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特開2024-126320運転診断装置および運転診断装置用のプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126320
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】運転診断装置および運転診断装置用のプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/09 20120101AFI20240912BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240912BHJP
【FI】
B60W40/09
B60W50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034622
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 哲
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA01
3D241BA31
3D241BA57
3D241CC01
3D241CC08
3D241DA13B
3D241DA39B
3D241DB02B
3D241DB05B
3D241DC02B
3D241DC03B
3D241DD05B
(57)【要約】
【課題】車両において、自動的な加減速制御が作動しない状態においても、ドライバの安全運転の程度について診断する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】運転診断装置は、制御指示量ACC_cmdがパワトレインシステム16、およびブレーキシステム17で反映されているか否かを判定し、反映されていない場合に、ドライバによる車両の運転操作を反映する操作情報と、制御指示量ACC_cmdの出力状況を反映する制御情報との比較に基づいて、運転操作の診断を行い、診断結果をドライバに通知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバによる車両の運転操作を診断する運転診断装置であって、
前記車両の走行速度(V1)および前記車両から前記車両の前方を走行する先行車両までの車間距離(D)に基づいて、前記車両の加減速に関する指示量である制御指示量(ACC_cmd)を決定して出力する走行制御部(13)と、
前記ドライバに通知を行う通知部(15)と、を備え、
前記通知部は、前記走行制御部が出力した前記制御指示量が前記車両の駆動力および制動力を発生させる駆動制動システム(16、17)で反映されているか否かを判定し、反映されていない場合に、前記ドライバによる前記車両の前記運転操作を反映する操作情報(DR_cmd、DR_t)と、前記制御指示量の出力状況を反映する制御情報(ACC_cmd、ACC_t)との比較に基づいて、前記運転操作の診断を行い、診断結果を前記ドライバに通知する、運転診断装置。
【請求項2】
前記通知部は、前記ドライバによる前記車両の前記運転操作に基づいて出力されて前記駆動制動システムで反映される前記車両の加減速に関する指示量である操作指示量(DR_cmd)と前記制御指示量との乖離量(Δa)に基づいて、前記運転操作の前記診断を行い、診断結果を前記ドライバに通知する、請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項3】
前記通知部は、前記ドライバの前記運転操作による加減速の開始タイミング(DR_t)の、前記制御指示量による加減速の開始タイミング(ACC_t)に対する遅れ時間(ΔT)に基づいて、前記運転操作の前記診断を行い、診断結果を前記ドライバに通知する、請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項4】
前記通知部は、前記車両の減速時に、前記乖離量が閾値(ax)より大きいことに基づいて、前記車両の減速量が不足していることを前記ドライバに通知し、その通知後に前記乖離量が判定値(ay)以下に減少しないことに基づいて、前記ドライバに警告を行い、前記車両のブレーキアシストを行う、請求項2に記載の運転診断装置。
【請求項5】
前記通知部は、前記ドライバへの前記警告および前記ブレーキアシストの履歴に基づいて、前記ドライバの前記運転操作の安全度を示す得点を算出して記録する、請求項4に記載の運転診断装置。
【請求項6】
ドライバによる車両の運転操作を診断する運転診断装置に用いるプログラムであって、
前記車両の走行速度(V1)および前記車両から前記車両の前方を走行する先行車両までの車間距離(D)に基づいて、前記車両の加減速に関する指示量である制御指示量(ACC_cmd)を決定して出力する走行制御部(13)、および
前記ドライバに通知を行う通知部(15)として、前記運転診断装置を機能させ、
前記通知部は、前記走行制御部が出力した前記制御指示量が前記車両の駆動力および制動力を発生させる駆動制動システム(16、17)で反映されているか否かを判定し、反映されていない場合に、前記ドライバによる前記車両の前記運転操作を反映する操作情報(DR_cmd、DR_t)と、前記制御指示量の出力状況を反映する制御情報(ACC_cmd、ACC_t)との比較に基づいて、前記運転操作の診断を行い、診断結果を前記ドライバに通知する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転診断装置および運転診断装置用のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、自車両について、「自動減速制御が働かない状態で走行した距離」に対する「前方車両以外の要因によって自動減速制御が作動した状態で走行した距離」の割合が所定割合未満であった場合に、車両が安全運転を行っていると診断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-237827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような技術では、ドライバの運転操作によらない自動的な加減速制御(例えば、アダプティブクルーズコントロール、自動ブレーキ)が作動している期間の情報を加味した運転診断となっている。すなわち、自動的な加減速制御が発動するような運転操作とそうでない運転操作との比較によって安全運転の診断を行っている。
【0005】
しかし、自動的な加減速制御が発動しないような運転操作の中でも、危険度の高い運転操作もあれば、比較的安全な運転操作もある。また、そもそも自動的な加減速制御が発動しないようにドライバが設定されている場合もある。このような、自動運転が発動しないような状況における運転操作内での安全度の高低については、特許文献1の技術は診断できない。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、自動的な加減速制御が作動しない状態においても、ドライバの安全運転の程度について診断する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、
ドライバによる車両の運転操作を診断する運転診断装置であって、
前記車両の走行速度(V1)および前記車両から前記車両の前方を走行する先行車両までの車間距離(D)に基づいて、前記車両の加減速に関する指示量である制御指示量(ACC_cmd)を決定して出力する走行制御部(13)と、
前記ドライバに通知を行う通知部(15)と、を備え、
前記通知部は、前記走行制御部が出力した前記制御指示量が前記車両の駆動力および制動力を発生させる駆動制動システム(16、17)で反映されているか否かを判定し、反映されていない場合に、前記ドライバによる前記車両の前記運転操作を反映する操作情報(DR_cmd、DR_t)と、前記制御指示量の出力状況を反映する制御情報(ACC_cmd、ACC_t)との比較に基づいて、前記運転操作の診断を行い、診断結果を前記ドライバに通知する、運転診断装置である。
【0008】
また、請求項6に記載の発明は、
ドライバによる車両の運転操作を診断する運転診断装置に用いるプログラムであって、
前記車両の走行速度(V1)および前記車両から前記車両の前方を走行する先行車両までの車間距離(D)に基づいて、前記車両の加減速に関する指示量である制御指示量(ACC_cmd)を決定して出力する走行制御部(13)、および
前記ドライバに通知を行う通知部(15)として、前記運転診断装置を機能させ、
前記通知部は、前記走行制御部が出力した前記制御指示量が前記車両の駆動力および制動力を発生させる駆動制動システム(16、17)で反映されているか否かを判定し、反映されていない場合に、前記ドライバによる前記車両の前記運転操作を反映する操作情報(DR_cmd、DR_t)と、前記制御指示量の出力状況を反映する制御情報(ACC_cmd、ACC_t)との比較に基づいて、前記運転操作の診断を行い、診断結果を前記ドライバに通知する、プログラムである。
