(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126390
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】作業機及び作業機の制御方法
(51)【国際特許分類】
A01B 63/10 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A01B63/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034742
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大原 慎司
(72)【発明者】
【氏名】寳来 昂平
(72)【発明者】
【氏名】黒下 佳彦
【テーマコード(参考)】
2B304
【Fターム(参考)】
2B304KA08
2B304KA20
2B304LA06
2B304LB05
2B304LB15
2B304MA03
2B304MA20
2B304MD03
2B304PD19
2B304QA03
2B304QA22
2B304QB13
2B304RA08
(57)【要約】
【課題】 油圧アクチュエータの駆動を開始させる際のショックを低減させつつも、効率性を向上させる。
【解決手段】作業機は、作動油によって動作する油圧アクチュエータを有する駆動装置と、駆動装置の駆動開始後の駆動速度を変更する制御装置と、を備え、制御装置は、駆動装置の操作を制限する制限値が所定の閾値以上である場合、当該制限値に応じて、駆動装置の駆動開始後の駆動速度を変更する第1制御を行い、制限値が閾値未満である場合、第1制御に加え、当該制限値に応じて、油圧アクチュエータを動作させる作動油の最大流量を変更する第2制御を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油によって動作する油圧アクチュエータを有する駆動装置と、
前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を変更する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記駆動装置の操作を制限する制限値が所定の閾値以上である場合、当該制限値に応じて、前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を変更する第1制御を行い、前記制限値が前記閾値未満である場合、前記第1制御に加え、当該制限値に応じて、前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の最大流量を変更する第2制御を行う作業機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1制御において、少なくとも前記制限値が前記閾値以上の範囲で、当該制限値に応じて、前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を変更し、前記制限値が前記閾値未満である場合には、前記制限値が前記閾値である場合と同一の第1制御を行う請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記制限値が高くなるにつれて前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を高くし、前記制限値が低くなるにつれて前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を低くする請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記駆動装置を操作するための第1操作具と、
前記油圧アクチュエータを制御する制御弁と、
を備え、
前記駆動装置は、前記油圧アクチュエータによって駆動される駆動部材を有し、
前記第1操作具は、前記駆動部材の位置の目標値を操作し、
前記制御装置は、前記駆動部材の実際の位置である実際位置と前記目標値との偏差と、前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の目標流量と、の関係を示す第1マップ、及び予め定められた前記制御弁に出力する制御電流の電流値と、当該制御弁からの作動油の流量と、の関係を示す第2マップに基づいて、前記制御弁を制御する請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記制限値が前記閾値に向かって減少するにつれて、前記第2マップに基づいて取得する前記電流値よりも低い電流値を前記制御弁に出力する請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記制限値に基づく所定の補正値によって、前記第2マップ又は前記第2マップに基づいて取得した前記電流値を補正し、前記制限値が前記閾値に向かって減少するにつれて前記電流値を減少させる請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記第2マップは、所定の前記制御弁である標準制御弁に出力する前記電流値と、当該標準制御弁からの作動油の流量と、の関係を示す標準流量特性に基づいて定義されており、
前記制限値が前記閾値以下である場合の前記補正値は、前記標準流量特性に比べて作動油の流量が多い上限品の制御弁の流量特性と、前記標準流量特性と、の所定の作動油の流量における前記電流値によって定義されている請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記第1操作具が操作され、前記駆動装置が駆動を開始してからの経過時間をカウントし、当該経過時間が短いほど前記目標流量を制限する請求項4に記載の作業機。
【請求項9】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記経過時間と前記目標流量との関係を示す第3マップに基づいて、前記目標流量を制限する請求項8に記載の作業機。
【請求項10】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記制限値が前記閾値に向かって減少するにつれて、前記経過時間に対する前記目標流量が少ない前記第3マップを取得する請求項9に記載の作業機。
【請求項11】
前記駆動装置は、作業装置を昇降可能な昇降装置であり、
前記制御装置は、前記第1制御において、前記作業装置が行う作業の内容に応じて、異なる前記第3マップを取得する請求項10に記載の作業機。
【請求項12】
機体と、
前記機体に設けられた運転席を保護する保護機構と、
を備え、
前記第1操作具は、前記保護機構の内部に設けられた内部操作具と、前記保護機構の外部に設けられた外部操作具と、を含み、
前記制御装置は、前記第1制御において、前記内部操作具を操作した場合、前記外部操作具を操作した場合と異なる前記第3マップを取得する請求項10に記載の作業機。
【請求項13】
前記制御装置は、所定の前記制御弁である標準制御弁に出力する前記電流値と作動油の流量との関係を示す標準流量特性に比べて作動油の流量が多い上限品の制御弁の流量特性のズレ値を演算し、前記ズレ値を用いて前記制御弁に出力する前記電流値を補正し、補正後の前記電流値の制御電流を前記制御弁に出力する請求項10に記載の作業機。
【請求項14】
前記制限値を操作する第2操作具を備え、
前記第2操作具は、操作量に応じて、前記制限値が割り当てられている請求項4~13のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項15】
前記駆動装置は、前記油圧アクチュエータの駆動によって駆動される駆動部材を有し、作業装置を昇降可能な昇降装置であり、
前記油圧アクチュエータは、リフトシリンダであり、
前記駆動部材は、前記リフトシリンダの駆動によって駆動されるリフトアームである請求項14に記載の作業機。
【請求項16】
前記制御装置は、
前記第1操作具の操作に応じて、前記リフトアームを上昇させる場合に、前記第1制御、又は前記第1制御及び前記第2制御を行い、
前記第1操作具の操作に応じて、前記リフトアームを下降させる場合に、前記第1制御及び前記第2制御を行わない請求項15に記載の作業機。
【請求項17】
前記制御装置は、前記第2制御において、前記制限値が高くなるにつれて前記最大流量を多くし、前記制限値が低くなるにつれて前記最大流量を少なくする請求項16に記載の作業機。
【請求項18】
作動油によって動作する油圧アクチュエータを有する駆動装置と、前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を変更する制御装置と、を備えた作業機の制御方法であって、
前記駆動装置の操作を制限する制限値が所定の閾値以上である場合、前記制御装置が当該制限値に応じて、前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を変更する第1制御を行う第1ステップと、
前記制限値が前記閾値未満である場合、前記制御装置が前記第1制御に加え、当該制限
値に応じて、前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の最大流量を変更する第2制御を行う第2ステップと、
を含んでいる作業機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトラクタ等の作業機及び作業機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された作業車両の昇降装置は、走行機体に連結された作業機を油圧シリンダの伸縮によって昇降させる作業車両の昇降装置であって、作業機を伸縮によって昇降作動させる油圧シリンダと、油圧シリンダを介して前記作業機の昇降を制御する電磁弁と、該作業機の昇降高さを検出する検出手段と、前記電磁弁への電流供給制御によって上記作業機の下降を制御する制御部とを備え、制御部は、目標の昇降高さと、ロータリ耕耘装置の昇降高さとの差が大きい程、電磁弁に供給する電流の電流値又はデューティ比を大きくして、ロータリ耕耘装置の昇降高さとの差が小さい程、電磁弁に供給する電流の電流値又はデューティ比を小さくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業車両の昇降装置では、ロータリ耕耘装置の昇降時におけるショックを低減して、スムーズな昇降作業を行っている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の作業車両の昇降装置における制御のみであると、ロータリ耕耘装置の昇降時におけるショックの低減と、作業の効率性と、の両立が困難な場合がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、油圧アクチュエータの駆動を開始させる際のショックを低減させつつも、効率性を向上できる作業機、及び作業機の制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業機は、作動油によって動作する油圧アクチュエータを有する駆動装置と、前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を変更する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記駆動装置の操作を制限する制限値が所定の閾値以上である場合、当該制限値に応じて、前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を変更する第1制御を行い、前記制限値が前記閾値未満である場合、前記第1制御に加え、当該制限値に応じて、前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の最大流量を変更する第2制御を行う。
【0008】
前記制御装置は、前記第1制御において、少なくとも前記制限値が前記閾値以上の範囲で、当該制限値に応じて、前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を変更し、前記制限値が前記閾値未満である場合には、前記制限値が前記閾値である場合と同一の第1制御を行ってもよい。
