(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126363
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】表面材および吸音材
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20240912BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G10K11/16 120
G10K11/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034687
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】小山 宗央
(72)【発明者】
【氏名】北村 薫
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA03
5D061AA06
5D061AA22
(57)【要約】
【課題】環境問題、SDGs(持続可能な開発目標)に配慮しながらも、吸音性能および難燃性能を十分に確保できる表面材と、この表面材を用いた吸音材を提供すること。
【解決手段】少なくとも1層以上の紙層を備える基材を有し、
前記基材が、天然繊維とポリエステル系繊維と難燃剤を含有し、全製紙用繊維に対して前記天然繊維を10~60質量%含有し、
前記紙層のうち多孔質体と貼合される貼合層が、貼合層用製紙用繊維に対してポリエステル系バインダー繊維を30~70質量%含有し、
燃焼試験(JIS D1201:1998)における燃焼速度が100mm/分以下である表面材と、この表面材を用いた吸音材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層以上の紙層を備える基材を有し、
前記基材が、天然繊維とポリエステル系繊維と難燃剤を含有し、全製紙用繊維に対して前記天然繊維を10~60質量%含有し、
前記紙層のうち多孔質体と貼合される貼合層が、貼合層用製紙用繊維に対してポリエステル系バインダー繊維を30~70質量%含有し、
燃焼試験(JIS D1201:1998)における燃焼速度が100mm/分以下であることを特徴とする表面材。
【請求項2】
通気度が0.3cm3/cm2/sec以上30cm3/cm2/sec以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面材。
【請求項3】
前記紙層が、前記貼合層と他方の最表面に位置する表面層の2層以上を有し、
前記貼合層が、貼合層用製紙用繊維に対して、天然繊維を30~70質量%、ポリエステル系主体繊維を0~20質量%、ポリエステル系バインダー繊維を30~70質量%含有し、
前記表面層が、表面層用製紙用繊維に対して、天然繊維を0~20質量%、ポリエステル系主体繊維を30~70質量%、ポリエステル系バインダー繊維を30~70質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の表面材。
【請求項4】
前記天然繊維として、JIS P8121-2:2012に従って測定したカナダ標準式濾水度が150ml以上300ml以下であるNBKPを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の表面材。
【請求項5】
前記ポリエステル系主体繊維の繊度が、0.5dtex以下であることを特徴とする請求項3に記載の表面材。
【請求項6】
前記難燃剤の付着量が、1g/m2以上10g/m2以下であることを特徴とする請求項3に記載の表面材。
【請求項7】
請求項1または2に記載の表面材の貼合層に、多孔質体が貼合された吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然繊維を含有した表面材と、この表面材を備える吸音材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電化製品、建築材料、自動車などの分野において、吸音材が使用されている。特に、近年、車両の軽量化による車体ボディの薄肉化やハイブリッド自動車や電気自動車の普及拡大に伴うモーター音の車内への騒音対策として、自動車用途において吸音材の需要が拡大している。
また、近年、SDGs(持続可能な開発目標)に沿って、環境に配慮した材料を使用した吸音材の要望が高くなっている。
【0003】
特許文献1では、ニードルパンチ不織布とメルトブローン不織布で二層構造としたうえで、ニードルパンチ不織布の繊維径、重量構成比を規定した低音域から中・高音域ノイズを吸収する高性能な吸音材が提案されている。
