装置1は、第4比較例と同様に、入出力電圧比nに基づいて、第1位相差φp-sを、入力電流循環電流比率が最大となる値で一定にする。これにより、第1実施形態の電源装置1は、変換効率を向上でき、各種回路構成素子の負担を軽減できる。
【0255】
つまり、第1実施形態の電源装置1は、スイッチング素子の選択肢の制限の緩和と、変換効率の向上と、を両立することができる。
【0256】
<第2実施形態>
(第2実施形態の制御)
第1実施形態では、制御部18は、出力指令値が第3閾値Th3未満の領域では、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを可変制御することとした。一方、第2実施形態では、制御部18は、出力指令値が第3閾値Th3未満の領域では、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを制御することに代えて、第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4のデューティ比を制御する。
【0257】
第2実施形態の制御部18は、出力指令値の増大に伴い、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路15の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内のデューティ比が小さい方のデューティ比を大きくし、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内の他方のデューティ比を小さくすると、出力電流を多くすることができる。
【0258】
なお、第2実施形態では、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2のデューティ比と、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4のデューティ比と、とを同じとするが、本開示はこれに限定されない。第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2のデューティ比と、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4のデューティ比とは、異なっても良い。
【0259】
図30は、第2実施形態の電源装置の制御例を説明する図である。
図30は、入出力電圧比n=1.0:0.5である場合の制御例を示す。
図30の上段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、正規化したスイッチング周波数fを表す。
図30の下段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、第1位相差φ
p-s(deg)及びデューティ比Dを表す。
【0260】
図30において、
図24と同じ線については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0261】
線808は、出力指令値と、デューティ比と、の関係を示す。
【0262】
第2実施形態の制御部18は、出力指令値が第3閾値Th3(例えば、50)未満の領域(矢印806参照)では、線808で示すように、出力指令値が大きくなるほど、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路15の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内のデューティ比が小さい方のデューティ比を単調増加(
図30では、単調増加の一例として直線状に増加)させ、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内の他方のデューティ比を単調減少させる。第2実施形態の制御部18は、出力指令値が第3閾値Th3以上の領域では、線808で示すように、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子のデューティ比を0.5で一定にする。
【0263】
(まとめ)
第2実施形態の制御部18は、出力指令値が第3閾値Th3以下の領域では、デューティ比変調制御を行う。
【0264】
これにより、第2実施形態の電源装置1は、第1実施形態と同様に、ソフトスイッチング動作が可能な領域の拡大と、変換効率の向上と、を両立することができる。
【0265】
なお、第1実施形態は、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを可変するので、アーム間位相差が120degで固定である3相DABには適用できない。
【0266】
一方、第2実施形態は、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを可変しないので、単相DABに適用可能であるだけではなく、3相DABにも適用可能である。
【0267】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0268】
1 電源装置
2 電源
3、16 コンデンサ
4 負荷
12 第1ブリッジ回路
13 リアクトル
14 トランス
15 第2ブリッジ回路
18 制御部
21 第1アーム
22 第2アーム
31 第3アーム
32 第4アーム
61 第1位相差極大値設定部
62 第1位相差算出部
63 第2第3位相差臨界値算出部
64 スイッチング周波数算出部
65 第2第3位相差算出部
66 駆動パルス生成部
67 1次側パルス駆動部
68 2次側パルス駆動部
Tr1、Tr2、Tr3、Tr4、Tr5、Tr6、Tr7、Tr8 トランジスタ