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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126391
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20240912BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240912BHJP
   C08F 8/04 20060101ALI20240912BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20240912BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20240912BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20240912BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240912BHJP
   H05K 3/28 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
G03F7/038 601
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
C08F8/04
C08F212/14
C08F236/04
G02B6/12 371
H05K1/03 610K
H05K3/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034743
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】霞 健一
【テーマコード(参考)】
2H147
2H225
4J100
5E314
【Fターム(参考)】
2H147DA09
2H147EA09C
2H147EA10C
2H147EA12C
2H147EA13C
2H147EA14C
2H147EA16A
2H147EA16B
2H147EA16C
2H147EA17C
2H147EA20C
2H147FA15
2H147FA17
2H147FA20
2H147FB04
2H147FD15
2H147FE02
2H147GA19
2H225AE03P
2H225AF82P
2H225AM15P
2H225AM16P
2H225AM49P
2H225AN24P
2H225AN39P
2H225CA11
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC17
4J100AB07P
4J100AS02Q
4J100AS03Q
4J100AS04Q
4J100BA03H
4J100BA04P
4J100CA04
4J100CA31
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA04
4J100HA08
4J100HB02
4J100HC27
4J100HD04
4J100HD16
4J100HE05
4J100JA37
4J100JA43
5E314AA24
5E314CC01
5E314GG02
(57)【要約】
【課題】現像性に優れ、伝送損失が小さい光導波路を製造できる感光性樹脂組成物等の提供。
【解決手段】(A-1)フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有する共重合体の還元物、を含有する感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A-1)フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有する共重合体の還元物、を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、(B)分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物を含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(C)光酸発生剤を含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(A-1)成分が、フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有するランダム共重合体の還元物を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分が、メラミン樹脂を含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(A-2)フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有する、還元されていてもよいランダム共重合体、を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(B)分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物を含有する、請求項6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、(C)光酸発生剤を含有する、請求項6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
支持体と、該支持体上に形成された感光性樹脂組成物層と、を備え、
感光性樹脂組成物層が、請求項1~8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物からなる、樹脂シート。
【請求項10】
コア用感光性樹脂組成物とクラッド用樹脂組成物とを含む感光性樹脂組成物セットであって、
コア用感光性樹脂組成物が、請求項1~8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性樹脂組成物セット。
【請求項11】
コア層及びクラッド層を備え、
コア層が、請求項1~8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む、光導波路。
【請求項12】
波長1300nm~1320nmの光を伝送可能である、請求項11に記載の光導波路。
【請求項13】
請求項11に記載の光導波路を備えた光電気混載基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、樹脂シート、感光性樹脂組成物セット、光導波路及びその製造方法、及び光電気混載基板に関する。
【背景技術】
【0002】
5G通信、自動運転、IoT、人工知能、ビッグデータ等の技術進歩により通信の超高速化及び大容量化の要求が高まっている。その根幹を支える半導体パッケージは、従来、高周波電流を流すことにより高速通信に対応をしてきた。しかし、近年では、高速通信によるノイズの発生、通信の損失、及び発熱の課題が顕在化している。これらの課題を解決するために、電気配線基板に光回路を実装し、省エネルギーと低遅延かつ高速通信を実現する取り組みが近年盛んに行われている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-211540号公報
【特許文献2】特許第5771978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に高速伝送が求められるデータセンターでは、シリコンフォトニクスの導入に関する研究が活発になされている。シリコンフォトニクスは、従来のLSI製造プロセスと整合性が高い。よって、シリコンフォトニクスを活用することにより、電子回路集積技術で培われた技術をもとに、ナノメートルサイズの細線導波路の形成が低コストで可能になると期待されている。
【0005】
例えば、シリコンフォトニクスによれば、細線導波路によってチップに光集積回路を形成することが期待される。このチップを搭載した光電気混載基板を製造する場合、チップ内の細線導波路から信号光をチップ外に取り出してチップ間の配線へと接続するために、光電気混載基板に光導波路を設けることが求められる。微細な光導波路を効率よく形成する観点から、光導波路を感光性樹脂組成物の硬化物によって形成することが望まれる。このため、微細なコア層を形成するために現像性に優れることが望まれる。また、信号光の減衰を抑制するためには、光導波路の伝送損失を抑制することも望まれる。
【0006】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、現像性に優れ、伝送損失が小さい光導波路を製造できる感光性樹脂組成物;該感光性樹脂組成物を含む樹脂シート;感光性樹脂組成物セット;光導波路;及び光電気混載基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、感光性樹脂組成物に特定の共重合体を含有させることで上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A-1)フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有する共重合体の還元物、を含有する感光性樹脂組成物。
[2] さらに、(B)分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物を含有する、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] さらに、(C)光酸発生剤を含有する、[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] (A-1)成分が、フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有するランダム共重合体の還元物を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5] (B)成分が、メラミン樹脂を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6] (A-2)フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有する、還元されていてもよいランダム共重合体、を含有する感光性樹脂組成物。
[7] さらに、(B)分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物を含有する、[6]に記載の感光性樹脂組成物。
[8] さらに、(C)光酸発生剤を含有する、[6]又は[7]に記載の感光性樹脂組成物。
[9] 支持体と、該支持体上に形成された感光性樹脂組成物層と、を備え、
感光性樹脂組成物層が、[1]~[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる、樹脂シート。
[10] コア用感光性樹脂組成物とクラッド用樹脂組成物とを含む感光性樹脂組成物セットであって、
コア用感光性樹脂組成物が、[1]~[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性樹脂組成物セット。
[11] コア層及びクラッド層を備え、
コア層が、[1]~[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む、光導波路。
[12] 波長1300nm~1320nmの光を伝送可能である、[11]に記載の光導波路。
[13] [11]又は[12]に記載の光導波路を備えた光電気混載基板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現像性に優れ、伝送損失が小さい光導波路を製造できる感光性樹脂組成物;該感光性樹脂組成物を含む樹脂シート;感光性樹脂組成物セット;光導波路;及び光電気混載基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る光導波路を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(I)を説明するための模式的な断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(II)を説明するための模式的な断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(III)を説明するための模式的な断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(IV)を説明するための模式的な断面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(V)を説明するための模式的な断面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(VI)を説明するための模式的な断面図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(VII)を説明するための模式的な断面図である。
図9図9は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(VIII)を説明するための模式的な断面図である。
図10図10は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(IX)を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、樹脂シート、感光性樹脂組成物セット、光導波路及びその製造方法、及び光電気混載基板について詳細に説明する。
【0012】
[感光性樹脂組成物]
本発明の第1実施形態の感光性樹脂組成物は、(A-1)フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有する共重合体の還元物、を含有する。また、本発明の第2実施形態の感光性樹脂組成物は、(A-2)フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有する、還元されていてもよいランダム共重合体、を含有する。本発明の第1及び第2実施形態の感光性樹脂組成物によれば、現像性に優れ、伝送損失が小さい光導波路を製造できるようになる。また、第1及び第2実施形態の感光性樹脂組成物は、通常、破断点伸度等の機械的強度に優れる。
【0013】
第1実施形態の感光性樹脂組成物は、(A-1)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(A-2)成分、(B)分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物、(C)光酸発生剤、(D)、(D)フェノール樹脂、(E)溶剤、及び(F)その他の添加剤が挙げられる。また、第2実施形態の感光性樹脂組成物は、(A-2)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(A-1)成分、(B)分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物、(C)光酸発生剤、(D)フェノール樹脂、(E)溶剤、及び(F)その他の添加剤が挙げられる。以下、第1及び第2実施形態の感光性樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。なお、第1及び第2実施形態の感光性樹脂組成物をまとめて、単に「感光性樹脂組成物」ということがある。
【0014】
<(A-1)フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有する共重合体の還元物>
第1実施形態の感光性樹脂組成物は、(A-1)成分として、(A-1)フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有する共重合体の還元物を含有する。(A-1)成分を感光性樹脂組成物に含有させることで、現像性に優れ、伝送損失が小さい光導波路を製造できる。(A-1)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有する共重合体を感光性樹脂組成物に含有させると、感光性樹脂組成物を硬化させる際に共重合体に二重結合が酸化して、共重合体の物性に変化が生じることがある。これに対し、本発明における(A-1)成分は、該共重合体の二重結合を還元した還元物であるから二重結合が酸化されることが抑制されるので、物性に変化が生じることが抑制される。その結果、現像性に優れ、伝送損失が小さい光導波路を製造することが可能になる。
