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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126324
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ワイパ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/08 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B60S1/08 Z
B60S1/08 C
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034626
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伏屋 友勝
【テーマコード(参考)】
3D225
【Fターム(参考)】
3D225AA01
3D225AC01
3D225AD02
3D225AE57
3D225AG07
3D225AG14
3D225AG21
(57)【要約】
【課題】簡素な構成でワイパの位置を推定するワイパ制御装置を提供する。
【解決手段】ワイパ制御装置30の判定部64は、下反転位置および上反転位置を往復するワイパを駆動させるワイパモータ100に流れる電流Im_HiおよびIm_Loを取得する。また、判定部64は、ワイパモータ100に流れる電流Im_HiまたはIm_Loの時間変化に基づいて、ワイパ位置が下反転位置および上反転位置のどちらかであると判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1位置(Pd)および第2位置(Pu)を往復するワイパ(90)を駆動させるワイパモータ(100)に流れる電流に関する値を取得する取得部(S200)と、
前記ワイパモータに流れる電流の時間変化に基づいて、前記ワイパの位置(Pw)が前記第1位置および前記第2位置のどちらかであると判定する判定部(S206、S208)と、
を備えるワイパ制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記ワイパモータに流れる電流の変化量(ΔIm)が負の値から正の値に変化するとき、前記ワイパの位置(Pw)が前記第1位置および前記第2位置のどちらかであると判定する請求項1に記載のワイパ制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記ワイパの位置が前記第1位置になってから前記ワイパモータに流れる電流の変化量(ΔIm)が正の値から負の値に変化するときまでの時間(Δt1)と、前記ワイパの位置が前記第2位置になってから前記ワイパモータに流れる電流の変化量(ΔIm)が正の値から負の値に変化するときまでの時間(Δt2)と、に基づいて、前記ワイパの位置が前記第1位置および前記第2位置のどちらであるかを特定する請求項1または2に記載のワイパ制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記ワイパの初期位置と、前記ワイパの位置が前記第1位置および前記第2位置のどちらかであると判定した回数と、に基づいて、前記ワイパの位置が前記第1位置および前記第2位置のどちらであるかを特定する請求項1または2に記載のワイパ制御装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記ワイパの位置が前記第1位置になってから前記第2位置となるときまでの時間(Δt3)と、前記ワイパの位置が前記第2位置になってから前記第1位置となるときまでの時間(Δt4)と、に基づいて、前記ワイパの位置が前記第1位置および前記第2位置のどちらであるかを特定する請求項1または2に記載のワイパ制御装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記ワイパの位置が前記第1位置になってから前記第2位置となるときまでの時間(Δt3)と、前記ワイパの位置が前記第1位置になってからの経過時間と、前記ワイパの位置が前記第2位置になってから前記第1位置となるときまでの時間(Δt4)と、前記ワイパの位置が前記第2位置になってからの経過時間と、に基づいて、前記ワイパの位置を推定する請求項1または2に記載のワイパ制御装置。
【請求項7】
第1位置(Pd)および第2位置(Pu)を往復するワイパ(90)を駆動させるワイパモータ(100)に流れる電流に関する値を取得する取得部(S200)と、
前記ワイパモータに流れる電流が第1閾値以上、第2閾値以下であるとき、前記ワイパの位置(Pw)が前記第1位置および前記第2位置のどちらかであると判定する判定部(S208、S222)と、
を備えるワイパ制御装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記ワイパモータに印加される電圧の変化に伴って、前記第1閾値および前記第2閾値を変更する請求項7に記載のワイパ制御装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記ワイパモータの温度の変化に伴って、前記第1閾値および前記第2閾値を変更する請求項7または8に記載のワイパ制御装置。
【請求項10】
前記ワイパの位置が前記第1位置および前記第2位置のどちらかであるとき、前記ワイパモータに供給される電力を減少させる駆動部(62)をさらに備える請求項1または7に記載のワイパ制御装置。
【請求項11】
前記ワイパ制御装置は、オンすることにより、前記ワイパモータに電圧を印加させることで前記ワイパモータを回転させる駆動素子(35、45)をさらに備え、
前記駆動部は、前記ワイパの位置が前記第1位置および前記第2位置のどちらかであるとき、前記駆動素子をオンオフさせることにより、前記ワイパモータに供給される電力を減少させる請求項10に記載のワイパ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイパ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、ホールセンサで検出されたワイパモータのロータの回転数と、ワイパモータの減速機構の減速比とに基づいて基準位置からのワイパブレードの位置を算出するワイパ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-43158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたワイパ装置では、ロータの回転数を検出するホールセンサが備えられる。これにより、ホールセンサ用の信号の配線が必要となることから、特許文献1に記載されたワイパ装置の構成が複雑化する。このため、ワイパ装置のコストが増加する。
【0005】
