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特開2024-126355機材制御システムとその親機、子機、および機材制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126355
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】機材制御システムとその親機、子機、および機材制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G10G 7/00 20060101AFI20240912BHJP
   G10H 1/18 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G10G7/00
G10H1/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034674
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 令央
【テーマコード(参考)】
5D182
5D478
【Fターム(参考)】
5D182CC10
5D478CC06
5D478HH02
(57)【要約】
【課題】簡易な操作で複数のスイッチコントロールを実現することの可能な機材制御システムを提供すること。
【解決手段】実施形態によれば、機材制御システムは、親機と子機とを具備する。親機は、楽器とその保持具との間に介挿され、楽器と保持具との間に発生する荷重量を検出するセンサ部と、荷重量を子機に送信する送信部とを備える。子機は、少なくとも第1端子と第2端子とを有する出力部と、荷重量を受信する受信部と、荷重量が第1閾値を超え且つ第1閾値より大きい第2閾値を既定期間以内に超えた場合に第1端子をオンし、荷重量が第1閾値を超え且つ第2閾値を既定期間以内に超えない場合に第2端子をオンするスイッチ制御部とを備える。
【選択図】図10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機と子機とを備える機材制御システムにおいて、
前記親機は、
楽器とその保持具との間に設けられ、前記楽器と前記保持具との間に発生する荷重量を検出するセンサ部と、
前記荷重量を前記子機に送信する送信部とを備え、
前記子機は、
少なくとも第1端子と第2端子とを有する出力部と、
前記荷重量を受信する受信部と、
前記荷重量が第1閾値に達し且つ前記第1閾値より大きい第2閾値に、前記荷重量が前記第1閾値に達してから既定期間以内に達した場合に前記第1端子を選択するように制御し、前記荷重量が第1閾値に達し且つ前記第2閾値に、前記荷重量が前記第1閾値に達してから前記既定期間以内に達しない場合に前記第2端子を選択するように制御するスイッチ制御部とを備える、機材制御システム。
【請求項2】
前記スイッチ制御部は、前記荷重量が前記第1閾値と前記第2閾値との間の第3閾値に、前記荷重量が前記第1閾値に達してから前記既定期間以内に達した場合に前記第2端子を選択するように制御する、請求項1に記載の機材制御システム。
【請求項3】
前記スイッチ制御部は、前記荷重量が前記第3閾値を前記既定期間以内に達しない場合に、前記第1端子と前記第2端子とをオンする、請求項2に記載の機材制御システム。
【請求項4】
前記スイッチ制御部は、前記荷重量が前記第1閾値と前記第3閾値との間の第4閾値に前記既定期間以内に達した場合に前記第2端子をオンする、請求項3に記載の機材制御システム。
【請求項5】
前記スイッチ制御部は、前記荷重量が前記第2閾値と前記第3閾値との間の第5閾値に前記既定期間以内に達しない場合に、前記第1端子と前記第2端子とをオンする、請求項4に記載の機材制御システム。
【請求項6】
楽器とその保持具との間に設けられ、前記楽器と前記保持具との間に発生する荷重量を検出するセンサ部と、
前記荷重量を送信する送信部とを具備する、親機。
【請求項7】
少なくとも第1端子と第2端子とを有する出力部と、
受信部と、
前記受信部で受信した荷重量が第1閾値に達し且つ前記第1閾値より大きい第2閾値に、前記荷重量が前記第1閾値に達してから既定期間以内に達した場合に前記第1端子を選択するように制御し、前記荷重量が第1閾値に達し且つ前記第2閾値に、前記荷重量が前記第1閾値に達してから前記既定期間以内に達しない場合に前記第2端子を選択するように制御するスイッチ制御部とを備える、子機。
【請求項8】
少なくとも第1端子と第2端子とを有する出力部と、受信部とを具備する電子機器のプロセッサに、
前記受信部で受信した荷重量が第1閾値に達し且つ前記第1閾値より大きい第2閾値に、前記荷重量が前記第1閾値に達してから既定期間以内に達した場合に前記第1端子を選択するように制御し、前記荷重量が第1閾値に達し且つ前記第2閾値に、前記荷重量が前記第1閾値に達してから前記既定期間以内に達しない場合に前記第2端子を選択するように制御するスイッチ処理を指示する、機材制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機材制御システムとその親機、子機、および機材制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子楽器を含むいわゆる音響機器は、機材(instruments)と総称される。例えばエレキギターやベースのサウンド調整に用いられるマルチエフェクターは、代表的な機材である。マルチエフェクターには、フットスイッチを別途接続できるものがある。TRS出力端子形状を持つフットスイッチを接続すれば、Tip端子とRing端子に一つずつスイッチ出力を割り当てて、2つのスイッチで2つまでのエフェクターのスイッチングが可能になる。
【0003】
