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特開2024-126395緩み止めスリーブ、締結構造及び締結方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126395
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】緩み止めスリーブ、締結構造及び締結方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/24 20060101AFI20240912BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F16B39/24 Z
F16B43/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034749
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(71)【出願人】
【識別番号】501415682
【氏名又は名称】株式会社横井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 隼
(72)【発明者】
【氏名】硲 昌也
(72)【発明者】
【氏名】竹田 誠
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 徹
(72)【発明者】
【氏名】松村 信
(72)【発明者】
【氏名】横井 洋治
(72)【発明者】
【氏名】横井 慎一
【テーマコード(参考)】
3J034
【Fターム(参考)】
3J034AA07
3J034BA20
3J034CA01
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で緩み止め効果を発揮できるようにする。
【解決手段】緩み止めスリーブ2に、締結ボルト10が挿通される貫通孔3aを有し、被締結部材12と締結ボルト10のボルト頭部10a又はナット11との間に挟み込まれる円環状のワッシャ3と、ワッシャ3よりも軸方向に突出し、締結ボルト10の雄ネジ部10b外周と被締結部材12’のボルト挿通孔12a’内周又はナット11の雌ネジ部11aとの間に挟み込まれて締め込まれる円筒状のスリーブ部(スリーブ本体2a)とを設ける。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結ボルトが挿通される貫通孔を有する円環状のフランジ部と、前記フランジ部から軸方向に延び、前記締結ボルトの雄ネジ部外周と被締結部材のボルト挿通孔内周又はナットの雌ネジ部との間に挟み込まれて締め込まれる円筒状のスリーブ部とを備える
ことを特徴とする緩み止めスリーブ。
【請求項2】
締結ボルトが挿通される貫通孔を有する円環状のフランジ部及び前記フランジ部から軸方向に延びる円筒状のスリーブ部を有する緩み止めスリーブと、
前記スリーブ部が挿通される貫通孔を有し、被締結部材と前記締結ボルトのボルト頭部又はナットとの間に挟み込まれる円環状のワッシャとによって前記被締結部材が締結される締結構造であって、
前記締結ボルトの雄ネジ部外周と前記被締結部材のボルト挿通孔内周又は前記ナットの雌ネジ部との間に前記スリーブ部が挟み込まれた状態で前記被締結部材が締め込まれる
ことを特徴とする締結構造。
【請求項3】
前記フランジ部は、前記ワッシャよりも厚さが薄く、前記ワッシャよりも外径が小さく、前記ワッシャの貫通孔内周に凹陥した円形溝部に嵌め込まれる
ことを特徴とする請求項2に記載の締結構造。
【請求項4】
前記フランジ部は、前記ワッシャよりも厚さが薄く、前記ワッシャよりも外径が同じかそれよりも小さく、前記ワッシャの軸方向端面と、前記ボルト頭部又は前記ナットとの間に挟み込まれる
ことを特徴とする請求項2に記載の締結構造。
【請求項5】
締結ボルトが挿通される貫通孔を有し、被締結部材と前記締結ボルトのボルト頭部又はナットとの間に挟み込まれる円環状のワッシャ部と、
前記ワッシャ部から一体に軸方向に延び、前記締結ボルトの雄ネジ部外周と前記被締結部材のボルト挿通孔内周又は前記ナットの雌ネジ部との間に挟み込まれて締め込まれる円筒状のスリーブ部とを備える
