(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126377
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】管継手部の止水構造、継ぎ輪、及び、管継手部の止水構造を用いた止水方法
(51)【国際特許分類】
F16L 41/12 20060101AFI20240912BHJP
F16L 21/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F16L41/12
F16L21/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034710
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】山本 大介
(72)【発明者】
【氏名】硲 大▲祐▼
【テーマコード(参考)】
3H019
【Fターム(参考)】
3H019DA03
3H019DA10
3H019DA16
3H019DA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】流体管に対して継ぎ輪を外嵌装着させた仮設状態において、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間を適切にシールする管継手部の止水構造、継ぎ輪、及び、管継手部の止水構造を用いた止水方法を提供する。
【解決手段】継ぎ輪3の機器接続側部位33の横断面形状が真円又は略真円に形成され、流体管1に対して継ぎ輪の管接続側部位32を外嵌装着させた仮設状態において、継ぎ輪の機器接続側部位に連結自在な止水装置100が備えられ、止水装置は、シール対象空間A1に対して流体管の管周方向の全長に亘って押し込み挿入自在な仮設用シール部材101と、その仮設用シール部材を押し込み挿入操作する操作部102とが備えられ、操作部は、流体管の管周方向において、3つ以上の分割操作部114に分割され、分割操作部の夫々が、各別に、仮設用シール部材を押し込み挿入操作自在に構成されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管と流体機器とに亘って密閉状態で外嵌装着される継ぎ輪が備えられ、
その継ぎ輪は、流体管の管軸芯方向において、流体管に接続する管接続側部位と流体機器に接続する機器接続側部位とを有し、その機器接続側部位の横断面形状が真円又は略真円に形成され、
前記流体管に対して継ぎ輪の管接続側部位を外嵌装着させた仮設状態において、継ぎ輪の機器接続側部位に連結自在であり、継ぎ輪の機器接続側部位にて流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間のシール対象空間をシールする止水装置が備えられ、
前記止水装置は、シール対象空間に対して流体管の管周方向の全長に亘って押し込み挿入自在な仮設用シール部材と、その仮設用シール部材を押し込み挿入操作する操作部とが備えられ、
前記操作部は、流体管の管周方向において、3つ以上の分割操作部に分割され、3つ以上の分割操作部の夫々が、各別に、仮設用シール部材を押し込み挿入操作自在に構成されている管継手部の止水構造。
【請求項2】
前記止水装置は、前記流体管の外周囲を囲む状態で装着されて、前記分割操作部を支持するための支持部が備えられ、
前記分割操作部は、支持部の分割数よりも多くに分割されている請求項1に記載の管継手部の止水構造。
【請求項3】
前記仮設用シール部材は、流体管の管軸芯方向で、前記分割操作部に当接する当接面部を有し、その当接面部からシール対象空間に接近する側に突出する凸形状に形成され、
前記分割操作部は、仮設用シール部材の当接面部に当接して、流体管の管軸芯方向でシール対象空間に接近する側に仮設用シール部材を押圧移動自在に備えられている請求項1又は2に記載の管継手部の止水構造。
【請求項4】
前記分割操作部にて流体管の管軸芯方向でシール対象空間に接近する側に仮設用シール部材を押圧移動する際に、流体管の径方向において、分割操作部の位置を調整自在な操作部位置調整部が備えられている請求項1又は2に記載の管継手部の止水構造。
【請求項5】
前記分割操作部にて流体管の管軸芯方向でシール対象空間に接近する側に仮設用シール部材を押圧移動する際に、前記操作部位置調整部による流体管の径方向での分割操作部の位置調整を可能としながら、分割操作部を流体管の管軸芯方向に案内する案内部が備えられている請求項4に記載の管継手部の止水構造。
【請求項6】
前記継ぎ輪の管接続側部位の横断面形状が、流体管の外面部における偏平輪郭形状に対応した偏平輪郭内面形状に形成され、
前記流体管に対して継ぎ輪の管接続側部位を外嵌装着させた仮設状態において、継ぎ輪の管接続側部位には、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間をシールする第1シール部材が備えられ、
前記止水装置は、仮設状態における流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間での水圧試験に用いられる水圧試験用治具として備えられている請求項1又は2に記載の管継手部の止水構造。
【請求項7】
流体管と流体機器とに亘って密閉状態で外嵌装着される継ぎ輪において、
継ぎ輪本体は、流体管の管軸芯方向において、流体管に接続する管接続側部位と流体機器に接続する機器接続側部位とが備えられ、
前記管接続側部位の横断面形状が、流体管の外面部における偏平輪郭形状に対応した偏平輪郭内面形状に形成され、
前記機器接続側部位の横断面形状が、真円又は略真円に形成され、
前記流体管に対して前記管接続側部位を外嵌装着させた仮設状態において、管接続側部位には、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間をシールする環状の第1シール部材が設置自在とされ、機器接続側部位には、継ぎ輪の機器接続側部位にて流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間のシール対象空間をシールする止水装置が連結自在とされ、
前記継ぎ輪本体は、管接続側部位と機器接続側部位との別部材を溶接接合することで構成されている継ぎ輪。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の管継手部の止水構造を用いた止水方法において、
前記流体管に対して継ぎ輪の管接続側部位を外嵌装着させる仮設状態とする継ぎ輪仮設工程と、
前記流体管の外面部が偏平輪郭形状である場合に、3つ以上の前記分割操作部の間での押し込み挿入量を異ならせる形態で、3つ以上の分割操作部の夫々を各別に押し込み挿入操作する押し込み挿入工程とを行う止水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管と流体機器とに亘って密閉状態で外嵌装着される継ぎ輪が備えられ、流体管に対して継ぎ輪を外嵌装着させた仮設状態において、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間をシールするための管継手部の止水構造、継ぎ輪、及び、管継手部の止水構造を用いた止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、流体管の途中部位に不断水状態で流体制御弁等の流体機器を設置する場合には、継ぎ輪仮設工程、ハウジング設置工程、切断工程、流体機器配置工程、継ぎ輪接続工程等の各工程を順次行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
まず、継ぎ輪仮設工程を行うことで、流体管における切断除去予定管部の両側に一対の継ぎ輪を設置している。ハウジング設置工程では、一対の継ぎ輪及び切断除去予定管部を含む流体管の一部を密閉外嵌する状態で、開閉操作自在な作業弁を有するハウジングを設置している。切断工程では、ハウジング内において切断装置にて切断除去予定管部を切断して除去し、流体機器配置工程では、切断除去予定管部に相当する位置に流体機器を配置している。継ぎ輪接続工程では、切断除去予定管部に相当する位置に配置された流体機器と切断除去予定管部の両側に位置する残置管部とを一対の継ぎ輪を用いて連通接続している。