【0009】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記制限値が高くなるにつれて前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を高くし、前記制限値が低くなるにつれて前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を低くしてもよい。
【0010】
前記作業機は、前記駆動装置を操作するための第1操作具と、前記油圧アクチュエータを制御する制御弁と、を備え、前記駆動装置は、前記油圧アクチュエータによって駆動される駆動部材を有し、前記第1操作具は、前記駆動部材の位置の目標値を操作し、前記制御装置は、前記駆動部材の実際の位置である実際位置と前記目標値との偏差と、前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の目標流量と、の関係を示す第1マップ、及び予め定められた前記制御弁に出力する制御電流の電流値と、当該制御弁からの作動油の流量と、の関係を示す第2マップに基づいて、前記制御弁を制御してもよい。
【0011】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記制限値が前記閾値に向かって減少するにつれて、前記第2マップに基づいて取得する前記電流値よりも低い電流値を前記制御弁に出力してもよい。
【0012】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記制限値に基づく所定の補正値によって、前記第2マップ又は前記第2マップに基づいて取得した前記電流値を補正し、前記制限値が前記閾値に向かって減少するにつれて前記電流値を減少させてもよい。
【0013】
前記第2マップは、所定の前記制御弁である標準制御弁に出力する前記電流値と、当該標準制御弁からの作動油の流量と、の関係を示す標準流量特性に基づいて定義されており、前記制限値が前記閾値以下である場合の前記補正値は、前記標準流量特性に比べて作動油の流量が多い上限品の制御弁の流量特性と、前記標準流量特性と、の所定の作動油の流量における前記電流値によって定義されていてもよい。
【0014】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記第1操作具が操作され、前記駆動装置が駆動を開始してからの経過時間をカウントし、当該経過時間が短いほど前記目標流量を制限してもよい。
【0015】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記経過時間と前記目標流量との関係を示す第3マップに基づいて、前記目標流量を制限してもよい。
【0016】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記制限値が前記閾値に向かって減少するにつれて、前記経過時間に対する前記目標流量が少ない前記第3マップを取得してもよい。
【0017】
前記駆動装置は、作業装置を昇降可能な昇降装置であり、前記制御装置は、前記第1制御において、前記作業装置が行う作業の内容に応じて、異なる前記第3マップを取得してもよい。
【0018】
前記作業機は、機体と、前記機体に設けられた運転席を保護する保護機構と、を備え、前記第1操作具は、前記保護機構の内部に設けられた内部操作具と、前記保護機構の外部に設けられた外部操作具と、を含み、前記制御装置は、前記第1制御において、前記内部操作具を操作した場合、前記外部操作具を操作した場合と異なる前記第3マップを取得してもよい。
【0019】
前記制御装置は、所定の前記制御弁である標準制御弁に出力する前記電流値と作動油の流量との関係を示す標準流量特性に比べて作動油の流量が多い上限品の制御弁の流量特性のズレ値を演算し、前記ズレ値を用いて前記制御弁に出力する前記電流値を補正し、補正後の前記電流値の制御電流を前記制御弁に出力してもよい。
【0020】
前記作業機は、前記制限値を操作する第2操作具を備え、前記第2操作具は、操作量に応じて、前記制限値が割り当てられていてもよい。
【0021】
前記駆動装置は、前記油圧アクチュエータの駆動によって駆動される駆動部材を有し、作業装置を昇降可能な昇降装置であり、前記油圧アクチュエータは、リフトシリンダであり、前記駆動部材は、前記リフトシリンダの駆動によって駆動されるリフトアームであってもよい。
【0022】
前記制御装置は、前記第1操作具の操作に応じて、前記リフトアームを上昇させる場合に、前記第1制御、又は前記第1制御及び前記第2制御を行い、前記第1操作具の操作に応じて、前記リフトアームを下降させる場合に、前記第1制御及び前記第2制御を行わなくてもよい。
【0023】
前記制御装置は、前記第2制御において、前記制限値が高くなるにつれて前記最大流量を多くし、前記制限値が低くなるにつれて前記最大流量を少なくしてもよい。
【0024】
本発明の一態様に係る作業機の制御方法は、作動油によって動作する油圧アクチュエータを有する駆動装置と、前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を変更する制御装置と、を備えた作業機の制御方法であって、前記駆動装置の操作を制限する制限値が所定の閾値以上である場合、前記制御装置が当該制限値に応じて、前記駆動装置の駆動開始後の駆動速度を変更する第1制御を行う第1ステップと、前記制限値が前記閾値未満である場合、前記制御装置が前記第1制御に加え、当該制限値に応じて、前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の最大流量を変更する第2制御を行う第2ステップと、を含んでいる。
【発明の効果】
【0025】
上記作業機及び作業機の制御方法によれば、油圧アクチュエータの駆動を開始させる際のショックを低減させつつも、効率性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】第1実施形態の作業機の制御システムを示す図である。
【
図8】制限値が100%である場合の第2マップと、制限値が50%である場合の第2マップを示す図である。
【
図9】標準流量特性と上限流量特性とを示す図である。
【
図10】制限値が50%である場合の第2マップと、制限値が25%である場合の第2マップと、制限値が0%である場合の第2マップと、を示す図である。
【
図11】制御装置が行う第1制御及び第2制御の処理を含む一連の流れを示す図である。
【
図12】第2実施形態の作業機1の制御システムを示す図である。
【
図13】第3マップ(標準マップ)の一例を示す図である。
【
図14】第3マップ(第1変更マップ)の一例を示す図である。
【
図15】第3マップ(第2変更マップ)の一例を示す図である。
【
図16】標準流量特性、上限流量特性、及び下限流量特性の一例を示す図である。
【
図17】上限流量特性、及び下限流量特性のズレを補正した一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
[第1実施形態]
まず、
図1、
図2を用いて作業機1について説明する。
図1は、本実施形態に係る作業機1の側面図を示している。
図2は、作業機1が備えている制御システムを示す図である。
図1に示すように、作業機1は、機体2と、作業装置3と、走行装置4と、原動機5と、保護機構6と、駆動装置8と、を備えている。
【0029】
本発明の実施形態において、作業機1の運転席7に着座した運転者が向く方向(
図1の矢印A1の方向)を前方といい、その反対方向(
図1の矢印A2の方向)を後方という。運転者の右側(
図3の矢印B2の方向)を右方といい、運転者の左側(
図3の矢印B1の方向)を左方という。また、作業機1の前後方向(
図1の矢印A3の方向)に直交する方向である水平方向(
図3の矢印B3の方向)を車体幅方向(あるいは、幅方向)という。
【0030】
作業装置3は、例えばインプルメントであり、機体2の後部に連結され、様々な作業を行うことができる。作業装置3の種類は特に限定されず、例えば、芋や人参の掘り取りを行う掘り取り装置、肥料を散布する肥料散布装置(施肥装置)及び農薬を散布する農薬散布装置等の散布作業装置、圃場に種まきを行う播種装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置、並びに圃場に対する対地作業を行う対地作業装置等である。
【0031】
対地作業装置は、粗耕起を行う粗耕起装置(スタブルカルチ)、代掻きを行う代掻き装置(ドライブハロー)、及び耕耘作業を行う耕耘装置(ロータリ耕耘機、サブソイラ、プラウ、カルチベータ)等を含んでいる。なお、作業機1が作業装置3を牽引することで対地作業を行う耕耘装置(例えばサブソイラ、プラウ、カルチベータ)のことを牽引式耕耘装置という。なお、
図1では、作業装置3としてプラウを機体2の後部に連結した例を示している。
【0032】
走行装置4は、機体2に推進力を付与する装置である。
図1に示す例において、走行装置4は、前輪4a及び後輪4bを有する車輪型の装置であるが、クローラ型の装置であってもよい。
【0033】
駆動装置(昇降装置)8は、作業装置3を機体2に連結し、且つ機体2に対して当該作業装置3を昇降することができる。昇降装置8は、機体2の後部に設けられている。昇降装置8は、例えば、3点リンク機構等で構成されている。昇降装置8には、作業装置3が
着脱可能である。作業装置3を昇降装置8に連結することで、機体2は、作業装置3を移動できる。
【0034】
原動機5は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であって、この実施形態ではディーゼルエンジンで構成されている。原動機5の後部には、フライホイールハウジングが設けられている。また、原動機5が出力した動力は、機体2の下部に配置されたミッションケース9に伝達される。
【0035】
図1に示すように、作業機1は、機体2の上部に設けられた運転席7と、操作装置10とを備えている。運転席7は、保護機構(例えばキャビンやキャノピ等)6内に配置されている。操作装置10は、例えば運転席7の周囲に設置されており、運転席7に着座した作業者(オペレータ)が作業機1に装備された機械、装置、器具、部材等(例えば、作業装置3、走行装置4、原動機5等)の操作に関係する装置、部材等が集まった部位を含む。操作装置10は、少なくともステアリング等で構成された操舵装置を含む。
【0036】
図2に示すように、作業機1に、搭載された複数の機器は、CAN、ISOBUS、LIN、FlexRayなどの車載ネットワークN1で接続されている。車載ネットワークN1に接続された機器は、原動機5、操作装置10、制御装置11、表示装置12、スタータスイッチ13、及びスタータリレー14等である。
【0037】
表示装置12は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示部12aを有し、当該表示部12aに作業機1の各種の情報を表示する。表示装置12は、運転席7の周囲の任意の位置(例えば、前方位置、側方位置など)に設置されている。本実施形態において、表示装置12は、運転席7の前方に設けられたメータパネル内に設けられたモニタ(ダッシュボードモニタ)である。
【0038】
表示装置12は、操作装置10に含まれるジョグダイヤル41によって操作される。ジョグダイヤル41は、回転操作が可能である。作業者がジョグダイヤル41を回転操作することで、表示装置12は、表示部12aに表示される複数の選択項目のうちの選択項目候補を変更する。また、ジョグダイヤル41は、回転操作に加えて押圧操作が可能であり、押圧操作することにより選択項目を決定する。
【0039】
制御装置11は、ECU(電子制御装置)から構成され、CPU、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、及びその他の電子部品と電気回路を含んでいる。制御装置11の不揮発性メモリには、CPUが各部を制御するためのソフトウェアプログラム及び各種データが記憶されている。即ち、制御装置11は作業機1のコントローラである。
【0040】