【0016】
(A-1)成分としては、少なくともフェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位、及びジエン構造を含む化合物に由来する構造単位をモノマー単位として構成される共重合体を、還元処理したポリマーを用いることができる。共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれかであることが好ましく、本発明の効果を顕著に得る観点から、ランダム共重合体及びブロック共重合体のいずれかであることがより好ましく、現像性をより向上させる観点からランダム共重合体であることがさらに好ましい。
【0017】
フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位とは、フェノール性水酸基を含むビニル化合物を重合して得られる構造を有する構造単位を表す。また、フェノール性水酸基を含むビニル化合物とは、ベンゼン環等の芳香環と、この芳香環に結合した水酸基(フェノール性水酸基)と、置換基を有していてもよいビニル基と、を含有する化合物を表す。ビニル基は、芳香環に結合していることが好ましい。フェノール性水酸基を含むビニル化合物としては、例えば、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール、o-イソプロペニルフェノール、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート、4-ヒドロキシフェニルメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0018】
(A-1)成分としては、フェノール性水酸基を含むビニル化合物の代わりに、フェノール性水酸基を保護基で保護した化合物を用いて共重合させ、共重合させた後に保護基を脱保護することにより、フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位を有する態様としてもよい。保護基としては、tert-ブチル基、アセトキシ基等が挙げられる。フェノール性水酸基を保護基で保護した化合物としては、例えば、p-tert-ブトキシスチレン、o-tert-ブトキシスチレン、m-tert-ブトキシスチレン、p-アセトキシスチレン、p-(1-エトキシエトキシ)スチレン等が挙げられ、中でも脱保護のしやすさの観点から、p-tert-ブトキシスチレンが好ましい。
【0019】
ジエン構造を含む化合物とは、脂肪族性の炭素-炭素二重結合を2つ以上有する化合物を表す。ジエン構造を含む化合物は、好ましくは、C=C-C=C骨格を含む。かかるジエン構造を含む化合物は、通常、いわゆるエラストマーとして機能できる。ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とは、ジエン構造を含む化合物を重合して得られる構造を有する構造単位を表す。(A-1)成分は、通常エラストマーとして機能し得るジエン構造を含む化合物に由来する構造単位を有するので、感光性樹脂組成物にエラストマーを含有させなくても、その硬化物の絶縁性を向上させることができるとともに、破断点伸度等の機械的強度を向上させることができる。
【0020】
ジエン構造を含む化合物としては、例えば、イソプレン、ブタジエン、ネオプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等のジエン化合物等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、ジエン化合物が好ましく、イソプレンがより好ましい。
【0021】
(A-1)成分は、フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とのモル比(フェノール性水酸基を含むビニル化合物単位/ジエン構造を含む化合物単位)が、好ましくは90/10~10/90、より好ましくは80/20~20/80である。モル比を斯かる範囲内となるように重合を調整することで、本発明の効果を顕著に得ることが可能になる。
【0022】
共重合体は、フェノール性水酸基を含むビニル化合物、及びジエン構造を含む化合物を、重合開始剤の存在下重合させることで得ることができる。また、共重合体は、フェノール性水酸基を含むビニル化合物を重合させてフェノール性水酸基を含むビニル化合物由来する構造単位を合成し、ジエン構造を含む化合物を重合させてジエン構造を含む化合物に由来する構造単位を合成し、両構造単位を反応させることで得てもよい。また、共重合体は、フェノール性水酸基を保護基で保護した化合物、及びジエン構造を含む化合物を、重合開始剤の存在下重合させることで共重合体を得ることもできる。重合における重合開始剤の種類、重合条件は、公知の方法で行うことができる。中でも、ランダム共重合が好ましい。
【0023】
(A-1)成分は、共重合体を得た後、該共重合体に有する二重結合を還元処理することで得られる。還元処理としては、水素を還元剤として水素原子を二重結合に付加する水添処理が好ましい。すなわち、(A-1)成分は、共重合体を得た後、該共重合体を水添処理することで得られる水添物であることが好ましい。なお、共重合体が、フェノール性水酸基を保護基で保護した化合物、及びジエン構造を含む化合物を重合した共重合体である場合、共重合体を還元処理した後に保護基を脱保護することが好ましい。脱保護は、酸処理等の公知の方法で脱保護することができる。
【0024】
水添処理は、公知の方法で行うことができる。水添処理は、例えば、必要に応じて触媒を添加し、水素ガスを共重合体に導入することで行うことができる。
【0025】
共重合体の水素添加率としては、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上である。上限は特に制限はないが、100%、99%以下等とし得る。水素添加率を斯かる範囲内となるように共重合体の水添処理を行うことで、現像性を向上させることが可能になる。水素添加率は、NMR(核磁気共鳴)を用いて測定することができる。
【0026】
(A-1)成分は、本発明の効果を損ねない範囲内で、フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位、及びジエン構造を含む化合物に由来する構造単位以外の他の構造単位を含んでいてもよい。他の構造単位とは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位等が挙げられる。
【0027】
(A-1)成分の重量平均分子量Mwは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上であり、好ましくは500,000以下、より好ましくは200,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0028】
(A-1)成分の数平均分子量Mnは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは400以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは2,000以上であり、好ましくは300,000以下、より好ましくは100,000以下、さらに好ましくは50,000以下である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0029】
(A-1)成分の分子量分布Mw/Mn(分散度)は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
【0030】
(A-1)成分の含有量としては、現像性に優れ、伝送損失が小さい光導波路を製造できる感光性樹脂組成物を得る観点から、感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは、40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0031】
なお、本発明において、感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値であり、不揮発成分とは、感光性樹脂組成物中の溶剤を除く不揮発成分全体を意味する。
【0032】
<(A-2)フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有する、還元されていてもよいランダム共重合体>
第2実施形態の感光性樹脂組成物は、(A-2)成分として、(A-2)フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とを有する、還元されていてもよいランダム共重合体を含有する。このランダム共重合体の炭素-炭素不飽和結合は還元されて単結合となっていてもよい。(A-2)成分を感光性樹脂組成物に含有させることで、現像性に優れ、伝送損失が小さい光導波路を製造できる。(A-2)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
(A-2)成分としては、少なくともフェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位、及びジエン構造を含む化合物に由来する構造単位をモノマー単位として構成されるランダム共重合体を用いることができる。ジエン構造を含む化合物は、通常、エラストマーとして機能できる。(A-2)成分は、通常エラストマーとして機能できるジエン構造を含む化合物に由来する構造単位を有するので、感光性樹脂組成物にエラストマーを含有させなくても、その硬化物の絶縁性を向上させることができるとともに、破断点伸度等の機械的強度を向上させることができる。フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位、及びジエン構造を含む化合物に由来する構造単位については、(A-1)成分におけるフェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位、及びジエン構造を含む化合物に由来する構造単位と同じである。
【0034】
(A-2)成分は、フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位と、ジエン構造を含む化合物に由来する構造単位とのモル比(フェノール性水酸基を含むビニル化合物単位/ジエン構造を含む化合物単位)で好ましくは90/10~10/90、より好ましくは80/20~20/80である。モル比を斯かる範囲内となるように重合を調整することで、本発明の効果を顕著に得ることが可能になる。
【0035】
(A-2)成分は、フェノール性水酸基を含むビニル化合物、及びジエン構造を含む化合物を、重合開始剤の存在下重合させることで得ることができる。また、共重合体は、フェノール性水酸基を保護基で保護した化合物、及びジエン構造を含む化合物を、重合開始剤の存在下重合させることで共重合体を得ることもできる。フェノール性水酸基を保護基で保護した化合物を用いて重合させた場合、重合した後に保護基を脱保護する。重合における重合開始剤の種類、重合条件は、公知の方法で行うことができる。
【0036】
(A-2)成分は、本発明の効果を損ねない範囲内で、フェノール性水酸基を含むビニル化合物に由来する構造単位、及びジエン構造を含む化合物に由来する構造単位以外の他の構造単位を含んでいてもよい。他の構造単位とは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位等が挙げられる。
【0037】
(A-2)成分の重量平均分子量Mwは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上であり、好ましくは500,000以下、より好ましくは200,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0038】
(A-2)成分の数平均分子量Mnは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは400以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは2,000以上であり、好ましくは300,000以下、より好ましくは100,000以下、さらに好ましくは50,000以下である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0039】
(A-2)成分の分子量分布Mw/Mnは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
【0040】
(A-2)成分の含有量としては、現像性に優れ、伝送損失が小さい光導波路を製造できる感光性樹脂組成物を得る観点から、感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは、40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0041】
<(B)分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物>
第1及び第2実施形態の感光性樹脂組成物は、任意の成分として、(B)分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物を含有していてもよい。(B)成分は、(A-1)成分又は(A-2)成分と反応して架橋構造を形成させる機能を有する。(B)成分としての(B)分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物は、(A-1)成分及び(A-2)成分に該当するものは含めない。(B)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
アルコキシメチル基は、下記式(B-1)で表される基である。式中、「*」は結合手を表す。
【化1】
式(B-1)中、R21は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0043】
21は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基であってもよく、環状のアルキル基は、単環、多環のいずれであってもよい。アルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、メチル基、ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0044】
21が表すアルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-6アルキル基)、C1-6アルキル基、C6-10アリール基、-NH、-NH(C1-6アルキル基)、-CN、-C(O)O-C1-6アルキル基、-C(O)H、-NO等が挙げられる。なお、「置換基を有していてもよい」とは、特に断らない限り、無置換、若しくは置換基を1~5個(好ましくは1、2若しくは3個)有していることを意味する。なお、複数個の置換基を有する場合、それらの置換基は同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、本明細書において、「C~C」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C~Cアルキル基」という表現は、炭素原子数1~6のアルキル基を示す。
【0045】
アルコキシメチル基は、下記式(B-1’)で表されるアルコキシメチルアミノ基であることが好ましい。式中、「*」は結合手を表す。
【化2】
式(B-1’)中、R22は式(B-1)中のR21と同じである。Rは、水素原子、又はアルコキシメチル基を表す。
【0046】
(B)成分としては、分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物を用いることができ、このような化合物としては、例えば、分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有するアミノ樹脂、分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有するフェノール樹脂等が挙げられる。中でも、感光性により優れる感光性樹脂組成物を得る観点から、分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有するアミノ樹脂が好ましい。
【0047】
分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有するアミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられ、メラミン樹脂が好ましい。
