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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126384
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20240912BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240912BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K8/67
A61Q19/00
A61K8/9789
A61K8/81
A61K8/60
A61K8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034720
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 蓉子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 理一
(72)【発明者】
【氏名】寺西 諒真
(72)【発明者】
【氏名】梅原 美奈
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 明子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC662
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD042
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD352
4C083AD391
4C083AD392
4C083AD631
4C083AD632
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE05
4C083EE06
4C083EE11
(57)【要約】
【課題】ナイアシンアミドを含有しながらも、使用感に優れた皮膚化粧料を提供すること。
【解決手段】下記(A)~(D)を含む皮膚化粧料。
(A)ナイアシンアミド 3~8質量%
(B)ツボクサエキス
(C)(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー
(D)ラフィノース、グルコース、ソルビトール、メチルグルセス-10からなる群から選ばれる1つ以上
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)を含む皮膚化粧料。
(A)ナイアシンアミド 3~8質量%
(B)ツボクサエキス
(C)(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー
(D)ラフィノース、グルコース、ソルビトール、メチルグルセス-10からなる群から選ばれる1つ以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイアシンアミドは、別名ニコチンアミド(nicotin amide)/ナイアシン/ビタミンB3とも呼ばれる、ニコチン酸のアミド化合物である。ナイアシンアミドは水溶性ビタミンで、ビタミンB群の一つである。ナイアシンアミドが欠乏するとペラグラなどの欠乏症となる。ナイアシンアミドは、外用薬の成分としてニキビ(尋常性ざ瘡)の治療や、美容目的で化粧品に配合される。日本では、医薬部外品の化粧品に、シワ改善の有効成分(リンクルナイアシン)、美白作用の有効成分(ニコチン酸アミド)として承認されている。
【0003】
ナイアシンアミドは、シワ改善の有効成分としてスキンケア化粧料等にしばしば配合されており、ナイアシンアミドによるシワ改善や、肌のハリ感や弾力を付与する効果を発揮するには3~8質量%ほどの高い配合が求められる。しかし、ナイアシンアミドを高含有する化粧料は、使用感が低下することが知られており、経験的には3質量%以上含有すると、例えば、塗布中に感じられるべたつき、塗布後肌に馴染ませる際に感じられるきしみ感など使用感の低下が認識される。
こうした化粧料のべたつきやきしみ感などの使用感を改善するために、各種油剤、増粘剤、保湿剤、界面活性剤などの成分を組み合わせて配合することが試みられている。ところが、ナイアシンアミドを高含有する化粧料は、このような成分を含有することで一時的に使用感が改善しても、塗布後に一定時間が経過すると、きしみ感などの好ましくない使用感が、再度顕著に感じられることが指摘されている。
【0004】
このような中、ナイアシンアミドを高含有しているが、使用感に優れた化粧料の技術が開示されている。例えば、本出願人は、特許文献1に、(A)ナイアシンアミド3質量%以上、(B)ポリオキシエチレングリセリンに付加した酸化エチレンの平均モル数が10~30であるポリオキシエチレングリセリンを含有し、べたつき感がなく、塗布後に肌になじませる際に感じられるきしみ感を抑制し、さらに保湿性に優れた化粧料を提案している。
【0005】
ツボクサ(学名Centella asiatica)は、インドや東南アジアが原産であり、日本国では関東以西に広く生息しているセリ科の草本植物である。ツボクサは、創傷治癒効果があり、世界各国で古くから民間療法に用いられている。また、ツボクサは美容効果を有することも知られており、例えば、メラニン分解促進剤(特許文献2)、美白及びシワ改善用化粧料組成物(特許文献3)等に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-129777号公報
【特許文献2】特開2015-51931号公報