本開示は、簡素な構成でワイパの位置を推定するワイパ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、第1位置(Pd)および第2位置(Pu)を往復するワイパ(90)を駆動させるワイパモータ(100)に流れる電流に関する値を取得する取得部(S200)と、ワイパモータに流れる電流の時間変化に基づいて、ワイパの位置(Pw)が第1位置および第2位置のどちらかであると判定する判定部(S206、S208)と、を備えるワイパ制御装置である。
【0007】
また、請求項7に記載の発明は、第1位置(Pd)および第2位置(Pu)を往復するワイパ(90)を駆動させるワイパモータ(100)に流れる電流に関する値を取得する取得部(S200)と、ワイパモータに流れる電流が第1閾値以上、第2閾値以下であるとき、ワイパの位置(Pw)が第1位置および第2位置のどちらかであると判定する判定部(S208、S222)と、を備えるワイパ制御装置である。
【0008】
これにより、ロータの回転数を検出するホールセンサを設けることなく、ワイパの位置がどこに位置するかが判定される。このため、ホールセンサ用の信号の配線を設ける必要がなくなる。したがって、簡素な構成でワイパの位置が推定される。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態のワイパ制御装置が用いられるワイパ駆動システムの構成図。
図2】ワイパ駆動システムのワイパを示す図。
図3】ワイパ駆動システムのワイパモータに流れる電流と時間との関係図。
図4】ワイパ制御装置の駆動部の処理を示すフローチャート。
図5】ワイパ制御装置の判定部の処理を示すフローチャート。
図6】ワイパ駆動システムのワイパモータに流れる電流を平滑化した値と時間との関係図。
図7】ワイパ駆動システムのワイパモータに流れる電流を平滑化した値と時間との関係図。
図8】第1実施形態の変形例のワイパ制御装置が用いられるワイパ駆動システムの構成図。
図9】第1実施形態の変形例の判定部の処理を示すためのワイパの模式図。
図10】第1実施形態の変形例のワイパ制御装置が用いられるワイパ駆動システムの構成図。
図11】第2実施形態のワイパ制御装置が用いられるワイパ駆動システムの構成図。
図12】ワイパ制御装置の判定部の処理を示すフローチャート。
図13】ワイパ駆動システムのワイパモータに流れる電流を平滑化した値と時間との関係図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態のワイパ制御装置30は、車両のワイパ駆動システム1に用いられる。まず、このワイパ駆動システム1について説明する。
【0013】
ワイパ駆動システム1は、図1に示すように、モータユニット10、モータ用グラウンド12、モータ用電源14、ワイパスイッチ16およびワイパ制御装置30を備えている。
【0014】
モータユニット10は、ワイパモータ100を有する。ワイパモータ100は、Hi端子104、Lo端子106およびGND端子108を含む。Hi端子104およびLo端子106は、後述のワイパ制御装置30に接続されている。GND端子108は、モータ用グラウンド12に接続されている。ワイパモータ100は、Hi端子104への通電によって比較的高速で回転する。また、ワイパモータ100は、Lo端子106への通電によってHi端子104への通電時よりも低速で回転する。そして、ワイパモータ100の回転とワイパモータ100と接続された図示しないリンク機構により、図2に示すような車両のワイパ90が動作する。
【0015】
ワイパモータ100の回転により、ワイパ90は、図示しないウィンドシールド上の下反転位置Pdおよび上反転位置Puの間を往復する。このとき、ワイパモータ100は、図3に示すように、図示しないリンク機構により時間の変化に伴ってワイパモータ100に流れる電流が増加減する特性を有する。また、下反転位置Pdおよび上反転位置Puにて電流値が極小値となる。さらに、後述のワイパスイッチ16がオフされるとき、ワイパ90が下反転位置Pdで停止するようワイパモータ100の回転が停止する。
【0016】
図1に戻って、モータ用電源14は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池および鉛蓄電池等の2次電池である。また、モータ用電源14の電圧は、例えば、12Vである。
【0017】
ワイパスイッチ16は、操作者により操作されて、ワイパ90の動作状態を後述する連続高速モード、連続低速モード、間欠モードおよび停止のいずれかにさせる信号を、後述のワイパ制御装置30の制御部60に出力する。
【0018】
ワイパ制御装置30は、ワイパモータ100に印加される電圧を制御することでワイパモータ100を制御する。これにより、ワイパ制御装置30は、ワイパモータ100に接続されているワイパ90の駆動を制御する。具体的には、ワイパ制御装置30は、Hiスイッチ35、Hi配線37、Hi電流検出部39、Loスイッチ45、Lo配線47、Lo電流検出部49および制御部60を有する。
【0019】
Hiスイッチ35は、リレーまたはトランジスタ等を含む。また、Hiスイッチ35の一端は、モータ用電源14と接続されている。さらに、Hiスイッチ35の他端は、Hi配線37を介してHi端子104に接続されている。また、Hiスイッチ35は、駆動素子に相当しており、後述の制御部60からの信号により、オンオフする。これにより、Hi端子104への通電または電流の遮断がされる。
【0020】
Hi電流検出部39は、シャント抵抗、カレントミラー回路またはホールIC等を含む。また、Hi電流検出部39は、Hi電流Im_Hiを検出する。さらに、Hi電流検出部39は、この検出したHi電流Im_Hiに応じた信号を、後述の制御部60に出力する。なお、Hi電流Im_Hiは、モータ用電源14からHiスイッチ35およびHi配線37を介してHi端子104に流れる電流である。
【0021】
Loスイッチ45は、リレーまたはトランジスタ等を含む。また、Loスイッチ45の一端は、モータ用電源14と接続されている。さらに、Loスイッチ45の他端は、Lo配線47を介してLo端子106に接続されている。また、Loスイッチ45は、駆動素子に相当しており、後述の制御部60からの信号により、オンオフする。これにより、Lo端子106への通電または電流の遮断がされる。
【0022】
Lo電流検出部49は、シャント抵抗、カレントミラー回路またはホールIC等を含む。また、Lo電流検出部49は、Lo電流Im_Loを検出する。さらに、Lo電流検出部49は、この検出したLo電流Im_Loに応じた信号を、後述の制御部60に出力する。なお、Lo電流Im_Loは、モータ用電源14からLoスイッチ45およびLo配線47を介してLo端子106に流れる電流である。
【0023】
制御部60は、マイコン等を主体として構成されており、CPU、ROM、フラッシュメモリ、RAM、I/O、駆動回路、A/Dコンバータおよびこれらの構成を接続するバスライン等を備えている。また、制御部60は、モータ用電源14または図示しない電源からの電圧によって駆動する。さらに、制御部60は、駆動部62および判定部64を機能ブロックとして有する。