楽器を吊り下げ保持するためのストラップにセンサ等を組み込み、ストラップの張力に応じて楽音を制御する技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。この技術によれば、楽器を動かしてストラップの張力を変化させ、ピッチベンドやモジュレーション量、音量等を制御することができる。慣れてくれば反動を利用して、両手で楽器を演奏しながら楽音を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59-060692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、エフェクター自体のオン、オフの切り替えのような楽音の制御態様を切り替えることはできなかった。そこで、楽器を動かすことにより楽音の制御を行うことができる構成を備えつつ、スイッチング操作を行うことなく、楽音の制御とともに楽音の制御態様を切り替えることが可能な技術が提案されている。この新規な技術によれば、エフェクター自体のオン、オフの切り替えや別の種類のエフェクターへの切り替えなどの操作を実現できる。
【0006】
加えて、表現可能なサウンドバリエーションをさらに拡げることが望まれている。例えば複数のスイッチを個別にコントロールしたいとき、ストラップの張力はスカラー量なので、単純には一つのスイッチを制御することしかできない。複数のスイッチコントロールを行うためには、(1)~(3)のような手法が考えられる。
【0007】
(1)張力センサに加えて加速度センサ等のセンサを別に設け、各センサの出力を各端子の出力に割り当てる。
【0008】
(2)センサ入力値の波形パターンによって出力端子を選択する。
【0009】
(3)出力端子を切り替えるメカスイッチを設ける。
【0010】
いずれの手法を採るにしても、演奏者には余分なアクションが要求され、煩雑な操作を強いられ、演奏に支障をきたしかねないという懸念がある。
【0011】
そこで、目的は、簡易な操作で複数のスイッチコントロールを実現することの可能な機材制御システムとその親機、子機、および機材制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態によれば、機材制御システムは、親機と子機とを具備する。親機は、楽器とその保持具との間に設けられ、楽器と保持具との間に発生する荷重量を検出するセンサ部と、荷重量を子機に送信する送信部とを備える。子機は、少なくとも第1端子と第2端子とを有する出力部と、荷重量を受信する受信部と、荷重量が第1閾値に達し且つ第1閾値より大きい第2閾値に、荷重量が第1閾値に達してから既定期間以内に達した場合に第1端子を選択するように制御し、荷重量が第1閾値に達し且つ第2閾値に、荷重量が第1閾値に達してから既定期間以内に達しない場合に第2端子を選択するように制御するスイッチ制御部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な操作で複数のスイッチコントロールを実現することの可能な機材制御システムとその親機、子機、および機材制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係わる機材制御システムの一例を示すシステム図である。
図2図2は、親機100の一例を示す外観図である。
図3図3は、子機200の一例を示す外観図である。
図4図4は、親機100の一例を示す機能ブロック図である。
図5図5は、親機100における荷重量センシング機構の一例を示す正面図である。
図6図6は、図5に示される起歪体の一例を示す斜視図である。
図7図7は、子機200の一例を示す機能ブロック図である。
図8図8は、TRS出力端子形状を持つフォーンプラグの一例を示す図である。
図9図9は、ギター演奏時の引っ張り動作におけるテコ構造を示す図である。
図10図10は、(実施例1)における子機200の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、(実施例2)における子機200の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、(実施例3)における子機200の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、(実施例4)における子機200の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、子機200の第1出力端子4の一例を示す模式図である。
図15図15は、サウンドプロセッサ20の第1端子6の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、実施形態に係わる機材制御システムの一例を示すシステム図である。図1に示されるシステムは、親機(マスタデバイス)100と子機(スレーブデバイス)200とを具備する。子機200は、サウンドプロセッサ20(マルチエフェクター)に接続され、親機100は、無線チャネル300を介して子機200と通信することが可能である。以下の説明では、無線通信方式としてBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)を想定するが、これに限定されるものではない。
【0016】
親機100は、エレキギター10のストラップ1に取り付けられる。詳しくは、親機100は、エレキギター10をユーザ(演奏者)が肩から吊り下げ保持するためのストラップ(保持具)1と、エレキギター10との間に介挿される。すなわち親機100は、エレキギター10のボディの一端側(ヘッド側)に設けられたストラップピン(図示せず)と、ストラップ1の一端とを接続する。ストラップ1の他端は、ボディの他端側に設けられたストラップピン(図示せず)に接続される。
【0017】
図1において、エレキギター10は、シールド(shielded cable)2を介してサウンドプロセッサ20に接続される。サウンドプロセッサ20は、シールド3を介してギターアンプ400に接続される。
【0018】
エレキギター10は、ユーザの演奏により発生する楽音に応じた電気信号を出力する。サウンドプロセッサ20は、設定されたエフェクト効果に応じて、エレキギター10からの電気信号を加工する。加工された電気信号はシールド3を介してギターアンプ400に入力され、増幅されてギターサウンドが発生する。ユーザは、サウンドプロセッサ20のフットペダル210を操作して、エフェクト効果を自在に操ることができる。例えば、ピッチベンドやモジュレーション量、ディレイのレベル、繰り返し回数(ディケイ)、音量等を制御することができる。これらは、いずれも所定のパラメータにより制御される。つまりフットペダル210は、エフェクト効果のパラメータを可変するための操作子の一つである。