制御装置11は、作業機1に関する様々な制御を行う。例えば、制御装置11は、操作装置10から入力された信号(操作信号)に基づいて、作業装置3、走行装置4、原動機5等の操作を行う。
図2に示すように、制御装置11は、記憶部11aを有している。記憶部11aは、不揮発性のメモリ等であって、様々な情報を記憶する記憶装置である。記憶部11aは、例えば、様々なアプリケーションソフト(Application software)を記憶している。なお、記憶部11aは、制御装置11の外部に設けられ、車載ネットワークN1に接続された記憶装置(ハードディスクドライブ:HDD、ソリッド・ステート・ドライブ:SSDなど)としてもよい。
【0041】
スタータスイッチ13は、原動機5を始動させるためのスイッチである。運転席周りに設けられたキーシリンダに、オペレータがエンジンキーを挿入し、当該エンジンキーの回転操作を行うと、スタータスイッチ13は、スタータリレー14に原動機始動の信号(始動信号)を出力する。
【0042】
スタータリレー14は、原動機5の始動を行う部品である。スタータリレー14に始動信号が入力されると、当該スタータリレー14は、原動機5の始動を行う。なお、原動機駆動の1つである原動機始動は、エンジンキーをキーシリンダに挿入してスタータリレー14をオンするような機械式(キーシリンダ式)に限定されず、無線通信によって原動機始動を許可又は禁止にするスマートエントリー式であってもよい。
【0043】
以下、昇降装置8について詳しく説明する。
図3、
図4に示すように、昇降装置8は、ミッションケース9に接続されている。
図3は、昇降装置8を示す左後方斜視図である。
図4は、昇降装置8の昇降動作を示す左側面図である。
図3、
図4に示すように、昇降装
置8は、リフトアーム(駆動部材)21と、トップリンク22と、ロアリンク23と、リフトロッド24と、リフトシリンダ26(油圧アクチュエータ)26とを有している。
【0044】
図3に示すように、リフトアーム21は、第1リフトアーム21Lと第2リフトアーム21Rとを含む。第1リフトアーム21Lは、機体幅方向の一方(左方)に配置されている。第2リフトアーム21Rは、機体幅方向の他方(右方)に配置されている。第1リフトアーム21L及び第2リフトアーム21Rは、機体2に揺動自在に設けられている。具体的には、第1リフトアーム21L及び第2リフトアーム21Rは、前端部がミッションケース9の上部に枢支されており、後方に向けて延びている。
【0045】
トップリンク22は、第1リフトアーム21Lと第2リフトアーム21Rとの間に配置され、前端部がミッションケース9の上部に枢支されている。ロアリンク23は、第1ロアリンク23Lと第2ロアリンク23Rとを含む。第1ロアリンク23L及び第2ロアリンク23Rの前端部は、ミッションケース9の下部に枢支されている。リフトロッド24は、第1リフトロッド24Lと第2リフトロッド24Rとを含む。第1リフトロッド24Lは、上端部が第1リフトアーム21Lの後端部に接続されており、下端部が第1ロアリンク23Lの長さ方向の中途部に接続されている。第2リフトロッド24Rは、上端部が第2リフトアーム21Rの後端部に接続されており、下端部が第2ロアリンク23Rの長さ方向の中途部に接続されている。
【0046】
図3、
図4に示すように、トップリンク22の後端部とロアリンク23の後端部には、作業装置3を連結可能なジョイント25が設けられている。トップリンク22の後端部とロアリンク23の後端部に作業装置3を連結することにより、作業装置3は作業機1の後部に昇降可能に連結される。ゆえに、作業装置3は、リフトロッド24及びロアリンク23を介して、リフトアーム21に連結される。
【0047】
図3、
図4に示すように、リフトシリンダ26は、作動油によって動作する油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)である。
図2に示すように、リフトシリンダ26は、単動型のシリンダであり、筒状のシリンダチューブ26aと、一端側がシリンダチューブ26aに対して摺動可能に挿入されたピストンロッド26bと有している。シリンダチューブ26a内は、該シリンダチューブ26aの軸心に沿う方向(軸心方向)に移動可能に収容されたピストンによって、ボトム側油室とロッド側油室とで仕切られている。このため、ボトム側油室に作動油が供給されると、リフトシリンダ26が伸長する。一方、ボトム側油室から作動油が排出されると、リフトシリンダ26が収縮する。
【0048】
リフトシリンダ26は、第1リフトシリンダ26Lと第2リフトシリンダ26Rとを含んでいる。第1リフトシリンダ26Lは、一端部が第1リフトアーム21Lに接続され、他端部がミッションケース9の左下部に接続されている。第2リフトシリンダ26Rは、一端部が第2リフトアーム21Rに接続され、他端部がミッションケース9の右下部に接続されている。リフトシリンダ26の駆動によって、第1リフトアーム21Lと第2リフトアーム21Rは、上下方向に揺動する。
【0049】
なお、駆動装置8は、作動油によって動作する油圧アクチュエータ26と、油圧アクチュエータ26の駆動によって駆動される駆動部材21と、を有していればよく、昇降装置に限定されない。
【0050】
図2に示すように、作業機1は、油圧ポンプPと、制御弁30と、を備えている。油圧ポンプPは、原動機が発生させた動力によって作動する。油圧ポンプPは、作動油タンクTに貯留された作動油を吐出する。油圧ポンプPは、定容量型のギヤポンプや斜板等のポンプ容量制御機構を備えた可変容量型油圧ポンプによって構成されている。
【0051】
制御弁30は、油圧アクチュエータ(リフトシリンダ)26を制御する。制御弁30は、制御装置11から出力される制御電流によって励磁して開度を任意に変更する。これにより、制御弁30は、リフトシリンダ26を動作させる作動油を調整することができる。制御弁30は、例えば、比例流量制御タイプの電磁制御弁であり、制御装置11から出力される制御電流の電流値Iが大きくなるにつれて、油圧アクチュエータ26に供給する作動油の流量が増加する。
【0052】
本実施形態において、制御弁30は、リフトシリンダ26の伸長を制御する第1制御弁
(上昇用制御弁)30aと、リフトシリンダ26の収縮を制御する第2制御弁(下降用制御弁)30bと、を含んでいる。第1制御弁30a及び第2制御弁30bは、第1リフトアーム21Lと第2リフトアーム21Rとの両方に接続されており、当該第1リフトアーム21L及び第2リフトアーム21Rを同時に伸長、又は収縮させる。
【0053】
第1制御弁30aは、油圧ポンプPとボトム側油室とを接続する油路に設けられており、開度を変更することで、当該油圧ポンプPが吐出した作動油をボトム側油室に供給することができる。
【0054】
第2制御弁30bは、ボトム側油室と作動油タンクTとを接続する油路に設けられており、開度を変更することで、ボトム側油室の作動油を作動油タンクTに排出することができる。
【0055】
従って、制御装置11が第1制御弁30aに制御電流を出力し、第1制御弁30aの開度が変更されると、油圧ポンプPが吐出した作動油がボトム側油室に供給され、リフトシリンダ26が伸長することで、リフトアーム21は上昇する。一方、制御装置11が第2制御弁30bに制御電流を出力し、第2制御弁30bの開度が変更されると、ボトム側油室の作動油が作動油タンクTに排出され、リフトシリンダ26が収縮可能になる。このため、作業装置3及び/又はリフトアーム21の重さにより、リフトシリンダ26が収縮して、リフトアーム21は下降する。
【0056】
なお、制御弁30は、リフトシリンダ(油圧アクチュエータ)26を制御することができればよく、その油圧システムは、上述した構成に限定されない。例えば、上述した一例では、ボトム側油室には、第1制御弁30a及び第2制御弁30bが接続されているが、第2制御弁30bを、油圧ポンプPとロッド側油室とを接続する油路に設け、開度を変更することで、当該油圧ポンプPが吐出した作動油をロッド側油室に供給するようにしてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態においては、第1制御弁30a及び第2制御弁30bのそれぞれの開度を変更して、リフトシリンダ26を制御しているが、制御弁30として、リフトシリンダ26を伸長させる第1位置、リフトシリンダ26の駆動を停止する第2位置、リフトシリンダ26を収縮させる第3位置に切替可能な3位置の電磁切換弁を採用してもよい。
【0058】
さらに、上述した実施形態においては、第1制御弁30a及び第2制御弁30bによって、リフトシリンダ26を動作させる作動油を直接調整しているが、第1制御弁30a及び第2制御弁30bは、リフトシリンダ26に接続された制御バルブにパイロット油を作用させ、当該制御バルブがリフトシリンダ26を動作させる作動油を調整してもよいし、油圧システムの構成は上述した構成に限定されない。
【0059】
操作装置10は、駆動装置(昇降装置)8を操作(作業装置3を昇降操作)するための第1操作具42を有している。第1操作具42は、リフトアーム21の位置の目標値を操作することができる操作装置10である。制御装置11は、第1操作具42の操作に応じて、リフトアーム21の実際の位置である実際位置と、目標値と、の偏差ΔDが零になるように制御弁30を制御する。
【0060】
図2に示すように、作業機1は、リフトアーム21の実際の位置を検出するための検出装置15を備えている。検出装置15は、リフトシリンダ26の位置を演算するためのセンサである。検出装置15は、制御装置11と接続されており、検出した信号(検出信号)を制御装置11に出力する。
【0061】
本実施形態において、検出装置15は、リフトアーム21の角度を検出するセンサ(リフトアームセンサ)であって、制御装置11は、リフトアーム21の位置として、リフトアーム21の角度に基づいて、制御弁30を制御する。即ち、制御装置11は、実際位置(リフトアーム21の実際の角度)と、目標値(リフトアーム21の目標角度)と、の偏差ΔDが零になるように、制御弁30を制御し、リフトシリンダ26を動作させる。リフトアームセンサ15は、例えば、ポテンショメータ等の回転変位形の可変抵抗器である。リフトアームセンサ15は、検出した角度の信号(角度信号)を制御装置11に出力する。
【0062】
なお、リフトアームセンサ15は、リフトアーム21の角度を検出できればよく、これに限定されない。また、検出装置15は、リフトアーム21の実際の位置を検出するためのパラメータを検出することができればよく、例えばリフトシリンダ26の伸長(ストローク)を検出するリフトシリンダセンサであってもよい。斯かる場合、制御装置11は、リフトアーム21の位置として、リフトシリンダ26の伸長量に基づいて、制御弁30を制御する。即ち、制御装置11は、実際位置(リフトシリンダ26の実際の伸長量)と、目標値(リフトシリンダ26の目標伸長量)と、の偏差ΔDが零になるように、制御弁30を制御し、リフトシリンダ26を動作させる。
【0063】
また、制御装置11は、リフトアーム21の位置として、リフトアーム21の所定の位置(例えば後端部)の鉛直方向の高さに基づいて、制御弁30を制御してもよい。斯かる場合、制御装置11は、検出装置15が検出したパラメータ(リフトアーム21の実際の角度やリフトシリンダ26の実際の伸長量)と、所定の演算式に基づいて、リフトアーム21の後端部の鉛直方向の高さを演算する。また、制御装置11は、実際位置(例えばリフトアーム21の後端部の高さ)と、目標値(例えばリフトアーム21の後端部の目標高さ)と、の偏差ΔDが零になるように、制御弁30を制御し、リフトシリンダ26を動作させる。
【0064】
以下の説明においては、第1操作具42が、目標値としてリフトアーム21の角度を操作し、制御装置11が、実際位置(リフトアーム21の実際の角度)と、目標値(リフトアーム21の目標角度)と、の偏差ΔDが零になるように、制御弁30を制御する場合を例に説明する。
【0065】
第1操作具42は、例えばポジションレバー42aである。ポジションレバー42aは、作業装置3の昇降を操作するレバーであって、揺動操作を行うことができる。ポジションレバー42aには、当該ポジションレバー42aの操作量を検出するためのポテンショメータが設けられている。制御装置11は、当該ポテンショメータから出力された操作信号に基づいて、リフトアーム21の目標値(目標角度)を定義することができる。ポジションレバー42aの操作量が大きくなると、制御装置11は、当該操作量に応じて、目標値を高く定義する。一方、ポジションレバー42aの操作量が小さくなると、制御装置11は、当該操作量に応じて、目標値を小さく定義する。