【特許文献3】特表2021-502953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ナイアシンアミドを高含有しながらも、使用感(肌なじみ、ハリ感、べたつきのなさ、きしみ感のなさ、肌のやわらかさ、保湿感)に優れた皮膚化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.下記(A)~(D)を含む皮膚化粧料。
(A)ナイアシンアミド 3~8質量%
(B)ツボクサエキス
(C)(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー
(D)ラフィノース、グルコース、ソルビトール、メチルグルセス-10からなる群から選ばれる1つ以上
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚化粧料は、べたつき、きしみ感を抑制しながらハリ感を実感することができる。本発明の皮膚化粧料は、肌なじみ、肌のやわらかさ、保湿感に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、下記(A)~(D)を含む皮膚化粧料に関する。
(A)ナイアシンアミド 3~8質量%
(B)ツボクサエキス
(C)(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー
(D)ラフィノース、グルコース、ソルビトール、メチルグルセス-10からなる群から選ばれる1つ以上
なお、本明細書において、「X~Y」(X、Yは数値)との表記は、その両端を含む数値範囲を意味する。
【0011】
(A)成分
(A)成分であるナイアシンアミドは、ニコチン酸のアミド化合物であり、別名ニコチン酸アミド/ニコチンアミド/ビタミンB3/ナイアシンともいう水溶性ビタミンである。ナイアシンアミドは、天然物からの抽出物であってもよく、公知の方法による合成物でもよく、具体的には、日本薬局方に収載されているものを用いることができる。ナイアシンアミドには、シワ改善効果に加えて血行促進作用や、肌荒れ改善作用、メラニン生成抑制作用や美白効果が知られている。
【0012】
本発明の皮膚化粧料において、全体に対する(A)成分の含有量は3~8質量%である。(A)成分の含有量は、例えば、化粧料全体に対して3.5質量%以上が好ましく、また、7.5質量%以下が好ましい。
【0013】
(B)成分
ツボクサエキスは、ツボクサ(学名Centella asiatica)の抽出物であり、ツボクサの全体、または茎、葉、根等の部分から、水や有機溶媒又はこれらの混合溶媒などの抽出溶媒で抽出したものである。ツボクサエキスの抽出に用いる部位は、葉を含むことが好ましく、葉であることがより好ましい。また、本発明に用いるツボクサエキスとしては、化粧料として通常使用されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、機能性成分の一種として同定されているアシアチン酸の糖誘導体であるアシアチコシドの含有量が、ツボクサエキス全体に対して25質量%以上のものが好ましく、35質量%以上のものがより好ましく、また、60質量%以下のものが好ましく、45質量%以下のものがより好ましい。
本発明の皮膚化粧料において、全体に対する(B)成分の含有量は0.0001~0.5質量%が好ましい。(B)成分の含有量は、化粧料全体に対して0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、また、0.3質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。
【0014】
(C)成分
(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーは水溶性高分子である。
本発明の皮膚化粧料において、全体に対する(C)成分の含有量は0.001~0.7質量%が好ましい。(C)成分の含有量は、化粧料全体に対して0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、また、0.6質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0015】
(D)成分
本発明の皮膚化粧料は、(D)成分として、ラフィノース、グルコース、ソルビトール、メチルグルセス-10からなる群から選ばれる1つ以上を含み、2種以上を含むこともできる。
本発明の皮膚化粧料において、全体に対する(D)成分の含有量は0.1~10質量%が好ましい。(D)成分の含有量は、化粧料全体に対して0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、また、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。(D)成分を2種以上含む場合は、複数の(D)成分の総濃度が上記した範囲内であることが好ましい。
【0016】
本発明の皮膚化粧料は、(A)ナイアシンアミド3~8質量%と、(B)~(D)成分の4成分を含むことにより、べたつきやきしみ感といったナイアシンアミドに由来する好ましくない使用感を改善することができる。また、本発明の皮膚化粧料は、(A)~(D)成分を含むことにより、肌に馴染みやすく、ハリ感、肌のやわらかさ、保湿感を感じることができる。
【0017】
本発明の皮膚化粧料は、(A)~(D)成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、皮膚化粧料に常用される各種原料、例えば、界面活性剤、高級アルコール、エタノール、保湿剤、増粘剤、キレート剤、pH調整剤、中和剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、香料、着色剤(例えばシアノコバラミン)、美容成分(例えばローズマリーエキス)、ビタミン類等の機能成分を配合することができる。