【0004】
最初に継ぎ輪仮設工程を行うことで、流体管に対して継ぎ輪の管接続側部位を外嵌装着させた仮設状態としている。この仮設状態では、継ぎ輪の管接続側部位における流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間をシールする第1シール部材が備えられている。そのために、この第1シール部材等から流体の漏れがないかどうかを検査するために水圧試験装置を用いた水圧試験が行われている。この水圧試験にて流体の漏れがないことを確認した上で、次のハウジング設置工程が行われる。
【0005】
仮設状態の継ぎ輪では、流体機器が接続されていないので、管軸芯方向で管接続側部位とは反対側の機器接続側部位が開放状態となっている。そこで、水圧試験を行う際には、継ぎ輪の機器接続側部位において流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間をシールする試験用シール部材が装着されている。この試験用シール部材と第1シール部材とにより、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間に試験用閉塞空間を形成し、その試験用閉塞空間に試験水を供給して水圧試験を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、流体管が地中に埋設された水道管等である場合には、長期にわたる土圧等の影響を受けて横断面形状が真円から楕円形状等の偏平輪郭形状に変形している場合がある。特に、流体管が路面下に埋設されている場合には、車両の荷重等の影響を受けて大きな変形が発生している可能性がある。
【0008】
継ぎ輪の機器接続側部位は、流体機器と接続するために、通常、その横断面形状が真円又は略真円に形成されている。そのために、流体管に対して継ぎ輪の管接続側部位を外嵌装着させた仮設状態では、流体管の横断面形状が変形していると、継ぎ輪の機器接続側部位において、流体管の径方向における流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間の間隔が、管周方向の全長に亘って一定間隔にならず、その間隔が大きい部位と小さい部位とが存在することになる。例えば、流体管の横断面形状が楕円形状に変形した場合には、流体管の外径が短径となる部位で、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間の間隔が大きくなり、流体管の外径が長径となる部位で、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間の間隔が小さくなる。
【0009】
したがって、水圧試験等を行うために、継ぎ輪の機器接続側部位において流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間をシールする試験用シール部材を挿入したときに、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間の間隙に対する試験用シール部材の挿入量が、管周方向で一定量にならず、その挿入量が大きい部位と小さい部位とが存在することになる。そのために、シール部材の挿入量が小さい部位では、流体の漏洩が発生する可能性があり、水圧試験等を適切に行えなくなる等の問題が生じることになる。
【0010】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、流体管に対して継ぎ輪を外嵌装着させた仮設状態において、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間を適切にシールすることができる管継手部の止水構造、継ぎ輪、及び、管継手部の止水構造を用いた止水方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1特徴構成は、流体管と流体機器とに亘って密閉状態で外嵌装着される継ぎ輪が備えられ、
その継ぎ輪は、流体管の管軸芯方向において、流体管に接続する管接続側部位と流体機器に接続する機器接続側部位とを有し、その機器接続側部位の横断面形状が真円又は略真円に形成され、
前記流体管に対して継ぎ輪の管接続側部位を外嵌装着させた仮設状態において、継ぎ輪の機器接続側部位に連結自在であり、継ぎ輪の機器接続側部位にて流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間のシール対象空間をシールする止水装置が備えられ、
前記止水装置は、シール対象空間に対して流体管の管周方向の全長に亘って押し込み挿入自在な仮設用シール部材と、その仮設用シール部材を押し込み挿入操作する操作部とが備えられ、
前記操作部は、流体管の管周方向において、3つ以上の分割操作部に分割され、3つ以上の分割操作部の夫々が、各別に、仮設用シール部材を押し込み挿入操作自在に構成されている点にある。
【0012】
本構成によれば、仮設状態において、継ぎ輪の機器接続側部位に連結自在な止水装置は、仮設用シール部材と、その仮設用シール部材を押し込み挿入操作する操作部とが備えられているので、操作部にて仮設用シール部材をシール対象空間に押し込み挿入することで、継ぎ輪の機器接続側部位において、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間のシール対象空間をシールすることができる。
【0013】
しかも、本構成では、操作部が、3つ以上の分割操作部に分割され、それら3つ以上の分割操作部の夫々が、各別に、仮設用シール部材を押し込み挿入操作自在であるので、流体管の横断面形状が真円から楕円形状等の偏平輪郭形状に変形している場合でも、3つ以上の分割操作部の間で押し込み挿入量を異ならせることができる。例えば、流体管の横断面形状が楕円形状に変形している場合には、流体管の外径が短径となる部位に対応する分割操作部の押し込み操作量を大きくし、流体管の外径が長径となる部位に対応する分割操作部の押し込み操作量を小さくすることができる。
【0014】
このように、3つ以上の分割操作部の間で押し込み挿入量を異ならせることで、流体管の管周方向の全長に亘って、仮設用シール部材を適切な位置まで挿入させることができ、仮設用シール部材の挿入量が小さい部位が現出することを防止できる。よって、流体管の横断面形状が真円から楕円形状等の偏平輪郭形状に変形している場合でも、流体管に対して継ぎ輪を外嵌装着させた仮設状態において、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間のシール対象空間を適切にシールすることができる。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、前記止水装置は、前記流体管の外周囲を囲む状態で装着されて、前記分割操作部を支持するための支持部が備えられ、
前記分割操作部は、支持部の分割数よりも多くに分割されている点にある。
【0016】
本構成によれば、止水装置では、流体管の外周囲を囲む状態で装着される支持部にて分割操作部を支持することができるので、分割操作部を安定して支持することができる。流体管の外周囲を囲む状態で装着するために、例えば、支持部を二分割に構成することができる。それに対して、分割操作部は、支持部の分割数よりも多くに分割されているので、分割操作部を、流体管に装着するための分割数よりも多い3つ以上で、流体管の偏平輪郭形状に応じた適切な数に分割することができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、前記仮設用シール部材は、流体管の管軸芯方向で、前記分割操作部に当接する当接面部を有し、その当接面部からシール対象空間に接近する側に突出する凸形状に形成され、
前記分割操作部は、仮設用シール部材の当接面部に当接して、流体管の管軸芯方向でシール対象空間に接近する側に仮設用シール部材を押圧移動自在に備えられている点にある。
【0018】