【0066】
なお、第1操作具42は、ポジションレバー42aに限定されず、当該ポジションレバー42aとは別に、作業装置3の昇降を操作する昇降操作具42bであってもよい。昇降操作具42bは、タクタイルスイッチ等の押し釦スイッチや、シーソースイッチ等である。昇降操作具42bは、制御装置11と接続されており、当該制御装置11に操作信号を出力する。制御装置11は、昇降操作具42bの操作量(例えば操作時間又は操作回数)に応じて、目標値を定義する。本実施形態において、昇降操作具42bは、リフトアーム21の目標値を高く操作する上昇操作具42b1と、リフトアーム21の目標値を低く操作する下降操作具42b2と、を含んでいる。つまり、上昇操作具42b1が操作されると、制御装置11は、当該操作に応じて、目標値を高く定義する。一方、下降操作具42b2が操作されると、制御装置11は、当該操作に応じて、目標値を小さく定義する。
【0067】
図1に示すように、ポジションレバー42aは、保護機構6の内部に設けられており、昇降操作具42bは、保護機構6の外部(例えば昇降装置8の側方、リヤフェンダ)に設けられている。以下の説明において、ポジションレバー42aのように、保護機構6の内部に設けられている第1操作具42のことを「内部操作具」といい、昇降操作具42bのように、保護機構6の外部に設けられている第1操作具42のことを「外部操作具」ということがある。
【0068】
また、上述した例において、制御装置11が第1操作具42の操作量に応じて任意の目標値を定義する場合を例に説明したが、作業機1は、リフトアーム21の位置の上限値を操作する上限操作具43と、リフトアーム21の位置の下限値を操作する下限操作具44と、を備え、第1操作具42は、リフトアーム21の位置の上限値又は下限値までリフトアーム21を昇降させたりするポンパスイッチ45を含んでいてもよい。
【0069】
なお、作業機1が上限操作具43及び下限操作具44を備えている場合、制御装置11
は、第1操作具42としてポジションレバー42aや昇降操作具42bの操作に応じて、制御弁30を制御する際にも、リフトアーム21の位置の上限値以下、下限値以上の範囲でリフトアーム21を動作させる。
【0070】
制御装置11は、第1操作具42から出力された操作信号に基づいて、制御弁30に制御電流を出力することにより、制御弁30を制御する。例えば、制御装置11は、操作信号と、第1マップM1と、第2マップM2と、に基づいて制御弁30への制御電流の電流値Iを逐次に決定する。第1マップM1及び第2マップM2は、記憶部11aに予め記憶されている。
【0071】
なお、リフトアーム21を上昇させる場合、目標値のほうが実際位置よりも高くなるため、偏差ΔDは、正数となり、リフトシリンダ26を下降させる場合、目標値のほうが実際位置よりも低くなるため、偏差ΔDは、負数となるが、以下の説明においては、説明の都合上、偏差ΔDを目標値と実際位置との差の絶対値であるとして説明する。
【0072】
また、第1マップM1及び第2マップM2は、リフトアーム21を上昇させる場合とリフトアーム21を下降させる場合とで、それぞれ共通であってもよいし、異なっていてもよい。
【0073】
図5は、第1マップM1の一例を示す図である。第1マップM1は、実際位置と目標値との偏差ΔDと、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFと、の関係を示すマップ(グラフ)である。
図5に示すグラフにおいて、横軸は、実際位置と目標値との偏差ΔDを示しており、縦軸は、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFを示している。
図5に示す第1マップM1の例では、実際位置と目標値との偏差ΔDが大きくなるにつれて、目標流量TFは、急激に増加してから徐々に増加するよう変化する。
【0074】
なお、
図5に示す第1マップM1は一例であって、目標流量TFは、実際位置と目標値との偏差ΔDが大きくなるにつれて、徐々に増加してから急激に増加するように変化してもよいし、比例して増加して略直線を描くように変化してもよい。
【0075】
図6は、第2マップM2の一例を示す図である。第2マップM2は、予め定められた制御弁30(例えば標準制御弁)に出力する制御電流の電流値Iと、当該制御弁30からの作動油の流量(供給量DF)と、の関係を示すマップ(グラフ)である。標準制御弁は、中央品の制御弁30である。つまり、第2マップM2は、標準制御弁の設計データ上又は理論データ上の流量特性SCに基づいて定義されている。標準流量特性SCは、標準制御弁の流量特性であり、例えば、設計データ上又は理論データ上の流量特性としている。このため、標準流量特性SCは、標準制御弁の設計上又は理論上の流量特性である。
【0076】
なお、標準流量特性SCは、複数の制御弁30について測定された各流量特性の測定データを平均化又は標準化などの演算処理を行うことで取得された流量特性としてもよい。つまり、標準流量特性SCは、複数の実測データに基づく流量特性としてもよい。また、標準流量特性SCとして、製造会社等が提示する制御弁30の標準的な製品スペックデータが示す流量特性としてもよい。
【0077】
図6に示すグラフにおいて、横軸は、制御電流の電流値Iを示しており、縦軸は、供給量DFを示している。
図6に示す第2マップM2の例では、制御電流の電流値Iが大きくなるにつれて、供給量DFは、徐々に増加してから急激に増加するよう変化する。
【0078】
なお、
図6に示す第2マップM2は一例であって、所定の制御弁30の設計データ上又は理論データ上の流量特性に基づいて定義されていればよい。
【0079】
従って、制御装置11は、まず実際位置と目標値との偏差ΔDを演算すると、リフトアーム21の動作方向(上昇又は下降)に応じて、第1マップM1及び第2マップM2を取得する。制御装置11は、当該偏差ΔDと第1マップM1とに基づいて、目標流量TFを取得する。制御装置11は、目標流量TFを取得すると、当該目標流量TFと第2マップM2とに基づいて制御電流の電流値Iを取得する。これにより、制御装置11は、取得した電流値Iを制御弁30に出力することで制御弁30を制御する。
【0080】
ここで、制御装置11は、偏差ΔDが徐々に小さくなるに連れて電流値Iを徐々に小さくする。また、制御装置11は、偏差ΔDが零になると、制御弁30への制御電流の電流
値Iを零にする。このように、制御装置11は、第1操作具42の操作に応じて、制御弁30を制御して、リフトシリンダ26を駆動させることができる。
【0081】
図2に示すように、作業機1は、第2操作具46を備えており、制御装置11は、第1操作具42の操作に加えて、当該第2操作具46の操作に応じて、制御弁30を制御する。第2操作具46は、駆動装置(昇降装置)8の操作を制限する制限値Vを操作するための操作装置10である。本実施形態において、制限値Vは、第1操作具42による駆動装置8の操作を制限する値である。第2操作具46は、回転操作を受け付ける操作具であり、操作量に応じて、制限値Vが割り当てられている。第2操作具46には、制限値Vとして、0~100%の範囲の値が割り当てられている。制御装置11は、第2操作具46の操作信号を取得し、当該操作信号に基づいて制限値Vを取得する。制御装置11は、取得した操作信号と、所定の演算式又は記憶部11aに記憶され且つ操作信号と制限値Vとの関係を示す操作マップと、に基づいて、制限値Vを取得する。
【0082】
制御装置11は、制限値Vが低くなるほど第1操作具42による昇降装置8の操作を制限して、制限値Vが高くなるほど第1操作具42による昇降装置8の操作を制限しない。つまり、制御装置11は、制限値Vが0%である場合、第1操作具42による昇降装置8の操作を最も制限し、制限値Vが100%である場合、第1操作具42による昇降装置8の操作を制限しない。
【0083】
なお、制限値Vの定義は一例であって、制御装置11は、制限値Vが0%である場合に第1操作具42による昇降装置8の操作を制限せず、制限値Vが100%である場合に、第1操作具42による昇降装置8の操作を最も制限してもよいし、制限値Vの大きさと第1操作具42による昇降装置8の操作の制限度合いとの関係や、制限値Vの範囲は、上述した定義に限定されない。
【0084】
図7に示すように、本実施形態において、第2操作具46は、表示装置12の表示部12aに表示される表示画像である。つまり、表示装置12及びジョグダイヤル41が操作装置10(第2操作具46)を兼用する。ジョグダイヤル41を操作することで、表示装置12は、表示部12aに第2操作具46を表示する操作画面MD1を表示する。
図7に示す例において、第2操作具46は、選択表示部46aと、ゲージ画像46bと、指標部46cと、を含んでいる。
【0085】
選択表示部46aは、ジョグダイヤル41を操作することで、第2操作具46の操作が可能であることを示す表示画像である。選択表示部46aは、第2操作具46の操作が可能である場合と、不可能である場合と、で表示形態を変更する。本実施形態において、選択表示部46aは、略円形の表示画像である。本実施形態において、第2操作具46の操作が可能である場合、不可能である場合に比べて、外形の太さ及び色彩を異ならせる。
【0086】
ゲージ画像46bは、制限値Vを示す帯状の表示画像である。ゲージ画像46bは、選択表示部46aを取り囲む円弧状の画像として表示される。ゲージ画像46bは、選択表示部46aの中心部を中央とする円(仮想円O)の一部をなす位置に配置されている。ゲージ画像46bの反時計回り側の端部は、制限値Vが0%であることを示し、時計回り側の端部は、制限値Vが100%であることを示す。ゲージ画像46bのうち、反時計回り側の端部の近傍には、制限値Vが0%であることを示すカメのアイコンが表示され、時計回り側の端部の近傍には、制限値Vが100%であることを示すウサギのアイコンが表示される。
【0087】
指標部46cは、ジョグダイヤル41の操作に伴って、回転操作される表示画像である。指標部46cは、例えばゲージ画像46bの少なくとも近傍に配置され、現在の制限値Vを指し示す表示画像である。具体的には、指標部46cは、ジョグダイヤル41の操作に応じて、仮想円Oの中央を回転軸としてゲージ画像46b上に沿って移動する。指標部46cは、制限値Vが高くなるにつれてゲージ画像46bを時計回りに移動し、制限値Vが低くなるにつれて、ゲージ画像46bを反時計回りに移動する。
【0088】
第2操作具46の操作について説明すると、作業者は、ジョグダイヤル41を操作して、第2操作具46が操作可能である状態にした場合、当該ジョグダイヤル41を時計回りに回転操作することで、指標部46cを時計回りに移動させ、制限値Vを高くすることが
できる。一方、作業者は、第2操作具46が操作可能である状態において、ジョグダイヤル41を反時計回りに回転操作することで、指標部46cを反時計回りに移動させ、制限値Vを低くすることができる。作業者は、ジョグダイヤル41を押圧操作することにより制限値Vを確定する。
【0089】
ジョグダイヤル41を操作することによる第2操作具46の操作信号は、表示装置12から制御装置11に出力される。
【0090】
また、上述した実施形態において、第2操作具46は、回転操作を受け付ける表示画像であって、ジョグダイヤル41によって間接的に操作される操作具であるが、少なくとも制限値Vの操作ができればよく、その構成は上述した構成に限定されない。例えば、第2操作具46は、ジョグダイヤル41を介さずに、作業者によって直接操作される物理的なダイヤルスイッチで構成されていてもよい。
【0091】
また、第2操作具46で操作した制限値Vは、記憶部11aに記憶(保持)される。このため、スタータリレー14をオフした場合であっても、制御装置11は、記憶部11aに記憶されている制限値Vを取得することができ、スタータリレー14をオン(オフ)する都度、第2操作具46を操作しなくてもよい。
【0092】