【0009】
このように、運転診断装置において、ドライバの運転操作以外の要因による車両の加減速制御、すなわち、走行制御部による車両の加減速制御が働いていない状態においても、上記のように、走行制御部の出力した制御指示量を利用して、運転者の安全運転の程度について診断することができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車載システムの構成図である。
図2】制御部の構成を示す図である。
図3】通知部の構成を示す図である。
図4】ドライバ加減速判定部が実行する処理のフローチャートである。
図5】制御指示量と操作指示量の時間経過に伴う推移を示すグラフである。
図6】運転診断部が通常モードにおいて実行する処理のフローチャートである。
図7】運転診断部が通知後モードにおいて実行する処理のフローチャートである。
図8】通知、警告、ブレーキアシストが発生する事例について、時間経過に伴う制御指示量、操作指示量、通知レベル、ブレーキアシストの推移を示す図である。
図9】通知が発生し、警告もブレーキアシストも発生しない事例について、時間経過に伴う制御指示量、操作指示量、通知レベル、ブレーキアシストの推移を示すグラフである。
図10】第2実施形態において運転診断部が実行する処理のフローチャートである。
図11】加速時用のイベントテーブルである。
図12】減速時用のイベントテーブルである。
図13】加速時用のインデックステーブルである。
図14】減速時用のインデックステーブルである。
図15】加速時用の通知用データの内容を示すテーブルである。
図16】減速時用の通知用データの内容を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る車載システムは、車両に搭載され、センサシステム11、衝突車間距離演算部12、制御部13、制御切替部14、通知部15、パワトレインシステム16、ブレーキシステム17を有している。制御部13は、走行制御部に対応する。衝突車間距離演算部12、制御部13、制御切替部14、および通知部15が、全体として運転診断装置を構成する。
【0013】
センサシステム11は、自車両(すなわち、この車載システムの搭載先の車両)の位置、走行速度、進行方向、ヨーレート、加速度等を検出するためのセンサを有している。このようなセンサとしては、加速度センサ、ヨーレートセンサ、車輪速センサ、衛星航法受信機(例えばGPS受信器)等が用いられてもよいし、これら以外の機器が用いられてもよい。
【0014】
またセンサシステム11は、自車両の進行方向前方を走行する車両の位置、走行速度、進行方向、加速度等を検出するためのセンサを有している。このようなセンサとしては、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、カメラ、レーザレーダ等が用いられてもよいし、これら以外の機器が用いられてもよい。
【0015】
センサシステム11は、このようにして検出した量に基づいて、自車両の走行速度V1、自車両の進行方向に沿った加速度a1、自車両から先行車両までの車間距離D、自車両に対する先行車両の相対速度Vdを繰り返し特定する。そして、最新の走行速度V1、加速度a1、車間距離D、相対速度Vdを、衝突車間距離演算部12に繰り返し出力する。また、最新の走行速度V1、車間距離D、相対速度Vdを、制御部13に繰り返し出力する。
【0016】
衝突車間距離演算部12、制御部13、制御切替部14、通知部15の各々は、CPU、揮発性記憶媒体、不揮発性記憶媒体等を有するマイクロコンピュータから構成されていてもよい。その場合、各マイクロコンピュータのCPUは、対象装置(すなわち、衝突車間距離演算部12、制御部13、制御切替部14、通知部15のいずれか)の下記の機能を実現するため、当該機能のための処理が記述されたプログラムを不揮発性記憶媒体から読み出して実行する。そして、その実行の際に揮発性記憶媒体および不揮発性記憶媒体を作業領域として使用する。なお、後述する作動の説明において、単に「不揮発性記憶媒体」というときは、その作動を実現する装置に備えられた不揮発性記憶媒体をいう。あるいは、衝突車間距離演算部12、制御部13、制御切替部14の各々は、自機の機能を実現する専用のハードウェア回路として実現されていてもよい。
【0017】
また、衝突車間距離演算部12、制御部13、制御切替部14、通知部15のうちいずれか2つ、3つまたは4つすべてが、まとめて1つのマイクロコンピュータまたは1つの専用のハードウェア回路として実現されていてもよい。衝突車間距離演算部12、制御部13、制御切替部14は、全体として、走行制御装置に対応する。
【0018】
衝突車間距離演算部12は、センサシステム11から走行速度V1、加速度a1、車間距離D、相対速度Vdを繰り返し取得する。また、衝突車間距離演算部12は、不図示のオンオフスイッチに対して自車両のドライバが操作を行った場合、当該スイッチから車間距離警報の稼働または停止を示すオンオフ信号W_swを取得する。また、衝突車間距離演算部12は、不図示の余裕度設定スイッチに対してドライバが車間距離の設定操作をした場合に当該余裕度設定スイッチから余裕度Dsetの情報を取得する。
【0019】
そして衝突車間距離演算部12は、これら取得した情報に基づいて、衝突車間距離Dthを逐次算出して制御部13に出力する。この衝突車間距離Dthは、小さくなればなるほど自車両が先行車両に衝突する可能性が高くなる量であり、先行車が急ブレーキをした際に自車両が先行車に追突しないようにするために用いられる量である。衝突車間距離Dthは、制御部13において制約条件の設定のために用いられる。
【0020】
また、衝突車間距離演算部12は、算出した衝突車間距離Dthが基準距離Lより短い場合、通知部15に警報指示Caを出力する。基準距離Lは、例えばゼロであってもよいし、ゼロ以外の値であってもよい。ただし、通知部15に警報指示Caを出力する機能は、上述のオンオフ信号W_swがオンとなっている場合に作動し、オンオフ信号W_swがオフになっている場合には停止する。
【0021】
制御部13は、センサシステム11から走行速度V1、車間距離D、相対速度Vdを繰り返し取得する。また制御部13は、不図示のACC設定スイッチに対してドライバが車速の設定操作をした場合に、当該ACC設定スイッチから設定速度Vaccの情報を取得する。また制御部13は、衝突車間距離演算部12から衝突車間距離Dthを繰り返し取得する。
【0022】
そして制御部13は、取得した走行速度V1、車間距離D、相対速度Vd、設定速度Vacc、衝突車間距離Dthに基づいて、自車両の加減速に関する制御指示量ACC_cmdを算出し、算出結果を制御切替部14および通知部15に出力する。具体的には、車両が設定速度Vaccにより近い速度で走行できるよう、かつ、衝突車間距離Dthがゼロ以下になる状況を抑制するよう、制御指示量ACC_cmdを算出して制御切替部14に出力する。制御指示量ACC_cmdは、自車両の加速度、減速度を指示する値であってもよいし、車両に発生させる駆動トルク、制動トルクの値であってもよいし、自車両の加減速に関する他の値であってもよい。
【0023】
通知部15は、上述の通り、制御部13から制御指示量ACC_cmdを逐次取得する。また通知部15は、ドライバの運転操作を反映した車両の加減速に関する操作指示量DR_cmdを、不図示の運転操作検出装置から逐次取得する。運転操作検出装置は、アクセルペダルの踏み込み量を検出するセンサ、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するセンサ等を含み、運転操作に応じて自車両に発生させるべき進行方向に沿った加速度を検出して、その加速度を操作指示量DR_cmdとして出力する。あるいは、運転操作検出装置は、アクセルペダルの踏み込み量、ブレーキペダルの踏み込み量自体を操作指示量DR_cmdとして出力してもよい。ただしその場合は、この操作指示量DR_cmdの受け側となる通知部15等で、操作指示量DR_cmdの値を、アクセルペダルの踏み込み量、ブレーキペダルの踏み込み量に応じて自車両に発生させるべき加速度に変換する。また不図示のACC切替スイッチに対してドライバが操作を行うと、通知部15はその操作を反映するACC稼働/停止情報ACC_swをACC切替スイッチから取得する。ACC稼働/停止情報ACC_swは、アダプティブクルーズコントロールを実行するか否かを切り替えるための信号であり、ドライバの操作に従って実行を示すオンの値と、非実行を示すオフの値との間で切り替え可能である。
【0024】
また通知部15は、必要に応じて、自車両に制動力を発生させるための制動指示BRKを、制御切替部14に出力する。また通知部15(より具体的には後述する出力部153)は、衝突車間距離演算部12から警報指示Caを取得した場合に、ドライバに警報を行う。通知部15は、例えば、車室内の所定のランプを点灯させることで警報を行ってもよいし、所定の警報音を発生させることで警報を行ってもよいし、車室内の画像表示装置に所定の警報画像を表示させることで警報を行ってもよい。
