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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126373
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】菓子
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/48 20170101AFI20240912BHJP
   A23G 1/50 20060101ALI20240912BHJP
   A23G 3/50 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A21D13/48
A23G1/50
A23G3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034702
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 通一
(72)【発明者】
【氏名】三木 晃
(72)【発明者】
【氏名】鬼束 博文
(72)【発明者】
【氏名】庄司 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 愼里
(72)【発明者】
【氏名】井上 潤
【テーマコード(参考)】
4B014
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GB04
4B014GB09
4B014GE09
4B032DB21
4B032DB40
4B032DE10
4B032DG02
4B032DK12
4B032DK42
4B032DK45
4B032DP23
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】楽器として演奏・音程の調整が可能であり、かつ、食用可能な笛を模した菓子を提供する。
【解決手段】笛を模した菓子であって、本体部と、該本体部に連接して設けられた空気吹込部と、を備え、前記本体部は空気振動により共鳴が生じる空間を形成する共鳴部と、前記本体部に設けられた補填部と、を有し、少なくとも本体部が食材からなることを特徴とする菓子。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
笛を模した菓子であって、
本体部と、該本体部に連接して設けられた空気吹込部と、を備え、
前記本体部は空気振動により共鳴が生じる空間を形成する共鳴部と、前記本体部に設けられた補填部と、を有し、
少なくとも本体部が食材からなることを特徴とする菓子。
【請求項2】
前記補填部の体積を大きくすることで、前記共鳴部の容積が減少することを特徴とする、
請求項1に記載の菓子。
【請求項3】
前記本体部は、小麦または米を主原料とする焼き菓子からなることを特徴とする請求項1または2に記載の菓子。
【請求項4】
前記空気吹込部は、飴またはラムネからなることを特徴とする請求項1から3に記載の菓子。
【請求項5】
前記補填部は、飴、ラムネ、餡子、チョコレート、の少なくともいずれか1つを主材料とする請求項1から4に記載の菓子。
【請求項6】
前記本体部は外部と共鳴部を連通する指穴を有し、
前記補填部は一方の開口部が前記指穴に、他方の開口部が前記共鳴部に開口する孔を有することを特徴とする請求項1から5に記載の菓子。
【請求項7】
前記本体部と空気吹込み部は一体で形成されることを特徴とする請求項1から6に記載の菓子。
【請求項8】
前記空気吹込部は、前記本体部の側面から突出するように設けられ、末端に設けられた吹口と、前記共鳴部の一部を外部に開口する歌口と、前記吹口と前記歌口とを連通する気道と、を有し、
前記歌口には、前記気道に対向する位置に、前記気道から吹き出した空気が当たるエッジが設けられてなるオカリナであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1稿に記載の菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用可能な笛を模した菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