【0019】
実施形態では、親機100から子機200に、ストラップ1の張力に相当する荷重量データを送信し、フットペダル210を操作してパラメータを変化させるのと同様の効果をもたらす。つまり、荷重量データに応じた制御信号を生成し、サウンドプロセッサ20のパラメータを自在に制御できるようにする。さらに実施形態では、複数のチャネルにわたるオン/オフ制御を、一つの親機100と一つの子機200とで実施することの可能な技術について開示する。
【0020】
子機200は、第1出力端子4と、第2出力端子7とを備える。第1出力端子4は、少なくとも第1端子と第2端子とを有するコネクタプラグを有するケーブル5を介してサウンドプロセッサ20の第1端子6に接続される。第2出力端子7も同様に、少なくとも第1端子と第2端子とを有するコネクタプラグを有するケーブル8を介してサウンドプロセッサ20の第2端子9に接続される。この種のケーブルとしては、TRS出力端子形状を有するフォーンプラグ、あるいはキャノンコネクタで終端されたバランスケーブルなどがある。TRS出力端子形状を持つフットスイッチは通常、Tip端子とRing端子に一つずつスイッチ出力を割り当てることができる。そこで実施形態では、スイッチ出力を2系統設けて、2つのエフェクターのスイッチングを制御することを考える。
【0021】
図2は、親機100の一例を示す外観図である。親機100は、操作パネル上に、LED(Light Emission Diode)161、およびボタン部171を備える。LED161は、例えばBLEによる子機200とのペアリングが完了すると点灯し、ユーザにそのことを通知する。
【0022】
ボタン部171は複数の操作ボタン171a~171cを備える。操作ボタン171aは、親機100をオン/オフするためのボタンである。操作ボタン171bは、親機100で検出される信号の正(ポジティブ)/負(ネガティブ)を切り替える機能と、BLEによる子機200とのペアリングを行う機能を実施するためのボタンである。具体的には、操作ボタン171bを短押しすると上記信号の正(ポジティブ)/負(ネガティブ)を切り替え、操作ボタン171bを長押しすると上記ペアリングを実施する。なお、上記の信号の正(ポジティブ)/負(ネガティブ)については、スライドスイッチC1dのPST(ポジティブ)とNGT(ネガティブ)と同等であるため、説明は後述する。操作ボタン171cは、親機100から送信される張力に関する値に応じた制御信号の保持/非保持を切り替える機能と、キャリブレーション機能を実施するためのボタンである。具体的には、操作ボタン171cを短押しすると制御信号の保持/非保持を切り替え、操作ボタン171cを長押しするとキャリブレーションを行うモードに移行する。なお、上記制御信号の保持/非保持については後述する。
【0023】
図3は、子機200の一例を示す外観図である。子機200は、例えばエレキギター10を演奏するユーザが立つステージ上のユーザの足元に配置して操作される。
子機200は、第1出力端子4、第2出力端子7に加えて、電源LED201、電源ポート203、LED灯A1,A2、ボリュームB1,B2、スライドスイッチ群C1,C2,インジケータ202、スクロールスイッチ(Scroll SW)25a、および、ホールドスイッチ(Hold SW)26aを備える。
【0024】
インジケータ202は、複数のLEDを備え、親機100においてセンシングされた荷重量に応じた数のLEDを発光させて、荷重量の目安を示す。LED灯A1、ボリュームB1、およびスライドスイッチ群C1は、第1出力端子4からの出力信号に関連する表示部、操作部として機能する。また、LED灯A2、ボリュームB2、およびスライドスイッチ群C2は、第2出力端子7からの出力信号に関連する表示部、操作部として機能する。
【0025】
電源ポート203には、図示しない電源アダプタ等が挿入され、当該電源アダプタから入力される電源電圧が、子機200の各部(プロセッサ27等)に供給される。当該電源電圧が子機200に供給されると、電源LED201が点灯する。
【0026】
ボリュームB1は、第1出力端子4から出力される制御信号のレベルを調整するのに用いられる。ボリュームB2は、第2出力端子7から出力される制御信号のレベルを調整するのに用いられる。具体的には、ボリュームB1、B2は、サウンドプロセッサ20に出力する最小の出力値のレベルを調整する。例えば、ストラップの張力が無負荷の際にボリュームB1を回転させて最小値に設定した場合(半時計周りに回し切った位置に設定した場合)、第1出力端子4から出力される制御信号は最小値である0となる。一方、ストラップの張力が無負荷の際にボリュームB1を回転させて中央値に設定した場合(時計周りに回して最小値と最大値の中間の位置に設定した場合)、第1出力端子4から出力される制御信号は50のレベル(最大値(最大負荷)を100とした場合の中央値)となる。
【0027】
スライドスイッチ群C1は、複数のスライドスイッチC1a~C1dを備え、第1出力端子4から出力される制御信号の形式を様々に変更する。スライドスイッチC1aは、制御信号の形式をサウンドプロセッサ20のメーカの仕様に合わせるためのスライドスイッチである。代表的なメーカに合わせてGT,ZM,HXの3通りに切替えられるようになっている。スライドスイッチC1bは、制御対象をフットペダル(PDL)(例えば抵抗値0~10kΩを示す信号)、またはフットスイッチ(SW)(例えばON/OFFを示す信号)の何れかに切替えるためのスイッチである。スライドスイッチC1cは、モーメンタリ(MNT)動作、またはラッチ(LCH)動作を切り替えるためのスイッチである。MNTに設定するとスクロールスイッチ25aがモーメンタリスイッチとして機能し、LCHに設定するとスクロールスイッチ25aがラッチスイッチとして機能する。スライドスイッチC1dは、ユーザがエレキギター10を保持した状態でネックを下向きに引っ張った際に、親機100が当該引っ張り力(張力)に応じて検出する検出値の最小値~最大値と、サウンドプロセッサ20へ出力する出力値の最小値~最大値の対応関係を設定するスイッチである。