【0025】
制御切替部14は、制御部13からの制御指示量ACC_cmdに従って車両を走行させるか、ドライバの運転操作に従って車両を走行させるかを切り替える装置である。制御切替部14は、不図示のACC切替スイッチに対してドライバが操作を行ったことに基づいて、その操作を反映するACC稼働/停止情報ACC_swをACC切替スイッチから取得する。また、制御切替部14は、ドライバの運転操作(例えば、アクセル踏込操作、ブレーキ踏込操作)を反映した車両の加減速に関する操作指示量DR_cmdを、上述の運転操作検出装置から取得する。
【0026】
そして制御切替部14は、ACC稼働/停止情報ACC_swの内容に従って、制御指示量ACC_cmd、操作指示量DR_cmdのうち一方を選択し、選択した方を加減速指示量CMDとして、パワトレインシステム16、ブレーキシステム17に出力する。
【0027】
また制御切替部14は、通知部15から制動指示BRKを取得すると、ACC稼働/停止情報ACC_swの内容に関わらず、自車両が制動力を発生するよう、加減速指示量CMDをパワトレインシステム16、ブレーキシステム17に出力する。
【0028】
パワトレインシステム16は、制御切替部14から出力された加減速指示量CMDを実現するよう、加速時等に、車両のエンジン、走行用モータ等を駆動することで、車両に駆動力を発生させる。ブレーキシステム17は、制御切替部14から出力された加減速指示量CMDを実現するよう、減速時に、制動装置を駆動することで、車両に駆動力を発生させる。パワトレインシステム16とブレーキシステム17は、駆動制動システムを構成する。
【0029】
以上のような構成の車載システムの作動について説明する。まず、ドライバがACC切替スイッチをオフに切り替えた場合、制御切替部14に入力されるACC稼働/停止情報ACC_swがオフになる。これにより、制御切替部14は、ドライバの運転操作に従った操作指示量DR_cmdを加減速指示量CMDとしてパワトレインシステム16、ブレーキシステム17に出力する。これにより、パワトレインシステム16およびブレーキシステム17は、加減速指示量CMDに従い、必要な駆動力および制動力を車両に発生させる。これにより、アダプティブクルーズコントロールが実行されずに、ドライバの操作に従って車両が走行する。なお、制御部13は、自車両の走行中は、アダプティブクルーズコントロールが実行されない場合においても、実行されている場合と同様に、制御指示量ACC_cmdを算出して制御切替部14に出力し続ける。
【0030】
また、ドライバがACC切替スイッチをオンに切り替えた場合、制御切替部14に入力されるACC稼働/停止情報ACC_swがオンになる。これにより、制御切替部14は、制御部13から出力された制御指示量ACC_cmdを加減速指示量CMDとしてパワトレインシステム16、ブレーキシステム17に出力する。これにより、パワトレインシステム16、ブレーキシステム17は、制御部13の指示に従い、必要な駆動力および制動力を車両に発生させる。これにより、ドライバの加減速操作によらず、車両が設定速度Vaccにより近い速度で走行できるよう、かつ、衝突車間距離Dthがゼロ以下になる状況を抑制するよう、車両の加減速が自動的に駆動される。すなわち、アダプティブクルーズコントロールが実現する。なお、このようにアダプティブクルーズコントロールが実現するのは、自車両が加速中であっても減速中であっても同様である。
【0031】
ここで、衝突車間距離演算部12で繰り返し算出される衝突車間距離Dthについて説明する。衝突車間距離Dthは、
Dth=D+(V2)/(2×a2)-(V1)/(2×a1)-τ×V1-Dset
という式によって算出される。
【0032】
ここで、D、V1、a1は、それぞれ、センサシステム11から取得した最新の車間距離D、走行速度V1、加速度a1である。またV2は、自車両の進行方向に沿った先行車両の走行速度であり、センサシステム11から取得した最新の相対速度Vdおよび走行速度V1から算出される。またa2は、自車両の進行方向に沿った先行車両の加速度であり、センサシステム11から取得した相対速度Vdの時間微分およびセンサシステム11から取得した加速度a1から算出される。
【0033】
また、τは自車両の空走時間であり、あらかじめ固定的に定められて、または不図示の入力デバイスに対するドライバの設定操作によって定められて、衝突車間距離演算部12の不揮発性記憶媒体に記録されている正の値である。あるいは、空走時間τは、実際に計測可能であれば、その計測値が用いられてもよい。
【0034】
また、Dsetは、余裕度を示す0または正の値であり、距離の次元を有する。Dsetが大きいほど、安全とみなされる車間距離が増大する傾向にある。すなわち、Dsetは、それが大きくなるほど衝突車間距離Dthを小さくする量である。既に説明した通り、Dsetは不図示の余裕度設定スイッチに対するドライバの設定操作によって定められて、衝突車間距離演算部12の記憶媒体に記録される。余裕度設定スイッチは、Dsetの値を長、中、短のように段階的に設定可能なように構成されていてもよいし、連続的に設定可能なように構成されていてもよい。
【0035】
なお、衝突車間距離Dthに関する上式の右辺第2項である(V2)/(2×a2)は、先行車両の減速時には先行車両の制動距離に相当する。先行車両の制動距離は、それが大きくなるほど、衝突車間距離Dthを大きくする量である。また、右辺第3項である(V1)/(2×a1)は、自車両の減速時には自車両の制動距離に相当する。自車両の制動距離は、それが大きくなるほど衝突車間距離Dthを小さくする量である。また、右辺第4項であるτ×V1は、自車両の空走距離に相当する。空走距離は、それが大きくなるほど衝突車間距離Dthを小さくする量である。
【0036】
また、衝突車間距離Dthは、車間距離D、走行速度V1、V2、加速度a1、a2、空走時間τ、余裕度Dsetのみならず、自車両の慣性抵抗Cd、および、進行方向に直交する断面における自車両の最大の断面積S1に依存するように、算出されてもよい。その場合は、慣性抵抗Cd、断面積S1の値については、あらかじめ衝突車間距離演算部12の不揮発性記憶媒体に記録されているものが用いられる。例えば、慣性抵抗Cdが大きいほど衝突車間距離Dthが長くなるよう、断面積S1が大きいほど衝突車間距離Dthが長くなるよう、衝突車間距離Dthが算出されてもよい。
【0037】
このように、衝突車間距離Dthは、車間距離Dに基づいた指標である。また、衝突車間距離Dthは、車間距離Dが大きくなるほど衝突車間距離Dthを大きくする量と、自車両の制動距離が大きくなるほど衝突車間距離Dthを小さくする量と、先行車両の制動距離が大きくなるほど衝突車間距離Dthを大きくする量を含む。
【0038】
次に、制御部13の作動について説明する。図2に示すように、制御部13は、最適制御部131と、予測部132とを有している。最適制御部131、予測部132の各々は、CPU、揮発性記憶媒体、不揮発性記憶媒体等を有するマイクロコンピュータから構成されていてもよい。その場合、各マイクロコンピュータのCPUは、対象装置(すなわち、最適制御部131または予測部132)の下記の機能を実現するため、当該機能のための処理が記述されたプログラムを不揮発性記憶媒体から読み出して実行する。そしてその実行の際に、揮発性記憶媒体および不揮発性記憶媒体を作業領域として使用する。
【0039】
あるいは、最適制御部131、予測部132の各々は、自機の機能を実現する専用のハードウェア回路として実現されていてもよい。また、最適制御部131、予測部132が、まとめて1つのマイクロコンピュータまたは1つの専用のハードウェア回路として実現されていてもよい。
【0040】
最適制御部131は、衝突車間距離演算部12から出力された最新の衝突車間距離Dth、センサシステム11から取得した最新の車間距離D、走行速度V1、相対速度Vd、および、ドライバが設定した設定速度Vaccに基づいて、最適制御処理を行う。そしてその最適制御処理により、自車両の加減速に関する上述の制御指示量ACC_cmdを算出する。
【0041】
具体的には、最適制御部131は、自車両の走行速度V1が設定速度Vaccに近づくように最適制御を行うことで、走行速度V1を設定速度Vaccに追従させるための自車両の進行方向の加減速度を制御周期毎に算出する。そして、算出した結果の加減速度の制御指示量ACC_cmdを制御切替部14に逐次出力する。なお、加速度と加減速度は同じ量であり、減速度は加速度の正負を反転した値である。
【0042】
ただしその最適制御は、衝突車間距離Dth>Lとなるような制約条件を有する最適制御である。最適化制御の手法としては、最適レギュレータ等を用いた手法等、種々のものを用いることができる。また、最適化制御に制約条件を導入する手法についても、種々の手法を用いることができる。また、最適化制御において最小化させる評価関数は、自車両の走行速度V1と設定速度Vaccの乖離量(例えば、両者の差の絶対値)が大きくなるほど大きくなる量を含むと共に、他の種々の量を含んでいてもよい。