ことを特徴とする緩み止めスリーブ。
【請求項6】
前記スリーブ部の外径は、前記締結ボルトの外径よりも0.1mm以上0.5mm以下大きい
ことを特徴とする請求項1又は5に記載の緩み止めスリーブ。
【請求項7】
前記スリーブ部の厚さは、0.1mm以上0.2mm以下である
ことを特徴とする請求項1又は5に記載の緩み止めスリーブ。
【請求項8】
前記スリーブ部の高さは、5mm以上である
ことを特徴とする請求項1又は5に記載の緩み止めスリーブ。
【請求項9】
締結ボルトと、
締結ボルトが挿通される貫通孔を有する円環状のフランジ部及び前記フランジ部から軸方向に延びる円筒状のスリーブ部を有する緩み止めスリーブと、
前記緩み止めスリーブが挿通される貫通孔を有し、被締結部材と前記締結ボルトのボルト頭部又はナットとの間に挟み込まれる円環状のワッシャとを準備し、
前記緩み止めスリーブの内部に前記締結ボルトを挿通した後、前記ワッシャを前記緩み止めスリーブの先端側から通した状態で、前記ワッシャの軸方向端面を被締結部材のボルト挿通孔周縁に当接させるようにして前記締結ボルトの先端を前記ボルト挿通孔に挿通し、又は、
前記締結ボルトを前記被締結部材のボルト挿通孔に挿通し、前記ボルト挿通孔の周縁から突出する前記締結ボルトの先端に前記緩み止めスリーブを挿通した後、前記ワッシャを挿通し、前記ワッシャの軸方向端面を被締結部材のボルト挿通孔周縁に当接させ、
その後、前記締結ボルトの雄ネジ部外周と前記被締結部材のボルト挿通孔内周の雌ネジ部又は前記締結ボルトの先端から挿入したナットの雌ネジ部との間に前記緩み止めスリーブを挟み込んだ状態で、前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に締め付ける
ことを特徴とする緩み止めスリーブの締結方法。
【請求項10】
締結ボルトと、
前記締結ボルトが挿通される貫通孔を有する円環状のワッシャ部、及び、前記ワッシャ部から一体に軸方向に延びるスリーブ部を備える緩み止めスリーブとを準備し、
前記スリーブ部の内部に前記締結ボルトを挿通し、前記ワッシャ部の軸方向端面を被締結部材のボルト挿通孔周縁に当接させるようにして前記締結ボルトの先端を前記ボルト挿通孔に挿通し、又は、
前記締結ボルトを前記被締結部材のボルト挿通孔に挿通し、前記ボルト挿通孔の周縁から突出する前記締結ボルトの先端に前記スリーブ部を軸方向に突出させるように前記緩み止めスリーブを挿通し、前記ワッシャ部の軸方向端面を被締結部材のボルト挿通孔周縁に当接させ、
その後、前記締結ボルトの雄ネジ部外周と前記被締結部材のボルト挿通孔内周の雌ネジ部又は前記締結ボルトの先端から挿入したナットの雌ネジ部との間に前記スリーブ部を挟み込んだ状態で、前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に締め付ける
ことを特徴とする緩み止めスリーブの締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結ボルトの雄ネジ部と、ナット又は被締結部材の雌ネジ部との間に挟み込まれて締め込まれる、緩み止めスリーブ、締結構造及び締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、締結ボルトの各種の緩み止め構造が知られている。例えば、特許文献1のように、座面に凹部を有する金属製のナットと、中央が盛り上がった金属製のワッシャとを用い、締結ボルトをネジ込むとワッシャ中央部がナット凹部の傾斜面に沿って変形し、締結ボルトの雄ネジ部を押さえる締結構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-206515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