特許文献2では、リサイクル性を考慮した吸音材として、通気性のないシートに湿式もしくは乾式不織布を積層させ、表面材である不織布に対して坪量、厚さ、通気度を規定した吸音材が提案されている。
特許文献3では、車両用の吸音材として、高圧洗車による水の浸入防止でリサイクル性の低下を防止するため、表皮材として低通気度の不織布を撥水剤で処理した撥水性を有する吸音材が提案されており、また、耐熱性、難燃性の点からポリエステル繊維、アラミド繊維よりなる不織布の使用が好ましいとされている。
特許文献4では、環境負荷を低減する観点から、天然繊維とポリ乳酸系樹脂からなるボードに表面材(シート状物)を接着剤で貼合した吸音材が提案されており、表面材は特定の通気度を有する紙、フィルム、布帛が好ましいとされている。
【0004】
これらの吸音材で提示される表面材は、吸音効果を考慮して通気性を重要視したものである。環境への配慮を考慮した表面材も、環境負荷軽減効果は低く、さらなる改善が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表2019/106757号公報
【特許文献2】特開2007-86505号公報
【特許文献3】特開2005-208599号公報
【特許文献4】特開2007-223273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の吸音材に用いられている表面材に比べて、天然繊維を含有させることで環境問題、SDGs(持続可能な開発目標)に配慮しながらも、吸音性能および難燃性能を十分に確保できる表面材と、この表面材を用いた吸音材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は、以下の通りである。
1.少なくとも1層以上の紙層を備える基材を有し、
前記基材が、天然繊維とポリエステル系繊維と難燃剤を含有し、全製紙用繊維に対して前記天然繊維を10~60質量%含有し、
前記紙層のうち多孔質体と貼合される貼合層が、貼合層用製紙用繊維に対してポリエステル系バインダー繊維を30~70質量%含有し、
燃焼試験(JIS D1201:1998)における燃焼速度が100mm/分以下であることを特徴とする表面材。
2.通気度が0.3cm3/cm2/sec以上30cm3/cm2/sec以下であることを特徴とする1.に記載の表面材。
3.前記紙層が、前記貼合層と他方の最表面に位置する表面層の2層以上を有し、
前記貼合層が、貼合層用製紙用繊維に対して、天然繊維を30~70質量%、ポリエステル系主体繊維を0~20質量%、ポリエステル系バインダー繊維を30~70質量%含有し、
前記表面層が、表面層用製紙用繊維に対して、天然繊維を0~20質量%、ポリエステル系主体繊維を30~70質量%、ポリエステル系バインダー繊維を30~70質量%含有することを特徴とする1.または2.に記載の表面材。
4.前記天然繊維として、JIS P8121-2:2012に従って測定したカナダ標準式濾水度が150ml以上300ml以下であるNBKPを含むことを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の表面材。
5.前記ポリエステル系主体繊維の繊度が、0.5dtex以下であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の表面材。
6.前記難燃剤の付着量が、1g/m2以上10g/m2以下であることを特徴とする1.~5.のいずれかに記載の表面材。
7.1.~6.のいずれかに記載の表面材の貼合層に、多孔質体が貼合された吸音材。
【0008】
なお、本明細書において、「A~B(A、Bは数値)」との表記は、その両端を含む数値範囲、すなわち、A以上B以上を意味し、材料の配合量として「0~B(Bは数値)」のように0を含む場合は、その材料は任意の材料であり、含まなくても良いことを意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表面材は、再生産可能な天然繊維を含有しており、化石資源の使用量を削減することができる。本発明の表面材は、燃焼しやすい天然繊維を含有しながらも、実用的な難燃性を備えている。本発明の表面材は、多孔質体と強固に接着することができ、また、多孔質体と貼り合わされることにより、吸音性に優れた吸音材を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
・表面材
表面材は、多孔質体と貼り合わされて吸音材を形成するものである。
表面材は、燃焼試験(JIS D1201:1998)における燃焼速度が100mm/分以下である。表面材は、この燃焼試験において、燃焼距離が50mm以内かつ燃焼時間60秒以内であることがより好ましく、燃焼しないこと(不燃)がさらに好ましい。なお、燃焼距離が50mm以内かつ燃焼時間60秒以内であるもの、および燃焼しないものは、燃焼速度が100mm/分以下を満足する。