本構成によれば、分割操作部は、仮設用シール部材の当接面部に当接して、流体管の管軸芯方向でシール対象空間に接近する側に仮設用シール部材を押圧移動することで、シール対象空間に仮設用シール部材を挿入させることができる。このとき、分割操作部が仮設用シール部材の当接面部に当接することで、分割操作部にてその当接面部の全体に対して押圧力を作用させることができ、シール対象空間に対して仮設用シール部材を適切に挿入させることができる。しかも、仮設用シール部材の形状自体も、当接面部からシール対象空間に接近する側に突出する凸形状に形成されているので、シール対象空間に挿入させ易い形状となっている。
【0019】
本発明の第4特徴構成は、前記分割操作部にて流体管の管軸芯方向でシール対象空間に接近する側に仮設用シール部材を押圧移動する際に、流体管の径方向において、分割操作部の位置を調整自在な操作部位置調整部が備えられている点にある。
【0020】
流体管の横断面形状が変形している場合には、流体管の管周方向において、流体管の径方向での分割操作部の位置が一定位置に定まらない。例えば、流体管の横断面形状が楕円形状に変形した場合には、流体管の外径が短径となる部位で、流体管の径方向での分割操作部の位置が流体管の外面部から離間する側となり、流体管の外径が長径となる部位で、流体管の径方向での分割操作部の位置が流体管の外面部に接近する側となる。
【0021】
そこで、本構成によれば、流体管の径方向において、分割操作部の位置を調整自在な操作部位置調整部が備えられているので、流体管の横断面形状が変形している場合でも、操作部位置調整部にて、流体管の径方向での分割操作部の位置を、仮設用シール部材を押圧移動させるための適切な位置に調整することができる。これにより、仮設用シール部材に対して分割操作部にて押圧移動させるための作用力を適切に作用させることができるので、シール対象空間に対して仮設用シール部材を適切に挿入させることができる。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、前記分割操作部にて流体管の管軸芯方向でシール対象空間に接近する側に仮設用シール部材を押圧移動する際に、前記操作部位置調整部による流体管の径方向での分割操作部の位置調整を可能としながら、分割操作部を流体管の管軸芯方向に案内する案内部が備えられている点にある。
【0023】
本構成によれば、案内部は、操作部位置調整部による流体管の径方向での分割操作部の位置調整を可能としながら、分割操作部を流体管の管軸芯方向に案内するので、その案内部の案内によって、流体管の径方向での位置調整を行いながら、分割操作部を流体管の管軸芯方向に沿ってシール対象空間に接近する側に適切に移動させることができる。これにより、分割操作部による仮設用シール部材の押圧移動も適切に行うことができるので、シール対象空間に対して仮設用シール部材を適切に挿入させることができる。
【0024】
本発明の第6特徴構成は、前記継ぎ輪の管接続側部位の横断面形状が、流体管の外面部における偏平輪郭形状に対応した偏平輪郭内面形状に形成され、
前記流体管に対して継ぎ輪の管接続側部位を外嵌装着させた仮設状態において、継ぎ輪の管接続側部位には、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間をシールする第1シール部材が備えられ、
前記止水装置は、仮設状態における流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間での水圧試験に用いられる水圧試験用治具として備えられている点にある。
【0025】
本構成によれば、継ぎ輪の管接続側部位の横断面形状が、流体管の外面部における偏平輪郭形状に対応した偏平輪郭内面形状に形成されているので、流体管に対して継ぎ輪の管接続側部位を外嵌装着させた仮設状態では、継ぎ輪の管接続側部位において、流体管の径方向における流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間の間隔が、管周方向の全長に亘って一定間隔となる。よって、第1シール部材にて、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間をシールすることができる。
【0026】
継ぎ輪の管接続側部位に備えられた第1シール部材等から流体の漏れがないかどうかを検査する水圧試験を行うことが求められる。このとき、止水装置が水圧試験用治具として備えられているので、止水装置の仮設用シール部材にて継ぎ輪の機器接続側部位におけるシール対象空間を適切にシールすることができる。よって、第1シール部材と仮設用シール部材とによって、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間に試験用閉塞空間を形成することができ、その試験用閉塞空間に試験水を供給して水圧試験を適切に行うことができる。
【0027】
本発明の第7特徴構成は、流体管と流体機器とに亘って密閉状態で外嵌装着される継ぎ輪において、
継ぎ輪本体は、流体管の管軸芯方向において、流体管に接続する管接続側部位と流体機器に接続する機器接続側部位とが備えられ、
前記管接続側部位の横断面形状が、流体管の外面部における偏平輪郭形状に対応した偏平輪郭内面形状に形成され、
前記機器接続側部位の横断面形状が、真円又は略真円に形成され、
前記流体管に対して前記管接続側部位を外嵌装着させた仮設状態において、管接続側部位には、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間をシールする環状の第1シール部材が設置自在とされ、機器接続側部位には、継ぎ輪の機器接続側部位にて流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間のシール対象空間をシールする止水装置が連結自在とされ、
前記継ぎ輪本体は、管接続側部位と機器接続側部位との別部材を溶接接合することで構成されている点にある。
【0028】
本構成によれば、継ぎ輪本体の管接続側部位の横断面形状が、流体管の外面部における偏平輪郭形状に対応した偏平輪郭内面形状に形成されているので、流体管に対して継ぎ輪本体の管接続側部位を外嵌装着させた仮設状態では、継ぎ輪本体の管接続側部位において、流体管の径方向における流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間の間隔が、管周方向の全長に亘って一定間隔となる。よって、環状の第1シール部材を設置することで、継ぎ輪の管接続側部位にて流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間をシールすることができる。
【0029】
また、流体管に対して継ぎ輪本体の管接続側部位を外嵌装着させた仮設状態では、継ぎ輪本体の機器接続側部位に止水装置を連結することで、継ぎ輪本体の機器接続側部位にて流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間のシール対象空間をシールすることができる。
【0030】
このように、流体管に対して継ぎ輪本体の管接続側部位を外嵌装着させた仮設状態において、継ぎ輪本体の管接続側部位及び機器接続側部位の両側にてシールすることができるので、流体管の外面部と継ぎ輪本体の内面部との間を適切にシールすることができる。
【0031】
しかも、継ぎ輪本体は、管接続側部位と機器接続側部位との別部材を溶接接合することで構成されているので、管接続側部位と機器接続側部位とを連結するためのフランジを形成しなくてもよく、コンパクト化を図ることができながら、継ぎ輪本体を容易に製作することができる。しかも、例えば、土圧や車両の荷重状態等の変化により、流体管の外面部における外形形状が変化しても、その変化後の外形形状に合わせて、継ぎ輪本体の管接続側部位を変形し直すだけでよく、流体管の外面部における外形形状の変化にも柔軟に対応することができる。
【0032】
本発明の第8特徴構成は、第1又は2特徴構成に記載の管継手部の止水構造を用いた止水方法において、
前記流体管に対して継ぎ輪の管接続側部位を外嵌装着させる仮設状態とする継ぎ輪仮設工程と、
前記流体管の外面部が偏平輪郭形状である場合に、3つ以上の前記分割操作部の間での押し込み挿入量を異ならせる形態で、3つ以上の分割操作部の夫々を各別に押し込み挿入操作する押し込み挿入工程とを行う点にある。
【0033】