笛の1種であるオカリナは、陶器、プラスチック、木材等で造られている。オカリナは、美しい音色と音が楽に出せることから、近年、愛好者が増加している。オカリナを食用可能な素材で作成することもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-055717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、オカリナ等の楽器を、食用可能な楽器を模した菓子が記載されている。しかし、従来の食用可能な楽器は音程の調整ができず、発音が困難であるため演奏性に課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、楽器として演奏が可能であり、かつ、食用可能な笛を模した菓子の演奏性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の菓子は、笛を模した菓子であって、本体部と、該本体部に連接して設けられた空気吹込部と、を備え、前記本体部は空気振動により共鳴が生じる空間を形成する共鳴部と、前記本体部に設けられた補填部と、を有し、 少なくとも本体部が食材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、笛を模した菓子の本体部内に補填部を設けることで、音程を調整することができ、笛の演奏性が向上する。また、笛の演奏後に、笛(菓子)を食べることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態である笛を模した菓子としてオカリナの概略構成を示し、(A)は菓子の表面を示す斜視図、(B)は菓子の裏面を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態である笛を模した菓子としてオカリナの概略構成を示し、(A)は菓子の表面を示す平面図、(B)は菓子の裏面を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態である笛を模した菓子としてオカリナの概略構成を示す図2のA-A線に沿う断面図である。
図4】本発明の異なる実施形態である笛を模した菓子としてオカリナの概略構成を示し、菓子の表面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の菓子の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0010】
図1図4は、本発明の実施形態である笛を模した菓子としてオカリナの概略構成を示すものである。図1(A)は菓子の表面を示す斜視図、(B)は菓子の裏面を示す斜視図である。図2(A)は菓子の表面を示す平面図、(B)は菓子の裏面を示す平面図、(C)は(A)(B)のA-A線に沿う断面図である。図3図2のA-A線に沿う断面図である。図4は本発明の異なる実施形態である笛を模した菓子としてオカリナの概略構成を示し、菓子の表面を示す平面図である。
本実施形態の笛を模した菓子の一例であるオカリナ(以下、「オカリナ」と言う。)10は、共鳴部21を含む本体部20と、本体部20の側面から突出するように設けられた空気吹込部40と、共鳴部21に設けられる補填部50と、を備える。
【0011】
図1(A)に示すように、例えば、本体部20の表面20aにおいて、空気吹込部40とは反対側の領域(空気吹込部40から離隔する領域)には、音を共鳴させるための共鳴部21に貫通する指穴(小穴)22、指穴(大穴)23、指穴(大穴)24および指穴(大穴)25がほぼ1列に設けられている。また、図1(A)に示すように、例えば、本体部20の表面20aにおいて、空気吹込部40側の領域(空気吹込部40の近傍の領域)には、共鳴部21に貫通する指穴(大穴)26、指穴(大穴)27、指穴(大穴)28および指穴(小穴)29がほぼ1列に設けられている。なお、共鳴部21は、本体部20内での空気振動により共鳴が生じる空間を形成している。具体的には、共鳴部21は本体部20及び本体部20内に設けられる補填部50によって本体部20内に形成される。なお、共鳴部21は補填部50のみで本体部20内に形成されてもよい。
また、図1(A)に示すように、本体部20の表面20aにおいて、例えば、指穴22,23,24,25からなる列と、指穴26,27,28,29からなる列とが、ほぼ並列に設けられている。
【0012】
これら指穴22,23,24,25,26,27,28,29は、音程調整用の穴である。指穴22,23,24,25は、左手の人差指、中指、薬指、小指で押さえられる(穴を塞がれる)。また、指穴26,27,28,29は、右手の人差指、中指、薬指、小指で押さえられる(穴を塞がれる)。
なお、指穴22,23,24,25,26,27,28,29を平面視した場合の形状としては、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形等が挙げられる。
【0013】
また、図1(B)に示すように、例えば、本体部20の裏面20bにおいて、後述する歌口42を挟んで対向するように、一対の指穴(大穴)31,32が設けられている。
指穴31,32は、音程調整用の穴である。指穴31は、右手の親指で押さえられる(穴を塞がれる)。また、指穴32は、左手の親指で押さえられる(穴を塞がれる)。
なお、指穴31,32を平面視した場合の形状としては、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形等が挙げられる。
【0014】
空気吹込部40は、本体部20内に空気を吹き込むために、末端に設けられた吹口41と、本体部20の共鳴部21の一部を外部に開口する歌口42と、吹口41と歌口42とを連通する気道43と、を有する。