ここで、スライドスイッチC1dをPST(ポジティブ)に設定すると、親機100での張力の検出値が最小値である場合にサウンドプロセッサ20へ出力する出力値は最小値となり、親機100での張力の検出値が最大値である場合にサウンドプロセッサ20へ出力する出力値は最大値となる。つまり、張力が大きくなるほど、サウンドプロセッサ20にて処理される信号のエフェクトの程度が大きくなる。反対に、スライドスイッチC1dをNGT(ネガティブ)に設定すると、親機100での張力の検出値が最小値である場合にサウンドプロセッサ20へ出力する出力値は最大値となり、親機100での張力の検出値が最大値である場合にサウンドプロセッサ20へ出力する出力値は最小値となる。つまり、張力が大きくなるほど、サウンドプロセッサ20にて処理される信号のエフェクトの程度が小さくなる。スライドスイッチ群C2も同様に、複数のスライドスイッチC2a~C2dを備え、第2出力端子7から出力される制御信号の形式を様々に変更する。スライドスイッチC2a~C2dの機能については、スライドスイッチC1a~C1dと同様であるため省略する。
【0028】
操作子としてのスクロールスイッチ25aは、第1出力端子4、第2出力端子7のそれぞれからの制御信号のON/OFFを切り替えるために用いられる。副操作子としてのホールドスイッチ26aは、スクロールスイッチ25aと組み合わせて制御信号の状態を制御する。
【0029】
例えば、システムの起動時は、第1出力端子4、第2出力端子7のいずれからも制御信号は出力されない状態(モード)とする。このモードからスクロールスイッチ25aが操作されると、第1出力端子4から制御信号が出力されるモード(第1モード)になる。第1モードからさらにスクロールスイッチ25aが操作されると、第1出力端子4からの信号はオフされ、第2出力端子7から制御信号が出力されるモード(第2モード)になる。さらに第2モードからスクロールスイッチ25aが操作されると、第1出力端子4、第2出力端子7のいずれからも制御信号が出力されない(オフされる)モード(第3モード)になる。つまり初期状態に戻る。上記においてシステムの起動時(子機200の起動時)に、第1出力端子4及び第2出力端子7のいずれからも制御信号が出力されないモードとしたが、これには限定されない。システム起動時のモード(上記の第1~第3モード)は、子機200の図示しない設定スイッチ等によって、任意に変更可能であってもよい。
【0030】
このように第1モード、第2モード、第3モードは、スクロールスイッチ25aが操作されるたびにサイクリックに切り替わる。第1モードにおいてはLED灯A1が点灯し、第1出力端子4が選択されていることが示される。第2モードにおいてはLED灯A2が点灯し、第2出力端子7が選択されていることが示される。第3モードにおいてはLED灯A1,A2のどちらも消灯する。
【0031】
さらに、スクロールスイッチ25aとホールドスイッチ26aとを同時に押下することにより、第1出力端子4、第2出力端子7の双方から制御信号が出力される第4モードを設定することができる。つまり、第1モードにおいてスクロールスイッチ25aとホールドスイッチ26aを同時に操作すれば直ちに第4モードになり、制御信号は、第1出力端子4、第2出力端子7の双方から出力される。同様に、第2モードにおいてスクロールスイッチ25aとホールドスイッチ26aを同時に操作すれば直ちに第4モードになる。ここで、2つのスイッチを同時に押下するとは、2つのスイッチを同時に押下(例えばスイッチON)したことだけでなく、一方のスイッチがON状態のままで他方のスイッチをONにしたことも含まれる。つまり、2つのスイッチが時間的に同時に押下(ON)される必要は必ずしもなく、2つのスイッチが共に押下されている状態(ON状態)であればよい。
【0032】
さらに、ホールドスイッチ26aは、第1出力端子4及び/又は第2出力端子7から出力される制御信号の保持/非保持を切り替えるためのモーメンタリスイッチとしての機能も備える。上記の制御信号の保持とは、ホールドスイッチ26aが操作された際に親機100から送信されて、子機200が受信した張力に関する値を保持(維持)した状態で制御信号を出力することを示す。つまり、保持状態では、張力の変化によらず、制御信号を固定した状態で出力することができる。また、上記の制御信号の非保持とは、親機100から送信される張力に関する値に応じて制御信号を可変させて出力することを示す。つまり非保持状態では、張力の変化に応じて変更された制御信号を出力することができる。この機能により、サウンドプロセッサ20に入力する制御信号(パラメータ)の内容をユーザが適宜変更することが可能となるため、ユーザは様々なギターの演奏スタイルを実現することができる。
【0033】
図4は、親機100の一例を示す機能ブロック図である。親機100は、センサ部30に接続される入力部13、アンテナ141を有する送信部14、メモリ15、およびプロセッサ16を備え、これらは内部で互いに接続されている。つまり親機100は、無線通信機能を備える組み込みコンピュータである。
【0034】
ユーザがエレキギター10を保持した状態でネックを下向きに引っ張ると、その引っ張り力に応じた張力(荷重量)がストラップ1に生じる。センサ部30は、エレキギター10とストラップ1との間に介挿されており、荷重量の大きさに応じた検出値を出力する。
入力部13は、センサ部30からストラップ1の荷重量に関する検出値を取得してプロセッサ16に渡す。プロセッサ16は、荷重量に関する検出値に応じたデータ信号を生成し、送信部14に渡す。送信部14は、BLEによる無線チャネル300を介して、上記データ信号を子機200に宛てて送信する。ここで、荷重量に関する検出値に応じたデータ信号(荷重量を示す情報)を子機200に送信することを、「荷重量を子機200に送信する」とも呼ぶ。
メモリ15は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、プロセッサ16を制御するためのプログラム15aや、各種のデータ15bを記憶する。データ15bは、例えば後述するニュートラル値、あるいはMAX値(所定の閾値)などを含む。
【0035】