【0011】
表面材は、JIS L1096:2010の通気性A法(フラジール形法)に準拠して測定した通気度が0.3cm3/cm2/sec以上30cm3/cm2/sec以下であることが、多孔質体と貼り合わされて吸音材を形成したときの吸音性の点から好ましい。この通気度の下限は、0.4cm3/cm2/sec以上がより好ましく、0.5cm3/cm2/sec以上がさらに好ましく、また、通気度の上限は、25cm3/cm2/sec以下がより好ましく、20cm3/cm2/sec以下がさらに好ましい。
【0012】
表面材は、坪量が20g/m2以上80g/m2以下であることが、軽量化と強度とを両立させる点から好ましい。表面材の坪量の下限は、25g/m2以上がより好ましく、30g/m2以上がさらに好ましく、また、坪量の上限は、70g/m2以下がより好ましく、60g/m2以下がさらに好ましい。
【0013】
表面材は、厚さが60μm以上180μm以下であることが、薄肉化と強度とを両立させる点から好ましい。表面材の厚さの下限は、70μm以上がより好ましく、75μm以上がさらに好ましく、また、厚さの上限は、160μm以下がより好ましく、150μmm以下がさらに好ましい。
【0014】
・基材
本発明の表面材は、少なくとも1層以上の紙層を備える基材を有し、この基材は、天然繊維とポリエステル系繊維と難燃剤を含有し、基材が含む全製紙用繊維に対して天然繊維を10~60質量%含有する。
基材は、1層以上の紙層を備える。基材が備える紙層の層数は特に制限されないが、表面材として好ましい通気度、坪量、厚さ等の物性の調整が容易となる点から、2層以上であることが好ましく、製造効率の点から4層以下であることが好ましい。紙層の層数は、2層以上3層以下がより好ましく、2層が最も好ましい。なお、紙層が2層以上の場合、一方の最表面が貼合層であり、他方の最表面が表面層である。また、紙層が1層の場合は1層である紙層全体が貼合層かつ表面層であるが、本明細書では貼合層とする。
【0015】
(天然繊維)
本発明において、天然繊維としては、植物、微生物、動物に由来する繊維を特に制限することなく使用することができる。具体的には、パルプ(晒又は未晒木材パルプ、晒又は未晒非木材パルプ、木材の機械パルプ、バンブー、精製リンター、ジュート、マニラ麻、ケナフ等の草本由来のパルプなど)、酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等の天然セルロース、セルロースを高濃度アルカリ処理して得られるマーセル化パルプ、セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体等の何らかの溶媒に溶解した後に再沈殿された再生セルロース、アセチル化変性セルロース、カルボキシル化変性セルロース等の各種セルロース誘導体等のセルロース系繊維、絹、羊毛、ヤギ毛等の獣毛などが例示でき、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0016】
天然繊維としては、軽量で高い強度と高い弾性率を有し、叩解の程度により表面材の通気度を調整することが容易であるため、木材パルプを含むことが好ましい。具体的には、JIS P8121-2:2012に従って測定したカナダ標準式濾水度が150ml以上300ml以下である木材パルプを含むことが、表面材の通気度を0.3cm3/cm2/sec以上30cm3/cm2/sec以下に調整しやすいため好ましい。木材パルプの濾水度の下限値は160ml以上がより好ましく、170ml以上がさらに好ましく、また、その上限値は、280ml以下がより好ましく、260ml以下がさらに好ましい。
【0017】
基材が含む全天然繊維に対する木材パルプの割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上がよりさらに好ましい。
また、木材パルプとしては、晒又は未晒木材パルプが好ましく、晒木材パルプがより好ましく、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)がさらに好ましい。基材が含む全天然繊維に対するNBKPの割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上がよりさらに好ましい。
【0018】
(ポリエステル系繊維)
ポリエステル系繊維は、不織布等の材料として用いられるポリエステル系樹脂からなる繊維であり、延伸されている主体繊維、熱融着性を有するバインダー繊維が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸系繊維等の1種または2種以上を使用することができる。
