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特開2024-126341トロピリウム化合物及びそれを用いた蛍光色素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126341
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】トロピリウム化合物及びそれを用いた蛍光色素
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20240912BHJP
   C09B 57/00 20060101ALI20240912BHJP
   C07D 333/28 20060101ALI20240912BHJP
   C07D 333/16 20060101ALI20240912BHJP
   C07D 333/22 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C07D495/04 101
C09B57/00 N
C07D333/28
C07D333/16
C07D333/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034651
(22)【出願日】2023-03-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「研究題目名:励起ダイナミクス制御に基づくヘテロπ電子系の創製」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 征史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優衣
(72)【発明者】
【氏名】山口 茂弘
【テーマコード(参考)】
4C071
【Fターム(参考)】
4C071AA08
4C071BB01
4C071BB05
4C071CC22
4C071EE13
4C071FF23
4C071GG02
4C071GG03
4C071GG05
4C071JJ01
4C071LL04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高いモル吸光係数(ε)、大きなStokesシフトを併せもつ化合物の提供。
【解決手段】

[式中、Y及びYは硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。Rはそれぞれ置換されていてもよく、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。R、R、R及びRはそれぞれ置換されていてもよく、水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を示す。R及びRはそれぞれ置換されていてもよく、アリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基を示す。RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、及びRとRの少なくとも1つは一緒になって、隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。]で表されるカチオンを含有する、トロピリウム化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。
は水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルケニル基、置換若しくは非置換アルキニル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ヘテロアリール基を示す。
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルケニル基、又は置換若しくは非置換アリール基を示す。
及びRは同一又は異なって、置換若しくは非置換アリーレン基及び/又は置換若しくは非置換ヘテロアリーレン基を示す。
とR、及び/又はRとRは一緒になって、隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。
とR、RとR、RとR、及びRとRの少なくとも1つは一緒になって、隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。]
で表されるカチオンを含有する、トロピリウム化合物。
【請求項2】
一般式(1A):
【化2】
[式中、Y、Y、R、R、R、R、R、R及びRは前記に同じである。Xはアニオンを示す。]
で表される、請求項1に記載のトロピリウム化合物。
【請求項3】
前記Y及びYがいずれも硫黄原子である、請求項1に記載のトロピリウム化合物。
【請求項4】
前記R及びRが同一又は異なって、置換若しくは非置換アリーレン基である、請求項1に記載のトロピリウム化合物。
【請求項5】
前記Rが置換若しくは非置換アリール基である、請求項1に記載のトロピリウム化合物。
【請求項6】
前記R、R、R及びRが同一又は異なって、置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基である、請求項1に記載のトロピリウム化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のトロピリウム化合物を含有する、蛍光色素。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のトロピリウム化合物を含有する、ソルバトクロミック蛍光色素。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載のトロピリウム化合物を含有する、近赤外吸収材料。
【請求項10】
薄膜である、請求項9に記載の近赤外吸収材料。
【請求項11】
一般式(7):
【化3】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。
は水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルケニル基、置換若しくは非置換アルキニル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ヘテロアリール基を示す。]
で表される化合物。
【請求項12】
一般式(6):
【化4】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。
は水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルケニル基、置換若しくは非置換アルキニル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ヘテロアリール基を示す。]
で表される化合物。
【請求項13】
一般式(9):
【化5】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。]
で表される化合物。
【請求項14】
一般式(5):
【化6】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。
はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物。
【請求項15】
一般式(4):
【化7】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。
はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロピリウム化合物及びそれを用いた蛍光色素に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機化合物を基盤とする色素は、古くから染料として、また最近では光エネルギー変換デバイス(太陽電池等)における光吸収材料、バイオイメージング用色素等に用いられており、応用例は多岐にわたる。これらはいずれも可視光領域に光吸収をもつことを利用したものである。一方、紫外領域や近赤外領域等不可視な(肉眼で見えない)波長領域に光吸収をもつ化合物は、セキュリティインクやセンサー材料等、従来の色素材料とは異なる新たな用途が見込まれる。特に、生体への毒性の低さや高い透過性を考慮すると、近赤外領域に強い光吸収をもつ色素は魅力的である。
【0003】
近赤外領域はヘモグロビンや水の吸収が弱く、細胞組織透過性が高いことから生体の窓と呼ばれている。そのため、生体蛍光イメージングや光線力学療法、光熱療法等をはじめとする様々な分野で、その領域の光を吸収及び発光する分子が非常に注目されている。従来の近赤外色素は、希土類金属を含むナノ粒子や、鉛、カドミウム等を含む量子ドット、イリジウムをはじめとするレアメタルを含む金属錯体等が知られている。これらに対し、有機物からなる蛍光色素は、柔軟、軽量、安価、重金属を含まないことに由来する毒性の低減等の優位性を期待できる。
【0004】
近赤外領域に吸収及び蛍光特性を示す有機色素の例は限られており、その代表例は以下に示すシアニン化合物やベンゾビス(チアジアゾール)化合物である。
【0005】
【化1】
【0006】
シアニン型蛍光色素は、モル吸光係数(ε)が高い一方でStokesシフト(吸収波長λabsと蛍光波長λemの差、Δν)は極端に小さい。反対に、ベンゾビス(チアジアゾール)化合物は、モル吸光係数(ε)が小さい一方でStokesシフトは大きい。高いモル吸光係数(ε)と大きなStokesシフトとを併せもつ化合物を提供することができれば、輝度が高く、励起光と区別しやすい蛍光が得られるため、生体イメージングにおいては標的物の像が不鮮明になる問題を解決することができる。
【0007】
ところで、トロピリウム塩は、1891年に初めて合成(例えば、非特許文献1参照)されて以来、安定性と特異な反応性を兼ね備えたユニークな化学種として様々な研究がなされてきた。しかしながら、蛍光色素の主骨格として利用された例は非常に少ない。
【0008】
トロピリウムイオンを安定な化合物として単離し、色素として使用した例としては、例えば、非特許文献2に開示されている。しかしながら、吸収極大波長は400~580nm、蛍光極大波長は600~670nmであり、いずれも近赤外領域に達していない。
【0009】
【化2】
【0010】
また、シクロヘプタトリエノールとフルオレンとの共重合体も知られている(例えば、非特許文献3参照)。非特許文献3では、酸を加えた際の色調の変化の要因として、ジチエノトロピリウムイオンの発生が提案されている。しかしながら、得られるトロピリウム化合物は単離できる蛍光色素ではなく、また、近赤外領域での吸収や蛍光特性も見られなかった。
【0011】
【化3】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Merling, G. Chem. Ber. 1891, 24, 3108
【非特許文献2】Yamaguchi S. et al. Chem. Eur. J. 2016, 22, 17571
【非特許文献3】Swager, T. M. et al. ACS Macro Lett. 2015, 4, 138
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような課題を解決しようとするものであり、高いモル吸光係数(ε)と大きなStokesシフトとを併せもつ化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を鑑み、鋭意検討した結果、本発明者らは、非特許文献2におけるチオフェン環の縮合位置を変えた所定の骨格を有するトロピリウム化合物は、高いモル吸光係数(ε)と大きなStokesシフトとを併せもつ化合物であることを見出した。本発明は、このような知見に基づきさらに研究を重ね、完成させたものである。すなわち、本発明は以下の構成を包含する。
【0015】
項1.一般式(1):
【0016】
【化4】
【0017】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。