また、気道43は、空気吹込部40内を、本体部20に向かって貫通するように設けられている。吹口41と本体部20の共鳴部21とは、気道43を介して、連通している。
【0015】
歌口42には、気道43に対向する位置に、気道43から吹き出した空気が当たるエッジ44が設けられている。
なお、歌口42を平面視した場合の形状としては、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形等が挙げられる。
【0016】
本体部20は、小麦または米を主原料とする焼き菓子からなる。
小麦を主原料とする焼き菓子としては、公知のビスケット、公知のサブレー等が挙げられる。
ビスケットは、小麦粉に牛乳、ショートニング、バター、砂糖等を混ぜて、サクサクした食感に焼いたものである。ビスケットには、チョコレート、ナッツ、ドライフルーツ等の果実加工品等が加えられていてもよい。
サブレーは、バター(またはショートニング)と薄力粉の配合比率をほぼ1:1として、バターの風味を増して、サックリとした食感に焼いたものである。
米を主原料とする焼き菓子としては、例えば、米を製粉した米粉を用いた煎餅等が挙げられる。
本体部20を、小麦または米を主原料とする焼き菓子で作ることにより、オカリナ10を手で持った場合に、ベタベタすることがない。
【0017】
空気吹込部40、すなわち、吹口41、歌口42、気道43およびエッジ44は、飴またはラムネで形成されていてもよい。
飴としては、オカリナ10を使用または保管する環境の温度で容易に溶けたり、軟化したりしないものであれば特に限定されない。このような飴としては、例えば、ハードキャンディ、千歳飴、チュッパチャプス(登録商標)、ミルキー等の飴と同様の成分からなる飴が挙げられる。
【0018】
ラムネは、錠剤の形をした、固体の菓子であり、一般的に、片栗粉、ブドウ糖、クエン酸等から構成される。
【0019】
また、空気吹込部40は、ミルクケーキ(乾燥させた加糖練乳を主成分とする菓子)で形成されていてもよい。
加糖練乳とは、牛乳に糖分を加えて濃縮させた、粘度の高い液体状の食品である。
【0020】
また、空気吹込部40は、必ずしも飴、ラムネ、ミルクケーキ等のような食材で形成されている必要がなく、食品に適用可能な樹脂で形成されていてもよい。空気吹込部20が樹脂で形成されていれば、食材で形成されている場合よりも、空気吹込部20の形状の精度が高くなるため、オカリナ10は楽器として高い発音機能を実現可能となる。
空気吹込部40が樹脂で形成されている場合、後述する方法により、本体部20と空気吹込部40とが接着される。
【0021】
図3に示すように、補填部50は、本体部20内に設けられる。補填部50は、チョコレートで形成されていてもよい。チョコレートで形成する場合、チョコレートを溶かし補填部50を形成し、固化したのちに削るなどして形を微調整することができるため、補填部50の加工が容易である。チョコレートとしては、オカリナ10を使用または保管する環境の温度で容易に溶けたり、軟化したりしないものであれば特に限定されない。
【0022】
また、補填部50は、必ずしもチョコレートで形成されている必要がなく、他の食材であってもよい。例えば、ゼリー、寒天、グミ、餡子、クリーム、上述の飴、ラムネ又は果物などで形成されていてもよい。補填部50は1種類の食材で形成されていてもよいし、ナッツ入りのチョコレートといった複数の食材で形成されていてもよい。補填部50を形成する食材に応じてオカリナ10の音色を変更することができる。
【0023】
特に補填部50は、ゼリー、寒天、グミといった振動しやすい食材を用いることが音響特性上好ましい。補填部50を振動しやすい食材で形成することにより、共鳴部21の壁面が空気の圧力変動に追随して変形する。そのため、オカリナ10の発音時のヘルムホルツ共鳴を促進することができる。
【0024】
補填部50を本体部20の中に設けることによって、共鳴部21の容積が調整される。すなわち、補填部50の体積を大きくすると、共鳴部21の容積は減少する。共鳴部21の容積が減少することによって、オカリナ10の基音は高くなる。したがって、本体部21に設けられる補填部50の量を調整することによって、オカリナ10の発音域を調整することができる。
【0025】
また、補填部50は本体部20の表面から共鳴部21へ貫通する指穴22,23,24,25,26,27,28,29,31,32を塞がないように設けられる。補填部50は一方の開口部が指穴22,23,24,25,26,27,28,29,31,32のいずれか1つに面し、他方の開口部が共鳴部21に至る孔51を有していても良い。孔51が複数設けられる場合、各孔51は、指穴22,23,24,25,26,27,28,29,31,32のいずれか一つにそれぞれ対応して設けられることが好ましい。
【0026】