【0043】
予測部132は、最適制御部131が出力した加減速度の制御指示量ACC_cmdに基づいて、上記制御周期を1ステップとして現在以降のNステップ分の自車両の位置x1_estおよび走行速度V1_estを予測して、予測結果を最適制御部131に出力する。ここで、Nは2以上の整数である。
【0044】
ここで行われる予測は、制御指示量ACC_cmdに基づいて作動するパワトレインシステム16、ブレーキシステム17、および、自車両のタイヤ、サスペンション、エンジン、モータ、制動装置等をシミュレートするプラントモデルを用いて行われてもよいし、他の手法で行われてもよい。これらプラントモデルおよびプラントモデル用のパラメータは、あらかじめ予測部132の不揮発性記憶媒体に記録されている。なお、他の例として、ここで行われる予測は、プラントモデルを用いる以外の手法で実現されてもよい。
【0045】
そして、最適制御部131は、各制御周期において、走行速度V1_estが設定速度Vaccに追従するように最適制御を行う。このとき、上述の評価関数には、予測部132から出力されたNステップ分の位置x1_estおよび走行速度V1_estに応じた量を含む。例えば、評価関数には、各ステップにおける走行速度V1_estと設定速度Vaccの乖離量(例えば両者の差の絶対値)が大きくなるほど大きくなる量を含んでもよい。
【0046】
なお、予測部132は、各制御周期において、上記のように1ステップ分の制御指示量ACC_cmdのみならず、Mステップ分の自車両の制御指示量ACC_cmdについて最適制御で算出してもよい。ここで、Mは2以上の整数であり、Nと同じであってもよいしNより少なくてもよい。その場合には、予測部132は、それらMステップ分の制御指示量ACC_cmdに基づいて自車両の位置x1_estおよび走行速度V1_estを予測して、予測結果を最適制御部131に出力する。
【0047】
また、予測部132は、自車両のみならず、先行車両のNステップ分の位置および走行速度を予測して最適制御部131に入力してもよい。その場合、最適制御部131は、これらNステップの各々において自車両の位置と先行車両の位置に基づいて車間距離Dmを算出してもよい。そして各ステップの車間距離Dmと、センサシステム11から取得した最新の車間距離Dと、衝突車間距離演算部12から取得した最新の衝突車間距離Dthに基づいて、Dth-D+Dm>Lとなるように、最適制御で制御指示量ACC_cmdを算出してもよい。すなわち、車間距離に関する制約を陽に課しながら車速に関する最適制御を行ってもよい。
【0048】
次に、通知部15の詳細構成および作動について説明する。通知部15は、図3に示すように、ドライバ加減速判定部151と、運転診断部152と、出力部153と、を有している。
【0049】
ドライバ加減速判定部151と、運転診断部152と、出力部153の各々は、CPU、揮発性記憶媒体、不揮発性記憶媒体等を有するマイクロコンピュータから構成されていてもよい。その場合、各マイクロコンピュータのCPUは、対象装置の下記の機能を実現するため、当該機能のための処理が記述されたプログラムを不揮発性記憶媒体から読み出して実行する。そしてその実行の際に、揮発性記憶媒体および不揮発性記憶媒体を作業領域として使用する。なお、対象装置とは、ドライバ加減速判定部151、運転診断部152、出力部153のいずれか該当するものをいう。
【0050】
あるいは、ドライバ加減速判定部151と、運転診断部152と、出力部153の各々は、自機の機能を実現する専用のハードウェア回路として実現されていてもよい。また、ドライバ加減速判定部151、運転診断部152、出力部153のうちいずれか2つまたは3つ全部が、まとめて1つのマイクロコンピュータまたは1つの専用のハードウェア回路として実現されていてもよい。
【0051】
ドライバ加減速判定部151は、自車両の走行中、図4に示す処理を実行する。図4のステップS110からS140までの1回分の処理が、1回の制御周期に相当する。具体的には、まずステップS110では、通知部15に入力されたACC稼働/停止情報ACC_swに基づいて、アダプティブクルーズコントロールが実行中であるか否かを判定する。この判定は、制御部13が出力した制御指示量ACC_cmdが自車両のパワトレインシステム16およびブレーキシステム17で反映されているか否かの判定に相当する。
【0052】
ACC稼働/停止情報ACC_swがオンの場合、アダプティブクルーズコントロールが実行中であると判定し、ステップS110を再度実行する。ACC稼働/停止情報ACC_swがオフの場合、アダプティブクルーズコントロールが実行中でないと判定し、ステップS120に進む。
【0053】
ステップS120では、制御指示量ACC_cmdに基づいた車両の加減速の開始タイミングACC_tおよび操作指示量DR_cmdに基づいた車両の加減速の開始タイミングDR_tの検出を試みる。
【0054】
ここで、開始タイミングACC_t、開始タイミングDR_tについて、図5を用いて説明する。図5は、アダプティブクルーズコントロールが実行されずに自車両が走行している場合の、時間経過に伴う制御指示量ACC_cmd、操作指示量DR_cmdの推移を示す。縦軸が加速度を示し、横軸が時間を示す。
【0055】
この図の事例においては、ドライバの運転操作に従って自車両が加速度ゼロの定速走行をしている状態から、先行車両等の各種要因により、制御指示量ACC_cmdがゼロからマイナスに変化する。更に、時間的に遅れてドライバの減速操作により操作指示量DR_cmdがゼロからマイナスに変化する。
【0056】
制御指示量ACC_cmdに基づいた車両の加減速の開始タイミングACC_tは、制御指示量ACC_cmdがゼロから正の値または負の値に変化し始めたタイミングである。また、ドライバの運転操作に基づいた車両の加減速の開始タイミングDR_tは、操作指示量DR_cmdがゼロから正の値または負の値に変化し始めたタイミングである。例えば、自車両の減速時は、開始タイミングDR_tは、ドライバによるアクセルペダルの踏み戻しおよびブレーキペダルの踏み始めのタイミングである。
【0057】
したがって、ドライバ加減速判定部151は、今回の制御周期において、制御指示量ACC_cmdがゼロから正の値または負の値に変化し始めたとすると、現在の制御周期のタイミングを開始タイミングACC_tとして検出する。また、ドライバ加減速判定部151は、今回の制御周期において、操作指示量DR_cmdがゼロから正の値または負の値に変化し始めたとすると、現在の制御周期のタイミングを開始タイミングDR_tとして検出する。ただし、ハンチングを防ぐために、ゼロから正の値または負の値への変化の有無は、所定のヒステリシスを有して判定されてもよい。
【0058】
このように、ステップS120では、開始タイミングACC_t、開始タイミングDR_tの検出を試みるが、前者のみが検出される場合も、後者のみが検出される場合も、両者が検出される場合も、いずれも検出されない場合も、ある。例えば、図5の事例では、制御指示量ACC_cmdがゼロからマイナスに低下する時点で開始タイミングACC_tのみが検出される。そして、操作指示量DR_cmdがゼロからマイナスに低下する時点で開始タイミングDR_tのみが検出される。しかし、それ以外の時点ではどちらも検出されない。
【0059】
続いてステップS130では、加減速乖離量Δaを算出する。具体的には、制御指示量ACC_cmdに対する操作指示量DR_cmdの乖離量を算出する。加減速乖離量Δaは、自車両の減速時には、図5に例示するすように、最新の操作指示量DR_cmdから最新の制御指示量ACC_cmdを減算した値、すなわち、ドライバの減速操作の不足分に相当する。この量は、制御指示量ACC_cmdの絶対値から操作指示量DR_cmdの絶対値を減算した値と同じである。これは、減速時は加速度がマイナスの値になるからである。また、加減速乖離量Δaは、自車両の加速時には、ドライバの加速操作の不足分となるよう、最新の制御指示量ACC_cmdから最新の操作指示量DR_cmdを減算した値として算出される。
【0060】
続いてステップS140では、開始タイミングDR_t、ACC_tのうち直前のステップS120で検出したものと、ステップS130で算出した加減速乖離量Δaを、運転診断部152に出力する。開始タイミングDR_t、ACC_tのどちらも検出できていなければ、加減速乖離量Δaのみを出力する。その後、処理は次の制御周期でステップS110に戻る。
【0061】
このような処理によりドライバ加減速判定部151は、アダプティブクルーズコントロールの非実行中、制御周期毎に、加減速乖離量Δaを制御周期毎に出力すると共に、開始タイミングDR_t、ACC_tを、検出できたときは出力する。
【0062】
なお、制御指示量ACC_cmd、開始タイミングACC_tは、いずれも、制御指示量ACC_cmdの出力状況を反映する制御情報に相当する。また、操作指示量DR_cmd、開始タイミングDR_tは、いずれも、ドライバによる自車両の運転操作を反映する操作情報に相当する。