【0048】
メラミン樹脂としては、例えば、下記式(B-2)で表される構造単位を有するメラミン樹脂であることが好ましい。
【化3】
式(B-2)中、X21、X22、X23、及びX24は、それぞれ独立に、水素原子、又はアルコキシメチル基を表す。R50は、水素原子、アミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は式(B-1’)で表されるアルコキシメチルアミノ基を表す。但し、R50が水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す場合は、X21、X22、X23、及びX24の少なくとも2つは、アルコキシメチル基である。
【0049】
21~X24が表すアルコキシメチル基は、式(B-1)と同様である。R50が水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す場合、X21~X24の少なくとも2つはアルコキシメチル基であり、X21~X24の少なくとも3つがアルコキシメチル基であることが好ましく、X21~X24の少なくとも4つがアルコキシメチル基であることがより好ましい。
【0050】
50は、水素原子、アミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は式(B-1’)で表されるアルコキシメチルアミノ基を表し、置換基を有していてもよいアリール基、式(B-1’)で表されるアルコキシメチルアミノ基が好ましく、式(B-1’)で表されるアルコキシメチルアミノ基がより好ましい。
【0051】
置換基を有していてもよいアルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基であってもよく、環状のアルキル基は、単環、多環のいずれであってもよい。アルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、2-メチルプロピル基、3-ヘプチル基等が挙げられる。中でも、メチル基が特に好ましい。
【0052】
置換基を有していてもよいアリール基は、炭素原子数6~30のアリール基が好ましく、炭素原子数6~20のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0053】
50が表すアルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。置換基としては、式(B-1)中のR21が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同じである。
【0054】
式(B-2)で表される構造単位を有するメラミン樹脂は、式(B-2’)で表される構造単位を有するメラミン樹脂であることが好ましい。
【化4】
式(B-2’)中、X25、X26、X27、X28、X29及びX30は、それぞれ独立に、水素原子、又はアルコキシメチル基を表す。但し、X25、X26、X27、X28、X29及びX30の少なくとも2つは、アルコキシメチル基である。
【0055】
25~X30が表すアルコキシメチル基は、式(B-1)と同様である。X25~X30の少なくとも2つは、アルコキシメチル基であり、X25~X30の少なくとも3つがアルコキシメチル基であることが好ましく、X25~X30の少なくとも4つがアルコキシメチル基であることがより好ましく、X25~X30のすべてがアルコキシメチル基であることがさらに好ましい。
【0056】
メラミン樹脂の具体例としては、以下のメラミン樹脂を挙げることができる。
【化5】
【0057】
メラミン樹脂は、市販品を使用してよい。市販品としては、例えば、三和ケミカル社製の「MW-390」、「MW-100LM」、「MX-750LM」;オルネクスジャパン社製のサイメルシリーズ等が挙げられる。
【0058】
メラミン樹脂は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合により調製することができる。
【0059】
尿素樹脂としては、例えば、下記式(B-3)で表される構造単位及び下記式(B-4)で表される構造単位のいずれかを有する尿素樹脂であることが好ましい。
【化6】
式(B-3)中、X31、X32、X33及びX34は、それぞれ独立に水素原子、又はアルコキシメチル基を表す。但し、X31、X32、X33及びX34の少なくとも2つは、アルコキシメチル基である。
式(B-4)中、X35、及びX36は、アルコキシメチル基を表す。
【0060】
31~X38が表すアルコキシメチル基は、式(B-1)と同様である。X31~X34の少なくとも2つは、アルコキシメチル基であり、X31~X34の少なくとも3つがアルコキシメチル基であることが好ましく、X31~X34の少なくとも4つがアルコキシメチル基であることがより好ましい。
【0061】
尿素樹脂は、市販品を使用してよい。市販品としては、例えば、三和ケミカル社製の「MX-270」、「MX-279」、「MX-280」;オルネクスジャパン社製のサイメルシリーズ等が挙げられる。
【0062】
尿素樹脂は、例えば、尿素とホルムアルデヒドとの重縮合により調製することができる。
【0063】
分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有するフェノール樹脂としては、例えば、下記式(B-5)で表される構造単位を有するフェノール樹脂であることが好ましい。
【化7】
式(B-5)中、X39はアルコキシメチル基を表し、R23及びR24はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R25は、単結合又は2価の有機基を表す。s及びtはそれぞれ独立に1~3の整数を表し、u及びvはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。
【0064】
39が表すアルコキシメチル基は、式(B-1)と同様である。R23及びR24が表す置換基を有していてもよいアルキル基は、式(B-1)中のR21が表す置換基を有していてもよいアルキル基と同じである。
【0065】
25は、単結合又は2価の有機基を表す。2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素原子数が1~10のアルキレン基、エチリデン基等の炭素原子数が2~10のアルキリデン基、フェニレン基等の炭素原子数が6~30のアリーレン基、これら炭化水素基の水素原子の一部または全部をフッ素原子等のハロゲン原子で置換した基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合等が挙げられる。
【0066】
第1実施形態の感光性樹脂組成物において、(B)成分の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0067】
第1実施形態の感光性樹脂組成物において、(B)成分の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A-1)成分の含有量を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは48質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。
【0068】
第2実施形態の感光性樹脂組成物において、(B)成分の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0069】
第2実施形態の感光性樹脂組成物において、(B)成分の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A-2)成分の含有量を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは48質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。
【0070】
<(C)光酸発生剤>
第1及び第2実施形態の感光性樹脂組成物は、任意成分として、(C)光酸発生剤を含有していてもよい。(C)光酸発生剤は、紫外線等の活性光線の照射時に酸を発生させ、発生した酸により、(A-1)成分または(A-2)成分と(B)成分との反応を促進してネガ型のパターンを有利に形成することができる。(C)成分としての(C)光酸発生剤は、(A-1)成分、(A-2)成分、及び(B)成分に該当するものは含めない。(C)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
(C)光酸発生剤としては、活性光線の照射により酸を発生する化合物を用いることができる。このような光酸発生剤としては、例えば、オキシムエステル化合物、ハロゲン含有化合物、オニウム塩化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、オキシムエステル化合物が好ましい。
【0072】
光酸発生剤として好適に使用し得るオキシムエステル化合物の具体例としては、ベンゼンアセトニトリル,2-メチル-α-[2-[[(プロピルスルホニル)オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン]、ベンゼンアセトニトリル,2-メチル-α-[2-[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン]等が挙げられる。市販品としては、例えばBASF社製の「PAG103」、「PAG121」、「PAG169」、「PAG203」等が挙げられる。
【0073】
光酸発生剤として好適に使用し得るハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物等が挙げられる。ハロゲン含有化合物の好適な具体例としては、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-メトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,10-ジブロモ-n-デカン、1,1-ビス(4-クロロフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-メトキシフェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、スチリル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ナフチル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のs-トリアジン誘導体等を挙げることができる。
【0074】
ハロゲン含有化合物は市販品を用いることができ、市販品としては、三和ケミカル社製「TFE-トリアジン」、「TME-トリアジン」、「MP-トリアジン」、「MOP-トリアジン」、「ジメトキシトリアジン」(トリアジン骨格を有するハロゲン含有化合物系光酸発生剤)等が挙げられる。
【0075】
光酸発生剤として好適に使用し得るオニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。オニウム塩化合物の好適な具体例としては、トリス(4-メチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4-メチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロフォスホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフリオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-tert-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-tert-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフリオロメタンスルホネート等が挙げられる。
【0076】
オニウム塩化合物は市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、三和ケミカル社製「TS-01」、「TS-91」;サンアプロ社製「CPI-110A」、「CPI-210S」、「HS-1」、「LW-S1」、「IK-1」、「CPI-310B」;三新化学工業社製「SI-110L」、「SI-180L」、「SI-100L」等が挙げられる。
【0077】
光酸発生剤として好適に使用し得るジアゾケトン化合物としては、例えば、1,3-ジケト-2-ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物等が挙げられる。ジアゾケトン化合物の好適な具体例としては、フェノール類の1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0078】
光酸発生剤として好適に使用し得るスルホン化合物としては、例えば、β-ケトスルホン化合物、β-スルホニルスルホン化合物、及びこれらの化合物のα-ジアゾ化合物等が挙げられる。スルホン化合物の好適な具体例としては、4-トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタン等が挙げられる。
【0079】
光酸発生剤として好適に使用し得るスルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類等が挙げられる。スルホン酸化合物の好適な具体例としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルp-トルエンスルホネート等が挙げられる。
【0080】
光酸発生剤として好適に使用し得るスルホンイミド化合物の具体例としては、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等が挙げられる。
【0081】
光酸発生剤として好適に使用し得るジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。ジアゾメタン化合物は市販品を用いることができる。
【0082】
第1実施形態の感光性樹脂組成物において、(C)光酸発生剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは、0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0083】
第1実施形態の感光性樹脂組成物において、(C)光酸発生剤の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A-1)成分の含有量を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0084】
第2実施形態の感光性樹脂組成物において、(C)光酸発生剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは、0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0085】
第2実施形態の感光性樹脂組成物において、(C)光酸発生剤の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A-1)成分の含有量を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0086】
<(D)フェノール樹脂>
第1及び第2実施形態の感光性樹脂組成物は、任意の成分として、(D)フェノール樹脂を含有していてもよい。(D)成分としての(D)フェノール樹脂は、(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分に該当するものは含めない。(D)成分を感光性樹脂組成物に含有させることで適切な種類の現像液に溶解でき、特にアルカリ性の現像液に溶解できる。(D)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0087】
(D)フェノール樹脂は、分子内にフェノール性水酸基を含有する。フェノール性水酸基とは、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基を表す。(D)フェノール樹脂が有するフェノール性水酸基の数は、1分子あたり、1個でもよく、2個以上でもよい。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、(D)フェノール樹脂は、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有することが好ましい。
