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特開2024-126351デマケーションコム、当該デマケーションコムを有するエスカレータ用踏段、および当該踏段を備えたエスカレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126351
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】デマケーションコム、当該デマケーションコムを有するエスカレータ用踏段、および当該踏段を備えたエスカレータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/02 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B66B29/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034668
(22)【出願日】2023-03-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【弁理士】
【氏名又は名称】森 優
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】能 愛莉
(72)【発明者】
【氏名】大脇 裕之
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA10
3F321GA12
3F321GA13
3F321GA15
(57)【要約】
【課題】軟質材料を用いたとしても、破損しにくいデマケーションコムを提供する。
【解決手段】エスカレータを構成する踏段の本体において踏板28とライザー30が成す角部に形成された切欠き部32Aに設けられるデマケーションコム100を、前記本体に固定され、踏段の長さ方向に長尺のベース部材120と、ベース部材120に重ねて設けられ、ベース部材120よりも軟質の緩衝部材140と、を含み、ベース部材120と緩衝部材140の一方は、その長手方向に形成された溝であるT溝121Cを有し、他方は、T溝121Cに篏合したほぞであるT型ほぞ145を有していて、T溝121CとT型ほぞ145とが、ベース部材120から緩衝部材140が前記長手方向と直交する方向に抜けない形状とした。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータを構成する踏段の本体において踏板とライザーが成す角部に形成された切欠き部に設けられるデマケーションコムであって、
前記本体に固定され、前記踏段の長さ方向に長尺のベース部材と、
前記ベース部材に重ねて設けられ、前記ベース部材よりも軟質の緩衝部材と、
を含み、
前記ベース部材と前記緩衝部材の一方は、その長手方向に形成された溝を有し、他方は、前記溝に篏合したほぞを有していて、前記溝と前記ほぞとが、前記ベース部材から前記緩衝部材が前記長手方向と直交する方向に抜けない形状をしていることを特徴とするデマケーションコム。
【請求項2】
前記ほぞと前記溝とは、前記ほぞが前記溝に対して前記長手方向に挿抜自在となる形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のデマケーションコム。
【請求項3】
前記溝は、横断面形状がT字状をしたT溝であり、前記ほぞは前記T字状と合致するT字状の横断面を有するT型ほぞであることを特徴とする請求項1記載のデマケーションコム。
【請求項4】
前記ベース部材は、硬質プラスチックで形成されており、
前記緩衝部材は、合成ゴムまたは天然ゴムで形成されていることを特徴とする請求項1記載のデマケーションコム。
【請求項5】
略長方形をした踏板とライザーとを含む本体を有する、エスカレータを構成する踏段であって、
前記本体において踏板とライザーとが成す角部に、前記踏板の全長に渡って切欠き部が形成されており、
前記切欠き部に請求項1~4のいずれか1項に記載のデマケーションコムが設けられていることを特徴とするエスカレータ用踏段。
【請求項6】
前記ベース部材と前記緩衝部材とが、前記本体にねじによる共締めによって固定されていることを特徴とする請求項5に記載のエスカレータ用踏段。
【請求項7】
無端状に連結されて循環走行する複数の踏段を有するエスカレータであって、
前記複数の踏段の各々に請求項5記載のエスカレータ用踏段を用いたことを特徴とするエスカレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デマケーションコム、当該デマケーションコムを有するエスカレータ用踏段、および当該踏段を備えたエスカレータに関し、特に、踏段上で転倒等した乗客の踏段の角での怪我を防止し得るデマケーションコム等に関する。
【背景技術】
【0002】
無端状に連結された複数の踏段が階段状をなして走行し、乗客を搬送するエスカレータでは、隣接する踏段同士の境界を明確にするため、踏板とライザーが成す角部にデマケーションコムが設けられている。デマケーションコムは、一般的に、硬質プラスチックからなり、金属製の踏段本体にねじ止めされている。