【0063】
運転診断部152は、自車両の運転中かつ自車両の減速時に、通常モードにおいては図6に示す処理を実行し、通知後モードにおいては図7に示す処理を実行する。自車両の減速時か否かは、例えば制御指示量ACC_cmdの示す加速度が負か否かで判定してもよい。初期の状態は通常モードである。通常モードにおいて運転診断部152は、まずステップS205で、ドライバ加減速判定部151から加減速乖離量Δaを逐次取得しながら、開始タイミングDR_tおよび開始タイミングACC_tの取得を待つ。そして、開始タイミングDR_tおよび開始タイミングACC_tの両方が揃った段階で、反応乖離時間ΔTを算出し、ステップS210に進む。ステップS210に進むのは少なくとも加減速乖離量Δaを取得しているタイミングなので、このときアダプティブクルーズコントロールは実行されていない。
【0064】
反応乖離時間ΔTは、開始タイミングACC_tに対する開始タイミングDR_tの遅れ量である。開始タイミングACC_tよりも開始タイミングDR_tが遅れる場合に反応乖離時間ΔTが正の値となり、開始タイミングACC_tよりも開始タイミングDR_tが先行する場合に反応乖離時間ΔTが負の値となる。このように、反応乖離時間ΔTは、開始タイミングACC_tと開始タイミングDR_tとの比較結果を示す量である。
【0065】
なお、ステップS205では、開始タイミングACC_tを先に取得し、かつ、取得してからの経過時間が閾値Txを超えても開始タイミングDR_tを取得していない場合は、反応乖離時間ΔTを閾値Txよりも高い値に設定してステップS210に進んでもよい。このようにすることで、ドライバの反応遅れをいち早く検出することもできる。
【0066】
ステップS210では、取得した加減速乖離量Δaと特定した反応乖離時間ΔTに基づいて、「反応乖離時間ΔTが所定の閾値Txより大きく、かつ、加減速乖離量Δaが所定の閾値axより大きい」か、あるいはそうでないかを判定する。そして、ΔT>TxかつΔa>axである場合はステップS215に進み、ΔT≦TxまたはΔa≦axである場合はステップS220に進む。
【0067】
ステップS215では、反応乖離時間ΔTに基づいて減速操作タイミングの遅れ量を特定し、加減速乖離量Δaに基づいて不足している減速量を特定し、これら特定した量の通知を指示する通知コマンドN_cmdを、出力部153に出力する。減速操作タイミングの遅れ量は、反応乖離時間ΔTそのものであってもよいし、反応乖離時間ΔTに応じて複数段階で定められる量(例えば、遅れ大、遅れ中、遅れ小)であってもよい。不足している減速量は、加減速乖離量Δaそのものであってもよいし、加減速乖離量Δaに応じて複数段階で定められる量(例えば、不足大、不足中、不足小)であってもよい。
【0068】
この通知コマンドN_cmdを取得した出力部153は、不図示の通知装置(例えば、インジケータランプ、スピーカ、ディスプレイ)に、通知コマンドN_cmdに従ったドライバへの通知を行わせる。これによりドライバは、自分の減速操作のタイミングが適切なタイミングからどれくらい遅れているか、および、自分の減速操作の量が適切な量からどれくらい足りないかを、知ることができる。ステップS215の実行後は、通知後モードに移行する。
【0069】
ステップS220では、Δa>axであるか否かを判定し、Δa>axであればステップS225に進み、Δa≦axであればステップS230に進む。ステップS225では、加減速乖離量Δaに基づいて不足している減速量をステップS215と同様に特定し、特定した量の通知と、減速操作のタイミングが適切であることの通知を指示する通知コマンドN_cmdを、出力部153に出力する。
【0070】
この通知コマンドN_cmdを取得した出力部153は、上述の通知装置に通知コマンドN_cmdに従ったドライバへの通知を行わせる。これによりドライバは、自分の減速操作のタイミングが適切であること、および、自分の減速操作の量が適切な量からどれくらい足りないかを、知ることができる。ステップS225の実行後は、通知後モードに移行する。
【0071】
ステップS230では、減速操作のタイミングと減速量が適切であることの通知を指示する通知コマンドN_cmdを、出力部153に出力する。この通知コマンドN_cmdを取得した出力部153は、上述の通知装置に通知コマンドN_cmdに従ったドライバへの通知を行わせる。これによりドライバは、自分の減速操作のタイミングが適切であること、および、自分の減速操作の量が適切であることを、知ることができる。なお、ステップS220でΔa≦axであれば、ΔT>Txであるか否かの判定を行うまでもなくステップS230でタイミングが適切であること通知するのは、Δa≦axであればΔT>Txであることが殆どだからである。
【0072】
ステップS230に続いては、ステップS235で、自車両の運転が終了したか否かを判定し、終了していなければステップS205に戻り、終了していればS240に進む。自車両の運転が終了したか否かは、例えば車両のIGがオンからオフになったか否かで判定してもよい。ステップS240では、診断結果を得点化して運転診断部152の不揮発性記憶媒体に記録し、図6図7の処理を終了する。診断結果の得点化については後述する。
【0073】
図7の通知後モードでは、まずステップS305で、最新の加減速乖離量Δaをドライバ加減速判定部151から取得する。続いてステップS310で、ドライバ操作による減速量の不足が、ステップS215、S225の通知のうち通知後モードに移行する起因となった通知(すなわち、1つ目の通知)から基準時間が経過するまでに、解消したか否かを判定する。ドライバ操作による減速量の不足が解消したか否かは、加減速乖離量Δaが判定値ay以下に低下したか否かで判定する。判定値ayは、閾値axと同じであってもよいし、ヒステリシスを持たせるために閾値axより小さくてもよい。
【0074】
ここで、基準時間は、あらかじめ定められた時間(例えば、500ミリ秒、1秒等)である。解消したと判定した場合はステップS350に進み、解消していないと判定した場合は、ドライバに注意をより促すために、ステップS320に進む。
【0075】
ステップS320では、通知後モードに移行して以降で後述するステップS330の警告を既に行っているか否かを判定する。警告を行っていなければステップS330に進み、既に行っていればステップS340に進む。
【0076】
ステップS330では、1つ目の通知より強い警告を行う。すなわち、減速操作の量を増やすことを促す通知として、例えば通知の音量を1つ目の通知よりも上げてもよいし、通知の画像表示を1つ目の通知よりも大きくまたは明るくしてもよい。あるいは、通知の文に切迫性を高める用語(例えば、「警告」、「今すぐに」、「早く」、「しないと危険です」)を追加してもよい。ステップS330の後はステップS305に戻る。
【0077】
ステップS340では、ステップS330で行った警告から所定の待機時間が経過している場合に、自車両の減速をアシストするための制動指示BRKを制御切替部14に出力する。ここで、待機時間は、あらかじめ定められた時間(例えば、500ミリ秒、1秒等)である。
【0078】
この制動指示BRKを受けた制御切替部14は、ドライバの運転操作に応じた操作指示量DR_cmdによって生じる制動力よりも強い制動力を自車両に発生させるよう、加減速指示量CMDをパワトレインシステム16、ブレーキシステム17に出力する。これにより、ブレーキシステム17の制御により、運転操作のみによる制動力よりも強い制動力を自車両の制動装置が発生する。すなわち、ブレーキアシストが実現する。このときのブレーキアシストによる介入量、すなわち、操作指示量DR_cmdによって生じる制動力に対して加算する制動力は、加減速乖離量Δaが大きいほど大きくなってもよい。なお、ブレーキアシストでは、ドライバの運転操作による制動力が主体であり、ブレーキアシストによる追加の制動力は付加的なものである。運転診断部152は、ステップS340の後は、次の制御周期でステップS310に戻る。
【0079】
ステップS350では、通知、警告、ブレーキアシストのうち、実行されているものがあれば解除し、通常モードのステップS205に戻る。
【0080】
このようになっていることで、制御指示量ACC_cmdと操作指示量DR_cmdの比較によればドライバの運転操作による減速量が不足する場合、減速量の不足が通知される(ステップS210→ステップS215、ステップS220→ステップS225)。例えば、図8に示すように、制御指示量ACC_cmdに対して操作指示量DR_cmdが大きく不足している事例において、時点t1にこれが発生する。このときの通知は、図8に示すように、通知レベル1の通知に相当する。図8の事例では、時点t1から時点t2までは、通知レベル1の通知が継続される。
【0081】