本構成によれば、流体管の横断面形状が真円から楕円形状等の偏平輪郭形状に変形している場合でも、第1特徴構成と同様に、押し込み挿入工程を行うことで、3つ以上の分割操作部の間で押し込み挿入量を異ならせることができる。これにより、流体管の管周方向の全長に亘って、仮設用シール部材を適切な位置まで挿入させることができ、仮設用シール部材の挿入量が小さい部位が現出することを防止できる。よって、流体管の横断面形状が真円から楕円形状等の偏平輪郭形状に変形している場合でも、流体管に対して継ぎ輪を外嵌装着させた仮設状態において、流体管の外面部と継ぎ輪の内面部との間のシール対象空間を適切にシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】一対の継ぎ輪を設置した状態を示す半断面側面図
【
図2】水圧試験装置及び水圧試験用治具を設置した状態を示す判断面側面図
【
図3】ハウジング及び切断装置を設置した状態を示す側面図
【
図4】ハウジング及び流体機器配置装置を設置した状態を示す側面図
【
図5】一対の継ぎ輪にて流体機器と継ぎ輪とを連通接続する前の状態を示す側面図
【
図6】一対の継ぎ輪にて流体機器と継ぎ輪とを連通接続した状態を示す側面図
【
図7】
図6においてハウジングを取り外した状態を示す側面図
【
図9】
図2において、水圧試験装置及び水圧試験治具を拡大した拡大図
【
図12】(A)は、楕円形状に変形した流体管において、流体管の外径が短径となる部位での水圧試験治具を示す側面図、(B)は、楕円形状に変形した流体管において、流体管の外径が長径となる部位での水圧試験治具を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明に係る管継手部の止水構造、継ぎ輪、及び、その管継手部の止水構造を用いた止水方法を適用して、流体管に流体機器を設置する流体機器の設置方法について、図面に基づいて説明する。
この流体機器の設置方法は、
図8に示すように、流体管1の途中部位に不断水状態で流体制御弁等の流体機器2を設置する方法である。流体管1は、例えば、地中に埋設された既設の水道管等である。以下、流体管1の管軸芯方向Xを「管軸芯方向X」と略称し、流体管1の径方向Yを「径方向Y」と略称して説明する。
【0036】
この流体機器の設置方法では、
図1に示すように、流体管1に対して継ぎ輪3を外嵌装着させた仮設状態とし、
図2に示すように、水圧試験装置9及び水圧試験用治具100を用いて水圧試験を行っている。
図3に示すように、流体管1の途中部位を切断除去予定管部11とし、切断除去予定管部11を含む流体管1の一部をハウジング5にて密閉状態としている。
図3及び
図4に示すように、切断装置6にて切断除去予定管部11を切断して除去し、
図4に示すように、流体機器配置装置7にて切断除去予定管部11に代えて流体機器2を配置させ、
図5及び
図6に示すように、切断除去予定管部11の両側の残置管部12と流体機器2とをフィダー装置8にて一対の継ぎ輪3を用いて連通接続させている。
【0037】
このように、一対の継ぎ輪3、水圧試験装置9、水圧試験用治具100、ハウジング5、切断装置6、流体機器配置装置7、フィダー装置8等の各種の部材や装置を用いているので、まずは、各種の部材や装置について説明する。
【0038】
(継ぎ輪)
一対の継ぎ輪3は、
図8に示すように、流体管1の管軸芯方向Xで相対向する流体機器2と流体管1の残置管部12とを密封状態で連通接続するためのものである。継ぎ輪3は、流体管1に対して径方向Yの両側方から外嵌装着自在な管周方向で二分割された半円筒状の分割継ぎ輪ケース31から構成されている。各分割継ぎ輪ケース31の両端部同士が、溶接等により接合されている。ちなみに、各分割継ぎ輪ケース31の接合方向については、例えば、各分割継ぎ輪ケース31の周方向両端部に連結フランジ部を形成して、その連結フランジ同士をボルト・ナット等の締結具にて締め付け固定することで、分割継ぎ輪ケース31同士を接合することもできる。
【0039】
分割継ぎ輪ケース31(継ぎ輪3)は、
図1に示すように、流体管1に接続する管接続側部位32と流体機器2に接続する機器接続側部位33とを有している。管接続側部位32と機器接続側部位33との別部材を溶接による溶接接合部34により連結することで、分割継ぎ輪ケース31(継ぎ輪3)が構成されている。
【0040】
継ぎ輪3の管接続側部位32には、
図1に示すように、その内面部に、流体管1(残置管部12)の外面部と管接続側部位32(継ぎ輪3)の内面部との間をシールする第1シール部材C1が備えられている。第1シール部材C1は、管周方向の全長に亘る状態で配設されている。管軸芯方向Xで管接続側部位32の端部には、径方向Yの外方側に突出する管接続側フランジ35が備えられている。
図9に示すように、その管接続側フランジ35を形成するフランジ形成部35aは、径方向Yで最も内方側に配置されており、そのフランジ形成部35aが、管軸芯方向Xで第1シール部材C1と当接自在に備えられている。
【0041】
管軸芯方向Xで管接続側部位32の途中部には、
図1に示すように、水圧試験用の試験水を供給するための水圧試験用の注水口36が形成され、その注水口36には、密閉用のプラグ37が螺合装着されている。
図1に示すものでは、流体管1(残置管部12)の外面部と管接続側部位32(継ぎ輪3)の内面部との間隔を保持するためのスペーサーSが装着されている。
【0042】
継ぎ輪3の機器接続側部位33は、
図1に示すように、管接続側部位32よりも径方向Yで大径に形成されており、大径の機器接続側部位33によって、流体機器2を接続する接続口部が形成されている。管軸芯方向Xで機器接続側部位33の端部には、径方向Yの外方側に突出する機器接続側フランジ38が備えられている。
【0043】
(水圧試験装置及び水圧試験用治具)
水圧試験は、
図2に示すように、継ぎ輪3において、第1シール部材C1や溶接接合部34から流体の漏れがないかどうかを検査するための試験である。そのために、継ぎ輪3、第1シール部材C1、溶接接合部34、及び、水圧試験用治具100にて、試験用閉塞空間A2を形成し、その試験用閉塞空間A2に試験水を供給することで、水圧試験を行っている。ちなみに、
図2は、一対の継ぎ輪3のうち、一方側(
図1において左側)のみ図示している。
【0044】
水圧試験装置9は、
図2及び
図9に示すように、試験用閉塞空間A2に試験水を供給するための給水ホース91と、その給水ホース91の先端部に備えられた給水ノズル92と、圧力計93とが備えられている。水圧試験装置9は、給水ノズル92を継ぎ輪3の注水口36に接続することで、図外の給水源から給水ホース91を通して給水ノズル92にて、試験用閉塞空間A2に試験水を供給可能としている。尚、試験水供給の際は、別途、上部に設けられた排気ノズル(図示省略)でエアを排出しながら行う。試験用閉塞空間A2に試験水を供給した状態において、圧力計93にて試験用閉塞空間A2内の圧力を測定することで、流体の漏れがないかどうかを検査している。
【0045】
水圧試験用治具100は、
図9に示すように、仮設状態の継ぎ輪3において開放側となる機器接続側部位33にて、流体管1(残置管部12)の外面部12aと機器接続側部位33(継ぎ輪3)の内面部33aとの間を閉塞することで、試験用閉塞空間A2を形成している。
【0046】
水圧試験用治具100は、
図9に示すように、継ぎ輪3の機器接続側部位33において、流体管1(残置管部12)の外面部と機器接続側部位33(継ぎ輪3)の内面部との間のシール対象空間A1をシールする試験用シール部材101と、その試験用シール部材101をシール対象空間A1に押し込み挿入操作する操作部102とが備えられている。
【0047】
(ハウジング)
ハウジング5は、
図3に示すように、流体管1における切断除去予定管部11及び両側の残置管部12を密閉状態で囲むものである。ハウジング5は、
図3において、下方側に配置された第1ケース51と上方側に配置された第2ケース52とが備えられている。第1ケース51及び第2ケース52は、例えば、半割り状に形成され、流体管1における切断除去予定管部11及び両側の残置管部12を囲むように設置されている。第1ケース51と第2ケース52とは、ボルト・ナット等の締結具にて密閉状態で連結されている。
【0048】
第2ケース52には、