【0003】
踏板に乗って搬送される乗客が誤って転倒等した場合に、上記角部に身体の一部が衝突して大けがをする場合がある。この大けがを防止するため、特許文献1には軟質高分子材料で形成したデマケーションコム5が開示されており(特許文献1の図2図3)、特許文献2には、そのようなデマケーションコム5,6を踏段本体4にねじ8でねじ止めした構成が開示されている(特許文献2の第1図)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5963333号公報
【特許文献2】実開平4-77582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デマケーションコムは、通常の使用時において、頻繁に乗客に踏まれる。軟質のデマケーションコムは、踏まれた部位に向かって引っ張られて変形する。特許文献2のようにねじ止めした場合、ねじ止め近傍のデマケーションが踏まれると、引張りによって生じる応力がねじ止め部分に集中し(応力集中)、当該応力集中が生じたデマケーション部分が破損し易くなる。
【0006】
上記の課題に鑑み、本発明は、軟質材料を用いたとしても、特許文献2よりも破損しにくいデマケーションコムを提供することを第1の目的とする。
【0007】
本発明の第2の目的は、そのようなデマケーションコムを有する踏段を提供することにある。
【0008】
また、本発明の第3の目的は、上記踏段を備えたエスカレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するため、本発明に係るデマケーションコムは、エスカレータを構成する踏段の本体において踏板とライザーが成す角部に形成された切欠き部に設けられるデマケーションコムであって、前記本体に固定され、前記踏段の長さ方向に長尺のベース部材と、前記ベース部材に重ねて設けられ、前記ベース部材よりも軟質の緩衝部材と、を含み、前記ベース部材と前記緩衝部材の一方は、その長手方向に形成された溝を有し、他方は、前記溝に篏合したほぞを有していて、前記溝と前記ほぞとが、前記ベース部材から前記緩衝部材が前記長手方向と直交する方向に抜けない形状をしていることを特徴とする。
【0010】
また、前記ほぞと前記溝とは、前記ほぞが前記溝に対して前記長手方向に挿抜自在となる形状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
あるいは、前記溝は、横断面形状がT字状をしたT溝であり、前記ほぞは前記T字状と合致するT字状の横断面を有するT型ほぞであることを特徴とする。
【0012】
あるいは、前記ベース部材は、硬質プラスチックで形成されており、前記緩衝部材は、合成ゴムまたは天然ゴムで形成されていることを特徴とする。
【0013】
上記第2の目的を達成するため、本発明に係るエスカレータ用踏段は、略長方形をした踏板とライザーとを含む本体を有する、エスカレータを構成する踏段であって、前記本体において踏板とライザーとが成す角部に、前記踏板の全長に渡って切欠き部が形成されており、前記切欠き部に上記デマケーションコムが設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、前記ベース部材と前記緩衝部材とが、前記本体にねじによる共締めによって固定されていることを特徴とする。
【0015】
上記第3の目的を達成するため、本発明に係るエスカレータは、無端状に連結されて循環走行する複数の踏段を有するエスカレータであって、前記複数の踏段の各々に上記エスカレータ用踏段を用いたことを特徴とする。
【0016】
上記の構成を有する本発明に係るデマケーションコムによれば、踏段の本体に固定されるベース部材は、その長手方向に形成された溝を有し、緩衝部材は、前記溝に篏合したほぞで前記ベース部材に取り付けられている。これにより、例えば、上記緩衝部材が乗客に踏まれ、踏まれた部位に向かって引っ張られたとしても、引張りによって生じる応力は、上記ほぞの長さ方向に分散する。このため、引張りによって生じる応力がねじ止め部分に集中する特許文献2の場合と比較して、緩衝部材は破損しにくい。
【0017】
また、本発明に係るエスカレータ用踏段は、上記踏板と上記ライザーとが成す角部に形成された上記切欠き部に、上記デマケーションコムが設けられているため、上記したデマケーションコムと同様の効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係るエスカレータは、無端状に連結されて循環走行する複数の踏段の各々に上記エスカレータ用踏段が用いられているため、上記エスカレータ用踏段と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係るエスカレータの概略構成を示す斜視図ある。
図2】(a)は、上記エスカレータの概略構成を示す側面図であり、(b)は、当該エスカレータを構成する踏段の拡大側面図であり、(c)は、前記踏段の斜視図である。
図3図2(b)におけるA部拡大図である。
図4】(a)は、ベース部材の斜視図であり、(b)は、矢印Bの向きに視たベース部材の側面図である。