【0088】
(D)フェノール樹脂としては、下記式(D-1)で表される構造を含む化合物が好ましい。
【化8】
(式中、Rは、下記式(a)で表される2価の基、下記式(b)で表される2価の基、下記式(c)で表される2価の基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表し、X及びXは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。n2及びn3は、それぞれ独立に0~4の整数を表す。)
【化9】
式(a)中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、又はこれらの組み合わせからなる基を表し、R11及びR12は互いに結合して環を形成していてもよい。*は結合手を表す。
式(b)中、X11はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表す。p1は、0~4の整数を表す。*は結合手を表す。
式(c)中、X12及びX13はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表す。p2及びp3は、それぞれ独立に0~4の整数を表す。*は結合手を表す。
【0089】
式(D-1)中、Rは、式(a)で表される2価の基、式(b)で表される2価の基、式(c)で表される2価の基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。
【0090】
式(a)中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、又はこれらの組み合わせからなる基を表し、R11及びR12は互いに結合して環を形成していてもよい。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、水素原子、アルキル基が好ましい。
【0091】
アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基であってもよく、環状のアルキル基は、単環、多環のいずれであってもよい。アルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、2-メチルプロピル基、3-ヘプチル基等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、メチル基が特に好ましい。
【0092】
アリール基としては、炭素原子数6~30のアリール基が好ましく、炭素原子数6~20のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0093】
1価の複素環基としては、炭素原子数3~21の1価の複素環基が好ましく、3~15の1価の複素環基がより好ましく、3~9の1価の複素環基がさらに好ましい。1価の複素環基には、1価の芳香族複素環基(ヘテロアリール基)も含まれる。1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フラニル基、フリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、及びイソキノリル基が挙げられる。中でも、ピロリジル基が好ましい。1価の複素環基とは、複素環式化合物の複素環から水素原子1個を除いた基をいう。
【0094】
これらの組み合わせからなる基としては、アルキル基とカルボニル基との組み合わせからなる基、アリール基とカルボニル基との組み合わせからなる基、アルキル基とアミノ基とカルボニル基との組み合わせからなる基、アリール基とアミノ基とカルボニル基との組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0095】
11及びR12は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。この場合、R11及びR12は、シクロペンタン環を形成する基、シクロヘキサン環を形成する基、2,2-ジメチル-4-メチルシクロヘキサン環を形成する基、フルオレン環を形成する基、ピロリジン環を形成する基、γ-ラクタム環を形成する基等であることが好ましい。
【0096】
式(a)で表される2価の基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化10】
【化11】
【0097】
11及びR12が表すアルキル基、アリール基、及び1価の複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては、式(B-1)中のR21が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同じである。
【0098】
式(b)~(c)中のX11、X12、及びX13は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表す。X11~X13は、式(a)中のR11が表す置換基を有していてもよいアルキル基と同様である。
【0099】
式(b)~(c)中のp1、p2、及びp3は、それぞれ独立に0~4の整数を表し、0~3の整数を表すことが好ましく、0又は1を表すことがより好ましい。
【0100】
式(b)で表される2価の基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化12】
【0101】
式(c)で表される2価の基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化13】
【0102】
式(b)で表される2価の基と式(c)で表される2価の基との組み合わせからなる2価の基、式(a)で表される2価の基と式(b)で表される2価の基との組み合わせからなる2価の基、及び、式(a)で表される2価の基と式(c)で表される2価の基との組み合わせからなる2価の基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化14】
【0103】
式(D-1)中、フェノール部位のOH基は、Rに対して、オルト位、メタ位、及びパラ位のいずれかに結合していることが好ましく、メタ位及びパラ位のいずれかに結合していることがより好ましく、パラ位に結合していることが特に好ましい。
【0104】
式(D-1)中、X及びXは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。X及びXは、それぞれ独立に、式(a)中のR11と同様でありうる。
【0105】
式(D-1)中、n2及びn3は、それぞれ独立に0~4の整数を表し、0~3の整数を表すことが好ましく、0又は1を表すことがより好ましい。Rが式(a)で表される2価の基である場合、n2及びn3は1が特に好ましい。
【0106】
(D)成分の具体例としては、以下の基を挙げることができる。但し、これらに限定されるものではない。
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【0107】
(D)成分は、市販品を用いることができ、2種以上を併用してもよい。用いられ得る市販の(D)成分の具体例としては、旭有機材社製「BisP-E」、「Bis-AF」;本州化学社製「BisE」、「BisP-TMC」;三井化学ファイン社製「BisA」、「BisF」、「BisP-M」;本州化学社製「BisP-AP」、「BisP-MIBK」、「BisP-B」、「Bis-Z」、「BisP-CP」、「o,o’-BPF」、「BisP-IOTD」、「BisP-IBTD」、「BisP-DED」、「BisP-BA」;本州化学社製「Bis-C」、「Bis26X-A」、「BisOPP-A」、「BisOTBP-A」、「BisOCHP―A」、「BisOFP-A」、「BisOC-Z」、「BisOC-FL」、「BisOC-CP」、「BisOCHP-Z」、「メチレンビスP-CR」、「TM-BPF」、「BisOC-F」、「Bis3M6B-IBTD」、「BisOC-IST」、「BisP-IST」、「BisP-PRM」、「BisP-LV」等が挙げられる。
【0108】
(D)成分の分子量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは150以上、より好ましくは160以上、さらに好ましくは170以上であり、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下、さらに好ましくは500以下である。
【0109】
(D)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0110】
第1実施形態の感光性樹脂組成物において、(D)成分の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A-1)成分の含有量を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0111】
第2実施形態の感光性樹脂組成物において、(D)成分の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A-2)成分の含有量を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0112】
<(E)溶剤>
第1及び第2実施形態の感光性樹脂組成物は、上述した(A-1)~(D)成分といった不揮発成分に組み合わせて、揮発成分としての(E)溶剤を含んでいてもよい。(E)成分としての(E)溶剤によれば、感光性樹脂組成物の粘度を調整できる。(E)溶剤としては、例えば、有機溶剤が挙げられる。
【0113】
(E)溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶剤;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル溶剤;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素溶剤;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤が挙げられる。(E)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
(E)溶剤の量は、感光性樹脂組成物の塗布性の観点から、適切に調整することが好ましい。
【0115】
<(F)任意の添加剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、上述した(A)~(E)成分に組み合わせて、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、更に任意の成分として(F)任意の添加剤を含んでいてもよい。この(F)任意の添加剤には、上述した(A)~(E)成分に該当するものは含めない。(F)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
(F)任意の添加剤の例としては、フェノール性水酸基を有する樹脂((A-1)成分、(A-2)成分、及び(D)成分に該当するものは除く)、光増感剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、離型剤、表面処理剤、分散剤、表面改質剤、安定剤、などが挙げられる。
【0117】
感光性樹脂組成物は、必須成分として上記(A-1)成分又は(A-2)成分を混合し、任意成分として上記(B)~(F)成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー、高速回転ミキサー等の撹拌手段により混練または撹拌することにより、樹脂ワニスとして製造することができる。
【0118】
<感光性樹脂組成物の物性、用途>
第1及び第2実施形態の感光性樹脂組成物は、通常、光導波路のコア層の形成に用いることができる。形成されるコア層は、通常、上述した感光性樹脂組成物の硬化物を含む。感光性樹脂組成物は、通常は光によって硬化でき、好ましくは光及び熱によって硬化できる。一般に、感光性樹脂組成物に含まれる成分のうち、(E)溶剤は揮発性成分であるので硬化時の熱によって揮発しうるが、それ以外の不揮発成分は硬化時の熱によっては揮発しない。よって、感光性樹脂組成物の硬化物は、感光性樹脂組成物の不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。コア層は、好ましくは、感光性樹脂組成物の硬化物のみを含む。
【0119】
感光性樹脂組成物は、(A-1)成分又は(A-2)成分を含有するので現像性に優れるという特性を示す。具体的には感光性樹脂組成物に露光及び現像を行ってコア層に相当するライン層を形成した場合、最小微細形成幅の小さいライン層を形成することができる。例えば、感光性樹脂組成物に露光及び現像を行ってL/S(ライン/スペース)が1μm/1μm~10μm/10μmまでが1μm刻み、10μm/10μm~20μm/20μmまでが2μm刻み、20μmまでが10μm刻みでのライン層を形成する。この場合、幅が最も小さいライン層の幅が、好ましくは100μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。ここで、L/SにおいてL(ライン)はライン層の幅を表し、S(スペース)はライン間の間隔を表す。解像度の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0120】
感光性樹脂組成物は、(A-1)成分又は(A-2)成分を含有するので、通常、破断点伸度に優れる硬化物が得られるという特性を示す。破断点伸度は、好ましくは3%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上である。上限は特に制限はないが、50%以上等とし得る。破断点伸度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0121】
感光性樹脂組成物は、(A-1)成分又は(A-2)成分を含有するので、通常、1310nmでの吸光度が優れる硬化物が得られるという特性を示す。具体的には、感光性樹脂組成物を溶剤に溶解させ、感光性樹脂組成物溶液を調製する。この感光性樹脂組成物溶液を紫外可視近赤外分光光度計を用いて1310nmにおける吸光度を測定する。このとき、吸光度は好ましくは0.05以下、より好ましくは0.015以下、さらに好ましくは0.01以下である。下限は特に制限されないが、0.0001以上等とし得る。吸光度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0122】
感光性樹脂組成物は、(A-1)成分又は(A-2)成分を含有するので光伝送損失を低減できるという特性を示す。具体的には、シリコンウェハ、2μm厚のSiO膜、10μm厚の感光性樹脂組成物ライン層を有するサンプルを作製する。このサンプルを用いて光伝送損失を測定する。このとき、光伝送損失は好ましくは1dB/cm以下、より好ましくは0.5dB/cm以下、さらに好ましくは0.2dB/cm以下である。下限は特に制限されないが、0dB/cm以上、0.1dB/cm以上などとし得る。光伝送損失は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0123】
本発明の感光性樹脂組成物は、通常、光を照射されていない非露光部を現像液によって除去されることができる。特に、本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ現像液としての炭酸ナトリウム溶液によって良好に除去されることができる。よって、本発明の感光性樹脂組成物は、炭酸ナトリウム現像用として好適に用いることができる。
【0124】
また、本発明の感光性樹脂組成物はコア形成性に優れ、光伝送損失を低減できるので、光導波路のコア層の形成用の感光性樹脂組成物として好適に用いることができる。よって、本発明の感光性樹脂組成物は光導波路のコア層製造用(光導波路のコア層形成用の感光性樹脂組成物)、波長1300nm~1320nmの光を伝送可能な光導波路の形成用(波長1300nm~1320nmの光を伝送可能な光導波路の形成用途の感光性樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の感光樹脂組成物は、シングルモードの光導波路の形成のために用いることが好ましく、例えば、波長1310nmの光に対してシングルモードの光導波路の形成のために用いることが好ましい。
【0125】
[樹脂シート]