は水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルケニル基、置換若しくは非置換アルキニル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ヘテロアリール基を示す。
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルケニル基、又は置換若しくは非置換アリール基を示す。
及びRは同一又は異なって、置換若しくは非置換アリーレン基及び/又は置換若しくは非置換ヘテロアリーレン基を示す。
とR、及び/又はRとRは一緒になって、隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。
とR、RとR、RとR、及びRとRの少なくとも1つは一緒になって、隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。]
で表されるカチオンを含有する、トロピリウム化合物。
【0018】
項2.一般式(1A):
【0019】
【化5】
【0020】
[式中、Y、Y、R、R、R、R、R、R及びRは前記に同じである。Xはアニオンを示す。]
で表される、項1に記載のトロピリウム化合物。
【0021】
項3.前記Y及びYがいずれも硫黄原子である、項1又は2に記載のトロピリウム化合物。
【0022】
項4.前記R及びRが同一又は異なって、置換若しくは非置換アリーレン基である、項1~3のいずれか1項に記載のトロピリウム化合物。
【0023】
項5.前記Rが置換若しくは非置換アリール基である、項1~4のいずれか1項に記載のトロピリウム化合物。
【0024】
項6.前記R、R、R及びRが同一又は異なって、置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基である、項1~5のいずれか1項に記載のトロピリウム化合物。
【0025】
項7.項1~6のいずれか1項に記載のトロピリウム化合物を含有する、蛍光色素。
【0026】
項8.項1~6のいずれか1項に記載のトロピリウム化合物を含有する、ソルバトクロミック蛍光色素。
【0027】
項9.項1~6のいずれか1項に記載のトロピリウム化合物を含有する、近赤外吸収材料。
【0028】
項10.薄膜である、項9に記載の近赤外吸収材料。
【0029】
項11.一般式(7):
【0030】
【化6】
【0031】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。
は水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルケニル基、置換若しくは非置換アルキニル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ヘテロアリール基を示す。]
で表される化合物。
【0032】
項12.一般式(6):
【0033】
【化7】
【0034】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。
は水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルケニル基、置換若しくは非置換アルキニル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ヘテロアリール基を示す。]
で表される化合物。
【0035】
項13.一般式(9):
【0036】
【化8】
【0037】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。]
で表される化合物。
【0038】
項14.一般式(5):
【0039】
【化9】
【0040】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。
はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物。
【0041】
項15.一般式(4):
【0042】
【化10】
【0043】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。
はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、高いモル吸光係数(ε)と大きなStokesシフトとを併せもつトロピリウム化合物を提供することができる。
【0045】
また、本発明のトロピリウム化合物は、薄膜中であっても強く発光する化合物である。
【0046】
また、本発明のトロピリウム化合物は、溶媒の極性によって蛍光極大波長が変化するソルバトクロミック蛍光色素である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】合成例5で得た化合物1の各溶媒中での吸収及び蛍光スペクトルを示す。
図2】合成例9で得た化合物2の各溶媒中での吸収及び蛍光スペクトルを示す。
図3】合成例10で得た化合物3の各溶媒中での吸収及び蛍光スペクトルを示す。
図4】合成例11で得た化合物11の各溶媒中での吸収及び蛍光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0049】
また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0050】
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0051】
1.トロピリウム化合物
本発明のトロピリウム化合物は、一般式(1):
【0052】
【化11】
【0053】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。
は水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルケニル基、置換若しくは非置換アルキニル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換ヘテロアリール基を示す。
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルケニル基、又は置換若しくは非置換アリール基を示す。
及びRは同一又は異なって、置換若しくは非置換アリーレン基及び/又は置換若しくは非置換ヘテロアリーレン基を示す。
とR、及び/又はRとRは一緒になって、隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。
とR、RとR、RとR、及びRとRの少なくとも1つは一緒になって、隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。]
で表されるカチオンを含有する。
【0054】
この本発明のトロピリウム化合物は、一般式(1A):
【0055】
【化12】
【0056】
[式中、Y、Y、R、R、R、R、R、R及びRは前記に同じである。Xはアニオンを示す。]
で表されるトロピリウム化合物と書き換えることも可能である。
【0057】
一般式(1)及び(1A)において、Y、Yとしては、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基(-NH-等)のいずれでもよいが、合成のしやすさ、溶解性、モル吸光係数(ε)、Stokesシフト、吸収極大波長、蛍光極大波長、蛍光の輝度、蛍光極大波長の溶媒依存性等の観点から、硫黄原子、酸素原子等がこのましく、硫黄原子がより好ましい。
【0058】
一般式(1)及び(1A)において、Rで示されるアルキル基としては、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基のいずれも採用できる。直鎖アルキル基としては、炭素数1~6(特に1~4)の直鎖アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。分岐鎖アルキル基としては、炭素数3~6(特に3~5)の分岐鎖アルキル基が好ましく、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基等が挙げられる。
【0059】
一般式(1)及び(1A)において、Rで示されるアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロ基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、後述のアルケニル基、後述のアルキニル基、後述のアリール基、後述のヘテロアリール基、カルボキシ基、アミド基(ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、アセトアミド基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基を有する場合の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。なお、置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1~6(特に1~4)のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0060】
アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、ハロ基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等)、上記アルコキシ基、後述のアルケニル基、後述のアルキニル基、後述のアリール基、後述のヘテロアリール基、カルボキシ基、アミド基(ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、アセトアミド基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基を有する場合の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。つまり、アルコキシ基には、ポリエチレングリコール由来の基(-O-(CHCHO)-CH等)も包含され得る。
【0061】
一般式(1)及び(1A)において、Rで示されるアルケニル基としては、炭素数2~6(特に2~4)のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基等が挙げられる。
【0062】
一般式(1)及び(1A)において、Rで示されるアルケニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロ基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等)、ヒドロキシ基、上記アルキル基、上記アルコキシ基、上記アルケニル基、後述のアルキニル基、後述のアリール基、後述のヘテロアリール基、カルボキシ基、アミド基(ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、アセトアミド基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基を有する場合の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0063】
一般式(1)及び(1A)において、Rで示されるアルキニル基としては、炭素数2~6(特に2~4)のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基等が挙げられる。
【0064】