孔51の管長を調整することにより、孔51の一方の開口部が面している指穴22,23,24,25,26,27,28,29,31,32の音程を調整することができる。複数の孔51の管長を異ならせることにより、指穴22,23,24,25,26,27,28,29,31,32間の音程バランスを調整することができる。したがって、孔51の管長を調整することにより、オカリナ10の発音する音階を調律することができる。
【0027】
また、孔51の一方の開口部の開口面積を調整することでも、孔51の一方の開口部が面している指穴22,23,24,25,26,27,28,29,31,32の音程を調整することができる。この場合でも、オカリナ10の発音する音階を調律することができる。すなわち、孔51の管長又は開口面積の少なくともいずれか一方を調整することにより、オカリナ10を調律することができる。
【0028】
次に、オカリナ10の製造方法を説明する。
例えば、本体部20と、空気吹込部40とを、別々に作製する。
本体部20の作製では、例えば、本体部20全体を一度に作製するか、または、本体部20の表面20a側をなす第1の部材と、本体部20の裏面20b側をなす第2の部材とを、別々に作製し、これら第1の部材と第2の部材を接合する。
【0029】
本体部20全体を一度に作製する場合、本体部20の内面の形状、すなわち、共鳴部21の形状に等しい外面形状を有し、指穴22,23,24,25,26,27,28,29,31,32に相当する突起等を有する内型と、本体部20の外形に等しい内面の形状を有する外型とを組み合わせてなる金型を用意する。そして、その金型内、すなわち、前記の内型と前記の外型の隙間に、本体部20の原料となる、小麦を主成分とする混合物を流し込む。この状態で、前記の混合物を焼き、その焼結体を金型から離型することにより、所定の位置に指穴22,23,24,25,26,27,28,29,31,32が設けられた本体部20を得る。
前記の混合物を焼く温度は、特に限定されず、混合物の組成や本体部20に要求される機械的強度等に応じて、適宜調整される。
【0030】
なお、前記の混合物は焼かれると膨らむため、指穴22,23,24,25,26,27,28,29,31,32が所定の大きさや形状をなしていないことがある。その場合、ドリルのような切削工具を用いて、膨らんで狭くなったり、変形したりした指穴22,23,24,25,26,27,28,29,31,32を、所定の大きさや形状に切削する。
【0031】
第1の部材と第2の部材を別々に作製する場合、第1の部材を成形するための金型として、本体部20のうち表面20a側をなす部分の内面の形状に等しい外面形状を有し、指穴22,23,24,25,26,27,28,29に相当する突起等を有する内型と、本体部20のうち表面20a側をなす部分の外形に等しい内面の形状を有する外型とを組み合わせてなる金型を用意する。そして、その金型内、すなわち、前記の内型と前記の外型の隙間に、本体部20の原料となる、小麦または米を主成分とする混合物を流し込む。この状態で、前記の混合物を焼き、その焼結体を金型から離型することにより、所定の位置に指穴22,23,24,25,26,27,28,29が設けられた第1の部材を得る。
なお、指穴22,23,24,25,26,27,28,29が所定の大きさや形状をなしていない場合、ドリルのような切削工具を用いて、膨らんで狭くなったり、変形したりした指穴22,23,24,25,26,27,28,29を、所定の大きさや形状に切削する。
【0032】
一方、第2の部材を成形するための金型として、本体部20のうち裏面20b側をなす部分の内面の形状に等しい外面形状を有し、指穴31,32に相当する突起等を有する内型と、本体部20のうち裏面20b側をなす部分の外形に等しい内面の形状を有する外型とを組み合わせてなる金型を用意する。そして、その金型内、すなわち、前記の内型と前記の外型の隙間に、本体部20の原料となる、小麦または米を主成分とする混合物を流し込む。この状態で、前記の混合物を焼き、その焼結体を金型から離型することにより、所定の位置に指穴31,32が設けられた第2の部材を得る。
なお、指穴31,32が所定の大きさや形状をなしていない場合、ドリルのような切削工具を用いて、膨らんで狭くなったり、変形したりした指穴31,32を、所定の大きさや形状に切削する。
【0033】
次に、得られた第1の部材と第2の部材を、それぞれの内面が内側になるように突き合わせ、食用の材料で接合する。
第1の部材と第2の部材を接合するには、例えば、第1の部材の接合する部分を凹型のレール形状に形成し、その凹型のレール形状に嵌合するように、第2の部材の接合する部分を凸型のレール形状に形成する。そして、第1の部材の凹型のレール形状に、第2の部材の凸型のレール形状を嵌合させて、第1の部材と第2の部材を突き合わせる。
【0034】
第1の部材と第2の部材を接合するには、第1の部材の接合する部分および第2の部材の接合する部分の少なくともいずれか一方に、食品用接着剤、卵白、溶かした飴等を塗布した後、第1の部材と第2の部材を突き合わせ、チョコレート、食品用接着剤、卵白、飴等を硬化させる。