図3に示すように、径方向Yの外方側に延設された連結筒部53が一体形成されている。連結筒部53には、作業弁4の弁ケース41が密閉状態で装着されている。弁ケース41には、開閉移動自在な弁体42と、その弁体42を開閉操作する操作ハンドル43とが備えられている。弁ケース41には、上部タンク55が密閉状態で装着されており、その上部タンク55の上端部には、上部タンク55の上端部を閉塞する蓋部56が備えられている。
【0049】
第2ケース52の連結筒部53と作業弁4の弁ケース41とは、連結筒部53のケース側フランジ54と弁ケース41の作業弁側第1フランジ44とをボルト・ナット等の締結具にて締め付け固定することで、密閉状態で連結されている。作業弁4の弁ケース41と上部タンク55とは、弁ケース41の作業弁側第2フランジ45と上部タンク55のタンク側第1フランジ57とをボルト・ナット等の締結具にて締め付け固定することで、密閉状態で連結されている。上部タンク55と蓋部56とは、上部タンク55のタンク側第2フランジ58と蓋部56の蓋部側フランジ59とをボルト・ナット等の締結具にて締め付け固定することで、密閉状態で連結されている。
【0050】
上部タンク55の蓋部56には、
図3に示すように、昇降筒軸62が昇降自在に備えられている。昇降筒軸62の先端部には、
図3に示すように、切断装置6の切断機61を固定連結したり、
図4に示すように、流体機器2の弁ケース21を固定連結できるように構成されている。
【0051】
(流体機器)
流体機器2は、例えば、バタフライ弁や仕切弁等の流体制御弁であり、
図4に示すように、弁体等が収納された弁ケース21が備えられている。弁ケース21の両側面には、流体管1の残置管部12と連通接続するための接続管部22が一体形成されている。
【0052】
(切断装置)
切断装置6は、
図3に示すように、ハウジング5内において切断除去予定管部11を切断して、その切断除去予定管部11をハウジング5外に除去するためのものである。切断装置6は、切断除去予定管部11を切断する切断機61が備えられ、その切断機61が、昇降筒軸62の先端部に固定連結されている。昇降筒軸62の上部には、昇降筒軸62を介して切断機61を駆動する電動モータ63が備えられている。
【0053】
(流体機器配置装置)
流体機器配置装置7は、
図4に示すように、流体管1の切断除去予定管部11(
図3参照)が除去された位置に流体機器2を配置させるためのものである。流体機器配置装置7は、昇降筒軸62を用いており、その昇降筒軸62の先端部に流体機器2の弁ケース21が固定連結されている。流体機器配置装置7は、弁ケース21が固定連結された昇降筒軸62を昇降させることで、流体管1の切断除去予定管部11(
図3参照)が除去された位置に弁ケース21を配置させている。
【0054】
(フィダー装置)
フィダー装置8は、
図5及び
図6に示すように、ハウジング5の外部での操作により、各残置管部12に装着されている継ぎ輪3を流体機器2に亘る継ぎ目部まで管軸芯方向Xに摺動させるものである。フィダー装置8は、第1ケース51及び第2ケース52の側壁部を密封状態で貫通する操作ネジ軸81が備えられている。操作ネジ軸81の端部は、継ぎ輪3の管接続側部位32における管接続側フランジ35に連結され、ネジ式操作機構(図示省略)等により操作ネジ軸81を管軸芯方向Xに沿って押し引き操作することで、継ぎ輪3を管軸芯方向Xに摺動させている。
【0055】
以下、本発明に係る管継手部の止水構造、及び、継ぎ輪について説明する。
【0056】
流体管1が地中に埋設された水道管等である場合には、長期にわたる土圧等の影響を受けて横断面形状が真円から楕円形状等の偏平輪郭形状に変形している場合がある。例えば、土圧や車両の荷重等により、上下方向が短径となり、左右方向が長径となる楕円形状に変形している場合がある。そのために、流体管1の残置管部12に接続する継ぎ輪3は、流体管1の変形に対応することが求められる。それに対して、継ぎ輪3は、流体管1と反対側に流体機器2が連通接続されており、流体機器2の接続管部22(
図4参照)は、通常、その横断面形状が真円又は略真円に形成されている。したがって、継ぎ輪3としては、横断面形状が異なる流体管1と流体機器2の接続管部22との夫々に対応しながら、流体機器2の接続管部22と流体管1の残置管部12とを密封状態で連通接続することが求められている。
【0057】
そこで、
図1及び
図9に示すように、継ぎ輪3が、流体管1に接続する管接続側部位32と流体機器2に接続する機器接続側部位33とを有しており、管接続側部位32が、流体管1の残置管部12の形状に対応しており、機器接続側部位33が、流体機器2の接続管部22(
図4参照)の形状に対応している。管接続側部位32の横断面形状が、流体管1(残置管部12)の外面部における偏平輪郭形状に対応した偏平輪郭内面形状に形成され、機器接続側部位33の横断面形状が、流体機器2の接続管部22(
図4参照)に対応した真円又は略真円に形成されている。
【0058】
管接続側部位32については、流体管1(残置管部12)の外面部における偏平輪郭形状データに基づいて、横断面形状が真円又は略真円に形成された継ぎ輪3を加工設備等によって変形加工することで、その横断面形状を流体管1(残置管部12)の外面部における偏平輪郭形状に対応した偏平輪郭内面形状としている。流体管1(残置管部12)の外面部における偏平輪郭形状データについては、実際に、流体管1(残置管部12)に外径計測装置を取り付けて、最小外径相当部位及び最大外径相当部位を含む管周方向複数箇所の外径を実測して、偏平輪郭形状データを取得している。
【0059】
継ぎ輪3は、
図9に示すように、横断面形状が異なる管接続側部位32と機器接続側部位33とを溶接による溶接接合部34にて連結して構成されている。これにより、管接続側部位32と機器接続側部位33とを連結するためのフランジを形成しなくてもよく、コンパクト化を図ることができながら、継ぎ輪3を容易に製作することができる。しかも、例えば、土圧等の変化により、流体管1の外面部における外形形状が変化しても、その変化後の外形形状に合わせて、継ぎ輪3の管接続側部位32を変形加工し直すだけでよく、流体管1の外面部における外形形状の変化にも柔軟に対応することができる。
【0060】
このように、継ぎ輪3における管接続側部位32の横断面形状が、
図9に示すように、流体管1(残置管部12)の外面部における偏平輪郭形状に対応した偏平輪郭内面形状に形成されているので、管接続側部位32において、流体管1(残置管部12)の外面部と管接続側部位32(継ぎ輪3)の内面部との間の間隔が、管周方向の全長に亘って一定間隔となる。よって、断面形状が円形状の第1シール部材C1を、流体管1(残置管部12)の外面部と管接続側部位32(継ぎ輪3)の内面部との間に管周方向の全長に亘って環状に配設することで、流体管1(残置管部12)の外面部と管接続側部位32(継ぎ輪3)の内面部との間を適切にシールすることができる。
【0061】
図2及び
図9に示すように、流体管1に対して継ぎ輪3の管接続側部位32を外嵌装着させた仮設状態において水圧試験を行う場合には、水圧試験用治具100にて、継ぎ輪3の開放側となる機器接続側部位33を閉塞している。継ぎ輪3の機器接続側部位33における横断面形状は、真円又は略真円に形成されているので、残置管部12(流体管1)の外面部が偏平輪郭形状となっていると、残置管部12の外面部と機器接続側部位33(継ぎ輪3)の内面部との間の間隔が、管周方向の全長に亘って一定間隔にならない。
【0062】
例えば、残置管部12の横断面形状が楕円形状に変形した場合には、
図12(A)に示すように、その残置管部12の外径が短径となる部位で、残置管部12の外面部12aと機器接続側部位33の内面部33aとの間の間隔D1が大きくなる。それに対して、
図12(B)に示すように、残置管部12の外径が長径となる部位で、残置管部12の外面部12aと機器接続側部位33の内面部33aとの間の間隔D2が小さくなる。
【0063】
このように、残置管部12の外面部12aと機器接続側部位33の内面部33aとの間の間隔の大きさが管周方向で異なると、管周方向の全長に亘って一律にシール部材を挿入させても、その挿入量が小さくなる部位が存在してしまい、残置管部12の外面部12aと機器接続側部位33の内面部33aとの間をシールできなくなる可能性がある。
【0064】
そこで、水圧試験用治具100(止水装置に相当する)は、