【0024】
駆動部62は、制御部60に内蔵のプログラムを実行することにより、ワイパスイッチ16および後述の判定部64からの信号に基づいて、Hiスイッチ35およびLoスイッチ45のオンオフを制御する。これにより、駆動部62は、ワイパモータ100に印加される電圧を制御する。このため、ワイパ90の動作状態が連続高速モード、連続低速モード、間欠モードおよび停止のいずれかになる。
【0025】
判定部64は、制御部60に内蔵のプログラムを実行することにより、Hi電流検出部39およびLo電流検出部49からの信号に基づいて、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるか否かを判定する。また、判定部64は、この判定結果に応じた信号を駆動部62に出力する。なお、ワイパ位置Pwは、ワイパ90の位置である。
【0026】
以上のように、ワイパ駆動システム1は、構成されている。次に、制御部60のプログラム実行による駆動部62でのワイパモータ100に印加される電圧の制御について、図4のフローチャートを参照して説明する。なお、制御部60のプログラムは、例えば、図示しない車両のイグニッションがオンされると、実行される。
【0027】
ステップS100において、駆動部62は、各種情報を取得する。具体的には、駆動部62は、ワイパ90の動作状態を連続高速モード、連続低速モード、間欠モードおよび停止にさせる信号を、ワイパスイッチ16から取得する。また、駆動部62は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるか否かを示す信号を、判定部64から取得する。
【0028】
続いて、ステップS102において、駆動部62は、ステップS100にて取得したワイパスイッチ16からの信号に基づいて、ワイパスイッチ16がオンか否かを判定する。駆動部62は、ステップS100にてワイパ90の動作状態を連続高速モード、連続低速モードおよび間欠モードにさせる信号を取得したとき、ワイパスイッチ16がオンされていると判定する。その後、駆動部62の処理は、ステップS104に移行する。また、駆動部62は、ステップS100にてワイパ90の動作状態を停止させる信号を取得したとき、ワイパスイッチ16がオフされていると判定する。このとき、ワイパ90が停止してワイパ90を駆動させる必要がなくなるため、駆動部62の処理は、ステップS100に戻る。
【0029】
ステップS102に続くステップS104において、駆動部62は、ステップS100にて取得した判定部64からの信号に基づいて、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるか否かを判定する。そして、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puでないとき、駆動部62の処理は、ステップS106に移行する。また、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるとき、駆動部62の処理は、ステップS108に移行する。
【0030】
ステップS104に続くステップS106において、駆動部62は、Hiスイッチ35またはLoスイッチ45をオンさせる。これにより、ワイパモータ100が回転することにより、ワイパ90が駆動される。
【0031】
ここで、例えば、操作者の操作により、ワイパスイッチ16がワイパ90の動作状態を連続高速モードにさせる信号を駆動部62に出力していたとする。このとき、駆動部62は、Hiスイッチ35をオンさせる。このため、モータ用電源14からHiスイッチ35、Hi配線37およびHi端子104を介してワイパモータ100に電圧が印加される。これにより、ワイパモータ100は、Lo端子106への通電時よりも高速で回転する。したがって、ワイパモータ100に接続されているワイパ90が高速で回転することにより、ワイパ90の動作状態が連続高速モードになる。なお、このとき、Loスイッチ45は、オフされている。
【0032】
また、例えば、操作者の操作により、ワイパスイッチ16がワイパ90の動作状態を連続低速モードにさせる信号を駆動部62に出力していたとする。このとき、駆動部62は、Loスイッチ45をオンさせる。このため、モータ用電源14からLoスイッチ45、Lo配線47およびLo端子106を介してワイパモータ100に電圧が印加される。これにより、ワイパモータ100は、Hi端子104への通電時よりも低速で回転する。したがって、ワイパモータ100に接続されているワイパ90が低速で回転することにより、ワイパ90の動作状態が連続低速モードになる。なお、このとき、Hiスイッチ35は、オフされている。また、ワイパ90の動作状態が間欠モードである場合には、駆動部62は、Loスイッチ45をオンさせる。これにより、ワイパモータ100が低速で回転する。また、ワイパ90が下反転位置Pdおよび上反転位置Puの間を往復してワイパ位置Pwが下反転位置Pdであるときに、駆動部62は、Loスイッチ45をオフさせる。このため、ワイパモータ100が一時停止することから、ワイパ90が一時停止する。その後、駆動部62は、Loスイッチ45をオンさせる。これにより、ワイパモータ100が低速で回転する。したがって、これらの動作により、ワイパ90は、間欠に下反転位置Pdおよび上反転位置Puの間を往復する。
【0033】
このように、駆動部62がHiスイッチ35およびLoスイッチ45の制御を行った後、駆動部62の処理は、ステップS100に戻る。
【0034】
ステップS104に続くステップS108では、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puである。このため、ステップS108において、駆動部62は、Hiスイッチ35またはLoスイッチ45のオンオフ制御を行うことで、ワイパモータ100に対してPWM制御を行う。これにより、駆動部62は、ワイパモータ100に供給される電力を減少させる。これによって、ワイパ90が減速することで、下反転位置Pdまたは上反転位置Puに滑らかに移動する。したがって、例えば、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるときに発生するワイパ90の作動音が低減する。なお、PWMは、Pulse Width Modulationの略である。
【0035】
具体的には、ワイパ90の動作状態が連続高速モードであるとき、駆動部62は、Hiスイッチ35をHi用第1時間オンさせた後、Hi用第2時間オフさせる動作を繰り返す。また、ワイパ90の動作状態が連続低速モードであるとき、駆動部62は、Loスイッチ45をLo用第1時間オンさせた後、Lo用第2時間オフさせる動作を繰り返す。これらの動作により、ワイパモータ100に供給される電力が減少することから、ワイパ90が減速される。このため、ワイパ90の駆動が滑らかとなる。また、ワイパ90を停止する場合には、ワイパ90が下反転位置Pdで滑らかに停止する。なお、Hi用第1時間、Hi用第2時間、Lo用第1時間およびLo用第2時間は、ワイパモータ100に供給される電力が減少されてワイパ90の駆動が滑らかとなるように、実験やシミュレーション等によって設定される。また、Hi用第1時間、Hi用第2時間、Lo用第1時間およびLo用第2時間を変化させることによりワイパモータ100に供給される電力を徐々に変化させることで、ワイパ90の動作がより滑らかなものとなる。