締結ボルトの緩み止め構造は、作業性がよく、一般的な形状の締結ボルトやナットを使えることが望ましいが、特許文献1の緩み止め構造では、特殊な形状の専用ナットを用意する必要があり、しかも、特殊ナットを用いずに被締結部材に形成した一般的な雌ネジ部に直接ネジ込む場合には、適用できないという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で緩み止め効果を発揮できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、締結ボルトの雄ネジ部によって緩み止めスリーブを雌ネジ部にネジ込めば、緩み止め効果が得られるようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明の緩み止めスリーブは、締結ボルトが挿通される貫通孔を有する円環状のフランジ部と、前記フランジ部から軸方向に延び、前記締結ボルトの雄ネジ部外周と前記被締結部材のボルト挿通孔内周又は前記ナットの雌ネジ部との間に挟み込まれて締め込まれる円筒状のスリーブ部とを備える。
【0008】
上記の緩み止めスリーブによると、円筒状のスリーブ部が、締結ボルトの雄ネジ部外周と、被締結部材のボルト挿通孔内周の雌ネジ部又はナットの雌ネジ部との間に挟み込まれた状態で締め込まれるので、雄ネジ部と雌ネジ部とが密着し、締結ボルトが緩まない。そして、雄ネジ部と雌ネジ部とでスリーブ部を締め込めばよいので、一般的な雌ネジ部が施された被締結部材に対しても適用できる。
【0009】
第2の発明は、
締結ボルトが挿通される貫通孔を有する円環状のフランジ部及び前記フランジ部から軸方向に延びる円筒状のスリーブ部を有する緩み止めスリーブと、
前記スリーブ部が挿通される貫通孔を有し、被締結部材と前記締結ボルトのボルト頭部又はナットとの間に挟み込まれる円環状のワッシャとによって前記被締結部材が締結される締結構造を対象とし、
前記締結構造では、
前記締結ボルトの雄ネジ部外周と前記被締結部材のボルト挿通孔内周又は前記ナットの雌ネジ部との間に前記スリーブ部が挟み込まれた状態で前記被締結部材が締め込まれる。
【0010】
上記の締結構造によると、円筒状のスリーブ部が、締結ボルトの雄ネジ部外周と、被締結部材のボルト挿通孔内周の雌ネジ部又はナットの雌ネジ部との間に挟み込まれた状態で締め込まれるので、雄ネジ部と雌ネジ部とが密着し、締結ボルトが緩まない。そして、雄ネジ部と雌ネジ部とでスリーブ部を締め込めばよいので、一般的な雌ネジ部が施された被締結部材に対しても適用できる。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、
前記フランジ部は、前記ワッシャよりも厚さが薄く、前記ワッシャよりも外径が小さく、前記ワッシャの貫通孔内周に凹陥した円形溝部に嵌め込まれる。
【0012】
上記の構成によると、肉厚の薄いフランジ部とワッシャとを別々に成形でき、露出するワッシャの材料を耐候性等の高いものにして、ワッシャに覆われるフランジ部を有する緩み止めスリーブの材料を、耐候性よりも緩み止め効果を優先して選ぶことができる。
【0013】
第4の発明では、第2の発明において、
前記フランジ部は、前記ワッシャよりも厚さが薄く、前記ワッシャよりも外径が同じかそれよりも小さく、前記ワッシャの軸方向端面と、前記ボルト頭部又は前記ナットとの間に挟み込まれる。
【0014】
上記の構成によると、肉厚の薄いフランジ部と、ワッシャとを別々に成形でき、露出するワッシャの材料を耐候性等の高いものにして、ワッシャに軸方向端面側が覆われるフランジ部を有する緩み止めスリーブの材料を、耐候性よりも緩み止め効果を優先して選ぶことができる。また、ワッシャ自体に円形溝部を設ける必要がないので、一般的な形状のワッシャを用いることも可能である。
【0015】
第5の発明の緩み止めスリーブは、締結ボルトが挿通される貫通孔を有し、被締結部材と前記締結ボルトのボルト頭部又はナットとの間に挟み込まれる円環状のワッシャ部と、
前記ワッシャ部から一体に軸方向に延び、前記締結ボルトの雄ネジ部外周と前記被締結部材のボルト挿通孔内周又は前記ナットの雌ネジ部との間に挟み込まれて締め込まれる円筒状のスリーブ部とを備える。
【0016】
上記の構成によると、円筒状のスリーブ部が、締結ボルトの雄ネジ部外周と、被締結部材のボルト挿通孔内周の雌ネジ部又はナットの雌ネジ部との間に挟み込まれた状態で締め込まれるので、雄ネジ部と雌ネジ部とが密着し、締結ボルトが緩まない。そして、雄ネジ部と雌ネジ部とでスリーブ部を締め込めばよいので、特殊なナットを必要とせず、また、一般的な雌ネジ部が施された被締結部材に対しても適用できる。さらに、スリーブ部とナット部とが一体に成形されるので、部品点数が減ってしかも扱い易い。
【0017】
第6の発明では、第1又は第5の発明において、