一般式(1)及び(1A)において、Rで示されるアルキニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロ基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等)、ヒドロキシ基、上記アルキル基、上記アルコキシ基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、後述のアリール基、後述のヘテロアリール基、カルボキシ基、アミド基(ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、アセトアミド基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基を有する場合の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0065】
一般式(1)及び(1A)において、Rで示されるアリール基としては、単環アリール(フェニル基)基及び多環アリール基のいずれも採用することができ、例えば、フェニル基、縮環アリール基(ナフチル基、アントリル基等)、フェナンスレニル基、フルオレニル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0066】
一般式(1)及び(1A)において、Rで示されるアリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロ基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等)、ヒドロキシ基、上記アルキル基、上記アルコキシ基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、上記アリール基、後述のヘテロアリール基、カルボキシ基、アミド基(ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、アセトアミド基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基を有する場合の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。また、置換位置も特に制限されない。置換位置は、オルト位、メタ位及びパラ位のいずれも採用できる。
【0067】
一般式(1)及び(1A)において、Rで示されるヘテロアリール基としては、例えば、チエニル基、フリル基、ピリジル基等が挙げられる。
【0068】
一般式(1)及び(1A)において、Rで示されるヘテロアリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロ基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等)、ヒドロキシ基、上記アルキル基、上記アルコキシ基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、上記アリール基、上記ヘテロアリール基、カルボキシ基、アミド基(ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、アセトアミド基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基を有する場合の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。また、置換位置も特に制限されない。例えば、六員環のヘテロアリール基である場合は、置換位置は、オルト位、メタ位及びパラ位のいずれも採用できる。
【0069】
このRの種類によっては、吸収極大波長、蛍光極大波長や溶解性、溶解性等の調整を行うことも可能である。なかでも、Rとしては、カチオン化させやすく、溶解性を向上させやすく、溶解性を確保する観点から、置換若しくは非置換アリール基、置換若しくは非置換ヘテロアリール基等が好ましい。一つの実施態様としては、Rとしては、置換若しくは非置換アリール基としてもよく、置換若しくは非置換単環アリール基(置換若しくは非置換フェニル基)としてもよく、パラ位に置換基を有する単環アリール基(パラ位に置換基を有するフェニル基)としてもよい。
【0070】
一般式(1)及び(1A)において、R、R、R及びRで示されるアルキル基、アルケニル基及びアリール基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。
【0071】
これらのなかでも、R、R、R及びRとしては、合成のしやすさ、溶解性、モル吸光係数(ε)、Stokesシフト、吸収極大波長、蛍光極大波長、蛍光の輝度、蛍光極大波長の溶媒依存性等の観点から、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基等が好ましく、置換若しくは非置換アリール基等がより好ましい。
【0072】
一般式(1)及び(1A)において、R及びRで示されるアリーレン基は、芳香族炭化水素環から水素原子を2個脱離させた2価の基を意味する。特に、オルト位、メタ位及びパラ位に結合手を有するアリーレン基のいずれも採用でき、合成のしやすさ、溶解性、モル吸光係数(ε)、Stokesシフト、吸収極大波長、蛍光極大波長、蛍光の輝度、蛍光極大波長の溶媒依存性等の観点から、特に、パラ位に結合手を有するアリーレン基が好ましい。芳香族炭化水素環としては、単環芳香族炭化水素環(ベンゼン環)及び多環芳香族炭化水素環のいずれも採用でき、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピレン環、トリフェニレン環等が挙げられる。
【0073】
一般式(1)及び(1A)において、R及びRで示されるアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロ基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等)、ヒドロキシ基、上記アルキル基、上記アルコキシ基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、上記アリール基、上記ヘテロアリール基、カルボキシ基、アミド基(ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、アセトアミド基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基を有する場合の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。置換位置も特に制限されず、適宜選択することができる。
【0074】
一般式(1)及び(1A)において、R及びRで示されるヘテロアリーレン基は、複素芳香環から水素原子を2個脱離させた2価の基を意味する。複素芳香環が六員環である場合は、オルト位、メタ位及びパラ位に結合手を有するヘテロアリーレン基のいずれも採用でき、合成のしやすさ、溶解性、モル吸光係数(ε)、Stokesシフト、吸収極大波長、蛍光極大波長、蛍光の輝度、蛍光極大波長の溶媒依存性等の観点から、特に、パラ位に結合手を有するヘテロアリーレン基が好ましい。複素芳香環としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピリジン環等が挙げられる。
【0075】
一般式(1)及び(1A)において、R及びRで示されるヘテロアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロ基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等)、ヒドロキシ基、上記アルキル基、上記アルコキシ基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、上記アリール基、上記ヘテロアリール基、カルボキシ基、アミド基(ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、アセトアミド基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基を有する場合の数は、特に制限されず、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0076】
なかでも、R及びRとしては、合成のしやすさ、溶解性、モル吸光係数(ε)、Stokesシフト、吸収極大波長、蛍光極大波長、蛍光の輝度、蛍光極大波長の溶媒依存性等の観点から、置換若しくは非置換アリーレン基が好ましく、置換若しくは非置換単環アリーレン基(置換若しくは非置換フェニレン基)がより好ましく、パラ位に結合手を有する置換若しくは非置換単環アリーレン基(置換若しくは非置換p-フェニレン基)がさらに好ましい。
【0077】
なお、RとR、及び/又はRとRは一緒になって、隣接する窒素原子とともに環を形成することもできる。形成される環は、上記した芳香族炭化水素環及び複素芳香環が挙げられる。つまり、-NR又は-NRで表される基を
【0078】
【化13】
【0079】
等とすることも可能である。ただし、合成のしやすさ、溶解性、モル吸光係数(ε)、Stokesシフト、蛍光の輝度、蛍光極大波長の溶媒依存性等の観点からは、RとRは環を形成しないことが好ましく、RとRは環を形成しないことが好ましい。
【0080】
また、RとR、RとR、RとR、及びRとRの少なくとも1つは一緒になって、隣接する窒素原子とともに環を形成することもできる。形成される環は、上記した芳香族炭化水素環及び複素芳香環が挙げられる。つまり、上記のRとR、及び/又はRとRが環を形成することがあることも含めて、-RNR又は-RNRで表される基を
【0081】
【化14】
【0082】
等とすることも可能である。ただし、合成のしやすさと溶解性の観点からは、RとRは環を形成しないことが好ましく、RとRは環を形成しないことが好ましく、RとRは環を形成しないことが好ましく、RとRは環を形成しないことが好ましい。
【0083】
一般式(1A)において、Xで示されるアニオン(1価のアニオン)としては、例えば、ハロゲン化物イオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、シアン化物イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、炭酸水素イオン、過塩素酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、置換若しくは非置換ホウ酸イオン(ホウ酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ酸イオン)、ビスノナフルオロブタンスルホンイミド等が挙げられる。特に、Xで示されるアニオンを小さいアニオン(ハロゲン化物イオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、シアン化物イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、炭酸水素イオン、過塩素酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、置換若しくは非置換ホウ酸イオン(ホウ酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン)等)とした場合は、Stokesシフトが大きくなりやすい。また、Xで示されるアニオンを嵩高いアニオン(テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ酸イオン、ビスノナフルオロブタンスルホンイミド等)とした場合には、モル吸光係数(ε)が大きくなりやすいうえに、極性溶媒のみならず、非極性溶媒中にも溶解させやすくすることが可能である。
【0084】
このような条件を満たす本発明のトリピリウム化合物としては、合成のしやすさ、溶解性、モル吸光係数(ε)、Stokesシフト、吸収極大波長、蛍光極大波長、蛍光の輝度、蛍光極大波長の溶媒依存性等の観点から、一般式(1A1):
【0085】
【化15】
【0086】
[式中、R及びXは前記に同じである。R2a、R3a、R4a及びR5aは同一又は異なって、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルケニル基、又は置換若しくは非置換アリール基を示す。R6a及びR7aは同一又は異なって、置換若しくは非置換アリーレン基及び/又は置換若しくは非置換ヘテロアリーレン基を示す。]