プロセッサ16は、報知処理部16a、指示受付部16b、およびデータ生成部16cを備える。報知処理部16aは、LED161を点灯/消灯して、ペアリングの完了/未完了などをユーザに報知する。指示受付部16bは、ボタン部171(図2)を介して与えられたユーザの指示を受け付ける。
データ生成部16cは、センサ部30による荷重量に関する検出値に応じたデータ信号を生成し、送信部14に渡す。
【0036】
ここで、親機100のキャリブレーションについて説明する。センサ部30の個体間ばらつき、親機100に接続されるエレキギター10の重さ、あるいはユーザの力の加え方などの種々の要因により、センサ部30の検出値にばらつきが生じる。このばらつきを、補正するための操作を、キャリブレーションと称する。
【0037】
キャリブレーションは、例えば親機100の電源が初めてオンされた場合や、ユーザが親機100のボタン部171を操作してキャリブレーションを実行する指示が与えられた場合に実施される。なおキャリブレーションを実行するための操作は特に限定されず、例えば特定のボタンを長押し(例えば3秒以上)することで実行トリガが発生するようにしてもよい。
【0038】
プロセッサ16は、LED161の発光態様を変化させること、あるいは、内蔵スピーカ(図示せず)を介して音声を出力させることなどで、ユーザにキャリブレーション操作を促す。キャリブレーションが実行されると、プロセッサ16は、エレキギター10に力を加えないようにユーザに指示する。力を加えない状態が数秒間程度保たれると、プロセッサ16は、その間のセンサ部30による検出値の平均値をニュートラル値としてメモリ15に記憶する。ニュートラル値は、ユーザがエレキギター10を肩にかけ、エレキギター10に力を加えていない、エレキギター10の重量による加重のみが検出された検出値である。
【0039】
次に、プロセッサ16は、エレキギター10の演奏中に演奏データとして使用したい最大の力をエレキギター10に加えるように、ユーザに指示する。ここでいう最大の力とは、必ずしも限界まで力を加えた状態ではなく、演奏中にユーザが無理なく加えることができる力であればよい。この最大の力を加えた状態が数秒間維持されることにより、又は最大の力を加えた状態でMAX値を設定する機能が割り振られたボタン部171を押下げ操作することにより、プロセッサ16は、その間のセンサ部30による検出値の平均値をMAX値としてメモリ15に記憶する。MAX値は、ユーザが検出値として出力したい最大の力を加えた場合の検出値である。以上の動作により、キャリブレーションが完了する。
【0040】
図5は、親機100における荷重量センシング機構の一例を示す正面図である。センサ部30は、第1軸部材31と、第2軸部材32とを有する。第1軸部材31は、略円柱の棒状に、上下方向に長く設けられている。第1軸部材31は、底面にフランジ部31a1を有する下外筒31aと、上外筒31bとを有し、下外筒31a及び上外筒31bの内部に中軸31cが挿通されている。中軸31cの上端部には、第1軸部材31の軸CL1と直交する軸CL2方向に略円柱状の横棒31dが、軸CL2方向に貫通する中軸31cの孔に略遊嵌して挿入されている。中軸31cは、第1軸部材31の軸CL1回りに回転可能に設けられている。また、横棒31dは、横棒31dの軸CL2回りに回転可能に設けられている。横棒31dには、第1部材11の下端側が横棒31dに巻き付けるようにして固定されている。第1部材11は、エレキギター10のストラップピンを模した接続ボタン11aを有する。
【0041】
このようにして、第1部材11は、第1軸部材31(中軸31c)の軸CL1回りに回転可能であり、かつ、第1軸部材31(中軸31c)の軸CL1に直交する方向の軸CL2回りに回転可能に設けられている。
【0042】
第2軸部材32は、略円柱状の棒状に、上下方向の長さが第1軸部材31よりも十分に短く設けられている。第2軸部材32の全長は、第1部材の31の全長の約1/3以下で設けられている。第2軸部材32は、フランジ部32a1を有する下外筒32aに中軸32cが挿通されている。中軸32cの下端部には、第2軸部材32の軸CL1と直交する方向の軸CL3方向に横棒32dが、中軸32cを軸CL3方向に貫通する孔部に挿入され設けられている。中軸32cは、第2軸部材32の軸CL1回りに回転可能に設けられている。また、横棒32dも、横棒32dの軸CL3回りに回転可能に設けられている。横棒32dは、第2部材12の上端に設けられ、中央に切欠部12c1を備えて第2部材12の板面に平行な方向に貫通する孔部12cに挿入されて固定されている。
【0043】
このようにして、第2部材12は、第2軸部材32(中軸32c)の軸CL1回りに回転可能であり、かつ、第2軸部材32(中軸32c)の軸CL1に直交する方向の軸CL3回りに回転可能に設けられている。そして、第1軸部材31と第2軸部材32は、軸CL1上に同心に配置される。
ところで、センサ部30は、ロードセル50を有する。ロードセル50には、直方体状の起歪体38が設けられている。
【0044】
図6は、図5に示される起歪体の一例を示す斜視図である。例えば起歪体38の上面に、センサ44が設けられる。センサ44は、起歪体38の伸縮を検出するためのもので、例えば箔ひずみゲージや半導体歪ゲージ等の種々のセンサ機器を用いることができる。あるいは、2枚の箔ひずみゲージを用いたアクティブダミー法を適用することもできる。
ロードセル50は、センサ44と起歪体38を含む。ロードセル50は、第1部材11と第2部材12との間の荷重量(すなわち、ストラップ1の張力)を検出することができる。
起歪体38は、一方側である左側及び他方側である右側にそれぞれ貫通孔38a,38bが設けられている。
【0045】
図5に再び戻って説明する。起歪体38は、長手方向が軸CL1方向に直交する方向(軸CL2,CL3方向、すなわち左右方向)と平行となるように配置されている。第1軸部材31は、第1接続部材33により、起歪体38の貫通孔38aが設けられる一方側(左側)に接続している。第2軸部材32は、第2接続部材34により、貫通孔38bが設けられる他方側(右側)に接続している。
【0046】