制御装置11は、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度(開始速度)を変更する。具体的には、制御装置11は、制限値Vが所定の閾値以上である場合、当該制限値Vに応じて、昇降装置8の駆動開始後の駆動速度を変更する第1制御を行う。一方、制御装置11は、制限値Vが閾値未満である場合、第1制御に加え、当該制限値Vに応じて、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の最大流量MFを変更する第2制御を行う。閾値は、予め定められた所定の値であって、本実施形態においては50%である。なお、閾値は、50%に限定されず、例えば40%であってもよいし、60%であってもよい。さらに、閾値は、記憶部11aに記憶されており、ジョグダイヤル41等を操作することで任意に変更できてもよい。
【0093】
本実施形態において、制御装置11は、第1操作具42の操作に応じて、リフトアーム21を上昇させる場合に、第1制御、又は第1制御及び第2制御を行う。一方、制御装置11は、第1操作具42の操作に応じて、リフトアーム21を下降させる場合に、第1制御及び第2制御を行わない。言い換えると、制御装置11は、リフトアーム21を上昇させる場合には、第1操作具42による昇降装置8の操作を制限して、リフトアーム21を下降させる場合には、第1操作具42による昇降装置8の操作を制限しない。
【0094】
まず、第1制御について詳しく説明する。制御装置11は、少なくとも制限値Vが閾値以上の範囲で、当該制限値Vに応じて、昇降装置(駆動装置)8の開始速度を変更する。制御装置11は、制限値Vが閾値未満である場合には、制限値Vが閾値である場合と同一の第1制御を行う。また、制御装置11は、制限値Vが高くなるにつれて昇降装置8の開始速度を高くし、制限値Vが低くなるにつれて昇降装置8の開始速度を低くする。
【0095】
つまり、本実施形態において、制御装置11は、制限値Vが50%以上であり、且つ100%以下である範囲において、制限値Vが高くなるにつれて開始速度を高くし、制限値Vが低くなるにつれて開始速度を低くして、制限値Vが50%未満である場合には、開始速度を一定にする。
【0096】
具体的には、制御装置11は、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて、第2マップM2に基づいて取得する電流値Iよりも低い電流値Iを制御弁30に出力することで、昇降装置8の開始速度を変更する。例えば、制御装置11は、制限値Vが低くなるにつれて第2マップM2を電流値Iが低くなるよう補正する。つまり、制御装置11は、制限値Vが100%である場合、第1制御で第2マップM2を補正せず、制限値Vが50%以下である場合、第1制御による第2マップM2の補正量(補正度合)が大きくなる。
【0097】
制御装置11は、当該補正後の第2マップM2に基づいて電流値Iを取得し、補正前の第2マップM2に基づいて取得する電流値Iよりも低い電流値Iを制御弁30に出力する。
図8は、制限値Vが100%である場合の第2マップM2と、制限値Vが50%である場合の第2マップM2を示す図である。
図8では、制限値Vが100%である場合の第2マップM2を実線で記載し、制限値Vが50%である場合の第2マップM2を一点鎖線で
記載している。
図8に示すグラフにおいて、横軸は、制御電流の電流値Iを示しており、縦軸は、供給量DFを示している。
【0098】
制御装置11は、制限値Vに基づく所定の補正値によって、第2マップM2の制御電流の電流値Iを補正し、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて電流値Iを減少させる。一方、制御装置11は、制限値Vが閾値から増加するにつれて、補正前の第2マップM2の制御電流の電流値Iに近づくように、電流値Iを補正する。
【0099】
このため、制御装置11が補正値によって第2マップM2を補正すると、補正後の第2マップM2は、
図8に示すように、補正値によって一律の割合で、電流値Iが零になる方向にオフセットする。そして、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて、制御装置11は、補正後の第2マップM2を電流値Iが零になる方向にオフセットする。言い換えると、制御装置11は、制限値Vが閾値から増加するにつれて、補正後の第2マップM2を標準流量特性SCに近づけ、制限値Vが閾値から減少するにつれて、補正後の第2マップM2を標準流量特性SCから遠ざける。
【0100】
従って、制御装置11から制御電流を出力された制御弁30は、偏差ΔDが同じ場合であっても、制限値Vが閾値から増加するにつれて、開度を大きくして、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて、開度を小さくする。なお、以下の説明において、補正後の第2マップM2に基づいて取得された電流値Iのことを補正電流値CIという。
【0101】
制御装置11は、記憶部11aに予め記憶され、且つ補正値と制限値Vとの関係を示す補正マップを取得し、当該補正マップと、制限値Vに基づいて補正値を取得する。本実施形態において、補正値は、補正前の第2マップM2の制御電流の電流値Iに乗算する係数である。このため、補正値は、制限値Vが100%である場合に最大値(本実施形態においては、1)である。また、補正値は、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて減少し、制限値Vが50%以下である場合に、最小値となる。
【0102】
より詳しくは、制限値Vが閾値以下である場合の補正値(補正値の最小値)は、標準流量特性SCに比べて供給量DFが多い上限品の制御弁30の流量特性(上限流量特性UC)と、標準流量特性SCと、の所定の供給量(基準供給量BF)における制御電流の電流値Iによって定義されている。基準供給量BFは、油圧ポンプP等の油圧システムを構成する機器の製造誤差等に起因して、少なくとも制御弁30に供給され、当該制御弁30が供給することができる流量である。
【0103】
図9は、標準流量特性SCと上限流量特性UCとを示す図である。
図9では、標準流量特性SCを実線で記載し、上限流量特性UCを一点鎖線で記載している。
図9に示すグラフにおいて、横軸は、制御電流の電流値Iを示しており、縦軸は、供給量DFを示している。
【0104】
上限流量特性UCは、上限品の制御弁30の流量特性であり、例えば、設計データ上又は理論データ上の流量特性としている。つまり、上限流量特性UCは、上限品の制御弁30の設計上又は理論上の流量特性である。なお、上限流量特性UCは、複数の制御弁30について測定された各流量特性の測定データを平均化又は標準化などの演算処理を行うことで取得された流量特性としてもよい。つまり、上限流量特性UCは、複数の実測データに基づく流量特性としてもよい。
【0105】
供給量DFが基準供給量BFである場合において、標準流量特性SCの制御電流の電流値Iを第1電流値I1として、上限流量特性UCの制御電流の電流値Iを第2電流値I2とすると、補正値の最小値は、第1電流値I1に対する第2電流値I2の割合によって定義されている。このため、例えば、第1電流値I1が2500mAであって、第2電流値I2が2100mAである場合、補正値の最小値は、0.84となる。このため、制限値Vが50%以下である場合、補正値は、0.84となり、補正電流値CIは、制限値Vが100%である場合の制御電流の電流値Iよりも、0.16%(第1電流値I1に対する、第1電流値I1と第2電流値I2との差の絶対値ΔIの割合)だけ低い。
【0106】
また、本実施形態において制限値Vが50%から100%まで増加する場合、補正値は、0.84以上1以下の範囲で増加する。例えば、補正値は、制限値Vが50%から100%まで増加するにつれて、比例して増加する。このため、例えば、制限値Vが75%で
ある場合、補正値は、0.92となる。
【0107】
なお、補正値は、少なくとも制限値Vが50%から100%まで増加するにつれて増加すればよく、比例関係になくてもよい。
【0108】
また、上述した実施形態において、制御装置11が、記憶部11aに予め記憶された補正マップを取得し、当該補正マップから補正値を取得する場合を例に説明したが、補正値の最小値は、第1電流値I1に対する第2電流値I2の割合によって定義され、且つ少なくとも制限値Vが50%から100%まで増加するにつれて増加する値であればよく、制御装置11は、制限値Vが変更される都度、所定の演算式に基づいて補正値を演算し、第1制御を行うような構成であってもよい。
【0109】
また、上述した実施形態において、制御装置11が補正値によって第2マップM2を補正する場合を例に説明したが、制御装置11は、少なくとも第1制御において、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて、第2マップM2に基づいて取得する電流値Iよりも低い電流値Iを制御弁30に出力すればよく、第2マップM2ではなく第2マップM2に基づいて取得した電流値Iを補正値によって補正するような構成であってもよい。斯かる場合、制御装置11は、制限値Vに基づく補正値によって、第2マップM2に基づいて取得した制御電流の電流値Iを補正し、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて電流値Iを減少させる。一方、制御装置11は、制限値Vが閾値から増加するにつれて、第2マップM2に基づいて取得した制御電流の電流値Iに近づくように、電流値Iを補正する。
【0110】
制御装置11は、第2制御において、制限値Vが高くなるにつれて最大流量MFを多くし、制限値Vが低くなるにつれて最大流量MFを少なくする。ここで、最大流量MFとは、制御装置11の制御によって制御弁30が供給することができる作動油の流量の最大値のことである。本実施形態においては、制御装置11は、制限値Vに応じて第2マップM2を補正することで、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の最大流量MFを変更する。つまり、制限値Vが閾値未満である場合、第1制御に加えて第2制御を行うため、制限値Vが閾値以上から閾値未満に減少すると、制御装置11は、第1制御で補正した第2マップM2を、当該第1制御とは異なる第2制御でさらに補正する。
【0111】
制御装置11は、制限値Vに応じて制限流量CFを取得し、当該制限流量CFに基づいて第2マップM2を補正する。例えば、制御装置11は、記憶部11aに予め記憶され、且つ制限流量CFと制限値Vとの関係を示す制限マップを取得し、当該制限マップと、制限値Vに基づいて制限流量CFを取得する。制限流量CFは、制限値Vが減少するにつれて、減少し、当該制限値Vと比例関係にある。
【0112】
制限値Vが0%であるときの制限流量CF、即ち制限流量CFの最小値は、補正前の第2マップM2における最大流量MFの50%の流量である。また、制限値Vが25%であるときの制限流量CFは、補正前の第2マップM2における最大流量MFの75%の流量である。
【0113】
このため、制限値Vが100%である場合の第2マップM2の最大流量MFが100L/minであるとすると、制限値Vが25%であるときの制限流量CFは、75L/minとなり、制限値Vが0%であるときの制限流量CFは、50L/minとなる。
【0114】
図10は、制限値Vが50%である場合の第2マップM2と、制限値Vが25%である場合の第2マップM2と、制限値Vが0%である場合の第2マップM2と、を示す図である。
図10において、制限値Vが50%である場合の第2マップM2は実線で記載されている。制限値Vが25%である場合の第2マップM2は、一点鎖線で記載されている。制限値Vが0%である場合の第2マップM2は、二点鎖線で記載されている。
図10に示すグラフにおいて、横軸は、制御電流の電流値Iを示しており、縦軸は、供給量DFを示している。
【0115】
制御装置11は、第1制御で補正した第2マップM2をさらに補正して、制限流量CFよりも高い供給量DFを制限流量CFに補正する。このため、
図10に示すように、第1制御及び第2制御で補正された第2マップM2は、制限値Vが25%である場合、75L/min以下に補正され、制限値Vが0%である場合、50L/min以下に補正される。
【0116】