前記スリーブ部の外径は、前記締結ボルトの外径よりも0.1mm以上0.5mm以下大きい構成とする。
【0018】
スリーブ部の外径が、締結ボルトの外径よりも0.5mmを超えて大きいと、雌ネジ部との隙間に入り難い。一方、0.1mmよりも小さいと、締結ボルトに挿入し難い。しかし、上記の構成によると、スリーブ部は、締結ボルトの雄ネジ部と、雌ネジ部との間に入り易く、成形も可能である。
【0019】
第7の発明では、第1、第5及び第6のいずれか1つの発明において、
前記スリーブ部の厚さは、0.1mm以上0.2mm以下である。
【0020】
スリーブ部の厚さが、0.2mmよりも厚いと、厚すぎて雌ネジ部との隙間に入り難い。一方、0.1mmよりも薄いと、薄すぎて成形が難しい。しかし、上記の構成によると、締結ボルトの雄ネジ部と、雌ネジ部との間に入り易く、成形も可能である。
【0021】
第8の発明では、第1及び第5~第7のいずれか1つの発明において、
前記スリーブ部の高さは、5mm以上である。
【0022】
スリーブ部の高さが5mm以上であると、雄ネジ部と雌ネジ部との間でスリーブ部が十分に噛み込み、緩み止め効果が効果的に発揮される。
【0023】
第9の緩み止めスリーブの締結方法では、
締結ボルトと、
締結ボルトが挿通される貫通孔を有する円環状のフランジ部及び前記フランジ部から軸方向に延びる円筒状のスリーブ部を有する緩み止めスリーブと、
前記緩み止めスリーブが挿通される貫通孔を有し、被締結部材と前記締結ボルトのボルト頭部又はナットとの間に挟み込まれる円環状のワッシャとを準備し、
前記緩み止めスリーブの内部に前記締結ボルトを挿通した後、前記ワッシャを前記緩み止めスリーブの先端側から通した状態で、前記ワッシャの軸方向端面を被締結部材のボルト挿通孔周縁に当接させるようにして前記締結ボルトの先端を前記ボルト挿通孔に挿通し、又は、
前記締結ボルトを前記被締結部材のボルト挿通孔に挿通し、前記ボルト挿通孔の周縁から突出する前記締結ボルトの先端に前記緩み止めスリーブを挿通した後、前記ワッシャを挿通し、前記ワッシャの軸方向端面を被締結部材のボルト挿通孔周縁に当接させ、
その後、前記締結ボルトの雄ネジ部外周と前記被締結部材のボルト挿通孔内周の雌ネジ部又は前記締結ボルトの先端から挿入したナットの雌ネジ部との間に前記緩み止めスリーブを挟み込んだ状態で、前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に締め付ける構成とする。
【0024】
上記の構成によると、円筒状のスリーブ部が、締結ボルトの雄ネジ部外周と、被締結部材のボルト挿通孔内周の雌ネジ部又はナットの雌ネジ部との間に挟み込まれた状態で締め込まれるので、雄ネジ部と雌ネジ部とが密着し、締結ボルトが緩まない。また、雄ネジ部と雌ネジ部とでスリーブ部を締め込めばよくて特殊なナットを必要とせず、さらに、一般的な雌ネジ部が施された被締結部材に対しても適用できる。なお、ナットやワッシャの軸方向端面は、別の汎用ワッシャ等を介して被締結部材のボルト挿通孔周縁に当接してもよいし、直接当接してもよい。
【0025】
第10の緩み止めスリーブの締結方法では、
締結ボルトと、
前記締結ボルトが挿通される貫通孔を有する円環状のワッシャ部、及び、前記ワッシャ部から一体に軸方向に延びるスリーブ部を備える緩み止めスリーブとを準備し、
前記スリーブ部の内部に前記締結ボルトを挿通し、前記ワッシャ部の軸方向端面を被締結部材のボルト挿通孔周縁に当接させるようにして前記締結ボルトの先端を前記ボルト挿通孔に挿通し、又は、
前記締結ボルトを前記被締結部材のボルト挿通孔に挿通し、前記ボルト挿通孔の周縁から突出する前記締結ボルトの先端に前記スリーブ部を軸方向に突出させるように前記緩み止めスリーブを挿通し、前記ワッシャ部の軸方向端面を被締結部材のボルト挿通孔周縁に当接させ、
その後、前記締結ボルトの雄ネジ部外周と前記被締結部材のボルト挿通孔内周の雌ネジ部又は前記締結ボルトの先端から挿入したナットの雌ネジ部との間に前記スリーブ部を挟み込んだ状態で、前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に締め付ける構成とする。
【0026】