より具体的には、側面視略S字状の板金部材からなる第1接続部材33の左側下面は、起歪体38の上面と当接する。第1接続部材33は、第1接続部材33の左側を貫通する孔部及び貫通孔38aに挿通されるボルト・ナットからなる締結部材35aにより、起歪体38に固定されている。第1接続部材33の右側下面は、起歪体38の上面と所定の間隔S1を有する。第1接続部材33の右側は、下面側に下外筒31aのフランジ部31a1が配置されて、下外筒31aが固定されている。このようにして、第1接続部材33の右側には、第1軸部材31が連結されている。第1軸部材31は、第1接続部材33を介して起歪体38(ロードセル50)に連結されている。
【0047】
同様に、側面視略S字状の板金部材からなる第2接続部材34の右側上面は、起歪体38の下面と当接する。第2接続部材34は、第2接続部材34の右側を貫通する孔部及び貫通孔38bに挿通されるボルト・ナットからなる締結部材35bにより、起歪体38に固定されている。第2接続部材34の左側上面は、起歪体38の上面と所定の間隔S2を有する。第2接続部材34の左側は、上面側に下外筒32aのフランジ部32a1が配置されて、下外筒32aが固定されている。このようにして、第2接続部材34の左側には、第2軸部材32が連結されている。第2軸部材32は、第2接続部材34を介して起歪体38(ロードセル50)に連結されている。
【0048】
ここで、ストラップ1に掛かる荷重量は、第1軸部材31と第2軸部材32の軸CL1方向に掛かる。換言すれば、第1軸部材31及び第2軸部材32は、共に荷重量が生じる方向に平行に設けられる。そして、ロードセル50の起歪体38は、荷重量が生じる方向である軸CL1方向と直交する方向を長手方向として配置される。
【0049】
図7は、子機200の一例を示す機能ブロック図である。子機200は、アンテナ211を有する受信部21、デジタルデータをアナログ信号に変換するデジタル/アナログ(D/A)コンバータ22,23、メモリ24、スクロールスイッチ25aに接続されるインタフェース(I/F)部25、ホールドスイッチ26aに接続されるI/F部26、プロセッサ27、操作部B1,C1,B2,C2(図3)に接続される指示受付部28、および、LED灯A1,A2、インジケータ202に接続される報知処理部29を備え、これらは内部で互いに接続されている。つまり子機200は、無線通信機能を備える組み込みコンピュータである。
【0050】
受信部21は、親機100からのデータ信号を無線チャネル300経由で受信する。D/Aコンバータ22,23は、プロセッサ27から与えられたデジタルの制御信号をアナログに変換し、第1出力端子4または第2出力端子7のいずれか、または双方から出力する。以下では、オン/オフ制御信号が第1出力端子4から出力されることを想定して説明するが、第2出力端子7についても同様である。
【0051】
メモリ24は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、プロセッサ27を制御するためのプログラム24aや、各種のデータ24bを記憶する。I/F部25は、スクロールスイッチ25aの操作を検出し、その結果をプロセッサ27に通知する。I/F部26は、ホールドスイッチ26aの操作を検出し、その結果をプロセッサ27に通知する。
【0052】
指示受付部28は、操作部B1,C1,B2,C2を介して与えられたユーザの指示(操作)を受け付け、操作内容に応じた信号をプロセッサ27に通知する。報知処理部29は、LED灯A1,A2,202を点灯/消灯して、現在のモードなどをユーザに報知する。
【0053】
プロセッサ27は、判定部27a、およびスイッチ制御部27bを備える。
判定部27aは、受信部21で受信された親機100からのデータ信号を取得し、このデータ信号から、親機100において検出された荷重量を判定する。
【0054】
スイッチ制御部27bは、第1出力端子4に接続された端子のオン/オフを、上記荷重量と、予め既定された閾値との比較結果に基づいて制御する。実施形態では、スイッチ制御部27bは、TRS出力端子形状を持つフォーンプラグの複数の端子を、荷重量の値に基づいてオン/オフ制御する。
【0055】
図8は、TRS出力端子形状を持つフォーンプラグの一例を示す図である。例えば、主にステレオ信号の伝送に用いられるこの種のプラグは、サウンドプロセッサ20を制御するためのパラメータ信号を供給するためにもよく使用される。図8のフォーンプラグは、Tip端子、Ring端子、およびSleeve端子を備える。このうちSleeve端子はコモン(アース)に接続され、Tip端子とRing端子はそれぞれ個別にオン/オフできるようになっている。実施形態では親機100に接続されたストラップ1にかかる荷重量と、その時間的な変化に基づいて、Tip端子とRing端子の何れか、または双方をオン/オフ制御する。
【0056】
図9は、ギター演奏時の引っ張り動作におけるテコ構造を示す図である。図9(a)に示されるように、ユーザがギターボディ付近(ハイポジション)のネックを下向きに引っ張ると、ストラップの(作用点)には(力点)と(作用点)との間の距離に応じた荷重がかかる。一方、図9(b)に示されるように、ユーザがギターヘッド付近(ローポジション)で下向きの力を加えた場合には、(力点)と(作用点)との間の距離が長くなるので、同じ力でも(作用点)には図9(a)の場合と比較して、より大きな荷重がかかる。このことに着目し、実施形態では、親機100のセンサ部30に入力された荷重量の大きさに応じて出力端子を選択する。以下、複数の実施例について説明する。
【0057】
(実施例1)
ユーザにとって楽器の演奏中に引っ張る荷重量を狙った値に加減するのはある程度の技術の習熟が必要となる。そこで、例えば以下の手順により、閾値1と閾値2を設定する。この手順は、キャリブレーション時に実行することも可能である。
【0058】
(1) ユーザは、ハイポジションのネックを下に引っ張り、この時の荷重量を閾値1として設定する。
(2) ユーザは、ローポジションのネックを手順(1)と同等の力で引っ張り、この時の荷重量を閾値2として設定する。
手順(1)、(2)におけるユーザがネックを引っ張る力は同等であるが、ストラップにかかる荷重量はテコの構造により変化する。
【0059】