従って、制御装置11は、制限値Vが50%未満である場合、第2マップM2の補正を行い、第1マップM1から取得した目標流量TFと補正後の第2マップM2とに基づいて制御電流の電流値Iを取得する。ここで、補正後の第2マップM2における最大流量MF(制限流量CF)が目標流量TF未満である場合、制御装置11は、供給量DFが最大流量MFである電流値Iを取得する。
【0117】
なお、制限流量CFは、少なくとも制限値Vが50%から0%まで減少するにつれて減少すればよく、比例関係になくてもよい。
【0118】
また、制御装置11は、第2制御において、制限値Vが高くなるにつれて最大流量MFを多くし、制限値Vが低くなるにつれて最大流量MFを少なくすればよく、第2マップM2に代えて第1マップM1を補正してもよい。
【0119】
また、上述した実施形態において、制御装置11が、記憶部11aに予め記憶された制限マップを取得し、当該制限マップから制限流量CFを取得する場合を例に説明したが、制限流量CFは、少なくとも制限値Vが50%から0%まで減少するにつれて減少する値であればよく、制御装置11は、制限値Vが変更される都度、所定の演算式に基づいて制限流量CFを演算して、第2制御を行うような構成であってもよい。
【0120】
以下、制御装置11が行う第1制御及び第2制御の処理を含む一連の流れを説明する。
図11は、制御装置11が行う第1制御及び第2制御の処理を含む一連の流れを示す図である。
図11に示す一連の処理は、制御装置11の記憶部11aに予め記憶されたソフトウェアプログラムに基づいて、CPUにより実行される。まず、制御装置11は、第2操作具46が操作されたか否かを判断する(S1)。制御装置11は、第2操作具46の操作信号を取得し、第2操作具46が操作されたと判断した場合(S1:Yes)、当該操作信号に基づいて、制限値Vを取得する(S2)。なお、制御装置11は、S2において制限値Vを取得すると、当該制限値Vを記憶部11aに記憶させる。一方、制御装置11は、第2操作具46が操作されていないと判断した場合(S1:No)、記憶部11aに制限値Vが保持されているか否かを判断する(S3)。
【0121】
制御装置11は、記憶部11aに制限値Vが保持されていると判断した場合(S3:Yes)、当該制限値Vを取得する(S4)。制御装置11は、S2又はS4において、制限値Vを取得すると、当該制限値Vが閾値以上であるか否かを判断する(S5)。
【0122】
制御装置11は、制限値Vが閾値以上であると判断した場合(S5:Yes)、取得した制限値Vに基づいて第1制御を行う(S6、第1ステップ)。一方、制御装置11は、制限値Vが閾値未満であると判断した場合(S5:No)、取得した制限値Vに基づいて第1制御及び第2制御を行う(S7、第2ステップ)。
【0123】
以上より、作業者は、第2操作具46で制限値Vを操作し、第1制御によって、昇降装置8の駆動開始後の駆動速度を変更することができる。また、作業者は、第2操作具46を操作して制限値Vを閾値よりも低くすることで、第1制御に加えて、当該第1制御とは別の第2制御によって、昇降装置8の駆動速度をさらに減少することができる。このため、第2操作具46の操作によって、作業機1は、駆動開始後のショックの発生を抑制と昇降装置8による作業効率とのバランスを適切に調整できる。
【0124】
本発明の一態様に係る作業機1は、作動油によって動作する油圧アクチュエータ26を有する駆動装置8と、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を変更する制御装置11と、を備え、制御装置11は、駆動装置8の操作を制限する制限値Vが所定の閾値以上である場合、当該制限値Vに応じて、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を変更する第1制御を行い、制限値Vが閾値未満である場合、第1制御に加え、当該制限値Vに応じて、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の最大流量MFを変更する第2制御を行う。
【0125】
この構成によれば、制限値Vが閾値以上である場合には、当該制限値Vに応じて、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を変更することができ、制限値Vが閾値よりも低い場合には、第1制御に加えて、当該第1制御とは別の第2制御によって、駆動装置8の駆動速度をさらに減少することができる。このため、作業機1は、制限値Vの大きさに応じて、駆動開始後のショックの発生を抑制と駆動装置8による作業効率とのバランスを適切に調整できる。
【0126】
また、制御装置11は、第1制御において、少なくとも制限値Vが閾値以上の範囲で、当該制限値Vに応じて、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を変更し、制限値Vが閾値未満である場合には、制限値Vが閾値である場合と同一の第1制御を行う。
【0127】
この構成によれば、制限値Vが閾値以上の範囲において、第1制御による駆動装置8の駆動速度を十分に変更することができ、制限値Vが閾値未満である場合には、第2制御によって、さらに駆動装置8の駆動速度を低減することができる。
【0128】
また、制御装置11は、第1制御において、制限値Vが高くなるにつれて駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を高くし、制限値Vが低くなるにつれて駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を低くする。
【0129】
この構成によれば、制限値Vの値の大きさに対する駆動速度に違和感が生じることを抑制できる。
【0130】
また、作業機1は、駆動装置8を操作するための第1操作具42と、油圧アクチュエータ26を制御する制御弁30と、を備え、駆動装置8は、油圧アクチュエータ26によって駆動される駆動部材21を有し、第1操作具42は、駆動部材21の位置の目標値を操作し、制御装置11は、駆動部材21の実際の位置である実際位置と目標値との偏差ΔDと、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFと、の関係を示す第1マップM1、及び予め定められた制御弁30に出力する制御電流の電流値Iと、当該制御弁30からの作動油の流量(供給量)DFと、の関係を示す第2マップM2に基づいて、制御弁30を制御する。
【0131】
上記構成によれば、第1制御によって、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を変更し、第2制御によって、目標流量TFを変更するため、第1操作具42の操作に対する駆動装置8の応答性(感度)を変更することができる。
【0132】
また、制御装置11は、第1制御において、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて、第2マップM2に基づいて取得する電流値Iよりも低い電流値Iを制御弁30に出力する。
【0133】
この構成によれば、制限値Vの大きさに応じて、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を適切に変更することができる。
【0134】
また、制御装置11は、第1制御において、制限値Vに基づく所定の補正値によって、第2マップM2又は第2マップM2に基づいて取得した電流値Iを補正し、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて電流値Iを減少させる。
【0135】
この構成によれば、制限値Vに基づく補正値によって、制御電流の電流値Iを補正し、比較的簡単な処理によって駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を変更できる。
【0136】
また、第2マップM2は、所定の制御弁30である標準制御弁に出力する電流値Iと、当該標準制御弁からの作動油の流量DFと、の関係を示す標準流量特性SCに基づいて定義されており、制限値Vが閾値以下である場合の補正値は、標準流量特性SCに比べて作動油の流量DFが多い上限品の制御弁30の流量特性と、標準流量特性SCと、の所定の作動油の流量BFにおける電流値Iによって定義されている。
【0137】
この構成によれば、制限値Vが低くなるにつれて、第2マップM2を上限品の制御弁30の流量特性に実質的に近づけるため、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を変更しつつも、制限値Vを変更することで上限品の制御弁30と標準制御弁とのばらつきを抑制することができる。
【0138】
また、作業機1は、制限値Vを操作する第2操作具46を備え、第2操作具46は、操作量に応じて、制限値Vが割り当てられている。
【0139】
この構成によれば、作業者は、ダイヤル状の第2操作具46を回転操作することで、直感的且つ迅速に制限値Vを操作できる。
【0140】
また、駆動装置8は、油圧アクチュエータ26の駆動によって駆動される駆動部材21を有し、作業装置3を昇降可能な昇降装置であり、油圧アクチュエータ26は、リフトシリンダ26であり、駆動部材21は、リフトシリンダ26の駆動によって駆動されるリフトアーム21である。
【0141】
この構成によれば、上述した特有の効果を奏することかでき、作業装置3を昇降させる
際の、駆動開始後のショックの発生を抑制と作業装置3を昇降させることによる作業効率とのバランスを適切に調整できる。
【0142】
また、制御装置11は、第1操作具42の操作に応じて、リフトアーム21を上昇させる場合に、第1制御、又は第1制御及び第2制御を行い、第1操作具42の操作に応じて、リフトアーム21を下降させる場合に、第1制御及び第2制御を行わない。
【0143】
この構成によれば、作業装置3を上昇させる場合に、上述した特有の効果を奏することかできる。
【0144】
また、制御装置11は、第2制御において、制限値Vが高くなるにつれて最大流量MFを多くし、制限値Vが低くなるにつれて最大流量MFを少なくする。
【0145】
この構成によれば、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を速くしたい場合、作業者は、制限値Vを高くし、遅くしたい場合、制限値Vを低くすればよい。このため、作業者は違和感なく制限値Vを操作することができる。
【0146】
また、作業機1の制御方法は、作動油によって動作する油圧アクチュエータ26を有する駆動装置8と、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を変更する制御装置11と、を備えた作業機1の制御方法であって、駆動装置8の操作を制限する制限値Vが所定の閾値以上である場合、制御装置11が当該制限値Vに応じて、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を変更する第1制御を行う第1ステップと、制限値Vが閾値未満である場合、制御装置11が第1制御に加え、当該制限値Vに応じて、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の最大流量MFを変更する第2制御を行う第2ステップと、を含んでいる。
【0147】
この構成によれば、制限値Vが閾値以上である場合には、当該制限値Vに応じて、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を変更することができ、制限値Vが閾値よりも低い場合には、第1制御に加えて、当該第1制御とは別の第2制御によって、駆動装置8の駆動速度をさらに減少することができる。このため、作業機1は、制限値Vの大きさに応じて、駆動開始後のショックの発生を抑制と駆動装置8による作業効率とのバランスを適切に調整できる。
[第2実施形態]
図12は、作業機1及び作業機1の制御方法の別の実施形態(第2実施形態)を示す。以下、第2実施形態の作業機1及び作業機1の制御方法について、上述した実施形態(第1実施形態)と異なる構成を中心に説明し、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0148】