【0019】
本発明の表面材は、紙層のうち貼合層がポリエステル系バインダー繊維を含むため、少なくともポリエステル系バインダー繊維を含む。バインダー繊維としては、未延伸繊維、芯鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維が挙げられ、融着性の点から複合繊維が好ましい。
ポリエステル系バインダー繊維としては、軟化点100℃以上のものが好ましく、軟化点110℃以上のものがより好ましい。また、バインダー繊維の繊度は、0.01dtex以上3.0dtex以下であることが好ましい。また、バインダー繊維の繊維長は、2mm以上10mm以下であることが好ましい。
ポリエステル系主体繊維の繊度は、0.01dtex以上0.5dtex以下であることが好ましく、0.05dtex以上であることがより好ましく、また、0.4dtex以下であることがより好ましい。主体繊維の繊維長は、2mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明において、基材は、製紙用繊維として、天然繊維とポリエステル系以外の繊維、例えば、ポリビニルアルコール繊維等の他の熱可塑性樹脂からなる主体繊維、バインダー繊維等を含むこともできる。
基材は、基材が含む全製紙用繊維に対して天然繊維を10~60質量%含む。本発明の表面材において、天然繊維のこの割合は高いほうが好ましく、12質量%以上が好ましく、14質量%以上がより好ましく、16質量%以上がさらに好ましく、18質量%以上がよりさらに好ましく、20質量%以上がよりさらに好ましく、22質量%以上がよりさらに好ましく、24質量%以上がよりさらに好ましい。この天然繊維の割合の上限は、難燃性や融着性の点から60質量%以下であり、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0021】
・貼合層
紙層のうち多孔質体と貼合される貼合層は、貼合層が含む貼合層用製紙用繊維に対してポリエステル系バインダー繊維を30~70質量%含有する。貼合層が、ポリエステル系バインダー繊維を特定割合で含むことにより、通気性を好適な範囲内に維持しながら、多孔質体との融着性に優れている。
紙層が2層以上である場合、天然繊維の使用量を増やすことができ、また、多孔質体との貼合性と吸音性能との点から、貼合層用製紙用繊維に対して、天然繊維を30~70質量%、ポリエステル系主体繊維を0~20質量%、ポリエステル系バインダー繊維を30~70質量%含むことが好ましく、天然繊維を40~60質量%、ポリエステル系主体繊維を0~10質量%、ポリエステル系バインダー繊維を40~60質量%含むことがより好ましく、ポリエステル系主体繊維を含まないことがさらに好ましい。
【0022】
・表面層
紙層が2層以上である場合、難燃性と吸音性能の点から、表面層用製紙用繊維に対して、天然繊維を0~20質量%、ポリエステル系主体繊維を30~70質量%、ポリエステル系バインダー繊維を30~70質量%含むことが好ましく、天然繊維を0~10質量%、ポリエステル系主体繊維を40~60質量%、ポリエステル系バインダー繊維を40~60質量%含むことがより好ましく、天然繊維を含まないことがさらに好ましい。
【0023】
紙層が3層以上である場合、一方の表面である貼合層と他方の表面である表面層とに挟まれた中間層の製紙用繊維の割合は、本発明の効果を妨げない範囲内であれば特に制限されないが、例えば、天然繊維を0~70質量%、ポリエステル系主体繊維を0~70質量%、ポリエステル系バインダー繊維を30~70質量%程度とすることができる。
また、各紙層の坪量の比率は特に制限されないが、基材全体に対して、貼合層と表面層とがいずれも、40質量%以上であることが好ましい。
【0024】
(難燃剤)
難燃剤は、リン酸グアニジン誘導体、スルファミン酸グアニジン誘導体、アミド硫酸アンモニウム、カルバミン酸塩、リン系、リン・窒素系化合物が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。難燃剤としては、リン酸グアニジン誘導体を含有することが、天然繊維とポリエステル系繊維を含む基材に対する難燃効果に優れるので好ましい。
基材における難燃剤の付着量は、本発明の燃焼試験による性能を満足できる範囲内であれば特に制限されないが、例えば、1g/m2以上10g/m2以下である。難燃剤の含有量は、コストの点から少ないほうが好ましく、8g/m2以下が好ましく、6g/m2以下がより好ましく、4g/m2以下がさらに好ましい。
【0025】
・製造方法