図5】(a)は、緩衝部材の斜視図であり、(b)は、矢印Cの向きに視た緩衝部材の側面図である。
図6】(a)は、緩衝部材の平面図であり、(b)は、ベース部材の平面図である。
図7】実施形態に係るデマケーションコムの分解斜視図である。
図8】上記デマケーションコムの斜視図である。
図9】(a)は、変形例に係るデマケーションコムの斜視図であり、(b)は、前記デマケーションコムを構成する緩衝部材の側面図であり、(c)は同ベース部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係るエスカレータ10の概略構成を示す斜視図である。図2(a)は、エスカレータ10の概略構成を示す側面図であり、図2(b)は、エスカレータ10を構成する踏段12の拡大側面図であり、図2(c)は、踏段12の斜視図である。図3は、図2(b)におけるA部拡大図である。
【0021】
エスカレータ10は、無端状に連結されて循環走行する複数の踏段12と、複数の踏段12の走行路の両側に当該走行路に沿って立設された一対の欄干14を有する。一対の欄干14各々の下端部側方には、各踏段12と僅かな隙間を保ち、上記走行路に沿って配された、ステンレス鋼板等のパネルからなるスカートガード16が設けられている。
【0022】
複数の踏段12は、上部機械室18に設置されたモータ20を動力源とし、不図示の動力伝達機構を介して駆動される。建築物の階上USと階下DSに掛け渡されたエスカレータ10は、モータ20の回転方向を正転と逆転とに切り換えることで、昇り用としても降り用としても用いられる。すなわち、階下DS側が乗り口となる場合も降り口となる場合もある(以下、両者を合わせて「乗降口」と言う)。
【0023】
エスカレータ10の乗降口には、くし板22およびくし板22に隣接するフロアプレート24が設けられている。エスカレータ10が昇り用の場合、循環走行する複数の踏段12は、くし板22から次々と水平方向に繰り出される。エスカレータ10が下り用の場合、循環走行する複数の踏段12は、くし板22からフロアプレート24下方へ潜入する。
【0024】
踏段12は、図2(b)、図2(c)に示すように、主枠となるフレーム26に、長方形をした踏板28とライザー30が取り付けられた本体32を有している。ここで、前記長方形の長辺に沿う方法を踏段12の長さ方向とし、前記長方形の短辺に沿う方向を踏段12の幅方向とする。本体32は、鉄鋼材料やアルミニウム合金などの金属材料で形成されている。
【0025】
踏板12とライザー30が成す角部には、図2(c)に示すように、複数本(本例では、4本)のデマケーションコム100が前記長さ方向に直列に設けられている。踏段12の本体32において踏板28とライザー30が成す角部には、図3に示すように、側面視でL字状をした切欠き部32Aが形成されており、デマケーションコム100は、切欠き部32Aに設けられている。デマケーションコム100は、ベース部材120と緩衝部材140を有する。
【0026】
図4(a)にベース部材120の斜視図を、図4(b)に矢印Bの向きに視たベース部材120の側面図を示す。図5(a)に緩衝部材140の斜視図を、図5(b)に矢印Cの向きに視た緩衝部材140の側面図を示す。図6(a)に緩衝部材140の平面図を、図6(b)にベース部材120の平面図をそれぞれ示す。ベース部材120は、ABS樹脂その他の硬質プラスチックで形成されている。一方、緩衝部材140は、ベース部材120よりも軟質の材料、例えば、クロロプレンゴムその他の合成ゴムで形成されている。
【0027】
ベース部材120は、図4に示すように、横断面がL字状をした長尺の基部121を有する。基部121の短辺部121A先端には、角柱状の突起122と突起123が対を成し、基部121の長さ方向に複数本列設されている。突起122の方が突起123よりも若干高くなっている。
【0028】
長辺部121Bの先端には、多角柱状の突起124複数個が、基部121の長さ方向、一列に設けられている。
【0029】
また、長辺部121Bには、横断面がT型の溝121C(以下、「T溝121C」と言う)が基部121の長さ方向に形成されている。
【0030】
ベース部材120の基部121は、上下方向に開設されたねじ挿通孔125を複数個(本例では、3個)有する(図6(b))。
【0031】
緩衝部材140は、横断面が長方形をした長尺の基部141を有する。基部141の上面には、長方形の板状をした歯部142と歯部142よりも短い長方形の板状をした歯部143が、基部141の長手方向に交互に等間隔で設けられており、図5(a)に示すように、全体的に櫛状を成している。
【0032】
歯部142各々の基部141からはみ出した部分の下方には、横断面が台形をした突起144がそれぞれ設けられている。
【0033】
基部141の下面には、横断面がT字状をしたほぞ145(以下、「T型ほぞ145」と言う)が基部141の長さ方向に形成されている。
【0034】
緩衝部材140の基部141は、上下方向に開設されたねじ挿通孔146を複数個(本例では、3個)有する(図6(a))。ねじ挿通孔146は、ねじ挿通孔125とは同径であり、ねじ挿通孔125と同じ間隔で設けられている。