第2実施形態では、制御装置11は、第1実施形態の第1制御とは異なる第1制御を行い、制限値Vに応じて、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を変更する。特に第1実施形態における第1制御では、制限値Vに応じて第2マップM2又は制御電流の電流値Iを補正することで、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を変更していたが、第2実施形態における第1制御では、第2マップM2及び電流値Iを補正しない点で第1実施形態における第1制御と異なっている。
【0149】
具体的には、第2実施形態の制御装置11は、第1制御として、第1操作具42が操作され、駆動装置8が駆動を開始してからの経過時間tをカウントし、当該経過時間tが短いほど目標流量TFを制限する。
【0150】
具体的には、制御装置11は、ポテンショメータから出力された操作信号に基づいて、第1操作具42が操作されているか否かを検出し、例えば、制御装置11内に設けられた計時部(タイマー)によって第1操作具42が操作されてからの経過時間tを計測することができる。なお、計時部は、第1操作具42が操作されてからの経過時間tを計測し、第1操作具42が操作されていないことが検出されると、計測している当該経過時間tをリセットする。
【0151】
制御装置11は、第1制御において、第3マップM3に基づいて目標流量TFを制限する。
図13は、第3マップM3の一例を示す図である。
図13において、制限値Vが100%である場合の第3マップM3は実線で記載されている。制限値Vが75%である場合の第3マップM3は、一点鎖線で記載されている。制限値Vが50%以下である場合の第3マップM3は、二点鎖線で記載されている。
図13に示すように、第3マップM3は、
経過時間tと目標流量TFとの関係を示すマップ(グラフ)である。
図13に示すグラフにおいて、横軸は、経過時間tを示しており、縦軸は、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFを示している。
【0152】
なお、以下の説明において、第3マップM3で定義されている目標流量TFのことを「制限目標流量CT」という。
図13に示す第3マップM3の例では、経過時間tが長くなるにつれて、制限目標流量CTは、徐々に増加してから急激に増加するよう変化する。第3マップM3は、記憶部11aに予め記憶されている。このため、制御装置11は、経過時間tに応じて、第3マップM3から制限目標流量CTを取得して、当該取得した制限目標流量CTによって、目標流量TFを制限する。
【0153】
即ち、制御装置11は、第3マップM3から取得した制限目標流量CTが、操作具の操作信号及び第1マップM1に基づいて取得した目標流量TFを超過している場合、目標流量TFを制限目標流量CTに制限し、制限目標流量CTと第2マップM2とに基づいて制御電流の電流値Iを取得する。なお、経過時間tが第3マップM3で定義されている経過時間tの範囲の最大値tmax1を超過した場合、制御装置11は、当該最大値tmax1に対応する制限目標流量CTに基づいて、第1制御を行う。
【0154】
また、
図13に示す第3マップM3は一例であって、
図13に示す例において、第3マップM3は、傾きが異なる複数の区間を含んでいるが、少なくとも第3マップM3は、経過時間tが長くなるにつれて、制限目標流量CTが増加するよう変化していればよく、第3マップM3は、経過時間tが長くなるにつれて、下に凸の曲線を描いて増加してもよいし、略直線を描いて比例して増加してもよい。
【0155】
制御装置11は、第1制御において、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて、経過時間tに対する制限目標流量CTが少ない第3マップM3を取得する。本実施形態においては、記憶部11aは、制限値Vに対応する第3マップM3をそれぞれ記憶しており、制御装置11は、制限値Vに応じて、記憶部11aから制限値Vに対応する第3マップM3を取得する。また、複数の第3マップM3は、所定の基準マップを基準として、制限値Vの大きさに応じた値(低下率)を乗算することで定義されている。例えば、低下率は、制限値Vと略比例関係にあり、制限値Vが低くなるにつれて、低くなるよう定義されている。基準マップは、例えば制限値Vが100%である場合の第3マップM3である。
【0156】
このため、複数の第3マップM3は、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて、経過時間tに対する制限目標流量CTが少なくなるよう定義されている。つまり、最も制限目標流量CTが多い第3マップM3は、制限値Vが100%である場合の第3マップM3であり、最も制限目標流量CTが少ない第3マップM3は、制限値Vが50%以下である場合の第3マップM3である。
【0157】
また、所定の制限値V(第1制限値)の第3マップM3における制限目標流量CTは、いずれの経過時間tにおいても、当該第1制限値よりも低い制限値V(第2制限値)の第3マップM3の制限目標流量CTよりも多くなる。つまり、第1制限値の第3マップM3は、いずれの経過時間tにおいても、第2制限値の第3マップM3と交差しない。
【0158】
図13に示す例において、制限値Vが75%である場合の第3マップM3は、基準マップ(制限値Vが100%である場合の第3マップM3)に、低下率0.6を乗算して定義されている。また、制限値Vが50%以下である場合の第3マップM3は、基準マップに、低下率0.2を乗算して定義されている。
【0159】
なお、低下率は、制限値Vが低くなるにつれて、低くなるよう定義されていればよく、比例関係になくてもよい。
【0160】
また、上述した実施形態において、制御装置11が、制限値Vに応じて、記憶部11aに予め記憶された第3マップM3を取得する場合を例に説明したが、制御装置11は、第1制御において、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて、経過時間tに対する目標流量TFが少ない第3マップM3を取得すればよく、制御装置11は、制限値Vが変更される都度、所定の演算式に基づいて基準マップから第3マップM3を演算して、第1制御を行うような構成であってもよい。
【0161】
また、制御装置11は、作業装置3が行う作業の内容に応じて、異なる第3マップM3
を取得してもよい。本実施形態においては、サブソイラ、プラウ、及びカルチベータ等の牽引耕耘装置のように、昇降装置8が作業装置3を接地させて、当該牽引耕耘装置を牽引するような作業(牽引作業)を行う場合において、
図14に示す第3マップM3(以下、説明の都合上、標準マップM3Aという)に代えて、
図14に示すような第3マップM3(以下、説明の都合上、第1変更マップM3Bという)を取得してもよい。
図14に示すように、第1変更マップM3Bは、
図13に示す標準マップM3Aと同様に、経過時間tと目標流量TFとの関係を示すマップ(グラフ)である。
図14に示すグラフにおいて、横軸は、経過時間tを示しており、縦軸は、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFを示している。
【0162】
図14に示す例においては、制限値Vが100%である場合の第1変更マップM3Bを実線で記載し、制限値Vが75%である場合の第1変更マップM3Bを一点鎖線で記載している。そして、
図14に示す例において、制限値Vが50%以下である場合の第1変更マップM3Bを二点鎖線で記載している。さらに、
図14に示す例においては、比較対象として、制限値Vが100%である場合の標準マップM3Aを破線で記載している。
【0163】
本実施形態において、制御装置11は、作業装置3が牽引耕耘装置である場合に使用する機能が有効又は無効であるかに基づいて、作業装置3が牽引耕耘装置であるか否かを判断し、標準マップM3A又は第1変更マップM3Bを取得する。具体的には、制御装置11は、標準のモードであるポジションモードと、作業装置3が牽引耕耘装置である場合に使用するドラフトモードと、に切り替えることができる。
【0164】
ポジションモードは、第1操作具42の操作によって昇降装置8を操作するポジション制御を行うモードである。一方、ドラフトモードは、第1操作具42の操作によって昇降装置8を操作し、且つ作業装置3の牽引負荷に応じて昇降装置8を自動的に昇降し、所定の牽引負荷を維持するドラフト制御(ドラフトコントロール)を行うモードである。つまり、ドラフトモードは、サブソイラ、プラウ、及びカルチベータ等の牽引耕耘装置のように、作業機1が当該牽引耕耘装置を牽引することで負荷が生じる作業を行う際に有効にするモードである。
【0165】
ポジションモードとドラフトモードとの切替は、操作装置10であるモード切替スイッチ47によって行う。モード切替スイッチ47は、タクタイルスイッチ等の押し釦スイッチや、シーソースイッチ等である。モード切替スイッチ47は、制御装置11と接続されており、当該制御装置11に操作信号を出力する。制御装置11は、操作信号、即ちモード切替スイッチ47の操作に応じて、ポジションモードとドラフトモードとを切り替える。
【0166】
なお、上述したモード切替スイッチ47は、一例であって、制御装置11は、表示装置12に入力された情報に基づいて、ポジションモードとドラフトモードとを切り替えてもよい。
【0167】
図13、
図14に示すように、第1変更マップM3Bは、同一の制限値Vにおける標準マップM3Aに比べて経過時間tに対する目標流量TFの傾きが大きく定義されている。つまり、制御装置11がポジションモードで第1制御を行う場合に比べて、制御装置11がドラフトモードで第1制御を行う場合の方が、同一の経過時間tにおける目標流量TFは制限されない。また、第1変更マップM3Bで定義されている経過時間tの範囲の最大値tmax2は、標準マップM3Aで定義されている経過時間tの範囲の最大値tmax1よりも小さく定義されている。
【0168】
さらに、制限値Vが同値である場合における当該経過時間tの範囲の最大値tmax1,tmax2における制限目標流量CT(最大目標流量CTmax1,CTmax2)は、第1変更マップM3Bと標準マップM3Aとで同値である。このため、同一の経過時間tにおいて、実際位置と目標値との偏差ΔDが同一である場合、ポジションモードに比べて、ドラフトモードの方が駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を速くすることができる。
【0169】
なお、上述した実施形態において、制御装置11は、作業機1が備える機能の有効又は無効に応じて、作業機1による作業内容が牽引作業であると判断しているが、表示装置12が作業内容の入力を受け付け、制御装置11が当該作業内容を取得し、牽引作業である
かを判断する構成であってもよいし、その判断方法は、上述した方法に限定されない。
【0170】
また、制御装置11は、内部操作具42aを操作した場合、外部操作具42bを操作した場合と異なる第3マップM3を取得してもよい。本実施形態においては、制御装置11は、内部操作具(ポジションレバー)42aが操作された場合、
図13に示す標準マップM3Aを取得し、外部操作具(昇降操作具)42bが操作された場合、当該標準マップM3Aに代えて、
図15に示すような第3マップM3(以下、説明の都合上、第2変更マップM3Cという)を取得してもよい。
図15に示すように、第2変更マップM3Cは、
図13に示す標準マップM3Aと同様に、経過時間tと目標流量TFとの関係を示すマップ(グラフ)である。
図15に示すグラフにおいて、横軸は、経過時間tを示しており、縦軸は、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFを示している。
【0171】
図15に示す例においては、制限値Vが100%である場合の第2変更マップM3Cを実線で記載し、制限値Vが75%である場合の第2変更マップM3Cを一点鎖線で記載している。そして、
図15に示す例において、制限値Vが50%以下である場合の第2変更マップM3Cを二点鎖線で記載している。さらに、
図15に示す例においては、比較対象として、制限値Vが100%である場合の標準マップM3Aを破線で記載している。
【0172】