1層以上の紙層を備える基材は、公知の抄紙方法により製造することができ、例えば、紙層が2層以上の場合は多層抄きにより製造することができる。
また、難燃剤は、いずれか1層以上の紙層を抄紙するための紙料に添加(内添)してもよく、単層または2層以上の紙層を有する基材に外添(塗布・含浸)してもよいが、難燃性の点から外添が好ましい。また、基材は、難燃剤の他に、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、サイズ剤、紫外線吸収剤、退色防止剤、界面活性剤、防腐剤、撥水剤、消臭剤等の薬品を、内添または外添により含むことができる。
【0026】
(多孔質体)
本発明で使用する多孔質体としては、吸音材に用いられているものを特に制限することなく使用することができ、例えば、フェルトや、スパンボンド、メルトブロー、ニードルパンチ、スパンレース、ケミカルボンド、サーマルボンドなどの製法で製造される乾式不織布、あるいはウレタンフォーム、発泡スチロールなどの発泡体などが挙げられる。これらは、吸音材に要望される吸音特性等により適宜選定することができる。これらの中で、本発明で提案する表面材と組み合わせる多孔質体としては、貼合性の点から、ポリエステル系の乾式不織布が好ましい。
なお、表面材と多孔質体との貼合は、カレンダー、エンボス、エアスルーなどによる熱貼合や接着剤による貼合、またニードルパンチやウェオータージェットのような繊維の交絡により実施することができる。特に、貼合後に表面材や多孔質体の通気性が変わらない熱風によるエアスルーでの熱貼合が好ましい。
【実施例0027】
・評価方法
(通気度)
JIS L1096 :2010のA法(フラジール形法)により評価した。
試験片を150×150mm以上にサンプリングした。フラジール形試験機(スイス・テクステスト社(スイス)製、FX3300 ラボエアーIV)を用い、試験面積:38cm2、試験圧力:125Paにて測定を行った。1サンプルにつき5回測定し、その相加平均値で評価した。
【0028】
(難燃性)
難燃性はJIS D1201に準拠して評価した。1サンプルにつき5回測定し、その最大値で評価した。
測定手順
1.試験片を試験方向に230mm、幅方向に60mmにサンプリングし、裏表面(試験面の反対面)に端より35mm、135mm、185mmに標線を引く。
2.標線を記した試験片は表面層(試験面)が下向きになるように網の上に置き、長辺の両端を各10mm幅でステンレス棒にて固定して設置する。
3.ガスバーナーで炎高38mmに調整し、またバーナーの口から試験片底部までは20mmになるように調整して、試験片の端部に接炎し15秒間炎をあて続ける。
4.試験片の燃焼状態を観察し、試験片が着火し燃え続けた場合は、35mmと135mmの標線間、つまり100mm間を燃える時間(秒)を測定する。また、試験片が着火しない、もしくは燃焼が途中で止まった場合は、35mm標線からの距離(mm)と燃えた時間(秒)を測定する。これから、次の計算に基づき、燃焼速度を求める。
B=(S/T)×60
B:燃焼速度
S:燃焼距離(135mmあるいは燃焼が停止した長さ)単位:mm
T:燃焼時間(距離Sを燃焼するに要した時間)単位:秒
5.以下の基準に従って評価した。なお、◎の場合、○も満足するが、◎として評価した。
◎:不燃、または、燃焼距離の最大値が50mm以内かつ燃焼時間が60秒以内
○:燃焼速度の最大値が100mm/分以下
×:燃焼速度の最大値が100mm/分を超える
【0029】
(熱貼合適性)
1.各表面材と多孔質体(坪量250g/m2のポリエステル100%のサーマルボンド不織布)をそれぞれ流れ方向250mm、巾方向200mmの大きさに用意した。
2.表面材の貼合層(裏表面)を上向きに置き、その上に多孔質体を重ね合わせる。さらに、この上から1g/cm2の荷重がかかるようステンレス板を置く。
3.この状態で140~150℃に昇温した熱風乾燥機内に60秒間静置して、加熱処理を行う。
4.熱風乾燥器から取り出し、十分に冷却する。
5.得られた熱貼合品の貼合面を人の手で剥離させる際の状況で、次に示す基準で貼合適性として評価した。
〇:容易に剥がれない
×:軽い力で剥離する
【0030】
(実施例1)
カナダ標準ろ水度200mlCSFに叩解した針葉樹クラフトパルプ(NBKP)50質量%と、1.1dtex×3mmの芯鞘型ポリエステルバインダー繊維50質量%とを貼合層用製紙用繊維とした。貼合層用製紙用繊維をチェスト内で混合し、湿潤紙力剤をNBKP量に対して1質量%を添加して貼合層用紙料を調成した。
0.1dtex×3mmのポリエステル主体繊維50質量%と、1.1dtex×3mmの芯鞘型ポリエステルバインダー繊維50質量%とを表面層用製紙用繊維とした。表面層用製紙用繊維をチェスト内で混合して表面層用紙料を調成した。
【0031】