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物層が支持体上に層形成された樹脂シートの形態で好適に使用することができる。つまり、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の感光性樹脂組成物で形成された感光性樹脂組成物層を含む。
【0126】
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルアセテートフィルム等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0127】
市販の支持体としては、例えば、王子製紙社製の製品名「アルファンMA-410」、「E-200C」、信越フィルム社製等のポリプロピレンフィルム、帝人社製の製品名「PS-25」等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるが、これらに限られたものではない。これらの支持体は、感光性樹脂組成物層の除去を容易にするため、シリコーンコート剤のような剥離剤を表面に塗布してあるのがよい。支持体の厚さは、5μm~50μmの範囲であることが好ましく、10μm~25μmの範囲であることがより好ましい。厚さを5μm以上とすることで、現像前に行う支持体剥離の際に支持体が破れることを抑制することができ、厚さを50μm以下とすることで、支持体上から露光する際の解像度を向上させることができる。また、低フィッシュアイの支持体が好ましい。ここでフィッシュアイとは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0128】
また、紫外線等の活性光線による露光時の光の散乱を低減するため、支持体は透明性に優れるものが好ましい。支持体は、具体的には、透明性の指標となる濁度(JIS-K6714で規格化されているヘーズ)が0.1~5であるものが好ましい。さらに感光性樹脂組成物層は保護フィルムで保護されていてもよい。
【0129】
樹脂シートの感光性樹脂組成物層側を保護フィルム(カバーフィルム)で保護することにより、感光性樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムとしては上記の支持体と同様の材料により構成されたフィルムを用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、1μm~40μmの範囲であることが好ましく、5μm~30μmの範囲であることがより好ましく、10μm~30μmの範囲であることが更に好ましい。厚さを1μm以上とすることで、保護フィルムの取り扱い性を向上させることができ、40μm以下とすることで廉価性がよくなる傾向にある。なお、保護フィルムは、感光性樹脂組成物層と支持体との接着力に対して、感光性樹脂組成物層と保護フィルムとの接着力の方が小さいものが好ましい。
【0130】
樹脂シートは、例えば、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体上にこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて感光性樹脂組成物層を形成することにより製造することができる。具体的には、まず、真空脱泡法等で感光性樹脂組成物中の泡を完全に除去した後、感光性樹脂組成物を支持体上に塗布し、熱風炉あるいは遠赤外線炉により溶剤を除去し、乾燥せしめ、ついで必要に応じて得られた感光性樹脂組成物層上に保護フィルムを積層することにより樹脂シートを製造することができる。具体的な乾燥条件は、感光性樹脂組成物の硬化性や樹脂ワニス中の有機溶剤量によっても異なるが、30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスにおいては、80℃~120℃で3分間~13分間で乾燥させることができる。感光性樹脂組成物層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、感光性樹脂組成物層の総量に対して5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
【0131】
感光性樹脂組成物層の厚さは、取り扱い性を向上させ、かつ感光性樹脂組成物層内部の感度及び解像度が低下するのを抑制するという観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0132】
感光性樹脂組成物の塗布方式としては、例えば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
【0133】
感光性樹脂組成物は、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよく、また異なる方式を複数組み合わせて塗布してもよい。中でも、均一塗工性に優れる、ダイコート方式が好ましい。また、異物混入等をさけるために、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で塗布工程を実施することが好ましい。
【0134】
[感光性樹脂組成物セット]
本発明の感光性樹脂組成物は、光導波路のコア層の形成用の感光性樹脂組成物として好適に用いることができる。よって、感光性樹脂組成物セットは、本発明の感光性樹脂組成物と、クラッド用感光性樹脂組成物とを含む。感光性樹脂組成物セットは、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物を含むコア層と、クラッド用感光性樹脂組成物の硬化物を含むクラッド層とを備える光導波路の製造用に用いることができる。クラッド用感光性樹脂組成物は、本発明の感光性樹脂組成物を用いることができ、公知の感光性樹脂組成物を用いることもできる。本発明の感光性樹脂組成物及びクラッド用感光性樹脂組成物はともに感光性の樹脂組成物であるので、通常は、露光及び現像を含む方法により、微細な光導波路を効率よく製造することが可能である。
【0135】
[光導波路]
上述した感光性樹脂組成物、樹脂シート、及び感光性樹脂組成物セットは、光導波路の製造に用いることができる。以下、その光導波路の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0136】
図1は、本発明の一実施形態に係る光導波路10を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、光導波路10は、コア層100及びクラッド層200を備える。コア層100は、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくは本発明の感光性樹脂組成物の硬化物のみを含む。また、クラッド層200は、クラッド用樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくはクラッド用樹脂組成物の硬化物のみを含む。クラッド用樹脂組成物としては、コア層の形成に用い得る感光性樹脂組成物の硬化物よりも低い屈折率を有する硬化物を得られる感光性樹脂組成物を用いることができる。クラッド用感光性樹脂組成物としては、光硬化性樹脂組成物を用いてもよく、熱硬化性樹脂組成物を用いてもよい。
【0137】
コア層100は、クラッド層200中に設けられる。よって、コア層100は、クラッド層200に覆われる。通常は、コア層100の全周面が、クラッド層200に覆われる。コア層100とクラッド層200とは、間に他の層を介することなく直接に接しており、よって、コア層100とクラッド層200との間には界面100Iが形成されうる。通常、コア層100はクラッド層200よりも高い屈折率を有し、そのため、光(図示せず。)は、コア層100の一端(入射側の端)100Aから他端(出射側の端)100Bまでコア層100内を伝送されることができる。
【0138】
光導波路10が伝送可能な光の波長は、さまざまに選択しうる。例を挙げると、伝送される光の好ましい波長の範囲は、840nm~860nm(例えば、850nm)、1300nm~1320nm(例えば、1310nm)、1540nm~1560nm(例えば、1550nm)などでありうる。中でも、光伝送路10を伝送される光の波長の範囲は、1300nm~1320nmが好ましい。
【0139】
光導波路10は、シングルモードの光導波路であってもよく、マルチモードの光導波路であってもよいが、シングルモードの光導波路であることが好ましい。中でも、光導波路10は、前記の好ましい波長の範囲の光に対するシングルモードの光導波路であることが好ましい。例えば、光導波路10は、1310nmの光に対するシングルモードの光導波路であることが好ましい。
【0140】
コア層100の幅Lは、光の伝送が可能な範囲で適切に設定することが望ましい。具体的なコア層100の線幅Lの範囲は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下であり、10μm以下又は5μm以下であってもよい。コア層100の幅Lは、厚み方向から見た場合のコア層100の線幅(ライン)に相当する。
【0141】
コア層100の間隔Sは、光の伝送が可能な範囲で適切に設定することが望ましい。具体的なコア層100の間隔Sの範囲は、好ましくは50μm以上、より好ましくは70μm以上、特に好ましくは100μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは300μm以下である。コア層100の間隔Sは、厚み方向から見たコア層の間隔(スペース)に相当する。
【0142】
コア層100の厚みTは、光の伝送が可能な範囲で適切に設定することが望ましい。具体的なコア層100の厚みTの範囲は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下であり、10μm以下であってもよい。
【0143】
クラッド層200の厚みは、通常、コア層100の厚みよりも大きい。クラッド層200の具体的な厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。
【0144】
光導波路10は、必要に応じて、コア層100及びクラッド層200以外の任意の要素を備えていてもよい。例えば、光導波路10は、コア層上にめっき等からなる導体層(図示せず。)、基材300を備えていてもよい。基材300を備える光導波路10では、通常、基材300上にクラッド層200が設けられ、そのクラッド層200内にコア層100が設けられている。
【0145】
基材300としては、ガラス基板、金属基板、セラミックス基板、ウエハ、回路基板等の硬質の基板を用いてもよい。ウエハとしては、例えば、シリコンウエハ、ガリウムヒ素(GaAs)ウエハ、インジウムリン(InP)ウエハ、ガリウムリン(GaP)ウエハ、ガリウムナイトライド(GaN)ウエハ、ガリウムテルル(GaTe)ウエハ、亜鉛セレン(ZnSe)ウエハ、シリコンカーバイド(SiC)ウエハ等の半導体ウエハを用いてもよく、疑似ウエハを用いてもよい。疑似ウエハとしては、例えば、モールド樹脂と、そのモールド樹脂に埋め込まれた電子部品とを備える板状部材を用いうる。回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。さらに、基板300としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエステル等のプラスチック材料で形成されたフィルムを用いてもよい。さらに、フレキシブル回路基板を基板300として採用してもよい。
【0146】
また、光導波路10は、任意の要素として、コア層100及びクラッド層200を保護する保護層(図示せず。)を備えていてもよい。保護層は、例えば、クラッド層200の基材300とは反対側の面を覆うように設けてもよい。
【0147】
光導波路10は、本発明の感光性樹脂組成物を用いて製造できる。例えば、光導波路10は、
クラッド用樹脂組成物を含む第一組成物層を形成する工程(I)と、
第一組成物層を硬化させる工程(II)と、
第一組成物層上に、本発明の感光性樹脂組成物を含む第二組成物層を形成する工程(III)と、
第二組成物層に露光処理を施す工程(IV)と、
第二組成物層に現像処理を施す工程(V)と、
第二組成物層を硬化させる工程(VI)と、
第二組成物層上に、クラッド用樹脂組成物を含む第三組成物層を形成する工程(VIII)と、
第三組成物層を硬化させる工程(IX)と、
をこの順に含む方法によって、製造できる。また、必要に応じて、工程(VI)終了後工程(VIII)の前に、コア層上に導体層を形成する工程(VII)を含んでいてもよい。
【0148】
図2は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(I)を説明するための模式的な断面図である。図2に示すように、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、クラッド用感光性樹脂組成物を含む第一組成物層210を形成する工程(I)を含む。本実施形態では、基材300上に第一組成物層210を形成する例を示して説明する。
【0149】
第一組成物層210の形成方法に特に制限は無い。例えば、クラッド用感光性樹脂組成物を基材300上に塗布することにより、第一組成物層210を形成してもよい。塗布を円滑に行う観点から、溶剤を含むワニス状のクラッド用感光性樹脂組成物を用意し、そのワニス状のクラッド用感光性樹脂組成物を塗布してもよい。
【0150】
塗布方式としては、例えば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スピンコート方式、スリットコート方式、スプレーコート方式、ディップコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、オフセット印刷方式、刷毛塗り方式、スクリーン印刷方式などが挙げられる。
【0151】
クラッド用感光性樹脂組成物は、1回で塗布してもよく、複数回に分けて塗布してもよい。また、異なる塗布方式を組み合わせて実施してもよい。異物混入を避けるために、塗布は、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で実施することが好ましい。
【0152】
クラッド用感光性樹脂組成物の塗布の後、必要に応じて、第一組成物層210の乾燥を行ってもよい。乾燥は、熱風炉、遠赤外線炉等の乾燥装置によって行いうる。乾燥条件は、クラッド用樹脂組成物の組成に応じて適切に設定することが好ましい。具体例を挙げると、乾燥温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、特に好ましくは120℃以下である。また、乾燥時間は、好ましくは30秒以上、より好ましくは60秒以上、特に好ましくは120秒以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは20分以下、特に好ましくは5分以下である。
【0153】
第一組成物層210の形成は、例えば、支持体及びクラッド用感光性樹脂組成物からなるクラッド用感光性樹脂組成物層を含むクラッド用樹脂シートを用いて行ってもよい。具体例を挙げると、クラッド用樹脂シートのクラッド用感光性樹脂組成物層を基材300にラミネートすることにより、基材300上に第一組成物層210を形成できる。ラミネートは、通常、樹脂シートのクラッド用感光性樹脂組成物層を加熱しながら基材300に圧着することによって行われる。このラミネートは、真空ラミネート法により、減圧下で行うことが好ましい。また、ラミネートの前に、必要に応じて、樹脂シート及び基材を加熱するプレヒート処理を行ってもよい。
【0154】
ラミネートの条件は、例えば、圧着温度(ラミネート温度)70℃~140℃、圧着圧力1kgf/cm~11kgf/cm(9.8×10N/m~107.9×10N/m)、圧着時間5秒間~300秒間の条件で行うことができる。また、ラミネートは、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下とした減圧下で行うことが好ましい。ラミネートは、バッチ式で行ってもよく、ロールを用いて連続式で行ってもよい。
【0155】
真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0156】
支持体を備えるクラッド用樹脂シートを用いて第一組成物層210を形成した場合、通常は、工程(III)より前の適切な時期に支持体を剥離する。
【0157】
工程(I)において基材300上に形成される第一組成物層210は、通常はクラッド用感光性樹脂組成物を含み、好ましくはクラッド用感光性樹脂組成物のみを含む。
【0158】