【0036】
このように、駆動部62がHiスイッチ35およびLoスイッチ45のどちらかのオンオフ制御を行った後、駆動部62の処理は、ステップS100に戻る。
【0037】
以上のように、駆動部62は、ワイパモータ100に印加される電圧の制御を行う。次に、制御部60のプログラム実行による判定部64でのワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるか否かの判定について、図5のフローチャートを参照して説明する。なお、判定部64のステップS200の処理が開始されてからステップS200の処理に戻るまでの一連の動作の期間を、判定部64の制御周期τとする。
【0038】
ステップS200において、判定部64は、各種情報を取得する。具体的には、判定部64は、ワイパ90の動作状態を連続高速モード、連続低速モード、間欠モードおよび停止にさせる信号を、ワイパスイッチ16から取得する。また、判定部64は、Hi電流Im_HiをHi電流検出部39から取得する。さらに、判定部64は、Lo電流Im_LoをLo電流検出部49から取得する。
【0039】
続いて、ステップS202において、ワイパ90の動作状態が連続高速モードであれば、判定部64は、ステップS200にて取得したHi電流Im_Hiにおいて時間についての平滑化した値Imを算出する。これにより、図6に示すように、時間に対してHi電流Im_Hiが平滑化される。また、ワイパ90の動作状態が連続低速モードまたは間欠モードであるとき、判定部64は、ステップS200にて取得したLo電流Im_Loにおいて時間についての平滑化した値Imを算出する。このため、時間に対してLo電流Im_Loが平滑化される。なお、ここで、平滑化とは、統計および信号処理において、ノイズ、その他の微細な構造または急激な現象を排除しながら、データの重要な特徴を抽出した近似関数を作成することをいう。また、平滑化は、例えば、単純移動平均、加重移動平均、指数移動平均、三角移動平均、正弦加重移動平均および累積移動平均等を用いて行われる。さらに、平滑化は、畳み込み、KZフィルタ、包絡線および移動標準偏差等を用いて行われてもよい。また、平滑化は、平均化フィルタ、ガウシアンフィルタ、メディアンフィルタ、最大値フィルタおよび最小値フィルタ等のフィルタを用いて行われてもよい。
【0040】
ここで、図示しないリンク機構およびワイパモータ100の特性により、平滑化した値Imの変化量ΔImが負の値から正の値に変化するとき、ワイパ位置Pwは、下反転位置Pdまたは上反転位置Puとなる。
【0041】
このため、図5のフローチャートに示すように、ステップS202に続くステップS204において、判定部64は、今回制御周期τ(n)における平滑化した値Im(n)から前記制御周期τ(n-1)における平滑化した値Im(n-1)を減算する。これにより、判定部64は、今回制御周期τ(n)における変化量ΔIm(n)を算出する。なお、変化量ΔIm(0)は、例えば、ゼロである。
【0042】
続いて、ステップS206において、判定部64は、前回制御周期τ(n-1)にて算出した変化量ΔIm(n-1)がゼロ未満、かつ、今回制御周期τ(n)にて算出した変化量ΔIm(n)がゼロより大きいか否かを判定する。これにより、判定部64は、変化量ΔImが負の値から正の値に変化したか否かを判定することで、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるか否かを判定する。
【0043】
そして、前回制御周期τ(n-1)にて算出した変化量ΔIm(n-1)がゼロ未満、かつ、今回制御周期τ(n)にて算出した変化量ΔIm(n)がゼロより大きいとき、判定部64の処理は、ステップS208に移行する。また、前回制御周期τ(n-1)にて算出した変化量ΔIm(n-1)がゼロ未満、かつ、今回制御周期τ(n)にて算出した変化量ΔIm(n)がゼロ以下であるとき、判定部64の処理は、ステップS212に移行する。さらに、前回制御周期τ(n-1)にて算出した変化量ΔIm(n-1)がゼロ以上、かつ、今回制御周期τ(n)にて算出した変化量ΔIm(n)がゼロより大きいとき、判定部64の処理は、ステップS212に移行する。また、前回制御周期τ(n-1)にて算出した変化量ΔIm(n-1)がゼロ以上、かつ、今回制御周期τ(n)にて算出した変化量ΔIm(n)がゼロ以下であるとき、判定部64の処理は、ステップS212に移行する。
【0044】
ステップS206に続くステップS208において、変化量ΔImが負の値から正の値に変化したときである。このとき、ワイパ位置Pwは、下反転位置Pdまたは上反転位置Puである。したがって、このとき、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであると判定する。また、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであることを示す信号を、駆動部62に出力する。
【0045】
ステップS208に続くステップS210において、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定する。
【0046】
ここで、ワイパ90は、下反転位置Pdおよび上反転位置Puの間を往復する。このため、判定部64は、ワイパ90の初期位置と、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであると判定した回数と、に基づいて、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定する。例えば、ワイパ90の初期位置が下反転位置Pdであるとする。このとき、ワイパ90が駆動すると、ワイパ位置Pwが上反転位置Puとなる。このとき、変化量ΔImが負の値から正の値に変化する1回目である。その後、ワイパ位置Pwは、上反転位置Puから下反転位置Pdに戻る。このとき、変化量ΔImが負の値から正の値に変化する2回目である。したがって、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであると判定した回数を計上し、計上した回数が奇数であるとき、ワイパ位置Pwが上反転位置Puであると特定する。また、判定部64は、上記計上した回数が偶数であるとき、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdであると特定する。なお、ここでは、ワイパ90の初期位置は、下反転位置Pdであるところ、これに限定されない。ワイパ90の初期位置は、上反転位置Puであってもよい。また、ワイパ90の故障等により、ワイパ90が下反転位置Pdおよび上反転位置Puの間にて停止することもあることから、ワイパ90の初期位置は、下反転位置Pdおよび上反転位置Puの間の位置であってもよい。