【0018】
本発明の皮膚化粧料は、例えば、乳液、クリーム、化粧液、美容液、ジェル等とすることができる。中でも均一な水相が形成できる範囲内で多少の油剤(3.0質量%以下程度)を含む水性化粧料とすることにより、本発明の優れた効果がより一層実感されるので最適である。
【実施例0019】
<試料>
ツボクサエキス :SERDEX製、TECA、乾燥エキス
SIMULGEL EG:SEPPIC社製、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー<37.5>、イソヘキサデカン<22.5>、ポリソルベート80<7.5>、水<30>、オレイン酸ソルビタン<2.5>を含む混合原料。<>内の数字は質量%を意味する。
【0020】
<調製方法>
表1、2に示す組成で、各成分を混合し皮膚化粧料を製造した。
【0021】
<試験方法>
上記の方法で得た皮膚化粧料について、専門パネラー5名により、各皮膚化粧料を前腕内側部に約0.3mL塗布した直後の感覚について下記の評点の付け方にて官能評価を実施し、以下のような評点を付けた。結果を表1、2に示す。
【0022】
・肌なじみ
肌なじみとは、化粧料を肌に塗布した際に、肌に吸収されて浸み込んでいくような感覚であり、塗布後一定時間経過後に、残液感を感じず、化粧料がはじかれている感覚とは相反する感覚のことである。
◎:5名全員が塗布時の肌なじみが良いと判定した。
○:3~4名が塗布時の肌なじみが良いと判定した。
△:1~2名が塗布時の肌なじみが良いと判定した。
×:0名が塗布時の肌なじみが良いと判定した。
・ハリ感
ハリ感とは、化粧料を肌に塗布した後、肌を触った際にピンと張ったように感じ、指で押した時に弾力が感じられることである。
◎:5名全員がハリ感を感じると判定した。
○:3~4名がハリ感を感じると判定した。
△:1~2名がハリ感を感じると判定した。
×:0名がハリ感を感じると判定した。
【0023】
・べたつき
べたつきとは、化粧料を肌に塗布した後、肌を触った際に一定時間経過後も感じる粘性もしくは粘着性を伴う残液感のことである。
◎:5名全員が、べたつきがないと判定した。
○:3~4名が、べたつきがないと判定した。
△:1~2名が、べたつきがないと判定した。
×:0名が、べたつきがないと判定した。
・きしみ感
きしみ感とは、化粧料を肌に塗布した後、肌を触った際に必要以上の摩擦を感じ、ざらつきが生じているような場合にも感じ得る感触のことである。
◎:5名全員が、きしみ感がないと判定した。
○:3~4名が、きしみ感がないと判定した。
△:1~2名が、きしみ感がないと判定した。
×:0名が、きしみ感がないと判定した。
【0024】
・肌のやわらかさ
肌のやわらかさは、化粧料を塗布した後、肌を触った際にごわつきを感じず、ふっくらとした感覚のことである。
◎:5名全員が、塗布後の肌がやわらかであると判定した。
○:3~4名が、塗布後の肌がやわらかであると判定した。
△:1~2名が、塗布後の肌がやわらかであると判定した。
×:0名が、塗布後の肌がやわらかであると判定した。
・保湿感
保湿感は、化粧料を肌に塗布した後、肌を触った際に感じるしっとりとした感覚のことである。
◎:5名全員が、保湿感があると判定した。
○:3~4名が、保湿感があると判定した。
△:1~2名が、保湿感があると判定した。
×:0名が、保湿感があると判定した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
・結果
実施例1、比較例1~3より、(A)~(D)成分をすべて含むことにより、(A)ナイアシンアミドに由来するべたつき、きしみ感を改善できること、肌に馴染みやすく、ハリ感、肌のやわらかさ、保湿感を感じられる皮膚化粧料が得られることが確かめられた。
実施例1~8より、(A)~(D)成分の濃度を変更しても、同様の効果が得られることが確かめられた。
実施例1、9~15、比較例4~6より、本発明の(D)成分を他のポリオールに代えると、べたつきやきしみ感が強くなり、同様の効果が得られないことが確かめられた。
【0028】
処方例1:化粧液(数値は質量%)
水 残余
ナイアシンアミド 5%
ジプロピレングリコール 3%
ペンチレングリコール 1.5%
ツボクサエキス 0.05%
BG 5%
ラフィノース 1%
SIMULGEL EG 0.1%
フェノキシエタノール 0.3%
グリセリン 5%
キサンタンガム 0.1%
【0029】
処方例2:美容液(数値は質量%)
水 残余
ナイアシンアミド 5%
ジプロピレングリコール 3%
ツボクサエキス 0.05%
BG 5%
ラフィノース 0.5%
メチルグルセス-10 1%
カルボマー 0.3%
SIMULGEL EG 0.5%
キサンタンガム 0.2%
ペンチレングリコール 1.5%
水酸化カリウム 0.1%
フェノキシエタノール 0.35%
トリエチルヘキサノイン 1.5%
ジメチコン 0.5%
スクワラン 0.5%
【0030】
処方例3:乳液(数値は質量%)
水 残余
ナイアシンアミド 5%
ジプロピレングリコール 3%
ツボクサエキス 0.05%
BG 6%
ラフィノース 1%
グルコース 1%
カルボマー 0.05%
SIMULGEL EG 0.7%
ペンチレングリコール 1.5%
水酸化カリウム 0.01%
フェノキシエタノール 0.3%
トリエチルヘキサノイン 5%
マカデミア種子油 3%
パルミチン酸セチル 0.8%
ジメチコン 2%
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)
1%