本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(I)の後で、第一組成物層210を硬化させる工程(II)を含む。この工程(II)は、例えば、第一組成物層210を熱処理してもよい。熱処理の条件は、クラッド用脂組成物中の樹脂成分の種類及び量に応じて選択してもよく、好ましくは150℃~250℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~230℃で30分間~120分間の範囲でありうる。熱処理は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気で行うことが好ましい。
【0159】
また、第一組成物層210の硬化は、露光処理によって行ってもよい。一例において、具体的な露光量の範囲は、好ましくは10mJ/cm以上、より好ましくは50mJ/cm以上、特に好ましくは200mJ/cm以上であり、好ましくは10,000mJ/cm以下、より好ましくは8,000mJ/cm以下、更に好ましくは4,000mJ/cm以下、特に好ましくは1,000mJ/cm以下である。また、露光処理と熱処理とを組み合わせて、第一組成物層210を硬化させてもよい。
【0160】
図3は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(II)を説明するための模式的な断面図である。工程(II)で第一組成物層210を硬化させることにより、図3に示すように、基材300上に硬化した第一組成物層220が得られる。この硬化した第一組成物層220は、クラッド層200の一部を形成するものであり、以下、「下層クラッド層」220ということがある。
【0161】
図4は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(III)を説明するための模式的な断面図である。本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(II)の後で、図4に示すように、硬化した第一組成物層としての下層クラッド層220上に、本発明の感光性樹脂組成物を含む第二組成物層110を形成する工程(III)を含む。
【0162】
第二組成物層110の形成方法に特に制限は無い。例えば、本発明の感光性樹脂組成物を下層クラッド層220上に塗布することにより、第二組成物層110を形成してもよい。塗布を円滑に行う観点から、溶剤を含むワニス状の感光性樹脂組成物を用意し、そのワニス状の感光性樹脂組成物を塗布してもよい。本発明の感光性樹脂組成物の塗布は、クラッド用樹脂組成物の塗布と同様に行いうる。また、本発明の感光性樹脂組成物の塗布の後、必要に応じて、第二組成物層110の乾燥を行ってもよい。第二組成物層110の乾燥は、第一組成物層210の乾燥と同じ方法及び条件を採用しうる。
【0163】
第二組成物層110の形成は、例えば、樹脂シートを用いて行ってもよい。具体例を挙げると、樹脂シートの感光性樹脂組成物層を下層クラッド層220にラミネートすることにより、下層クラッド層220上に第二組成物層110を形成できる。樹脂シートのラミネートは、クラッド用樹脂シートのラミネートと同様に行いうる。また、樹脂シートの支持体は、工程(V)より前の適切な時期に剥離する。
【0164】
工程(III)において下層クラッド層220上に形成される第二組成物層110は、通常は本発明の感光性樹脂組成物を含み、好ましくは本発明の感光性樹脂組成物のみを含む。
【0165】
図5は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(IV)を説明するための模式的な断面図である。本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、図5に示すように、工程(III)の後で、第二組成物層110に露光処理を施す工程(IV)を含む。
【0166】
工程(V)では、露光処理により、第二組成物層110に潜像を形成する。具体的には、露光処理では、第二組成物層110の特定の部分に選択的に光Pを照射する。よって、露光処理を施されると、第二組成物層110には、光を照射された露光部111と、光を照射されていない非露光部112とが設けられる。通常、コア用樹脂組成物はネガ型の感光性樹脂組成物として機能するので、露光部111によって、コア層に対応する潜像が形成される。
【0167】
選択的な露光を行う観点から、工程(V)での露光処理は、通常、マスク400を用いて行われる。具体的には、この露光処理では、透光部410及び遮光部420を備えるマスク400を介して、光Pを第二組成物層110に照射する。光Pは、透光部410を透過して露光部111へ入射するが、遮光部420を透過できないので非露光部112へは入射できない。よって、透光部410及び遮光部420に対応した露光部111及び非露光部112を第二組成物層110に設けることができる。マスク400は、図5に示すように第二組成物層110に密着させてもよく(接触露光法)、密着させずに平行光線を使用して露光を行ってもよい(非接触露光法)。
【0168】
一般に、マスク400の透光部410は、光導波路のコア層に対応した平面形状を有するように形成される。よって、マスク400の遮光部420は、光導波路のコア層が無い部分に対応した平面形状を有するように形成される。「平面形状」とは、別に断らない限り、厚み方向から見た形状を表す。コア層に対応した平面形状に形成された透光部410を、以下「マスクパターン」ということがある。
【0169】
工程(V)での露光処理において用いる光Pとしては、本発明の感光性樹脂組成物の組成に応じた適切な活性光線を用いることが好ましい。活性光線の波長は、通常190nm~1000nm、好ましくは240nm~550nmであるが、これ以外の波長の光線を用いてもよい。活性光源の具体例としては、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。光Pの露光量は、工程(VII)での硬化後に所望のコア層を形成できるように設定することが好ましい。一例において、工程(V)での具体的な露光量の範囲は、好ましくは10mJ/cm以上、より好ましくは50mJ/cm以上、特に好ましくは200mJ/cm以上であり、好ましくは10,000mJ/cm以下、より好ましくは8,000mJ/cm以下、更に好ましくは4,000mJ/cm以下、特に好ましくは1,000mJ/cm以下である。
【0170】
本発明の樹脂シートを用いて第二組成物層110を形成した場合、工程(IV)において、第二組成物層110上に支持体(図示せず。)が存在していることがありうる。第二組成物層110上に支持体が存在している場合、その支持体を通して露光を行ってもよく、支持体を剥離した後で露光を行ってもよい。
【0171】
本発明の感光性樹脂組成物はネガ型の感光性樹脂組成物として機能するので、露光部111では現像液に対する溶解性が低下する。他方、非露光部112では現像液に対する溶解性は高い。この露光部111と非露光部112との溶解性の差を利用して、この後の工程(VI)による現像処理が行われる。
【0172】
本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(IV)の後、工程(V)の前に、第二組成物層110を硬化させる観点から、第二組成物層110を加熱する工程(IX)を含んでいてもよい。工程(IX)により、現像液に対する露光部111の溶解性を速やかに低下させることができる。工程(IX)での加熱は、ホットプレートで行ってもよいし、オーブンで行ってもよい。加熱温度は、例えば、40℃以上110℃以下でありうる。また、加熱時間は、例えば、30秒以上60分以下でありうる。
【0173】
図6は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(V)を説明するための模式的な断面図である。本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(IV)の後に、第二組成物層110に現像処理を施す工程(V)を含む。現像処理によれば、工程(IV)で形成された潜像を現像することができる。本発明の感光性樹脂組成物がネガ型の感光性樹脂組成物として機能するので、図6に示すように、現像処理によって露光部111は除去されない一方で、非露光部112(図5参照)が除去される。現像後に残る第二組成物層110の露光部111は、工程(IV)で用いたマスク400の透光部410(図5参照)のマスクパターンと同じ平面形状を有しうる。
【0174】
現像方法は、通常、第二組成物層110と現像液とを接触させるウエット現像法を行う。現像液としては、通常、アルカリ性水溶液を用いる。
【0175】
現像液としてのアルカリ性水溶液としては、例えば、アルカリ金属化合物の水溶液が挙げられる。アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の、アルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の、アルカリ金属の炭酸塩又は重炭酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の、アルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等の、アルカリ金属ピロリン酸塩、などが挙げられる。また、アルカリ性水溶液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の、金属イオンを含有しない有機塩基の水溶液が挙げられる。アルカリ性水溶液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、金属イオンを含有しない有機塩基の水溶液が好ましい。
【0176】
現像液は、必要に応じて、現像作用の向上のために、界面活性剤、消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0177】
現像時間は、10秒~5分が好ましい。現像時の現像液の温度は、特に定めるものではないが、好ましくは20℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0178】
現像方式としては、例えば、パドル法、スプレー法、浸漬法、ブラッシング法、スラッピング法、超音波法等が挙げられる。中でも、スプレー法が解像度向上のためには好適である。スプレー法を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa~0.3MPaが好ましい。
【0179】
現像液を用いた現像後、更に、第二組成物層110のリンスを行ってもよい。リンスは、現像液とは異なる溶剤で行うことが好ましい。例えば、コア用樹脂組成物に含まれるのと同じ種類の溶剤又は水を用いて、リンスしてもよい。リンス時間は、5秒~1分が好ましい。
【0180】
また、現像液を用いた現像後、現像により除去しきれない非露光部を除去するためにデスミア処理を行ってもよい。デスミア処理はプリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0181】
本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(V)の後に、第二組成物層110を硬化させる工程(VI)を含む。この工程(VI)は、通常、第二組成物層110を熱処理することを含む。熱処理の条件は、本発明の感光性樹脂組成物中の樹脂成分の種類及び量に応じて選択してもよい。例えば、工程(VI)での熱処理の条件は、工程(II)での第一組成物層210への熱処理と同じ条件でありうる。
【0182】
図7は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(VI)を説明するための模式的な断面図である。工程(VI)で第二組成物層110を硬化させることにより、図7に示すように、下層クラッド層220上に、硬化した第二組成物層としてのコア層100が得られる。
【0183】
図8は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(VII)を説明するための模式的な断面図である。本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(VI)終了後工程(VIII)の前に、コア層上に導体層を形成する工程(VII)を含んでいてもよい。コア層100上に形成される導体層500は、メッキによって形成することが好ましい。また、メッキによって導体層500を形成する前に、コア層100表面の粗化処理を行ってもよい。
【0184】
粗化処理の手順、条件は特に限定されない。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0185】
粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0186】
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0187】
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0188】
粗化処理後のコア層表面の算術平均粗さRaは、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm未満、さらに好ましくは200nm以下、より好ましくは200nm未満である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等とし得る。
【0189】
粗化処理終了後、粗化処理を施したコア層100上に導体層500を形成する。具体的には、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の方法によりコア層100の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層500を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0190】
コア層100の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層500を形成することができる。
【0191】
図9は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(VIII)を説明するための模式的な断面図である。図9に示すように、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(VII)の後に、コア層100及び導体層500上にクラッド用樹脂組成物を含む第三組成物層230を形成する工程(VIII)を含む。第三組成物層230は、通常、コア層100及び導体層500の周面のうち、下層クラッド層220に接していない面の全体を覆うように形成される。よって、第三組成物層230は、コア層100及び導体層500を覆うように形成されるとともに、下層クラッド層220上にも形成される。
【0192】
第三組成物層230の形成方法に特に制限は無い。例えば、クラッド用感光性樹脂組成物をコア層100及び導体層500上(及び、必要に応じて下層クラッド層220上)に塗布することにより、第三組成物層230を形成してもよい。第三組成物層230を形成するためのクラッド用感光性樹脂組成物の塗布は、第一組成物層210を形成するためのクラッド用感光性樹脂組成物の塗布と同様に行いうる。また、クラッド用感光性樹脂組成物の塗布の後、必要に応じて、第三組成物層230の乾燥を行ってもよい。第三組成物層230の乾燥は、第一組成物層210の乾燥と同じ方法及び条件を採用しうる。
【0193】
第三組成物層230の形成は、例えば、クラッド用樹脂シートを用いて行ってもよい。具体例を挙げると、クラッド用樹脂シートの感光性樹脂組成物層をコア層100及び導体層500(及び、必要に応じて下層クラッド層220)にラミネートすることにより、コア層100上に第三組成物層230を形成できる。第三組成物層230を形成するためのクラッド用樹脂シートのラミネートは、第一組成物層210を形成するためのクラッド用樹脂シートのラミネートと同様に行いうる。支持体を備えるクラッド用樹脂シートを用いて第三組成物層230を形成した場合、支持体は、任意の工程で剥離してもよい。
【0194】
工程(VIII)においてコア層100及び導体層500上に形成される第三組成物層230は、通常はクラッド用感光性樹脂組成物を含み、好ましくはクラッド用感光性樹脂組成物のみを含む。
【0195】
本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(VIII)の後で、第三組成物層230を硬化させる工程(IX)を含む。この工程(IX)における第三樹脂組成物層230の効果は、通常、第一組成物層210の硬化と同様に行いうる。
【0196】