【0047】
また、ここで、図6に示すように、図示しないリンク機構およびワイパモータ100の特性により、変化量ΔImが正の値から負の値に変化するときがある。また、ここで、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdとなってから、変化量ΔImが正の値から負の値に変化するときまでの時間を第1時間Δt1とする。ワイパ位置Pwが上反転位置Puとなってから、変化量ΔImが正の値から負の値に変化するときまでの時間を第2時間Δt2とする。そして、図示しないリンク機構およびワイパモータ100の特性によっては、第2時間Δt2は、第1時間Δt1よりも短くなる。
【0048】
このため、判定部64は、第1時間Δt1および第2時間Δt2に基づいて、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定してもよい。具体的には、判定部64は、前回ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであると判定したときから、変化量ΔImが正の値から負の値に変化するときまでの時間を計測する。また、判定部64は、この計測した時間が第1時間Δt1であれば、ワイパ位置Pwが上反転位置Puであると特定する。さらに、判定部64は、この計測した時間が第2時間Δt2であれば、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdであると特定する。なお、判定部64は、この計測した時間が閾値以上であるとき、ワイパ位置Pwが上反転位置Puであると特定してもよい。また、判定部64は、この計測した時間が閾値未満であるとき、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdであると特定してもよい。さらに、上記閾値は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定できるように、実験やシミュレーション等により設定される。
【0049】
また、ここで、図7に示すように、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdになってから上反転位置Puとなるまでの時間を第3時間Δt3とする。さらに、ワイパ位置Pwが上反転位置Puになってから下反転位置Pdとなるまでの時間を第4時間Δt4とする。また、図示しないリンク機構およびワイパモータ100の特性によっては、第3時間Δt3は、第4時間Δt4よりも長くなる。
【0050】
このため、判定部64は、第3時間Δt3および第4時間Δt4に基づいて、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定してもよい。具体的には、判定部64は、前回ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであると判定したときから、今回ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであると判定したときまでの時間を計測する。また、判定部64は、この計測した時間が第3時間Δt3であれば、ワイパ位置Pwが上反転位置Puであると特定する。さらに、判定部64は、この計測した時間が第4時間Δt4であれば、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdであると特定する。なお、判定部64は、この計測した時間が閾値以上であるとき、ワイパ位置Pwが上反転位置Puであると特定してもよい。また、判定部64は、この計測した時間が閾値未満であるとき、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdであると特定してもよい。さらに、上記閾値は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定できるように、実験やシミュレーション等により設定される。
【0051】
このように、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定した後、特定したワイパ位置Pwに応じた信号を駆動部62に出力する。その後、判定部64の処理は、ステップS200に戻る。
【0052】
ステップS206に続くステップS212において、変化量ΔImが負の値から正の値に変化していないときである。このとき、ワイパ位置Pwは、下反転位置Pdおよび上反転位置Puではない。したがって、このとき、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puではないと判定する。また、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puではないことを示す信号を、駆動部62に出力する。その後、判定部64の処理は、ステップS200に戻る。
【0053】
以上のように、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるか否かの判定を行う。次に、ワイパ制御装置30では、簡素な構成でワイパ90の位置が推定されることについて説明する。
【0054】
判定部64は、ステップS200にて、下反転位置Pdおよび上反転位置Puを往復するワイパ90を駆動させるワイパモータ100に流れる電流に関する値を取得する取得部としての役割を果たす。また、判定部64は、ワイパモータ100に流れる電流の時間変化に基づいて、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらかであると判定する。例えば、判定部64は、ステップS206およびステップS208にて、ワイパモータ100に流れる電流の変化量ΔImが負の値から正の値に変化するとき、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらかであると判定する。なお、下反転位置Pdは、第1位置に相当する。また、上反転位置Puは、第2位置に相当する。
【0055】
これにより、ロータの回転数を検出するホールセンサを設けることなく、ワイパ位置Pwがどこに位置するかが判定される。このため、ホールセンサ用の信号の配線を設ける必要がなくなる。したがって、簡素な構成でワイパ位置Pwが推定される。また、ここで、ワイパモータ100の回転に応じてオンオフするカムスイッチによりワイパ位置Pwが推定されることがある。これに対して、本実施形態のワイパ制御装置30は、上記構成によってワイパ位置Pwを推定するため、カムスイッチを備えなくてもよくなる。
【0056】
また、第1実施形態のワイパ制御装置30では、以下に記載する効果も奏する。
【0057】