で表されるジチエノトロピリウム化合物が好ましく、一般式(1A2):
【0087】
【化16】
【0088】
[式中、R及びXは前記に同じである。R2b、R3b、R4b及びR5bは同一又は異なって、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基を示す。R6b及びR7bは同一又は異なって、置換若しくは非置換アリーレン基を示す。]
で表されるジチエノトロピリウム化合物がより好ましい。
【0089】
このような本発明のトロピリウム化合物としては、例えば、
【0090】
【化17】
【0091】
[式中、Phはフェニル基を示す。以下同様である。]
等で表されるトロピリウム化合物等が挙げられ、
【0092】
【化18】
【0093】
等で表されるトロピリウム化合物が好ましい。
【0094】
このような本発明のトロピリウム化合物は、高いモル吸光係数(ε)と大きなStokesシフトとを併せもつ化合物である。具体的には、紫外可視近赤外吸光スペクトルから算出されるモル吸光係数(ε)は、好ましくは7.00~13.00×10-1cm-1、より好ましくは7.50~12.50×10-1cm-1とすることができる。また、具体的には、紫外可視近赤外吸光スペクトルから算出されるStokesシフトは、好ましくは1500~5000cm-1、より好ましくは1600~4500cm-1とすることができる。また、具体的には、紫外可視近赤外吸光スペクトルから算出される蛍光量子収率は、好ましくは0.001~0.150、より好ましくは0.002~0.100とすることができる。
【0095】
また、本発明のトロピリウム化合物は、紫外可視近赤外吸光スペクトルにおいて、吸収極大波長が好ましくは600~800nm、より好ましくは650~750nmに有し得る。また、本発明のトロピリウム化合物は、蛍光スペクトルにおいて、蛍光極大波長が好ましくは700~1000nm、より好ましくは750~950nmに有し得る。なお、本発明のトロピリウム化合物は、溶媒の極性によって吸収極大波長及び蛍光極大波長が変化する、つまり、ソルバトクロミック特性を有する化合物群である。例えば、溶媒の極性が非常に小さいトルエン等の非極性溶媒中では吸収極大波長が650~750nm、特に670~720nmであり、蛍光極大波長が700~900nm、特に750~850nmである。一方、溶媒の極性が大きいアセトニトリル等の極性溶媒中では吸収極大波長が600~700nm、特に660~680nmであり、蛍光極大波長が850~1000nm、特に900~950nmである。つまり、蛍光極大波長をより長波長化するとともに、吸収極大波長及び蛍光極大波長(特に蛍光極大波長)の溶媒依存性を高めることが可能である。この特性を有するため、本発明のトロピリウム化合物は、蛍光色素、特にソルバトクロミック蛍光色素として使用することが可能であり、また、肉眼では識別できない近赤外光を吸収する色素(近赤外吸収材料)として利用することができる。
【0096】
なお、本発明のトロピリウム化合物は、薄膜中であっても強く発光する化合物である。特に、本発明のトロピリウム化合物は、溶液中よりも薄膜中のほうが強く発光させることが可能である。具体的には、本発明のトロピリウム化合物は、薄膜中において算出される蛍光量子収率は、好ましくは0.050~0.500、より好ましくは0.080~0.400とすることができる。
【0097】
このため、本発明のトロピリウム化合物を用いた近赤外吸収蛍光材料は、薄膜とすることが可能である。
【0098】
本発明のトロピリウム化合物を用いた近赤外吸収材料は、薄膜とする場合、薄膜の形成方法としては、特に制限されるわけではないが、スピンコート法、ドロップキャスト法、ディップコート法、スプレー法等の溶液法を採用することができる。
【0099】
本発明のトロピリウム化合物を用いた近赤外吸収材料を、溶液法にて薄膜とする場合、本発明のトロピリウム化合物に対して、バインダーポリマー等を添加することもできる。例えば、本発明のトロピリウム化合物のみ、又は本発明のトロピリウム化合物とバインダーポリマーとを溶媒に溶解又は分散させて塗布液とすることもできる。バインダーポリマーとしては、例えば、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル)、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリパラキシレン、ポリエチレン、ポリエチレンエーテル、ポリプロピレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルスルフォン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンエチニレン、ポリフルオレン、ポリチエニレンビニレン等があげられる。
【0100】
製膜の際、使用される溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン(1,2,3,4‐テトラヒドロナフタレン)、モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族系有機溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系有機溶媒;ベンゾニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル系溶媒;メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、シクロヘキサノール、2-n-ブトキシエタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO);クロロホルム(トリクロロメタン)等があげられるが、これらに限定されない。また、上記溶媒は、1種または2種以上を混合して使用してもよく、構造により使用する溶媒を選択することができる。
【0101】
本発明のトロピリウム化合物を用いた近赤外吸収及び蛍光材料を薄膜とする場合の厚みは、特に制限されるわけではないが、モル吸光係数(ε)、Stokesシフト、蛍光の輝度等の観点から、30~300nmが好ましく、80~200nmがより好ましい。
【0102】
上記のような特性を有する本発明のトロピリウム化合物は、例えば、生体蛍光イメージング材料、有機エレクトロルミネッセンス(OLED)材料、光線力学療法、光熱療法をはじめ、様々な化学産業に適用することが可能である。
【0103】
2.トロピリウム化合物の製造方法(その1)
本発明のトロピリウム化合物は、特に制限されず、様々な方法で合成することが可能である。例えば、以下の反応式1:
【0104】
【化19】
【0105】
[式中、Y、Y、R、R、R、R、R、R、R及びXは前記に同じである。X、X及びXは同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。]
にしたがって合成することができる。
【0106】
なお、上記反応式1において、X、X及びXで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0107】
(2-1)化合物(2)→化合物(4)
本工程では、パラジウム触媒、銅触媒及び塩基の存在下に、化合物(2)と化合物(3)とを反応させることで、化合物(4)を得ることができる。通常採用される薗頭カップリング反応にしたがって行うことができる。
【0108】
化合物(2)及び化合物(3)は、公知又は市販品を採用することができる。また、常法により合成することもできる。
【0109】
化合物(3)の使用量は、例えば、基質である化合物(2)1モルに対して、通常、0.5~3.0モルが好ましく、1.0~1.5モルがより好ましい。
【0110】
パラジウム触媒としては、特に制限されず、金属パラジウムをはじめ、有機化合物(高分子化合物を含む)の合成用触媒として公知のパラジウム化合物等が挙げられる。パラジウム触媒としては、0価パラジウムを含む化合物及びII価パラジウムを含む化合物のいずれも採用できる。なお、II価パラジウムを含む化合物を用いた場合には、当該II価パラジウムは、系中で還元されて0価パラジウムになる。使用できるパラジウム化合物としては、具体的には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd(dba))、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリtert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)(Acはアセチル基;以下同様))、ハロゲン化パラジウム(PdCl、PdBr、PdI)、PdCl(PPh等が挙げられる。本発明においては、反応収率等の観点から、II価パラジウムを含むパラジウム触媒が好ましく、PdCl(PPhがより好ましい。これらのパラジウム触媒は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0111】
パラジウム触媒の使用量は、基質の種類により適宜選択することが可能であり、例えば、基質である化合物(2)1モルに対して、通常、0.002~0.05モルが好ましく、0.005~0.03モルがより好ましい。なお、複数のパラジウム触媒を使用する場合には、合計使用量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0112】
銅触媒としては、特に制限されるわけではないが、ハロゲン化銅(塩化銅、臭化銅、溶化銅等)が好ましく、本工程では収率の観点からヨウ化銅がより好ましい。これらの銅触媒は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0113】
銅触媒の使用量は、基質の種類により適宜選択することが可能であり、例えば、基質である化合物(2)1モルに対して、通常、0.001~0.01モルが好ましく、0.002~0.005モルがより好ましい。なお、複数の銅触媒を使用する場合には、合計使用量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0114】
塩基としては、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン等のアミン化合物が挙げられ、これらは溶媒としての役割も有する。
【0115】
塩基の使用量は特に制限されないが、上記の液体のアミン化合物を使用する場合には過剰量とすることが好ましい。
【0116】
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用すればよく、本工程では、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルが好ましい。また、上記の塩基を溶媒として使用してもよい。
【0117】
本発明の製造方法は、不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行うことが好ましく、反応温度は、通常、0~80℃が好ましく、10~50℃がより好ましい。反応時間は、反応が十分に進行する時間とすることができ、通常、1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましい。
【0118】
反応終了後は、必要に応じて通常の単離及び精製工程を経て、化合物(4)を得ることができる。また、単離及び精製をせずに、次の工程を行うこともできる。
【0119】
(2-2)化合物(4)→化合物(5)
本工程では、化合物(4)と還元剤とを反応させることで、化合物(5)を得ることができる。
【0120】
還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛(Zn(BH)、トリアセトキシ水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム、トリsec-ブチル水素化ホウ素リチウム、ボラン、ボラン・テトラヒドロフラン(THF)錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化ホウ素リチウム等が挙げられる。これらの還元剤は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0121】