図10は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(IX)を説明するための模式的な断面図である。工程(IX)で第三組成物層230を硬化させることにより、図10に示すように、コア層100上に硬化した第三組成物層240が得られる。この硬化した第三組成物層240は、クラッド層200の一部を形成するものであり、以下、「上層クラッド層」240ということがある。そして、この上層クラッド層240と下層クラッド層220とから、クラッド層200が形成される。したがって、下層クラッド層220及び上層クラッド層240を含むクラッド層200と、このクラッド層200内に設けられたコア層100とを備える光導波路10を得ることができる。
【0197】
光導波路10の製造方法は、上述した工程に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
【0198】
光導波路10の製造方法は、例えば、保護層(図示せず。)を形成する工程を含んでいてもよい。また、光導波路10の製造方法は、例えば、製造した光導波路10をダイシングする工程を含んでいてもよい。
【0199】
光導波路10の製造方法は、上述した工程を繰り返し行ってもよい。例えば、工程(I)~(IX)を繰り返し行って、基材300上に、厚み方向においてコア層とクラッド層とを交互に備える多層構造の光導波路を製造してもよい。
【0200】
[光電気混載基板]
本発明の一実施形態に係る光電気混載基板は、上述した光導波路を備える。通常、光電気混載基板は、光導波路と、電気回路基板とを備える。電気回路基板は、電子部品と、当該電子部品に接続された配線とを備えうる。電子部品としては、例えば、コンデンサ、インダクタ、抵抗等の受動部品;半導体チップ等の能動部品;等が挙げられる。そして、光導波路と電気回路基板の配線とは、光電変換素子を介して接続されうる。光電変換素子は、電気を光に変換可能な発光素子(例えば、面発光型発光ダイオード)、及び、光を電気に変換可能な受光素子(例えば、フォトダイオード)を組み合わせて含みうる。さらに、光電気混載基板は、光路調整のためにミラー等の光学素子を備えていてもよい。
【0201】
好ましい光電気混載基板の例としては、シリコンウエハに光集積回路を形成したチップを備えるものが挙げられる。このチップは、シリコンフォトニクスを用いた早期の実用化が期待されており、例えば半導体パッケージへの実装が予想される。このチップを備える光電気混載基板は、例えば、電気回路基板と、当該電気回路基板に実装されたチップと、光導波路とを備える。光導波路は、電気回路基板の配線とチップとを接続したり、複数のチップ間を接続したりするために用いうる。
【0202】
シリコンフォトニクスで製造されるチップでは、一般に、1310nm及び1550nmの波長の光が使用されることが多く、特に1310nmが主流である(吉田翔、菅沼大輔、石榑崇明、「Mosquito法によるシングルモードポリマー導波路の作製と低損失化」、第28回エレクトロニクス実装学会春季講演大会、2014年)。よって、光導波路は、1310nm及び1550nm又はそれに近い波長の光の伝送が可能であることが好ましく、例えば波長1300nm~1320nmの光を伝送可能であることが好ましい。上述した実施形態に係る光導波路によれば、これらの波長の光の伝送が可能である。
【0203】
一般に、シングルモードとマルチモードとでは、シングルモードの方が速い伝送を達成できる。よって、高速伝送の観点からは、光電気混載回路に適用する光導波路として、シングルモードの光導波路が好ましい。シングルモードの光導波路では、コア層の幅は小さいことが好ましい。例えば、10μm以下、又は5μm以下の幅のコア層を形成することが好ましい。また、このように幅が小さいコア層を備える光導波路は、光導波路を半導体パッケージに適用する場合に、パッケージのデザインの自由度を高める観点からも、好ましい。上述した実施形態に係る光導波路によれば、コア層の幅を前記のように小さくすることが可能である。
【0204】
他方、複数の光電気混載基板を接続する場合、それらの基板は、光ファイバーを介して接続されることがありうる。例えば、ラックに複数の光電気混載基板を設置し、それら光電気混載基板同士を光ファイバーで接続することがありうる。このように基板間を接続する光ファイバーは、マルチモードが主流である。そこで、その光ファイバーとの接続を可能にする観点では、光電気混載基板に設ける光導波路として、マルチモードの光導波路を採用してもよい。
【0205】
汎用性を高める観点では、光導波路は、シングルモード及びマルチモードのいずれにも適用可能であることが望ましい。更には、それら光導波路のコア層の最小幅を小さくして、コア層の線幅の自由度を高めることが望ましい。上述した実施形態に係る光導波路によれば、コアに本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、微細なコアを形成できるので、コア層の最小幅を小さくできる。また、上述した実施形態に係る光導波路によれば、シングルモード及びマルチモードのいずれの光導波路も得ることができる。よって、上述した実施形態に係る光導波路は、広範な範囲に適用が可能である。そして、そのように広範な範囲に適用可能でありながら、光の伝送損失を抑制できるので、上述した実施形態に係る光導波路は、光電気混載基板に適用するのに好適である。
【実施例0206】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0207】
[合成例1]
フラスコ内でp-tert-ブトキシスチレン(東京化成社製)を176g(1モル)、イソプレン(東京化成社製)を68g(1モル)、N,N-ジメチルアセトアミド1L、アゾビスイソブチロニトリル(東京化成社製)5g(0.03モル)を混合して反応液を得た。この反応液に窒素を吹き込み脱酸素した後、雰囲気下にて80℃まで昇温し、8時間の重合反応を行った。その後、反応液にメタノールを2L添加して、攪拌した大量のイオン交換水に滴下した。析出した重合体をろ過、乾燥して重合体を202g得た。
【0208】
オートクレーブ内で得られた重合体100gをシクロヘキサン1Lに溶解し、減圧脱気後、水素置換し、40℃まで昇温した。次いで、濃度1.0ミリモル/100mLのビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド(東京化成社製)のトルエン溶液20mLをオートクレーブ中に仕込み、5kg/cmの乾燥ガス状水素を供給し、2時間の反応を行った。反応液にメタノールを2L添加して、攪拌した大量のイオン交換水に滴下した。析出した重合体をろ過、乾燥して水添ポリマーを66g得た。
【0209】
得られた水添ポリマー50gをジエチルエーテルに溶解し、トリフルオロ酢酸5g(東京化成製)を滴下し、室温で1時間攪拌した。反応液にメタノールを1L添加して、攪拌した大量のイオン交換水に滴下した。析出した重合体をろ過、乾燥して脱保護体を30g得た。
【0210】
GPCにより脱保護体の分子量を測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量50,000、数平均分量17,000、分散度2.9であった。また、NMRにより算出されるジエンの水素添化率は97%、脱保護率は99%以上であった。
【0211】
[合成例2]
合成例1において、p-tert-ブトキシスチレンの量を1モルから751.5モルに変え、イソプレンの量を1モルから0.5モルに変えた。
以上の事項以外は合成例1と同様にしてポリマーを合成した。
【0212】
GPCにより脱保護体の分子量を測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量48,000、数平均分量15,000、分散度3.2であった。また、NMRにより算出されるジエンの水添化率は96%、脱保護率は99%以上であった。
【0213】
[合成例3]
合成例1において、p-tert-ブトキシスチレンの量を1モルから0.5モルに変え、イソプレンの量を1モルから1.5モルに変えた。
以上の事項以外は合成例1と同様にしてポリマーを合成した。
【0214】
GPCにより脱保護体の分子量を測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量52,000、数平均分量17,000、分散度3.1であった。また、NMRにより算出されるジエンの水添化率は98%、脱保護率は99%以上であった。
【0215】
[合成例4]
フラスコ内でp-tert-ブトキシスチレン(東京化成社製)を362g(2モル)、N,N-ジメチルアセトアミド1L、アゾビスイソブチロニトリル(東京化成社製)5g(0.03モル)を混合して反応液を得た。この反応液に窒素を吹き込み脱酸素した後、雰囲気下にて80℃まで昇温し、8時間の重合反応を行った。その後、反応液にメタノールを2L添加して、攪拌した大量のイオン交換水に滴下した。析出した重合体をろ過、乾燥して重合体を202g得た。
【0216】
重合体50gをジエチルエーテルに溶解し、トリフルオロ酢酸5g(東京化成製)を滴下し、室温で1時間攪拌した。反応液にメタノールを1L添加して、攪拌した大量のイオン交換水に滴下した。析出した重合体をろ過、乾燥して脱保護体を28g得た。
【0217】
GPCにより脱保護体の分子量を測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量45,000、数平均分量13,000、分散度3.5であった。また、NMRにより算出される脱保護率は99%以上であった。
【0218】
[合成例5]
合成例1において、p-tert-ブトキシスチレンとイソプレンとの共重合体の二重結合を還元しなかった。以上の事項以外は合成例1と同様にしてポリマーを合成した。
【0219】
GPCにより重合体の分子量を測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量50,000、数平均分量17,000、分散度2.9であった。また、NMRにより算出される脱保護率は99%以上であった。
【0220】
[合成例6]
フラスコ中で脱気、脱水した環境で、窒素雰囲気中、イソプレン68g(1モル)、シクロヘキサン1kg、n-ブチルリチウム0.3gを加えて、60℃で3時間重合し、次いでp-tert-ブトキシスチレン176g(1モル)を加えて、60℃で3時間重合した。その後、反応液にメタノールを2L添加して、攪拌した大量のイオン交換水に滴下した。析出した重合体をろ過、乾燥してブロック共重合体を202g得た。その後、ブロック共重合体を合成例1と同様の方法にて還元し、水添ポリマーを得た。
【0221】
水添ポリマーを50gをジエチルエーテルに溶解し、トリフルオロ酢酸5g(東京化成製)を滴下し、室温で1時間攪拌した。反応液にメタノールを1L添加して、攪拌した大量のイオン交換水に滴下した。析出した重合体をろ過、乾燥して脱保護体を28g得た。
【0222】
GPCにより脱保護体の分子量を測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量60,000、数平均分量51,000、分散度1.2であった。また、NMRにより算出される水添率は6%、脱保護率は99%以上であった。
【0223】
[合成例7]
フラスコ中で脱気、脱水した環境で、窒素雰囲気中、p-tert-ブトキシスチレン176g(1モル)、シクロヘキサン1kg、n-ブチルリチウム0.3gを加えて、60℃で3時間重合し、次いでイソプレン68g(1モル)を加えて、60℃で3時間重合した。その後、反応液にメタノールを2L添加して、攪拌した大量のイオン交換水に滴下した。析出した重合体をろ過、乾燥してブロック共重合体を202g得た。その後、ブロック共重合体を合成例1と同様の方法にて還元し、水添ポリマーを得た。
【0224】
水添ポリマー50gをジエチルエーテルに溶解し、トリフルオロ酢酸5g(東京化成製)を滴下し、室温で1時間攪拌した。反応液にメタノールを1L添加して、攪拌した大量のイオン交換水に滴下した。析出した重合体をろ過、乾燥して脱保護体を28g得た。
【0225】
GPCにより脱保護体の分子量を測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量59,000、数平均分量48,000、分散度1.2であった。また、NMRにより算出される水添率は6%、脱保護率は99%以上であった。
【0226】
[合成例8]
合成例6において、ブロック共重合体の二重結合を還元しなかった。以上の事項以外は合成例6と同様にしてポリマーを合成した。
【0227】
GPCにより脱保護体の分子量を測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量60,000、数平均分量51,000、分散度1.2であった。また、NMRにより算出される脱保護率は99%以上であった。
【0228】
[合成例9]
合成例7において、ブロック共重合体の二重結合を還元しなかった。以上の事項以外は合成例7と同様にしてポリマーを合成した。
【0229】
GPCにより脱保護体の分子量を測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量59,000、数平均分量48,000、分散度1.2であった。また、NMRにより算出される脱保護率は99%以上であった。
【0230】
[実施例1~9、比較例1~4]
下記表に示す含有量の材料を配合し、高速回転ミキサーを使用して混合して、感光性樹脂組成物としての樹脂ワニスを得た。下記表において、各成分の数値は、質量部を表す。また、下記表において、略称の意味は、以下のとおりである。
【0231】
【表1】
【0232】
<(A-1)成分>
・合成例1:p-tert-ブトキシスチレンとイソプレンのランダム共重合体(50モル%/50モル%)の二重結合を還元し、tert-ブトキシ基を脱保護したフェノール樹脂。
・合成例2:p-tert-ブトキシスチレンとイソプレンのランダム共重合体(75モル%/25モル%)の二重結合を還元し、tert-ブトキシ基を脱保護したフェノール樹脂。
・合成例3:p-tert-ブトキシスチレンとイソプレンのランダム共重合体(25モル%/75モル%)の二重結合を還元し、tert-ブトキシ基を脱保護したフェノール樹脂。
・合成例6:p-tert-ブトキシスチレン(A)とイソプレン(B)のA(25モル%)/B(50モル%)/A(25モル%)ブロック共重合体の二重結合を還元し、tert-ブトキシ基を脱保護したフェノール樹脂。
・合成例7:p-tert-ブトキシスチレン(A)とイソプレン(B)のB(25モル%)/A(50モル%)/B(25モル%)ブロック共重合体の二重結合を還元し、tert-ブトキシ基を脱保護したフェノール樹脂。
<(A-2)成分>
・合成例5:p-tert-ブトキシスチレンとイソプレンのランダム共重合体(50モル%/50モル%)のtert-ブトキシ基を脱保護したフェノール樹脂。
<(B)成分>
・「MW-390」三和ケミカル社製、ヘキサメトキシメチルメラミン。
<(C)成分>
・「PAG-103」:BASF社製、下記構造式の化合物。
【化25】
<(D)フェノール樹脂>
・BisP-E:本州化学工業社製、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン。
<(E)溶剤>
・「PGMEAc」:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、関東化学社製。
<(F)成分>
・合成例4:p-tert-ブトキシスチレンの重合体を脱保護したフェノール樹脂。
・合成例8:p-tert-ブトキシスチレン(A)とイソプレン(B)のA(25モル%)/B(50モル%)/A(25モル%)ブロック共重合体のtert-ブトキシ基を脱保護したフェノール樹脂。
・合成例9:p-tert-ブトキシスチレン(A)とイソプレン(B)のB(25モル%)/A(50モル%)/B(25モル%)ブロック共重合体のtert-ブトキシ基を脱保護したフェノール樹脂。
・TR4020G:旭有機材社製、重量平均分子量:13000。
【0233】
[樹脂シートの製造]
実施例1~9及び比較例1~4で製造した感光性樹脂組成物(樹脂ワニス)を用いて、異なる厚みを有する感光性樹脂組成物層を備えた複数の樹脂シートを、下記の方法で製造した。
【0234】
支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーT60」、厚み38μm、軟化点130℃)を用意した。樹脂ワニスを、かかる支持体に、乾燥後の感光性樹脂組成物層の厚みが10μm、または20μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から110℃(最高温度110℃)で7分間乾燥して、感光性樹脂組成物層を形成した。次に、カバーフィルム(二軸延伸ポリプロピレンフィルム、王子エフテックス社製「MA-411」)を樹脂組成物層の表面に配置し、80℃でラミネートすることにより、支持体/樹脂組成物層/カバーフィルムの三層構成の樹脂シートを製造した。