[1-1]判定部64は、ステップS210にて、第1時間Δt1と、第2時間Δt2と、に基づいて、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定する。または、判定部64は、ワイパ90の初期位置と、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらかであると判定した回数と、に基づいて、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定する。または、判定部64は、第3時間Δt3と、第4時間Δt4と、に基づいて、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定する。
【0058】
これにより、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかが特定されやすくなる。
【0059】
[1-2]駆動部62は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらかであるとき、ワイパモータ100に供給される電力を減少させる。
【0060】
これにより、ワイパ90は、下反転位置Pdまたは上反転位置Puに滑らかに移動する。このため、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるときに発生するワイパ90の作動音が低減する。
【0061】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態では、駆動部62は、ステップS108にて、Hiスイッチ35またはLoスイッチ45のオンオフ制御を行う。これにより、駆動部62は、ワイパモータ100に供給される電力を減少させる。これに対して、駆動部62によりワイパモータ100に供給される電力を減少させる手段は、上記オンオフ制御であることに限定されない。例えば、駆動部62は、モータ用電源14に接続された図示しないDCDCコンバータを制御することにより、モータ用電源14からワイパモータ100に印加される電圧を降圧することにより、ワイパモータ100に供給される電力を減少させてもよい。
【0062】
また、第1実施形態では、Hi電流検出部39およびLo電流検出部49は、別体であるところ、これに限定されない。Hi電流検出部39およびLo電流検出部49は、図8に示すように、電流検出部59として一体であってもよい。また、電流検出部59は、ワイパモータ100とHiスイッチ35およびLoスイッチ45との間に配置されているところ、これに限定されない。例えば、電流検出部59は、モータ用電源14とHiスイッチ35およびLoスイッチ45との間に配置されてもよい。
【0063】
また、第1実施形態では、判定部64は、ステップS210にて、第3時間Δt3および第4時間Δt4に基づいて、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定する。これに対して、判定部64は、第3時間Δt3および第4時間Δt4に基づいて、図9に示すようなワイパ角度θwを算出することにより、ワイパ位置Pwを推定してもよい。なお、ワイパ角度θwは、ワイパ90の回転角度である。また、下反転位置Pdおよび上反転位置Puの間の角度を最大角度θmaxとする。最大角度θmaxは、例えば、140度である。また、ここでは、ワイパ角度θwの値は、ゼロ以上、2×θmax以下の範囲とする。さらに、ワイパ角度θwがゼロまたは2×θmaxであるときを、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdであるときとする。また、ワイパ角度θwがθmaxであるときを、ワイパ位置Pwが上反転位置Puであるときとする。さらに、0<θw<θmaxであるときを、ワイパ90が下反転位置Pdから上反転位置Puに向かって回転するときとする。また、θmax<θw<2×θmaxであるときを、ワイパ90が上反転位置Puから下反転位置Pdに向かって回転するときとする。
【0064】
具体的には、判定部64は、例えば、最大角度θmaxを第3時間Δt3で除算することにより、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdから上反転位置Puとなるときのワイパ90の駆動速度を算出する。また、判定部64は、この算出したワイパ90の駆動速度と、下反転位置Pdからの経過時間とを乗算することにより、ワイパ角度θwを算出する。これにより、判定部64は、ワイパ位置Pwを推定する。さらに、判定部64は、最大角度θmaxを第4時間Δt4で除算することにより、ワイパ位置Pwが上反転位置Puから下反転位置Pdとなるときのワイパ90の駆動速度を算出する。また、判定部64は、この算出したワイパ90の駆動速度と、上反転位置Puからの経過時間とを乗算することにより、ワイパ角度θwを算出する。これによって、判定部64は、ワイパ位置Pwを推定する。
【0065】
さらに、上記推定から、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puの直前であるか否かを判定できる。また、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puに到達する直前であるとき、駆動部62は、上記ステップS108のHiスイッチ35またはLoスイッチ45のオンオフ制御を行うことで、ワイパモータ100に対してPWM制御を行う。これにより、ワイパ90をより滑らかに駆動させることができる。なお、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdの直前とは、ワイパ角度θwが2×θmax-Δ以上、2×θmax未満であるときである。さらに、ワイパ位置Pwが上反転位置Puの直前とは、ワイパ角度θwがθmax-Δ以上、θmax未満であるときである。Δは、例えば、1~10度である。
【0066】
また、第1実施形態において、判定部64は、ステップS210にて、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定したとき、この特定したワイパ位置Pwに応じた信号を外部装置に出力してもよい。例えば、外部装置は、図10に示すように、ウォッシャ装置70である。ウォッシャ装置70は、判定部64からの信号に基づいて、図示しないウィンドシールドを洗浄するウォッシャ液を噴出するタイミングの制御を行う。例えば、ウォッシャ装置70は、判定部64によりワイパ位置Pwが下反転位置Pdであると特定されたとき、ウォッシャ液を噴出する。
【0067】
(第2実施形態)
第2実施形態では、ワイパ制御装置30の構成が第1実施形態と異なる。また、判定部64によるワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるか否かの判定が第1実施形態と異なる。これら以外は、第1実施形態と同様である。
【0068】