また、第1の部材と第2の部材を接合するには、第1の部材と第2の部材を突き合わせ、この状態で、第1の部材と第2の部材の全体を、チョコレート、食品用接着剤、卵白、溶かした飴等でコーティングし、チョコレート、食品用接着剤、卵白、飴等を硬化させる。
【0035】
また、第1の部材と第2の部材を別々に作製する場合、例えば、以下のような方法を採用してもよい。
上記の金型を用いて、最終的な焼き上げの状態に対して半分程度まで上記の混合物を焼いて、第1の部材の前駆体(第1の部材の半硬化物)と、第2の部材の前駆体(第2の部材の半硬化物)とを作製する。
前記の混合物を半分程度焼く温度は、特に限定されず、混合物の組成や本体部20に要求される機械的強度等に応じて、適宜調整される。
第1の部材と第2の部材を別々に作製する場合、後述の補填部50を本体部に設ける工程が容易になる。
【0036】
次に、得られた第1の部材の前駆体の接合する部分および第2の部材の前駆体の接合する部分の少なくともいずれか一方に、小麦粉等を水に溶かして調整した水溶液を塗布し後、第1の部材の前駆体と第2の部材の前駆体を突き合わせ、第1の部材の前駆体と第2の部材の前駆体を最終的な焼き上げの状態まで焼いて、第1の部材と第2の部材を接合する。
【0037】
次に、本体部20に補填部50を形成する。補填部50を形成するには、例えば、補填部50の材料となる食材を溶解させ、第1の部材又は第2の部材の少なくともいずれか一方の内面側に充填し、その後冷却して固化させることで形成することができる。なお、補填部50は、第1の部材と第2の部材を接合した後で本体部20内に形成してもよい。補填部50の材料となる食材を充填させる量により、共鳴部21の容積を調整することができる。
【0038】
補填部50が設けられた後の共鳴部21の形状は楕円体に近い方が好ましい。共鳴部21の形状を楕円体に近づけることで、オカリナ10の発音が容易となる。
【0039】
本体部20と空気吹込み部40を合わせたオカリナ10の内部容積としては、例えば50ml~100mlが好ましい。また、補填部50の補填量としては、例えば25ml~50mlが好ましい。オカリナ10の内部容積と補填部50の補填量を上記の範囲にすることにより、オカリナ10の基音をG4~C5の範囲内で調整することができる。
【0040】
また、本体部20に補填部50を形成する際、指穴22,23,24,25,26,27,28,29,31,32に栓をして充填してもよい。本体部に補填部50が形成された後に栓を取り除き、補填部50に孔51を形成することができる。栓の形状により孔51の形状や長さを調整することができる。なお、孔51は補填部50を削るなどして形成してもよい。
【0041】
さらに、補填部50や孔51を形成した後に、補填部50を削るなどして補填部50の量や孔51の形状を調整してもよい。補填部50の量や孔51の形状を調整することで、オカリナ10の発音域や音程、音階を調律することができる。
【0042】
空気吹込部40の作製では、例えば、空気吹込部40全体を一度に作製するか、または、空気吹込部40の表面40a側をなす第1の部材と、空気吹込部40の裏面40b側をなす第2の部材とを、別々に作製し、これら第1の部材と第2の部材を接合する。
【0043】
空気吹込部40全体を一度に作製する場合、空気吹込部40の内面の形状、すなわち、吹口41および気道43の形状に等しい外面形状を有する内型と、空気吹込部40の外形、すなわち、歌口42およびエッジ44に等しい内面の形状を有する外型とを組み合わせてなる金型を用意する。そして、その金型内、すなわち、前記の内型と前記の外型の隙間に、空気吹込部40の原料となる、溶かした飴やラムネの原料を流し込む。金型内に飴を流し込んだ場合、この状態で、飴の温度を下げて硬化させ、その硬化物を金型から離型することにより、所定の位置に吹口41、歌口42、気道43およびエッジ44が設けられた空気吹込部40を得る。また、金型内にラムネの原料を流し込んだ場合、この状態で、ラムネの原料を加圧して凝集させ、その凝集体を金型から離型することにより、所定の位置に吹口41、歌口42、気道43およびエッジ44が設けられた空気吹込部40を得る。
【0044】
空気吹込み部40の第1の部材と第2の部材を別々に作製する場合、第1の部材を成形するための金型として、空気吹込部40の内面の形状、すなわち、吹口41および気道43の形状に等しい外面形状を有する内型と、空気吹込部40の外形に等しい内面の形状を有する外型とを組み合わせてなる金型を用意する。そして、その金型内、すなわち、前記の内型と前記の外型の隙間に、空気吹込部40の原料となる、溶かした飴やラムネの原料を流し込む。その後、空気吹込部40を一度に作製する場合と同様にして、所定の位置に吹口41および気道43が設けられた第1の部材を得る。
【0045】
一方、第2の部材を成形するための金型として、空気吹込部40の内面の形状、すなわち、吹口41および気道43の形状に等しい外面形状を有する内型と、空気吹込部40の外形、すなわち、歌口42およびエッジ44に等しい内面の形状を有する外型とを組み合わせてなる金型を用意する。そして、その金型内、すなわち、前記の内型と前記の外型の隙間に、空気吹込部40の原料となる、溶かした飴やラムネの原料を流し込む。その後、空気吹込部40を一度に作製する場合と同様にして、所定の位置に吹口41、歌口42、気道43およびエッジ44が設けられた第2の部材を得る。