【0235】
[感光性樹脂組成物の解像性の評価]
厚みが20μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートからカバーフィルムを剥離し、シリコンウェハに60℃でラミネートし、支持体を剥離して、感光性樹脂組成物層を形成した。その後、投影露光装置(ウシオ電機社製「UX-2240」)を用いて、3000mJの露光量で、感光性樹脂組成物層全面に露光を実施した。露光後、感光性樹脂組成物層に、90℃3分の加熱を行った後に、現像液として23℃の2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をスプレー圧0.1MPaにて30秒間のスプレー現像を行った。現像後、感光性樹脂組成物層に3J/cmの紫外線照射を行い、さらに190℃、90分間の加熱処理を空気中で行うことにより、シリコンウェハに下層クラッド層を形成した。
【0236】
厚みが10μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。樹脂シートの感光性樹脂組成物層と下層クラッド層とが接するように、下層クラッド層上に樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層して、下層クラッド層上に樹脂組成物層を形成した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度60℃、圧着圧力0.4MPa、加圧時間30秒間とした。これにより、シリコンウェハと下層クラッド層と樹脂シートをこの順に備える積層体を得た。その後、支持体を剥離して、感光性樹脂組成物層を露出させた。
【0237】
感光性樹脂組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UX-2240」)を用いて、200mJから2000mJの最適露光量で、露光を実施した。露光は、L/S(ライン/スペース)1μm/1μm~10μm/10μmまでが1μm刻み、10μm/10μm~20μm/20μmまでが2μm刻み、20μmまでが10μm刻みで直線を描画させるマスクパターンを有する石英ガラスマスクを使用して行った。露光後、90℃3分の加熱を行った後に、感光性樹脂組成物層に現像液として23℃の2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をスプレー圧0.1MPaにて30秒間のスプレー現像を行った。スプレー現像後、感光性樹脂組成物層に3J/cmの紫外線照射を行い、さらに190℃、90分間の加熱処理を空気中で行って、シリコンウエハと下層クラッド層とライン層(感光性樹脂組成物の硬化物で形成された層)とをこの順に備えるサンプルを得た。
【0238】
得られたサンプルを光学顕微鏡で観察し、最小細線形成幅(形成できたライン層のうち、幅が最も小さいライン層の幅、単位はμm)を解像度とした。また、解像性を以下の基準で評価した。
◎:解像度が5μm以下
〇:解像度が5μmを超え、10μm以下
△:解像度が10μmを超え、100μm以下
×:解像度が100μmを超える
【0239】
[感光性樹脂組成物の硬化物の破断点伸度の測定]
厚みが20μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。その後、感光性樹脂組成物層に1000mJの紫外線照射と窒素雰囲気下で190℃90分間の加熱とを行って、感光性樹脂組成物層を熱硬化させた。その後、支持体を剥離して、感光性樹脂組成物の硬化物で形成されたサンプルフィルムを得た。得られたサンプルフィルムを、日本工業規格(JIS K7127)に準拠して、テンシロン万能試験機(オリエンテック製「RTC-1250A」)により引っ張り試験を行い、破断点伸度を測定した。また、破断点伸度を以下の基準で評価した。
◎:破断点伸度が20%以上。
〇:破断点伸度が15%以上20%未満。
△:破断点伸度が3%以上15%未満。
×:破断点伸度が3%未満。
【0240】
[感光性樹脂組成物の溶液の吸光度の測定]
実施例1~9及び比較例1~4で製造した樹脂ワニスに含まれる感光性樹脂組成物の溶液を調製し、その溶液の吸光度を下記の方法で測定した。
【0241】
すなわち、樹脂ワニスにPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を混合して、感光性樹脂組成物の濃度20質量%の溶液を調製した。この溶液を1cmの石英セルに投入し、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V-770)により、波長1310nmにおける吸光度Absを測定した。また、吸光度を以下の基準で評価した。
◎:吸光度が0.01以下。
〇:吸光度が0.01を超え0.015以下。
△:吸光度が0.015を超え0.05以下。
×:吸光度が0.05を超える。
【0242】
[伝送損失の測定]
【0243】
(校正用の光学系の光伝送損失の測定)
後述するサンプルの伝送損失測定用の光学系から試験用基板及び集光モジュールを除いた構成の光学系の伝送損失を測定した。すなわち、暗幕で覆われた除振台で、光ファイバ(入射ファイバ)を介して光源(1310nm光源、THORLABS社製「LPSC-1310-FC」)と受光器(キーサイト社製の光パワーメータ「N7742」)とを接続して、校正用の光学系を得た。光源を発光させて、受光器に進入した光の強度を当該受光器で測定して、この校正用の光学系の損失を測定した。
【0244】
(サンプルの作製)
予め製造した厚み10μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。樹脂シートの感光性樹脂組成物層を、2μm厚のSiOが成膜されたシリコンウェハ上に配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層して、シリコンウェハ上に感光性樹脂組成物層を形成した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度100℃、圧着圧力0.4MPa、加圧時間30秒間とした。これにより、シリコンウェハ、2μm厚のSiO膜、10μm厚の感光性樹脂組成物とをこの順に備える積層体を得た。その後、支持体を剥離して、感光性樹脂組成物層を露出させた。
【0245】
感光性樹脂組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UX-2240」)を用いて、200mJから2000mJの最適露光量で、露光を実施した。露光は、L/S(ライン/スペース)10μm/125μm、長さ7cmのマスクを設置して行った。露光後、90℃3分の加熱を行った後に、感光性樹脂組成物層に現像液として23℃の2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をスプレー圧0.1MPaにて30秒間のスプレーして、スプレー現像を行った。スプレー現像後、感光性樹脂組成物層に3J/cmの紫外線照射を行い、さらに190℃、90分間の加熱処理を空気中で行って、シリコンウェハ、2μm厚のSiO膜、10μm厚の感光性樹脂組成物ライン層(感光性樹脂組成物の硬化物で形成された層)とをこの順に備えるサンプルを得た。
【0246】
(光伝送損失の測定)
暗幕で覆われた除振台上に、サンプルを設置した。サンプルの一端(入射端)に、集光モジュール(開口数0.18)を接続し、更にその集光モジュールに光ファイバ(入射ファイバ)を介して光源(1310nm光源、THORLABS社製「LPSC-1310-FC」)を接続した。また、サンプルの他端(出射端)に、別の集光モジュール(開口数0.18)を接続し、更にその集光モジュールに光ファイバ(出射ファイバ)を介して受光器(キーサイト社製の光パワーメータ「N7742」)を接続した。以上の操作により、光源から発せられた光が光ファイバ(入射ファイバ)、集光モジュール、サンプル、集光モジュール、及び光ファイバ(出射ファイバ)をこの順に透過した後、受光器に進入する光学系を得た。以下、この光学系を試料光学系と呼ぶことがある。光源を発光させて、受光器に進入した光の強度を当該受光器で測定して、試料光学系の損失を測定した。
試料光学系の損失から、以下のように測定した校正用の光学系の損失を引き算して、試験用基板に含まれる光導波路の損失を求めた。
【0247】
(伝送損失(dB/cm)の測定)
前記のサンプルの損失の測定を、長さ7cmのサンプルの両端1cmをダイシングにより取り除き5cm長の光伝送損失を測定した。次に、受光器側を測定した1cmをダイシングによって取り除いて4cmとして光伝送損失を測定した。さらに、1cmをダイシングによって取り除いて3cmとして光伝送損失を測定した。測定結果を、サンプルの長さを横軸、サンプルの損失を縦軸とした座標系にプロットして、測定結果を表す3点の座量を得た。これら3点の近似直線を最小二乗法で計算し、その近似直線の傾きを、サンプルの単位距離当たりの損失(伝送損失)として求めた。また、伝送損失を以下の基準で評価した。
◎:伝送損失が0.2dB/cm以下。
〇:伝送損失が0.2dB/cmを超え0.5dB/cm以下。
△:伝送損失が0.5dB/cmを超え1dB/cm以下。
×:伝送損失が1dB/cmを超える。
【0248】
【表2】
【0249】
[実施例10:光導波路の作製]
(下層クラッド層の形成)
実施例3の感光性樹脂組成物を用いて作製された、厚みが10μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。感光性樹脂組成物層とシリコンウエハとが接するように、6インチのシリコンウェハ上に樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度60℃、圧着圧力0.4MPa、加圧時間30秒間とした。その後、支持体を剥離して、シリコンウエハ及び感光性樹脂組成物層を備える中間積層体Iを得た。
【0250】
中間積層体Iの樹脂組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UX-2240」)を用いて、3000mJの紫外線で露光を実施した。露光後、中間積層体Iをクリーンオーブンに投入し、室温から190℃に昇温させ、190℃に到達した後に90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、感光性樹脂組成物層を硬化させた。感光性樹脂組成物層の硬化により下層クラッド層が形成されて、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを得た。
【0251】
(コア層の形成)
実施例1の感光性樹脂組成物を用いて作製された、厚みが10μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。感光性樹脂組成物層と下層クラッド層とが接するように、中間積層体IIの下層クラッド層の表面に樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度100℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。その後、支持体を剥離して、シリコンウエハ、下層クラッド層(下地クラッド層)及び感光性樹脂組成物層をこの順で備える中間積層体IIIを得た。
【0252】
中間積層体IIIの感光性樹脂組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UX-2240」)を用いて、200mJから2000mJの最適露光量で、紫外線による露光を実施した。露光は、L/S(ライン/スペース)10μm/125μmで長さが7cmの複数の直線を描画できるマスクパターンを有する石英ガラスマスクを使用して行った。この石英ガラスマスクのL/Sにおいて、ラインがコア層の幅に相当し、スペースがコア層間の間隔に相当する。露光後、90℃3分の加熱を行った後に、感光性樹脂組成物層に現像液として23℃の2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をスプレー圧0.1MPaにて30秒間のスプレーして、スプレー現像を行った。スプレー現像後、中間積層体IIIをクリーンオーブンに投入し、室温から190℃に昇温させ、190℃に到達した後に90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、感光性樹脂組成物層を硬化させた。感光性樹脂組成物層の硬化によりコア層が形成されて、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0253】
(上層クラッド層の形成)
実施例3の感光性樹脂組成物を用いて作製された、厚みが20μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。感光性樹脂組成物層とコア層とが接するように、中間積層体IVのコア層上に樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度100℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。その後、支持体を剥離して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び感光性樹脂組成物層をこの順に備える中間積層体Vを得た。
【0254】
中間積層体Vの感光性樹脂組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UX-2240」)を用いて、3000mJの紫外線で露光を実施した。露光後、中間積層体Vをクリーンオーブンに投入し、室温から190℃に昇温させ、190℃に到達した後に90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、感光性樹脂組成物層を硬化させた。樹脂組成物層の硬化により上層クラッド層が形成されて、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。
【0255】
この試料積層体において、下層クラッド層と上層クラッド層との組み合わせがクラッド層を構成していた。よって、そのクラッド層と、当該クラッド層中にあるコア層とを含む光導波路が得られた。また、この試料積層体において、コア層は、石英ガラスマスクが有していたマスクパターンに対応して長さ7mの直線状のパターンを有しており、それらのパターンに含まれるコア層の幅(ライン幅)及び間隔(スペース)はマスクパターンの幅(ライン幅)及び間隔(スペース)に一致していた。
【0256】
前記の伝送損失の測定方法により実施例10にて作製した光導波路の伝送損失を測定、計算した結果、0.2dB/cmであった。
【0257】
[実施例11:光導波路の作製]
実施例10において、
(1)下層クラッド層の形成において、実施例3の感光性樹脂組成物を用いて作製された、厚みが20μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートを、実施例6の感光性樹脂組成物を用いて作製された、厚みが20μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートに変え、
(2)コア層の形成において、実施例1の感光性樹脂組成物を用いて作製された、厚みが10μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートを、実施例4の感光性樹脂組成物を用いて作製された、厚みが10μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートに変え、
(3)上層クラッド層の形成において、実施例3の感光性樹脂組成物を用いて作製された、厚みが20μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートを、実施例6の感光性樹脂組成物を用いて作製された、厚みが20μmの感光性樹脂組成物層を備える樹脂シートに変えた。
以上の事項以外は実施例10と同様にして光導波路を作製した。
【0258】
前記の伝送損失の測定方法により実施例11にて作製した光導波路の伝送損失を測定、計算した結果、0.16dB/cmであった。
【符号の説明】
【0259】
10 光導波路
100 コア層
110 第二組成物層
111 露光部
112 非露光部
200 クラッド層
210 第一組成物層
220 硬化した第一組成物層(下層クラッド層)
230 第三組成物層
240 硬化した第三組成物層(上層クラッド層)
300 基材
400 マスク
410 透光部
420 遮光部
500 導体層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10