図10は、(実施例1)における子機200の処理手順の一例を示すフローチャートである。スイッチ制御部27bは、親機100からのデータ信号をモニタして、ストラップ1にかかる荷重量の増加を確認すると(ステップS11)、荷重量が閾値1に達したか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12がYesであれば、スイッチ制御部27bは、例えば50ミリ秒[ms]以内に、荷重量が閾値2に達したか否かを判定する(ステップS13)。ここで、閾値1<閾値2とする。
【0060】
ステップS13がYesであれば、スイッチ制御部27bは、Tip端子にスイッチ動作を出力し(ステップS14)、閾値2に達しなかった場合はRing端子にスイッチ動作を出力する(ステップS15)。このように、ユーザが引っ張り動作を行った際、閾値1に達して一定期間以内(図10では仮に50ms)に閾値2に達するとTip端子にスイッチ動作を出力し、閾値2に達しなかった場合はRing端子にスイッチ動作を出力する。ここで「Tip端子にスイッチ動作を出力する」とは、例えば子機200の第1出力端子4におけるTip端子の信号ラインに、スイッチ制御部27b(プロセッサ27)から所定の制御信号を出力することを表す。「Ring端子にスイッチ動作を出力する」についても同様である。詳細については、図14図15を用いて後述する。
【0061】
このようにすることで、ユーザはギター10のネックのハイポジションを引っ張るかローポジションを引っ張るかにより、スイッチ出力のチャンネルを切り替えることができる。
【0062】
(実施例2)
ユーザにとっては、常に同じ力、同じポジションで引っ張る動作を行うことは難しい。そこで実施例2では、閾値1と閾値2との間に閾値3を設けて、閾値2と3の帯域を不感帯とする。
【0063】
図11は、(実施例2)における子機200の処理手順の一例を示すフローチャートである。スイッチ制御部27bは、親機100からのデータ信号をモニタして、ストラップ1にかかる荷重量の増加を確認すると(ステップS21)、荷重量が閾値1に達したか否かを判定する(ステップS22)。ステップS22がYesであれば、スイッチ制御部27bは、例えば50ミリ秒[ms]以内に、荷重量が閾値3に達したか否かを判定する(ステップS23)。ここで、閾値1<閾値3<閾値2とする。
【0064】
ステップS23がYesであれば、スイッチ制御部27bは、さらに、例えば50ミリ秒[ms]以内に、荷重量が閾値2に達したか否かを判定する(ステップS24)。ステップS24がYesであれば、スイッチ制御部27bはTip端子にスイッチ動作を出力し(ステップS25)、そうでなければその時の状態を保つ。ステップS23がNoであれば、スイッチ制御部27bは、Ring端子にスイッチ動作を出力する(ステップS26)。
このように、閾値3を設定して荷重量に対する不感帯を設けることにより、意図しない側の端子の方にスイッチ動作が出力してしまうことを防止できる。
【0065】
(実施例3)
図12は、(実施例3)における子機200の処理手順の一例を示すフローチャートである。スイッチ制御部27bは、親機100からのデータ信号をモニタして、ストラップ1にかかる荷重量の増加を確認すると(ステップS31)、荷重量が閾値1に達したか否かを判定する(ステップS32)。ステップS32がYesであれば、スイッチ制御部27bは、例えば50ミリ秒[ms]以内に、荷重量が閾値3に達したか否かを判定する(ステップS33)。ここで、閾値1<閾値3<閾値2とする。
【0066】
ステップS33がYesであれば、スイッチ制御部27bは、さらに、例えば50ミリ秒[ms]以内に荷重量が閾値2に達したか否かを判定する(ステップS34)。ステップS34がYesであれば、スイッチ制御部27bはTip端子にスイッチ動作を出力し(ステップS35)、そうでなければ、Tip端子とRing端子との双方にスイッチ動作を出力する(ステップS37)。
一方、ステップS33がNoであれば、スイッチ制御部27bは、Ring端子にスイッチ動作を出力する(ステップS36)。
【0067】
このように、閾値3による不感帯を、Tip端子とRing端子との双方がスイッチ動作する領域として積極的に利用することができる。例えば、この場合、ユーザはネックのミドルポジションを引っ張ることで不感帯をヒットすることができる。このような制御により、例えば、二つのフットスイッチを同時に押してTip端子,Ring端子の双方を同時にスイッチ動作させることと同じ動作を実現することができる。
【0068】
(実施例4)
図13は、(実施例4)における子機200の処理手順の一例を示すフローチャートである。実施例4では、閾値1と閾値3との間に閾値4を設定するとともに、閾値3と閾値2との間に閾値5を設定する。
【0069】
スイッチ制御部27bは、親機100からのデータ信号をモニタして、ストラップ1にかかる荷重量の増加を確認すると(ステップS41)、荷重量が閾値1に達したか否かを判定する(ステップS42)。ステップS42がYesであれば、スイッチ制御部27bは、例えば50ミリ秒[ms]以内に荷重量が閾値4に達したか否かを判定する(ステップS43)。ここで、閾値1<閾値4<閾値3<閾値5<閾値2とする。
【0070】
ステップS43がYesであれば、スイッチ制御部27bは、さらに、例えば50ミリ秒[ms]以内に荷重量が閾値3に達したか否かを判定する(ステップS44)。ステップS44がYesであれば、スイッチ制御部27bはさらに、例えば50ミリ秒[ms]以内に荷重量が閾値5に達したか否かを判定する(ステップS45)。ステップS45がYesであれば、スイッチ制御部27bはさらに、例えば50ミリ秒[ms]以内に荷重量が閾値2に達したか否かを判定する(ステップS46)。
【0071】
そして、ステップS46がYesであれば、スイッチ制御部27bはTip端子にスイッチ動作を出力し(ステップS47)、その時の状態を保つ。一方、ステップS45がNoであれば、Tip端子とRing端子との双方にスイッチ動作を出力する(ステップS49)。また、ステップS43がNoであれば、スイッチ制御部27bは、Ring端子にスイッチ動作を出力する(ステップS48)。
【0072】