図9に示すように、管周方向の全長に亘って環状に配設された試験用シール部材101(仮設用シール部材に相当する)と、その試験用シール部材101をシール対象空間A1に押し込み挿入操作する操作部102とが備えられているのに加えて、操作部102が、管周方向の全周に亘って連続して一体的に備えられているのではなく、管周方向において、3つ以上の分割操作部114に分割されている。
【0065】
3つ以上の分割操作部114の夫々は、
図9に示すように、試験用シール部材101に当接する板状の分割操作押輪103と、その分割操作押輪103を押圧して押し込み移動させる押圧部108とが備えられている。ちなみに、
図9は、分割された3つ以上の分割操作部114のうちの1つを図示している。
【0066】
図10に示すように、分割操作押輪103は、管周方向において、3つ以上に分割されており、それら3つ以上の分割操作押輪103の夫々は、管周方向で分割された扇形状に形成されている。この実施形態では、分割操作押輪103が、管周方向で8つに分割されているものを例示したが、いくつの分割操作押輪103に分割するかは適宜変更が可能である。
【0067】
図10に示すものでは、管周方向の長さが大きい第1分割操作押輪103aと小さい第2分割操作押輪103bとの管周方向での長さの異なる複数の分割操作押輪103が備えられている。第1分割操作押輪103aは、上下左右の4箇所に配設され、第2分割操作押輪103bは、上下左右の中間部の4箇所に配設されている。例えば、土圧や車両の荷重等により、上下方向が短径となり、左右方向が長径となる楕円形状に流体管1の外形形状が変形している場合が考えられるので、その変形形状に対応して、短径となる上方側部位と下方側部位、及び、長径となる左側部位と右側部位との4つに少なくとも分割することが考えられる。
【0068】
図9に示すように、押圧部108を管軸芯方向Xに案内支持するために、流体管1(残置管部12)の外周囲を囲む状態で装着された水圧試験用押輪105(支持部に相当する)が備えられている。水圧試験用押輪105は、
図11に示すように、管周方向で二分割された半円形状に形成されており、その両端部に備えられた連結フランジ113同士がボルト・ナット等の締結具にて締め付け固定されている。
図9に示すように、水圧試験用押輪105のボルト取付部112には、残置管部12(流体管1)の外面部12aに当接して芯出しを行う芯出しボルト111が配設されている。水圧試験用押輪105には、
図11に示すように、管周方向において一定間隔を隔てて複数のボルト取付部112が備えられており、図示は省略するが、複数のボルト取付部112の夫々に、芯出しボルト111が配設されている。
【0069】
図9に示すように、管軸芯方向Xにおいて継ぎ輪3から離間する側(
図9において右側)には、分割操作押輪103、水圧試験用押輪105の順に並ぶように配設されている。押圧部108は、水圧試験用押輪105に形成された第1孔部106に挿通させて、水圧試験用押輪105を貫通する状態で備えられている。押圧部108は、例えば、ジャッキボルトにて構成されており、水圧試験用押輪105に備えられたナットNに螺合する状態で配設されている。押圧部108を回転操作することで、ナットNとの螺合により押圧部108を管軸芯方向X(
図9において左右方向)に移動自在に構成されている。
【0070】
このようにして、押圧部108を管軸芯方向Xに移動させることで、試験用シール部材101に当接する分割操作押輪103を押し込み移動させて、シール対象空間A1に試験用シール部材101を押し込み挿入させている。
【0071】
図11に示すように、環状の水圧試験用押輪105に形成された第1孔部106、及び、その第1孔部106に対応して備えられたナットNは、管周方向で一定間隔を隔てて複数配設されている。それに対して、押圧部108は、
図9に示すように、複数の第1孔部106の夫々、及び、複数のナットNの夫々に対して配設されており、
図2に示すように、押圧部108も、管周方向で一定間隔を隔てて複数配設されている。これにより、3つ以上に分割された分割操作押輪103の夫々に対応する状態で、複数の押圧部108が配設されている。
【0072】
図9及び
図11に示すように、管周方向で分割された3つ以上の分割操作押輪103の夫々に対して、各別に複数の押圧部108にて押圧することで、3つ以上の分割操作押輪103の夫々を、各別に、管軸芯方向Xに押し込み移動自在となっている。このようにして、3つ以上の分割操作部114の夫々は、各別に、試験用シール部材101を押し込み挿入操作自在に構成されている。
【0073】
ここで、分割操作押輪103(分割操作部114)の分割数について、例えば、8つに分割されており、管周方向で二分割に構成された水圧試験用押輪105の分割数よりも多くに分割されている。これにより、分割操作部114を、流体管1に装着するための分割数(二分割)よりも多い3つ以上で、流体管1の偏平輪郭形状に応じた適切な数に分割することができる。
【0074】
水圧試験用押輪105は、
図9に示すように、貫通ボルト109とナットNとによる締め付け固定により継ぎ輪3に連結固定されている。水圧試験用押輪105には、
図9及び
図11に示すように、第1孔部106に加えて、第2孔部107が形成されている。第1孔部106と第2孔部107とは、第2孔部107が径方向Yの外側に位置する状態で、径方向Yに並ぶ状態で配設されている。
図11に示すように、第1孔部106と第2孔部107との2つの孔部は、管周方向に一定間隔を隔てて複数配設されている。
【0075】
貫通ボルト109は、
図9に示すように、水圧試験用押輪105に形成された第2孔部107と継ぎ輪3の機器接続側フランジ38に形成されたフランジ孔部38aとを貫通する状態で配設されている。貫通ボルト109は、T字形状に形成されており、左右方向に延設された頭部109aを機器接続側フランジ38に当接させる状態とし、その貫通ボルト109の頭部109aとナットNとにより機器接続側フランジ38と水圧試験用押輪105とを挟み込む状態で締め付け固定されている。
【0076】
押圧部108は、
図9に示すように、水圧試験用押輪105に形成された第1孔部106及びナットN等によって管軸芯方向Xに案内支持されている。貫通ボルト109は、分割操作押輪103を貫通する状態で備えられており、分割操作押輪103についても、貫通ボルト109によって管軸芯方向Xに案内されている。よって、押圧部108や分割操作押輪103等により構成された分割操作部114を管軸芯方向Xに案内する案内部110が、水圧試験用押輪105や貫通ボルト109にて構成されている。
【0077】
分割操作押輪103には、
図9に示すように、試験用シール部材101よりも径方向Yの外方側(
図9において上方側)に、貫通ボルト109が貫通する分割操作押輪用孔部104が形成されている。分割操作押輪用孔部104は、
図9及び
図10に示すように、貫通ボルト109の外径よりも大きく、径方向Yに延びる長孔形状に形成されている。ちなみに、
図10では、右下方側の拡大図において、分割操作押輪用孔部104を貫通する貫通ボルト109を点線にて示している。これにより、貫通ボルト109が径方向Yに長い分割操作押輪用孔部104内で移動可能となっており、分割操作押輪103は、貫通ボルト109が貫通された状態において、径方向Yに移動自在に備えられている。分割操作押輪用孔部104は、径方向Yにおいて、分割操作部114を構成する分割操作押輪103の位置を調整自在な操作部位置調整部として備えられている。
【0078】
分割操作部114にて試験用シール部材101を押圧移動する際には、
図9に示すように、貫通ボルト109と分割操作押輪用孔部104との作用により分割操作押輪103の径方向Yでの位置調整を可能としながら、案内部110によって、分割操作押輪103及び押圧部108の双方を管軸芯方向Xに案内している。これにより、分割操作押輪103の径方向Yでの移動を許容しながら、分割操作押輪103を管軸芯方向Xに案内させることができるので、その分割操作押輪103にて試験用シール部材101に対して適切な押圧力を作用させることができる。
【0079】
分割操作押輪用孔部104については、
図10に示すように、3つ以上の分割操作押輪103の夫々に複数の分割操作押輪用孔部104が配設されている。1つの分割操作押輪103に配設された複数の分割操作押輪用孔部104の夫々は、その長手方向が同一方向となっており、分割操作押輪103が、複数の分割操作押輪用孔部104によって、一定の方向にスムーズに移動するようになっている。これにより、分割操作押輪103は、他の分割操作押輪103と干渉することなく、径方向Yに移動することができるので、3つ以上の分割操作押輪103の夫々は、