貼合層を傾斜短網抄紙方式にて坪量18g/m2で抄紙すると同時に表面層を円網抄紙方式にて坪量17g/m2で抄紙して抄き合せた。これをヤンキードライヤーにて乾燥し、坪量35g/m2の貼合層と表面層との2層の紙層を備える基紙を得た。基紙が含む全製紙用繊維に対する割合は、NBKPが25.7質量%、ポリエステル系主体繊維が24.3質量%、ポリエステル系バインダー繊維が50.0質量%である。
その後、サイズプレス塗工機にて難燃剤(ビゴールNo.415、大京化学株式会社製、リン酸グアニジン系)を目標付着量が5g/m2となるように塗工、乾燥させることで基材を得て、この基材を表面材とした。
【0032】
(実施例2)
難燃剤の目標付着量を3g/m2となるようにした以外は、実施例1と同様にして表面材を得た。
【0033】
(実施例3)
カナダ標準ろ水度200mlCSFに叩解した針葉樹クラフトパルプ(NBKP)30質量%、0.1dtex×3mmのポリエステル主体繊維20質量%、1.1dtex×3mmの芯鞘型ポリエステルバインダー繊維50質量%とを貼合層用製紙用繊維とした。貼合層用製紙用繊維をチェスト内で混合し、これに湿潤紙力剤をNBKP量に対して1質量%を添加して貼合層用紙料を調成した。
カナダ標準ろ水度200mlCSFに叩解した針葉樹クラフトパルプ(NBKP)20質量%、0.1dtex×3mmのポリエステル主体繊維30質量%と、1.1dtex×3mmの芯鞘型ポリエステルバインダー繊維50質量%とを表面層用製紙用繊維とした。表面層用製紙用繊維をチェスト内で混合して表面層用紙料を調成した。表面層用製紙用繊維をチェスト内で混合し、これに湿潤紙力剤をNBKP量に対して1質量%を添加して表面層用紙料を調成した。
この紙料を用いた以外は実施例1と同様にして表面材を得た。なお、実施例3で用いた基紙が含む全製紙用繊維に対する割合は、NBKPが25.1質量%、ポリエステル系主体繊維が24.9質量%、ポリエステル系バインダー繊維が50.0質量%である。
【0034】
(比較例1)
カナダ標準ろ水度200mlCSFに叩解した針葉樹クラフトパルプ(NBKP)25質量%、0.1dtex×3mmのポリエステル主体繊維25質量%、1.1dtex×3mmの芯鞘型ポリエステルバインダー繊維50質量%とを製紙用繊維とした。製紙用維をチェスト内で混合し、これに湿潤紙力剤をNBKP量に対して1質量%を添加して貼合層と表面層の紙料を調成した。
この紙料は、傾斜短網抄紙方式にて坪量18g/m2となるよう抄紙する一方で、円網抄紙方式にて坪量17g/m2で抄紙して抄き合せた。
これをヤンキードライヤーにて乾燥し坪量35g/m2の基紙を得た。その後、サイズプレス塗工機にて難燃剤を目標付着量が3g/m2となるよう塗工、乾燥させることで表面材を得た。
【0035】
(比較例2)
製紙用繊維を、カナダ標準ろ水度200mlCSFに叩解した針葉樹クラフトパルプ(NBKP)25質量%、0.1dtex×3mmのポリエステル主体繊維50質量%、1.1dtex×3mmの芯鞘型ポリエステルバインダー繊維25質量%とした以外は、比較例1と同様にして表面材を得た。
【0036】
(比較例3)
カナダ標準ろ水度200mlCSFに叩解した針葉樹クラフトパルプ(NBKP)25質量%、0.1dtex×3mmのポリエステル主体繊維50質量%、1.1dtex×3mmの芯鞘型ポリエステルバインダー繊維25質量%とを貼合層用製紙用繊維とした。貼合層用製紙用繊維をチェスト内で混合し、これに湿潤紙力剤をNBKP量に対して1質量%を添加して貼合層用紙料を調整した。
カナダ標準ろ水度200mlCSFに叩解した針葉樹クラフトパルプ(NBKP)50質量%、0.1dtex×3mmのポリエステル主体繊維25質量%、1.1dtex×3mmの芯鞘型ポリエステルバインダー繊維25質量%とを表面層用製紙用繊維とした。表面層用製紙用繊維をチェスト内で混合し、これに湿潤紙力剤をNBKP量に対して1質量%を添加して表面層用紙料を調整した。
【0037】
貼合層用紙料は、傾斜短網抄紙方式にて坪量18g/m2となるよう抄紙する一方で、表面層用紙料は、円網抄紙方式にて坪量17g/m2で抄紙して抄き合せた。
これをヤンキードライヤーにて乾燥し坪量35g/m2の基紙を得た。その後、サイズプレス塗工機にて難燃剤を目標付着量が3g/m2となるよう塗工、乾燥させることで表面材を得た。
【0038】
【0039】
本発明である実施例1~3で得られた表面材は、難燃性と熱貼合性に優れていた。
それに対し、比較例1で得られた表面材は、難燃性に劣り、比較例2、3で得られた表面材は、熱貼合性に劣っていた。
実施例2で得られた表面材は、難燃剤の付着量が少ないにも関わらず、難燃性に優れており、貼合層と表面層との製紙用繊維の配合により、少ない難燃剤で高い難燃性を発揮できることが確かめられた。