具体的には、ワイパ制御装置30は、図11に示すように、電圧検出部50および温度検出部55をさらに備える。
【0069】
電圧検出部50は、コンパレータ回路およびDCDCコンバータ等を有することにより、モータ用電源14からワイパモータ100に印加される電圧を検出する。また、電圧検出部50は、この検出した電圧に応じた信号を、判定部64に出力する。なお、ここでは、電圧検出部50は、モータ用電源14と、Hiスイッチ35およびLoスイッチ45との間にて接続されているところ、これに限定されない。例えば、電圧検出部50は、Hiスイッチ35およびHi端子104の間、ならびに、Loスイッチ45およびLo端子106の間にてそれぞれ接続されてもよい。
【0070】
温度検出部55は、サーミスタ等を有することにより、ワイパモータ100の温度を検出する。さらに、温度検出部55は、この検出した温度に応じた信号を、判定部64に出力する。
【0071】
以上のように、第2実施形態のワイパ制御装置30は、構成されている。次に、第2実施形態の判定部64によるワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるか否かの判定について、図12のフローチャートを参照して説明する。
【0072】
ステップS200において、判定部64は、各種情報を取得する。具体的には、判定部64は、第1実施形態と同様に、ワイパスイッチ16からの信号、Hi電流Im_HiおよびLo電流Im_Loを取得する。また、判定部64は、モータ用電源14からワイパモータ100に印加される電圧を電圧検出部50から取得する。さらに、判定部64は、ワイパモータ100の温度を温度検出部55から取得する。
【0073】
続いて、ステップS202において、ワイパ90の動作状態が連続高速モードであれば、判定部64は、ステップS200にて取得したHi電流Im_Hiにおいて時間についての平滑化した値Imを算出する。また、ワイパ90の動作状態が連続低速モードまたは間欠モードであるとき、判定部64は、ステップS200にて取得したLo電流Im_Loにおいて時間についての平滑化した値Imを算出する。
【0074】
ここで、上記したように、図示しないリンク機構およびワイパモータ100の特性により、変化量ΔImが負の値から正の値に変化するとき、ワイパ位置Pwが、下反転位置Pdまたは上反転位置Puである。このとき、図13に示すように、平滑化した値Imは、第1閾値Im_th1以上、第2閾値Im_th2以下となる。
【0075】
また、ここで、モータ用電源14からワイパモータ100に印加される電圧が変化することに伴って、平滑化した値Imが変化する。さらに、ワイパモータ100の温度が変化することに伴って、平滑化した値Imが変化する。したがって、モータ用電源14からワイパモータ100に印加される電圧およびワイパモータ100の温度により、第1閾値Im_th1および第2閾値Im_th2を変更することが好ましい。
【0076】
このため、図12のフローチャートに示すように、ステップS202に続くステップS220において、判定部64は、第1閾値Im_th1および第2閾値Im_th2を算出する。具体的には、判定部64は、ステップS200にて取得したモータ用電源14からワイパモータ100に印加される電圧およびワイパモータ100の温度と、マップとを用いることにより、第1閾値Im_th1および第2閾値Im_th2を算出する。なお、上記マップは、例えば、モータ用電源14からワイパモータ100に印加される電圧が大きくなることに伴って、第1閾値Im_th1および第2閾値Im_th2が大きくなるように設定される。また、上記マップは、例えば、ワイパモータ100の温度が低くなることに伴って、第1閾値Im_th1および第2閾値Im_th2が大きくなるように設定される。さらに、上記マップは、後述のワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるか否かが判定されるように、実験やシミュレーション等によって設定される。
【0077】
続いて、ステップS222において、判定部64は、ステップS202にて算出した平滑化した値Imが、ステップS220にて算出した第1閾値Im_th1以上、第2閾値Im_th2以下であるか否かを判定する。これにより、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるか否かを判定する。
【0078】
そして、平滑化した値Imが第1閾値Im_th1以上、第2閾値Im_th2以下であるとき、判定部64の処理は、ステップS208に移行する。また、平滑化した値Imが第1閾値Im_th1未満、または、第2閾値Im_th2よりも大きいとき、判定部64の処理は、ステップS212に移行する。
【0079】
ステップS222に続くステップS208において、平滑化した値Imが第1閾値Im_th1以上、第2閾値Im_th2以下であることから、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puである。したがって、このとき、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであると判定する。また、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであることを示す信号を、駆動部62に出力する。
【0080】
ステップS208に続くステップS210において、判定部64は、第1実施形態と同様に、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定する。このため、この特定についての詳細は、省略する。また、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puのどちらであるかを特定した後、特定したワイパ位置Pwに応じた信号を駆動部62に出力する。その後、判定部64の処理は、ステップS200に戻る。
【0081】
ステップS206に続くステップS212において、平滑化した値Imが第1閾値Im_th1未満、または、第2閾値Im_th2よりも大きいことから、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puではない。したがって、このとき、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puではないと判定する。また、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdおよび上反転位置Puではないことを示す信号を、駆動部62に出力する。その後、判定部64の処理は、ステップS200に戻る。
【0082】
以上のように、判定部64は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるか否かの判定を行う。この第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第2実施形態では、以下に記載する効果も奏する。