【0035】
デマケーションコム100は、ベース部材120のT溝121Cに緩衝部材140のT型ほぞ145が、図7の矢印Dの向きに挿入されて組み立てられる。組み立てられた状態で、ベース部材120のねじ挿通孔125の各々と緩衝部材140において対応するねじ挿通孔146各々とは、それぞれ連通している。図8にデマケーションコム100の斜視図を示す。図8において、デマケーションコム100が取り付けられた踏段12の踏板28とライザー30を、一点鎖線の仮想線で示している。
【0036】
T溝121Cの横断面形状にT型ほぞ145の横断面形状は対応している(合致している)。T型ほぞ145がT溝121Cに滑らかに挿入できると共に、挿入後のT溝121CにT型ほぞ145が篏合した状態で両者の間にガタが生じないような横断面形状に各々が形成されている。また、両者の形状から明らかなように、前記篏合した状態で、T溝121CとT型ほぞ145とは、ベース部材120から緩衝部材140がその長手方向と直交する方向に抜けない形状である。
【0037】
デマケーションコム100は、ねじ34(図7)で、本体32(図3)に固定される。本体32の切欠き部32Aの上面には不図示の雌ねじが、ねじ挿通孔125、146各々に対応させて形成されている。デマケーションコム100を切欠き部32Aに載置させ、前記雌ネジ位置にねじ挿通孔125、146を合わせた状態で、ねじ34各々のねじ部を対応するねじ挿通孔125、146に挿入させ前記雌ねじに螺合させて締め付けることによって、デマケーションコム100は、本体32に固定される。本例の場合、切欠き部32A上面とねじ34の頭部とで、ベース部材120と緩衝部材140の両方が締め付けられて固定される。
【0038】
踏板28には、踏段12の幅方向に長い長方形をし、長さ方向に等間隔で設けられた複数の桟28Aを含むクリート29が形成されている。また、ライザー30も凸部30Aと凹部30Bとが踏段12の長さ方向に等間隔で繰り返し形成されてなるクリート31を有する。
【0039】
隣接する歯部142と歯部143の間隔は、隣接する桟28A同士の間隔と等しく、桟28の各々の延長線上に歯部142と歯部143にいずれか一方が存する。
【0040】
隣接する凸部30A同士の間隔と隣接する突起124同士の間隔は等しく、凸部30A上端の形状と突起124下端の形状は合致しており、凸部30Aの各々上端に対応する突起124の下端がそれぞれ当接している。
【0041】
上記の構成を有するデマケーションコム100は、上述した通り、エスカレータ10を構成する踏段12の本体32において踏板28とライザー30が成す角部に形成された切欠き部32Aに設けられ、本体32に固定されるベース部材120に緩衝部材140が篏合した構成を有している。すなわち、踏段12の角部に該当するところに緩衝部材140を配することができるため、踏段12上で転倒した乗客の前記角部での怪我を防止し得る。
【0042】
また、ベース部材120は、その長手方向に形成されたT溝121Cを有し、緩衝部材140は、T溝121Cに篏合したT型ほぞ145でベース部材120に取り付けられている。これにより、例えば、緩衝部材140が乗客に踏まれ、踏まれた部位に向かって引っ張られたとしても、引張りによって生じる応力は、T型ほぞ145の長さ方向に分散する。このため、引張りによって生じる応力がねじ止め部分に集中する特許文献2の場合と比較して、緩衝部材140は破損しにくい。
【0043】
ここで、緩衝部材140の破損を抑制するだけであれば、踏段12の本体32にT溝を設け、当該T溝に緩衝部材140のT型ほぞ145を挿入して、本体32に直接、緩衝部材140を取り付けることも考えられる。しかしながら、下記の点で好ましくない。
【0044】
緩衝部材140は、軟質の材料で形成されているため比較的摩耗しやすい。このため、定期的に取り換える必要がある。本体32に直接、緩衝部材140を取り付けた場合、本体32から緩衝部材140を抜き取る際、スカートガード16が障害となるため、先ず、対象となる踏段12を他の踏段12から取り外す必要があるが、非常に手間がかかるからである。
【0045】
その点、実施形態のように、本体32にベース部材120を介して緩衝部材140を取り付けると、緩衝部材140の取り換えの際は、緩衝部材140をベース部材120ごと取り外せば、緩衝部材140をベース部材120から抜き取ることができるため、踏段12を取り外すのと比較して、格段に作業性が良くなるのである。
【0046】
(変形例)
図9に変形例に係るデマケーションコム200を示す。図9(a)は、デマケーションコム200の側面図である。図9(b)は、デマケーションコム200を構成する緩衝部材240の側面図であり、図9(c)は同ベース部材220の側面図であって、それぞれ、図5(b)、図4(b)と同じ向きにデマケーションコムを視た図である。
【0047】
デマケーションコム200は、デマケーションコム100とは、ベース部材に設けた溝と緩衝部材に設けたほぞの形状が異なる以外は、同じ構成である。よって、デマケーションコム200において、デマケーションコム100に対応する構成要素には、その下2桁に対応するデマケーションコム100の構成要素と同じ符号を付して、その説明は省略し、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0048】