上記の構成によると、円筒状のスリーブ部が、締結ボルトの雄ネジ部外周と、被締結部材のボルト挿通孔内周の雌ネジ部又はナットの雌ネジ部との間に挟み込まれた状態で締め込まれるので、雄ネジ部と雌ネジ部とが密着し、締結ボルトが緩まない。そして、雄ネジ部と雌ネジ部とでスリーブ部を締め込めばよくて特殊なナットを必要とせず、また、一般的な雌ネジ部が施された被締結部材に対しても適用できる。スリーブ部とナット部とが一体に成形されるので、部品点数が減ってしかも扱い易い。なお、ナットやワッシャ部の軸方向端面は、別の汎用ワッシャ等を介して被締結部材のボルト挿通孔周縁に当接してもよいし、直接当接してもよい。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、簡単な構成で緩み止め効果を発揮できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】本発明の実施形態1に係る緩み止めスリーブが締結された締結構造を示す断面図である。
図1B】本発明の実施形態1に係る緩み止めスリーブが締結された締結構造の分解図である。
図2】本発明の実施形態1に係る緩み止めスリーブを示し、(a)が平面図で、(b)が正面図である。
図3】本発明の実施形態1に係るワッシャを示し、(a)が断面図で、(b)が底面図である。
図4A】本発明の実施形態1の変形例に係る緩み止めスリーブが締結された締結構造を示す断面図である。
図4B】本発明の実施形態1の変形例に係る緩み止めスリーブが締結された締結構造の分解図である。
図5】本発明の実施形態2に係る緩み止めスリーブが締結された締結構造を示す断面図である。
図6】本発明の実施形態2に係る緩み止めスリーブを示し、(a)が平面図で、(b)が正面図である。
図7】本発明の実施形態2に係る緩み止めスリーブに係るワッシャを示し、(a)が断面図で、(b)が平面図である。
図8】本発明の実施形態3に係る緩み止めスリーブが締結された締結構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
(実施形態1)
-緩み止めスリーブの構成-
図1A及び図1Bは、本発明の実施形態1に係る緩み止めスリーブ2及び円環状のワッシャ3が締結された締結構造を示し、例えば、緩み止めスリーブ2及び円環状のワッシャ3は、樹脂成形品よりなる。
【0031】
図2にも示すように、組付状態の緩み止めスリーブ2の円筒部分は、ワッシャ3に挿通され軸方向に延びるように突出している。本実施形態では、緩み止めスリーブ2は、締結ボルト10の雄ネジ部10b外周とナット11の雌ネジ部11aとの間に挟み込まれて締め込まれるようになっている。
【0032】
図3に示すように、円環状のワッシャ3は、緩み止めスリーブ2と締結ボルト10が挿通される貫通孔3aを有し、本実施形態では、ナット11の底面と被締結部材12のボルト挿通孔周縁12bとの間に挟み込まれる。
【0033】
図2に示すように、緩み止めスリーブ2は、円筒状のスリーブ本体2aを有すると共に、ワッシャ3よりも厚さが薄く、ワッシャ3よりも外径が小さいフランジ部2bを有する。緩み止めスリーブ2の材質は、樹脂、金属、紙、ゴム、エラストマー樹脂など特に制限されない。樹脂の場合、ポリプロピレン、66ナイロン、ABS樹脂等が考えられるが、本実施形態では、成形性や雌ネジ部11aへの噛み込み性などからポリプロピレン樹脂製である。
【0034】
スリーブ本体2aは、薄肉円筒形状であり、その内径は、対応する締結ボルト10の雄ネジ部10bの最大径と同一又はそれよりも若干大きく、その外径は、締結ボルト10の外径よりも0.1mm以上0.5mm以下だけ大きくなっている。本実施形態では、外径は、締結ボルト10の外径よりも0.1mmだけ大きい。スリーブ本体2aの厚さは、0.1mm以上0.2mm以下であり、0.1mm以上0.15mmがより望ましい。スリーブ本体2aの高さは、5mm以上あるのが望ましいが、その場合、スリーブ本体2aの先端で最も低い部分が5mm以上あればよく、スリーブ本体2aの先端は、軸方向に対して垂直な面で同じ高さに成形されている必要はなく、傾斜していたり、多少の凹凸があったりしてもよい。
【0035】