還元剤の使用量は、基質の種類により適宜選択することが可能であるが、過剰量とすることが好ましい。
【0122】
本工程は、通常、有機溶媒の存在下で行うことができる。使用できる有機溶媒は、例えば、メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、シクロヘキサノール、2-n-ブトキシエタノール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族ハロゲン化炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0123】
本発明の製造方法は、不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行うことが好ましく、反応温度は、通常、0~80℃が好ましく、10~50℃がより好ましい。反応時間は、反応が十分に進行する時間とすることができ、通常、1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましい。
【0124】
反応終了後は、必要に応じて通常の単離及び精製工程を経て、化合物(5)を得ることができる。また、単離及び精製をせずに、次の工程を行うこともできる。
【0125】
(2-3)化合物(5)→化合物(6)
本工程では、化合物(5)とRCHOで表される化合物とを、マグネシウム化合物の存在下で反応させることで、化合物(6)を得ることができる。
【0126】
CHOで表される化合物の使用量は、例えば、基質である化合物(5)1モルに対して、通常、1.0~3.0モルが好ましく、1.5~2.0モルがより好ましい。
【0127】
マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウム金属、アルキルマグネシウムハライド又はその塩(例えば、イソプロピルマグネシウムクロリド、イソプロピルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムブロミド塩化リチウム塩等)等が挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0128】
マグネシウム化合物の使用量は、基質の種類により適宜選択することが可能であり、例えば、基質である化合物(5)1モルに対して、通常、0.5~3.0モルが好ましく、1.0~2.0モルがより好ましい。なお、複数のマグネシウム化合物を使用する場合には、合計使用量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0129】
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用すればよく、本工程では、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルが好ましい。
【0130】
本工程は、不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行うことが好ましく、反応温度は、通常、-100~-10℃が好ましく、-60~-20℃がより好ましい。反応時間は、反応が十分に進行する時間とすることができ、通常、1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましい。
【0131】
反応終了後は、必要に応じて通常の単離及び精製工程を経て、化合物(6)を得ることができる。また、単離及び精製をせずに、次の工程を行うこともできる。
【0132】
なお、この工程は、化合物(5)とマグネシウム化合物とを反応させて一般式(9):
【0133】
【化20】
【0134】
[式中、
及びYは同一又は異なって、硫黄原子、酸素原子、酸素原子又は2価の窒素含有基を示す。]
で表される化合物を得た後に、リチウム化合物の存在下にR(Xは上記ハロゲン原子を示す)で表される化合物と反応させることで、化合物(6)を得ることもできる。
【0135】
マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウム金属、アルキルマグネシウムハライド又はその塩(例えば、イソプロピルマグネシウムクロリド、イソプロピルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムブロミド塩化リチウム塩等)等が挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0136】
マグネシウム化合物の使用量は、基質の種類により適宜選択することが可能であり、例えば、基質である化合物(5)1モルに対して、通常、0.5~3.0モルが好ましく、1.0~1.5モルがより好ましい。なお、複数のマグネシウム化合物を使用する場合には、合計使用量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0137】
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用すればよく、本工程では、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルが好ましい。
【0138】
化合物(9)を得る工程は、不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行うことが好ましく、反応温度は、通常、0~80℃が好ましく、10~50℃がより好ましい。反応時間は、反応が十分に進行する時間とすることができ、通常、1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましい。
【0139】
反応終了後は、必要に応じて通常の単離及び精製工程を経て、化合物(9)を得ることができる。また、単離及び精製をせずに、次の工程を行うこともできる。
【0140】
で表される化合物としては、RCl、RBr等が挙げられる。
【0141】
で表される化合物の使用量は、基質の種類により適宜選択することが可能であり、例えば、基質である化合物(9)1モルに対して、通常、0.3~3.0モルが好ましく、0.5~1.5モルがより好ましい。なお、複数のRで表される化合物を使用する場合には、合計使用量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0142】
リチウム化合物としては、特に制限はなく、公知のものが採用でき、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;シクロヘキシルリチウム等のシクロアルキルリチウム;フェニルリチウム等のアリールリチウム等が挙げられる。これらリチウム化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0143】
上記リチウム化合物の使用量は、基質の種類により適宜選択することが可能であり、例えば、基質である化合物(9)1モルに対して、0.3~3.0モルが好ましく、0.5~1.5モルがより好ましい。なお、複数のリチウム化合物を使用する場合には、合計使用量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0144】
化合物(6)を得る工程は、不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行うことが好ましく、反応温度は、通常、0~80℃が好ましく、10~50℃がより好ましい。反応時間は、反応が十分に進行する時間とすることができ、通常、30分~48時間が好ましく、1~36時間がより好ましい。
【0145】
反応終了後は、必要に応じて通常の単離及び精製工程を経て、化合物(6)を得ることができる。また、単離及び精製をせずに、次の工程を行うこともできる。
【0146】
(2-4)化合物(6)→化合物(7)
本工程では、化合物(6)とルイス酸(Lewis酸)とを反応させることで、化合物(7)を得ることができる。
【0147】
ルイス酸(Lewis酸)としては、特に制限はなく、分子内環化反応を引き起こすことができるルイス酸(Lewis酸)であれば特に制限はなく、FeCl、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF-OEt)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)(Cu(OTf))、トリフルオロメタンスルホン酸インジウム(III)(In(OTf))、AuCl等が挙げられる。これらのルイス酸(Lewis酸)は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0148】
ルイス酸(Lewis酸)の使用量は、基質の種類により適宜選択することが可能であり、例えば、基質である化合物(6)1モルに対して、通常、0.02~0.5モルが好ましく、0.05~0.2モルがより好ましい。なお、複数のルイス酸(Lewis酸)を使用する場合には、合計使用量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0149】
本工程は、通常、有機溶媒の存在下で行うことができる。使用できる有機溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族ハロゲン化炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0150】
本発明の製造方法は、不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行うことが好ましく、反応温度は、通常、0~80℃が好ましく、10~50℃がより好ましい。反応時間は、反応が十分に進行する時間とすることができ、通常、1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましい。
【0151】
反応終了後は、必要に応じて通常の単離及び精製工程を経て、化合物(7)を得ることができる。また、単離及び精製をせずに、次の工程を行うこともできる。
【0152】
(2-5)化合物(7)→化合物(1A)
本工程では、パラジウム触媒及び必要に応じて配位子化合物と、カルボン酸と、塩基との存在下に、化合物(7)と化合物(8)とを反応させ、次いで、CR ・X(Rは上記アルキル基又は上記アリール基を示す。)で表される化合物と反応させることで、本発明のトロピリウム化合物を合成することができる。
【0153】
化合物(8)の使用量は、例えば、基質である化合物(7)1モルに対して、通常、1.5~8.0モルが好ましく、2.0~5.0モルがより好ましい。
【0154】
パラジウム触媒としては、特に制限されず、金属パラジウムをはじめ、有機化合物(高分子化合物を含む)の合成用触媒として公知のパラジウム化合物等が挙げられる。パラジウム触媒としては、0価パラジウムを含む化合物及びII価パラジウムを含む化合物のいずれも採用できる。なお、II価パラジウムを含む化合物を用いた場合には、当該II価パラジウムは、系中で還元されて0価パラジウムになる。使用できるパラジウム化合物としては、具体的には、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd(dba))、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリtert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)(Acはアセチル基;以下同様))、ハロゲン化パラジウム(PdCl、PdBr、PdI)等が挙げられる。これらのパラジウム触媒は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0155】