そして通知後、ドライバの運転操作による減速量の不足が解消しないと、通知より強い警告が行われる(ステップS310→ステップS320→ステップS330)。図8の事例では、時点t2においてこれが発生する。このときの警告は、図8に示すように、通知レベル1よりも程度の高い通知レベル2の通知に相当する。図8の事例では、時点t2以降も、通知レベル2の通知が継続される。
【0082】
そして、警告が行われた後、まだ減速量の不足が解消しないと、ブレーキアシストが実行される(ステップS310→ステップS320→ステップS340)。図8の事例では、時点t3においてこれが発生する。また、図8の事例では、時点t3以降の期間(例えば時点t4)においても、ブレーキアシストが継続される。なお、図8に示すように、時点t3以降の期間(例えば時点t4)においても、ブレーキアシストと共にステップS330と同様の警告を継続してもよい。
【0083】
更にその後、ドライバの運転操作による減速量の不足が解消すると、通知、警告、およびブレーキアシストを解除し、通常モードに戻る(ステップS310→ステップS350→ステップS210)。
【0084】
なお、通知後、警告実施前にドライバの運転操作による減速量の不足が解消すると、警告もブレーキアシストもせずに通知を解除して通常モードに戻る(ステップS310→ステップS350→ステップS210)。例えば、図9の事例では、時点t1の通知までは、図8の事例と同じであるが、その後、ドライバが通知によってブレーキペダルの踏力を増した結果、時点t2において、加減速乖離量Δaが判定値ay以下になり、ステップS350で通知が解除される。なお、図9の破線の曲線は、図8と同じ事例における操作指示量DR_cmdの推移を示している。
【0085】
また、警告後、ブレーキアシストが実施される前にドライバの運転操作による減速量の不足が解消すると、ブレーキアシストをせずに警告を解除して通常モードに戻る(ステップS310→ステップS350→ステップS210)。
【0086】
このようにして、自車両の運転の開始から終了までの間に、運転診断部152は、通常モードと通知後モードの間を相互に遷移しながら、ドライバへの通知が必要な場合は通知を行う。
【0087】
そして、自車両の運転が終了すると、上述の通りステップS240で、IGがオンされてからオフされるまでの、すなわち、1回の運転における、通知の回数、警告回数、およびブレーキアシストの介入量を基に、得点が算出される。そして、算出された得点が不揮発性記憶媒体に記録される。算出される得点は、通知の回数が少ないほど高く、警告の数が少ないほど高く、ブレーキアシストの介入量が少ないほど高い。すなわち、得点は、運転操作の安全度が高いほど高い。この得点は、後に読み出して自車両の不図示のディスプレイに表示可能であり、また、通信によって他のデバイスに送信可能である。
【0088】
以上説明した通り、車両の走行制御装置は、自車両から先行車両までの車間距離Dに基づいた指標である衝突車間距離Dthを算出する衝突車間距離演算部12を有すると共に、制御部13を有する。そして制御部13は、衝突車間距離Dthに関する条件を制約条件としながら、定められた設定速度Vaccに自車両の走行速度を追従させる最適制御により、車両の加減速に関する指示量を決定する。そして制御部13は、車両の駆動力および制動力を発生させるパワトレインシステム16、およびブレーキシステム17に届くよう、制御指示量ACC_cmdを出力する。
【0089】
このように、車間制御と車速制御を別々のPID制御器で取り扱って切り替えを行うのでなく、衝突車間距離Dthに関する条件を制約条件として設定速度Vaccに車速を追従させる最適制御を行う。これにより、車間制御と車速制御を切り替える必要がなくなり、ひいては、車速制御と車間距離制御の切り替わりに起因して発生する追従性の悪化を抑制することができる。また、車間距離と走行速度という複数の量をまとめて扱うことができる。
【0090】
また、制御部13は、衝突車間距離Dthに関する条件を制約条件としながら設定速度Vaccに車両の走行速度を追従させる最適制御により制御指示量ACC_cmdを決定する最適制御部131を備える。そして、制御指示量ACC_cmdに基づいて車両の走行速度V1_est等を予測する予測部132を備える。そして最適制御部131は、予測された走行速度V1_estを含めた最適制御を行う。このように、最適制御に自車両の挙動の予測が加味されることで、車両制御の精度が向上する。
【0091】
また、衝突車間距離演算部12は、少なくとも3つの量を含むよう、衝突車間距離Dthを算出する。3つの量は、車間距離Dが大きくなるほど衝突車間距離Dthを大きくする量、自車両の制動距離が大きくなるほど衝突車間距離Dthを小さくする量、および、先行車両の制動距離が大きくなるほど衝突車間距離Dthを大きくする量である。また、制御部13は、制約条件として、衝突車間距離Dthが基準距離Lより大きいという条件を用いる。
【0092】
従来、車間距離制御の加減速制御を、車間時間の大小に基づいて行う技術があった。車間時間とは、自車両から先行車両までの車間距離Dを、先行車両に対する自車両の相対速度で除算した値である。このような技術では、車間時間に鑑みれば安全な車間距離が取れていると判断できても、実際の自車両と先行車両の位置関係は危険である場合がある。例えば、車間距離が著しく短いような安全とは言えない状況でも、相対速度が0[km/h]の場合は、車間時間が無限大となり、車間時間に鑑みれば安全と判定されてしまう可能性がある。
【0093】
そこで、上記のように、衝突車間距離Dthを、自車両と先行車のそれぞれの動的な振る舞いに基づき算出し、算出した衝突車間距離Dthが基準距離Lより大きくなるという制約の下、車両の加減速に関する指示量を算出する。これにより、車間時間によらずに、安全な車間距離を維持するよう車両を制御することができる。
【0094】
また、衝突車間距離演算部12は、ドライバの設定操作によって定められる余裕度Dsetを含むように衝突車間距離Dthを算出する。そして余裕度Dsetは、大きくなるほど衝突車間距離Dthを小さくする量である。
【0095】
ドライバによっては、車間距離をより長くとりたい場合もある。その場合、上記のように、ドライバが設定操作によって余裕度Dsetを定められるようにすることで、そのようなニーズに対応することができる。
【0096】
[1]また、通知部15は、制御指示量ACC_cmdがパワトレインシステム16、およびブレーキシステム17で反映されているか否かを判定する。そして、反映されていない場合に、ドライバによる車両の運転操作を反映する操作情報と、制御指示量ACC_cmdの出力状況を反映する制御情報との比較を行う。そして、その比較に基づいて、運転操作の診断を行い、診断結果をドライバに通知する。ここで、操作情報は、例えば操作指示量DR_cmd、開始タイミングDR_tである。また、制御情報は、例えば制御指示量ACC_cmd、開始タイミングACC_tである。
【0097】
このように、通知部15において、制御部13による車両の加減速制御が働いていない状態においても、上記のように、制御部13の出力した制御指示量ACC_cmdを利用して、ドライバの安全運転の程度について診断することができる。
【0098】
また、本実施形態においては、自車両に搭載されたセンサから取得された情報のみを用い、自車両外部の装置から通信によって取得された情報を用いることなく、ドライバの安全運転の程度について診断している。したがって、リアルタイム性の高い診断が可能となる。
【0099】
[2]また、通知部15は、加減速乖離量Δaに基づいて、運転操作の診断を行い、診断結果をドライバに通知する。このように、診断の材料として操作指示量DR_cmdと制御指示量ACC_cmdとの乖離量を用いることで、運転操作の強弱についての診断が可能となる。
【0100】
[3]また、通知部15は、開始タイミングDR_tの開始タイミングACC_tに対する遅れ時間である反応乖離時間ΔTに基づいて、運転操作の診断を行い、診断結果をドライバに通知する。このように、診断の材料として運転操作と制御による加減速の開始タイミングDR_t、ACC_tの乖離量を用いることで、運転操作の遅れ度合いについての診断が可能となる。
【0101】
[4]また、通知部15は、自車両の減速時に、加減速乖離量Δaが閾値axより大きいことに基づいて、自車両の減速量が不足していることをドライバに通知する。そしてその通知後に加減速乖離量Δaが判定値ay以下に減少しないことに基づいて、ドライバに警告を行い、更に必要に応じて自車両のブレーキアシストを行う。このようにすることで、通知後も運転操作による減速量が不足している場合に、警告およびブレーキアシストを行って自車両の安全性をより高めることができる。
【0102】
[5]また、通知部15は、ドライバへの警告およびブレーキアシストの履歴に基づいて、ドライバの運転操作の安全度を示す得点を算出して記録する。このように、ドライバの運転の安全度を得点化して記録することで、ドライバの安全運転に対する動機付けが向上する。
【0103】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、運転診断部152、出力部153が実行する処理内容が異なっている。具体的には、運転診断部152は、自車両の運転中、図6図7の処理に変えて、図10に示す処理を実行し、出力部153は、図10の処理に対応した処理を行う。