フランジ部2bは、ワッシャ3と、ナット11との間に挟み込まれるように構成されている。本実施形態では、フランジ部2bは、ワッシャ3の内周に凹陥した円形溝部3bに嵌め込まれている。円形溝部3bの内径は、フランジ部2bの外径よりも若干大きく、その深さは、フランジ部2bの厚さよりも若干深い。フランジ部2bの厚さは、成形性の面から1.0mm以上であるのが望ましい。フランジ部2bの外径は、剛性などの面で内径よりも5mm以上大きいのが望ましい。なお、円形溝部3bの厚さがフランジ部2bの厚さよりも浅くて、フランジ部2bが円形溝部3bに部分的に収納され、ワッシャ3よりも突出していてもよい。
【0036】
ワッシャ3の外径及び内径は、汎用のワッシャと同程度でもよく、スリーブ本体2aとフランジ部2bとの隅角部2cには、一般的に成形時にR部が成形されるので、そのR部との干渉を避けるような大きさの内径を有するのが望ましい。ワッシャ3の材質は特に限定されないが、合成樹脂の場合は、繊維強化プラスチック(FRP)であるのが望ましい。添加される繊維の種類、長さ、太さは、特に限定されず、一般的なガラス繊維などでよい。
【0037】
-緩み止めスリーブ2の締結方法-
次いで、本実施形態に係る緩み止めスリーブ2の締付方法について説明する。
【0038】
まず、締結ボルト10と、ナット11と、上述した緩み止めスリーブ2とワッシャ3を準備する。本実施形態では、被締結部材12の材質に合わせ、例えば、FRP製の汎用ワッシャ13も準備するが、汎用ワッシャ13は、なくてもよい。
【0039】
まず、図1Bに示すように、汎用ワッシャ13を締結ボルト10に嵌める。上述したように、汎用ワッシャ13は、被締結部材12の剛性が比較的高い場合等には不要である。
【0040】
次いで、汎用ワッシャ13が嵌められた締結ボルト10を被締結部材12のボルト挿通孔12aに通し、先端を被締結部材12よりも突出させる。この場合、ボルト挿通孔12aは、雌ネジ部が形成されていないキリ孔である。
【0041】
次に、締結ボルト10の先端から緩み止めスリーブ2を挿通し、その後、緩み止めスリーブ2の外周にワッシャ3を挿通する。このとき、フランジ部2bが円形溝部3bに収納され、その状態で、ワッシャ3の軸方向端面3cが被締結部材12のボルト挿通孔周縁12bに当接する。
【0042】
その後、締結ボルト10の先端からナット11を挿入し、雌ネジ部11aがスリーブ本体2aの部分に到達すると、スリーブ本体2aを噛み込みながらネジ込まれる。そして、ナット11の雌ネジ部11aとの間にスリーブ本体2aを挟み込んだ状態で、ナット11とワッシャ3との間に隙間がなくなるまで雄ネジ部10bを雌ネジ部11aに締め付ける。このとき、事前に緩み止めスリーブ2及びワッシャ3を被締結部材12のボルト挿通孔12aに隙間がなくなるまで締結ボルト10の深く挿入しておくとよい。
【0043】
なお、締結ボルト10の締結後に各部品に耐候性塗料を塗布してもよい。本実施形態では、緩み止めスリーブ2が外観に現れないので、緩み止めスリーブ2には耐候性塗料を塗布する必要はない。
【0044】
このように、本実施形態では、円筒状のスリーブ本体2aが、締結ボルト10の雄ネジ部10b外周と、ナット11の雌ネジ部11aとの間に挟み込まれた状態で締め込まれるので、雄ネジ部10bと雌ネジ部11aとが密着し、締結ボルト10が緩まない。
【0045】
また、スリーブ本体2aが噛み込む部分に通常の形状の雄ネジ部10bと雌ネジ部11aとがあればよいだけなので、特殊なナット11を必要とせず、簡易な緩み止め構造となる。
【0046】
本実施形態では、緩み止めスリーブ2とワッシャ3とが別部品であるので、肉厚の薄いフランジ部2bを含む緩み止めスリーブ2と、ワッシャ3とを別々に成形できるので成形し易く、また、露出するワッシャ3の材料を耐候性等の高いものにして、ワッシャ3に覆われるフランジ部2bを有する緩み止めスリーブ2の材料を、耐候性よりも緩み止め効果を優先して選ぶことができる。
【0047】
本実施形態では、緩み止めスリーブ2を樹脂成形品としたので、金属製の場合に比べ、複雑な形状でも成形が容易で、質量も減る。本実施形態の締結構造は、バネ構造や部材の復元力を使用した構造ではないため、一般的に弾性に乏しいFRPなどの樹脂製でも問題がない。
【0048】
また、スリーブ本体2aの外径が、締結ボルト10の外径よりも0.5mmを超えて大きいと、雌ネジ部11aとの隙間に入り難く、0.1mmよりも小さいと、雄ネジ部に挿入し難しい。しかし、本実施形態では、スリーブ本体2aの外径を、締結ボルト10の外径よりも0.1mm以上0.5mm以下大きい構成としたので、締結ボルト10の雄ネジ部10bと、雌ネジ部11aとの間に入り易く、成形も可能である。