図10において矢印にて示すように、各別に、径方向Yに移動自在に備えられている。
【0080】
このようにして、分割された3つ以上の分割操作部114の夫々は、
図9に示すように、例えば、押圧部108の回転操作量を変更させる等により、3つ以上の分割操作部114の間で押し込み挿入量を異ならせることができる。よって、
図12に示すように、残置管部12(流体管1)の横断面形状が楕円形状等の偏平輪郭形状に変形している場合には、3つ以上の分割操作部114の間で押し込み挿入量を、その形状に対応した挿入量としている。例えば、残置管部12(流体管1)の横断面形状が楕円形状に変形している場合に、残置管部12の外径が短径となる部位について
図12(A)にて示しており、残置管部12の外径が長径となる部位について
図12(B)にて示している。
【0081】
図12(A)に示すように、残置管部12の外径が短径となる部位では、残置管部12の外面部12aと機器接続側部位33の内面部33aとの間の間隔D1が大きくなっているので、分割操作部114の押し込み挿入量を大きくして、シール対象空間A1に対して適切な位置まで試験用シール部材101を挿入させている。それに対して、
図12(B)に示すように、残置管部12の外径が長径となる部位では、残置管部12の外面部12aと機器接続側部位33の内面部33aとの間の間隔D2が小さくなっているので、分割操作部114の押し込み挿入量を小さくして、シール対象空間A1に対して適切な位置まで試験用シール部材101を挿入させている。
【0082】
このようにして、残置管部12の外面部12aと機器接続側部位33の内面部33aとの間の間隔の大きさに応じて、分割操作部114の押し込み挿入量を変更させている。よって、残置管部12(流体管1)の横断面形状が楕円形状等の偏平輪郭形状に変形している場合でも、管周方向の全周に亘って、
図12に示すように、継ぎ輪3の機器接続側部位33の端部に形成された機器接続側傾斜面33bによって、シール対象空間A1内に試験用シール部材101を案内しながら、その試験用シール部材101を圧縮変形させる状態で、試験用シール部材101を適切な位置まで押し込み挿入させている。ちなみに、
図12では、試験用シール部材101を模式的に図示しており、圧縮変形された状態の試験用シール部材101の図示は省略している。
【0083】
試験用シール部材101は、
図9に示すように、その断面形状が円形状ではなく、分割操作押輪103と当接する平坦状の当接面部101aを有し、その当接面部101aからシール対象空間A1に接近する側に突出する凸形状に形成されている。試験用シール部材101に対して分割操作押輪103にて押圧力を作用させる際に、試験用シール部材101の平坦状の当接面部101aの全体に対して押圧力を作用させて、その押圧力を作用させる部位の面積をより大きくすることができるので、押圧力をより効率よく作用させることができる。
【0084】
図9に示すように、分割操作押輪用孔部104と貫通ボルト109とによって、分割操作押輪103が径方向Yに移動自在に備えられているので、
図12に示すように、残置管部12(流体管1)の横断面形状が楕円形状等の偏平輪郭形状に変形している場合には、分割操作押輪103を径方向Yで位置調整することができる。
【0085】
図12(A)に示すように、残置管部12の外径が短径となる部位では、径方向Y(
図12(A)において上下方向)で試験用シール部材101の当接面部101aの全体に対して分割操作押輪103が当接する適切当接位置となるように、分割操作押輪103の位置を径方向Yの内方側(
図12(A)において下方側)に位置調整している。このとき、分割操作押輪用孔部104内では、貫通ボルト109が、径方向Yの外方側(
図12(A)において上方側)に移動して、分割操作押輪用孔部104の側壁部に当接している。
【0086】
逆に、
図12(B)に示すように、残置管部12の外径が長径となる部位では、径方向Y(
図12(B)において上下方向)で試験用シール部材101の当接面部101aの全体に対して分割操作押輪103が当接する適切当接位置となるように、分割操作押輪103の位置を径方向Yの外方側(
図12(B)において上方側)に位置調整している。このとき、分割操作押輪用孔部104内では、貫通ボルト109が、径方向Yの内方側(
図12(B)において下方側)に移動して、分割操作押輪用孔部104の側壁部に当接している。
【0087】
このようにして、残置管部12(流体管1)の横断面形状が楕円形状等の偏平輪郭形状に変形している場合でも、径方向Yでの分割操作押輪103の位置調整により、試験用シール部材101の当接面部101aの全体に対して分割操作押輪103が当接する適切当接位置とした状態で、分割操作押輪103にて試験用シール部材101を押圧移動させることができる。
【0088】
以下、流体機器の設置方法における工程について説明する。
この弁設置方法では、継ぎ輪仮設工程、水圧試験、ハウジング設置工程、切断工程、流体機器配置工程、継ぎ輪接続工程、継ぎ輪固定工程の各工程を順次行っている。
【0089】
(継ぎ輪仮設工程)
継ぎ輪仮設工程では、
図1に示すように、流体管1における切断除去予定管部11の両側に一対の継ぎ輪3を外嵌状態で設置して仮設状態としている。流体管1において切断除去予定管部11の両側に残置管部12が存在するので、その残置管部12の夫々に対して、継ぎ輪3を流体管1の管軸芯方向Xに摺動自在に外嵌している。
【0090】
(水圧試験)
水圧試験は、
図2に示すように、流体管1に継ぎ輪3を外嵌状態で設置した仮設状態において、水圧試験装置9と水圧試験用治具100とを設置して行う。上述の如く、
図12に示すように、仮設状態では、残置管部12の外面部12aと機器接続側部位33の内面部33aとの間の間隔の大きさが管周方向で異なるので、
図1に示すように、流体管1(残置管部12)の外面部と管接続側部位32(継ぎ輪3)の内面部との間にスペーサーSを装着することで、仮設状態での継ぎ輪3の姿勢を安定させている。スペーサーSは、例えば、管周方向で所定の間隔を隔てる状態で複数配設されている。
【0091】
スペーサーSは、例えば、弾性変形自在な材料にて構成されている。流体管1(残置管部12)の外面部と管接続側部位32(継ぎ輪3)の内面部との間隔が管周方向で異なる場合でも、スペーサーSを弾性変形させることで、その間隔を適切に保持することができる。このようにして、スペーサーSを装着することで、継ぎ輪3を安定した姿勢として、水圧試験を行うことができる。
【0092】
図9に示すように、まず、分割操作押輪103及び水圧試験用押輪105等の各種の部材を取り付けることで、水圧試験用治具100を設置している。水圧試験用治具100を設置する際には、操作部102にて試験用シール部材101を押し込み挿入操作するが、上述の如く、流体管1の横断面形状が楕円形状等の偏平輪郭形状に変形している場合には、管周方向の全長に亘って一律に試験用シール部材101を挿入させても、その挿入量が小さくなる部位が存在してしまい、適切にシールできなくなる可能性がある。
【0093】
そこで、3つ以上の分割操作部114の間での押し込み挿入量を異ならせる形態で、3つ以上の分割操作部114の夫々を各別に押し込み挿入操作する押し込み挿入工程を行う。この押し込み挿入工程を行うことで、
図12に示すように、残置管部12(流体管1)の外面部12aと機器接続側部位33の内面部33aとの間の間隔の大きさに応じて、分割操作部114の押し込み挿入量を変更させている。
【0094】
例えば、流体管1の横断面形状が楕円形状に変形している場合には、
図12(A)に示すように、残置管部12の外径が短径となる部位において、残置管部12の外面部12aと機器接続側部位33の内面部33aとの間の間隔D1が大きいので、それに対応して分割操作部114の押し込み挿入量を大きくしている。それに対して、
図12(B)に示すように、残置管部12の外径が長径となる部位において、残置管部12の外面部12aと機器接続側部位33の内面部33aとの間の間隔D2が小さいので、それに対応して分割操作部114の押し込み挿入量を小さくしている。