【0046】
次に、得られた第1の部材と第2の部材を、それぞれの内面が内側になるように突き合わせ、溶かした飴で接合する。なお、接合に関しては本体部20と同様の方法を用いればよい。
【0047】
さらに、得られた本体部20と空気吹込部40を突き合わせ、食用の材料で接合する。
本体部20と空気吹込部40を接合するには、例えば、本体部20の接合する部分を凹型のレール形状に形成し、その凹型のレール形状に嵌合するように、空気吹込部40の接合する部分を凸型のレール形状に形成する。そして、本体部20の凹型のレール形状に、空気吹込部40の凸型のレール形状を嵌合させて、本体部20と空気吹込部40を突き合わせる。
【0048】
本体部20と空気吹込部40を接合するには、本体部20の接合する部分および空気吹込部40の接合する部分の少なくともいずれか一方に、チョコレート、食品用接着剤、卵白、溶かした飴等を塗布した後、本体部20と空気吹込部40を突き合わせ、チョコレート、食品用接着剤、卵白、飴等を硬化させる。
また、本体部20と空気吹込部40を接合するには、本体部20と空気吹込部40を突き合わせ、この状態で、本体部20と空気吹込部40の全体を、チョコレート、食品用接着剤、卵白、溶かした飴等でコーティングし、チョコレート、食品用接着剤、卵白、飴等を硬化させる。
【0049】
また、オカリナ10は本体部20と空気吹込み部40とを、一度に作製してもよい。例えば、本体部20の表面20a側をなす第1の部材と、空気吹込部40の表面40a側をなす第1の部材とを一体で作製し、本体部20の裏面20b側をなす第2の部材と、空気吹込部40の裏面40b側をなす第2の部材とを、それぞれ一体で作製し、これら第1の部材と第2の部材を接合する。
【0050】
本実施形態のオカリナ10は、簡単かつ手軽に演奏することができる。また、本体部20が小麦または米を主原料とする焼き菓子からなるため、演奏後に食べることができる。また、空気吹込部40が飴またはラムネで形成されていれば、演奏後に食べることができる。
また、本実施形態のオカリナ10は、食用可能であるため、楽器に対する苦手意識が強い人や子供でも気楽に手にすることができるため、楽器(笛)の愛好者の増加にも寄与することができる。
また、本実施形態のオカリナ10は、寸法精度が求められる、吹口41、歌口42、気道43およびエッジ44からなる空気吹込部40が、オカリナ10を使用または保管する環境の温度で容易に溶けたり、軟化したりしない飴、ラムネ、樹脂等からなるため、楽器として要求される音程を十分に確保し、本格的な演奏にも対応することができる。
また、本実施形態のオカリナ10は、補填部50を有するため、音色や音程を容易に調整することができる。補填部50が食材で形成されている場合、演奏後に食べることができる。補填部50を形成する食材に応じて、オカリナ10の味を変えることができる。したがって、オカリナ10は、楽器として優れた演奏性を実現すると共に、多様な味に対応可能な菓子として、食用に適している。
【0051】
なお、本発明におけるオカリナの外形形状は、本実施形態に限定されない。本発明におけるオカリナの外形形状は、丸形や角形等であってもよく、指穴の数や配置も任意である。
また、本実施形態では、笛を模した菓子としてオカリナを例示したが、本発明の菓子はこれに限定されない。本発明における笛は、リコーダやフルート等のエアリード楽器であってもよい。また、本発明における笛は、複数の音程が発音できればよく、音階の各音高の音が発音できなくてもよい。
【0052】
さらに、図4に示すように、空気吹込部40の外面(裏面)40b、すなわち、空気吹込部40における本体部20の裏面20b側の面において、吹口41側に、エッジ44を囲むように調整部45が設けてもよい。
なお、調整部45を平面視した場合の形状としては、特に限定されず、例えば、I字状、L字状、U字状等が挙げられる。
調整部45を設けることにより、オカリナ10の音程を下げることができる。
【0053】
なお、本発明においては、補填部50を充填することで形成したが、補填部50の形成方法はこれに限らず、例えば補填部50を予め形成しておき、本体部の内側に設けてもよい。
【0054】
また、本発明においては、補填部50は本体部20内のみに設けられていたが、補填部50の少なくとも一部は、空気吹込み部40に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10・・・オカリナ、20・・・本体部、21・・・共鳴部、22,23,24,25,26,27,28,29,31,32・・・指穴、40・・・空気吹込部、41・・・吹口、42・・・歌口、43・・・気道、44・・・エッジ、45・・・調整部、50・・・補填部、51・・・孔。
図1
図2
図3
図4