本実施形態において、制御装置11は、ポジションレバー42aから出力された操作信号、及び昇降操作具42bから出力された操作信号に基づいて、ポジションレバー42a及び昇降操作具42bのいずれが操作されているかを判断する。
【0173】
図13、
図15に示すように、第2変更マップM3Cは、同一の制限値Vにおける標準マップM3Aに比べて経過時間tに対する目標流量TFの傾きが大きく定義されている。つまり、制御装置11がポジションモードで第1制御を行う場合に比べて、制御装置11がドラフトモードで第1制御を行う場合の方が、同一の経過時間tにおける目標流量TFは制限されない。
【0174】
また、第2変更マップM3Cで定義されている経過時間tの範囲の最大値tmax3は、標準マップM3Aで定義されている経過時間tの範囲の最大値tmax1よりも小さく定義されている。さらに、当該経過時間tの範囲の最大値tmax1、tmax3における最大目標流量CTmax1、CTmax3は、第2変更マップM3Cの方が標準マップM3Aに比べて小さく定義されている。
【0175】
このため、同一の経過時間tにおいて、実際位置と目標値との偏差ΔDが同一である場合、ポジションレバー42aに比べて、昇降操作具42bで操作する方が駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を速くすることができる一方で、細かな操作を行うことができる。
【0176】
第2実施形態の第1制御によれば、第1実施形態の第1制御と異なり、第2マップM2又は第2マップM2に基づいて取得した電流値Iを補正せずに、駆動装置8が駆動を開始してからの経過時間tに応じて、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を適切に変更できる。このため、制御装置11は、第1制御や第2制御とは異なる処理において、電流値Iを補正する処理を行っても、電流値Iを演算する処理が複雑化することを抑制できる。
【0177】
本実施形態において、制御装置11は、電流値Iを補正する処理として、第2マップM2(標準流量特性SC)に対してズレがある制御弁30に起因するリフトシリンダ26への流量バラツキの校正(キャリブレーション)を行う。
図16は、標準流量特性SC、上限流量特性UC、及び下限流量特性DC(下限品の制御弁30の流量特性)の一例を示す図である。
図17は、上限流量特性UC、及び下限流量特性DCのズレを補正した一例を示す図である。
図16、
図17において、標準流量特性SCを実線で記載し、上限流量特性UCを一点鎖線で記載し、下限流量特性DCを二点鎖線で記載している。
【0178】
制御装置11は、上限品の制御弁30の流量特性のズレ値を演算し、ズレ値を用いて制御弁30に出力する電流値Iを補正し、補正後の電流値Iの制御電流を制御弁30に出力する。つまり、制御装置11は、標準流量特性SCに対してズレがある
図16に示す上限品の制御弁30及び下限品の制御弁30の流量特性UC、UDを示す制御弁30自体を校正するのではなく、第2マップM2又は第2マップM2に基づいて取得した電流値Iに対して標準流量特性SCとのズレ値ΔFを加算補正することにより、
図17に示すように、標準流量特性SCに近づけた態様で使用することが可能になる。この校正を行うための構
成について、以下に具体的に説明する。
【0179】
作業機1は、
図12に示すように、校正モードに設定するために作業者により操作される校正モードスイッチ70を備えている。校正モードスイッチ70は、作業者により操作されると、制御装置11に校正モードの設定指示を出力する。制御装置11は、校正モードの設定指示を受けると、校正を行うための校正モードに設定する。校正モードは、通常の作業等を行う通常モード以外のモードである。
【0180】
制御装置11は、校正モードである場合に、標準流量特性SCに対する制御弁30の流量特性のズレ値ΔFを演算する。制御装置11は、例えば校正モード時において、ズレ値ΔFを用いて制御弁30への制御電流を補正し、補正後の電流値Iの制御電流を制御弁30に出力する。
【0181】
例えば、制御装置11は、予め定められた校正用電流値PIの制御電流を制御弁30に出力した場合の制御弁30の供給量DFと、標準流量特性SCにおいて校正用電流値PIに対応する供給量DFとの差に相当する電流値Iをズレ値ΔFとして演算し、このズレ値ΔFを制御弁30への制御電流に加算した補正後の電流値Iの制御電流を制御弁30に出力する。
【0182】
また、制御装置11は、標準流量特性SCに対してズレがある制御弁30が、標準流量特性SCに比べて流量が少ない下限品の制御弁30に対しても、上記校正を行うことが可能である。下限品の制御弁30は、標準制御弁に比べて供給量DFが少ない制御弁30である。
【0183】
具体的には、制御装置11は、予め定められた校正用電流値PIの制御電流を、予め定められた時間だけ制御弁30に出力した場合に、検出装置15にて検出されたリフトアーム21の駆動量(変位角度XF)と、リフトシリンダ26の作動油の容量XQとを用いて、リフトシリンダ26に供給された作動油の流量値FVを演算する。例えば、制御装置11は、リフトアーム21の変位角度XFと、リフトシリンダ26の単位角度当たりの単位容量ΔQとを乗算することにより、リフトシリンダ26に供給された作動油の流量値FVを演算する。記憶部11aは、単位容量ΔQを予め記憶している。即ち、これを第1リフトシリンダ26L用の制御弁30と、第2リフトシリンダ26R用の制御弁30とについて行うことにより、第1リフトシリンダ26Lの作動油の流量値FVと、第2リフトシリンダ26Rの作動油の流量値FVとが演算される。
【0184】
また、制御装置11は、リフトシリンダ26の作動油の総容量QM、リフトアーム21の最大変位角度XM、リフトアーム21の変位角度XFを用いて、次の式(1)により、流量値FVを演算してもよい。この場合には、記憶部11aは、リフトシリンダ26の作動油の総容量QMを予め記憶している。
【0185】
制御装置11は、流量値FVから、標準流量特性SCにおいて校正用電流値PIに対応する標準流量値SFを減算した値(つまり、流量値FVと標準流量値SFとの差)がマイナス値である場合、標準流量特性SCにおける流量値FV(FV1)に対応する電流値Iと、校正用電流値PIとの差の絶対値を、ズレ値ΔF(ΔF1)とし、ズレ値ΔF1を制御弁30への制御電流の電流値Iに加算した電流値Iを補正後の電流値Iとし、補正後の電流値Iの制御電流を制御弁30に出力する。
【0186】
また、制御装置11は、標準流量特性SCに対してズレがある制御弁30が、標準流量特性SCに比べて流量が多い上限品の制御弁30に対しても、上記校正を行うことが可能である。
【0187】
具体的には、制御装置11は、校正用電流値PIの制御電流を制御弁30に出力した場合に、検出装置15にて検出されたリフトアーム21の駆動量(変位角度)と、リフトシリンダ26の作動油の容量とを用いてリフトシリンダ26に供給された作動油の流量値FV(FV2)を演算する。流量値FV2の演算については、上記した下限品の制御弁30の場合と同様である。そして、制御装置11は、流量値FV2から、標準流量特性SCに
おいて校正用電流値PIに対応する標準流量値SFを減算した値(つまり、流量値FVと標準流量値SFとの差)がプラス値である場合、標準流量特性SCにおける流量値FVに対応する電流値Iと、校正用電流値PIとの差の絶対値を、ズレ値ΔF(ΔF2)とし、ズレ値ΔF2を制御弁30への制御電流の電流値Iに減算した電流値Iを補正後の電流値Iとし、補正後の電流値Iの制御電流を制御弁30に出力する。
【0188】
制御装置11は、制御弁30への制御電流の電流値Iが、制御弁30の供給量が補償される補償範囲の最小流量値Fminに対応する電流値Iを示す規定値SV以上である場合に、ズレ値ΔFを制御弁30への制御電流の電流値Iに加算した電流値Iを補正後の電流値Iとし、制御弁30への制御電流の電流値Iが、規定値SV未満である場合に、補正後の電流値Iを演算しない。
【0189】
制御装置11は、制御弁30の最大供給量Fmaxよりも小さい値である昇降装置8の最大流量値LMmax(例えば、リフトシリンダ26の最大流量値LMmax)から、制御弁30の供給量が補償されている最小流量値Fminまでの範囲内の中央に位置する中央範囲の任意の流量に対応する電流値Iを、校正用電流値PIとして設定している。
【0190】
上述した制御装置11は、第1制御において、第1操作具42が操作され、駆動装置8が駆動を開始してからの経過時間tをカウントし、当該経過時間tが短いほど目標流量TFを制限する。
【0191】
この構成によれば、駆動装置8が駆動を開始してからの経過時間tに応じて、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を適切に変更できる。
【0192】
また、制御装置11は、第1制御において、経過時間tと目標流量TFとの関係を示す第3マップM3に基づいて、目標流量TFを制限する。
【0193】
この構成によれば、予め定義された第3マップM3により、比較的簡単な処理で、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を適切に変更できる。
【0194】
また、制御装置11は、第1制御において、制限値Vが閾値に向かって減少するにつれて、経過時間tに対する目標流量TFが少ない第3マップM3を取得する。
【0195】
この構成によれば、制限値Vの大きさに応じて、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を適切に変更することができる。
【0196】
また、駆動装置8は、作業装置3を昇降可能な昇降装置であり、制御装置11は、第1制御において、作業装置3が行う作業の内容に応じて、異なる第3マップM3を取得する。
【0197】
この構成によれば、作業内容に応じて、駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を適切に変更することができる。
【0198】
また、作業機1は、機体2と、機体2に設けられた運転席を保護する保護機構6と、を備え、第1操作具42は、保護機構6の内部に設けられた内部操作具42aと、保護機構6の外部に設けられた外部操作具42bと、を含み、制御装置11は、第1制御において、内部操作具42aを操作した場合、外部操作具42bを操作した場合と異なる第3マップM3を取得する。
【0199】
この構成によれば、作業者が内部操作具42aを操作した場合と、外部操作具42bを操作した場合と、で駆動装置8の駆動開始後の駆動速度を適切に変更することができる。
【0200】
また、制御装置11は、所定の制御弁30である標準制御弁に出力する電流値Iと作動油の流量DFとの関係を示す標準流量特性SCに比べて作動油の流量DFが多い上限品の制御弁30の流量特性のズレ値を演算し、ズレ値を用いて制御弁30に出力する電流値Iを補正し、補正後の電流値Iの制御電流を制御弁30に出力する。
【0201】
この構成によれば、標準流量特性SCに対してズレがある制御弁30に起因する油圧アクチュエータ26への流量バラツキを校正(キャリブレーション)することができる。このため、標準流量特性SCに対してズレがある制御弁30を有効活用することができる。また、流量特性にズレがある制御弁30を用いた駆動装置8の動作を、標準流量特性SCに一致する制御弁30を備える他の駆動装置8の動作に近づけることができ、流量特性にズレがある制御弁30を用いたとしても、駆動装置8の動作にバラツキが生じることを低減することができる。したがって、制御弁30の製品毎の性能差を小さくすることができ
、安定した品質の作業機1を提供することができる。
【0202】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0203】
1 :作業機
2 :機体
3 :作業装置
6 :保護機構
8 :駆動装置(昇降装置)
11 :制御装置
21 :駆動部材(リフトアーム)
26 :油圧アクチュエータ(リフトシリンダ)
30 :制御弁
42 :第1操作具
42a :内部操作具
42b :外部操作具
46 :第2操作具
BF :流量(基準供給量)
DF :流量(供給量)
I :電流値
M1 :第1マップ
M2 :第2マップ
M3 :第3マップ
MF :最大流量
SC :標準流量特性
TF :目標流量
V :制限値
t :経過時間
ΔD :偏差