【0049】
また、スリーブ本体2aの厚さが、0.2mmよりも大きいと、厚すぎて雌ネジ部11aとの隙間に入り難く、0.1mmよりも小さいと、薄すぎて成形が難しい。しかし、本実施形態では、スリーブ本体2aの厚さを、0.1mm以上0.2mm以下としたので、締結ボルト10の雄ネジ部10bと、雌ネジ部11aとの間に入り易く、成形も可能である。
【0050】
さらに、本実施形態では、スリーブ本体2aの高さを5mm以上としたので、雄ネジ部10bと雌ネジ部11aとの間でスリーブ本体2aが十分に噛み込み、緩み止め効果が効果的に発揮される。
【0051】
したがって、本実施形態に係る緩み止めスリーブ2によると、特殊なナット11を用いることなく、簡単な構成で緩み止め効果を発揮できるようにすることができる。
【0052】
-変形例-
図4A及び図4Bは本発明の実施形態の変形例を示し、緩み止めスリーブ2がネジ込まれる雌ネジ部がナット11ではなく、被締結部材12’のボルト挿通孔12a’に設けられている点で上記実施形態と異なる。なお、以下の本変形例及び各実施形態では、図1A図3と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0053】
本変形例では、図4Aに示すように、被締結部材12’のボルト挿通孔12a’に雌ネジ部が形成されており、この雌ネジ部に締結ボルト10の雄ネジ部10bをネジ込むように構成されている。ボルト挿通孔12a’は、上記実施形態と異なり、貫通していなくてもよい。
【0054】
-緩み止めスリーブの締結方法-
次いで、本変形例に係る緩み止めスリーブ2の締付方法について説明する。
【0055】
まず、上記実施形態と同様に締結ボルト10と、上述した緩み止めスリーブ2を準備する。しかし、本実施形態では、ナット11は用いない。
【0056】
まず、図4Bに示すように、締結ボルト10の先端から緩み止めスリーブ2を挿通し、その後、緩み止めスリーブ2の外周にワッシャ3を挿通する。このとき、フランジ部2bが円形溝部3bに収納され、その状態で、ワッシャ3の軸方向端面3cが被締結部材12’のボルト挿通孔周縁12b’に当接する。
【0057】
次いで、緩み止めスリーブ2が嵌められた締結ボルト10を被締結部材12’のボルト挿通孔12a’の雌ネジ部に締め付ける。
【0058】
それにより、締結ボルト10のボルト頭部10aと、被締結部材12’のボルト挿通孔周縁12b’との間にワッシャ3が挟み込まれる。
【0059】
本変形例では、円筒状の緩み止めスリーブ2が、締結ボルト10の雄ネジ部10b外周と、被締結部材12’のボルト挿通孔12a’内周の雌ネジ部11aとの間に挟み込まれた状態で締め込まれるので、雄ネジ部10bと雌ネジ部11aとが密着し、締結ボルト10が緩まない。
【0060】
また、雄ネジ部10bと雌ネジ部11aとがあればよいので、特殊なナット11を必要とせず、また、一般的な雌ネジ部11aが施された被締結部材12’に対しても適用できる。
【0061】
(実施形態2)
図5図7は、本発明の実施形態2に係る緩み止めスリーブ102を示し、ワッシャ103には、実施形態1と同様に貫通孔103aは形成されているが、円形溝部3bが設けられていない点で上記実施形態1と異なる。
【0062】
図6に示すように、本実施形態の緩み止めスリーブ102は、実施形態1と同様にスリーブ本体102aを有するが、ワッシャ103の軸方向端面103c(図5の下側端面)を覆う部分にワッシャ103の厚さよりも薄く、ワッシャ103の外径と同じかそれよりも小さい外径のフランジ部102bを有する。ワッシャ103よりも外径が大きいと直射日光や外気に触れ易くなるため望ましくない。隅角部102cには、実施形態1と同様に成形時のRが形成されている。
【0063】
フランジ部102bの厚さについても、薄い方が外周の外気に触れる部分が少なく、直射日光もほぼ当たらないので劣化しにくく、例えば、0.2mmである。しかし、成形性という観点で厚さを1mm以上としてもよい。
【0064】