パラジウム触媒の使用量は、基質の種類により適宜選択することが可能であり、例えば、基質である化合物(7)1モルに対して、通常、0.05~0.50モルが好ましく、0.10~0.20モルがより好ましい。なお、複数のパラジウム触媒を使用する場合には、合計使用量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0156】
本工程においては、上記パラジウム触媒とともに、パラジウム原子に配位し得る配位子化合物を使用することができる。配位子化合物を使用しなくても反応を進行させることができるが、配位子化合物を使用することにより、反応収率をさらに向上させることも可能である。
【0157】
このような配位子化合物は、ホスフィン化合物が好ましく、例えば、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(n-ブチル)ホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリメシチルホスフィン、ジ(tert-ブチル)メチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、n-ブチルジアダマンチルホスフィン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,1’-ビス(tert-ブチル)フェロセン、ジフェニルホスフィノメタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,2-ビス(ジペンタフルオロフェニルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3-(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1,2-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)プロパン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル、[3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリス(1-メチルエチル)[1,1’-ビフェニル]-2-イル]ビス(1,1-ジメチルエチル)ホスフィン等が挙げられる。これらの配位子化合物は、溶媒和物であってもよい。これらは単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0158】
配位子化合物の使用量は、基質の種類により適宜選択することが可能であり、例えば、パラジウム触媒1モルに対して、1.0~5.0モルが好ましく、1.5~3.0モルがより好ましい。
【0159】
カルボン酸としては、例えば、ピバル酸、1-メチルシクロプロパンカルボン酸、イソ酪酸、2,2-ジメチル酪酸、シクロヘキサンカルボン酸、1-メチル-1-シクロヘキサンカルボン酸、1-アダマンタンカルボン酸等の分岐カルボン酸;2,4,6-トリメチル安息香酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸;酢酸等が挙げられる。これらのカルボン酸は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0160】
カルボン酸の使用量は、基質の種類により適宜選択することが可能であり、例えば、基質である化合物(7)1モルに対して、通常、0.3~3.0モルが好ましく、0.5~1.5モルがより好ましい。なお、複数のカルボン酸を使用する場合には、合計使用量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0161】
本工程において使用される塩基としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属フッ化物塩、アルカリ金属リン酸塩等が好ましい。このような塩基としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩;フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属フッ化物塩;リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシ塩;リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド等のアルカリ金属アミド塩等が挙げられる。これらは単独で使用することもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0162】
塩基の使用量は、基質の種類により適宜選択することが可能であり、例えば、基質である化合物(7)1モルに対して、通常、2~15モルが好ましく、3~10モルがより好ましい。なお、複数の塩基を使用する場合には、合計使用量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0163】
反応は通常反応溶媒の存在下で行うことができる。反応溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等のアミド等が挙げられる。これらは、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0164】
本発明の製造方法は、不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行うことが好ましく、反応温度は、通常、50~200℃が好ましく、80~150℃がより好ましい。反応時間は、反応が十分に進行する時間とすることができ、通常、1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましい。
【0165】
反応終了後は、必要に応じて通常の単離及び精製工程を経て、本発明のトロピリウム化合物を得ることができる。
【実施例0166】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0167】
合成操作
1H NMR、13C NMR、11B NMR及び19F NMRスペクトルは核磁気共鳴装置JEOL RESONANCE-500(共鳴周波数11B: 160 MHz)、又はJEOL JNM-ECS400(1H: 400 MHz, 13C: 100 MHz, 19F: 376 MHz)を用いて測定した。化学シフト値はppmで表記し、溶媒には重クロロホルム又は重塩化メチレンを用いた。1H NMRの化学シフト値は、溶媒の残留プロトンのシグナルを内部標準とし、重クロロホルム中では7.26 ppm、重塩化メチレン中では5.32 ppmにそれらを設定した。13C NMRの化学シフト値は重溶媒自身のシグナルを内部標準とし、重クロロホルムでは77.16 ppm、重塩化メチレンでは53.8 ppmにそれらを設定した。11B NMRの化学シフト値は三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF3-OEt2)(0.00 ppm)、19F NMRの化学シフト値はCF3COOH(-76.5 ppm)を外部標準としてそれぞれ用いた。薄層クロマトグラフィーは、シリカゲル60 F254を塗布したガラス板を用いて行った。カラムクロマトグラフィーは、PSQ 100Bと60B(富士シリシア化学(株))を用いて行った。脱水溶媒は関東化学(株)から購入した無水溶媒を、有機溶媒精製装置(Glass Contour)でさらに精製して使用した。反応は特に記述がない限り、乾燥させた容器を用い、窒素雰囲気下で行った。
【0168】
[実施例1]
【0169】
【化21】
【0170】
式中、Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。
【0171】
合成例1:化合物4の合成
【0172】
【化22】
【0173】
ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(PdCl2(PPh3)2; 403 mg, 0.57 mmol)とヨウ化銅(223 mg, 1.2 mmol)をトリエチルアミン(120 mL)に溶解した後、2-ブロモ-3-エチニルチオフェン(7.81 g, 42 mmol)と3-ヨードチオフェン(9.95 g, 47 mmol)を加え、室温で14時間攪拌した。水を加え、ジエチルエーテルで3度抽出した後、得られた有機層を飽和食塩水で2度洗浄した。無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、濾過をし、エバポレーターで濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相: ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製することで、化合物4が無色液体として4.42 g(16 mmol, 収率39%)得られた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.58 (dd, J = 2.8, 1.6 Hz, 1H), 7.31 (dd, J = 5.2, 2.8 Hz, 1H), 7.23 (dd, J = 5.2, 1.6 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 7.03 (d, J = 6.0 Hz, 1H). 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3): δ 129.9, 129.8, 129.2, 126.0, 125.6, 124.5, 121.9, 116.8, 88.3, 82.7。
【0174】
合成例2:化合物5の合成
【0175】
【化23】
【0176】
化合物4(4.38 g, 16 mmol)をヘキサン(80 mL)に溶解した後、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL; 1.0 M ヘキサン溶液, 81 mL, 81 mmol)を0℃で5分間かけて滴下した。6時間加熱還流した後、メタノール(56 mL)と酒石酸カリウムナトリウム水溶液(30 vol%, 96 mL)を0℃で加え、さらに室温にて15時間攪拌した。ジエチルエーテルで3度抽出した後、得られた有機層を飽和食塩水で2度洗浄した。無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、濾過をし、エバポレーターで濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相: ヘキサン)で精製することで、化合物5が淡黄色固体として3.25 g(12 mmol, 収率75%)得られた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.21 (dd, J = 4.8, 3.2 Hz, 1H), 7.16 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.14 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 6.92 (dd, J = 4.8, 1.4 Hz, 1H), 6.79 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 6.63 (d, J = 11.9 Hz, 1H), 6.34 (d, J = 11.9 Hz, 1H). 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3): δ 138.1, 138.0, 128.2, 128.1, 126.0, 125.5, 125.4, 124.6, 122.2, 112.6。
【0177】
合成例3:化合物6の合成
【0178】
【化24】
【0179】