【0083】
[2]ここで、ワイパモータ100に印加される電圧が変化することで、Hi電流Im_Hi、Lo電流Im_Loおよび平滑化した値Imが変化する。また、ワイパモータ100の温度が変化することで、Hi電流Im_Hi、Lo電流Im_Loおよび平滑化した値Imが変化する。
【0084】
これに対して、判定部64は、ステップS220にて、ワイパモータ100に印加される電圧の変化に伴って、第1閾値Im_th1および第2閾値Im_th2を変更する。また、判定部64は、ステップS220にて、ワイパモータ100の温度の変化に伴って、第1閾値Im_th1および第2閾値Im_th2を変更する。
【0085】
これらにより、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdまたは上反転位置Puであるにもかかわらず、平滑化した値Imが第1閾値Im_th1および第2閾値Im_th2の間から外れてしまうという判定部64の誤判定が抑制される。
【0086】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、第1時間Δt1は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdとなってから、変化量ΔImが正の値から負の値に変化するときまでの時間である。また、第2時間Δt2は、ワイパ位置Pwが上反転位置Puとなってから、変化量ΔImが正の値から負の値に変化するときまでの時間である。
【0087】
これに対して、第1時間Δt1は、ワイパ位置Pwが下反転位置Pdとなってから、平滑化した値Imが第3閾値以上となるまでの時間としてもよい。また、第2時間Δt2は、ワイパ位置Pwが上反転位置Puとなってから、平滑化した値Imが第3閾値以上となるまでの時間としてもよい。このように第1時間Δt1および第2時間Δt2が変化量ΔImを用いないで設定されてもよい。なお、第3閾値は、第2閾値Im_th2よりも大きく、Hi電流Im_HiまたはLo電流Im_Loの最大値以下に設定される。
【0088】
(他の実施形態)
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に対して、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0089】
本開示に記載の取得部、判定部、駆動部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の取得部、判定部、駆動部およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の取得部、判定部、駆動部およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0090】
上記各実施形態は、適宜組み合わされてもよい。
【0091】
(本開示の観点)
[観点1]
第1位置(Pd)および第2位置(Pu)を往復するワイパ(90)を駆動させるワイパモータ(100)に流れる電流に関する値を取得する取得部(S200)と、
前記ワイパモータに流れる電流の時間変化に基づいて、前記ワイパの位置(Pw)が前記第1位置および前記第2位置のどちらかであると判定する判定部(S206、S208)と、
を備えるワイパ制御装置。
[観点2]
前記判定部は、前記ワイパモータに流れる電流の変化量(ΔIm)が負の値から正の値に変化するとき、前記ワイパの位置(Pw)が前記第1位置および前記第2位置のどちらかであると判定する観点1に記載のワイパ制御装置。
[観点3]
前記判定部は、前記ワイパの位置が前記第1位置になってから前記ワイパモータに流れる電流の変化量(ΔIm)が正の値から負の値に変化するときまでの時間(Δt1)と、前記ワイパの位置が前記第2位置になってから前記ワイパモータに流れる電流の変化量(ΔIm)が正の値から負の値に変化するときまでの時間(Δt2)と、に基づいて、前記ワイパの位置が前記第1位置および前記第2位置のどちらであるかを特定する観点1または2に記載のワイパ制御装置。
[観点4]
前記判定部は、前記ワイパの初期位置と、前記ワイパの位置が前記第1位置および前記第2位置のどちらかであると判定した回数と、に基づいて、前記ワイパの位置が前記第1位置および前記第2位置のどちらであるかを特定する観点1または2に記載のワイパ制御装置。
[観点5]
前記判定部は、前記ワイパの位置が前記第1位置になってから前記第2位置となるときまでの時間(Δt3)と、前記ワイパの位置が前記第2位置になってから前記第1位置となるときまでの時間(Δt4)と、に基づいて、前記ワイパの位置が前記第1位置および前記第2位置のどちらであるかを特定する観点1または2に記載のワイパ制御装置。
[観点6]
前記判定部は、前記ワイパの位置が前記第1位置になってから前記第2位置となるときまでの時間(Δt3)と、前記ワイパの位置が前記第1位置になってからの経過時間と、前記ワイパの位置が前記第2位置になってから前記第1位置となるときまでの時間(Δt4)と、前記ワイパの位置が前記第2位置になってからの経過時間と、に基づいて、前記ワイパの位置を推定する観点1ないし5のいずれか1つに記載のワイパ制御装置。
[観点7]
第1位置(Pd)および第2位置(Pu)を往復するワイパ(90)を駆動させるワイパモータ(100)に流れる電流に関する値を取得する取得部(S200)と、
前記ワイパモータに流れる電流が第1閾値以上、第2閾値以下であるとき、前記ワイパの位置(Pw)が前記第1位置および前記第2位置のどちらかであると判定する判定部(S208、S222)と、
を備えるワイパ制御装置。
[観点8]
前記判定部は、前記ワイパモータに印加される電圧の変化に伴って、前記第1閾値および前記第2閾値を変更する観点7に記載のワイパ制御装置。
[観点9]
前記判定部は、前記ワイパモータの温度の変化に伴って、前記第1閾値および前記第2閾値を変更する観点7または8に記載のワイパ制御装置。
[観点10]
前記ワイパの位置が前記第1位置および前記第2位置のどちらかであるとき、前記ワイパモータに供給される電力を減少させる駆動部(62)をさらに備える観点1ないし9のいずれか1つに記載のワイパ制御装置。
[観点11]
前記ワイパ制御装置は、オンすることにより、前記ワイパモータに電圧を印加させることで前記ワイパモータを回転させる駆動素子(35、45)をさらに備え、
前記駆動部は、前記ワイパの位置が前記第1位置および前記第2位置のどちらかであるとき、前記駆動素子をオンオフさせることにより、前記ワイパモータに供給される電力を減少させる観点10に記載のワイパ制御装置。
【符号の説明】
【0092】
14 モータ用電源
16 ワイパスイッチ
35 Hiスイッチ
39 Hi電流検出部
45 Loスイッチ
49 Lo電流検出部
60 制御部
62 駆動部
64 判定部
100 ワイパモータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13