【0095】
このように、3つ以上の分割操作部114の間での押し込み挿入量を異ならせた押し込み挿入工程を行うことで、
図12に示すように、シール対象空間A1を試験用シール部材101にて適切にシールすることができ、第1シール部材C1と試験用シール部材101とにより閉塞された試験用閉塞空間A2を形成することができる。
【0096】
図9に示すように、試験用閉塞空間A2を形成すると、継ぎ輪3の管接続側部位32における注水口36に水圧試験装置9の給水ノズル92を接続し、給水ホース91を通して給水ノズル92にて、試験用閉塞空間A2に試験水を供給する。試験用閉塞空間A2に試験水を供給した状態において、圧力計93にて試験用閉塞空間A2内の圧力を測定して流体の漏れがないかどうかを確認することで、継ぎ輪3において、第1シール部材C1や溶接接合部34から流体の漏れがないかどうかを検査する水圧試験を行っている。
【0097】
(ハウジング設置工程)
ハウジング設置工程では、
図3に示すように、一対の継ぎ輪3及び切断除去予定管部11を含む流体管1の一部を密閉外嵌する状態でハウジング5を設置している。ハウジング5として、第1ケース51、第2ケース52、作業弁4の弁ケース21、上部タンク55等が備えられている。例えば、まず、第1ケース51を設置して、その第1ケース51の上部開口部を閉塞する状態で第2ケース52を設置して、第1ケース51と第2ケース52とをボルト・ナット等の締結具により締め付け固定している。第1ケース51及び第2ケース52を設置するときに、第1ケース51及び第2ケース52の管軸芯方向Xの両側壁部にフィダー装置8を組み付けておくことができる。
【0098】
次に、
図3に示すように、第2ケース52に対して作業弁4の弁ケース41を設置し、その弁ケース41に対して上部タンク55を設置し、最後に、上部タンク55に対して蓋部56を設置している。弁ケース41、上部タンク55、蓋部56等の各部材を設置する際には、上述のハウジング5の構成にて説明した如く、フランジ同士をボルト・ナット等の締結具により締め付け固定することで、密閉状態で設置している。
【0099】
(切断工程)
切断工程では、
図3に示すように、ハウジング5内において切断装置6にて切断除去予定管部11を切断して除去している。切断装置6の切断機61は、ハウジング設置工程において第1ケース51を設置する前等に、切断除去予定管部11に対して予め取り付けておくことができる。ハウジング設置工程において蓋部56を取り付ける際に、その蓋部56に昇降自在に支持された昇降筒軸62の先端部に切断機61を固定連結している。
【0100】
図3に示すように、作業弁4の弁体42を開き操作した状態で昇降筒軸62を下降させて切断機61にて切断除去予定管部11を切断している。昇降筒軸62を上昇させて、切断された切断除去予定管部11及び切断機61を上部タンク55まで上昇させている。その後、作業弁4の弁体42を閉じ操作した状態で、蓋部56を取り外して、切断された切断除去予定管部11及び切断機61を除去している。
【0101】
(流体機器配置工程)
流体機器配置工程では、
図4に示すように、切断工程にて切断して除去された切断除去予定管部11に相当する位置に流体機器2を配置させている。昇降筒軸62の先端部に流体機器2を固定連結して、昇降筒軸62が昇降自在に支持された蓋部56を取り付ける。作業弁4の弁体42を開き操作した状態で昇降筒軸62を下降させて、切断除去予定管部11が切断して除去された箇所に対して流体機器2を挿入する。流体機器2の両接続管部22が両残置管部12と同芯位置又は略同芯位置に到達するまで、流体機器2を挿入させて、流体機器2を切断除去予定管部11に相当する位置に配置させている(
図5参照)。
【0102】
(継ぎ輪接続工程)
継ぎ輪接続工程では、
図5及び
図6に示すように、ハウジング5の管軸芯方向Xの両側部に組み付けられているフィダー装置8により、切断除去予定管部11に相当する位置に配置された流体機器2と残置管部12とを一対の継ぎ輪3を用いて連通接続させる。
図5は、流体機器2と残置管部12とを継ぎ輪3にて連通接続する前の状態を示しており、
図6は、流体機器2と残置管部12とを継ぎ輪3にて連通接続した状態を示している。
【0103】
図5において、フィダー装置8の操作ネジ軸81を同時に同方向に同量だけ押し込み操作して、
図6に示すように、各残置管部12に装着されている継ぎ輪3を流体機器2の接続管部22に亘る継ぎ目部まで管軸芯方向Xに摺動させる。このとき、
図5に示すように、流体機器2の接続管部22の外面部には、環状の第3シール部材C3が配設されている。
図6に示すように、継ぎ輪3を継ぎ目部まで管軸芯方向Xに摺動させると、継ぎ輪3の内面部と流体機器2の接続管部22の外面部との間が第3シール部材C3にてシールされる。第3シール部材C3は、継ぎ輪3の機器接続側部位33に形成された機器接続側傾斜面33bによって、径方向Yの内方側に案内されながら圧縮変形されて、継ぎ輪3の内面部と流体機器2の接続管部22の外面部との間を適切にシールしている。ちなみに、流体機器配置工程において、切断除去予定管部11に相当する位置に流体機器2を配置させるときに、接続管部22の外面部に第3シール部材C3を装着させているが、
図4では、第3シール部材C3を省略して図示している。
【0104】
(継ぎ輪固定工程)
継ぎ輪固定工程では、
図3にて示された、蓋部56,上部タンク55、作業弁4の弁ケース41、第2ケース52、第1ケース51等を順次撤去して、一対の継ぎ輪3を固定している。
図7に示すように、継ぎ輪3の管接続側部位32の内面部と残置管部12の外周面との間の環状隙間には、管周方向の全長に亘る状態で第2シール部材C2が装着され、その第2シール部材C2を密閉状態に圧縮する環状の押輪201が残置管部12に外嵌装着されている。押輪201を装着することで、継ぎ輪3の管接続側部位32の端部に形成された管接続側傾斜面32b(
図9参照)によって、第2シール部材C2を径方向Yの内方側に案内しながら圧縮変形させて、継ぎ輪3の管接続側部位32の内面部と残置管部12の外周面との間を適切にシールしている。
【0105】
図8に示すように、流体機器2の流体機器側フランジ23と継ぎ輪3の機器接続側フランジ38とをボルトB・ナットN等の締結具にて固定連結されている。管軸芯方向Xで押輪201に隣接する位置には、環状の抜け止めリング202が残置管部12の外周部に溶接固定されている。継ぎ輪3の管接続側フランジ35と押輪201と抜け止めリング202とを、ボルトB・ナットN等の締結具にて固定連結することで、一体化が図られている。流体機器2の弁ケース21には、減速機203が取り付けられている。
【0106】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0107】
(1)上記実施形態では、本発明における止水装置を、水圧試験にて用いる水圧試験用治具100として備えているが、水圧試験に限らず、流体管1に対して継ぎ輪3を外嵌装着させた仮設状態において、継ぎ輪3の開放側を止水したい場合に水圧試験用治具100を用いることができる。
【0108】
(2)上記実施形態では、貫通ボルト109を貫通させるために、分割操作押輪103に形成された分割操作押輪用孔部104を径方向Yに長い長孔形状としているが、例えば、分割操作押輪用孔部104を、貫通ボルト109の外径よりも少し大きい円形状に形成することもでき、どのような形状とするかは適宜変更が可能である。
【0109】
(3)上記実施形態では、試験用シール部材101の形状を、当接面部101aからシール対象空間A1に接近する側に突出する凸形状に形成しているが、凸形状に限らず、例えば、円形状に形成することもでき、どのような形状とするかは適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 流体管
2 流体機器
3 継ぎ輪
32 管接続側部位
33 機器接続側部位
100 水圧試験用治具(止水装置)
101 試験用シール部材(仮設用シール部材)
101a 当接面部
102 操作部
103 分割操作押輪(分割操作部)
104 分割操作押輪用孔部(操作部位置調整部)
105 水圧試験用押輪(支持部)
108 押圧部(分割操作部)
110 案内部
114 分割操作部
A1 シール対象空間
C1 第1シール部材