化合物5(1.36 g, 5.0 mmol)をテトラヒドロフラン(THF; 100 mL)に溶解した後、イソプロピルマグネシウムブロミド塩化リチウム塩(iPrMgCl・LiCl; 0.92 M THF溶液, 5.5 mL, 6.0 mmol)を-43℃で5分間かけて滴下した。3時間-43℃で攪拌した後、4-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド(1.47 g, 8.5 mmol)を加えて30分間攪拌した。室温にてさらに1時間攪拌した後、水を0℃で加えた。ジクロロメタンで3度抽出した後、得られた有機層を飽和食塩水で2度洗浄した。無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、濾過をし、エバポレーターで濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相: ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製することで、化合物6が無色液体として1.53 g(4.2 mmol, 収率84%)得られた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.54 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.46 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.25 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.16 (dd, J = 5.2, 2.4 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.86 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 6.73 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 6.67 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.45 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.09 (s, 1H), 2.85 (s, 1H). 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3): δ 146.6, 142.9, 138.1, 135.8, 129.8 (q, J = 31.5 Hz), 128.5, 127.8, 126.8, 126.4, 125.5, 125.4 (q, J = 3.8 Hz), 125.2, 124.7, 124.2 (q, J = 271.1 Hz), 122.2, 70.0. 19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ -63.2。
【0180】
合成例4:化合物7の合成
【0181】
【化25】
【0182】
化合物6(728 mg, 2.0 mmol)をジクロロメタン(180 mL)に溶解した後、FeCl3(34.2 mg, 0.21 mmol)のジクロロメタン(20 mL)溶液を0℃で30分間かけて滴下した。室温にて2時間攪拌した後、水を加えた。ジクロロメタンで3度抽出した後、得られた有機層を飽和食塩水で2度洗浄した。無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、濾過をし、エバポレーターで濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相: ヘキサン)で精製することで、化合物7が無色固体として483 mg(1.4 mmol, 収率69%)得られた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.45 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.18 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.17 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 7.02 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 6.73 (s, 2H), 5.73 (s, 1H). 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3): δ 145.4, 135.7, 135.3, 130.1, 129.0 (q, J= 32.4 Hz), 127.7, 125.3 (q, J = 2.8 Hz), 124.2 (q, J = 271.1 Hz), 123.9, 123.2, 43.9. 9F NMR (376 MHz, CDCl3): δ-63.4。
【0183】
合成例5:化合物1の合成
【0184】
【化26】
【0185】
化合物7(17.6 mg, 51 μmol)、4-ブロモ-N,N-ジフェニルアニリン(48.7 mg, 0.15 mmol)、酢酸パラジウム(1.6 mg, 7.9 μmol)、トリ-tert-ブチルホスフィン(4.8 mg, 17 μmol)、ピバル酸(4.6 mg, 45 μmol)、炭酸カリウム(31.5 mg, 0.23 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF; 0.50 mL)に溶解した後、110℃で6時間攪拌した。水を加えた後、ジクロロメタンで3度抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で2度洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。濾過をし、エバポレーターで濃縮した後に残った緑色の固体をジクロロメタン(3.0 mL)に溶解した後、トリフェニルメチリウムテトラフルオロボラート(33.0 mg, 0.10 mmol)を加え、40℃で2時間攪拌した。エバポレーターで濃縮した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相: ジクロロメタン/メタノール=9/1)で精製することで、化合物1が緑色固体として8.3 mg(9.9 μmol, 収率20%)得られた。
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 8.53 (s, 2H), 8.18 (s, 2H), 8.00 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.65 (d, J = 9.2 Hz, 4H), 7.39-7.35 (m, 8H), 7.29-7.17 (m, 10H), 7.05 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.01 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.00 (d, J = 8.8 Hz, 2H). 19F NMR (376 MHz, CD2Cl2): δ -63.8, -153.4. 11B NMR (160 MHz, CD2Cl2): δ -1.1。
【0186】
[実施例2]
【0187】
【化27】
【0188】
式中、Meはメチル基を示す。Phはフェニル基を示す。
【0189】
なお、化合物5の合成は、実施例1と同様に行った。
【0190】
合成例6:化合物8の合成
【0191】
【化28】
【0192】
化合物5(1.63 g, 6.0 mmol)をテトラヒドロフラン(THF; 50 mL)に溶解した後、イソプロピルマグネシウムブロミド塩化リチウム塩(iPrMgCl・LiCl; 0.65 M THF溶液, 11 mL, 7.2 mmol)を-43℃で8分間かけて滴下した。1時間-43℃で攪拌した後、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF; 0.56 mL, 7.2 mmol)を加えて30分間攪拌した。室温にてさらに2.5時間攪拌した後、水を0℃で加えた。ジエチルエーテルで2度抽出した後、得られた有機層を飽和食塩水で2度洗浄した。無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、濾過をし、エバポレーターで濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相: ヘキサン/ジクロロメタン=3/2)で精製することで、化合物8が無色液体として1.05 g(4.8 mmol, 収率79%)得られた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.96 (s, 1H), 7.65 (dd, J = 5.2, 0.8 Hz, 1H), 7.17 (dd, J = 5.2, 2.8 Hz, 1H), 7.12 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 6.77 (dd, J = 5.2, 0.8 Hz, 1H), 6.70 (d, J = 12.0 Hz, 1H). 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3): δ 183.1, 147.2, 138.5, 137.3, 134.3, 130.1, 129.1, 127.5, 125.9, 125.7, 120.1。
【0193】
合成例7:化合物9の合成
【0194】
【化29】
【0195】
1-ブロモ-4-メトキシベンゼン(0.64 mL, 5.1 mmol)をテトラヒドロフラン(THF; 25 mL)に溶解した後、n-ブチルリチウム(nBuLi; 1.6 M ヘキサン溶液, 3.5 mL, 5.6 mmol)を-78℃で滴下した。40分間-78℃で攪拌した後、化合物8(1.02 g, 4.7 mmol)を加えて-78℃で40分間攪拌した。室温にてさらに1.5時間攪拌した後、水を0℃で加えた。ジクロロメタンで2度抽出した後、得られた有機層を飽和食塩水で2度洗浄した。無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、濾過をし、エバポレーターで濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相: ヘキサン/ジクロロメタン= 2/3)で精製することで、化合物9が無色液体として1.04 g(3.06 mmol, 収率68%)得られた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.29 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.18 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 7.15 (dd, J = 5.3, 2.8 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 6.84 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.77 (dd, J = 5.3, 1.2 Hz, 1H), 6.59 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.39 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.01 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H). 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3): δ 159.0, 144.6, 138.2, 135.2, 134.6, 128.4, 127.9, 127.5, 125.7, 125.1, 124.3, 124.0, 122.5, 113.7, 70.3, 55.2。
【0196】