デマケーションコム100において、ベース部材120の基部121にはT溝121Cを設けたが、デマケーションコム200のベース部材220の基部221には、蟻溝221Cを設けている。一方、デマケーションコム200の緩衝部材240の基部241には蟻ほぞ245を設けている。ベース部材220は、ベース部材120と同じ材質であり、緩衝部材240は、緩衝部材140と同じ材質である。
【0049】
デマケーションコム200は、ベース部材220の蟻溝221Cに緩衝部材240の蟻ほぞ245が挿入されて組み立てられる。蟻溝221Cの横断面形状に蟻ほぞ245の横断面形状は対応している(合致している)。蟻ほぞ245は蟻溝221Cに滑らかに挿入できると共に、挿入後の蟻溝221Cに蟻ほぞ245が篏合した状態で両者の間にガタが生じないような横断面形状に各々が形成されている。また、両者の形状から明らかなように、前記篏合した状態で、蟻溝221Cと蟻ほぞ245とは、ベース部材220から緩衝部材240がその長手方向と直交する方向に抜けない形状である。
【0050】
要は、ベース部材に設ける溝と、緩衝部材に設けるほぞとは、ほぞが溝に対してその長手方向(溝、ほぞの長さ方向)に挿抜自在となる形状(挿したり抜いたりできる形状)で、かつ、溝にほぞが篏合した状態(溝にほぞが挿入された状態)で、ベース部材から緩衝部材が前記長手方向と直交する方向に抜けない形状であれば構わないのである。
【0051】
なお、上記実施形態とその変形例では、ベース部材に溝(T溝121C、蟻溝221C)を、緩衝部材にほぞ(T型ほぞ145、蟻ほぞ245)を設けたが、これとは反対に、ベース部材にほぞを、緩衝部材に溝を設けることとしても構わない。
【0052】
以上、本発明を実施形態とその変形例に基いて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限られないことは勿論であり、例えば、以下の形態としても構わない。
(1)上記実施形態では、踏段28の本体32に、ベース部材120と緩衝部材140の両方を直接的にねじ34で固定した。すなわち、ベース部材120と緩衝部材140とを、ねじ34による、いわゆる共締めによって固定したが、これに限らず、ねじ34で直接固定するのは、ベース部材120の方だけにしても構わない。
【0053】
そうするには、緩衝部材140に設けるねじ挿通孔の径を、ねじ34の頭部の径よりも若干大きくし、当該ねじ挿通孔に沈んだねじ頭部と本体32の切欠き部32A上面とで、ベース部材120を締め付けて固定する。この場合、本体32に固定後のデマケーションコム100において、ねじ頭部は緩衝部材140のベース部材120からの抜け止めとして機能する。
【0054】
(2)ベース部材は、ABS樹脂に限らず、その他の硬質プラスチック、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、AS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)でも構わない。
【0055】
(3)あるいは、ベース部材は、本体32と同種の金属材料で形成しても構わない。
【0056】
(4)緩衝部材は、クロロプレンゴム(CR)に限らず、その他の合成ゴム、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(ACM)、イソプレンゴム(IR)、シリコンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)でも構わない。また、合成ゴムに限らず天然ゴム(NR)でも構わない。要は、緩衝部材は、ねじによる本体32への固定性が要求されるためある程度の硬度を要するベース部材よりも軟質であり、乗客の踏段12の角部への衝撃を和らげられる材質であれば構わないのである。
【0057】
(5)上記実施形態では、踏段12一台当たり、デマケーションコム100を4本設けたが(図2(c))、踏段一台当たりのデマケーションコムの本数はこれに限らない。1本、2本、3本、あるいは5本以上でも良い。いずれの場合も、本数に応じて、1本当たりのデマケーションコムの長さを設定し、踏段の全長に渡り、デマケーションコムを設けることとする。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、踏板とライザーとが成す角部にデマケーションコムを設けたエスカレータに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 エスカレータ
12 踏段
30 ライザー
32A 切欠き部
100、200 デマケーションコム
120、220 ベース部材
121C T溝
221C 蟻みぞ
140、240 緩衝部材
145 T型ほぞ
245 蟻ほぞ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9