このように、荷重量が閾値2を超える場合はTip端子にスイッチ動作を出力し、荷重量が閾値1と閾値4との間に収まる場合はRing端子にスイッチ動作を出力する。また、荷重量が閾値3と閾値5との間に収まる場合は、Tip端子とRing端子との双方にスイッチ動作を出力する。さらに、荷重量が閾値3と閾値4との間、および閾値5と閾値2との間に有れば不感帯とする。このような制御によっても、二つのフットスイッチを同時に押してTip端子,Ring端子の双方を同時にスイッチ動作させることと同じ動作を実現することができる。
【0073】
図14は、子機200の第1出力端子4の一例を示す模式図である。出力端子4は、Tip端子、Ring端子、Sleeve端子を備え、子機200のプロセッサ27は、親機100から通知された荷重量に応じてTip端子、Ring端子、またはその双方をオン/オフ制御する。具体的には、図14に示すように、第1出力端子4のTip端子、Ring端子にそれぞれ接続されているFETを、プロセッサ27(MCU(Micro Controller Unit)またはCPU(Central Processing Unit)等)から出力される制御信号によって、オン/オフ制御(スイッチング)させる。
【0074】
図15は、サウンドプロセッサ20の第1端子6の一例を示す模式図である。子機200の側でオン/オフされたスイッチ動作は、フォーンプラグの端子にそのまま出力されてサウンドプロセッサ20に伝達される。サウンドプロセッサ20は、第1端子6のTip端子、Ring端子の電位に応じて、内蔵のエフェクターをオン/オフ制御する。具体的には、図14に示すプロセッサ27(MCU等)から出力された制御信号(Tip端子おおよび/またはRing端子に接続された信号ラインに出力された制御信号)によって、サウンドプロセッサ20の第1端子6のTip端子および/またはRing端子と接続している信号ラインの電位が例えばHigh電位またはLow電位(例えばオンがLow電位で、オフがHigh電位)に制御される。この電位が、サウンドプロセッサ20の制御用ICであるSP_IC(例えばDSP(Digital Signal Processor等))500の入力ポートに入力されることで、サウンドプロセッサ20は、Tip端子、Ring端子に対応する入力ポートの電位によって、所定の動作を行うことができる。
【0075】
以上述べたように、実施形態では、エレキギター10のストラップ1に取り付けた親機100と、サウンドプロセッサ20に接続された子機200とが無線通信し、ストラップ1の荷重量に応じてサウンドプロセッサ20のエフェクターのスイッチング動作を制御することが可能になる。その際、エレキギター10のネックを引っ張るポジションを変化させることで、テコの原理で荷重量を変化させることができる。つまりユーザは、操作したいエフェクターを、ネックのポジションに対応付けて自在に切り替えることができる。例えば、切り替えたエフェクターのワウ効果の中心周波数を上げ下げしたり、モジュレーションのかかり具合を制御したり、ディレイタイムを調整したりすることができる。
【0076】
これらのことから実施形態によれば、簡易な操作で複数のスイッチコントロールを実現することの可能な機材制御システムとその親機、子機、および機材制御プログラムを提供することが可能になる。ひいては、演奏中にスイッチ可能なエフェクターの数を増やすことができ、表現可能なサウンドバリエーションを格段に拡げることが可能になる。
【0077】
なお、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0078】
例えば、実施形態の機材制御システムは、マルチエフェクターに限らず、音源機器、PA(Public Address)機器など多種多様な機材に適用することができる。
【0079】
また、親機100と子機200との間の無線通信手段はBLEに限定されず、例えばWi-Fi(登録商標)やFMトランスミッタ、赤外線による通信であってもよい。
【0080】
また、サウンドプロセッサ20は専用の組み込み機器に限らず、エフェクトアプリがインストールされたスマートフォンやパーソナルコンピュータ(PC)等によりサウンドプロセッサ20を実現することもできる。この種のデバイスは無線通信手段との親和性が高い。特に、PCを用いたサウンドプロセッサ20であれば、子機200にUSBで接続することもできる。この場合、エフェクトアプリがスピーカ等と無線接続され、親機100からの制御信号に応じてエフェクトアプリがスピーカから放音される楽音にエフェクトを付与する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…ストラップ、3…シールド、4…出力端子、5…ケーブル、6…第1端子、7…出力端子、8…ケーブル、9…第2端子、10…エレキギター、11…部材、11a…接続ボタン、12…部材、12c…孔部、12c1…切欠部、13…入力部、14…送信部、15…メモリ、15a…プログラム、15b…データ、16…プロセッサ、16a…報知処理部、16b…指示受付部、16c…データ生成部、20…サウンドプロセッサ、21…受信部、22,23…デジタル/アナログコンバータ、24…メモリ、24a…プログラム、24b…データ、25,26…インタフェース部、25a…スクロールスイッチ、26a…ホールドスイッチ、27…プロセッサ、27a…判定部、27b…スイッチ制御部、28…指示受付部、29…報知処理部、30…センサ部、31…軸部材、31a…下外筒、31a1…フランジ部、31b…上外筒、31c…中軸、31d…横棒、32…軸部材、32a…下外筒、32a1…フランジ部、32c…中軸、32d…横棒、33…接続部材、34…接続部材、35a…締結部材、35b…締結部材、38…起歪体、38a…貫通孔、38b…貫通孔、44…センサ、50…ロードセル、100…親機、141…アンテナ、161…LED、171…ボタン部、171a~171c…操作ボタン、171a…操作ボタン、171b…操作ボタン、171c…操作ボタン、200…子機、201…電源LED、202…インジケータ、203…電源ポート、210…フットペダル、211…アンテナ、300…無線チャネル、400…ギターアンプ、A1,A2…LED灯、B1,B2…ボリューム、C1,C2…スライドスイッチ群、C1a~C1d,C2a~C2d…スライドスイッチ、500…SP_IC。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15