【0104】
運転診断部152は、図10の処理において、まずステップS405で、ドライバ加減速判定部151から加減速乖離量Δaを逐次取得しながら、開始タイミングDR_tおよび開始タイミングACC_tの取得を待つ。そして、開始タイミングDR_tおよび開始タイミングACC_tの両方が揃った段階で、反応乖離時間ΔTを算出し、ステップS410に進む。反応乖離時間ΔTは、第1実施形態と同様、開始タイミングACC_tに対する開始タイミングDR_tの遅れ量である。ステップS405からステップS410に進むのは加減速乖離量Δa、開始タイミングACC_t、DR_tを取得しているタイミングなので、このときアダプティブクルーズコントロールは実行されていない。
【0105】
ステップS410では、ステップS405で算出された反応乖離時間ΔTについての診断を行う。例えば、「早い」、「適切」、「遅い」の3段階の値のどれに該当するか判定する。なお、他の例として、値は2段階でも4段階以上でも連続的でもよい。
【0106】
ここで、「早い」、「適切」、「遅い」は、ドライバの加減速操作の開始タイミングDR_tについての、制御部13の指令による加減速の開始タイミングACC_tとの比較に基づく、評価値である。より具体的には、運転操作による開始タイミングDR_tが制御による開始タイミングACC_tに対して「早い」か、「適切」か、「遅い」かの評価値である。
【0107】
反応乖離時間ΔTがΔT≧Tx1を満たすとき、「遅い」に該当すると判定し、Tx1>ΔT≧Tx2を満たすとき「適切」に該当すると判定し、Tx2>ΔTを満たすとき「早い」に該当すると判定する。ここで、閾値Tx1は正の値であり、閾値Tx2は負の値である。閾値Tx1、Tx2は、あらかじめ定められて不揮発性記憶媒体に記録されていてもよいし、ドライバによって設定可能となっていてもよい。
【0108】
続いてステップS420で、ドライバ加減速判定部151から出力された最新の加減速乖離量Δaについての診断を行う。例えば、「多い」、「適切」、「少ない」の3段階の値のどれに該当するか判定する。なお、他の例として、値は2段階でも4段階以上でも連続的でもよい。
【0109】
ここで、「多い」、「適切」、「少ない」は、ドライバの操作指示量DR_cmdに対応する加減速度の絶対値についての、制御指示量ACC_cmdに対応する加減速度の絶対値との比較に基づく、評価値である。具体的には、自車両の加速時には、運転操作による加速度が制御による加速度よりも「多い」か、「適切」か、「少ない」かの評価値である。また、自車両の減速時には、運転操作による減速度が制御による減速度よりも「多い」か、「適切」か、「少ない」かの評価値である。
【0110】
加減速乖離量ΔaがΔa≧ax1を満たすとき、「少ない」に該当すると判定し、ax1>Δa≧ax2を満たすとき「適切」に該当すると判定し、ax2>Δaを満たすとき「多い」に該当すると判定する。ここで、閾値ax1は正の値であり、閾値ax2は閾値ax1より小さい正の値である。閾値ax1、閾値ax2は、あらかじめ定められて運転診断部152の記憶部に記録されていてもよいし、ドライバによって設定可能となっていてもよい。
【0111】
続いてステップS430では、ステップS410、ステップS420の診断結果に基づくドライバ通知を行う。具体的には、まず、自車両が加速中か減速中かを判定する。加速中か減速中かは、センサシステム11が出力した加速度a1に基づいて判定してもよい。更に運転診断部152は、加減速乖離量Δa、反応乖離時間ΔTについての診断結果と、加速中か減速中かの判定結果に基づいて、イベントを設定する。
【0112】
具体的には、自車両が加速中である場合は、図11に示すような加速時用のイベントテーブルを用いて、イベントを1つ特定し、特定したイベントをオンに設定し、他のイベントをオフに設定する。例えば、加減速乖離量Δaについての診断結果(すなわち操作量)が「適切」で、反応乖離時間ΔTについての診断結果(すなわちタイミング)が「早い」である場合、eAccl21というイベントがオフからオンに設定される。
【0113】
また、自車両が減速中である場合は、図12に示すような減速時用のイベントテーブルを用いて、イベントを1つ特定し、特定したイベントをオンに設定し、他のイベントをオフに設定する。例えば、操作量が「少ない」で、タイミングが「適切」である場合、eDec32というイベントがオフからオンに設定される。
【0114】
更に運転診断部152は、オンに設定したイベントに対応するインデックスを選び出し、不揮発性記憶媒体中の当該インデックスで示される領域に記憶されている通知用データを読み出す。イベントとインデックスとの対応関係は、自車両が加速中である場合は、図13に示すような加速時用のインデックステーブルに従い、自車両が減速中である場合は、図14に示すような減速時用のインデックステーブルに従う。
【0115】
イベントテーブルとインデックステーブルは同じ構造を有している。すなわち、各イベントテーブルは、操作量の値(多い、適切、少ない)とタイミングの値(早い、適切、遅い)の組み合わせ毎に1つのイベントが割り当てられる。そして、各インデックステーブルは、操作量の値とテーブルの組み合わせ毎に1つのインデックスが割り当てられている。
【0116】
運転診断部152は、加速時には、特定したイベントと同じ操作量、タイミングに対応するインデックスを、加速時用のインデックステーブルから選び出す。また減速時には、特定したイベントと同じ操作量、タイミングに対応するインデックスを、減速時用のインデックステーブルから選び出す。そして、選び出したインデックスを、通知コマンドN_cmdとして出力部153に出力する。以上が、ステップ430の処理である。
【0117】
この通知コマンドN_cmdを取得した出力部153は、当該通知コマンドN_cmdに含まれるインデックスで示される不揮発性記憶媒体中の領域から、通知メッセージを読み出す。そして読み出したメッセージに対応する報知を、自車両の車室内の不図示のディスプレイ、インジケータ、スピーカ等の報知装置に行わせる。
【0118】
加速時用の各インデックスで示される領域に記憶されている通知用データは、例えば、図15に示すようなものである。すなわち、操作量が「多い」の場合は、タイミングの値に関わらず、「もう少し緩やかに加速してください」というメッセージのデータである。また、操作量が「適切」、「少ない」の場合は、タイミングが「早い」ならば「慌てずに加速してください」というメッセージのデータであり、「適切」、「遅い」ならば「適切な加速です」というメッセージのデータである。
【0119】
減速時用の各インデックスで示される領域に記憶されている通知用データは、例えば、図16に示すようなものである。例えば、操作量が「多い」でタイミングが「早い」の場合は「もう少し緩やかに減速してください」というメッセージのデータである。なお、各メッセージのデータは、音声データでも画像データでも文字データでもよい。
【0120】
なお、本実施形態において、自車両の減速時に操作量が「少ない」と判定された場合は、所定時間(例えば500ミリ秒、1秒)以内に操作量が「適切」にならない場合は、第1実施形態と同様に警告およびブレーキアシストの制御を行ってもよい。また、本実施形態において第1実施形態と同様の構成、作動からは、同様の効果を得ることができる。
【0121】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本発明は、上記実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち明らかに矛盾する組み合わせを除く任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
【0122】
また、本開示に記載の制御部13、通知部15およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つないしは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つないしは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。なお、上記実施形態に記載の不揮発性記憶媒体、揮発性記憶媒体は、いずれも、非遷移有形記録媒体である。
【0123】
(変形例1)上記実施形態では、運転診断部152は、図7のステップS330で警告を行った後に、それでもドライバ操作の減速量不足が解消しない場合にブレーキアシストを行うが、必ずしもこのようになっていなくてもよい。例えば、図7のステップS330で警告とブレーキアシストを同時に実施してもよい。
【0124】