合成例8:化合物10の合成
【0197】
【化30】
【0198】
化合物9(1.04 g, 3.16 mmol)をジクロロメタン(270 mL)に溶解した後、FeCl3(51 mg, 0.32 mmol)のジクロロメタン(30 mL)溶液を0℃で45分間かけて滴下した。室温にて2時間攪拌した後、反応溶液をシリカゲルで濾過し、エバポレーターで濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相: ヘキサン/ジクロロメタン= 3/2)で精製することで、化合物10が無色固体として679 mg(2.19 mmol, 収率69%)得られた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.10 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 7.06 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.97 (d, J = 5.6 Hz, 2H), 6.75 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.73 (s, 2H), 5.58 (s, 1H), 3.73 (s, 3H). 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3): δ 158.5, 137.2, 135.3, 133.9, 129.9, 128.7, 123.9, 122.7, 113.7, 55.3, 43.8。
【0199】
合成例9:化合物2の合成
【0200】
【化31】
【0201】
化合物10(15.8 mg, 51 μmol)、4-ブロモ-N,N-ジフェニルアニリン(48.7 mg, 0.15 mmol)、酢酸パラジウム(1.6 mg, 7.9 μmol)、トリ-tert-ブチルホスフィン(4.5 mg, 16 μmol)、ピバル酸(5.7 mg, 56 μmol)、炭酸カリウム(32.2 mg, 0.23 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF; 0.50 mL)に溶解した後、160℃で14時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、ジクロロメタンで2度抽出した。得られた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液で2度洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。濾過をし、エバポレーターで濃縮した後に残った緑色の固体をジクロロメタン(2.0 mL)に溶解した後、トリフェニルメチリウムテトラフルオロボラート(105.2 mg, 0.32 mmol)を加え、40℃で30分間攪拌した。エバポレーターで濃縮した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相: ジクロロメタン/メタノール = 9/1)で精製した。ジクロロメタンとヘキサンを用い、残留物を再結晶することで、化合物2が緑色固体として3.3 mg(3.7 μmol, 収率7%)得られた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.73 (s, 2H), 8.29 (s, 2H), 7.66 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 7.53 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.34 (t, J = 8.0 Hz, 8H), 7.20-7.16 (m, 14H), 7.01 (d, J = 8.2 Hz, 4H), 3.98 (s, 3H).13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3): δ161.8, 152.8, 151.9, 149.0, 146.0, 135.2, 130.4, 129.9 (two peaks overlapped), 129.5, 129.2, 127.4, 126.3 (two peaks overlapped), 125.4, 123.2, 120.5, 114.9, 55.8. 19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ -154.0. 11B NMR (160 MHz, CDCl3): δ -0.86。
【0202】
合成例10:化合物3の合成
【0203】
【化32】
【0204】
化合物10(15.6 mg, 50 μmol)、4-ブロモ-N,N-ジフェニルアニリン(81.1 mg, 0.25 mmol)、酢酸パラジウム(3.6 mg, 16 μmol)、トリ-tert-ブチルホスフィン(6.6 mg, 33 μmol)、ピバル酸(10.3 mg, 0.10 mmol)、炭酸カリウム(62.0 mg, 0.57 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(0.50 mL)に溶解した後、160℃で21時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、ジクロロメタンで2度抽出した。得られた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液で2度洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。濾過をし、エバポレーターで濃縮した後に残った茶色の固体をジクロロメタン(2.0 mL)に溶解した後、トリフェニルメチリウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート(116.7 mg, 0.11 mmol)を加え、40℃で30分間攪拌した。エバポレーターで濃縮した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相: ヘキサン/ジクロロメタン = 1/1)で精製した。残留物をHPLC(移動相: ヘキサン/クロロホルム = 1/1)で精製することで、化合物3が緑色固体として7.2 mg(4.3 μmol, 収率9%)得られた。
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 8.30 (s, 2H), 8.01 (s, 2H), 7.72 (s, 8H), 7.63 (d, J = 9.2 Hz, 4H), 7.55 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.55 (s, 4H), 7.38 (t, J = 7.6 Hz, 8H), 7.22 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 7.21-7.18 (m, 10H), 7.01 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 3.96 (s, 3H). 19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ-63.4. 11B NMR (160 MHz, CDCl3): δ -1.1。
【0205】
合成例11:化合物11の合成
【0206】
【化33】
【0207】
化合物10(17.7 mg, 51 μmol)、4-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン(50.1 mg, 0.25 mmol)、酢酸パラジウム(3.5 mg, 16 μmol)、トリ-tert-ブチルホスフィン(6.2 mg, 31 μmol)、ピバル酸(9.3 mg, 0.091 mmol)、炭酸カリウム(62.8 mg, 0.45 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(0.50 mL)に溶解した後、160℃で15時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、ジクロロメタンで2度抽出した。得られた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液で2度洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。濾過をし、エバポレーターで濃縮した後に残った茶色の固体をジクロロメタン(2.0 mL)に溶解した後、トリフェニルメチリウムテトラフルオロボラート(34.6 mg, 0.11 mmol)を加え、室温で40時間攪拌した。エバポレーターで濃縮した後、残留物を再結晶したところ、化合物11が緑色固体として16.9 mg(26.6 μmol, 収率52%)得られた。
1H NMR (600 MHz, DMF-d7): δ 8.57 (s, 2H), 8.53 (s, 2H), 7.89 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.87 (d, J = 9.0 Hz, 4H), 7.39 (d, J= 8.4 Hz, 2H), 6.92 (d, J = 9.0 Hz, 4H), 4.06 (s, 3H), 3.15 (s, 12H).19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ 153.5. 11B NMR (160 MHz, CDCl3): δ -0.88。
【0208】
試験例1:吸収及び蛍光特性の評価
合成例5及び9~11で得られた化合物1~3及び11の光物性を測定した。吸収スペクトルは紫外-可視-近赤外分光光度計UV-3600 Plus((株)島津製作所)、蛍光スペクトルは分光蛍光光度計HORIBA SPEX Fluorolog-3((株)堀場製作所)を用いて測定した。絶対蛍光量子収率の測定には、Quantaurus-QY Plus C-13534-02(浜松ホ卜ニクス(株))を用いた。全ての測定サンプルは蛍光スペクトル測定用溶媒(ナカライテスク(株))を用いて調製し、1 cm角の石英セル中で測定した。蛍光スペクトルは消光が起こらない十分に希薄な濃度で測定した。絶対蛍光量子収率を測定する際には、窒素ガスを数分間吹き込み、予め溶存酸素を除いた。
【0209】
【化34】
【0210】
化合物1~3及び11の各溶媒中での吸収及び蛍光スペクトルを図1~4(図1:化合物1、図2:化合物2、図3:化合物3、図4:化合物11)に示し、化合物1~3及び11の各溶媒中での光物性データを表1~4(表1:化合物1、表2:化合物2、表3:化合物3、表4:化合物11)に示す。表1~4において、λabsは吸収極大波長、εはモル吸光係数、λemは蛍光極大波長、ΔνはStokesシフト、ΦFLは量子収率をぞれぞれ示す。いずれの溶媒中でも約680 nmより長波長の領域に強い吸収帯が観測され、中でもジクロロメタン中におけるモル吸光係数は10万M-1cm-1以上の高い値となった。また、近赤外領域に蛍光を示し、ジクロロメタンやアセトニトリル中での蛍光帯は1000 nm以上に達した。この蛍光帯は溶媒の極性が高まるにつれて長波長側へシフトし、極性環境に応答するソルバトクロミック蛍光色素であることも分かった。
【0211】
【表1】
【0212】
【表2】
【0213】
【表3】
【0214】
【表4】
【0215】
試験例2:薄膜中での光物性
ポリ(メタクリル酸メチル)樹脂に対して、重量比で0.5質量%分の化合物1~3を混ぜ込んだ薄膜を、スピンコーターを用いて作成し、試験例1と同様に、吸収及び蛍光スペクトルを測定した。
【0216】
薄膜中での光物性の結果を表5に示す。表5において、λabsは吸収極大波長、λemは蛍光極大波長、ΦFLは量子収率をぞれぞれ示す。この結果、本発明のトロピリウム化合物は、薄膜中で溶液中よりも高い効率で発光することが理解できる。
【0217】
【表5】
図1
図2
図3
図4