本実施形態でも、肉厚の薄いフランジ部102bと、ワッシャ103とを別々に成形でき、露出するワッシャ103の材料を耐候性等の高いものにして、ワッシャ103に軸方向端面側が覆われるフランジ部102bを有する緩み止めスリーブ102の材料を、耐候性よりも緩み止め効果を優先して選ぶことができる。
【0065】
さらに、ワッシャ103自体に円形溝部3bを設ける必要がないので、貫通孔103aを有するワッシャ103として例えば、FRPなどの汎用ワッシャ13を用いることもできて有利である。
【0066】
以上説明したように、本実施形態においても、特殊なナット11を用いることなく、簡単な構成で緩み止め効果を発揮できるようにすることができる。
【0067】
(実施形態3)
-緩み止めスリーブの構成-
図8は、本発明の実施形態3に係る緩み止めスリーブ202を示し、スリーブ部202aとワッシャ部203とが一体である点で上記実施形態1と異なる。
【0068】
詳しくは図示しないが、本実施形態においても、実施形態1の変形例と同様にナット11を用いずに被締結部材12’のボルト挿通孔12a’の雌ネジ部に雄ネジ部10bをネジ込むようにしてもよい。
【0069】
本実施形態においても、緩み止めスリーブ202は、締結ボルト10が挿通される貫通孔203aを有し、締結ボルト10のボルト頭部10a又はナット11と被締結部材12’との間に挟み込まれる円環状のワッシャ部203を有する。
【0070】
-緩み止めスリーブの締結方法-
次いで、本実施形態に係る緩み止めスリーブ202の締付方法について説明する。
【0071】
まず、ナット11及び緩み止めスリーブ202を準備する。
【0072】
次いで、汎用ワッシャ13を締結ボルト10に嵌めるが実施形態1と同様に、汎用ワッシャ13は、被締結部材12の剛性が比較的高い場合等には不要である。
【0073】
次いで、汎用ワッシャ13が嵌められた締結ボルト10を被締結部材12のボルト挿通孔12aに通し、先端を被締結部材12よりも突出させる。
【0074】
次に、締結ボルト10の先端からワッシャ部203とスリーブ部202aとが一体となった緩み止めスリーブ202を挿通し、ワッシャ部203の軸方向端面203cが被締結部材12のボルト挿通孔周縁12bに当接する。
【0075】
その後、締結ボルト10の先端からナット11を挿入し、ナット11の雌ネジ部11aとの間にスリーブ部202aを挟み込む。そして、雄ネジ部10bを雌ネジ部11aに締め付け、雌ネジ部11aがスリーブ部202aに到達すると、スリーブ部202aを噛み込みながらナット11とワッシャ3との間に隙間がなくなるまで締結ボルト10が螺進する。
【0076】
このように、本実施形態においても、円筒状のスリーブ部202aが、締結ボルト10の雄ネジ部10b外周と、ナット11の雌ネジ部11aとの間に挟み込まれた状態で締め込まれるので、雄ネジ部10bと雌ネジ部11aとが密着し、締結ボルト10が緩まない。
【0077】
また、雄ネジ部10bと雌ネジ部11aとがあればよいので、特殊なナット11を必要とせず、また上記実施形態1の変形例のように、一般的な雌ネジ部11aが施された被締結部材12’に対しても適用できる。
【0078】
そして、スリーブ部202aとナット11部とが一体に成形されるので、部品点数が減ってしかも扱い易い。
【0079】
以上説明したように、本実施形態においても、特殊なナット11を用いることなく、簡単な構成で緩み止め効果を発揮できるようにすることができる。
【0080】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0081】
2 緩み止めスリーブ
2a スリーブ本体(スリーブ部)
2b フランジ部
2c 隅角部
3 ワッシャ
3a 貫通孔
3b 円形溝部
3c 軸方向端面
10 締結ボルト
10a ボルト頭部
10b 雄ネジ部
11 ナット
11a 雌ネジ部
12,12’ 被締結部材
12a,12a’ ボルト挿通孔
12b,12b’ ボルト挿通孔周縁
13 汎用ワッシャ
102 緩み止めスリーブ
102a スリーブ本体(スリーブ部)
102b フランジ部
103 ワッシャ
103a 貫通孔
103c 軸方向端面
202 緩み止めスリーブ
202a スリーブ部
203 ワッシャ部
203a 貫通孔
203c 軸方向端面
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8