(変形例2)上記第1実施形態では、運転診断部152は、図6の処理において、Δa≦axであれば、ΔT>Txであるか否かの判定を行うまでもなく、ステップS220からステップS230に進む。そしてステップS230で、タイミングと減速量が適切であることをドライバに通知するようになっている。これは、ΔT>Txであれば、すなわちドライバの減速操作が遅れていれば、殆どの場合そのタイミングでΔa>axとなる、すなわち、ドライバの減速操作量が不足すると考えられるからである。
【0125】
しかし、ΔT>Txであってもドライバの減速操作量が不足しない可能性が少なからずある場合は、それを勘案した処理を運転診断部152が行ってもよい。例えば、ステップS220でΔa>axでないと判定した場合、ΔT>Txであるか否かを判定し、ΔT>Txであれば、対応する通知を行った後に通知後モードに移行し、ΔT>TxでなければステップS230に進むようになっていてもよい。
【0126】
ここで、対応する通知としては、例えば以下のように行ってもよい。すなわち、反応乖離時間ΔTに基づいて減速操作タイミングの遅れ量をステップS215と同様に特定し、特定した遅れ量の通知および減速操作の量が適切であることの通知を指示する通知コマンドN_cmdを、出力部153に出力してもよい。この通知コマンドN_cmdを取得した出力部153は、上述の通知装置に通知コマンドN_cmdに従ったドライバへの通知を行わせる。これによりドライバは、自分の減速操作のタイミングが適切なタイミングからどれくらい遅れているか、および、自分の減速操作の量が適切であることを、知ることができる。
【0127】
(変形例3)上記実施形態において、ドライバ加減速判定部151は、図4のステップS130で、加減速乖離量Δaを、制御指示量ACC_cmdと操作指示量DR_cmdとの差に基づいて決定している。しかし、加減速乖離量Δaの算出方法は、このようなものに限られない。
【0128】
例えば、自車両の減速時には、ドライバ加減速判定部151は、ブレーキシステム17が油圧式制動装置に発生させるブレーキ油圧を制御指示量ACC_cmd、操作指示量DR_cmdのそれぞれに基づいて算出する。制御指示量ACC_cmd、操作指示量DR_cmdとブレーキ油圧との対応関係は、あらかじめ不揮発性記憶媒体に記録された対応テーブルを用いる。制御指示量ACC_cmd、操作指示量DR_cmdが示す減速度が大きいほど、算出される油圧が大きい。そしてドライバ加減速判定部151は、減速時には、制御指示量ACC_cmdに対応するブレーキ油圧から操作指示量DR_cmdに対応するブレーキ油圧を減算した値を加減速乖離量Δaとしてもよい。
【0129】
(変形例4)上記実施形態で、ドライバ加減速判定部151は、ステップS120で、制御指示量ACC_cmd、操作指示量DR_cmdがゼロから正の値または負の値に変化するタイミングを、それぞれ開始タイミングACC_t、DR_tとして検出している。しかし、開始タイミングACC_t、DR_tの検出手法は、このようなものに限られない。
【0130】
例えば、上述の制御指示量ACC_cmdに対応するブレーキ油圧がゼロから正の値に変化するタイミングを開始タイミングACC_tとしてもよい。そして、上述の操作指示量DR_cmdに対応するブレーキ油圧がゼロから正の値に変化するタイミングを開始タイミングDR_tとしてもよい。
【0131】
あるいは、自車両の減速を自車両よりも後方の車両に示すストップランプが点灯したタイミング、すなわち、ストップランプの不感帯を超えた値にブレーキ油圧が到達したタイミングを、開始タイミングDR_tとしてもよい。
【0132】
(変形例5)上記実施形態において、ドライバによる自車両の運転操作を反映する操作情報として、操作指示量DR_cmd、開始タイミングDR_tが例示されている。しかし、ドライバによる自車両の運転操作を反映する操作情報は、これら以外のもの(例えばこれらの任意の関数)であってもよい。また、上記実施形態において、制御指示量ACC_cmdの出力状況を反映する制御情報として、制御指示量ACC_cmdそのものおよび開始タイミングACC_tが例示されている。しかし、制御指示量ACC_cmdの出力状況を反映する制御情報は、これら以外のもの(例えばこれらの任意の関数)であってもよい。
【0133】
(変形例6)上記実施形態では、走行制御装置は車両の加減速を制御しているが、それに加えて、車両の操舵も制御するようになっていてもよい。
【0134】
(変形例7)上記実施形態では、衝突車間距離Dthの計算において、車間距離が大きくなるほど衝突車間距離Dthを大きくする量としては、車間距離そのものが用いられている。しかし、車間距離そのものでなくともよい。例えば、車間距離に基づく量(例えば、車間距離の自乗)であっても、車間距離が大きくなるほど衝突車間距離Dthが大きくなるような量であればよい。自車両の制動距離、他車両の制動距離、空走距離、余裕度についても同様である。
【0135】
(変形例8)
上記実施形態では、車間距離Dが大きくなるほど衝突車間距離Dthを大きくする量として衝突車間距離Dthに含まれる量は、車間距離Dそのものである。しかし、車間距離Dが大きくなるほど衝突車間距離Dthを大きくする量として衝突車間距離Dthに含まれる量は、車間距離Dそのものでなく、例えば車間距離Dの自乗であってもよいし、それ以外でもよい。余裕度Dsetが大きくなるほど衝突車間距離Dthを小さくする量、先行車両の制動距離が大きくなるほど衝突車間距離Dthを大きくする量、自車両の制動距離が大きくなるほど衝突車間距離Dthを小さくする量についても同様である。また、空走距離が大きくなるほど衝突車間距離Dthを小さくする量についても、同様である。
【0136】
(本開示の特徴)
[請求項1]
ドライバによる車両の運転操作を診断する運転診断装置であって、
前記車両の走行速度(V1)および前記車両から前記車両の前方を走行する先行車両までの車間距離(D)に基づいて、前記車両の加減速に関する指示量である制御指示量(ACC_cmd)を決定して出力する走行制御部(13)と、
前記ドライバに通知を行う通知部(15)と、を備え、
前記通知部は、前記走行制御部が出力した前記制御指示量が前記車両の駆動力および制動力を発生させる駆動制動システム(16、17)で反映されているか否かを判定し、反映されていない場合に、前記ドライバによる前記車両の前記運転操作を反映する操作情報(DR_cmd、DR_t)と、前記制御指示量の出力状況を反映する制御情報(ACC_cmd、ACC_t)との比較に基づいて、前記運転操作の診断を行い、診断結果を前記ドライバに通知する、運転診断装置。
[請求項2]
前記通知部は、前記ドライバによる前記車両の前記運転操作に基づいて出力されて前記駆動制動システムで反映される前記車両の加減速に関する指示量である操作指示量(DR_cmd)と前記制御指示量との乖離量(Δa)に基づいて、前記運転操作の前記診断を行い、診断結果を前記ドライバに通知する、請求項1に記載の運転診断装置。
[請求項3]
前記通知部は、前記ドライバの前記運転操作による加減速の開始タイミング(DR_t)の、前記制御指示量による加減速の開始タイミング(ACC_t)に対する遅れ時間(ΔT)に基づいて、前記運転操作の前記診断を行い、診断結果を前記ドライバに通知する、請求項1または2に記載の運転診断装置。
[請求項4]
前記通知部は、前記車両の減速時に、前記乖離量が閾値(ax)より大きいことに基づいて、前記車両の減速量が不足していることを前記ドライバに通知し、その通知後に前記乖離量が判定値(ay)以下に減少しないことに基づいて、前記ドライバに警告を行い、前記車両のブレーキアシストを行う、請求項2に記載の運転診断装置。
[請求項5]
前記通知部は、前記ドライバへの前記警告および前記ブレーキアシストの履歴に基づいて、前記ドライバの前記運転操作の安全度を示す得点を算出して記録する、請求項4に記載の運転診断装置。
[請求項6]
ドライバによる車両の運転操作を診断する運転診断装置に用いるプログラムであって、
前記車両の走行速度(V1)および前記車両から前記車両の前方を走行する先行車両までの車間距離(D)に基づいて、前記車両の加減速に関する指示量である制御指示量(ACC_cmd)を決定して出力する走行制御部(13)、および
前記ドライバに通知を行う通知部(15)として、前記運転診断装置を機能させ、
前記通知部は、前記走行制御部が出力した前記制御指示量が前記車両の駆動力および制動力を発生させる駆動制動システム(16、17)で反映されているか否かを判定し、反映されていない場合に、前記ドライバによる前記車両の前記運転操作を反映する操作情報(DR_cmd、DR_t)と、前記制御指示量の出力状況を反映する制御情報(ACC_cmd、ACC_t)との比較に基づいて、前記運転操作の診断を行い、診断結果を前記ドライバに通知する、プログラム。
【符号の説明】
【0137】
12 衝突車間距離演算部
13 制御部
15 通知部
16 パワトレインシステム
17 ブレーキシステム
151 ドライバ加減速判定部
152 運転診断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
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図16